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  • 特開-振幅変調型多極レゾルバ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117666
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】振幅変調型多極レゾルバ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20240822BHJP
   G01D 5/20 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01D5/244 A
G01D5/20 110E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023882
(22)【出願日】2023-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】田川 浩
(72)【発明者】
【氏名】山道 修一
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA38
2F077FF34
2F077PP26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】振幅変調型多極レゾルバにおいて、部品点数増加やそれによるコストアップを招くことなく、ゼロ位置判別を可能とする方式を提供する。
【解決手段】振幅変調型多極レゾルバ10は、軸1回転あたりn周期分(nは2以上の自然数)の出力信号が得られる振幅変調型多極レゾルバであり、ステータ1には、n周期分の正弦波状に巻数が変化するステータSIN巻線2とn周期分の余弦波状に巻数が変化するステータCOS巻線3、およびロータ4にはn周期分の正弦波状に巻数が変化するロータSIN巻線5とn周期分の余弦波状に巻数が変化するロータCOS巻線6を有して構成され、n周期分のステータSIN巻線2およびステータCOS巻線3のうち所定の周期数pについては他とは異なる巻線比率Sとし、n周期分のロータSIN巻線5およびロータCOS巻線6のうち所定の周期数qについては他とは異なる巻線比率Rとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸1回転あたりn周期分(nは2以上の自然数)の出力信号が得られる振幅変調型多極レゾルバであって、
n周期分の正弦波状に巻数が変化するステータSIN巻線、ならびにn周期分の余弦波状に巻数が変化するステータCOS巻線、および、n周期分の正弦波状に巻数が変化するロータSIN巻線、ならびにn周期分の余弦波状に巻数が変化するロータCOS巻線を有して構成されており、
該n周期分のステータSIN巻線およびステータCOS巻線のうち、所定の周期個数pについては他とは異なる巻線比率Sとし、
該n周期分のロータSIN巻線およびロータCOS巻線のうち、所定の周期個数qについては他とは異なる巻線比率Rとし、
これにより一部の周期において異なる振幅となり、
それによってロータ回転角度=0°であるところのゼロ位置を判別可能であることを特徴とする、振幅変調型多極レゾルバ。
【請求項2】
軸1回転あたりn周期分(nは2以上の自然数)の出力信号が得られる振幅変調型多極レゾルバであって、
n周期分の正弦波状に巻数が変化するステータSIN巻線、ならびにn周期分の余弦波状に巻数が変化するステータCOS巻線、および、n周期分の正弦波状に巻数が変化するロータSIN巻線を有して構成されており、
該n周期分のステータSIN巻線およびステータCOS巻線のうち、所定の周期個数pについては他とは異なる巻線比率Sとし、
該n周期分のロータSIN巻線のうち、所定の周期個数qについては他とは異なる巻線比率Rとし、
これにより一部の周期において異なる振幅となり、
それによってロータ回転角度=0°であるところのゼロ位置を判別可能であることを特徴とする、振幅変調型多極レゾルバ。
【請求項3】
前記所定周期個数p、qがともに1であることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
【請求項4】
前記一部の周期における異なる振幅が、他の周期における振幅よりも大きくなるよう構成されていることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
【請求項5】
前記他の巻線比率を1とした時に、前記巻線比率S、Rが、ともに1未満であることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
【請求項6】
前記他の巻線比率を1とした時に、前記巻線比率S、Rが、ともに1より大きいことを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
【請求項7】
前記他の巻線比率を1とした時に、前記巻線比率S、Rの一方が1未満、他方が1より大きいことを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
【請求項8】
モータの極数に応じた軸倍角のものを用いることを要さず、ゼロ位置の判別に伴って、いかなる極数のモータであってもその極の位置を検知可能であることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振幅変調型多極レゾルバに係り、特に、振幅変調型多極レゾルバにおける新規なゼロ位置検出方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の振幅変調型多極レゾルバの出力電圧は、レゾルバ軸が1回転する間に振幅の同じ電圧が所定周期分出力される。
図5は、従来の振幅変調型多極レゾルバにおける出力電圧の例を示すグラフであり、ここでは4周期が出力される4Xレゾルバの例を示している。縦軸は出力、横軸は角度である。図示するように従来の振幅変調型多極レゾルバでは、出力される全周期――ここでは4周期――の電圧の振幅が全て同じとなる。なお、レゾルバが搭載されるモータとの対応で示せば、モータの極数をPとすると、レゾルバ軸1回転での出力周期数はP/2であり、たとえば10極モータには5Xレゾルバ、8極モータには4Xレゾルバが用いられる。
【0003】
多極レゾルバについて出願人は従来、多くの発明を開示している。たとえば後掲特許文献1では、ロータの軸倍角数をステータのティースの数より大きくできる多極レゾルバとして、14個のティースが周方向に等間隔で配置されたステータと、実効半径が周方向に61次の成分をもって変化するロータとを備え、各ティースにおいては、ロータに対向する面の実効半径が周方向に61次の成分をもって変化するという構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-124514号公報「多極レゾルバ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り従来の振幅変調型多極レゾルバの場合、出力される所定数の周期の出力電圧において振幅が全て同じとなるため、各周期の出力電圧の識別ができない。つまり、任意の時点における角度を出力電圧から知ることができない。図5の4Xレゾルバの例でも示されるように、(SIN出力,COS出力)が等しくなる角度は、周期数すなわち4箇所存在する。そうすると、たとえばゼロ位置を出力から判別しようとしても、0°、90°、180°、270°の4箇所があり、判別できない。
【0006】
振幅変調型多極レゾルバのゼロ位置を判別するためには、1Xレゾルバを冗長させ、複速レゾルバとする方法がある。しかしこの方法では、部品点数が増えコストアップとなるというデメリットがある。また、別のセンサを用いてのゼロ位置検出方式もあり得るが、部品点数増加によるコストアップの問題は解決されない。部品点数増加やそれによるコストアップを招くことなく、ゼロ位置判別可能な技術が求められる。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、振幅変調型多極レゾルバにおいて、部品点数増加やそれによるコストアップを招くことなく、ゼロ位置判別を可能とする方式を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した。その結果、振幅変調型多極レゾルバにおいて、ロータ巻線数、ステータ巻線数に変化を与えることに想到した。それによって、複数の周期中の1周期のみ出力電圧の振幅を増加させることができ、ゼロ位置の把握に利用可能であることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 軸1回転あたりn周期分(nは2以上の自然数)の出力信号が得られる振幅変調型多極レゾルバであって、
n周期分の正弦波状に巻数が変化するステータSIN巻線、ならびにn周期分の余弦波状に巻数が変化するステータCOS巻線、および、n周期分の正弦波状に巻数が変化するロータSIN巻線、ならびにn周期分の余弦波状に巻数が変化するロータCOS巻線を有して構成されており、
該n周期分のステータSIN巻線およびステータCOS巻線のうち、所定の周期個数pについては他とは異なる巻線比率Sとし、
該n周期分のロータSIN巻線およびロータCOS巻線のうち、所定の周期個数qについては他とは異なる巻線比率Rとし、
これにより一部の周期において異なる振幅となり、
それによってロータ回転角度=0°であるところのゼロ位置を判別可能であることを特徴とする、振幅変調型多極レゾルバ。
〔2〕 軸1回転あたりn周期分(nは2以上の自然数)の出力信号が得られる振幅変調型多極レゾルバであって、
n周期分の正弦波状に巻数が変化するステータSIN巻線、ならびにn周期分の余弦波状に巻数が変化するステータCOS巻線、および、n周期分の正弦波状に巻数が変化するロータSIN巻線を有して構成されており、
該n周期分のステータSIN巻線およびステータCOS巻線のうち、所定の周期数pについては他とは異なる巻線比率Sとし、
該n周期分のロータSIN巻線のうち、所定の周期数qについては他とは異なる巻線比率Rとし、
これにより一部の周期において異なる振幅となり、
それによってロータ回転角度=0°であるところのゼロ位置を判別可能であることを特徴とする、振幅変調型多極レゾルバ。
〔3〕 前記所定周期個数p、qがともに1であることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
〔4〕 前記一部の周期における異なる振幅が、他の周期における振幅よりも大きくなるよう構成されていることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
【0010】
〔5〕 前記他の巻線比率を1とした時に、前記巻線比率S、Rが、ともに1未満であることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
〔6〕 前記他の巻線比率を1とした時に、前記巻線比率S、Rが、ともに1より大きいことを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
〔7〕 前記他の巻線比率を1とした時に、前記巻線比率S、Rの一方が1未満、他方が1より大きいことを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
〔8〕 モータの極数に応じた軸倍角のものを用いることを要さず、ゼロ位置の判別に伴って、いかなる極数のモータであってもその極の位置を検知可能であることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の振幅変調型多極レゾルバ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の振幅変調型多極レゾルバは上述のように構成されるため、これらによれば振幅変調型多極レゾルバにおいて、製造時の部品点数増加やそれによるコストアップを招くことなく、ゼロ位置判別を可能とする方式を提供することができる。また、搭載対象のモータの極数に関わらず、振幅変調型多極レゾルバを用いることができる。つまり、モータの極数とレゾルバの軸倍角を合わせておけば、センサ電気角ゼロ度とモータの極が一致するため、極の位置を知ることができる。
【0012】
モータの極数とレゾルバの軸倍角が一致していないと、センサ電気角ゼロ度とモータの極が一致するのは一箇所のみであるため、どのセンサ電気角のゼロ度がモータの極と一致しているか否かを知ることができない。しかし本発明によれば、モータの極と一致するセンサ電気角を他の周期とは振幅が異なる周期に合わせさえすればモータの極の位置を知ることができるため、センサの軸倍角とモータの極数を合わせる必要が無くなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明振幅変調型多極レゾルバの基本構成を示す概念図である。
図2】表1にロータ角度ごとの出力数値を示した本発明利用4Xレゾルバ例における、出力波形を示すグラフである。
図3】表1に示した4Xレゾルバにおける作用をロータ角度ごとに示す説明図である。
図4】本発明振幅変調型多極レゾルバの別の構成を示す概念図である。
図5】従来の振幅変調型多極レゾルバにおける出力電圧の例を示すグラフであり、ここでは4周期の出力される4Xレゾルバの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明振幅変調型多極レゾルバの基本構成を示す概念図である。図示するように本振幅変調型多極レゾルバ10は、軸1回転あたりn周期分(nは2以上の自然数)の出力信号が得られる振幅変調型多極レゾルバであって、ステータ1には、n周期分の正弦波状に巻数が変化するステータSIN巻線2、ならびにn周期分の余弦波状に巻数が変化するステータCOS巻線3が設けられ、またロータ4には、n周期分の正弦波状に巻数が変化するロータSIN巻線5、ならびにn周期分の余弦波状に巻数が変化するロータCOS巻線6が設けられていることを、まず基礎的な構成とする。
【0015】
そしてさらに、複数周期分の出力をなさしめるステータ巻線、ロータ巻線の双方において、一律の巻線比率とするのではなく、一部の巻線比率を変える構成とする。すなわち、n周期分のステータSIN巻線2およびステータCOS巻線3のうち所定の周期個数pについては他とは異なる巻線比率Sとし、n周期分のロータSIN巻線5およびロータCOS巻線6のうち所定の周期個数qについては他とは異なる巻線比率Rとする。本発明振幅変調型多極レゾルバ10は、以上を基本構成とする。
【0016】
つまり本振幅変調型多極レゾルバ10は、巻線比率が他とは異なる巻線、いわば「異種巻線」が、ステータSIN巻線2およびステータCOS巻線3ではp箇所、ロータSIN巻線5およびロータCOS巻線6ではq箇所、設けられる構成である。かかる「異種巻線」を有する巻線構成とすることにより本振幅変調型多極レゾルバ10では、ステータ1側とロータ4側それぞれの異種巻線が対向する配置となる特定の一部の周期において、その出力が他の周期とは異なる振幅を持った波形となる。いわば「異種出力」である。これによって、ロータ回転角度=0°であるところのゼロ位置を判別することが可能となる。
【0017】
以上のことを、4周期が出力される振幅変調型多極レゾルバ、すなわち4Xレゾルバを例としてさらに説明する。表1は、巻線比率S、Rがともに1未満である構成の本発明利用4Xレゾルバ例における、ロータ角度ごとの出力を示した表である。本例4Xレゾルバでは、ステータ側の所定周期個数p=1、ロータ側の所定周期個数q=1である。つまり、4周期のうち異種出力を出力する周期は一つのみである。また、ステータ側の巻線比率S=0.1、ロータ側の巻線比率R=0.4、である。その他の巻線の巻線比率は全て1である。つまり、ロータ、ステータ共に4周期のうち1周期分だけ、異種巻線として巻線比率を変えている構成である。
【0018】
出力を測定したロータ角度は0°、90°、180°、270°である。表中、「Stator(S)」欄には、ステータ側の4個の巻線の巻線比率を示す。また「Rotor(R)」欄には、ロータ側の4個の巻線の巻線比率をロータ角度ごとに示す。これらの巻線比率は同時に、そこで得られる電圧の比も示す。また「Each Output」欄には、対向するステータ側巻線-ロータ側巻線ごとにおける出力電圧を、ステータ側の巻線比率とロータ側の巻線比率の乗算にて示している。また「Total Output」欄には、ロータ角度ごとの総出力すなわちレゾルバ出力を、「Each Output」欄に示した出力の合算にて示している。
【0019】
【表1】
【0020】
表1に示される通り本例4Xレゾルバでは、ロータ角度90°、180°、270°においては総出力=2.5だが、0°では3.04となっている。したがって、出力波形の振幅にも相違が生じる。図2は、表1にロータ角度ごとの出力数値を示した本発明利用4Xレゾルバ例における、出力波形を示すグラフである。縦軸は出力、横軸は角度である。図示するように、ロータ角度0°(~90°)の周期のみにおいて、他の周期よりも振幅が大きくなる。これにより、ロータ回転角度=0°であるところのゼロ位置を判別することが可能となる。したがって、モータの極と一致するセンサ電気角を他の周期とは振幅が異なる周期に合わせさえすれば、モータの極の位置を知ることができる。
【0021】
表1および図2により示した4Xレゾルバの例のように本振幅変調型多極レゾルバでは、所定周期個数p、qはともに1とすることができる。つまり異種出力を出力する異種巻線は、軸1回転あたり1個のみ、当該周期は1箇所のみとすることができる。p、qの少なくともいずれかが複数であることが本発明から排除されるわけではないが、p=q=1 で本発明所期の課題解決のための十分な作用効果を得ることができる。以下示す例も全て、p=q=1 の例である。
【0022】
図3は、表1に示した巻線比率構成の4Xレゾルバにおける作用をロータ角度ごとに示す説明図である。ロータ角度は順に、0°、90°、180°、270°である。図示するように、ロータ角度90°、180°および270°ではいずれも、(ステータ側巻線の巻線比率,ロータ側巻線の巻線比率)は、2周期で(1,1)、1周期で(1,04)、1周期で(0.1,1)である。これにより、表1に示したようにレゾルバ出力は2.5となる。一方、
ロータ角度0°では、(ステータ側巻線の巻線比率,ロータ側巻線の巻線比率)は、3周期で(1,1)、1周期で(0.1,04)である。これにより、表1に示したようにレゾルバ出力は3.04となる。
【0023】
また、表1および図2により示した4Xレゾルバの例のように本振幅変調型多極レゾルバは、異種出力を出力する異種巻線に係る一部の周期における振幅が、他の周期における振幅よりも大きくなるよう構成されているものとすることができるが、本発明はこれに限定されない。要するに他の周期とは振幅が異なる周期であればよいのであり、したがって、他の周期における振幅よりも小さくなるような構成であってもよい。
【0024】
また、表1および図2により示した4Xレゾルバの例のように本振幅変調型多極レゾルバは、他の巻線比率を1とした時に巻線比率S、Rがともに1未満とすることができるが、これには限定されない。たとえばこれも4Xレゾルバの例だが、下表2のように、他の巻線比率を1とした時に、巻線比率S、Rがともに1より大きい構成としてもよい。本例では、他と相違する巻線比率S=1.9、R=1.6であり、これにより、他の3周期ではレゾルバ出力5.5であるところ、ロータ角度0°(~90°)の周期でのレゾルバ出力は6.04となっている。そして、ロータ角度0°(~90°)の周期のみにおいて、他の周期とは振幅が異なる出力となり、ロータ回転角度=0°であるところのゼロ位置を判別することが可能となる。
【0025】
なお、本表2の仕様および前提は上記表1と同様であり、巻線比率S、R、および、それによる「Each Output」欄ならびに「Total Output」欄の算定数値が相違する。このことは、後出の表3、4でも同様である。
【0026】
【表2】
【0027】
下表3、4も、本発明振幅変調型多極レゾルバの巻線比率S、Rの別構成例を示す。すなわち、他の巻線比率を1とした時に巻線比率S、Rの一方が1未満、他方が1より大きいという構成である。このうち表3には、S<1、R>1の構成例として、他と相違する巻線比率S=0.1、R=1.6を示している。これにより、他の3周期ではレゾルバ出力は3.7であるところ、ロータ角度0°(~90°)の周期でのレゾルバ出力は3.16となっている。そして、ロータ角度0°(~90°)の周期のみにおいて、他の周期とは振幅が異なる出力となり、ロータ回転角度=0°であるところのゼロ位置を判別することが可能となる。
【0028】
【表3】
【0029】
一方、表4には、S>1、R<1の構成例として、他と相違する巻線比率S=1.9、R=0.4を示している。これにより、他の3周期ではレゾルバ出力は4.3であるところ、ロータ角度0°(~90°)の周期でのレゾルバ出力は3.76となっている。そして、ロータ角度0°(~90°)の周期のみにおいて、他の周期とは振幅が異なる出力となり、ロータ回転角度=0°であるところのゼロ位置を判別することが可能となる。
【0030】
【表4】
【0031】
図4は、本発明振幅変調型多極レゾルバの別の構成を示す概念図である。図示するように本振幅変調型多極レゾルバ210は、軸1回転あたりn周期分(nは2以上の自然数)の出力信号が得られる振幅変調型多極レゾルバであって、ステータ21には、n周期分の正弦波状に巻数が変化するステータSIN巻線22、ならびにn周期分の余弦波状に巻数が変化するステータCOS巻線23が設けられ、またロータ24には、n周期分の正弦波状に巻数が変化するロータSIN巻線25が設けられていることを、まず基礎的な構成とする。
【0032】
そしてさらに、上記図1で示したレゾルバ10と同様、複数周期分の出力をなさしめるステータ巻線、ロータ巻線の双方において、一律の巻線比率とするのではなく、一部の巻線比率を変える構成とする。すなわち、n周期分のステータSIN巻線およびステータCOS巻線のうち、所定の周期数pについては他とは異なる巻線比率Sとし、該n周期分のロータSIN巻線のうち、所定の周期数qについては他とは異なる巻線比率Rとする。本発明振幅変調型多極レゾルバ210は、以上を基本構成とする。
【0033】
つまり本振幅変調型多極レゾルバ210は、巻線比率が他とは異なる巻線、いわば「異種巻線」が、ステータSIN巻線22およびステータCOS巻線23ではp箇所、ロータSIN巻線25ではq箇所、設けられる構成である。
かかる「異種巻線」を有する巻線構成とすることにより本振幅変調型多極レゾルバ210でも、ステータ21側とロータ24側それぞれの異種巻線が対向する配置となる特定の一部の周期において、その出力が他の周期とは異なる振幅を持った波形となる。いわば「異種出力」である。これによって、ロータ回転角度=0°であるところのゼロ位置を判別することが可能となる。
【0034】
なお本例は、ロータ側においてCOSN巻線を有しない構成であるが、一方、ロータ側のSIN巻線を有しないという構成は、無い。ロータのSIN巻線とCOS巻線は用途が異なっており、SIN巻線は入力から出力までの経路になっていて、主巻線とも呼ばれる。一方、COS巻線は、電気的には何処にもつながっておらず、磁気的な影響だけを与えて精度向上に寄与する働きをしており、短絡巻線と呼ばれる。すなわち、精度向上目的のCOS巻線は、これを無くしてもレゾルバとしての動作はなされるが、入出力の経路たるSIN巻線はレゾルバに必須の構成である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の振幅変調型多極レゾルバによれば、製造時の部品点数増加やそれによるコストアップを招くことなく、ゼロ位置判別を可能とする方式を提供することができ、搭載対象のモータの極数に関わらず、振幅変調型多極レゾルバを用いることができる。つまり、モータの極数に応じた軸倍角のものを用いることを要さず、ゼロ位置の判別に伴って、いかなる極数のモータであってもその極の位置を検知可能である。したがって、レゾルバ製造、使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0036】
1、21…ステータ
2、22…ステータSIN巻線
3、23…ステータCOS巻線
4、24…ロータ
5、25…ロータSIN巻線
6…ロータCOS巻線
10、210…振幅変調型多極レゾルバ
図1
図2
図3
図4
図5