(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117680
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】走行装置、トンネル掘削機、後続台車、運搬車両、トンネル掘削システム及び移動方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077783
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2023023731
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 一成
(72)【発明者】
【氏名】寺田 紳一
(72)【発明者】
【氏名】平塚 啓悟
(57)【要約】
【課題】坑道が円弧路面であっても平坦路面であっても安定して走行する。
【解決手段】走行装置は、トンネル掘削機に用いられる走行装置であって、車輪と、正面視において、前記走行装置が平坦路面を走行する第1状態と、前記走行装置が円弧路面を走行する第2状態とで、前記車輪の回転軸と直交する線と鉛直線とがなす角度を変更可能な可変機構と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機に用いられる走行装置であって、
車輪と、
正面視において、前記走行装置が平坦路面を走行する第1状態と、前記走行装置が円弧路面を走行する第2状態とで、前記車輪の回転軸と直交する線と鉛直線とがなす角度を変更可能な可変機構と、を備える、
走行装置。
【請求項2】
前記走行装置は、
前記走行装置の上下を軸にしたヨー方向に前記車輪を揺動可能なヨーイング機構と、
前記走行装置の前後を軸にしたロール方向に前記車輪を揺動可能なローリング機構と、
前記走行装置の左右を軸にしたピッチ方向に前記車輪を揺動可能なピッチング機構と、のうち少なくとも1つを備える、
請求項1に記載の走行装置。
【請求項3】
前記可変機構は、前記角度を変更するための機構の一部にロッドを備える、
請求項1に記載の走行装置。
【請求項4】
前記可変機構は、前記ロッドとして互いに長さの異なるロッドを切り替えることにより前記角度を変更する、
請求項3に記載の走行装置。
【請求項5】
前記走行装置は、
前記角度を変更するための機構として前記ロッドを含む第1リンク機構と、
前記第1リンク機構の一端部が接続される第2リンク機構と、を備え、
前記可変機構は、前記第2リンク機構の長さは固定とし、前記ロッドとして互いに長さの異なるロッドを切り替えることにより前記第1リンク機構の長さを変更する、
請求項4に記載の走行装置。
【請求項6】
前記可変機構は、前記角度を変更するための機構の一部にシリンダを備える、
請求項1に記載の走行装置。
【請求項7】
前記可変機構は、前記シリンダの長さを変更することにより前記角度を変更する、
請求項6に記載の走行装置。
【請求項8】
前記走行装置は、前記角度を変更するための機構として第1リンク機構及び第2リンク機構を備え、
前記シリンダは、前記第1リンク機構に設けられる、
請求項7に記載の走行装置。
【請求項9】
掘削物を掘削するためのカッタヘッドが取り付けられる前胴と、
伸縮機構を介して前記前胴に接続される後胴と、
請求項1に記載の走行装置と、を備え、
前記走行装置は、前記前胴及び前記後胴の各々に設けられる、
トンネル掘削機。
【請求項10】
前記カッタヘッドは、走行装置の取付け部を有する、
請求項9に記載のトンネル掘削機。
【請求項11】
前記トンネル掘削機の後に続く後続台車であって、
請求項1に記載の走行装置を備えた、
後続台車。
【請求項12】
掘削物を運搬する運搬車両であって、
請求項1に記載の走行装置を備えた、
運搬車両。
【請求項13】
前記トンネル掘削機と、
前記トンネル掘削機の後に続く後続台車と、を備え、
請求項1に記載の走行装置は、前記トンネル掘削機及び前記後続台車の各々に設けられる、
トンネル掘削システム。
【請求項14】
前記トンネル掘削機と、
前記トンネル掘削機の後に続く後続台車と、
掘削物を運搬する運搬車両と、を備え、
請求項1に記載の走行装置は、前記トンネル掘削機、前記後続台車及び前記運搬車両の各々に設けられる、
トンネル掘削システム。
【請求項15】
掘削物を掘削するためのカッタヘッドが取り付けられる前胴と、伸縮機構を介して前記前胴に接続される後胴と、前記前胴に設けられる前胴自重支持機構と、前記後胴に設けられる後胴グリッパと、走行装置と、を備えたトンネル掘削機を移動させるための移動方法であって、
前記後胴グリッパにより前記後胴をトンネルに固定する後胴固定ステップと、
前記後胴固定ステップの後、前記前胴自重支持機構を接地させて前記前胴の自重を支持する前胴自重支持ステップと、
前記前胴自重支持ステップの後、前記カッタヘッドにより前記前胴を前進させ掘削する前進掘削ステップと、
前記前進掘削ステップの後、前記後胴グリッパを解除して前記後胴に設けられる走行装置を接地する後胴走行装置接地ステップと、
前記後胴走行装置接地ステップの後、前記伸縮機構を縮めて前記後胴を前記走行装置とともに前進させる後胴前進ステップと、を含む、
移動方法。
【請求項16】
掘削物を掘削するためのカッタヘッドが取り付けられる前胴と、伸縮機構を介して前記前胴に接続される後胴と、走行装置と、を備えたトンネル掘削機を移動させるための移動方法であって、
前記カッタヘッドによるトンネルの掘削が完了した後に、少なくとも前記カッタヘッドの前方のトンネル壁と前記カッタヘッドとの間に前記走行装置が許容できる距離だけ前記トンネル掘削機を後進させ、前記カッタヘッドに前記走行装置を取り付けた後、前記トンネル掘削機を後退させる、
移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置、トンネル掘削機、後続台車、運搬車両、トンネル掘削システム及び移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネル掘削機(TBM: Tunnel Boring Machine)は、トンネルを掘削前進するだけでなく、掘削後のトンネルを前進又は後進することがある。その際に、トンネル掘削機は、クローラ走行装置を用いて前方又は後方に走行する。
特許文献1には、岩盤掘削用のトンネル掘削機が開示されている。トンネル掘削機は、傾斜式のクローラ走行装置を備える。クローラ走行装置は、可変自在な構成ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案公告第217001866号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、クローラ走行装置は傾斜しているが可変ではないため、坑道内の路面態様によっては移動が困難である。坑道が円弧路面を有していたり平坦路面を有していたりすることがあるため、特許文献1の走行装置では対応できない。
【0005】
そこで本発明は、坑道が円弧路面であっても平坦路面であっても安定して走行することができる走行装置、トンネル掘削機、後続台車、運搬車両、トンネル掘削システム及び移動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る走行装置は、トンネル掘削機に用いられる走行装置であって、車輪と、正面視において、前記走行装置が平坦路面を走行する第1状態と、前記走行装置が円弧路面を走行する第2状態とで、前記車輪の回転軸と直交する線と鉛直線とがなす角度を変更可能な可変機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、坑道が円弧路面であっても平坦路面であっても安定して走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るトンネル掘削システムの側面図。
【
図2】第1実施形態に係る掘削機を支持する走行装置が平坦路面を走行する状態を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る掘削機を支持する走行装置が円弧路面を走行する状態を示す斜視図。
【
図5】第1実施形態に係る掘削機の前面図であって走行装置の車輪の動作説明図。
【
図6】第1実施形態に係る掘削機を支持する走行装置を前胴の前側下部への取付機構と共に示す斜視図。
【
図7】第1実施形態に係る掘削機を支持する走行装置の側面図。
【
図8】第1実施形態に係る掘削機を支持する走行装置の一例の前面図。
【
図9】第1実施形態に係る掘削機を支持する走行装置の他の例の前面図。
【
図10】
図8のX-X断面を含む、第1実施形態に係る掘削機を支持する走行装置の上面図。
【
図11】第1実施形態に係る掘削機の掘進手順の一例を示す図。
【
図12】第1実施形態に係る掘削機の後退手順の一例を示す図。
【
図13】第1実施形態に係る掘削機の掘削なしでの前進手順の一例を示す図。
【
図14】第1実施形態に係る掘削機のカーブ掘削中における走行装置の配置説明図。
【
図15】
図14の矢視XVから見た図であって、円弧路面走行時の走行装置の配置説明図。
【
図17】第1実施形態に係る後続台車を支持する走行装置の斜視図。
【
図18】第1実施形態に係る後続台車を支持する走行装置が平坦路面を走行する状態を示す前面図。
【
図19】第1実施形態に係る後続台車を支持する走行装置が円弧路面を走行する状態を示す前面図。
【
図20】比較例に係る掘削機の掘進手順の一例を示す図。
【
図22】第3実施形態に係るトンネル掘削システムの側面図。
【
図24】第3実施形態に係る走行装置が平坦路面を走行する状態を示す前面図。
【
図25】第3実施形態に係る走行装置が円弧路面を走行する状態を示す前面図。
【
図26】第4実施形態に係る運搬車両群を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、トンネル掘削機を含むトンネル掘削システムの一例として、トンネルの坑壁にグリッパを固定することで前後方向に所定距離を移動可能なトンネル掘削機を含む例を挙げて説明する。
【0010】
<第1実施形態>
<トンネル掘削システム>
図1は、第1実施形態に係るトンネル掘削システム1の側面図である。
図1に示すように、トンネル掘削システム1は、掘削物を掘削し運搬する掘削運搬車両2を備える。掘削運搬車両2は、前後方向に延びている。掘削運搬車両2は、掘削機3と、後続台車群4と、を備える。
【0011】
例えば、掘削機3は、岩盤掘削用のトンネル掘削機である。掘削機3は、掘削運搬車両2において切羽(掘削)側に配置されている。掘削機3は、所定の軸線回りに回転可能なカッタヘッド5を備える。掘削機3は、カッタヘッド5の回転により岩盤等を掘削する。
掘削機3は、自走可能である。
【0012】
図の例では、掘削機3には、牽引ビーム6の前端部が接続されている。図の例では、牽引ビーム6の後端部は、最先端の後続台車の前端部に接続されている。なお、掘削機3と後続台車とは、牽引ビーム6により接続されていなくてもよい。例えば、牽引ビーム6の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0013】
以下、掘削機3が掘削しながら車両が進行する方向を「車両前方」、車両前方とは反対方向を車両後方と称する。掘削機3が掘削しながら車両が進行する方向に対して右手を右側、掘削機3が掘削しながら車両が進行する方向に対して左手を左側と称する。車両の左右方向を「幅方向」と称する。車両の上下方向は、車両の前後方向及び幅方向と直交する方向である。車両下側は、車両の上下方向において車輪の付いている側である。車両上側は、車両の上下方向において車輪の付いている側とは反対側である。図の例では、車両は、水平面に配置されている。車両上下方向、車両上方及び車両下方は、車両が水平面に配置された状態の上下方向(鉛直方向)、鉛直上方及び鉛直下方とそれぞれ一致する。以下の説明では、左側の要素の末尾に符号Lを付し、右側の要素の末尾に符号Rを付す場合がある。
【0014】
後続台車群4は、掘削機3の後に続く車両群である。後続台車群4は、運搬車両群10から構成される。掘削物は、坑内運搬車20で後方へ運搬する。運搬車両群10の各車両は、自走可能である。なお、運搬車両群10の各車両は、自走可能でなくてもよい。
【0015】
図の例では、運搬車両群10の各車両間は、連結ロッド及び牽引ブラケット等の牽引部材により接続されていない。なお、運搬車両群10の各車両は、牽引部材により接続されていてもよい。例えば、牽引部材の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0016】
運搬車両群10は、掘削機3と坑内運搬車20との間に配置されている。例えば、運搬車両群10は、機材置場、オペレータ席、オイルタンク、油圧ポンプ、集塵機、集塵機用水処理タンク、制御盤、インバータ盤、トランス、ケーブル置場等を搭載していてもよい。
【0017】
図の例では、運搬車両群10は、1番車両11から7番車両17までの計7台の車両により構成されている。1番車両11は、運搬車両群10において最先端の後続台車である。図の例では、牽引ビーム6の後端部は、1番車両11の前端部に接続されている。
【0018】
カッタヘッド5の回転により掘削された掘削物は、カッタヘッド5の裏面側でホッパ(不図示)に取り込まれる。ホッパに取り込まれた掘削物は、ベルトコンベヤ9により後方へ運搬される。ベルトコンベヤ9は、運搬車両群10の上部等に支持されている。ベルトコンベヤ9は、ホッパから1番車両11の上方位置まで延びた後、運搬車両群10の上方を通って7番車両17の上方位置後方まで延びている。図の例では、ベルトコンベヤ9は、各台車間で分断されており、後ろ上がりの傾斜を持ったベルトコンベヤが各台車上に搭載されて、掘削物が順次運搬される。
【0019】
掘削運搬車両2の後側には、坑内運搬車20が配置されている。坑内運搬車20は、掘削運搬車両2において坑口(地上)側に配置されている。坑内運搬車20は、自走可能である。坑内運搬車20は、運搬車両群10の各車両に電力を供給可能なバッテリを備えてもよい。坑内運搬車20は、ドライバーの運転席等があるキャブ8を備えてもよい。
【0020】
例えば、掘削機3が掘削した土砂は、順次後続の台車にベルトコンベヤ9によって搬送され、最終的に坑内運搬車20に積み込まれる。例えば、坑内運搬車20は、土砂が満載されると、トンネル後方へ移動・運搬を開始し、所定の排土場に土砂を排土する。
【0021】
なお、坑内運搬車20は、運搬車両群10を牽引可能な牽引車として機能してもよい。
例えば、坑内運搬車20は、7番車両17に対して揺動自在に連結されていてもよい。例えば、運搬車両群10と坑内運搬車20との連結態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0022】
図2は、第1実施形態に係る掘削機3を支持する走行装置50が平坦路面を走行する状態を示す斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る掘削機3を支持する走行装置50が円弧路面を走行する状態を示す斜視図である。
図2及び
図3は、掘削機3が掘削を伴わずに移動する場合に相当する。
図2においては、平坦路面を二点鎖線で示している。
図3においては、円弧路面を二点鎖線で示している。
図4は、第1実施形態に係る掘削機3の側面図である。
図2から
図4を併せて参照し、掘削機3は、掘削物を掘削するためのカッタヘッド5が取り付けられる前胴31と、伸縮機構33を介して前胴31に接続される後胴32と、を備える。
【0023】
カッタヘッド5は、複数のディスクカッタ34を備える。ディスクカッタ34は、カッタヘッド5の先端部に設けられる。掘削機3は、掘削する壁面にディスクカッタ34を押し当てながら、カッタヘッド5全体を回転させる。これにより、掘削物を掘削し、掘削機3が掘進する。
【0024】
掘削機3は、前胴31に設けられるバーチカルサポート35(前胴自重支持機構の一例)と、後胴32に設けられるグリッパ36,37(後胴グリッパの一例)と、を備える。バーチカルサポート35及びグリッパ36,37は、掘削機3の一部を支持又は固定する部材の一例である。
【0025】
バーチカルサポート35は、前胴31の下部に設けられる。バーチカルサポート35は、上下方向に移動可能である。例えば、バーチカルサポート35が下方に移動すると、バーチカルサポート35が接地した状態となる。バーチカルサポート35が接地した状態では、前胴31はバーチカルサポート35により支持された状態となる。
【0026】
グリッパ36,37は、後胴32の左右側部及び下部に設けられる。後胴32の左右側部のグリッパ36は、左右方向(幅方向)に移動可能である。例えば、グリッパ36が幅方向外方に移動すると、グリッパ36がトンネルの坑壁に接した状態となる。グリッパ36がトンネルの坑壁に接した状態では、後胴32はグリッパ36により支持された状態となる。なお、グリッパ36を坑壁に押し当てた状態では、後胴32はグリッパ36により固定された状態となる。
【0027】
後胴32の下部のグリッパ37(以下「下グリッパ37」ともいう。)は、上下方向に移動可能である。例えば、下グリッパ37が下方に移動すると、下グリッパ37が接地した状態となる。下グリッパ37が接地した状態では、後胴32は下グリッパ37により支持された状態となる。
【0028】
伸縮機構33は、前胴31と後胴32との間に設けられる。伸縮機構33は、前後方向に伸縮可能である。図の例では、伸縮機構33は、ラチスシリンダである。なお、伸縮機構33は、上記に限らず、他のシリンダであってもよい。例えば、伸縮機構33の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0029】
<掘削機に用いられる走行装置>
トンネル掘削システム1は、掘削機3に用いられる走行装置50を備える。走行装置50は、掘削機3が掘削を伴わずに移動する場合は、掘削機3を全体にわたって支持する(例えば、
図2及び
図3参照)。
【0030】
走行装置50は、前胴31及び後胴32の各々に設けられる。図の例では、走行装置50は、前胴31の前側下部(具体的には、カッタヘッド5の下部)及び後側下部、並びに、後胴32の前側下部及び後側下部の合計4箇所に設けられる。例えば、走行装置50は、前胴31の前側下部に対して取り外し可能であり、他の3箇所(前胴31の後側下部、後胴32の前側下部及び後側下部)に対しては取り外し可能でもよいし、取り外し不可であってもよい。カッタヘッド5は、走行装置50の取付け部49を有する。なお、掘削機3を支持する走行装置50の設置箇所は、上記に限らず、3箇所以下でもよいし、5箇所以上でもよい。例えば、掘削機3を支持する走行装置50の設置箇所は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0031】
図5は、第1実施形態に係る掘削機3の前面図であって走行装置50の車輪51の動作説明図である。
図5においては、平坦路面は実線で示し、円弧路面は不図示である。
図5を併せて参照し、走行装置50は、車輪51と、可変機構52と、を備える。図の例では、車輪51は、1台の走行装置50につき、左右4個ずつ合計8個(
図5の例では前側左右2個ずつを図示)設けられる。なお、車輪51の設置数は、上記に限らず、7個以下でもよいし、9個以上でもよい。例えば、走行装置50の車輪51の設置数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0032】
可変機構52は、正面視において(
図5の前面視で)、走行装置50が平坦路面を走行する第1状態と、走行装置50が円弧路面を走行する第2状態とで、車輪51の回転軸と直交する線と鉛直線とがなす角度Aを変更可能である。正面視は、車両前方から見た場合に相当する。第1状態は、
図2に示す状態に相当する。第2状態は、
図3に示す状態に相当する。第1状態では、角度Aはゼロとなる。第2状態では、角度Aはゼロより大きくなる。
図5の例では、角度Aがゼロの場合の車輪51を実線で示し、角度Aがゼロより大きい場合の車輪51(
図5の例では右側の車輪51)を二点鎖線で示している。
【0033】
図6は、第1実施形態に係る掘削機3を支持する走行装置50を前胴31の前側下部への取付機構40と共に示す斜視図である。
図7は、第1実施形態に係る掘削機3を支持する走行装置50の側面図である。
図8は、第1実施形態に係る掘削機3を支持する走行装置50の一例の前面図である。
図9は、第1実施形態に係る掘削機3を支持する走行装置50の他の例の前面図である。
図10は、
図8のX-X断面を含む、第1実施形態に係る掘削機3を支持する走行装置50の上面図である。
図6から
図10を併せて参照し、走行装置50は、取付機構40を介して、前胴31の前側下部へ取り付けられる。なお、走行装置50は、取付機構40を介さずに(別の取付機構を介して)、掘削機3の他の部分へ取り付けられてもよい。
【0034】
取付機構40は、取付ブロック41、取付ブラケット42及び取付アーム43を備える。
取付ブロック41は、側面視で台形状である。なお、取付ブロック41の形状は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。例えば、取付ブロック41の後部は、前胴31のカッタヘッド5の前側下部(取付け部49)に対して着脱可能に取り付けられてもよい。例えば、取付ブロック41の下部は、走行装置50の上部に対して着脱可能に取り付けられてもよい。
【0035】
例えば、取付ブラケット42の下部は、走行装置50の上部に対して着脱可能に取り付けられてもよい。取付ブラケット42は、複数設けられる。図の例では、取付ブラケット42は、走行装置50の上部の前部と後部とに左右一対(左右2個)ずつ合計4組設けられる。4組の取付ブラケット42は、取付ブロック41の左右側壁の前側下部と、左右一対の取付アーム43の前側下部とに2組ずつ設けられる。なお、取付ブラケット42の設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0036】
図の例では、取付アーム43の一端部(後側上部)は、側面視で取付ブロック41の上部と重なる。取付アーム43の一端部は、取付ブロック41の上部に連結されている。取付アーム43の一端部は、取付ブロック41との連結部位において左右方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされていてもよい。
【0037】
図の例では、取付アーム43の他端部(前側下部)は、側面視で前側の取付ブラケット42と重なる。取付アーム43の他端部は、前側の取付ブラケット42に連結されている。取付アーム43の他端部は、前側の取付ブラケット42との連結部位において左右方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされていてもよい。
【0038】
可変機構52は、角度Aを変更するための機構の一部にロッド53を備える。ロッド53は、左右一対設けられる。ロッド53は、可変機構52の一部に対して着脱可能に取り付けられている。例えば、角度Aを変更するために、互いに長さが異なる複数のロッド53を予め複数準備しておくことが好ましい。
【0039】
可変機構52は、ロッド53として互いに長さの異なるロッド53A,53Bを切り替えることにより角度Aを変更する。例えば、互いに長さが異なる2種類のロッド53A,53Bを用意することで、可変機構52は、正面視において、第1状態と第2状態とで角度Aを変更可能である。
図8の例では、角度Aがゼロの場合の車輪51を示し、所定長さを持つ第1ロッド53Aを備えた場合を示している。
図9の例では、角度Aがゼロより大きい場合の車輪51を示し、第1ロッド53Aの長さよりも短い第2ロッド53Bを備えた場合を示している。
【0040】
可変機構52を具体的に説明すると、サイドフレーム72L,72R(第2リンク機構の一部に相当)を揺動可能としつつ長さを変更せずに、ロッド53(第1リンク機構の一部に相当)を揺動可能としつつ長さを変更することによって、角度Aが変更される。さらに具体的には、ロッド53の一端部(第1リンク機構の一端部に相当)がサイドフレーム72L,72Rに接続されることで可変機構52が実現する。このように、可変機構52は、ロッド53として互いに長さの異なるロッド53A,53Bを切り替えることによって、角度Aを変更することができる。
【0041】
なお、ロッドの種類は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。例えば、ロッドの長さを変えることにより、様々な径のトンネル(フラット面を含む)に対応することができる。
【0042】
走行装置50は、走行装置50の上下を軸にしたヨー方向に車輪51を揺動可能なヨーイング機構55を備える。ヨーイング機構55は、センタフレーム構造60の一部に設けられる。ヨーイング機構55は、左右一対のヨーイングシリンダ56を備える。ヨーイングシリンダ56は、前後方向に伸縮可能である。
【0043】
走行装置50は、走行装置50の前後を軸にしたロール方向に車輪51を揺動可能なローリング機構57を備える。ローリング機構57は、センタフレーム構造60の一部に設けられる。
【0044】
センタフレーム構造60は、ロアフレーム61、ミドルフレーム62及びアッパフレーム63を備える。
ロアフレーム61の左右方向中央上部は、上面視でミドルフレーム62と重なる。ロアフレーム61の左右方向中央上部は、ミドルフレーム62に連結されている。ロアフレーム61は、ミドルフレーム62との連結部位において上下方向に沿う軸線(ヨーイング軸)を中心として揺動可能(ヨー方向に揺動可能)とされている(
図10参照)。
【0045】
ミドルフレーム62の前後一対の壁部は、前面視でアッパフレーム63の下部と重なる。ミドルフレーム62の前後一対の壁部は、アッパフレーム63下部の前後一対の壁部とそれぞれ連結されている。ミドルフレーム62は、アッパフレーム63との連結部位において前後方向に沿う軸線(ローリング軸)を中心として揺動可能(ロール方向に揺動可能)とされている(
図8参照)。なお、ミドルフレーム62と一緒にロアフレーム61もロール方向に揺動する。
【0046】
走行装置50は、走行装置50の左右方向に車輪51を移動可能なスライダ機構65を備える。スライダ機構65は、アッパフレーム63の上部に設けられる。スライダ機構65は、上面視で矩形状のスライダプレート66と、スライダプレート66の下面に設けられるスライダガイド67と、アッパフレーム63の上部に設けられるスライダレール68と、を備える。
【0047】
スライダガイド67は、前面視及び上面視でスライダレール68の一部と重なる。スライダガイド67は、側面視で矩形状のスライダレール68の上部外形に沿う逆凹状を有する。スライダガイド67は、複数設けられる。図の例では、スライダガイド67は、スライダプレート66の前部下面と後部下面とに左右2個ずつ合計4個設けられる。なお、スライダガイド67の設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0048】
スライダレール68は、複数設けられる。図の例では、スライダレール68は、アッパフレーム63の前部上面と後部上面とに1個ずつ合計2個設けられる。なお、スライダレール68の設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0049】
走行装置50は、走行装置50の左右を軸としたピッチ方向に車輪51を揺動可能なピッチング機構70L,70Rを備える。ピッチング機構70L,70Rは、左右一対設けられる。ピッチング機構70L,70Rは、ピッチングフレーム71L,71R及びサイドフレーム72L,72Rを備える。
【0050】
ピッチングフレーム71L,71Rは、前後方向に沿って延びている。ピッチングフレーム71L,71Rは、車輪51を回転可能に支持する。図の例では、ピッチングフレーム71L,71Rの前端部及び後端部の各々に、左右一対の車輪51が車軸75を介して連結されている。各車輪51は、ピッチングフレーム71L,71Rとの連結部位において左右方向に沿う軸線を中心として回転可能とされている。例えば、車軸75は、軸受76を介して車輪51と連結されていてもよい。
【0051】
ピッチングフレーム71L,71Rの前後方向中央部は、側面視でサイドフレーム72L,72Rの左右方向外側部と重なる。ピッチングフレーム71L,71Rの前後方向中央部は、サイドフレーム72L,72Rの左右方向外側部と連結されている。ピッチングフレーム71L,71Rは、サイドフレーム72L,72Rとの連結部位において左右方向に沿う軸線(ピッチング軸)を中心として揺動可能(ピッチ方向に揺動可能)とされている(
図7参照)。
【0052】
サイドフレーム72L,72Rの左右方向内端部は、ロアフレーム61下部の左右方向外端部と前面視で重なる。ロアフレーム61下部の左右方向外端部は、前面視でロアフレーム61下部の左右方向に延びる部分の外側部分から下方に向かって屈曲していてもよい。サイドフレーム72L,72Rの左右方向内端部は、ロアフレーム61の左右方向外端部と連結されている。サイドフレーム72L,72Rは、ロアフレーム61との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。サイドフレーム72L,72Rは、可変機構52の一部を構成する。
【0053】
サイドフレーム72L,72Rにおいて左右方向外側部の前後から上方に突出する部分(以下「前後一対の凸部」ともいう。)は、前面視でロッド53の一端部(左右方向外端部)と重なる。サイドフレーム72L,72Rの前後一対の凸部は、ロッド53の一端部と連結されている。サイドフレーム72L,72Rは、ロッド53の一端部との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされていてもよい。
【0054】
ロアフレーム61上部の左右方向外端部は、前面視でロッド53の他端部(左右方向内端部)と重なる。ロアフレーム61上部の左右方向外端部は、前面視でロアフレーム61上部の左右方向に延びる部分の外側部分から上方に向かって屈曲していてもよい。ロアフレーム61上部の左右方向外端部は、ロッド53の他端部と連結されている。ロアフレーム61は、ロッド53の他端部との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされていてもよい。ロアフレーム61は、可変機構52の一部を構成する。
【0055】
走行装置50は、角度Aを変更するための機構としてロッド53を含む機構(第1リンク機構の一例)と、ロッド53の一端部が接続されるロアフレーム61及びサイドフレーム72L,72Rを含む機構(第2リンク機構の一例)と、を備える。可変機構52は、ロアフレーム61及びサイドフレーム72L,72Rの長さ(第2リンク機構の長さの一例)は固定とし、ロッド53として互いに長さの異なるロッド53A,53Bを切り替えることによりロアフレーム61上部の左右方向外端部とサイドフレーム72L,72Rの前後一対の凸部とに接続されるロッド53の長さ(第1リンク機構の長さの一例)を変更する。
【0056】
<移動方法>
図11は、第1実施形態に係る掘削機3の掘進手順の一例を示す図である。
図12は、第1実施形態に係る掘削機3の後退手順の一例を示す図である。
図13は、第1実施形態に係る掘削機3の掘削なしでの前進手順の一例を示す図である。
図11から
図13を併せて参照し、本実施形態の移動方法は、掘削物を掘削するためのカッタヘッド5が取り付けられる前胴31と、伸縮機構33を介して前胴31に接続される後胴32と、を備える掘削機3を移動させるための移動方法であって、前胴31及び後胴32の各々に走行装置50を設けた後、前胴31又は後胴32の一方を固定した状態で伸縮機構33を伸縮させることで前胴31又は後胴32の他方を移動させる。
【0057】
なお、バーチカルサポート35の下面及び下グリッパ37の下面は、前方から見た場合に円弧状を有する。このため、平坦路面の場合は、バーチカルサポート35の下面及び下グリッパ37の下面を平らにできる図示しないアタッチメント等を装着してもよい。これにより、転倒防止を図ったうえで反力を得ることができる。
【0058】
<掘削機の掘進手順の一例>
掘削機3の掘進手順(移動方法の一例)は、グリッパ36,37により後胴32をトンネルに固定する後胴固定ステップと、後胴固定ステップの後、バーチカルサポート35を接地させて前胴31の自重を支持する前胴自重支持ステップと、前胴自重支持ステップの後、カッタヘッド5により前胴31を前進させ掘削する前進掘削ステップと、前進掘削ステップの後、グリッパ36,37を解除して後胴32に設けられる走行装置50を接地する後胴走行装置接地ステップと、後胴走行装置接地ステップの後、伸縮機構33を縮めて後胴32を走行装置50とともに前進させる後胴前進ステップと、を含む。
【0059】
例えば、掘削機3の掘進手順は、
図11に示すように、以下の手順で行う。
まず、
図11の最上段の図に示すように、掘進のため、伸縮機構33を所定距離に縮める(例えば、ラチスシリンダ縮状態)。次に、後胴32のグリッパ36を張り出すとともに後胴32の下グリッパ37を接地させて後胴32を固定する(後胴固定ステップに相当)。なお、グリッパ36を張り出す位置を調整するために、先に下グリッパ37を接地させてもよい。
【0060】
次に、バーチカルサポート35を接地させて前胴31の自重を支持する(前胴自重支持ステップに相当)。なお、バーチカルサポート35は、前胴31の自重を支持しており、掘削時は坑壁上を滑るものである。バーチカルサポート35は、前胴31の自重と坑壁に対する摩擦力との関係が所定条件を満たすと動かない状態となる。例えば、バーチカルサポート35は、掘進時は常に接地して坑道の路面上を滑る状態となっていてもよい。これにより、バーチカルサポート35が前胴31の自重を支えながら、前進掘削を行うことができる。
【0061】
車輪51は基本的に接地させない。なお、バーチカルサポート35は坑道の路面上を滑ることが可能であるため、車輪51は接地していてもよい。一方、後胴32を引き寄せる際は、バーチカルサポート35の路面との摩擦力で前胴31を動かなくしたいため、車輪51は接地させない。
【0062】
次に、
図11の上から2段目の図に示すように、カッタヘッド5を回転しながら、張り出したグリッパ36から反力を得て、伸縮機構33を所定距離に伸長させる。これにより、掘削機3が矢印Mf方向に掘進する(前進掘削ステップに相当)。
【0063】
次に、
図11の上から3段目の図に示すように、後胴32の張り出したグリッパ36を緩めるとともに、下グリッパ37を上方に移動させる。すると、後胴32は、車輪51で支持された状態となる(後胴走行装置接地ステップに相当)。次に、この状態で伸縮機構33を所定距離に縮め、後胴32を車輪51で転がしながら矢印Mf方向に前進させる(後胴前進ステップに相当)。
【0064】
次に、
図11の最下段の図に示すように、再掘進のため、後胴32のグリッパ36を張り出すとともに後胴32の下グリッパ37を接地させて後胴32を固定する。
【0065】
<掘削機の後退手順の一例>
掘削機3の後退手順(移動方法の一例)は、カッタヘッド5によるトンネルの掘削が完了した後に、少なくともカッタヘッド5の前方のトンネル壁とカッタヘッド5との間に走行装置50が許容できる距離だけ掘削機3を後進させ、カッタヘッド5に走行装置50を取り付けた後、掘削機3を後退させる。
例えば、掘削機3の後退手順は、
図12に示すように、以下の手順で行う。
まず、
図12の最上段の図に示すように、掘進完了(例えば、ラチスシリンダ縮状態)後、前胴31のバーチカルサポート35は既に接地されている。次に、カッタヘッド5の前側下部に走行装置50を設置する。なお、掘削が完了した際は、前胴31の前方にはトンネル壁Wt(トンネル端部)がある場合がある。そのため、前胴31の前方にトンネル壁Wtがある場合は、掘削機3を少しだけ後進させ、トンネル壁Wtとカッタヘッド5の間にスペースを作ってから走行装置50を設置する必要がある。カッタヘッド5の前側下部(取付け部49)以外(掘削機3の他の部分)には、常に走行装置50を設置していてもよいし、取り外していてもよい。なお、通常掘削完了時のラチスシリンダは伸び状態であるが、機械休止時はラチスシリンダ縮状態が基本として表示している。
【0066】
次に、
図12の上から2段目の図に示すように、後胴32の下グリッパ37を上方に移動させる。すると、後胴32は、車輪51で支持された状態となる。
【0067】
次に、
図12の上から3段目の図に示すように、伸縮機構33を所定距離に伸長させる。これにより、後胴32を車輪51で転がしながら矢印Mr方向に後退させる。
【0068】
次に、
図12の最下段の図に示すように、後胴32の下グリッパ37を接地させる。次に、前胴31のバーチカルサポート35を上方へ移動させる。すると、前胴31は、車輪51で支持された状態となる。次に、この状態で伸縮機構33を所定距離に縮め、前胴31を車輪51で転がしながら矢印Mr方向に後退させる。
【0069】
<掘削機の掘削なしでの前進手順の一例>
掘削機3の掘削なしでの前進手順(移動方法の一例)は、カッタヘッド5に走行装置50を取り付けた後、掘削機3を前進させる。
例えば、掘削機3の掘削なしでの前進手順は、
図13に示すように、以下の手順で行う。
まず、
図13の最上段の図に示すように、伸縮機構33を所定距離に縮めた状態(例えば、ラチスシリンダ縮状態)で、後胴32の下グリッパ37及び前胴31のバーチカルサポート35を接地させる。次に、カッタヘッド5の前側下部(取付け部49)に走行装置50を設置する。カッタヘッド5の前側下部以外(掘削機3の他の部分)には、常に走行装置50を設置していてもよいし、取り外していてもよい。
【0070】
次に、
図13の上から2段目の図に示すように、前胴31のバーチカルサポート35を上方に移動させる。すると、前胴31は、車輪51で支持された状態となる。
【0071】
次に、
図13の上から3段目の図に示すように、伸縮機構33を所定距離に伸長させる。これにより、前胴31を車輪51で転がしながら矢印Mf方向に前進させる。
【0072】
次に、
図13の最下段の図に示すように、前胴31のバーチカルサポート35を接地させるとともに、後胴32の下グリッパ37を上方に移動させる。すると、後胴32は、車輪51で支持された状態となる。次に、この状態で伸縮機構33を所定距離に縮め、後胴32を車輪51で転がしながら矢印Mf方向に前進させる。
【0073】
<走行装置の配置の一例>
図14は、第1実施形態に係る掘削機3のカーブ掘削中における走行装置50の配置説明図である。
図14を併せて参照し、例えば、旋回中の走行装置50の横すべりを抑制するため、ステアリングジオメトリは、アッカーマン・ジャント機構を基本にすることが好ましい。
【0074】
例えば、走行装置50のヨーイングシリンダ56の推力は、走行中の操舵に必要な推力とすることが好ましい。例えば、掘削機3が円弧状のカーブを走行中の左右オフセットは、フリーであってもよい。例えば、掘削機3の停止中に操舵が必要な場合は、前胴31のバーチカルサポート35及び後胴32のグリッパ36,37などで本体をリフトアップした後、操向するとよい。
【0075】
上述の通り、走行装置50は、アッパフレーム63の上部に、走行装置50の左右方向に車輪51を移動可能なスライダ機構65を備える。スライダ機構65は、カーブ掘削中に曲線部で走行装置50を曲線に沿わせるため、走行装置50を旋回中心側にオフセットさせる機構として機能する。なお、
図14の上面視で、前胴31及び後胴32の重心を破線で示す三角形内におさめるため、前胴31及び後胴32のそれぞれの走行装置50のローリング機構57をニュートラル位置でロックしてもよい。例えば、ロックは、ブロック又はピン等で固定してもよい。
【0076】
図15は、
図14の矢視XVから見た図であって、円弧路面走行時の走行装置50の配置説明図である。
図15を併せて参照し、円弧路面走行時に前後車輪を曲線に沿わせるためには、前胴中心及び後胴中心に対してカーブ内側に走行装置50をスライド(オフセット)させる必要がある。走行装置50のスライドは円弧に倣えばよいので、油圧シリンダ等のアクチュエータは不要である。なお、平坦路面走行時はオフセット自体が基本的に発生しないので、スライドは固定であってもよい。
【0077】
<後続台車に用いられる走行装置>
図16は、第1実施形態に係る後続台車11(図の例では計7台の車両11~17のうちの1番車両11を図示)の側面図である。
図17は、第1実施形態に係る後続台車11~17を支持する走行装置100の斜視図である。
図18は、第1実施形態に係る後続台車11(図の例では計7台の車両11~17のうちの1番車両11を図示)を支持する走行装置100が平坦路面を走行する状態を示す前面図である。
図19は、第1実施形態に係る後続台車11(図の例では計7台の車両11~17のうちの1番車両11を図示)を支持する走行装置100が円弧路面を走行する状態を示す前面図である。
図18及び
図19においては、平坦路面を実線で示し、円弧路面を二点鎖線で示している。
図16から
図19を併せて参照し、トンネル掘削システム1は、掘削機3の後に続く後続台車11~17に用いられる走行装置100を備える。
【0078】
上述の通り、後続台車11~17は、複数設けられる。走行装置100は、複数の後続台車11~17の各々に設けられる。複数の走行装置100の各々は、走行装置100を自立して走行させるための駆動装置104を備える。例えば、駆動装置104は、走行モータである。例えば、複数の走行装置100の各々は、走行装置100を停止させるためのブレーキを備えてもよい。
【0079】
トンネル掘削システム1は、複数の駆動装置104の各々を制御する制御装置7を備える(
図1参照)。例えば、複数の走行装置100の各々に駆動装置104を制御する駆動制御部がある場合は、制御装置7は、複数の駆動制御部を統括的に制御してもよい。
【0080】
図の例では、走行装置100は、後続台車11の前側下部及び後側下部に1箇所ずつ合計2箇所に設けられる。なお、後続台車11を支持する走行装置100の設置箇所は、上記に限らず、1箇所でもよいし、3箇所以上でもよい。例えば、後続台車11を支持する走行装置100の設置箇所は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0081】
走行装置100は、車輪101と、可変機構102と、を備える。図の例では、車輪101は、1台の走行装置100につき、左右2個ずつ合計4個設けられる。なお、車輪101の設置数は、上記に限らず、3個以下でもよいし、5個以上でもよい。例えば、走行装置100の車輪101の設置数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0082】
可変機構102は、正面視において、走行装置100が平坦路面を走行する第1状態と、走行装置100が円弧路面を走行する第2状態とで、車輪101の回転軸と直交する線と鉛直線とがなす角度Aを変更可能である。第1状態は、
図18に示す状態に相当する。第2状態は、
図19に示す状態に相当する。第1状態では、角度Aはゼロとなる。第2状態では、角度Aはゼロより大きくなる。
【0083】
可変機構102は、角度Aを変更するための機構の一部にシリンダ103を備える。例えば、シリンダ103は、油圧シリンダである。シリンダ103は、左右一対設けられる。シリンダ103は、可変機構102の一部に対して着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0084】
可変機構102は、シリンダ103の長さを変更することにより角度Aを変更する。例えば、シリンダ103を伸縮させることで、可変機構102は、正面視において、第1状態と第2状態とで角度Aを変更可能である。
図18の例では角度Aがゼロの場合の車輪101を示し、
図19の例では角度Aがゼロより大きい場合の車輪101で示している。
図18の例では所定長さを持つシリンダ103を示し、
図19の例では所定長さよりも伸長したシリンダ103を示している。
【0085】
走行装置100は、走行装置100の上下を軸にしたヨー方向に車輪101を揺動可能なヨーイング機構105を備える。ヨーイング機構105は、スイングフレーム構造110の一部に設けられる。なお、ヨーイング機構105は、左右一対のヨーイングシリンダ(不図示)を備えてもよい。例えば、ヨーイング機構105は、モータ等のアクチュエータ(不図示)による旋回であってもよい。走行装置100は、走行装置100の前後を軸にしたロール方向に車輪101を揺動可能なローリング機構(不図示)を備えてもよい。
【0086】
スイングフレーム構造110は、ロアブラケット111L,111R、ミドルボディ112及びアッパプレート113を備える。
ロアブラケット111L,111Rは、左右一対設けられる。左右一対のロアブラケット111L,111Rの上部は、ミドルボディ112の下部に固定されている。
【0087】
ミドルボディ112の前後左右方向中央部は、上面視でアッパプレート113と重なる。ミドルボディ112の前後左右方向中央部は、アッパプレート113に連結されている。ミドルボディ112は、アッパプレート113との連結部位において上下方向に沿う軸線を中心として揺動可能(ヨー方向に揺動可能)とされている(
図17参照)。
【0088】
走行装置100は、走行装置100の左右を軸としたピッチ方向に車輪101を揺動可能なピッチング機構120L,120Rを備える。ピッチング機構120L,120Rは、左右一対設けられる。ピッチング機構120L,120Rは、ピッチングフレーム121L,121R及びサイドフレーム122L.122Rを備える。
【0089】
ピッチングフレーム121L,121Rは、前後方向に沿って延びている。ピッチングフレーム121L,121Rは、車輪101を回転可能に支持する。図の例では、ピッチングフレーム121L,121Rの前端部及び後端部の各々に、車輪101が車軸を介して連結されている。各車輪101は、ピッチングフレーム121L,121Rとの連結部位において左右方向に沿う軸線を中心として回転可能とされている。
【0090】
ピッチングフレーム121L,121Rの前後方向中央部は、側面視でサイドフレーム122L.122Rの下部と重なる。ピッチングフレーム121L,121Rの前後方向中央部は、サイドフレーム122L.122Rの下部と連結されている。ピッチングフレーム121L,121Rは、サイドフレーム122L.122Rとの連結部位において左右方向に沿う軸線を中心として揺動可能(ピッチ方向に揺動可能)とされている(
図17参照)。
【0091】
サイドフレーム122L.122Rの上部は、前面視で昇降リンク123L,123Rの左右方向外端部と重なる。昇降リンク123L,123Rは、左右一対設けられる。サイドフレーム122L.122Rの上部は、昇降リンク123L,123Rの左右方向外端部と連結されている。サイドフレーム122L.122Rは、昇降リンク123L,123Rとの連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。サイドフレーム122L.122Rは、可変機構102の一部を構成する。
【0092】
昇降リンク123L,123Rの左右方向内端部は、前面視でミドルボディ112の左右方向外端部と重なる。昇降リンク123L,123Rの左右方向内端部は、ミドルボディ112の左右方向外端部と連結されている。昇降リンク123L,123Rは、ミドルボディ112との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。
【0093】
昇降リンク123L,123Rにおいて左右方向中央部の前後から下方に突出する部分(以下「前後一対の凸部」ともいう。)は、前面視でシリンダ103の一端部(左右方向外端部)と重なる。昇降リンク123L,123Rの前後一対の凸部は、シリンダ103の一端部と連結されている。昇降リンク123L,123Rは、シリンダ103の一端部との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。昇降リンク123L,123Rは、可変機構102の一部を構成する。
【0094】
ロアブラケット111L,111Rの下部は、前面視でシリンダ103の他端部(左右方向内端部)と重なる。ロアブラケット111L,111Rの下部は、シリンダ103の他端部と連結されている。ロアブラケット111L,111Rは、シリンダ103の他端部との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。ロアブラケット111L,111Rは、可変機構102の一部を構成する。
【0095】
走行装置100は、角度Aを変更するための機構としてロアブラケット111L,111R及びシリンダ103を含む機構(第1リンク機構の一例)と、昇降リンク123L,123Rを含む機構(第2リンク機構の一例)と、を備える。シリンダ103は、第1リンク機構を構成するロアブラケット111L,111Rの下部と昇降リンク123L,123Rの前後一対の凸部とをわたすように、第1リンク機構に設けられる。
【0096】
例えば、坑道又は坑壁に予めマーカ及び基線等の走行情報が設置されている場合は、制御装置7は、上記の走行情報に基づいて各駆動装置104を制御してもよい。例えば、制御装置7は、上記の走行情報に基づいて後続台車11~17の姿勢を沿わせるために、ヨーイング機構105、ローリング機構(不図示)及びピッチング機構120L,120R等を制御してもよい。
【0097】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の走行装置50は、掘削機3に用いられる走行装置である。走行装置50は、車輪51と、正面視において、走行装置50が平坦路面を走行する第1状態と、走行装置50が円弧路面を走行する第2状態とで、車輪51の回転軸と直交する線と鉛直線とがなす角度Aを変更可能な可変機構52と、を備える。
この構成によれば、可変機構52により車輪51の角度Aを第1状態と第2状態とで変更することができる。このため、走行装置50は、坑道が円弧路面であっても平坦路面であっても安定して走行することができる。
図20は、比較例に係る掘削機1003の掘進手順の一例を示す図である。
図20を併せて参照し、一般に、掘削機1003が坑道内を前後方向に移動する際、掘削機1003の一部を支持する。例えば、図の例では、以下の手順で掘削機1003の掘進を行う。
図20の最上段の図に示すように、カッタヘッド1005の回転停止時は、前胴1031のバーチカルサポート1035を接地させるとともに、後胴1032のグリッパ1036を坑壁へ張り出す。次に、
図20の上から2段目の図に示すように、リアサポート1029を張り出して後胴1032を取り付けているフレーム1030を支えるとともに、トンネルの坑壁に固定されているグリッパ1036を緩める。次に、
図20の上から3段目の図に示すように、伸縮機構1033を所定距離に縮め、フレーム1030上をスライドさせて後胴1032を矢印方向に前進させる。次に、
図20の上から4段目の図に示すように、後胴1032のグリッパ1036を坑壁へ張り出すとともに、張り出したリアサポート1029を緩める。次に、
図20の上から最下段の図に示すように、カッタヘッド1005を回転しながら、張り出したグリッパ1036から反力を得て、伸縮機構1033を所定距離に伸長させる。これにより、掘削機1003が矢印方向に掘進する。このように比較例では、掘削機1003が坑道内を前後方向に移動する際にリアサポート1029が必要である。
これに対し本構成によれば、走行装置50が掘削機3に用いられることで、掘削機3が坑道内を前後方向に移動する際に、リアサポート1029を廃止することができる。
【0098】
本実施形態の掘削機3は、掘削物を掘削するためのカッタヘッド5が取り付けられる前胴31と、伸縮機構33を介して前胴31に接続される後胴32と、上記の走行装置50と、を備える。走行装置50は、前胴31及び後胴32の各々に設けられる。
この構成によれば、走行装置50により後胴32を支持することで、フレーム上をスライドさせて後胴32を前進させることができる。このため、後胴32を前進させる際に、リアサポート1029を張り出して後胴32を取り付けているフレーム1030を支える必要がない。したがって、リアサポート1029を廃止することができる。
例えば、これまでのTBMでは、後続台車だけでなく、前胴及び後胴が掘削後に後退する際にもレールが必要であった。そのため、カッタヘッドで前進して掘削しながら、後ろでレールを人手で設定していた。これに対し本構成によれば、走行装置50により前胴31及び後胴32を支持することで、前胴31及び後胴32のいずれにおいても、移動のためのレールが不要になる。そのため、TBMによる掘削作業に並行して行われていたレール設置作業が不要となる。
【0099】
本実施形態の後続台車11~17は、掘削機3の後に続く後続台車11~17である。
後続台車11~17は、上記の走行装置100を備える。
この構成によれば、走行装置100により後続台車11~17を支持することで、後続台車11~17は、坑道が円弧路面であっても平坦路面であっても安定して走行することができる。加えて、後続台車11~17を支持するための軌条設備が不要となる。したがって、レールレスを実現することができる。
【0100】
本実施形態のトンネル掘削システム1は、掘削機3と、掘削機3の後に続く後続台車11~17と、上記の走行装置50と、を備える。走行装置50は、掘削機3及び後続台車11~17の各々に設けられる。
この構成によれば、走行装置50により掘削機3及び後続台車11~17の各々を支持することで、掘削機3及び後続台車11~17の各々は、坑道が円弧路面であっても平坦路面であっても安定して走行することができる。加えて、トンネル掘削システム1が坑道内を前後方向に移動する際に、リアサポート1029を廃止することができる。
【0101】
本実施形態では、走行装置50は、走行装置50の上下を軸にしたヨー方向に車輪51を揺動可能なヨーイング機構55と、走行装置50の前後を軸にしたロール方向に車輪51を揺動可能なローリング機構57と、走行装置50の左右を軸にしたピッチ方向に前記車輪51を揺動可能なピッチング機構70L,70Rと、を備える。
この構成によれば、ヨーイング機構55、ローリング機構57及びピッチング機構70L,70Rにより、走行装置50が移動する路面の形状によらず、走行装置50の姿勢を路面に沿わせることができる。このため、走行装置50を円滑に移動させることができる。
【0102】
本実施形態では、掘削機3に用いられる走行装置50の可変機構52は、角度Aを変更するための機構の一部にロッド53を備える。
この構成によれば、可変機構52がロッド53を備えた簡単な構成で、車輪51の角度Aを第1状態と第2状態とで変更することができる。例えば、互いに長さが異なる複数のロッド53を予め複数準備しておき、所望のタイミングでロッド53を交換することで、角度Aを容易に変更することができる。
【0103】
本実施形態では、可変機構52は、ロッド53として互いに長さの異なるロッド53A,53Bを切り替えることにより角度Aを変更する。
この構成によれば、所望のタイミングでロッド53A,53Bを交換することで、角度Aを容易に変更することができる。
【0104】
本実施形態では、走行装置50は、角度Aを変更するための機構としてロッド53を含む機構(第1リンク機構の一例)と、ロッド53の一端部が接続されるロアフレーム61及びサイドフレーム72L,72Rを含む機構(第2リンク機構の一例)と、を備える。可変機構52は、ロアフレーム61及びサイドフレーム72L,72Rの長さ(第2リンク機構の長さの一例)は固定とし、ロッド53として互いに長さの異なるロッド53A,53Bを切り替えることによりロアフレーム61上部の左右方向外端部とサイドフレーム72L,72Rの前後一対の凸部とに接続されるロッド53の長さ(第1リンク機構の長さの一例)を変更する。
この構成によれば、角度Aを変更するための機構の一部(第1リンク機構の一部)の長さを変更することで、角度Aを容易に変更することができる。
【0105】
本実施形態では、後続台車11~17に設けられる可変機構102は、角度Aを変更するための機構の一部にシリンダ103を備える。
この構成によれば、可変機構102がシリンダ103を備えた簡単な構成で、車輪101の角度Aを第1状態と第2状態とで変更することができる。例えば、所望のタイミングでシリンダ103を伸縮させることで、角度Aを容易に変更することができる。
【0106】
本実施形態では、可変機構102は、シリンダ103の長さを変更することにより角度Aを変更する。
この構成によれば、所望のタイミングでシリンダ103の長さを変更することで、角度Aを容易に変更することができる。
【0107】
本実施形態では、角度Aを変更するための機構としてロアブラケット111L,111R及びシリンダ103を含む機構(第1リンク機構の一例)と、昇降リンク123L,123Rを含む機構(第2リンク機構の一例)と、を備える。シリンダ103は、第1リンク機構を構成するロアブラケット111L,111Rの下部と昇降リンク123L,123Rの前後一対の凸部とをわたすように、第1リンク機構に設けられる。
この構成によれば、ロアブラケット111L,111Rの下部と昇降リンク123L,123Rの前後一対の凸部とをわたすように(第1リンク機構に)シリンダ103を設けることで、角度Aを容易に変更することができる。
【0108】
本実施形態では、カッタヘッド5は、走行装置50の取付け部49を有する。
この構成によれば、カッタヘッド5が有する取付け部49に走行装置50を取り付けることができる。このため、カッタヘッド5を介して走行装置50により前胴31を支持することで、前胴31において、移動のためのレールが不要になる。
【0109】
本実施形態の移動方法は、掘削物を掘削するためのカッタヘッド5が取り付けられる前胴31と、伸縮機構33を介して前胴31に接続される後胴32と、前胴に設けられるバーチカルサポート35(前胴自重支持機構の一例)と、後胴32に設けられるグリッパ36,37(後胴グリッパの一例)と、走行装置50と、を備えた掘削機3を移動させるための移動方法である。移動方法は、グリッパ36,37により後胴32をトンネルに固定する後胴固定ステップと、後胴固定ステップの後、バーチカルサポート35を接地させて前胴31の自重を支持する前胴自重支持ステップと、前胴自重支持ステップの後、カッタヘッド5により前胴31を前進させ掘削する前進掘削ステップと、前進掘削ステップの後、グリッパ36,37を解除して後胴32に設けられる走行装置50を接地する後胴走行装置接地ステップと、後胴走行装置接地ステップの後、伸縮機構33を縮めて後胴32を走行装置50とともに前進させる後胴前進ステップと、を含む。
この方法によれば、後胴走行装置接地ステップの後、伸縮機構33を縮めて後胴32を走行装置50とともに前進させることで、後胴32は、坑道が円弧路面であっても平坦路面であっても安定して走行することができる。加えて、掘削機3が坑道内を前後方向に移動する際に、リアサポート1029を廃止することができる。
【0110】
本実施形態の移動方法は、掘削物を掘削するためのカッタヘッド5が取り付けられる前胴31と、伸縮機構33を介して前胴31に接続される後胴32と、走行装置50と、を備える掘削機3を移動させるための移動方法である。移動方法は、カッタヘッド5によるトンネルの掘削が完了した後に、少なくともカッタヘッド5の前方のトンネル壁とカッタヘッド5との間に走行装置50が許容できる距離だけ掘削機3を後進させ、カッタヘッド5に走行装置50を取り付けた後、掘削機3を後退させる。
この方法によれば、カッタヘッド5に走行装置50を取り付けた後、掘削機3を後退させることで、掘削機3において、移動のためのレールが不要になる。
【0111】
本実施形態では、後続台車11~17は、複数設けられる。走行装置100は、複数の後続台車11~17の各々に設けられる。複数の走行装置100の各々は、走行装置100を自立して走行させるための駆動装置104を備える。
この構成によれば、駆動装置104により各走行装置100が支持する後続台車11~17を自立して走行させることができる。このため、複数の後続台車11~17の各々を連結するための連結部材が不要となる。
【0112】
本実施形態では、トンネル掘削システム1は、複数の駆動装置104の各々を制御する制御装置7を備える。
この構成によれば、各駆動装置104を制御することで、各々の後続台車11~17が互いに衝突することなく所定間隔を維持しながら走行する、いわゆる隊列走行(カルガモ走行)が可能となる。一方、弾性体を介して各々の後続台車11~17を互いに連結した場合は、各駆動装置104を制御することで、弾性体に過剰な負荷がかからないように後続台車11~17の速度を制御することができる。
また、坑道中心を検知しながら、図示しないヨーイングアクチュエータで操向を制御することができる。
なお、坑道中心に限らず、例えば組立場等、広いエリア内で設定した目標とすべき計画走路の中心を検知しながら走行することも可能となる。
【0113】
<第2実施形態>
第1実施形態では、掘削機3に用いられる走行装置50の可変機構52が角度Aを変更するための機構の一部にロッド53を備える例(
図6参照)を挙げて説明した。第2実施形態では、
図21に示すように、走行装置250の可変機構252は、角度Aを変更するための機構の一部にシリンダ253を備える点で第1実施形態と相違している。
【0114】
図21は、第2実施形態に係る走行装置250の斜視図である。
図21を併せて参照し、走行装置250は、車輪251と、可変機構252と、を備える。例えば、車輪251は、1台の走行装置250につき、左右4個ずつ合計8個設けられる。なお、車輪251の設置数は、上記に限らず、7個以下でもよいし、9個以上でもよい。例えば、走行装置250の車輪251の設置数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0115】
可変機構252は、正面視において、走行装置250が平坦路面を走行する第1状態と、走行装置250が円弧路面を走行する第2状態とで、車輪251の回転軸と直交する線と鉛直線とがなす角度Aを変更可能である。第1状態は、
図2に示す状態に相当する。第2状態は、
図3に示す状態に相当する。
【0116】
可変機構252は、角度Aを変更するための機構の一部にシリンダ253を備える。例えば、シリンダ253は、油圧シリンダである。シリンダ253は、左右一対設けられる。シリンダ253は、可変機構252の一部に対して着脱可能に取り付けられてもよい。可変機構252は、シリンダ253の長さを変更することにより角度Aを変更する。例えば、シリンダ253を伸縮させることで、可変機構252は、正面視において、第1状態と第2状態とで角度Aを変更可能である。
【0117】
走行装置250は、走行装置250の上下を軸にしたヨー方向に車輪251を揺動可能なヨーイング機構255を備える。ヨーイング機構255は、センタフレーム構造260の一部に設けられる。例えば、ヨーイング機構255は、左右一対のヨーイングシリンダ(不図示)を備えてもよい。例えば、ヨーイング機構255は、モータ等のアクチュエータ(不図示)による旋回であってもよい。
【0118】
走行装置250は、走行装置250の前後を軸にしたロール方向に車輪251を揺動可能なローリング機構257を備える。ローリング機構257は、センタフレーム構造260の一部に設けられる。
【0119】
センタフレーム構造260は、ロアブロック261、ミドルブロック262及びアッパブロック263を備える。
アッパブロック263の前部は、上面視でミドルブロック262の上部と重なる。アッパブロック263の前部は、ミドルブロック262の上部に連結されている。アッパブロック263は、ミドルブロック262との連結部位において上下方向に沿う軸線を中心として揺動可能(ヨー方向に揺動可能)とされている。
【0120】
図の例では、センタフレーム構造260の後部は、シャフト264を介して連結ブロック240の前部に連結されている。センタフレーム構造260は、連結ブロック240との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能(ロール方向に揺動可能)とされている。
【0121】
走行装置250は、走行装置250の左右を軸としたピッチ方向に車輪251を揺動可能なピッチング機構270L,270Rを備える。ピッチング機構270L,270Rは、左右一対設けられる。ピッチング機構270L,270Rは、ピッチングフレーム271L,271R及びサイドフレーム272L,272Rを備える。
【0122】
ピッチングフレーム271L,271Rは、前後方向に沿って延びている。ピッチングフレーム271L,271Rは、車輪251を回転可能に支持する。図の例では、ピッチングフレーム271L,271Rの前端部及び後端部の各々に、左右一対の車輪251が車軸を介して連結されている。各車輪251は、ピッチングフレーム271L,271Rとの連結部位において左右方向に沿う軸線を中心として回転可能とされている。
【0123】
ピッチングフレーム271L,271Rの前後方向中央部は、側面視でサイドフレーム272L,272Rの左右方向外側部と重なる。ピッチングフレーム271L,271Rの前後方向中央部は、サイドフレーム272L,272Rの左右方向外側部と連結されている。ピッチングフレーム271L,271Rは、サイドフレーム272L,272Rとの連結部位において左右方向に沿う軸線を中心として揺動可能(ピッチ方向に揺動可能)とされている。
【0124】
サイドフレーム272L,272Rの左右方向内端部は、前面視でミドルブロック262下部の左右方向外側部と重なる。サイドフレーム272L,272Rの左右方向内端部は、ミドルブロック262下部の左右方向外側部と連結されている。サイドフレーム272L,272Rは、ミドルブロック262との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。サイドフレーム272L,272Rは、可変機構252の一部を構成する。
【0125】
サイドフレーム272L,272Rにおいて左右方向外側部の前後から上方に突出する部分(以下「前後一対の凸部」ともいう。)は、前面視でシリンダ253の一端部(左右方向外端部)と重なる。サイドフレーム272L,272Rの前後一対の凸部は、シリンダ253の一端部と連結されている。サイドフレーム272L,272Rは、シリンダ253の一端部との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。
【0126】
ミドルブロック262上部の左右方向外側部は、前面視でシリンダ253の他端部(左右方向内端部)と重なる。ミドルブロック262上部の左右方向外側部は、シリンダ253の他端部と連結されている。ミドルブロック262は、シリンダ253の他端部との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。ミドルブロック262は、可変機構252の一部を構成する。
【0127】
走行装置250は、角度Aを変更するための機構としてミドルブロック262及びサイドフレーム272L,272Rを含む機構(第1リンク機構の一例)と、ピッチングフレーム271L,271Rを含む機構(第2リンク機構の一例)と、を備える。シリンダ253は、第1リンク機構を構成するミドルブロック262上部の左右方向外側部とサイドフレーム272L,272Rの前後一対の凸部とをわたすように、第1リンク機構に設けられる。
【0128】
走行装置250は、走行装置250の左右方向に車輪251を移動可能なスライダ機構265を備える。スライダ機構265は、連結ブロック240の後部に設けられる。スライダ機構265は、前面視で矩形状のスライダプレート266と、スライダプレート266の前面に設けられるスライダガイド267と、連結ブロック240の後部に設けられるスライダレール268と、を備える。
【0129】
スライダガイド267は、複数設けられる。例えば、スライダガイド267は、スライダプレート266の上部前面と下部前面とに左右2個ずつ合計4個(図の例では上部前面の2個を図示)設けられる。なお、スライダガイド267の設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0130】
スライダレール268は、複数設けられる。図の例では、スライダレール268は、連結部材268の上部後面と下部後面とに1個ずつ合計2個設けられる。なお、スライダレール268の設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0131】
例えば、走行装置250は、スライダプレート266を介して、掘削機3の前側下部へ取り付けられてもよい。なお、走行装置250は、スライダプレート266を介さずに、掘削機3の他の部分へ取り付けられてもよい。例えば、スライダプレート266は、走行装置250の後部に対して着脱可能に取り付けられてもよい。
【0132】
<作用効果>
第2実施形態では、可変機構252は、角度Aを変更するための機構の一部にシリンダ253を備える。
この構成によれば、可変機構252がシリンダ253を備えた簡単な構成で、車輪251の角度Aを第1状態と第2状態とで変更することができる。例えば、所望のタイミングでシリンダ253を伸縮させることで、角度Aを容易に変更することができる。
【0133】
<第3実施形態>
第1実施形態では、トンネル掘削システム1を構成する掘削機3及び後続台車11~17の各々が走行装置を備える例(
図1及び
図2参照)を挙げて説明した。第3実施形態では、
図22に示すように、掘削物を運搬する坑内運搬車320(運搬車両の一例)が走行装置350を備える点で第1実施形態と相違している。
【0134】
図22は、第3実施形態に係るトンネル掘削システム301の側面図である。
図22を併せて参照し、トンネル掘削システム301は、掘削機3に用いられる走行装置50と、後続台車11~17に用いられる走行装置100と、坑内運搬車320に用いられる走行装置350と、を備える。
【0135】
<坑内運搬車に用いられる走行装置>
図23は、第3実施形態に係る走行装置350の斜視図である。
図24は、第3実施形態に係る走行装置350が平坦路面を走行する状態を示す前面図である。
図25は、第3実施形態に係る走行装置350が円弧路面を走行する状態を示す前面図である。
図24及び
図25においては、坑内運搬車の本体を二点鎖線で示している。
【0136】
図23から
図25を併せて参照し、走行装置350は、車輪351と、前後一対の可変機構352A,352B(前側可変機構352A及び後側可変機構352B)と、キャリアフレーム358と、を備える。例えば、車輪351は、1台の走行装置350につき、左右4個ずつ(具体的には、前側左右2個ずつ及び後側左右2個ずつ)合計8個設けられる。なお、車輪351の設置数は、上記に限らず、7個以下でもよいし、9個以上でもよい。例えば、走行装置350の車輪351の設置数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0137】
走行装置350は、走行装置350を自立して走行させるための駆動装置354を備える。例えば、駆動装置354は、走行モータである。例えば、駆動装置354は、車輪351のホイールに内蔵されたインホイールモータである。例えば、駆動装置354は、複数の車輪351の各々に設けられる。例えば、走行装置350は、走行装置350を停止させるためのブレーキを備えてもよい。なお、駆動装置354は、複数の車輪351の各々に設けられなくてもよい。例えば、走行装置350は、駆動装置354は備えず、車軸だけを備えてもよい。例えば、駆動装置354の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0138】
制御装置7は、駆動装置354を制御する。例えば、走行装置350に各々の駆動装置354を制御する複数の駆動制御部がある場合は、制御装置7は、複数の駆動制御部を統括的に制御してもよい。
【0139】
図の例では、キャリアフレーム358は、上面視で前後方向に長手を持つ矩形枠状に形成されている。なお、キャリアフレーム358の形状は、上記に限らず、上面視で左右方向に長手を持つ矩形枠状であってもよい。例えば、キャリアフレーム358の形状は、上面視で直方体形状に形成されていてもよい。例えば、キャリアフレーム358の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0140】
可変機構352A,352Bは、正面視において、走行装置350が平坦路面を走行する第1状態と、走行装置350が円弧路面を走行する第2状態とで、車輪351の回転軸と直交する線と鉛直線とがなす角度Aを変更可能である。第1状態は、
図24に示す状態に相当する。第2状態は、
図25に示す状態に相当する。なお、
図24及び
図25においては、後側可変機構352Bの正面視(前面視)を示している。
【0141】
可変機構352A,352Bは、角度Aを変更するための機構の一部にシリンダ353を備える。例えば、シリンダ353は、油圧シリンダである。シリンダ353は、前側可変機構352A及び後側可変機構352Bに1つずつ設けられる。シリンダ353は、可変機構352A,352Bの一部に対して着脱可能に取り付けられてもよい。可変機構352A,352Bは、シリンダ353の長さを変更することにより角度Aを変更する。例えば、シリンダ353を伸縮させることで、可変機構352A,352Bは、正面視において、第1状態と第2状態とで角度Aを変更可能である。
【0142】
走行装置350は、走行装置350の前後を軸にしたロール方向に車輪351を揺動可能なローリング機構357を備える。ローリング機構357は、ベルクランク機構360の一部(例えば、前側可変機構352Aのベルクランク機構360の一部)に設けられる。
【0143】
ベルクランク機構360は、ベルクランク361、サブフレーム362、アッパリンク363及びロアリンク364を備える。
ベルクランク361は、前面視で左右方向に交差する方向に長手を持つ。
図24の例(第1状態)では、ベルクランク361は、前面視でベルクランク361の右端部が上方に位置しかつベルクランク361の左端部が下方に位置するように傾斜している。
図25の例(第2状態)では、ベルクランク361は、前面視で上下方向に沿うように配置されている。
【0144】
サブフレーム362は、前面視で左右方向に延びる左右延在部362aと、左右延在部362aの左右方向中央部から上方に延びる中央延在部362bと、中央延在部362bの上端部から左方かつ上方に延びた後に右方かつ上方に延びる上方延在部362cと、を備える。左右延在部362aは、前面視でキャリアフレーム358と重なる。
【0145】
ベルクランク361の長手方向中央部は、前面視でサブフレーム362の中央延在部362bの上部と重なる。ベルクランク361の長手方向中央部は、サブフレーム362の中央延在部362bの上部に連結されている。ベルクランク361は、サブフレーム362との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。
【0146】
アッパリンク363は、前面視で左右方向に交差する方向に長手を持つ。具体的に、アッパリンク363は、前面視でアッパリンク363の左右方向内端部が上方に位置しかつアッパリンク363の左右方向外端部(右端部)が下方に位置するように傾斜している。
【0147】
アッパリンク363の左右方向内端部は、前面視でベルクランク361の一端部(
図24の例では右端部、
図25の例では上端部)と重なる。アッパリンク363の左右方向内端部は、ベルクランク361の一端部に連結されている。アッパリンク363の左右方向内端部は、ベルクランク361との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。アッパリンク363とベルクランク361との連結部位は、前面視で、ベルクランク361とサブフレーム362との連結部位よりも上方に配置されている。
【0148】
ロアリンク364は、前面視で左右方向に交差する方向に長手を持つ。具体的に、ロアリンク364は、前面視でロアリンク364の左右方向外端部(左端部)が上方に位置しかつロアリンク364の左右方向内端部が下方に位置するように傾斜している。
【0149】
ロアリンク364の左右方向内端部は、前面視でベルクランク361の他端部(
図24の例では左端部、
図25の例では下端部)と重なる。ロアリンク364の左右方向内端部は、ベルクランク361の他端部に連結されている。ロアリンク364の左右方向内端部は、ベルクランク361との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。ロアリンク364とベルクランク361との連結部位は、前面視で、ベルクランク361とサブフレーム362との連結部位よりも下方に配置されている。
【0150】
図の例では、キャリアフレーム358の前部の左右方向中央部には、前後方向に延びるスイングシャフト359Aの後端部が連結されている。キャリアフレーム358の後部の左右方向中央部には、前後方向に延びる固定シャフト359Bの前端部が連結されている。
【0151】
図の例では、前側可変機構352Aにおけるサブフレーム362の下部中央部(左右延在部362aの左右方向中央部)は、スイングシャフト359Aを介してキャリアフレーム358の前部に連結されている。前側可変機構352Aは、キャリアフレーム358との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能(ロール方向に揺動可能)とされている。
【0152】
図の例では、後側可変機構352Bにおけるサブフレーム362の下部中央部(左右延在部362aの左右方向中央部)は、固定シャフト359Bを介してキャリアフレーム358の後部に固定されている。後側可変機構352Bは、キャリアフレーム358との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動不可能(ロール方向に揺動不可能)とされている。
【0153】
なお、キャリアフレーム358との連結部位における前側可変機構352A及び後側可変機構352Bの揺動態様は、上記に限定されない。例えば、前側可変機構352Aにおけるサブフレーム362の下部中央部(左右延在部362aの左右方向中央部)は、固定シャフト359Bを介してキャリアフレーム358の前部に固定されていてもよい。例えば、前側可変機構352Aは、キャリアフレーム358との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動不可能(ロール方向に揺動不可能)とされていてもよい。例えば、後側可変機構352Bにおけるサブフレーム362の下部中央部(左右延在部362aの左右方向中央部)は、スイングシャフト359Aを介してキャリアフレーム358の後部に連結されていてもよい。例えば、後側可変機構352Bは、キャリアフレーム358との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能(ロール方向に揺動可能)とされていてもよい。例えば、キャリアフレーム358との連結部位における前側可変機構352A及び後側可変機構352Bの揺動態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0154】
走行装置350は、車輪351を操向可能に支持するステアリング機構370L,370Rを備える。ステアリング機構370L,370Rは、左右一対設けられる。ステアリング機構370L,370Rは、アクスルサポート371L,371R、キャンバーアーム372L,372R及びステアリングギアボックス373L,373Rを備える。
【0155】
アクスルサポート371L,371Rは、第1状態では、上下方向に沿って延びている。アクスルサポート371L,371Rは、車輪351を回転可能に支持する。図の例では、アクスルサポート371L,371Rの下部に、左右一対の車輪351が車軸を介して連結されている。各車輪351は、アクスルサポート371L,371Rとの連結部位において左右方向に沿う軸線を中心として回転可能とされている。
【0156】
キャンバーアーム372L,372Rは、アクスルサポート371L,371Rの上側においてステアリングギアボックス373L,373Rが連結される上側アーム部372aと、アクスルサポート371L,371Rの前後方向内側においてサブフレーム362の下部の左右方向外側部が連結される下側アーム部372bと、上側アーム部372aと下側アーム部372bとの間において各リンク363,364の左右方向外端部が連結される中間アーム部372cと、を備える。
【0157】
キャンバーアーム372L,372Rの上側アーム部372aは、上面視でアクスルサポート371L,371Rの上部と重なる。キャンバーアーム372L,372Rの上側アーム部372aは、アクスルサポート371L,371Rの上部に連結されている。キャンバーアーム372L,372Rは、アクスルサポート371L,371Rとの連結部位において上下方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。ステアリングギアボックス373L,373Rは、アクスルサポート371L,371Rが揺動可能な軸線上に配置されている。
【0158】
キャンバーアーム372L,372Rの下側アーム部372bの下部は、前面視でサブフレーム362の下部の左右方向外側部(左右延在部362aの左右方向外側部)と重なる。キャンバーアーム372L,372Rの下側アーム部372bの下部は、サブフレーム362の下部の左右方向外側部と連結されている。キャンバーアーム372L,372Rの下側アーム部372bは、サブフレーム362との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。
【0159】
キャンバーアーム372L,372Rの中間アーム部372cは、前面視で各リンク363,364の左右方向外側部と重なる。キャンバーアーム372L,372Rの中間アーム部372cは、前面視で各リンク363,364の左右方向外側部と連結されている。キャンバーアーム372L,372Rの中間アーム部372cは、各リンク363,364との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。キャンバーアーム372L,372Rは、可変機構352A,352Bの一部を構成する。
【0160】
シリンダ353の一部(図の例では、シリンダ353のピストンを収容する筒部)は、前面視でサブフレーム362の上方延在部362cの上部と重なる。シリンダ353の一部は、サブフレーム362の上方延在部362cの上部と連結されている。シリンダ353は、サブフレーム362との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。
【0161】
ベルクランク361の一端部(
図24の例では右端部、
図25の例では上端部)は、前面視でシリンダ353の一端部(図の例では、シリンダ353のピストンの先端部)と重なる。ベルクランク361の一端部は、シリンダ353の一端部と連結されている。ベルクランク361は、シリンダ353との連結部位において前後方向に沿う軸線を中心として揺動可能とされている。ベルクランク361は、可変機構352A,352Bの一部を構成する。
【0162】
走行装置350は、角度Aを変更するための機構としてサブフレーム362及びシリンダ353を含む機構(第1リンク機構の一例)と、ベルクランク361及びキャンバーアーム372L,372Rを含む機構(第2リンク機構の一例)と、を備える。シリンダ353は、第1リンク機構を構成するサブフレーム362の上方延在部362cの上部とベルクランク361の一端部とをわたすように、第1リンク機構に設けられる。
【0163】
<作用効果>
第3実施形態の坑内運搬車320は、掘削物を運搬する運搬車両である。坑内運搬車320は、上記の走行装置350を備える。
この構成によれば、走行装置350により坑内運搬車320を支持することで、坑内運搬車320は、坑道が円弧路面であっても平坦路面であっても安定して走行することができる。加えて、坑内運搬車320を支持するための軌条設備が不要となる。
【0164】
第3実施形態のトンネル掘削システム301は、掘削機3と、掘削機3の後に続く後続台車11~17と、掘削物を運搬する坑内運搬車320と、を備え、上記の走行装置50,100,350は、掘削機3、後続台車11~17及び坑内運搬車320の各々に設けられる。
この構成によれば、走行装置50,100,350により掘削機3、後続台車11~17及び坑内運搬車320の各々を支持することで、掘削機3、後続台車11~17及び坑内運搬車320の各々は、坑道が円弧路面であっても平坦路面であっても安定して走行することができる。加えて、トンネル掘削システム301が坑道内を前後方向に移動する際に、リアサポート1029を廃止することができる。
【0165】
第3実施形態では、可変機構352A,352Bは、角度Aを変更するための機構の一部にシリンダ353を備える。
この構成によれば、可変機構352A,352Bがシリンダ353を備えた簡単な構成で、車輪351の角度Aを第1状態と第2状態とで変更することができる。例えば、所望のタイミングでシリンダ353を伸縮させることで、角度Aを容易に変更することができる。
【0166】
<第4実施形態>
第3実施形態では、トンネル掘削システム301を構成する掘削機3、後続台車11~17及び坑内運搬車320の各々が走行装置を備える例(
図22参照)を挙げて説明した。第4実施形態では、
図26に示すように、掘削物を運搬する運搬車両群410の各車両(運搬車両の一例)が走行装置350を備える点で第3実施形態と相違している。
【0167】
図26は、第4実施形態に係る運搬車両群410を示す斜視図である。
図26においては、円弧路面を二点鎖線で示している。
図の例では、運搬車両群410は、1番車両411から3番車両413までの計3台の車両により構成されている。
図26を併せて参照し、走行装置350は、運搬車両群410の各車両411,412,413、及び坑内運搬車420(運搬車両の一例)の各々に設けられる。
【0168】
なお、坑内運搬車420は、運搬車両群410を牽引可能な牽引車として機能してもよい。例えば、坑内運搬車420は、3番車両413に対して揺動自在に連結されていてもよい。例えば、運搬車両群410と坑内運搬車420との連結態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
例えば、上述した駆動装置354は、運搬車両群410の各車両411,412,413、及び坑内運搬車420の各々(各車両の車輪の各々)に設けられなくてもよい。例えば、運搬車両群410の各車両411,412,413は、駆動装置354は備えず、車軸だけを備えてもよい。例えば、牽引車として機能する坑内運搬車420のみに駆動力を持たせてもよい。例えば、駆動装置354の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0169】
(作用効果)
第4実施形態では、走行装置350は、運搬車両群410の各車両411,412,413、及び坑内運搬車420の各々に設けられる。
この構成によれば、走行装置350により運搬車両群410の各車両411,412,413、及び坑内運搬車420の各々を支持することで、運搬車両群410の各車両411,412,413、及び坑内運搬車420の各々は、坑道が円弧路面であっても平坦路面であっても安定して走行することができる。加えて、運搬車両群410の各車両411,412,413、及び坑内運搬車420の各々を支持するための軌条設備が不要となる。
【0170】
<その他の実施形態>
上述した実施形態では、トンネル掘削機は、掘削物を掘削するためのカッタヘッドが取り付けられる前胴と、伸縮機構を介して前胴に接続される後胴と、を備え、走行装置は、前胴及び後胴の各々に設けられる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、走行装置は、前胴又は後胴の何れか一方に設けられてもよい。例えば、走行装置の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0171】
上述した実施形態では、走行装置は、トンネル掘削機の後に続く後続台車に設けられる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、走行装置は、後続台車に設けられなくてもよい。例えば、後続台車に用いられる走行装置の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0172】
上述した実施形態では、走行装置は、走行装置の上下を軸にしたヨー方向に車輪を揺動可能なヨーイング機構と、走行装置の前後を軸にしたロール方向に車輪を揺動可能なローリング機構と、走行装置の左右を軸にしたピッチ方向に車輪を揺動可能なピッチング機構と、のうち少なくとも1つを備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、走行装置は、ヨーイング機構、ローリング機構及びピッチング機構の各々を備えなくてもよい。例えば、これら各機構がどのフレームに実装されていてもよい。例えば、走行装置におけるヨーイング機構、ローリング機構及びピッチング機構の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0173】
上述した実施形態では、可変機構は、角度を変更するための機構の一部にロッド又はシリンダを備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、可変機構は、角度を変更するための機構の一部にロッド又はシリンダを備えなくてもよい。例えば、可変機構は、角度を変更するための機構の一部にフレームを備えてもよい。例えば、可変機構におけるロッド及びシリンダの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0174】
上述した実施形態では、後続台車は、複数設けられ、走行装置は、複数の後続台車の各々に設けられ、複数の走行装置の各々は、走行装置を自立して走行させるための駆動装置を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、複数の走行装置の各々は、駆動装置を備えなくてもよい。例えば、複数の走行装置のうちの一部に、駆動装置を備えてもよい。例えば、走行装置における駆動装置の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0175】
上述した実施形態では、トンネル掘削システムは、複数の駆動装置の各々を制御する制御装置を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、トンネル掘削システムは、上記の制御装置を備えなくてもよい。例えば、制御装置は、複数の駆動装置のうちの一部を制御してもよい。例えば、制御装置が駆動装置を制御する態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0176】
上述した実施形態では、掘削機に用いられる走行装置と、後続台車に用いられる走行装置とは、互いに異なる構成を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、掘削機に用いられる走行装置と、後続台車に用いられる走行装置とは、互いに同じ構成であってもよい。例えば、掘削機に用いられる走行装置は、後続台車に設けられてもよい。例えば、後続台車に用いられる走行装置は、掘削機に設けられてもよい。例えば、走行装置の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0177】
上述した実施形態では、運搬車両群は、1番車両から7番車両までの計7台の車両により構成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、運搬車両群は、6台以下又は8台以上の車両により構成されていてもよい。例えば、運搬車両群を構成する車両の台数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0178】
上述した実施形態では、トンネル掘削システムの一例として、トンネルの坑壁にグリッパを固定することで前後方向に移動可能なトンネル掘削機を含む例(TBM)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、トンネル掘削システムは、トンネルの坑壁に順次設置していくセグメントから反力を得て推進するシールド機を含んでもよい。例えば、図示しないセンサによってトンネル中心位置や内径、カーブの曲率半径を予測し、図示しないコントローラによってシリンダ(角度を変更するための機構の一部)やヨーイングシリンダ(ヨーイング機構の一部)を制御してもよい。例えば、トンネル掘削システムの構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0179】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0180】
(付記1)
トンネル掘削機に用いられる走行装置であって、
車輪と、
正面視において、前記走行装置が平坦路面を走行する第1状態と、前記走行装置が円弧路面を走行する第2状態とで、前記車輪の回転軸と直交する線と鉛直線とがなす角度を変更可能な可変機構と、を備える、
走行装置。
【0181】
(付記2)
前記走行装置は、
前記走行装置の上下を軸にしたヨー方向に前記車輪を揺動可能なヨーイング機構と、
前記走行装置の前後を軸にしたロール方向に前記車輪を揺動可能なローリング機構と、
前記走行装置の左右を軸にしたピッチ方向に前記車輪を揺動可能なピッチング機構と、のうち少なくとも1つを備える、
付記1に記載の走行装置。
【0182】
(付記3)
前記可変機構は、前記角度を変更するための機構の一部にロッドを備える、
付記1に記載の走行装置。
【0183】
(付記4)
前記可変機構は、前記ロッドとして互いに長さの異なるロッドを切り替えることにより前記角度を変更する、
付記3に記載の走行装置。
【0184】
(付記5)
前記走行装置は、
前記角度を変更するための機構として前記ロッドを含む第1リンク機構と、
前記第1リンク機構の一端部が接続される第2リンク機構と、を備え、
前記可変機構は、前記第2リンク機構の長さは固定とし、前記ロッドとして互いに長さの異なるロッドを切り替えることにより前記第1リンク機構の長さを変更する、
付記4に記載の走行装置。
【0185】
(付記6)
前記可変機構は、前記角度を変更するための機構の一部にシリンダを備える、
付記1に記載の走行装置。
【0186】
(付記7)
前記可変機構は、前記シリンダの長さを変更することにより前記角度を変更する、
付記6に記載の走行装置。
【0187】
(付記8)
前記走行装置は、前記角度を変更するための機構として第1リンク機構及び第2リンク機構を備え、
前記シリンダは、前記第1リンク機構に設けられる、
付記7に記載の走行装置。
【0188】
(付記9)
掘削物を掘削するためのカッタヘッドが取り付けられる前胴と、
伸縮機構を介して前記前胴に接続される後胴と、
付記1に記載の走行装置と、を備え、
前記走行装置は、前記前胴及び前記後胴の各々に設けられる、
トンネル掘削機。
【0189】
(付記10)
前記カッタヘッドは、走行装置の取付け部を有する、
付記9に記載のトンネル掘削機。
【0190】
(付記11)
前記トンネル掘削機の後に続く後続台車であって、
付記1に記載の走行装置を備えた、
後続台車。
【0191】
(付記12)
掘削物を運搬する運搬車両であって、
付記1に記載の走行装置を備えた、
運搬車両。
【0192】
(付記13)
前記トンネル掘削機と、
前記トンネル掘削機の後に続く後続台車と、を備え、
付記1に記載の走行装置は、前記トンネル掘削機及び前記後続台車の各々に設けられる、
トンネル掘削システム。
【0193】
(付記14)
前記トンネル掘削機と、
前記トンネル掘削機の後に続く後続台車と、
掘削物を運搬する運搬車両と、を備え、
付記1に記載の走行装置は、前記トンネル掘削機、前記後続台車及び前記運搬車両の各々に設けられる、
トンネル掘削システム。
【0194】
(付記15)
掘削物を掘削するためのカッタヘッドが取り付けられる前胴と、伸縮機構を介して前記前胴に接続される後胴と、前記前胴に設けられる前胴自重支持機構と、前記後胴に設けられる後胴グリッパと、走行装置と、を備えたトンネル掘削機を移動させるための移動方法であって、
前記後胴グリッパにより前記後胴をトンネルに固定する後胴固定ステップと、
前記後胴固定ステップの後、前記前胴自重支持機構を接地させて前記前胴の自重を支持する前胴自重支持ステップと、
前記前胴自重支持ステップの後、前記カッタヘッドにより前記前胴を前進させ掘削する前進掘削ステップと、
前記前進掘削ステップの後、前記後胴グリッパを解除して前記後胴に設けられる走行装置を接地する後胴走行装置接地ステップと、
前記後胴走行装置接地ステップの後、前記伸縮機構を縮めて前記後胴を前記走行装置とともに前進させる後胴前進ステップと、を含む、
移動方法。
【0195】
(付記16)
掘削物を掘削するためのカッタヘッドが取り付けられる前胴と、伸縮機構を介して前記前胴に接続される後胴と、走行装置と、を備えたトンネル掘削機を移動させるための移動方法であって、
前記カッタヘッドによるトンネルの掘削が完了した後に、少なくとも前記カッタヘッドの前方のトンネル壁と前記カッタヘッドとの間に前記走行装置が許容できる距離だけ前記トンネル掘削機を後進させ、前記カッタヘッドに前記走行装置を取り付けた後、前記トンネル掘削機を後退させる、
移動方法。
【符号の説明】
【0196】
1,301…トンネル掘削システム、2…掘削運搬車両、3…掘削機、4…後続台車群、5…カッタヘッド、6…牽引ビーム、7…制御装置、11…1番車両(後続台車)、12…2番車両(後続台車)、13…3番車両(後続台車)、14…4番車両(後続台車)、15…5番車両(後続台車)、16…6番車両(後続台車)、17…7番車両(後続台車)、20…坑内運搬車(運搬車両)、31…前胴、32…後胴、33…伸縮機構、35…バーチカルサポート(前胴自重支持機構)、36…グリッパ(後胴グリッパ)、37…下グリッパ(後胴グリッパ)、49…取付け部、50,100,250,350…走行装置、51,101,251,351…車輪、52,102,252,352A,352B…可変機構、53…ロッド、55,105,255…ヨーイング機構、57,257,357…ローリング機構、70L,70R,120L,120R,270L,270R…ピッチング機構、103,253…シリンダ、104…駆動装置、320…坑内運搬車(運搬車両)、411…1番車両(運搬車両)、412…2番車両(運搬車両)、413…3番車両(運搬車両)、420…坑内運搬車(運搬車両)、A…角度