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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117671
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
C03C27/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023894
(22)【出願日】2023-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】519021543
【氏名又は名称】株式会社中村製材所
(74)【代理人】
【識別番号】110003513
【氏名又は名称】kakeruIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 展章
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA26
4G061BA01
4G061CA05
4G061CB03
4G061CB16
4G061CB17
4G061CB18
4G061CD18
4G061CD20
(57)【要約】
【課題】2枚のガラス板の間に、天然素材である突板が挟持されて成る合わせガラスを、外壁や窓といった外装材として採用した場合であっても、外気、結露又は日光等の影響を受けにくい合わせガラスを提供する。
【解決手段】合わせガラスは、2枚のガラス板1、5の間に、接着剤層2、4を介して、突板3が挟持されて成り、前記突板3が、前記ガラス板1、5よりも小さく、前記突板3の端面全てが、前記ガラス板1、5の端面よりも内側に位置し、前記接着剤層2、4が、前記ガラス板1、5と同じ大きさ及び形状である。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のガラス板の間に、接着剤層を介して、突板が挟持されて成る合わせガラスにおいて、
前記突板が、
前記ガラス板よりも小さく、前記突板の端面全てが、前記ガラス板の端面よりも内側に位置し、
前記接着剤層が、
前記ガラス板と同じ大きさ及び形状である
ことを特徴とする合わせガラス。
【請求項2】
前記合わせガラスの内部且つ端面よりも内側において、シール部材を設けない
ことを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記突板が、炭化加工処理若しくは圧密加工処理、及び/又は変色防止処理された木材から作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記突板の一方の面側のみに、保護膜層を設け、
前記突板の他方の面側のみに、特殊フィルムを設ける
ことを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載の合わせガラスの製造方法であって、
一方の前記ガラス板の前記合わせガラスの内側となる面に、前記接着剤層を介して、前記突板を加熱接着させる下処理工程と、
前記下処理工程を経た一方の前記ガラス板に、前記接着剤層を介して、他方の前記ガラス板を積層させる積層処理工程と、
前記積層処理工程を経て得られた積層体を加熱接着させる加熱処理工程とを含み、
前記下処理工程での加熱温度よりも、前記加熱処理工程での加熱温度の方が低い
ことを特徴とする合わせガラスの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚のガラス板の間に、接着剤層を介して、突板が挟持されて成る合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載されているように、2枚のガラス板の間に、紙、布、又は、模様が印刷されたフィルム等が挟持されて成る合わせガラスが知られている。
【0003】
この合わせガラスは、挟持された素材の風合いを活かしつつ、その素材が有するメンテナンス性、耐久性、又は、強度等の弱点を、表面のガラス板が有する防汚性、耐傷性、及び、耐溶剤性等の特性で補完できるようになっている。
【0004】
この合わせガラスにより、メンテナンス性、耐久性、又は、強度等で課題を有していた素材を、内壁、パーテーション、ドア、又は天井等の内装材や、インテリア家具等の数多くの用途に採用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願昭58-98570号(実開昭60-9943号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載の合わせガラスは、挟持された素材である天然銘木の端面は、外気に晒されているため、例えば、外壁や窓といった外装材として採用するには適さなかった。
【0007】
また、挟持された素材の端面を外気に晒さないようにするために、合わせガラスの端面を、シール部材で覆うことも行われているが、シール部材が、合わせガラスと別部材であるため、シール部材が合わせガラスから&#21085;がれた場合や、シール部材の寿命が合わせガラスよりも短かった場合には、合わせガラスとしての寿命が残っているにも関わらず、合わせガラスを交換しなければならなかった。
【0008】
加えて、上記特許文献1に記載の合わせガラスのように、挟持された素材が天然素材であった場合には、合わせガラスの端面をたとえ適切にシールできたとしても、天然素材に含まれる水分等により合わせガラス内で結露が生じてしまうことや、日光により天然素材が変色してしまうことがあった。
【0009】
本発明は、このような課題を考慮して提案されるもので、2枚のガラス板の間に、天然素材である突板が挟持されて成る合わせガラスを、外壁や窓といった外装材として採用した場合であっても、外気、結露又は日光等の影響を受けにくい合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有している。
[1] 2枚のガラス板の間に、接着剤層を介して、突板が挟持されて成る合わせガラスにおいて、
前記突板が、
前記ガラス板よりも小さく、前記突板の端面全てが、前記ガラス板の端面よりも内側に位置し、
前記接着剤層が、
前記ガラス板と同じ大きさ及び形状である。
【0011】
[2] 前記合わせガラスの内部且つ端面よりも内側において、シール部材を設けない。
【0012】
[3] 前記突板が、炭化加工処理若しくは圧密加工処理、及び/又は変色防止処理された木材から作られる。
【0013】
[4] 前記突板の一方の面側のみに、保護膜層を設け、
前記突板の他方の面側のみに、特殊フィルムを設ける。
【0014】
[5] 合わせガラスの製造方法であって、
一方の前記ガラス板の前記合わせガラスの内側となる面に、前記接着剤層を介して、前記突板を加熱接着させる下処理工程と、
前記下処理工程を経た一方の前記ガラス板に、前記接着剤層を介して、他方の前記ガラス板を積層させる積層処理工程と、
前記積層処理工程を経て得られた積層体を加熱接着させる加熱処理工程とを含み、
前記下処理工程での加熱温度よりも、前記加熱処理工程での加熱温度の方が低い。
【0015】
上記特徴[1]によれば、突板の端面全てが接着剤層で覆われるため、本発明を、2枚のガラス板の間に、天然素材である突板が挟持されて成る合わせガラスを、外壁や窓といった外装材として採用した場合であっても、外気の影響を受け難いものとすることができる。
【0016】
上記特徴[2]によれば、シール部材を設けないため、本発明を、シール部材の状態に影響を受けることがなく、合わせガラス自体の状態に基づいた管理をする形とすることができる。
【0017】
上記特徴[3]によれば、本発明を、突板に防虫、防カビ、難燃効果、若しくは、表面特性、耐久性、強度の付与、及び/又は、変色防止効果を付与することができる。
【0018】
上記特徴[4]によれば、本発明を、合わせガラスを外装材として用いた際であっても、合わせガラスが汚れるのをより効果的に防ぐことができ、更には、屋内を利用する者にとって、より快適又は便利な環境を構築することができる。
【0019】
上記特徴[5]によれば、下処理工程で用いた接着剤層を、再度溶かすことなく、合わせガラスを構成することが可能となるため、より安定して、高品質な合わせガラスを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2枚のガラス板の間に、天然素材である突板が挟持されて成る合わせガラスを、外壁や窓といった外装材として採用した場合であっても、外気、結露又は日光等の影響を受けにくい合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態にかかる合わせガラスの構成を表す説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態にかかる合わせガラスの側面図である。
図3】本発明の第1の実施形態にかかる合わせガラスの正面図である。
図4】本発明の合わせガラスの製造方法のフローチャートを示す図である。
図5】本発明の加熱処理工程における合わせガラスの正面図である。
図6】本発明の加熱処理工程における合わせガラスの図5のA-A線における断面図である。
図7】本発明の加熱処理工程におけるチューブの説明図である。
図8】本発明の第2の実施形態にかかる合わせガラスの構成を表す説明図である。
図9】本発明の第3の実施形態にかかる合わせガラスの構成を表す説明図である。
図10】本発明の第4の実施形態にかかる合わせガラスの構成を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明をするが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明は以下の実施形態に限定されない。本発明の合わせガラスは、外装材に限られるものではなく、内装材やインテリア家具等にも適用することができる。
【0023】
1.第1の実施形態
1.1.構成
以下、第1の実施形態にかかる合わせガラスの構成について、図1乃至図3を参照して説明する。
図1、2に示すように、合わせガラスは、ガラス板1、接着剤層2、突板3、接着剤層4、ガラス板5の順で積層された構成となっている。
なお、第1の実施形態にかかる合わせガラスは、合わせガラスの内部且つ端面よりも内側において、シール部材を設けない構成となっている。
これにより、合わせガラスが、シール部材の状態に影響を受けることがなく、合わせガラス自体の状態に基づいた管理を行うことが可能となる。
【0024】
1.1.1.ガラス板1、5
ガラス板1、5は、通常時に透明のものを使用し、その材質には特に制限はなく、無機ガラスであっても有機ガラスであっても良い。
無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が用いられる。一方、有機ガラスとしては、ポリカーボネート等の透明樹脂が挙げられる。
また、ガラス板1、5として、放射線等を遮蔽することができる鉛ガラスを用いることも可能である。
【0025】
ガラス板1、5の形状としては、多角形状、円形状いずれでも良く、第1の実施形態においては、図3に示すように、四角形状としている。
ガラス板1、5の厚さは、特に限定されないが、汎用性等を考慮して、3~21mm程度が好ましい。
【0026】
1.1.2.接着剤層2、4
接着剤層2、4は、その材質には特に制限はなく、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アイオノマー樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
また、接着剤層2、4に、紫外線を遮蔽する紫外線吸収剤を添加させることも可能である。紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾジチオール系、クマリン系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。前記紫外線吸収剤の種類、配合量は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。
接着剤層2、4に、紫外線吸収剤を含有させるのは、突板3が変色することを防ぐためであることから、突板3よりも日光側に位置する一方の接着剤層のみに、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。
【0027】
接着剤層2、4の形状等は、特に制限はないが、ガラス板と同じ大きさ及び形状とし、作業を簡易なものとするため、フィルム状とすることが好ましい。
接着剤層2、4の厚さも、特に限定されないが、汎用性等を考慮して、0.15~0.4mm程度が好ましい。また、接着剤層2、4の厚みは、挟まれる突板3の厚みによっても変更し得るが、突板3の厚みが後述する厚みの範囲内であれば、0.15~0.4mm程度のものを使用することができる。
【0028】
1.1.3.突板3
突板3は、その製造方法に特に制限はないが、製造コストを抑えつつ、柾目模様や色調に統一感を持たせるために、特許6360461号に記載されている製造方法を用いることが好ましい。
突板3を製造する際に用いられる天然木は、特に制限はなく、例えば、スギ、ナラ、ウォールナット等、種々の天然木を使用することが可能である。
【0029】
突板3の形状は、特に制限はないが、意匠性等を考慮して、ガラス板1、5の形状と揃えることが好ましい。
また、その大きさをガラス板よりも小さくし、突板3の端面全てが、ガラス板1、5の端面よりも内側に位置させることが出来るようにしておくことが好ましい。
【0030】
また、突板3の厚さは、特に制限はないが、0.15mm~0.60mmとすることが好ましい。この程度の厚さに切削されていることにより、これをガラス板1、5に貼り付けた際に、採光性が確保できる。
【0031】
なお、突板3を0.15mm厚よりも薄く切削すると、突板がカールしやすくなる。
一方、突板3を0.60mm厚よりも厚くすると、突板に含まれる水分量が多くなるため好ましくない。
また、突板3をカッター等で所定の形状に加工する際の切削加工性も悪化する。
更には、突板3をガラス板1、5に貼り付けた際に、採光性の確保が困難となる可能性がある。
【0032】
なお、突板3の単板割れを防止するために、突板3に、補強用シートを貼り付けることも可能である。補強用シートとしては、例えば、和紙、難燃加工紙等の紙類、不織布等の布類、コルクその他の木質材料、ボリ塩化ビニルやポリエステル等の合成樹脂シート、金属等を使用することができる。
金属で構成される補強用シートとしては、金属網も含まれ、そのようなものを利用した場合には、合わせガラスに防火性を付与することも可能である。
突板3と補強用シートを接着するものは、接着剤層2、4と同じものを使用することができる。
また、補強用シートの厚さは、特に制限はないが、合わせガラス全体が厚くなり過ぎることを防止するためにも、突板3よりも薄いことが好ましい。
【0033】
1.2.合わせガラスの製造方法
以下、第1の実施形態にかかる合わせガラスの製造方法について、図4乃至図7を参照して説明する。
図4に示すように、合わせガラスの製造方法は、炭化・圧密加工工程S1、突板製造工程S2、変色防止処理工程S3、乾燥処理工程S4、積層処理工程S5、及び、加熱処理工程S6が含まれたものとなっている。
【0034】
1.2.1.炭化・圧密加工工程S1
炭化・圧密加工工程S1は、突板3を製造する工程で行われるものであり、木材ブロックに炭化加工工程又は圧密加工工程を施すものである。
炭化加工工程は、突板3を製造する際に用いられる木材ブロックを、高温と圧力をかけて蒸し焼きにする工程である。
この工程自体は、炭化加工として一般的に知られている工程を経ることができ、例えば、圧力装置によって一定時間5気圧の圧力をかけつつ、150℃の蒸気で蒸煮することがあり得る。
圧密加工工程は、一般的に知られている工程を経ることができ、例えば、突板3を製造する際に用いられる木材ブロックを、水蒸気処理を施して軟化させた後、平盤プレス機で熱圧して最初の厚みの20~70%位の厚みにまで圧密化する工程とすることがあり得る。
なお、この工程を経ずに合わせガラスを製造することも可能である。
【0035】
また、炭化・圧密加工工程S1を経ると、突板3の色が変化する場合があるため、この工程の後に、必要に応じて、突板3を脱色する工程や、突板3に着色する工程を加えても良い。
【0036】
炭化・圧密加工工程S1を経た木材ブロックを用いて、突板3を製造することで、炭化加工工程を経た場合には、突板3に防虫、防カビ、難燃効果、また、圧密加工工程を経た場合には、突板3の、表面硬度や表面の耐磨耗性などの表面特性、水分や熱に対する耐久性、及び強度を向上させる効果を付与することができる。
【0037】
1.2.2.突板製造工程S2
突板製造工程S2は、炭化・圧密加工工程S1を経た木材ブロックを用いて、突板3を製造する工程である。
この工程に特に制限はないが、製造コストを抑えつつ、柾目模様や色調に統一感を持たせるために、特許6360461号に記載されている製造工程を用いることが好ましい。
【0038】
1.2.3.変色防止処理工程S3
変色防止処理工程S3では、突板3の変色を防止するための処理を行う。
この処理は、紫外線吸収剤又は/及び酸化防止剤を用いて行われ、例えば、この紫外線吸収剤又は/及び酸化防止剤を、水溶液、溶剤溶液、乳化液等、適宜液状にした上で、突板3に、浸漬、スプレー、はけ塗り等により行われる。
この処理で使用される紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ピペリジン系のものが使用できる。また、酸化防止剤としては、フェノール系、ビスフェノール系、アミン系のものが使用できる。
なお、この工程を経ずに合わせガラスを製造することも可能である。
【0039】
変色防止処理工程S3により、突板3が、製造工程中の熱圧着や製品となった後の紫外線、温度、湿度等の影響による変色を有効に防止することができる。
【0040】
1.2.4.乾燥処理工程S4
乾燥処理工程S4では、変色防止処理工程S3で多くの水分を含有した状態となった突板3を乾燥させるための処理を行う。
変色防止処理工程S3後で得られた突板3は、自然乾燥、真空乾燥、又は、熱風等を利用した人工乾燥を行う。
なお、この工程を経ずに合わせガラスを製造することも可能である。
【0041】
乾燥処理工程S4により、製品となった後に、合わせガラス内で結露が発生してしまうことを効果的に防止することができる。
【0042】
1.2.5.積層処理工程S5
積層処理工程S5では、合わせガラスを構成する素材を、ガラス板1、接着剤層2、突板3、接着剤層4、ガラス板5の順で積層させていく。
この工程では、熱を加えずに素材を単に積層させているだけであるため、接着剤層2、4は溶けておらず、素材同士は接着されてはいない。そのため、積層させている際に、突板3の位置が、仮に定位置よりも変位していても、容易に修正することができる。
また、突板3は、その端面全てが、ガラス板1、5の端面よりも内側に位置させることが好ましい。突板3を、ガラス板1、5の端面よりも内側に位置させることでできる隙間Gの大きさをどの程度とするかは、特に限定されない。
【0043】
なお、突板3の模様としては、板目模様のものを利用することもできるが、柾目模様のものを利用することが好ましい。
そして、柾目の方向を、ガラスの一辺と平行となるように突板3を配置するようにすれば、複数の合わせガラスを用いる場合であっても、柾目模様を綺麗に揃えて施工することができる。
また、柾目の方向を、ガラスの一辺と平行とならないようにすることもできる。
【0044】
1.2.6.加熱処理工程S6
加熱処理工程S6では、ガラス板1、5、接着剤層2、4、突板3が一体となった積層体を、接着させるための処理を行う。
ガラス板1、5、接着剤層2、4、突板3が一体となった積層体は、それぞれが変位しないように、その端部を、テープ、治具、又は、ゴム系の樹脂でできたチューブ等で固定する。
【0045】
その後、積層体は、真空バッグ内に挿入され、真空ポンプにより減圧される。
真空ポンプにより減圧された状態の真空バッグは、そのままの状態(内部の積層体が加圧されている状態)で加熱装置内に入れられて、加熱処理が行なわれる。
そして、加熱処理時の温度範囲は、80~150℃程度が好ましい。
【0046】
なお、図5乃至図7に示すように、端部を固定する手段としてチューブTを用いた場合には、積層体の端部が、ガラス板1、5の表面よりも、チューブの厚みH分、厚み方向に高くなる。
そのような構成とすることで、チューブTで端部が固定された積層体が、真空バッグ内で減圧される際に、積層体の中央部から端部に向かって圧が加わるようになり、合わせガラス内に含まれる空気を効果的に取り除くことが可能となる。(減圧当初においては、チューブT付近では、真空バッグが積層体に接触せずに圧が加わらないようになっている。)
【0047】
1.3.効果
第1の実施形態の合わせガラスは、以上に詳述したような構成を有し、また、各種処理工程を経るため、2枚のガラス板の間に、天然素材である突板が挟持されて成る合わせガラスを、外壁や窓といった外装材として採用した場合であっても、外気、結露又は日光等の影響を受けにくい合わせガラスを提供することができる。
【0048】
2.第2の実施形態
2.1.構成
以下、第2の実施形態にかかる合わせガラスの構成について、図8を参照して説明する。
図8に示すように、合わせガラスは、ガラス板1、接着剤層2、紫外線遮蔽層6、接着剤層7、突板3、接着剤層8、紫外線遮蔽層9、接着剤層4、ガラス板5の順で積層された構成となっている。
この実施形態は、突板3の両面に、接着剤層7、8を介して、紫外線遮蔽層6、9を設けている点が、第1の実施形態と異なる。なお紫外線遮蔽層6、9自体が接着面を備えている場合には、接着剤層7、8を設ける必要はない。
そして、接着剤層7、8及び紫外線遮蔽層6、9以外の構成については、第1の実施形態と同じであるため、説明は割愛する。
【0049】
2.1.1.紫外線遮蔽層6、9
紫外線遮蔽層6、9としては、公知の物を用いることができ、例えば、特開2006-188578号公報に記載の耐光性フィルムを用いても良い。
また、紫外線遮蔽層6、9を利用するのは、突板3が変色することを防ぐためであることから、突板3よりも日光側に位置する位置のみに、紫外線遮蔽層を設けることも可能である。
この実施例においては、合わせガラスの内側に紫外線遮蔽層を設けているが、ガラス板1及び/又はガラス板5の外側に設けても良い。
【0050】
更には、この紫外線遮蔽層6、9を設ける場合には、各接着剤層に、紫外線を遮蔽する紫外線吸収剤を添加する必要はないが、添加した場合には、紫外線遮蔽効果を高めることができるため好ましい。
【0051】
2.2.合わせガラスの製造方法
第2の実施形態における合わせガラスの製造方法は、第1の実施形態における合わせガラスの製造方法のうち、主に積層処理工程S5が異なるだけであり、その工程も、紫外線遮蔽層6、9及び接着剤層7、8を積層する工程が加わるのみであるため、詳しい説明は割愛する。
【0052】
2.3.効果
第2の実施形態の合わせガラスは、以上に詳述したような構成を有するため、日光等の影響をより受けにくい合わせガラスを提供することができる。
3.第3の実施形態
3.1.構成
以下、第3の実施形態にかかる合わせガラスの構成について、図9を参照して説明する。
図9に示すように、合わせガラスは、保護膜層10、ガラス板1、接着剤層2、突板3、接着剤層4、ガラス板5の順で積層された構成となっている。
この実施形態は、ガラス板1に、保護膜層10を設けている点が、第1の実施形態と異なる。
また、図9においては、第1の実施形態の合わせガラスに保護膜層10を設けている構成としているが、第2の実施形態の合わせガラスにおいて保護膜層10を設けるようにしても良い。更には、第1の実施形態及び第2の実施形態における合わせガラスにおいて、ガラス板5にも保護膜層10を設けることも可能である。
なお、保護膜層10以外の構成については、第1の実施形態又は第2の実施形態と同じであるため、説明は割愛する。
【0053】
3.1.1.保護膜層10
保護膜層10としては、公知の物を用いることができ、例えば、特開平9-71437号公報に記載の酸化チタン薄膜を用いても良い。
この保護膜層10によって、合わせガラスを外装材として用いた際であっても、合わせガラスが汚れるのをより効果的に防ぐことができる。
【0054】
3.2.合わせガラスの製造方法
第3の実施形態における合わせガラスの製造方法は、第1の実施形態又は第2の実施形態における合わせガラスの製造方法を経た後に、ガラス板1又は/及びガラス板5に、保護膜層10を形成する工程が加わることのみであるため、詳しい説明は割愛する。
【0055】
3.3.効果
第3の実施形態の合わせガラスは、以上に詳述したような構成を有するため、合わせガラスを外装材として用いた際であっても、合わせガラスが汚れるのをより効果的に防ぐことができる。
4.第4の実施形態
4.1.構成
以下、第4の実施形態にかかる合わせガラスの構成について、図10を参照して説明する。
図10に示すように、合わせガラスは、保護膜層10、ガラス板1、接着剤層2、突板3、接着剤層4、ガラス板5、接着剤層11、特殊フィルム12の順で積層された構成となっている。なお、特殊フィルム12自体が接着面を備えている場合には、接着剤層11を設ける必要はない。
この実施形態は、ガラス板5に、接着剤層11を介して、特殊フィルム12を設けている点が、第3の実施形態と異なる。
また、図10においては、第3の実施形態の合わせガラスに接着剤層11を介して特殊フィルム12を設けている構成としているが、第1の実施形態又は第2の実施形態の合わせガラスにおいて接着剤層11を介して特殊フィルム12を設けるようにしても良い。
なお、特殊フィルム12以外の構成については、第1の実施形態、第2の実施形態、又は、第3の実施形態と同じであるため、説明は割愛する。
【0056】
4.1.1.特殊フィルム12
特殊フィルム12としては、例えば、PETフィルム、遮音機能を有するフィルム、遮熱機能を有するフィルム、電磁波等を遮蔽するフィルム、又は、非通電時は不透明で通電時に透明となる調光フィルム等を用いることができる。
また、特殊フィルム12として、金属網や織物といった、表面に凹凸が存在する材料も採用することが可能である。
【0057】
遮音機能を有するフィルムとしては、公知の物を用いることができ、例えば、特開2017-115031号公報に記載のものを用いても良い。
遮熱機能を有するフィルムとしては、公知の物を用いることができ、例えば、特開2017-26864号公報に記載のものを用いても良い。
電磁波等を遮蔽するフィルムとしては、公知の物を用いることができ、例えば、銅板等を用いても良い。
調光フィルムとしては、公知の物を用いることができ、例えば、特開2019-105679号公報に記載のものを用いても良い。
【0058】
この特殊フィルム12は、図10に示すように、日光が照射される側(保護膜層10側)とは反対側に設けられている。つまりは、特殊フィルム12が、屋内側に面して設けられているため、屋内を利用する者にとって、より快適又は便利な環境を構築することができる。
【0059】
4.2.合わせガラスの製造方法
第4の実施形態における合わせガラスの製造方法は、基本的には、第1の実施形態、第2の実施形態、又は、第3の実施形態における合わせガラスの製造方法を経た後に、ガラス板5に、特殊フィルム12を貼り付ける工程が加わることのみである。
ただし、調光フィルム以外の特殊フィルム12については、必ずしも合わせガラスの外側に設けなくても良く、合わせガラスの内側に設けるような構成としても良い。その場合には、「積層処理工程S5」において、所望の位置に、特殊フィルムを配置することが可能である。
更には、合わせガラス内に、複数種類、複数枚数の特殊フィルム12を設けることも可能である。
また、特殊フィルム12として、金属網や織物といった、表面に凹凸が存在する材料を採用し、かつ、それを合わせガラスの内側に配置する場合には、「積層処理工程S5」の前に、後述する下処理工程を加えることが好ましい。
【0060】
4.2.1.下処理工程
下処理工程では、積層処理工程S5の前に、ガラス板1及び/又はガラス板5に、突板3を接着させるための処理を行う。また、突板3に加えて、紫外線遮蔽層、保護膜層及び/又は特殊フィルムを接着させることも可能である。
下処理工程は、例えば、ガラス板1の合わせガラスの内側となる面に、接着剤層を介して、突板3を貼り付ける工程とすることができ、その貼り付け方は、「加熱処理工程S6」と同様の工程であるため、詳細な説明は割愛する。
なお、下処理工程を経る場合には、積層処理工程S5において、新たに突板3を積層させる必要はない。
【0061】
このような工程を経ることで、ガラス板1を、突板3の単板割れを防止するための補強用シートの代わりとして活用できるようになる。
そのため、下処理工程後に、積層処理工程S5で、金属網や織物といった表面に凹凸が存在する材料を積層し、加熱処理工程S6で加熱圧縮する過程において、突板3が、金属網や織物の凹凸により、曲がったり割れたりすることを効果的に防ぐことができる。
【0062】
また、下処理工程で用いる接着剤層と、加熱処理工程S6で用いる接着剤層とで、融解温度を異なるものとすることができる。
例えば、下処理工程で用いる接着剤層の融解温度を100℃、加熱処理工程S6で用いる接着剤層の融解温度を80℃とすることができる。
このように接着剤層の融解温度を異なるものとし、かつ、下処理工程で用いる接着剤層の融解温度を高くすることで、加熱処理工程S6で加熱する温度を調整することで、下処理工程で用いた接着剤層を、再度溶かすことなく、合わせガラスを構成することができる。そうすることで、より安定して、高品質な合わせガラスを製造することが可能となる。
なお、この下処理工程は、他の実施形態の合わせガラスの製造時にも採用することが可能である。
【0063】
4.3.効果
第4の実施形態の合わせガラスは、以上に詳述したような構成を有するため、屋内を利用する者にとって、より快適又は便利な環境を構築することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 :ガラス板
2 :接着剤層
3 :突板
4 :接着剤層
5 :ガラス板
6 :紫外線遮蔽層
7 :接着剤層
8 :接着剤層
9 :紫外線遮蔽層
10 :保護膜層
11 :接着剤層
12 :特殊フィルム
G :隙間
S1 :炭化・圧密加工工程
S2 :突板製造工程
S3 :変色防止処理工程
S4 :乾燥処理工程
S5 :積層処理工程
S6 :加熱処理工程
T :チューブ

図1
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