(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117672
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】接合フィルムおよびフィルム接合装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/02 20060101AFI20240822BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240822BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240822BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B29C65/02
B32B27/00 L
B32B7/06
A01G9/14 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023895
(22)【出願日】2023-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】522439504
【氏名又は名称】株式会社土と野菜
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】中川 典也
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 良平
【テーマコード(参考)】
2B029
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
2B029EB03
2B029EB24
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100GB01
4F100JL12A
4F100JL12B
4F100JL14A
4F100JL14B
4F211AA04
4F211AA10
4F211AA15
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH01
4F211AR07
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD11
4F211TH16
4F211TH21
4F211TN02
(57)【要約】
【課題】複数層からなる樹脂フィルムを接合できるようにして、樹脂フィルムの再利用を図れるようにした接合フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】複数層からなる樹脂フィルム1を接合させてなる接合フィルムにおいて、前記複数層のうち、裏面側3もしくは表面側2から一部の層を剥離させ、同じ材質の層を表出させるようにした剥離部4と、当該剥離部4によって表出された同じ材質の層を有すると、他の樹脂フィルム1の剥離部4によって表出させた同じ材質の層を溶着させた溶着部5とを備えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層からなる樹脂フィルムを接合させてなる接合フィルムにおいて、
前記複数層のうち、裏面側もしくは表面側から一部の層を剥離させた剥離部と、
当該剥離部を有する他の樹脂フィルムの剥離部同士を溶着させた溶着部と、
を備えるようにしたことを特徴とする接合フィルム。
【請求項2】
前記剥離部が、同じ材質の層を表出させるように剥離させた部分である請求項1に記載の接合フィルム。
【請求項3】
複数層からなる樹脂フィルムを接合させた接合フィルムを接合させるフィルム接合装置において、
前記複数層のうち、裏面側もしくは表面側を剥離する剥離手段と、
当該剥離手段によって裏面側もしくは表面側の剥離された複数の樹脂フィルムの剥離部分同士を溶着させる溶着手段と、
を備えたことを特徴とするフィルム接合装置。
【請求項4】
前記剥離手段が、研磨剤を有する流体によって裏面側もしくは表面側から樹脂フィルムを剥離させるものである請求項3に記載のフィルム接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の樹脂フィルムを接合させた接合フィルム、および、それらの樹脂フィルムを接合させるためのフィルム接合装置に関するものであり、より詳しくは、複数層からなる樹脂フィルムを再利用するために接合させるようにした接合フィルムおよびその接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、農業分野においては、ビニールハウスなどで大量の樹脂フィルムが使用される。このような樹脂フィルムは、防滴性、防塵性、耐強度性などを有するように多層に構成されるものであって、例えば、ビニールハウスの内側については、水滴を生じないような防滴処理が施され、また、外側についてはゴミなどが付着しないような防塵処理が施されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなビニールハウスの樹脂フィルムなどのような農業用資材は、一定期間経過すると経年劣化によって破損等を生じるため、廃棄して新たな樹脂フィルムに交換されるが、このとき、大量に樹脂フィルムのゴミが発生してしまうといった問題を生ずる。
【0005】
これに対して、このように廃棄される樹脂フィルムを再利用することも考えられるが、破損部分を切除して再利用しようとすると、大きさが合わないため、有効に再利用することができない。
【0006】
一方、廃棄される樹脂フィルムの破損部分などを切除して接合し、規格の大きさに整えて再利用することも考えられるが、複数の樹脂フィルムを接合させる場合、例えば、防滴処理された下面層と、防塵処理された表面層とを熱溶着させることができないことがあるといった問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、複数層からなる樹脂フィルムを接合できるようにして、樹脂フィルムの再利用を図れるようにした接合フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、複数層からなる樹脂フィルムを接合させてなる接合フィルムにおいて、前記複数層のうち、裏面側もしくは表面側から一部の層を剥離させた剥離部と、当該剥離部を有する他の樹脂フィルムの剥離部同士を溶着させた溶着部とを備えるようにしたものである。
【0009】
このように構成すれば、溶着させ難い層を剥離して、溶着させ易い層を表出させてそれぞれの樹脂フィルムを溶着させることができるため、表裏の層の性質が異なる場合であっても、確実に樹脂フィルム同士を溶着させることができ、しかも、溶着部分が分厚くなることを防止することができるようになる。
【0010】
また、このような発明において、樹脂フィルムの層を剥離する際に、同じ材質の層を表出させるようにする。
【0011】
このようにすれば、同じ材質の層を表出させることにより、それぞれを溶着させる際に、同じ溶融温度で溶着させることができ、樹脂フィルムを確実に接合させることができるようになる。
【0012】
また、複数層からなる樹脂フィルムを接合させるフィルム接合装置において、前記複数層のうち、裏面側もしくは表面側を剥離する剥離手段と、当該剥離手段によって裏面側もしくは表面側の剥離された複数の樹脂フィルムの剥離部分同士を溶着させる溶着手段とを備えるようにする。
【0013】
さらに、前記剥離手段を構成する場合、研磨剤を有する流体によって裏面側もしくは表面側から樹脂フィルムを剥離させるようにする。
【0014】
このように構成すれば、樹脂フィルムが薄く、しかも、伸延性がある場合であっても、大きな摩擦を掛けることなく、表面の層を剥離していくことができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数層からなる樹脂フィルムを接合させてなる接合フィルムにおいて、前記複数層のうち、裏面側もしくは表面側から一部の層を剥離させた剥離部と、当該剥離部を有する他の樹脂フィルムの剥離部同士を溶着させた溶着部とを備えるようにしので、溶着させ難い層を剥離して、溶着させ易い層を表出させてそれぞれの樹脂フィルムを溶着させることができるため、表裏の層の性質が異なる場合であっても、確実に樹脂フィルム同士を溶着させることができ、しかも、溶着部分が分厚くなることを防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態における樹脂フィルムの各層を示す図
【
図2】同形態における樹脂フィルムの剥離部と溶着部を示す図
【
図3】他の形態における樹脂フィルムの剥離部と溶着部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
この実施の形態における接合フィルムは、
図1や
図2に示すように、複数層からなる樹脂フィルム1を再利用できるように、それぞれの樹脂フィルム1の縁部を接合できるようにしたものであって、
図2に示すように、複数層からなる樹脂フィルム1の裏面側3もしくは表面側2から一部の層を剥離した剥離部4と、この剥離部4同士を溶着させた溶着部5とを備えてなるものであって、剥離によって表出された同じ材質の層同士を熱溶着させて、確実に樹脂フィルム1同士を接合させるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
まず、樹脂フィルム1としては、複数層からなるフィルムであって、例えば、ビニールハウスに使用されるフィルムなどが挙げられる。このビニールハウスの樹脂フィルム1は、ポリ塩化ビニル樹脂を主原料としたフィルムや、ポリエチレンや酢酸ビニルなどのオレフィン系樹脂を主原料としてフィルムなどが使用され、防滴性や防塵性、耐強度性、保温性、作業性などを備えるように多層構造に構成されている。具体的には、ビニールハウスの内側(樹脂フィルム1の中間層に対する裏面側3)については、防滴処理を施すような特殊な原料がコーティングされており、これによって水滴の滴下によって、作物に悪影響を与えないようにしている。一方、ビニールハウスの外側(樹脂フィルム1の中間層に対する表面側2)については、防塵処理が施されており、これによってビニールハウスに塵などを付着させないようにして、光透過性を保てるようにしている。また、これ以外にも、耐候性や保温性などを持たせるように3層以上で構成する場合もある。
【0020】
ところで、このような樹脂フィルム1は、数年間使用されると経年劣化によって破損などを生じ、使用できなくなる場合があり、定期的に、新しい樹脂フィルム1と交換されるが、このとき、破損等を生じた古い樹脂フィルム1は廃棄されることになる。
【0021】
このようなビニールハウスの樹脂フィルム1は、非常に大きな面積を有するものであり、ゴミが大量に発生してしまうため、ここでは、廃棄される古い樹脂フィルム1を再利用できるようにしている。
【0022】
このように古い樹脂フィルム1を再利用する場合、まず、古い樹脂フィルム1の破損部分を切除し、きれいな部分のみを残す。そして、このように破損部分の切除された樹脂フィルム1を接合させるようにしている。
【0023】
このように複数枚の樹脂フィルム1を接合させる場合、それぞれの樹脂フィルム1の縁部近傍をそれぞれ重ね合わせて、熱溶着させるが、このとき、表面側2の防塵処理された面と、裏面側3の防滴処理された面が重なり合うようになる。しかるに、このように性質の異なる層を熱溶着させようとすると、それぞれの溶融点の相違や、親水性・疎水性などの性質の相違などから、それぞれを上手く溶着させることができない。また、複数枚の樹脂フィルム1を重ね合わせて溶着させると、その部分の厚みが厚くなってしまう。そこで、この実施の形態では、溶融点の相違や、親水性・疎水性の相違などによって溶着できなくなることを防ぐために、樹脂フィルム1の裏面側3もしくは表面側2の層を剥離し、同じ材質の中間層同士を溶着させるようにしている。
【0024】
この樹脂フィルム1から表面層や裏面層を剥離する場合、種々のフィルム接合装置を用いることができるが、農業資材として使用される樹脂フィルム1は、厚みが0.05mmから0.10mmと非常に薄く、また、伸延性を有するため、金属製の部材などを当てて剥離を行うと、高い摩擦によって樹脂フィルム1が破れてしまう可能性がある。そこで、この実施の形態では、研磨剤を含有する液体を用いて、裏面側3もしくは表面側2の層を剥離させるフィルム接合装置6を用いるようにしている。
【0025】
図4に示すフィルム接合装置6において、符号61は、樹脂フィルム1の縁部を収容する凹部であり、半円筒状に湾曲して構成される。また、符号62は、この凹部61に収容される円筒状の回転部材であり、凹部61に対して、一定の隙間をもって収容される。回転部材62は、凹部61に対して上下方向に移動可能に構成されており、凹部61との隙間幅を調整できるようになっている。また、符号63は、この凹部61と回転部材62の隙間に流し込まれる流体を排出させるための排出部であり、研磨剤を含有する液体を排出させるものである。
【0026】
このようなフィルム接合装置6を用いて樹脂フィルム1の裏面側3もしくは表面側2の層を剥離する場合、樹脂フィルム1の縁部を凹部61に収容させ、その状態で樹脂フィルム1を固定する。
【0027】
そして、その凹部61に回転部材62を収容し、排出部63から研磨剤を流し込みながら回転させる。このとき、回転部材62を樹脂フィルム1にバネなどで軽く押圧させるようにしておき、研磨剤の流体によって樹脂フィルム1との間に流体層を形成し、回転部材62を樹脂フィルム1に直接当てることなく、研磨剤による一定の摩擦力で表面を均一に剥離していくようにする。
【0028】
また、同様にして、別の樹脂フィルム1の反対側の面(裏面)を上側にして凹部61に収容し、回転部材62を収容して、研磨剤を排出しながら回転させ、裏面側3から層を剥離していく。そして、同じ材質の中間層を表出させる(
図2の上図に示される状態)。
【0029】
そして、これらの樹脂フィルム1を乾燥させ、それぞれの剥離部4をオーバーラップさせる。
【0030】
そして、同じ材質の中間層を接触させた後、
図4に示すように、上下方向から溶着部材64で押圧させ、熱溶着によって、剥離部4を熱で溶着させる。
【0031】
このとき、剥離部4によって同じ材質の中間層を表出させて接合させることで、同じ温度で溶融させることができ、それぞれの樹脂フィルム1を確実に接合させることができるようになる。
【0032】
そして、このように接合させた樹脂フィルム1を、規格の大きさにカットし、例えば、家畜飼料用のロールベールをラッピングする際に使用されるフィルムなどに使用できるようにする。
【0033】
このように上記実施の形態によれば、複数層からなる樹脂フィルム1を接合させてなる接合フィルムにおいて、前記複数層のうち、裏面側3もしくは表面側2から一部の層を剥離させて中間層を表出させた剥離部4と、当該剥離部4を有する他の樹脂フィルム1の剥離部4の中間層同士を溶着させた溶着部5とを備えるようにしたので、熱で溶着させ難い層を剥離して、熱溶着させ易い層を表出させてそれぞれを溶着させることができるようになる。これにより、確実に樹脂フィルム1同士を溶着させることができ、しかも、溶着部分が分厚くなることを防止することができるようになる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0035】
例えば、上記実施の形態では、表面側2と裏面側3の両方の層を剥離するようにしたが、
図3に示すように、二層で樹脂フィルム1が構成されている場合は、片側の面の層だけを剥離した剥離部4を設け、同じ材質の層同士を溶着させるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態では、樹脂フィルム1の縁部を溶着させるようにしたが、スポット的に穴や亀裂の生じた部分を補修する際に、その部位の表面側2や裏面側3の層を剥離させ、表出した層の材質と同じ材質の樹脂フィルム1を接合させて溶着させるようにしてもよい。
【0037】
さらに、上記実施の形態では、研磨剤を有する流体を回転部材と凹部61との間に挟み込んで剥離させるようにしたが、金属製の部材や、サンドブラスト、或いは、溶剤などによって剥離させていくようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態では、ビニールハウスで使用された樹脂フィルム1を再利用する場合について述べたが、農業用のマルチシートや、他の分野で使用された樹脂フィルム1などを再利用する際についても、同様の方法で表面を剥離や溶着させて、再利用できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1・・・樹脂フィルム
2・・・表面側
3・・・裏面側
4・・・剥離部
5・・・溶着部
6・・・フィルムの接合装置
61・・・凹部
62・・・回転部材
63・・・排出部
64・・・溶着部材