(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117686
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】地下シェルター付き建築物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20240822BHJP
A62B 1/20 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
E04H9/14 K
E04H9/14 Z
A62B1/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125674
(22)【出願日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2023023361
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023096426
(32)【優先日】2023-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516134372
【氏名又は名称】株式会社富士イノベーションセンター
(71)【出願人】
【識別番号】523057921
【氏名又は名称】有限会社井上長年設計事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】崎田 松男
(72)【発明者】
【氏名】井上 長年
【テーマコード(参考)】
2E139
2E184
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AA23
2E139AA25
2E139AA30
2E139AB22
2E139AC26
2E184AA10
2E184CC05
(57)【要約】
【課題】災害時に地下シェルターに緊急避難した後、地上へ容易に脱出することが可能な地下シェルター付き建築物の提供。
【解決手段】地下シェルター付き建築物1は、鉄筋コンクリート構造で地下に築造された地下シェルター室2と、鉄筋コンクリート構造で地下シェルター室2の上部に築造された地上部3と、地下シェルター室2と第1の耐圧扉6によって隔てられた鉄筋コンクリート構造の階段室4であり、地下シェルター室2と地上部3との間で昇降するための階段40を有する階段室4と、地下部分から地上部分まで吹き抜け構造で地下シェルター室2と第2の耐圧扉7によって隔てられた鉄筋コンクリート構造の脱出塔5であり、地上部分に脱出口56を有する脱出塔5とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造で地下に築造された地下シェルター室と、
鉄筋コンクリート構造で前記地下シェルター室の上部に築造された地上部と、
前記地下シェルター室と第1の耐圧扉によって隔てられた鉄筋コンクリート構造の階段室であり、前記地下シェルター室と地上部との間で昇降するための階段を有する階段室と、
地下部分から地上部分まで吹き抜け構造で前記地下シェルター室と第2の耐圧扉によって隔てられた鉄筋コンクリート構造の塔であり、地上部分に出入口を有する塔と
を備える地下シェルター付き建築物。
【請求項2】
前記塔内に、地下部分から地上部分に至る螺旋階段と、前記螺旋階段の外周部または内周部に設けられた滑り台とを有する請求項1記載の地下シェルター付き建築物。
【請求項3】
前記塔内に、前記地下シェルター室の給排気用パイプが内蔵されたパイプシャフトを有する請求項2記載の地下シェルター付き建築物。
【請求項4】
前記パイプシャフトは、前記塔内の角部に設けられていることを特徴とする請求項3記載の地下シェルター付き建築物。
【請求項5】
前記地下シェルター室の内側面は、銀イオン光触媒がコーティングされたものである請求項1から4のいずれか1項に記載の地下シェルター付き建築物。
【請求項6】
前記鉄筋コンクリート構造の少なくとも外側面は、ポリウレアがコーティングされたものである請求項1から4のいずれか1項に記載の地下シェルター付き建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下シェルターと建築物とが一体となった地下シェルター付き建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の国際情勢から、核攻撃や放射性物質の汚染から身を守る核シェルターへの関心が高まりつつある。しかしながら、日本での核シェルターの普及率は0.02%と非常に低い。また、例えば特許文献1に記載のように、津波や洪水などの水災害時に緊急避難するための水災害時避難用シェルターなども提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の水災害時避難用シェルターは、RC構造で地下に建築された床面および壁面を有する地下シェルター室と、地下シェルター室の床面から地上に上がるための階段と、階段の上部を囲うようにRC構造で地上に建築された壁面と天蓋とを有する階段室とを有し、階段室が、外部への出入口を有し、かつ階段室の壁面の一部が、中央部が突出した平面視V字状の波切り壁とされてなるものである。
【0004】
この従来の水災害時避難用シェルターでは、階段室の壁面の一部が、中央部が突出した平面視V字状の波切り壁とされており、津波が来た場合に地上にある家屋が流されてもRC構造の階段室を残して地下にある地下シェルター室は残るので、被害を逃れることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の水災害時避難用シェルターでは地下シェルター室から地上へ脱出する際に必ず階段室の階段を上がることになるが、階段室の外部への出入口が瓦礫によって塞がってしまった場合には脱出することが難しくなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明においては、災害時に地下シェルターに緊急避難した後、地上へ容易に脱出することが可能な地下シェルター付き建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の地下シェルター付き建築物は、鉄筋コンクリート構造で地下に築造された地下シェルター室と、鉄筋コンクリート構造で地下シェルター室の上部に築造された地上部と、地下シェルター室と第1の耐圧扉によって隔てられた鉄筋コンクリート構造の階段室であり、地下シェルター室と地上部との間で昇降するための階段を有する階段室と、地下部分から地上部分まで吹き抜け構造で地下シェルター室と第2の耐圧扉によって隔てられた鉄筋コンクリート構造の塔であり、地上部分に出入口を有する塔とを備えるものである。
【0009】
本発明の地下シェルター付き建築物によれば、災害時には建築物の地上部からそのまま階段室の階段を降り、第1の耐圧扉を開いて地下シェルター室へ入り、第1の耐圧扉を閉じることで緊急避難することができる。一方、地上へ脱出する際に階段室から地上へ出られない場合には、地下シェルター室から第2の耐圧扉を開いて塔へ入り、この地下から地上まで吹き抜け構造の塔を昇って地上の出入口から外へ出ることができる。
【0010】
また、本発明の地下シェルター付き建築物は、塔内に、地下部分から地上部分に至る螺旋階段と、螺旋階段の外周部または内周部に設けられた滑り台とを有する構成とすることができる。これにより、災害時には滑り台を使って地上部分から地下部分へ滑り降り、第2の耐圧扉を開いて地下シェルター室へ入り、第2の耐圧扉を閉じることで緊急避難することが可能となる。なお、螺旋階段は、避難時および脱出時にも使用することが可能である。
【0011】
また、この塔内には、地下シェルター室の給排気用パイプが内蔵されたパイプシャフトを有することが望ましい。これにより、津波や洪水等の水災害発生時には、地下部分から地上部分まで吹き抜け構造であって鉄筋コンクリート構造の塔内に有するパイプシャフトによって地下シェルター室の給排気用パイプが保護される。
【0012】
パイプシャフトは、塔内の角部に設けられていることが望ましい。これにより、塔内に螺旋階段および滑り台が設けられたことにより発生する角部の空きスペースを活用してパイプシャフトを形成することができる。
【0013】
ここで、地下シェルター室の内側面は、銀イオン光触媒がコーティングされたものであることが望ましい。この地下シェルター室の内側面にコーティングされた銀イオン光触媒により、地下シェルター室内のウイルス、カビ菌や悪臭などを分解して除去することができる。
【0014】
また、鉄筋コンクリート構造の少なくとも外側面は、ポリウレアがコーティングされたものであることが望ましい。ポリウレアは、イソシアネートとポリアミンの化学反応によって生成されるウレア結合を基本とする樹脂化合物であり、防水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、防食性に非常に高い能力を発揮し、その強度と柔軟性によって鉄筋コンクリート構造の強度を劇的に高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
(1)鉄筋コンクリート構造で地下に築造された地下シェルター室と、鉄筋コンクリート構造で地下シェルター室の上部に築造された地上部と、地下シェルター室と第1の耐圧扉によって隔てられた鉄筋コンクリート構造の階段室であり、地下シェルター室と地上部との間で昇降するための階段を有する階段室と、地下部分から地上部分まで吹き抜け構造で地下シェルター室と第2の耐圧扉によって隔てられた鉄筋コンクリート構造の塔であり、地上部分に出入口を有する塔とを備える地下シェルター付き建築物によれば、ミサイル攻撃、原発事故や台風等の災害時に建築物の地上部からそのまま地下シェルター室へ緊急避難することができるとともに、地上への脱出の際に階段室から地上へ出られない場合であっても地下シェルター室から第2の耐圧扉を開き、塔を通じて地上へ容易に脱出することが可能となる。
【0016】
(2)塔内に、地下部分から地上部分に至る螺旋階段と、螺旋階段の外周部に設けられた滑り台とを有する構成により、災害時には滑り台を使って地上部分から地下部分へ滑り降り、第2の耐圧扉を開いて地下シェルター室へ入り、第2の耐圧扉を閉じることで緊急避難することができるので、足腰の不自由な高齢者や怪我人等であっても素早く避難することが可能となる。
【0017】
(3)塔内に地下シェルター室の給排気用パイプが内蔵されたパイプシャフトを有することにより、津波や洪水等の水災害発生時であっても地下シェルター室の給排気を行うことが可能となる。
【0018】
(4)パイプシャフトが塔内の角部に設けられていることにより、塔内に螺旋階段および滑り台が設けられたことにより発生する角部の空きスペースを有効活用することが可能となる。
【0019】
(5)地下シェルター室の内側面に銀イオン光触媒がコーティングされていることによって、地下シェルター室内のウイルス、カビ菌や悪臭などを分解して除去することができ、抗ウイルス効果、抗菌効果、防カビ効果や消臭効果などを期待できる。
【0020】
(6)鉄筋コンクリート構造の少なくとも外側面にポリウレアがコーティングされていることにより、鉄筋コンクリート構造の強度を劇的に高めることができるので、コンクリートのかぶり厚さを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態における地下シェルター付き建築物の概略構成図である。
【
図2】地下シェルター付き建築物の別の例を示す斜視図である。
【
図4】螺旋階段および滑り台の例を示す側面図である。
【
図5】本発明の地下シェルター付き建築物の別の実施形態を示す地下1階の平面図である。
【
図6】
図5の地下シェルター付き建築物の地上1階の一部を示す平面図である。
【
図7】
図5の地下シェルター付き建築物の地上2階の一部を示す平面図である。
【
図8】
図5の地下シェルター付き建築物のハト小屋廻りの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の実施の形態における地下シェルター付き建築物の概略構成図である。
図1において、本発明の実施の形態における地下シェルター付き建築物1は、地下に築造された地下シェルター室2と、地下シェルター室2の上部に築造された地上部3と、地下シェルター室2と地上部3との間で昇降するための階段40を有する階段室4と、地下シェルター室2から地上へ脱出するための脱出塔5とを備える。
【0023】
地下シェルター室2、地上部3、階段室4および脱出塔5は、鉄筋コンクリート(RC)構造で一体的に形成される。また、地下シェルター室2、地上部3、階段室4および脱出塔5の壁、床および天井の内側および外側の面にはポリウレアがコーティングされている。ポリウレアは、イソシアネートとポリアミンの化学反応によって生成されるウレア結合を基本とする樹脂化合物である。
【0024】
地下シェルター室2は、床20および壁21,22,23,24を有する。地下シェルター室2と階段室4とを隔てる壁21には、階段室4から地下シェルター室2へ入退室するための第1の耐圧扉6が設けられている。第1の耐圧扉6は爆発の風圧や衝撃等にも耐えうる堅牢なものである。地下シェルター室2は、第1の耐圧扉6を閉めることによって階段室4と完全に隔てられる。
【0025】
地上部3は、地下シェルター室2の上部に築造される。地上部3は、床30および壁31,32,33,34,35,36を有する。地上部3の床30は地下シェルター室2の天井を兼ねている。床30には、階段室4の階段40へアクセスするための開口部37が形成されている。
【0026】
脱出塔5は、地下シェルター室2および地上部3の側部に築造される。脱出塔5は、床50、壁51,52,53,54および天井55によって囲まれている。なお、
図1において、脱出塔5は地下部分と地上部分とを分けて示しているが、地下部分から地上部分まで一体化された吹き抜け構造の塔となっている。脱出塔5の地上部分には出入口としての脱出口56が設けられている。なお、脱出口56は室内側へ設けることも可能である。また、脱出塔5の壁54の内面には、地下部分から地上部分の脱出口56まで昇るためのタラップ57が設けられている。
【0027】
なお、本実施形態においては、壁51の地上部分は地上部3の壁35を兼ねており、壁52の地上部分は地上部3の壁34を兼ねている。壁52の地下部分は地下シェルター室2の壁24を兼ねている。
【0028】
また、防爆、耐震、耐水仕様とするため、各壁21~24,31~36,51~54の厚さは40cmとしている。床20,30は耐圧スラブであり、厚さ(図示省略。)は40~70cmとしている。なお、本実施形態においては、地下シェルター室2、地上部3、階段室4および脱出塔5の内側および外側の面(少なくとも外側面)、すなわち、床20,30,50や壁21~24,31~36,51~54等にポリウレアがコーティングされており、その強度が劇的に高められているため、これらのコンクリート構造のコンクリートのかぶり厚さを小さくすることが可能である。
【0029】
地下シェルター室2と脱出塔5とを隔てる壁24には、地下シェルター室2から脱出塔5へ入退室するための第2の耐圧扉7が設けられている。第2の耐圧扉7は爆発の風圧や衝撃等にも耐えうる堅牢なものである。地下シェルター室2は、第2の耐圧扉7を閉めることによって脱出塔5と完全に隔てられる。
【0030】
地下シェルター室2の内側面には、銀イオン光触媒がコーティングされている。地下シェルター室2の内側面にポリウレアがコーティングされている場合には、このポリウレアの上から銀イオン光触媒がコーティングされている。この地下シェルター室2の内側面にコーティングされた銀イオン光触媒により、地下シェルター室2内のウイルス、大腸菌、サルモネラ菌やカビ菌などを分解して除去することができる。
【0031】
地下シェルター室2には、化学兵器(サリン、VXガス等)、生物兵器(炭そ菌等)、放射性物質や核等を99.995%遮断する特殊フィルター付き空気清浄機を備えている。この空気清浄機では、室内に空気を送り込むことで室内の気圧を高め、陽圧状態に保つので、空気は室内から室外へと一方的にのみ流れ、室外からの空気の侵入を防ぐ。また、第1、第2の耐圧扉6,7は、金属とコンクリートとを組み合わせたものである。第1、第2の耐圧扉6,7は、上記特殊フィルターの機能を発揮させるため、陽圧対応となっており、有毒ガスおよび水の浸入を防ぐ。
【0032】
地下シェルター室2には、湧水、汚水、浸水ピット(窯場)を設けている。また、各ピット(窯場)に対してポンプアップ(排水)処理システムを設けており、湧水、汚水、浸水時に対応可能としている。また、地下シェルター室2には、停電時の対応のため、バッテリーまたはポータブル電源を備えている。前記特殊フィルター付き空気清浄機は手動運転も可能となっている。
【0033】
また、地下シェルター室2には、備蓄棚が設けられており、有事の場合に2週間の避難生活を余儀なくされるため、食料、水、生活必需品の備蓄が可能となっている。また、地下シェルター室2には、平時には一般洋便器として使用可能なトイレを備えている。このトイレは有事の際には、ビニール袋や凝固剤を使用して簡易トイレとして使用可能である。ビニール袋や凝固剤は備蓄棚に備蓄しておくことができる。
【0034】
上記本実施形態における地下シェルター付き建築物1によれば、ミサイル攻撃、原発事故や台風等の災害時には地上部3からそのまま階段室4の階段40を降り、第1の耐圧扉6を開いて地下シェルター室2へ入り、第1の耐圧扉6を閉じることで緊急避難することができる。この地下シェルター室2には、特殊フィルター付き空気清浄機を備えているため、化学兵器(サリン、VXガス等)、生物兵器(炭そ菌等)、放射性物質や核等が99.995%遮断され、安全である。
【0035】
また、地下シェルター室2内には、備蓄棚への食料、水、生活必需品の備蓄が可能となっており、トイレも備えられているため、2週間の避難生活を余儀なくされても地上へ出ることなく、生活することが可能である。
【0036】
また、この地下シェルター室2の内側面には、銀イオン光触媒がコーティングされており、この銀イオン光触媒により、地下シェルター室2内のウイルス、カビ菌や悪臭などを分解して除去することができ、抗ウイルス効果、抗菌効果、防カビ効果や消臭効果が維持される。
【0037】
一方、地下シェルター室2から地上へ脱出する際には、第1の耐圧扉6を開いて階段室4の階段40を昇って地上部3へ出る。なお、地上へ脱出する際に階段室4から地上へ出られない場合には、地下シェルター室2から第2の耐圧扉7を開いて脱出塔5へ入る。脱出塔5は地下から地上まで一体化されたコンクリートの吹き抜け構造となっており、この脱出塔5のタラップ57を昇って地上の脱出口56から外へ出ることができる。
【0038】
なお、上記実施形態においては、階段室4の階段40を降りて地下シェルター室2へ入る例について説明したが、脱出口56から脱出塔5へ入り、タラップ57を降りて地下シェルター室2へ入ることも可能である。
【0039】
また、脱出塔5に代えて、
図2~
図4に示すように螺旋階段80および滑り台81を有する塔8を備えた構成とすることも可能である。
図2は地下シェルター付き建築物の別の例を示す斜視図、
図3は平面図、
図4は螺旋階段80および滑り台81の例を示す側面図である。
【0040】
塔8は、脱出塔5と同様に、地下部分から地上部分まで一体化された吹き抜け構造となっている。螺旋階段80は、塔8内に立設された支柱82を中心とする螺旋状の階段である。螺旋階段80は地下部分から地上部分に至る。滑り台81は螺旋階段80の外周部に、同じく螺旋状に設けられている。
【0041】
これにより、災害時には滑り台81を使って地上部分から地下部分へ滑り降り、第2の耐圧扉7を開いて地下シェルター室2へ入り、第2の耐圧扉7を閉じることで緊急避難することが可能である。したがって、緊急避難時に階段40や螺旋階段80等を使って素早く避難することが難しい足腰の不自由な高齢者や怪我人等であっても、この滑り台81を使って素早く避難することができる。なお、螺旋階段80は、避難時および脱出時にも使用することが可能である。
【0042】
次に、本発明の地下シェルター付き建築物の別の実施形態について説明する。
図5は本発明の地下シェルター付き建築物の別の実施形態を示す地下1階の平面図、
図6は地上1階の一部を示す平面図、
図7は地上2階の一部を示す平面図、
図8はハト小屋廻りの断面図である。なお、
図5~
図8において、前述と共通の構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
図5~
図8に示す地下シェルター付き建築物10においては、地下部分から地上部分まで吹き抜け構造であって鉄筋コンクリート構造の塔からなる避難室11と、前述の地下シェルター室2と同様の地下シェルター室2A,2Bを備える。地下シェルター室2A,2Bには、簡易トイレ90、備蓄棚91や蓄電池92等が設けられている。
【0044】
図5に示すように、第1の耐圧扉6は、地下シェルター室2Aと階段室4とを隔てる壁21に設けられている。第2の耐圧扉7は、地下シェルター室2Bと避難室11とを隔てる壁25に設けられている。また、地下シェルター室2Aと地下シェルター室2Bとを隔てる壁26にも耐圧扉9Aが設けられている。
【0045】
避難室11内には、螺旋階段80Aと、螺旋階段80Aの内周部に設けられた滑り台81Aとが設けられている。避難室11は平面視矩形状である。この平面視矩形状の避難室11内に螺旋階段80Aが設けられることで、避難室11内の四隅の角部にはそれぞれ空きスペースが形成される。
【0046】
そこで、本実施形態においては、この避難室11内の四隅の角部の1つの空きスペースにパイプシャフト12を設けている。パイプシャフト12内には、地下シェルター室2A,2Bの給排気用パイプとしての給気配管13Aおよび排気配管13Bが設けられている。
【0047】
また、避難室11内には脱出階段14が設けられている。避難室11内の四隅の角部の別の1つの空きスペースには、この脱出階段14の登り口14Aが設けられている。また別の1つの空きスペースには、湧水ピット15が設けられている。
【0048】
図6に示すように、避難室11の地上部分である1階部分には出入口としての脱出口16が設けられている。脱出階段14は、脱出口16へ通ずる。脱出口16には耐圧扉9Bが設けられている。また、脱出口16の外側には鉄筋コンクリート構造の前室60が設けられている。前室60と屋外との出入口には止水ドア61が設けられている。
【0049】
また、地下シェルター付き建築物10の1階部分にも避難室11の出入口17Aが設けられている。出入口17Aには耐圧扉9Cが設けられている。避難室11内の出入口17Aの正面には踊場18Aが設けられている。災害時には、この1階部分の踊場18Aから螺旋階段80Aまたは滑り台81Aを使って地下部分へ降り、地下シェルター室2A,2Bへ入ることができる。
【0050】
図7に示すように、地下シェルター付き建築物10の2階部分にも避難室11の出入口17Bが設けられている。出入口17Bには耐圧扉9Dが設けられている。避難室11内の出入口17Bの正面には踊場18Bが設けられている。災害時には、この2階部分の踊場18Bからも螺旋階段80Aまたは滑り台81Aを使って地下部分へ降り、地下シェルター室2A,2Bへ入ることができる。
【0051】
図8に示すように、地下シェルター付き建築物10の屋上には、パイプシャフト12内を通る給気配管13Aおよび排気配管13Bの給排気口を覆う鉄筋コンクリート構造のハト小屋19が設けられている。このハト小屋19により給気配管13Aおよび排気配管13Bの給排気口は保護される。
【0052】
上記構成の地下シェルター付き建築物10では、地下部分から地上部分まで吹き抜け構造であって鉄筋コンクリート構造の避難室11内に、地下シェルター室2A,2Bの給気配管13Aおよび排気配管13Bが内蔵されたパイプシャフト12を有するので、津波や洪水等の水災害発生時であってもハト小屋19の高さまで地下シェルター室2A,2Bの給排気を行うことが可能である。
【0053】
また、地下シェルター付き建築物10は鉄筋コンクリート構造であり、ハト小屋19の高さまでは耐圧扉6、9B,9C,9Dによって浸水を防ぐので、蓄電池92の水没の危険性がない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ミサイル攻撃、原発事故や台風等の災害時に建築物の地上部からそのまま地下シェルター室へ容易に緊急避難することが可能な地下シェルター付き建築物として有用であり、特に、災害時に地下シェルターに緊急避難した後、地上へ容易に脱出することが可能な地下シェルター付き建築物として好適である。
【符号の説明】
【0055】
1,10 建築物
2,2A,2B 地下シェルター室
3 地上部
4 階段室
5 脱出塔
6,7,9A,9B,9C,9D 耐圧扉
8 塔
11 避難室
12 パイプシャフト
13A 給気配管
13B 排気配管
14 脱出階段
15 湧水ピット
16 脱出口
17A,17B 出入口
18A,18B 踊場
19 ハト小屋
37 開口部
40 階段
56 脱出口
57 タラップ
60 前室
61 止水ドア
80,80A 螺旋階段
81,81A 滑り台
90 簡易トイレ
91 備蓄棚
92 蓄電池