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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117694
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16D 43/22 20060101AFI20240822BHJP
   F16D 43/08 20060101ALI20240822BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20240822BHJP
   F16H 3/091 20060101ALI20240822BHJP
   B62M 11/06 20060101ALI20240822BHJP
   F16D 41/00 20060101ALI20240822BHJP
   B62M 11/16 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
F16D43/22
F16D43/08
F16D13/52 C
F16H3/091
B62M11/06 C
F16D41/00
B62M11/16 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023158223
(22)【出願日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2023023244
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】美濃羽 未紗樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮一
(72)【発明者】
【氏名】岸谷 康平
【テーマコード(参考)】
3J056
3J068
3J528
【Fターム(参考)】
3J056AA60
3J056AA63
3J056CC33
3J056GA05
3J056GA12
3J068BA13
3J068BB06
3J068CA05
3J528EB63
3J528EB74
3J528FC32
3J528FC42
3J528GA02
3J528HA13
3J528JG01
3J528JL03
(57)【要約】
【課題】径方向における大型化を抑制する。
【解決手段】遠心クラッチ装置は、電気モータが出力したトルクを遮断可能に伝達する。制御部は、開度センサが検出したスロットル開度及び車速センサが検出した車速に基づき、電気モータを制御する。遠心クラッチ装置のカム機構は、第1回転部材とプレッシャプレートとが相対回転したときにプレッシャプレートをクラッチ部に向けて移動させる。制御部は、開度センサが検出したスロットル開度が第1閾値以上であり、且つ車速センサが検出した車速が第2閾値以下であると判断したとき、電気モータを所定時間停止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータと、
前記電気モータが出力するトルクによって回転するように構成されるシャフトと、
前記シャフトに取り付けられ、前記電気モータが出力したトルクを遮断可能に伝達するように構成される遠心クラッチ装置と、
スロットル開度を検出するように構成される開度センサと、
車速を検出するように構成される車速センサと、
前記開度センサが検出したスロットル開度及び前記車速センサが検出した車速に基づき、前記電気モータを制御するように構成される制御部と、
を備え、
前記遠心クラッチ装置は、
前記シャフトと一体的に回転するように配置される第1回転部材と、
前記第1回転部材と相対回転可能に配置される第2回転部材と、
前記第1回転部材と前記第2回転部材との間で遮断可能にトルク伝達するように構成されるクラッチ部と、
軸方向移動可能に配置されるプレッシャプレートと、
前記第1回転部材と一体的に回転するように構成され、遠心力を受けて前記プレッシャプレートを介して前記クラッチ部を押圧するように構成される遠心子と、
第1回転部材に形成される第1アシストカム面、及び前記第1アシストカム面と対向するように前記プレッシャプレートに形成される第2アシストカム面、を有し、前記第1回転部材と前記プレッシャプレートとが相対回転したときに前記プレッシャプレートを前記クラッチ部に向けて移動させるように構成されるカム機構と、
を有し、
前記制御部は、前記開度センサが検出したスロットル開度が第1閾値以上であり、且つ前記車速センサが検出した車速が第2閾値以下であると判断したとき、前記電気モータを所定時間停止させるように構成される、
駆動ユニット。
【請求項2】
第1ギア列及び第2ギア列をさらに備え、
前記シャフトは、
電気モータ駆動源からのトルクが入力されるように構成される第1シャフトと、
第2シャフトと、
を含み、
前記第1ギア列は、前記第1シャフトから前記第2シャフトへとトルクを伝達するように構成され、
前記第2ギア列は、前記遠心クラッチ装置を有し、前記第1シャフトから前記第2シャフトへ前記遠心クラッチ装置を介してトルクを伝達するように構成され、前記第1ギア列よりも変速比が小さい、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記第1ギア列は、
前記第1シャフトに取り付けられる第1ギアと、
前記第1ギアと噛み合い、前記第2シャフトに取り付けられる第2ギアと、
前記第1シャフトから前記第2シャフトへトルクを伝達するように構成される第1ワンウェイクラッチと、
を有し、
前記第2ギア列は、
前記第1シャフトに取り付けられる第3ギアと、
前記第3ギアと噛み合い、前記第2シャフトに取り付けられる第4ギアと、
前記第2シャフトから前記第1シャフトへトルクを伝達するように構成される第2ワンウェイクラッチと、
を有する、
請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記第1ギアは、前記第1シャフトと一体的に回転するように構成され、
前記第2ギアは、前記第1ワンウェイクラッチを介して前記第2シャフトに取り付けられ、
前記第1ワンウェイクラッチは、前記第2ギアから前記第2シャフトへトルクを伝達するように構成される、
請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記第3ギアは、前記第1シャフトと一体的に回転するように構成され、
前記第4ギアは、前記第2回転部材と一体的に回転するように構成され、
前記第2ワンウェイクラッチは、前記第2シャフトから前記第4ギアへトルクを伝達するように構成される、
請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記第2ワンウェイクラッチは、前記第2シャフトと一体的に回転するように構成される内輪と、前記内輪に対して径方向外側に配置される外輪と、を有し、
前記第4ギアは、前記外輪と一つの部材によって一体的に形成される、
請求項5に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記第1ギア列は、
前記第1シャフトに取り付けられる第1ギアと、
前記第1ギアと噛み合い、前記第2シャフトに取り付けられる第2ギアと、
前記第1シャフトから前記第2シャフトへトルクを伝達するように構成される第1ワンウェイクラッチと、
を有し、
前記第2ギア列は、
前記第1シャフトに取り付けられる第3ギアと、
前記第3ギアと噛み合い、トルク伝達不能に前記第2シャフトに取り付けられる第4ギアと、
を有する、
請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記第2ギア列は、前記第4ギアと前記第2シャフトとの間に配置されるベアリングを有し、
前記第4ギアは、前記ベアリングのみを介して前記第2シャフトに取り付けられる、
請求項7に記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記第1ギアは、前記第1シャフトと一体的に回転するように構成され、
前記第2ギアは、前記第1ワンウェイクラッチを介して前記第2シャフトに取り付けられ、
前記第1ワンウェイクラッチは、前記第2ギアから前記第2シャフトへトルクを伝達するように構成される、
請求項7に記載の動力伝達装置。
【請求項10】
前記第3ギアは、前記第1シャフトと一体的に回転するように構成され、
前記第4ギアは、前記第2回転部材と一体的に回転するように構成される、
請求項7に記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記遠心クラッチ装置は、減速時において前記プレッシャプレートを前記クラッチ部に向けて軸方向に移動させるように構成される回生用カム機構を有する、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項12】
前記カム機構のアシスト係数は、1以上である、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気モータを駆動源とする自動二輪車が提案されている。このような電動式の自動二輪車は、電気モータの回転速度を減速することでトルクを増大させて駆動輪へと伝達している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-171404公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気モータを大型化することなく、発進時のトルクをより大きくしたり高速走行を可能としたりするために、変速機構を電気モータに組み合わせることが好ましい。しかしながら、変速機構を組み合わせることで径方向の寸法が大きくなるという問題が生じ得る。そこで、本発明の課題は、径方向における大型化を抑制することができる駆動ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に係る駆動ユニットは、電気モータ、シャフト、遠心クラッチ、開度センサ、車速センサ、及び制御部を備える。シャフトは、電気モータが出力するトルクによって回転するように構成される。遠心クラッチ装置は、シャフトに取り付けられる。遠心クラッチ装置は、電気モータが出力したトルクを遮断可能に伝達するように構成される。開度センサは、スロットル開度を検出するように構成される。車速センサは、車速を検出するように構成される。制御部は、開度センサが検出したスロットル開度及び車速センサが検出した車速に基づき、電気モータを制御するように構成される。遠心クラッチ装置は、第1回転部材、第2回転部材、クラッチ部、プレッシャプレート、遠心子、及びカム機構を有する。第1回転部材は、シャフトと一体的に回転するように配置される。第2回転部材は、第1回転部材と相対回転可能に配置される。クラッチ部は、第1回転部材と第2回転部材との間で遮断可能にトルク伝達するように構成される。プレッシャプレートは、軸方向移動可能に配置される。遠心子は、第1回転部材と一体的に回転するように構成される。遠心子は、遠心力を受けてプレッシャプレートを介してクラッチ部を押圧するように構成される。カム機構は、第1アシストカム面及び第2アシストカム面を有する。第1アシストカム面は、第1回転部材に形成される。第2アシストカム面は、第1アシストカム面と対向するようにプレッシャプレートに形成される。カム機構は、第1回転部材とプレッシャプレートとが相対回転したときにプレッシャプレートをクラッチ部に向けて移動させるように構成される。制御部は、開度センサが検出したスロットル開度が第1閾値以上であり、且つ車速センサが検出した車速が第2閾値以下であると判断したとき、電気モータを所定時間停止させるように構成される。
【0006】
この構成によれば、遠心クラッチ装置のカム機構によるプレッシャプレートの押圧力を上げることができるため、遠心クラッチ装置を大型化することなくトルク容量を確保することができる。すなわち、駆動ユニットの径方向の大型化を抑制することができる。詳細に説明すると、遠心クラッチ装置のカム機構によるプレッシャプレートの押圧力を増加させると、第1回転部材の回転数が低下して遠心子によるプレッシャプレートへの押圧力がなくなっても、クラッチ部がクラッチオフ状態とならない恐れがある。これに対して、上記構成では、スロットル開度が第1閾値以上であり且つ車速が第2閾値以下の場合、制御部によって電気モータを所定時間停止させる。このため、カム機構のプレッシャプレートへの押圧力がなくなるため、プレッシャプレートをクラッチ部から離れる方向に移動させて、クラッチオフ状態とすることができる。このように、上記構成では、遠心クラッチ装置のカム機構によるプレッシャプレートの押圧力を上げることができる。
【0007】
第2態様に係る駆動ユニットは、第1態様に係る駆動ユニットにおいて、第1ギア列及び第2ギア列をさらに備える。シャフトは、第1シャフトと第2シャフトとを含む。第1シャフトは、電気モータ駆動源からのトルクが入力されるように構成される。第1ギア列は、第1シャフトから第2シャフトへとトルクを伝達するように構成される。第2ギア列は、遠心クラッチ装置を有する。第2ギア列は、第1シャフトから第2シャフトへ遠心クラッチ装置を介してトルクを伝達するように構成される。第2ギア列は、第1ギア列よりも変速比が小さい。
【0008】
第3態様に係る駆動ユニットは、第2態様に係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。第1ギア列は、第1ギア、第2ギア、及び第1ワンウェイクラッチを有する。第1ギアは、第1シャフトに取り付けられる。第2ギアは、第1ギアと噛み合う。第2ギアは、第2シャフトに取り付けられる。第1ワンウェイクラッチは、第1シャフトから第2シャフトへトルクを伝達するように構成される。第2ギア列は、第3ギア、第4ギア、及び第2ワンウェイクラッチを有する。第3ギアは、第1シャフトに取り付けられる。第4ギアは、第3ギアと噛み合う。第4ギアは、第2シャフトに取り付けられる。第2ワンウェイクラッチは、第2シャフトから第1シャフトへトルクを伝達するように構成される。
【0009】
第4態様に係る駆動ユニットは、第3態様に係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。第1ギアは、第1シャフトと一体的に回転するように構成される。第2ギアは、第1ワンウェイクラッチを介して第2シャフトに取り付けられる。第1ワンウェイクラッチは、第2ギアから第2シャフトへトルクを伝達するように構成される。
【0010】
第5態様に係る駆動ユニットは、第3又は第4態様に係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。第3ギアは、第1シャフトと一体的に回転するように構成される。第4ギアは、第2回転部材と一体的に回転するように構成される。第2ワンウェイクラッチは、第2シャフトから第4ギアへトルクを伝達するように構成される。
【0011】
第6態様に係る駆動ユニットは、第5態様に係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。第2ワンウェイクラッチは、内輪及び外輪を有する。内輪は、第2シャフトと一体的に回転するように構成される。外輪は、内輪に対して径方向外側に配置される。第4ギアは、外輪と一つの部材によって一体的に形成される。
【0012】
第7態様に係る動力伝達装置は、第2態様に係る動力伝達装置において、次のように構成される。第1ギア列は、第1ギア、第2ギア、及び第1ワンウェイクラッチを有する。第1ギアは、第1シャフトに取り付けられる。第2ギアは、第1ギアと噛み合す。第2ギアは、第2シャフトに取り付けられる。第1ワンウェイクラッチは、第1シャフトから第2シャフトへトルクを伝達するように構成される。第2ギア列は、第3ギア及び第4ギアを有する。第3ギアは、第1シャフトに取り付けられる。第4ギアは、第3ギアと噛み合う。第4ギアは、トルク伝達不能に第2シャフトに取り付けられる。
【0013】
第8態様に係る動力伝達装置は、第7態様に係る動力伝達装置において、次のように構成される。第2ギア列は、第4ギアと第2シャフトとの間に配置されるベアリングを有する。第4ギアは、ベアリングのみを介して第2シャフトに取り付けられる。
【0014】
第9態様に係る動力伝達装置は、第7又は第8態様に係る動力伝達装置において、次のように構成される。第1ギアは、第1シャフトと一体的に回転するように構成される。第2ギアは、第1ワンウェイクラッチを介して第2シャフトに取り付けられる。第1ワンウェイクラッチは、第2ギアから第2シャフトへトルクを伝達するように構成される。
【0015】
第10態様に係る動力伝達装置は、第7から第9態様のいずれかに係る動力伝達装置において、次のように構成される。第3ギアは、第1シャフトと一体的に回転するように構成される。第4ギアは、第2回転部材と一体的に回転するように構成される。
【0016】
第11態様に係る動力伝達装置は、第1から第10態様のいずれかに係る動力伝達装置において、次のように構成される。遠心クラッチ装置は、回生用カム機構を有する。回生用カム機構は、減速時においてプレッシャプレートをクラッチ部に向けて軸方向に移動させるように構成される。
【0017】
第12態様に係る駆動ユニットは、第1から第11態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。カム機構のアシスト係数は、1以上である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、径方向の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】駆動ユニットの概略図。
図2】遠心クラッチ装置の断面図。
図3】カム機構の概略図。
図4】制御部による制御方法の一例を示すフローチャート。
図5】変形例に係る駆動ユニットの概略図。
図6】変形例に係るカム機構の概略図。
図7】変形例に係る駆動ユニットの概略図。
図8】変形例に係る遠心クラッチの断面図。
図9】変形例に係る駆動ユニットの概略図。
図10】変形例に係るカム機構の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態に係る駆動ユニット100について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、遠心クラッチ装置8の回転軸Oが延びる方向である。また、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。
【0021】
<駆動ユニット>
図1に示すように、駆動ユニット100は、電気モータ101、動力伝達装置102、開度センサ103、車速センサ104、及び制御部105を有している。この駆動ユニット100は、例えば、電動式自動二輪車に搭載される。駆動ユニット100は、駆動輪120を駆動するように構成される。
【0022】
<電気モータ>
電気モータ101は、駆動ユニット100の駆動源である。電気モータ101は、バッテリなどから電力が供給されることによって、駆動輪120を駆動する。
【0023】
<動力伝達装置>
動力伝達装置102は、電気モータ101と駆動輪120との間でトルクを伝達するように構成される。すなわち、動力伝達装置102は、電気モータ101が出力するトルクを駆動輪120へと伝達するように構成される。また、動力伝達装置102は、減速時において、駆動輪120からのトルクを電気モータ101へと伝達し、回生ブレーキを作動させるように構成されている。
【0024】
動力伝達装置102は、シャフト10、第1ギア列3、及び第2ギア列4を有している。
【0025】
<シャフト>
シャフト10は、電気モータ101が出力するトルクによって回転するように構成されている。シャフト10は、第1シャフト1及び第2シャフト2を含んでいる。第1シャフト1は、駆動源である電気モータ101からのトルクが入力されるように構成されている。第1シャフト1は、回転可能に配置される。第1シャフト1は、例えば、電気モータ101のロータと一体的に回転する。第1シャフト1は、電気モータ101の回転軸と同軸上に配置されている。
【0026】
第2シャフト2は、回転可能に配置される。第2シャフト2は、第1シャフト1と実質的に平行に延びている。第2シャフト2は、電気モータ101から駆動輪120へのトルク伝達経路において、第1シャフト1に対して下流に配置されている。第2シャフト2は、第1シャフト1から、第1ギア列3又は第2ギア列4を介してトルクが伝達される。
【0027】
<第1ギア列>
第1ギア列3は、第1シャフト1から第2シャフト2へとトルクを伝達するように構成されている。なお、第1ギア列3は、第2シャフト2から第1シャフト1へトルクを伝達しないように構成されている。
【0028】
第1ギア列3は、第1ギア31、第2ギア32、及び第1ワンウェイクラッチ33を有している。第1ギア31は、第1シャフト1に取り付けられている。第1ギア31は、第1シャフト1と一体的に回転する。第1ギア31は、第1シャフト1に固定されている。なお、第1ギア31は、第1シャフト1と一つの部材によって一体的に形成されていてもよい。
【0029】
第2ギア32は、第2シャフト2に取り付けられている。詳細には、第2ギア32は、第1ワンウェイクラッチ33を介して第2シャフト2に取り付けられている。第2ギア32は、第1ギア31と噛み合っている。
【0030】
第1ワンウェイクラッチ33は、前進時において、第1シャフト1から第2シャフト2へトルクを伝達するように構成されている。詳細には、第1ワンウェイクラッチ33は、第2ギア32から第2シャフト2へトルクを伝達するように構成されている。
【0031】
例えば、第1ワンウェイクラッチ33は、内輪、外輪、及び複数のローラを有している。第1ワンウェイクラッチ33の内輪は、第2シャフト2と一体的に回転するように構成される。第1ワンウェイクラッチ33の外輪は、第2ギア32と一体的に回転するように構成される。なお、第1ワンウェイクラッチ33の外輪は、第2ギア32と一つの部材によって一体的に形成されていてもよい。
【0032】
各ローラは、外輪が内輪よりも回転速度が大きいときに、内輪と外輪との間で噛み合い、内輪と外輪との間でトルクを伝達する。一方、内輪が外輪よりも回転速度が大きい場合、各ローラは、内輪と外輪との間での噛合いが解除され、内輪と外輪との間でトルクを伝達しない。このように、第1ワンウェイクラッチ33は、第1シャフト1から第2シャフト2へトルクを伝達する一方で、第2シャフト2から第1シャフト1へはトルクを伝達しない。なお、本実施形態において、回転速度とは、駆動ユニット100が搭載された車両が前進する際における各部材の回転速度を意味する。
【0033】
<第2ギア列>
第2ギア列4は、第1ギア列3よりも変速比が小さくなるように構成されている。第2ギア列4は、第1シャフト1から第2シャフト2へトルクを伝達するように構成されている。詳細には、第2ギア列4は、回転数が所定値より大きくなると、第1シャフト1から第2シャフト2へトルクを伝達する。詳細には、後述する遠心クラッチ装置8の第1回転部材81の回転数が所定値より大きくなると、第2ギア列4は、第1シャフト1から第2シャフト2へトルクを伝達する。第2ギア列4は、第1シャフト1と第2シャフト2との間で、第1ギア列3と並列に設置されている。
【0034】
第2ギア列4は、第3ギア41、第4ギア42、第2ワンウェイクラッチ43、及び遠心クラッチ装置8を有している。第2ギア列4は、遠心クラッチ装置8を介して、第1シャフト1から第2シャフト2へ、トルクを遮断可能に伝達するように構成されている。
【0035】
第3ギア41は、第1シャフト1に取り付けられている。詳細には、第3ギア41は、第1シャフト1と一体的に回転する。第3ギア41は、第1シャフト1に固定されている。なお、第3ギア41は、第1シャフト1と一つの部材によって一体的に形成されていてもよい。第3ギア41は、第1ギア31よりも歯数が多い。また、第3ギア41は、第1ギア31より径が大きい。
【0036】
第4ギア42は、第2シャフト2に取り付けられている。詳細には、第4ギア42は、第2ワンウェイクラッチ43及び遠心クラッチ装置8を介して第2シャフト2に取り付けられている。第4ギア42は、第3ギア41と噛み合っている。第4ギア42は、第2ギア32よりも歯数が少ない。また、第4ギア42は、第2ギア32よりも径が小さい。
【0037】
第2ワンウェイクラッチ43は、前進時において、第2シャフト2から第1シャフト1へトルクを伝達するように構成されている。詳細には、第2ワンウェイクラッチ43は、第2シャフト2から第4ギア42へトルクを伝達するように構成されている。なお、第2ワンウェイクラッチ43は、第1シャフトから第2シャフト2へはトルクを伝達しないように構成されている。すなわち、第2ワンウェイクラッチ43は、第4ギア42から第2シャフト2へはトルクを伝達しない。
【0038】
図2は、遠心クラッチ装置8及び第2ワンウェイクラッチ43の断面図である。図2に示すように、第2ワンウェイクラッチ43は、内輪431、外輪432、及び複数のローラ433を有している。
【0039】
内輪431は、第2シャフト2と一体的に回転するように構成される。例えば、内輪431がスプライン孔を有しており、第2シャフト2が内輪431のスプライン孔に嵌合する。
【0040】
外輪432は、内輪431に対して径方向外側に配置されている。外輪432は、第4ギア42と一体的に回転するように構成される。本実施形態では、外輪432は、第4ギア42と一つの部材によって一体的に形成されている。なお、外輪432は、第4ギア42とは別の部材によって構成され、互いに一体的に回転するように固定されていてもよい。第4ギア42は、ベアリング106を介して第2シャフト2に回転可能に支持されている。
【0041】
各ローラ433は、内輪431と外輪432との間に配置されている。内輪431が外輪432よりも回転速度が大きいときに、各ローラ433は、内輪431と外輪432との間で噛み合い、内輪431と外輪432との間でトルクを伝達する。すなわち、内輪431から外輪432へとトルク伝達する。一方、外輪432が内輪431よりも回転速度が大きい場合、各ローラ433は、内輪431と外輪432との間での噛合いが解除され、内輪431と外輪432との間でトルクを伝達しない。すなわち、外輪432から内輪431へトルクは伝達されない。このように、第2ワンウェイクラッチ43は、第2シャフト2から第1シャフト1へトルクを伝達する一方で、第1シャフト1から第2シャフト2へはトルクを伝達しない。
【0042】
<遠心クラッチ装置>
遠心クラッチ装置8は、シャフト10に取り付けられている。本実施形態では、遠心クラッチ装置8は、第2シャフト2に取り付けられている。遠心クラッチ装置8は、電気モータ101が出力したトルクを遮断可能に伝達するように構成されている。遠心クラッチ装置8は、その回転数が所定値より大きくなるとトルクを伝達するように構成されている。詳細には、遠心クラッチ装置8の第1回転部材81の回転数が所定値より大きくなると、遠心クラッチ装置8はトルクを伝達するように構成されている。すなわち、第1回転部材81の回転数が所定値より大きくなると遠心クラッチ装置8はクラッチオン状態となり、トルクを伝達する。一方で、第1回転部材81の回転数が所定値以下の場合は、遠心クラッチ装置8はクラッチオフ状態となり、トルク伝達を遮断する。
【0043】
遠心クラッチ装置8は、第1回転部材81、第2回転部材82、クラッチ部83、プレッシャプレート84、受圧部材85、遠心子86、及びカム機構87を有している。
【0044】
第1回転部材81は、第2シャフト2と一体的に回転するように構成されている。第1回転部材81は、円板状である。第1回転部材81は、軸方向に貫通するスプライン孔811を有している。第2シャフト2は、スプライン孔811に嵌合している。
【0045】
第1回転部材81は、複数の収容部812を有している。収容部812は、第1回転部材81の外周部に配置されている。各収容部812は、周方向に配列されている。収容部812は、クラッチ部83に向かって開口する凹部である。収容部812を画定する面のうち、クラッチ部83を向く面は、カム面813となっている。カム面813は、軸方向を向くとともに径方向内側を向くように傾斜している。
【0046】
第2回転部材82は、第1回転部材81と相対回転可能に配置されている。第2回転部材82は、クラッチ部83を介して、第1回転部材81との間でトルク伝達されるように構成されている。第2回転部材82は、第4ギア42と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第2回転部材82は、ボルトによって第4ギア42に固定されている。なお、第2回転部材82は、第4ギア42と一つの部材によって一体的に構成されていてもよい。
【0047】
第2回転部材82は、円板部821と第1円筒部822を有している。円板部821は、中央に開口部を有している。円板部821の開口部内に第2ワンウェイクラッチ43が配置されている。円板部821は、第4ギア42に固定されている。
【0048】
第1円筒部822は、円板部821の外周端部から軸方向に延びている。詳細には、第1円筒部822は、円板部821から第1回転部材81に向かって軸方向に延びている。第1円筒部822は、軸方向に延びる複数の切欠き(図示省略)を有している。複数の切欠きは、周方向において配列されている。
【0049】
クラッチ部83は、第1回転部材81と第2回転部材82との間で遮断可能にトルクを伝達するように構成されている。クラッチ部83がクラッチオン状態となると、第1回転部材81と第2回転部材82との間でトルクを伝達する。一方で、クラッチ部83がクラッチオフ状態になると、第1回転部材81と第2回転部材82との間でのトルク伝達を遮断する。
【0050】
クラッチ部83は、複数の第1クラッチディスク831と、第2クラッチディスク832とを有している。第1クラッチディスク831及び第2クラッチディスク832は、環状である。第1クラッチディスク831及び第2クラッチディスク832は、軸方向において、プレッシャプレート84と受圧部材85との間に配置されている。第1クラッチディスク831と第2クラッチディスク832とは、軸方向において交互に配置されている。
【0051】
第1クラッチディスク831は、第2回転部材82に対して、軸方向に移動可能であり且つ相対回転不能である。すなわち、第1クラッチディスク831は、第2回転部材82と一体的に回転する。詳細には、第1クラッチディスク831の外周部には径方向外側に突出する複数の係合突起が形成されている。この係合突起が第2回転部材82の第1円筒部822に形成された切欠きに噛み合っている。第1クラッチディスク831には両面に摩擦材833が貼付されている。
【0052】
第2クラッチディスク832は、内周端部において径方向内側に突出する複数の係合突起が形成されている。この係合突起は、プレッシャプレート84に形成された溝部(図示省略)に噛み合っている。したがって、第2クラッチディスク832は、プレッシャプレート84に対して、軸方向に移動可能であり且つ相対回転不能である。すなわち、第2クラッチディスク832は、プレッシャプレート84と一体的に回転する。
【0053】
プレッシャプレート84は、クラッチ部83と遠心子86との間に配置されている。プレッシャプレート84は、軸方向に移動可能に配置されている。プレッシャプレート84は、クラッチ部83を軸方向に押圧するように構成されている。プレッシャプレート84は、遠心子86からの軸方向の荷重、及びカム機構87による軸方向推力を受けて、軸方向においてクラッチ部83側に移動し、クラッチ部83を押圧する。なお、プレッシャプレート84は、付勢部材(図示省略)によって、軸方向においてクラッチ部83から離れるように付勢されている。
【0054】
プレッシャプレート84は、第1回転部材81と相対回転可能に配置されている。また、プレッシャプレート84は、第2回転部材82とも相対回転可能に配置されている。
【0055】
プレッシャプレート84は、第1環状本体部841と、第2円筒部842とを有している。第1環状本体部841は、周方向に延びている。第1環状本体部841は、軸方向において、遠心子86とクラッチ部83との間に配置されている。
【0056】
第2円筒部842は、第1環状本体部841の内周端部から軸方向に延びている。詳細には、第2円筒部842は、第1環状本体部841から第2回転部材82に向かって軸方向に延びている。第2円筒部842は、径方向において、第1円筒部822の内側に配置されている。径方向において、第1円筒部822と第2円筒部842との間にクラッチ部83が配置されている。第2円筒部842は、軸方向に延びる複数の溝部(図示省略)を有している。複数の溝部は、周方向において配列されている。
【0057】
受圧部材85は、プレッシャプレート84と協働して、クラッチ部83を軸方向に挟み込むように構成されている。受圧部材85は、第1回転部材81に固定されている。すなわち、受圧部材85は、第1回転部材81と一体的に回転する。また、受圧部材85は、軸方向に移動不能である。
【0058】
受圧部材85は、第2環状本体部851と、第3円筒部852とを有している。第2環状本体部851は、周方向に延びている。第2環状本体部851は、軸方向において、円板部821とクラッチ部83との間に配置されている。軸方向において、第1環状本体部841と第2環状本体部851との間にクラッチ部83が配置されている。第2環状本体部851の径方向内側に、第2ワンウェイクラッチ43が配置されている。
【0059】
第3円筒部852は、第2環状本体部851の内周端部から軸方向に延びている。詳細には、第3円筒部852は、第2環状本体部851から第1回転部材81まで軸方向に延びている。第3円筒部852は、第1回転部材81に固定されている。第3円筒部852は、径方向において、第2円筒部842の内側に配置されている。
【0060】
遠心子86は、第1回転部材81と一体的に回転するように構成されている。詳細には、遠心子86は、円柱状である。遠心子86は、第1回転部材の収容部812内に配置されている。遠心子86の外周面は、カム面813と当接している。遠心子86は、収容部812内において、径方向に移動可能である。また、遠心子86は収容部812内において軸方向に移動可能である。
【0061】
遠心子86は、第1回転部材81とともに回転して遠心力を受けると、プレッシャプレート84を介してクラッチ部83を軸方向に押圧するように構成される。第1回転部材81の回転数が所定値より大きくなると、遠心子86は、遠心クラッチ装置8がクラッチオン状態となるように、クラッチ部83を押圧する。なお、遠心子86は、プレッシャプレート84を介して、クラッチ部83を押圧する。
【0062】
詳細には、遠心子86は、第1回転部材81とともに回転すると、遠心力によって径方向外側に移動するとともに、カム面813によって軸方向に移動する。遠心子86は、プレッシャプレート84をクラッチ部83に向かって押圧するように軸方向に移動する。なお、本実施形態では、遠心子86は、中間プレート88を介してプレッシャプレート84を押圧する。なお、中間プレート88は、第1回転部材81と一体的に回転する。また、中間プレート88は、軸方向に移動可能に第1回転部材81に取り付けられている。
【0063】
カム機構87は、クラッチ部83に対する遠心子86の押圧をアシストするように構成されている。詳細には、カム機構87は、第1回転部材81とプレッシャプレート84とが相対回転したとき、詳細には、プレッシャプレート84が第1回転部材81に対して回転方向に相対回転したとき、カム機構87は、プレッシャプレート84をクラッチ部83に向けて軸方向に移動させるように構成されている。なお、回転方向とは、駆動ユニット100が搭載された車両が前進する際における各部材の回転方向を意味する。
【0064】
図3に示すように、カム機構87は、第1アシストカム面871と、第2アシストカム面872とを有している。第1アシストカム面871は、第1回転部材81に形成されている。第1アシストカム面871は、回転方向と反対方向を向くとともに、プレッシャプレート84を向くように傾斜している。
【0065】
第2アシストカム面872は、プレッシャプレート84に形成されている。第2アシストカム面872は、回転方向を向くとともに、第1回転部材81を向くように傾斜している。第2アシストカム面872は、第1アシストカム面871と対向している。詳細には、第2アシストカム面872は、第1アシストカム面871と接触している。遠心子86がプレッシャプレート84を軸方向に押圧し、クラッチ部83を介して第2回転部材82からプレッシャプレート84にトルクが伝達されると、プレッシャプレート84が第1回転部材81に対して回転方向に相対回転する。この結果、第2アシストカム面872が第1アシストカム面871を軸方向に押圧し、プレッシャプレート84は、第1回転部材81から離れるように軸方向に移動し、クラッチ部83を軸方向に押圧する。
【0066】
このカム機構87のアシスト係数bは、1以上とすることができる。なお、カム機構87のアシスト係数bは、以下の式(1)によって求めることができる。
【0067】
【数1】
ここで、Nは、カム機構87に作用する第1及び第2クラッチディスク831,832の面数である。例えば、本実施形態では、カム機構87に作用する第1及び第2クラッチディスク831,832の面とは、第2アシストカム面872が形成されたプレッシャプレート84と一体的に回転する第2クラッチディスク832と摩擦係合する面(2つ)と、プレッシャプレート84と摩擦係合する面(1つ)である。この面の合計数は3つであるため、Nは「3」となる。また、μaは、第1クラッチディスク831と第2クラッチディスク832との間の摩擦係数を意味する。Raは、第1及び第2クラッチディスク831,832の有効半径を意味する。ここで、第1及び第2クラッチディスク831,832の有効半径とは、第1及び第2クラッチディスク831,832が互いに接触する領域の内径と外径との中点の径である。Rbは、カム機構87の有効半径を意味する。なお、カム機構87の有効半径とは、第1アシストカム面871と第2アシストカム面872とが互いに接触する領域の内径と外径との中点の径である。また、βは、回転方向に対する第1アシストカム面871及び第2アシストカム面872の傾斜角度を示す。また、λは、カム機構87の摩擦角を意味する。なお、λは、以下の式(2)に基づき算出する。
【0068】
【数2】
なお、μbは、第1アシストカム面871と第2アシストカム面872との間の摩擦係数を示す。
【0069】
図1に示すように、駆動ユニット100は、ドライブシャフト11、第5ギア12、及び第6ギア13を有している。第5ギア12は、第2シャフト2に取り付けられている。第5ギア12は、第2シャフト2と一体的に回転する。第5ギア12は、例えば、第2ギア32と、第4ギア42との間に配置されている。
【0070】
ドライブシャフト11は、第2シャフト2からトルクが伝達される。第6ギア13は、ドライブシャフト11に取り付けられている。第6ギア13は、ドライブシャフト11と一体的に回転する。第6ギア13は、第5ギア12と噛み合っている。駆動輪120は、ドライブシャフト11に取り付けられている。
【0071】
<開度センサ、車速センサ、制御部>
開度センサ103は、スロットル開度を検出するように構成されている。例えば、開度センサ103は、スロットルバルブのシャフトの回転角度を検出する。開度センサ103は、検出したスロットル開度に関するデータを制御部105に出力する。開度センサ103は、有線又は無線で制御部105に接続されている。
【0072】
車速センサ104は、駆動ユニット100が搭載された車両の車速を検出するように構成されている。車速センサ104は、検出した車速に関するデータを制御部105に出力する。車速センサ104は、有線又は無線で制御部105に接続されている。
【0073】
制御部105は、開度センサ103が検出したスロットル開度、及び車速センサ104が検出した車速に基づき、電気モータ101を制御するように構成されている。詳細には、制御部105は、開度センサ103から取得したスロットル開度に関するデータに基づき、スロットル開度が第1閾値以上か否かを判断する。
【0074】
また、制御部105は、車速センサ104が取得した車速に関するデータに基づき、車速が第2閾値以下か否かを判断する。制御部105は、スロットル開度が第1閾値以上であり、且つ車速が第2閾値以下であると判断したとき、電気モータ101を所定時間停止させるように構成されている。例えば、制御部105は、電気モータ101を、10~100ms停止させる。
【0075】
このように、制御部105が電気モータ101を所定時間停止させることにより、第2アシストカム面872が第1アシストカム面871を押圧するトルクがなくなる。この結果、付勢部材によってプレッシャプレート84をクラッチ部83から離れる方向に確実に移動させることができる。このため、アシスト係数を1以上のように高い値に設定した場合であっても、遠心子86による押圧力が解除されたにもかかわらずプレッシャプレート84がクラッチ部83を押圧し続ける、すなわちクラッチ部83がクラッチオフ状態に切り替わらないような状態になることを防止することができる。
【0076】
制御部105は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びROM(Read Only Memory)等を備えるコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ)によって構成されている。ROMには、種々の演算をするためのプログラムが記憶されている。CPUは、ROMに記憶されたプログラムを実行する。制御部105は、有線又は無線で電気モータ101に接続されている。
【0077】
図4は、制御部105の制御方法の一例を説明するフローチャートである。図4に示すように、制御部105は、まず、スロットル開度が第1閾値以上か否か判断する(ステップS1)。
【0078】
制御部105は、スロットル開度が第1閾値未満と判断すると(ステップS1のNo)、再度、ステップS1からの処理を行う。一方、制御部105は、スロットル開度が第1閾値以上であると判断すると(ステップS1のYes)、次に、車速が第2閾値以下であるか否か判断する(ステップS2)。
【0079】
制御部105は、車速が第2閾値を超えていると判断すると(ステップS2のNo)、再度、ステップS1からの処理を行う。一方、制御部105は、車速が第2閾値以下であると判断すると(ステップS2のYes)、電気モータ101を所定時間停止させる(ステップS3)。電気モータ101は、電気モータ101を所定時間停止させた後、電気モータ101を駆動させる(ステップS4)。なお、上記ステップS1とステップS2との順番を入れ替えてもよい。
【0080】
<動作>
以上のように構成された駆動ユニット100は、まず、車速が低速の場合、電気モータ101が出力したトルクは、第1シャフト1から第1ギア列3を介して第2シャフト2へと伝達される。ここで、車速が低速の場合、遠心クラッチ装置8の第1回転部材81の回転数は所定値以下であるため、遠心クラッチ装置8はクラッチオフ状態であり、第2ギア列4はトルクを伝達しない。また、第4ギア42は、第2シャフト2よりも回転速度が速いため、第2ワンウェイクラッチ43は、第2シャフト2から第4ギア42へとトルク伝達しない。
【0081】
車速が上がると、遠心クラッチ装置8の第1回転部材81の回転数が所定値を超え、遠心クラッチ装置8がクラッチオン状態となる。詳細には、遠心子86による押圧力、及びカム機構87のアシスト力によって、クラッチ部83が十分に押圧されて第1クラッチディスク831と第2クラッチディスク832とが一体的に回転し、クラッチ部83がつながる。これにより、第2回転部材82からクラッチ部83を介して第1回転部材81へとトルク伝達される。この結果、電気モータ101から第1シャフト1に出力されたトルクは、第2ギア列4を介して第2シャフト2へと伝達される。なお、第2シャフト2は第2ギア32よりも回転速度が速くなるため、第1ワンウェイクラッチ33は、第2ギア32から第2シャフト2へとトルク伝達しない。
【0082】
また、車速が下がり低速になると、遠心クラッチ装置8の第1回転部材81の回転数が所定値以下となり、遠心クラッチ装置8はクラッチオフ状態となる。この結果、電気モータ101が出力したトルクは、第1シャフト1から第1ギア列3を介して第2シャフト2へと伝達される。
【0083】
電気モータ101が停止して減速したときは、駆動輪120から第2シャフト2へ伝達されたトルクが、第2ワンウェイクラッチ43を介して第1シャフト1へと伝達され、電気モータ101を回転させる。この結果、回生ブレーキを作動させることができる。
【0084】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の各変形例は、基本的には同時に適用することができる。
【0085】
(a)図5に示すように、遠心クラッチ装置8は、第1シャフト1に取り付けられていてもよい。この場合、第1回転部材81が第1シャフト1に取り付けられる。また、第2回転部材82は、第3ギア41と一体的に回転するように構成される。第3ギア41は、第2ワンウェイクラッチ43を介して第1シャフト1に取り付けられる。第4ギア42は、第2シャフト2と一体的に回転するように取り付けられる。第2ワンウェイクラッチ43は、第1シャフト1に取り付けられる。第2ワンウェイクラッチ43は、第3ギア41から第1シャフト1へとトルク伝達するように構成されている。第2ワンウェイクラッチ43は、第1シャフト1から第3ギア41へとトルク伝達しない。
【0086】
また、この場合、図6に示すように、第1アシストカム面871は、回転方向を向くとともにプレッシャプレート84を向くように傾斜している。また、第2アシストカム面872は、回転方向と反対方向を向くとともに、第1回転部材81を向くように傾斜している。
【0087】
(b)図7に示すように、第1ワンウェイクラッチ33は、第1シャフト1に取り付けられていてもよい。この場合、第1ギア31は、第1ワンウェイクラッチ33を介して第1シャフト1に取り付けられている。第2ギア32は、第2シャフト2と一体的に回転するように取り付けられる。第1ワンウェイクラッチ33は、第1シャフト1から第1ギア31へとトルク伝達する。
【0088】
(c)遠心子86は、揺動軸を中心に揺動するように構成されていてもよい。例えば、図8に示すように、遠心子86は、揺動ピン860を介して第1回転部材81に取り付けられる。遠心子86は、ウェイト部861と押圧部862を有している。遠心子86は、遠心力を受けると、揺動ピン860を中心に、図8の反時計回りに回転する。詳細には、ウェイト部861が遠心力を受けて径方向外側に移動し、その結果、押圧部862がクラッチ部83を押圧するように移動する。
【0089】
(d)上記実施形態では、第2ギア列4は、第2ワンウェイクラッチ43を有しているが、第2ギア列4の構成はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、第2ギア列4は、第2ワンウェイクラッチ43を有していなくてもよい。すなわち、第4ギア42は、第2シャフト2に対して、第2ワンウェイクラッチ43を介さずに支持されている。第4ギア42は、トルク伝達不能に第2シャフト2に取り付けられている。本変形例では、第4ギア42は、ベアリング106のみを介して第2シャフト2に取り付けられている。なお、ベアリング106は、第4ギア42と第2シャフト2との間に配置されている。このように、第4ギア42は、第2シャフト2と直接的にトルクを伝達しないように第2シャフト2に支持されている。なお、第4ギア42は、遠心クラッチ8を介してのみ第2シャフト2とトルク伝達する。
【0090】
この変形例において、図10に示すように、遠心クラッチ装置8は、回生用カム機構89を有している。回生用カム機構89は、減速時において駆動輪120からのトルクを遠心クラッチ装置8を介して電気モータ101に伝達するように構成されている。詳細には、減速時、第1回転部材81がプレッシャプレート84に対して回転方向に相対回転する。この減速時において、回生用カム機構89は、プレッシャプレート84をクラッチ部83に向けて軸方向に移動させるように構成されている。
【0091】
回生用カム機構89は、第1回生用カム面891と、第2回生用カム面892とを有している。第1回生用カム面891は、第1回転部材81に形成されている。第1回生用カム面891は、回転方向を向くとともに、プレッシャプレート84を向くように傾斜している。
【0092】
第2回生用カム面892は、プレッシャプレート84に形成されている。第2回生用カム面892は、回転方向と反対方向を向くとともに、第1回転部材81を向くように傾斜している。第2回生用カム面892は、第1回生用カム面891と対向している。減速時において、第1回転部材81は、プレッシャプレート84に対して回転方向に相対回転する。この結果、第1回生用カム面891が第2回生用カム面892を軸方向に押圧し、プレッシャプレート84は、第1回転部材81から離れるように軸方向に移動し、クラッチ部83を軸方向に押圧する。
【0093】
以上のように、遠心クラッチ装置8が回生用カム機構89を有しているため、減速時において電気モータ101を回転させて発電させることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 :第1シャフト
2 :第2シャフト
3 :第1ギア列
31 :第1ギア
32 :第2ギア
33 :第1ワンウェイクラッチ
4 :第2ギア列
41 :第3ギア
42 :第4ギア
43 :第2ワンウェイクラッチ
431 :内輪
432 :外輪
8 :遠心クラッチ装置
81 :第1回転部材
82 :第2回転部材
83 :クラッチ部
84 :プレッシャプレート
86 :遠心子
87 :カム機構
871 :第1アシストカム面
872 :第2アシストカム面
89 :回生用カム機構
100 :駆動ユニット
101 :電気モータ
102 :動力伝達装置
103 :開度センサ
104 :車速センサ
105 :制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10