(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117724
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】風力タービンブレードのピッチシステム及び関連方法
(51)【国際特許分類】
F03D 80/00 20160101AFI20240822BHJP
【FI】
F03D80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024009134
(22)【出願日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】23382118.0
(32)【優先日】2023-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513131419
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック レノバブレス エスパーニャ, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】アリオ・メディナ・ディアズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセップ・ボッシュ・コラード
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル・ベスコス・グリロ
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ・パロマレス・レンテロ
(72)【発明者】
【氏名】イグナシ・ベガ・ボアダ
(57)【要約】
【課題】風力タービンのピッチシステムの故障のバックアップブレーキを提供する。
【解決手段】風力タービンのブレード用のピッチシステムは、風力タービンのハブに連結された第1の軸受リング及びブレードに連結された第2の軸受リングを有するピッチ軸受を備える。ピッチシステムは、環状ギア79と、ピッチ駆動系であって、モータ74、ギアボックス76、メインブレーキ75、及び環状ギアと係合するピニオン78を有するピッチ駆動系とを含む。ピッチシステムは、補助ブレーキ95、及び環状ギア79と係合する補助ピニオンを備えており、補助ブレーキ95は、環状ギア79に制動力を加えてブレードを瞬時位置に維持する作動状態と、非作動状態とで切り替わるように構成されている。本願は、さらに、かかるピッチシステムを含む風力タービン並びにピッチシステムに緊急ピッチ制動トルクをかける方法も提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンのブレード用のピッチシステムであって、当該ピッチシステムが、
前記風力タービンのハブに連結された第1の軸受リング及び前記ブレードに連結された第2の軸受リングを備えるピッチシステムであって、第1の軸受リングが第2の軸受リングに対して回転可能である、ピッチ軸受と、
環状ギア(79)と、
モータ(74)、ギアボックス(76)、メインブレーキ(75)、及び前記環状ギア(79)と係合するピニオン(78)を備えるピッチ駆動系と、
補助ブレーキ(95)、及び前記環状ギア(79)と係合する補助ピニオン(98)を備える補助ブレーキシステムであって、前記補助ブレーキ(95)が、作動状態と非作動状態との間で切り替わるように構成されていて、
作動状態では、前記ブレードが瞬時位置に維持されるように前記環状ギア(79)に制動力が加わり、
非作動状態では、前記環状ギア(79)に実質的に制動力が加わらず、
前記補助ブレーキ(95)のデフォルト状態が非作動状態である、補助ブレーキシステムと
を備える、ピッチシステム。
【請求項2】
前記補助ブレーキ(95)が、前記ピッチ駆動系(68)で故障が検出されたときに作動状態に切り替わるように構成されている、請求項1に記載のピッチシステム。
【請求項3】
前記故障が、前記メインブレーキ(75)における故障を含む、請求項2に記載のピッチシステム(75)。
【請求項4】
前記補助ブレーキ(95)が、前記補助ピニオンを駆動するためのモータ又は補助駆動系には作動可能に接続されていない、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のピッチシステム。
【請求項5】
前記補助ブレーキ(95)と前記補助ピニオン(98)の間に作動可能に連結された補助ギアボックス(96)をさらに備える、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のピッチシステム。
【請求項6】
前記環状ギアに印加される制動力を監視するように監視システムが構成されている、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のピッチシステム(79)。
【請求項7】
前記監視システムが、前記環状ギア(79)の位置又は移動に関する情報を提供するように構成された第1の位置センサ(93)を少なくとも含む、請求項6に記載のピッチシステム。
【請求項8】
前記補助ブレーキ(95)が、該補助ブレーキを作動状態に切り替えるように構成された制御システム(80)に結合している、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のピッチシステム。
【請求項9】
当該ピッチシステムが、前記環状ギア(79)と共に配置された第1の位置センサ(93)をさらに備えており、前記ピッチ駆動系が第2の位置センサを備えており、第1及び第2の位置センサが前記制御システムと通信している、請求項8に記載のピッチシステム。
【請求項10】
第1及び第2の位置センサが、前記環状ギア(79)の位置又は移動に対して冗長信号を発信するように構成されており、前記制御システム(80)は、第1及び第2の位置センサから発信された信号が互いに競合しているときに、前記補助ブレーキ(95)を作動状態に切り替えるように構成されている、請求項9に記載のピッチシステム。
【請求項11】
前記補助ブレーキ(95)が遠心ブレーキを備えており、前記遠心ブレーキは、前記環状ギアが所定の速度に達したときに作動状態に切り替わるように構成されている、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のピッチシステム。
【請求項12】
風力タービンのブレード用のピッチシステムに緊急ピッチ制動トルクをかける方法であって、前記ピッチシステムが適宜請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載されたものであり、当該方法が、
前記ピッチシステムのピッチ駆動系での故障を検出するステップであって、前記ピッチ駆動系が、モータ(74)、ギアボックス(76)、メインブレーキ(75)、及び前記ピッチシステムの環状ギア(79)と係合するピニオン(78)を備えている、ステップと、
故障が検出されたときに、補助ブレーキ(95)を非作動状態から作動状態に切り替えるステップと
を含んでおり、作動状態では、前記補助ブレーキ(95)は、前記環状ギアに制動力を加えて前記ブレードが瞬時位置に維持されるように、環状ギアと係合している補助ピニオン(98)をブロックする、方法。
【請求項13】
前記補助ブレーキが、いかなるモータ又は補助駆動装置にも作動可能に接続されていない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
故障を検出するステップが、前記環状ギアに制動力を加える際の故障を検出することを含む、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の風力タービンのブレード用ピッチシステムを備える風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力タービンのブレード用のピッチシステム並びにかかるシステムに制動トルクをかける方法に関する。さらに具体的には、本開示は、ピッチシステムに故障が発生した場合のブレードの緩みを回避できる方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最新式風力タービンは、電力網への電力の供給に常用されている。この種の風力タービンは一般にタワーとタワー上に配置されたロータとを備える。ロータは通例ハブ及び複数のブレードを備えており、ブレードに対する風の影響下で回転するように設定される。この回転は通常ロータシャフトによって発電機に直接(「直接駆動」又は「ギアレス」)又はギアボックスを用いて伝達されるトルクを生成する。こうして、発電機は電力を発生し、電力を電力網に供給することができる。
【0003】
風力タービンは過去数十年で急速に進化し、大型化の傾向がはっきりとみられる。風力タービンで生成される電力はロータの受風面積に比例し、従ってブレードの長さの2乗に比例する。そのため、風力からのエネルギー抽出量を高めて発電量を増大させるために、用いられるタワーの高層化及びブレードの長尺化がなされてきた。長年にわたる大型化のため、風力タービン部品にかかる負荷が大幅に増大しており、特に機械、電気、材料、土木工学などの幅広い分野で新たな課題が生じている。
【0004】
種々変動する風条件に風力タービンブレードの位置を適応させるためにピッチシステムが用いられている。これに関して、風速が増加したときに生じる揚力(及び抗力)が減るように風力タービンブレードを回転させることが知られている。こうすると、風速が増加しても、ロータから発電機に伝達されるトルクは実質的に同じままに保たれる。さらに、風速が増加すると、風力タービンブレードをそれらの失速位置に向かって(ブレードの揚力を減らすため)回転させることも知られている。こうした風力タービンは、「アクティブストール」型風力タービンと呼ばれることもある。ピッチ操作は、さらに、タービンを一時的に停止させたり、メンテナンスなどのために運転停止する際に、ブレードをそのベーン位置に向けて回転させるためにも使用し得る。
【0005】
ピッチシステムは、減速機(「減速機」又は「減速ドライブ」とも呼ばれる)の使用によって、作動ギアを駆動する電気モータ又は油圧モータを備えていることもある。この作動ギアは、通常、ピニオンであり、風力タービンブレードに設けられた環状ギアと噛み合って、風力タービンブレードを回転させる。ただし、ピッチモータによって操作される他の作動機構も知られている。
【0006】
さらに、ロータの各風力タービンブレードに対する別個のモータ及び別個の制御を含む個別ピッチシステムを設けることも知られている。また、ロータの全ブレードに対してブレードピッチ角が同一である共通ピッチシステムを設けることも知られている。かかる共通ピッチシステムは、単一のモータを備えていてもよいし、或いは複数のモータ(各ブレード毎に1基)を備えていてもよい。
【0007】
運転中、風力タービンブレードは複数の負荷に付されるので、風力タービンの故障を招きかねないブレードの過負荷状態を避けるには、ピッチシステムが適切に機能することが欠かせない。ピッチシステムの性能を向上させ、ピッチシステムの故障の危険性を克服するために、様々な解決策が提案されている。
【0008】
今回、風力タービンのシャットダウン手順中に、ピッチシステムの1つが故障した場合に、特に重大な負荷事態が起こることが判明した。すなわち、これによって、2枚のブレードがフェザー位置に向かってピッチ操作されるが、3枚目のブレードが緩んだ状況が生じる。特に、3枚目のブレードが緩んだ状況は、3枚目のブレードが特定のピッチ位置(たとえ揚力が最大又は最大近くになる位置であっても)に陥って抜け出せない状況よりも、重大となりかねないことが今回判明した。
【0009】
本開示は、上述の短所の幾つかを少なくとも部分的に解決するための方法及び装置を提供する。
【発明の概要】
【0010】
本開示の一態様では、風力タービンのブレード用のピッチシステムを提供する。本ピッチシステムは、風力タービンのハブに連結された第1の軸受リング及びブレードに連結された第2の軸受リングを有するピッチ軸受を備えており、第1の軸受リングは、第2の軸受リングに対して回転可能である。本ピッチシステムは、環状ギアも含んでいる。本システムは、モータ、ギアボックス、メインブレーキ、及び環状ギアと係合するピニオンを有するピッチ駆動系をさらに含んでいる。さらに、本ピッチシステムは、補助ブレーキ、及び環状ギアと係合する補助ピニオンを有する補助ブレーキシステムを含む。補助ブレーキは、作動状態と非作動状態との間で切り替わるように構成されている。作動状態では、ブレードを瞬時位置に維持するために環状ギアに制動力が加わり、非作動状態では、環状ギアに実質的に制動力が加わらない。補助ブレーキのデフォルト状態は非作動状態である。
【0011】
この態様では、正常運転中は、ピッチシステムの補助ブレーキは非作動状態(すなわち、環状ギアに補助ブレーキによる制動力が加わらない状態)にあり、環状ギアの噛み合いと対応するピッチ位置は、ピッチ駆動系だけによって決まる。補助ブレーキを非作動状態から作動状態に切り替えると、環状ギアに追加の制動力が加わり、ハブに対して風力タービンのブレードが無制御に(ブレードが無束縛状態などで)動くおそれが低減する。このように、補助ブレーキはバックアップブレーキとして作用し得る。
【0012】
本願では、ブレードの瞬時位置とは、補助ブレーキが作動したときの対応ブレードの位置として解される。補助ブレーキは、補助ブレーキの作動が必要とされる故障が検出された瞬間に、それ以上ブレードが動かないようにできるだけ早く止めるためのものである。
【0013】
別の態様では、風力タービンのブレード用のピッチシステムに緊急ピッチ制動トルクをかける方法を提供する。本方法は、ピッチシステムのピッチ駆動系での故障を検出することを含んでおり、ピッチ駆動系は、モータ、ギアボックス、メインブレーキ、及びピッチシステムの環状ギアと係合するピニオンを含む。本方法は、故障検出時に、補助ブレーキを非作動状態から作動状態に切り替えることをさらに含んでおり、作動状態において、補助ブレーキは、環状ギアに制動力を加えてブレードを瞬時位置に維持するために、環状ギアに係合した補助ピニオンをブロックする。
【0014】
本方法は、ピッチシステムに緊急ピッチブレーキトルクをかける信頼性の高い効果的な方法を提供し、風力タービンのハブに対してブレードが無制御に動く状態を防止する。
【0015】
さらに別の態様では、風力タービンのブレード用のピッチシステムを備える風力タービンを提供する。ピッチシステムは、風力タービンのハブに連結された第1の軸受リング及びブレードに連結された第2の軸受リングを有するピッチ軸受を備えており、第1の軸受リングは、第2の軸受リングに対して回転可能である。ピッチシステムは、環状ギアも含んでいる。本システムはさらに、モータ、ギアボックス、メインブレーキ、及び環状ギアと係合するピニオンを有するピッチ駆動系を含む。ピッチシステムは、環状ギアと係合する補助ピニオンを有する補助ブレーキも備えており、補助ブレーキは、ブレードを瞬時位置にブロックするために補助ピニオンに制動力が加わる作動状態と、補助ピニオンに制動力が加わらない非作動状態との間で切り替わるように構成されており、補助ブレーキのデフォルト状態は非作動状態である。
【0016】
本開示技術の実施形態のその他の目的、利点及び特徴については、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなろうし、或いは本技術の実施を通して習得できるものもあろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】風力タービンのハブ及びナセルの一例を示す図。
【
図3】本開示技術に係るピッチシステムの一例の概略図。
【
図4】風力タービンのブレードのピッチシステムに緊急ピッチ制動トルクをかける方法の一例のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の様々な実施形態について詳細に説明し、その1以上の実施例を図面に示す。各実施例は、本技術を限定するものではなく、例示のためのものである。実際、特許請求の範囲に記載された技術的範囲及び技術的思想を逸脱することなく、本技術に様々な修正及び変更をなし得ることは当業者には明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として例示又は記載された特徴を、別の実施形態と共に用いてさらに別の実施形態とすることができる。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等の範囲に属する修正及び変更を包含する。
【0019】
図1は、風力タービン10の一例の斜視図である。この例では、風力タービン10は水平軸風力タービンである。或いは、風力タービン10は、垂直軸風力タービンであってもよい。この例では、風力タービン10は、地表面12の支持システム14から延在するタワー15と、タワー15に取り付けられたナセル16と、ナセル16に結合したロータ18とを含む。ロータ18は、回転可能なハブ20と、ハブ20に結合しかつハブ20から外側に延在する1枚以上のロータブレード22とを含む。この例では、ロータ18は3枚のロータブレード22を有する。別の実施形態では、ロータ18は、3枚未満又は3枚超のロータブレード22を含む。タワー15は、支持システム14とナセル16の間の空洞(
図1には図示せず)を画成するための管状鋼から製造し得る。別の実施形態では、タワー15は、任意の適切な高さを有する任意の適切なタイプのタワーである。別の実施形態では、タワーは、コンクリート製部分と管状鋼部分とを含むハイブリッドタワーであってもよい。また、タワーは部分的又は完全な格子タワーであってもよい。
【0020】
ロータブレード22は、ロータ18を回転させて運動エネルギーを風から使用可能な機械的エネルギー、ひいては電気エネルギーへと伝達できるように、ハブ20の周りに離間して配置される。ロータブレード22は、ブレード根元部24を複数の荷重伝達領域26でハブ20に結合することによってハブ20に連結される。荷重伝達領域26は、ハブ荷重伝達領域及びブレード荷重伝達領域(いずれも
図1には図示せず)を有していてもよい。ロータブレード22で惹起された荷重は、荷重伝達領域26を介してハブ20に伝達される。
【0021】
実施例では、ロータブレード22は、約15m~約90m以上の範囲の長さを有し得る。ロータブレード22は、本明細書に記載の機能を風力タービン10が発揮し得る任意の適切な長さを有し得る。例えば、ブレード長の非限定的な例として、20m以下、37m、48.7m、50.2m、52.2m又は91m超の長さが挙げられる。風向28からロータブレード22に風が当たると、ロータ18はロータ軸30の周りで回転する。ロータブレード22が回転して遠心力を受けると、ロータブレード22にも様々な力及びモーメントが加わる。そこで、ロータブレード22は、中立又は非撓み位置から撓み位置まで撓む及び/又は回転し得る。
【0022】
さらに、ロータブレード22のピッチ角(すなわち風向に対するロータブレード22の向きを定める角度)は、風ベクトルに対する1以上のロータブレード22の角度位置の調整によって風力タービン10で発生する荷重及び電力を制御するためのピッチシステム32によって変更し得る。ロータブレード22のピッチ軸34が示してある。風力タービン10の運転中、ピッチシステム32は、特にロータブレード(の部分)の迎角が小さくなるようにロータブレード22のピッチ角を変化させることができ、回転速度の低下を促進し、及び/又はロータ18の失速を促進する。
【0023】
この例では、各ロータブレード22のブレードピッチは、風力タービンコントローラ36又はピッチ制御システム80によって個々に制御される。或いは、全てのロータブレード22に対するブレードピッチは、制御システムによって同時に制御してもよい。
【0024】
また、この例では、風向28の変化に伴って、ロータブレード22を風向28に対して位置付けるため、ナセル16のヨー方向をヨー軸38の周りで回転させてもよい。
【0025】
この例では、風力タービンコントローラ36は、ナセル16内に集中化したものとして示してあるが、風力タービンコントローラ36は、風力タービン10全体、支持システム14上、風力発電所内及び/又は遠隔制御センターにおける分散システムとしてもよい。風力タービンコントローラ36は、本明細書に記載の方法及び/又はステップを実行するように構成されたプロセッサ40を含む。さらに、本明細書に記載の他の部品の多くは、プロセッサを含む。
【0026】
本明細書で用いる「プロセッサ」という用語は、当技術分野でコンピュータと呼ばれる集積回路に限定されず、広義に、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路その他のプログラマブル回路をいい、これらの用語は、本明細書で互換的に用いられる。プロセッサ及び/又は制御システムは、メモリ、入力チャネル及び/又は出力チャネルも含むことができる。
【0027】
図2は、風力タービン10の一部の拡大断面図である。この例では、風力タービン10は、ナセル16と、ナセル16に回転可能に結合したロータ18とを含む。さらに具体的には、ロータ18のハブ20は、主軸44、ギアボックス46、高速軸48及びカップリング50によってナセル16内に位置する電動発電機42に回転可能に結合している。この例では、主軸44は、ナセル16の長手軸(図示せず)に対して少なくとも部分的に同軸に配置されている。主軸44の回転はギアボックス46を駆動し、次いでギアボックス46はロータ18及び主軸44の比較的遅い回転運動を高速軸48の比較的速い回転運動に変換することによって高速軸48を駆動する。後者は、カップリング50によって電気エネルギーを生成するための発電機42に接続されている。さらに、400V~1000Vの間の電圧を有する発電機42によって生成された電気エネルギーを中電圧(10~35KV)の電気エネルギーに変換するために、変圧器90及び/又は適切な電子機器、スイッチ、及び/又はインバータがナセル16内に配置されることもある。電気エネルギーは、ナセル16からタワー15へ電力ケーブルを介して伝導される。
【0028】
ギアボックス46、発電機42及び変圧器90は、ナセル16の主支持構造フレームによって支持してもよく、適宜メインフレーム52として具現化される。ギアボックス46は、1以上のトルクアーム103によってメインフレーム52に接続されたギアボックスハウジングを含んでいてもよい。この例では、ナセル16は、主前方支持軸受60及び主後方支持支持軸受62も含む。さらに、発電機42は、特に発電機42の振動がメインフレーム52に導入され、それによって騒音発生源となるのを防止するために、デカップリング支持手段54によってメインフレーム52に取り付けることができる。
【0029】
適宜、メインフレーム52は、ロータ18及びナセル16の部品の重量並びに風及び回転荷重によって生じる全荷重を担持するように構成され、さらに、これらの荷重を風力タービン10のタワー15に導入する。ロータシャフト44、発電機42、ギアボックス46、高速軸48、カップリング50、並びに限定されるものではないが、メインフレーム52、前方支持軸受60及び後方支持軸受62を始めとする関連する締結、支持、及び/又は固定装置は、駆動トレイン64と呼ばれることもある。
【0030】
幾つかの例では、風力タービンは、ギアボックス46のない直接駆動風力タービンであってもよい。発電機42は、直接駆動風力タービンにおけるロータ18と同じ回転数で作動する。従って、それらは一般に、同程度の電力を供給するためのギアボックス46を有する風力タービンで使用される発電機よりもはるかに大きい直径を有する。
【0031】
ナセル16は、風向28に対するロータブレード22の全体的位置を制御するために、ヨー軸38の周りでナセル16、さらにはロータ18を回転させるために使用し得るヨー駆動機構56を含んでいてもよい。
【0032】
ナセル16を風向28に対して適切に位置決めするために、ナセル16は、風向計及び風速計を始めとする1以上の気象測定システム58を含んでいてもよい。気象測定システム58は、風向28及び/又は風速を始めとする情報を風力タービンコントローラ36に供給し得る。この例では、ピッチシステム32は、ピッチアセンブリ66としてハブ20内に少なくとも部分的に配置されている。ピッチアセンブリ66は、1以上のピッチ駆動システム68及び1以上のセンサ70を含む。各ピッチ駆動システム68は、ピッチ軸34に沿ってロータブレード22のピッチ角を変調するため各ロータブレード22(
図1に示す)に結合している。
図2には、3つのピッチ駆動システム68の1つだけを示す。
【0033】
この例では、ピッチアセンブリ66は、ハブ20に結合した1以上のピッチ軸受72と、ピッチ軸34の周りで各ロータブレード22を回転させるための各ロータブレード22(
図1に示す)とを含む。ピッチ駆動システム68は、ピッチ駆動モータ74と、ピッチ駆動ギアボックス76と、ピッチ駆動ピニオン78とを備える。ピッチ駆動モータ74は、ピッチ駆動ギアボックス76に機械的な力を与えるようにピッチ駆動ギアボックス76に結合している。ピッチ駆動ギアボックス76はピッチ駆動ピニオン78に結合しており、ピッチ駆動ギアボックス76によってピッチ駆動ピニオン78が回転する。ピッチ軸受72はピッチ駆動ピニオン78に結合しており、ピッチ駆動ピニオン78の回転によってピッチ軸受72の回転を生じる。
【0034】
ピッチ駆動システム68は、風力タービンコントローラ36から1以上の信号を受信したときにロータブレード22のピッチ角を調整するため、風力タービンコントローラ36に連結している。この例では、ピッチ駆動モータ74は、ピッチアセンブリ66が本明細書に記載の通り機能できるようにする電力及び/又は油圧システムによって駆動される任意の適切なモータである。或いは、ピッチアセンブリ66は、任意の適切な構造、構成、配置並びに/或いは、限定されるものではないが、油圧シリンダ、スプリング及び/又はサーボ機構などの部品を含んでいてもよい。ある実施形態では、ピッチ駆動モータ74は、ハブ20の回転慣性及び/又は風力タービン10の部品にエネルギーを供給する備蓄エネルギー源(図示せず)から抽出されるエネルギーによって駆動される。
【0035】
ピッチアセンブリ66は、特定の優先的状況及び/又はロータ18の過速度の場合に、風力タービンコントローラ36からの制御信号に従ってピッチ駆動システム68を制御するための1以上のピッチ制御システム80を含んでいてもよい。この例では、ピッチアセンブリ66は、風力タービンコントローラ36から独立してピッチ駆動システム68を制御するための各ピッチ駆動システム68に通信可能に結合した1以上のピッチ制御システム80を含む。この例では、ピッチ制御システム80は、ピッチ駆動システム68及びセンサ70に結合している。風力タービン10の正常運転中、風力タービンコントローラ36は、ロータブレード22のピッチ角を調整するようにピッチ駆動システム68を制御して得る。
【0036】
一実施形態では、例えば、電池及び電気キャパシタを含む電力発生器84は、ハブ20に又はハブ20内に配置され、センサ70、ピッチ制御システム80及びピッチ駆動システム68に電力源を提供するためこれらの部品に結合される。この例では、電力発生器84は、風力タービン10の運転中にピッチアセンブリ66に継続的な電力源を提供する。別の実施形態では、電力発生器84は、風力タービン10の電力喪失時にだけピッチアセンブリ66に電力を供給する。電力喪失事象としては、電力網の喪失又はディップ、風力タービン10の電気システムの誤作動、及び/又は風力タービンコントローラ36の故障が挙げられる。電力喪失の際に、電力発生器84は、ピッチアセンブリ66が電力喪失事象中も作動できるように、ピッチアセンブリ66に電力を供給するように作動する。
【0037】
この例では、ピッチ駆動システム68、センサ70、ピッチ制御システム80、ケーブル及び電力発生器84は、各々、ハブ20の内面88によって画成されるキャビティ86内に配置される。別の実施形態では、これらの部品は、ハブ20の外側屋根面に対して配置され、外側屋根面に直接的又は間接的に結合し得る。
【0038】
図3は、風力タービンのブレード用のピッチシステム32の一例の概略を示す。ピッチシステム32は、風力タービンのハブに連結された第1の軸受リング及びブレードに連結された第2の軸受リングを含むピッチ軸受(図には図示せず)を備えており、第1の軸受リングは、第2の軸受リングに対して回転可能である。
【0039】
さらに具体的には、
図3は、モータ74、ギアボックス76、メインブレーキ75、及び環状ギア79と係合するピニオン78を備えるピッチ駆動系68を示す。ピッチシステム32は、さらに補助ブレーキシステムを備えている。補助ブレーキシステムは、補助ブレーキ95、及び環状ギア79と係合する補助ピニオン98を備えており、補助ブレーキ95は、ブレードが瞬時位置に維持されるように環状ギア79に制動力が加わる作動状態と、非作動状態との間で切り替わるように構成されている。非作動状態では、環状ギア79に対して補助ブレーキ95による制動力が全く又は実質的に加わらない。補助ブレーキのデフォルト状態は非作動状態である。
【0040】
ピッチ駆動系68は、一般に、ピッチモータ74と共に配置されたモータコントローラを備えていてもよい。かかるモータコントローラは、例えば可変周波数駆動系であってもよいし、或いはモータの動作を制御するための任意の適切なコンバータシステムであってもよい。
【0041】
環状ギア79は、一般に、軸受リングの1つ、例えば軸受リングの内面に設けることができる。幾つかの例では、環状ギアは、ブレードに連結された軸受リングの内面に設けてもよい。これらの例では、ピッチモータ及びギアボックスは、ハブに取り付けてもよい。ピッチモータの位置がブレードの内側にある及び/又は環状ギアが軸受リングの半径方向外側に設けられている他の配置も可能である。
【0042】
正常運転中は、適切なピッチ角は制御システムによって決定し得る。制御システムは、風力タービンの中央制御システム又はその一部であってもよいし、或いは専用のピッチ制御システムであってもよい。例えば、風速、ロータの回転速度その他のパラメータ(負荷など)に基づいて、ブレードの適切なピッチ角を決定し得る。ピッチモータは、ピッチギアボックスを用いてピニオンを駆動し得る。ピッチギアボックスは、相対的に低トルクのピッチモータの相対的に高速回転を、相対的に高トルクの低速回転に変換するように構成し得る。
【0043】
ピッチシステム32において、ピッチ駆動系68のメインブレーキ75が加える制動力は環状ギア79に伝達されて、環状ギアの位置が変わらなくなる。こうして、風力タービンブレードはその位置に維持される。換言すると、ブレードがその長手軸の周りでそれ以上回転するのを防ぐ。ブレードの位置を維持すること或いはブレードをブロックすることは、本明細書ではブレードの回転を実質的に防ぐこととみなし得る。例えば、製造公差及びピニオンの歯と環状ギアの歯との間の所定のクリアランスのため、その長手軸周りのわずかな回転及び非常に小さな振動が依然として起こる可能性がある。
【0044】
幾つかの例では、ブレーキは、1以上のキャリパー及びブレーキディスクを含んでいてもよい。
【0045】
図3に示す例では、メインブレーキ75は、ギアボックス76に制動力を加えて、ギアボックスが動くのを防ぎ、環状ギアに制動力を伝達し得る。ギアボックス76(減速ギヤ76)の入力側にメインブレーキ75を設けることによって、メインブレーキによって加わるトルクはギアボックス76によって増幅される。他の例では、ピッチ駆動系68のメインブレーキ75は、環状ギア79の移動を防ぐことができるピッチ駆動系68内の任意の位置に連結し得る。
【0046】
図3に示すように、補助ブレーキ95を補助ギアボックス96に結合し、次いで補助ギアボックス96を補助ピニオン98に結合してもよい。補助ピニオン98は、環状ギア79にも結合される。正常運転中は、補助ブレーキ95は非作動状態にある。つまり、補助ブレーキのデフォルト状態は非作動状態であり、環状ギア79の位置はピッチ駆動系68だけで決まり、環状ギア79が補助ピニオン98及び補助ギアボックス96を連動して動かすことができる。すなわち、補助ピニオンは回転自在であり、環状ギアによって回転させることができる。この構成によって、風力タービンの正常運転中は環状ギアに影響を与えずに、必要とされる場合にだけバックアップブレーキとして使用し得る補助ブレーキ又は緊急ブレーキを提供し得る。
【0047】
補助ブレーキが作動すると、補助ピニオンがそれ以上の回転するのを実質的に阻止し得る。補助ピニオン98は環状ギアと噛み合っているので、環状ギアも回転できなくなる。
【0048】
補助ブレーキとピニオンの間にギアボックスを用いる一つの態様は、ブレーキに加わるトルクを比較的低くし得る。他の例では、補助ブレーキ95は、補助ギアボックス96を含まない。補助ブレーキ95によって加わるトルクは高くなりかねないが、補助ギアボックスの故障の危険性を回避できる。
【0049】
風力タービンの運転中、ハブに対するブレードの移動を止めるためにピッチ駆動系68のメインブレーキ75を作動させる必要のある状況が幾つか起こり得る。しかし、ピッチ駆動系68に故障が起きると、メインブレーキを作動できなくなってしまいかねない。補助ブレーキ95は、ピッチ駆動系68で故障が検出されたときに作動状態に切り替わるように構成し得る。幾つかの例では、補助ブレーキの状態は、制御システム80によって切り替えることができる。
【0050】
ピッチ駆動系の故障は、ピッチ駆動系で環状ギアに制動力を加えることができなくなってしまい、ハブに対するブレードの動きを止められなくなってしまうおそれがある。幾つかの例では、ピッチ駆動系の故障は、メインブレーキの故障であってもよい。他の例では、ピッチ駆動系の故障は、環状ギアへの制動力の印加プロセスに関与するピッチ駆動系のいずれかの部品(例えばピッチ駆動系のギアボックス又はモータ軸など)における故障であってもよい。
【0051】
図3の例では、補助ブレーキ95は、補助ピニオンを駆動するための補助駆動系又は駆動機構(例えばモータ)には作動可能に接続されていない。これによって、追加コストを回避しつつ、ピッチシステムのための簡単で信頼性の高いバックアップブレーキが提供される。また、2つのモータその他の駆動機構を協調制御する必要もない。
【0052】
補助ブレーキは、補助ギアボックスに結合してもよく、制御システムとも接続することができ、制御システムによって、ピッチ駆動系の故障が検出されたときだけ、補助ブレーキの状態を非作動状態から作動状態に切り替えることができる。
【0053】
作動状態では、補助ブレーキ95は、制動トルクを補助ギアボックス96に加え、補助ギアボックス96は制動トルクを補助ピニオン98に伝達して、補助ピニオン98の回転を止め、環状ギア79にブレーキトルクが加わる。
【0054】
さらに、監視システムを、環状ギア79に加わる制動力を監視するように構成してもよい。こうして、監視システムで、ピッチ駆動系68における故障を検出できる。幾つかの例では、監視システムは、環状ギア79の位置に関する情報を提供するように構成し得る第1の位置センサ93を少なくとも備えていてもよい。ピッチ駆動系68のメインブレーキによって制動力が印加されたときは、環状ギア79は動かないようにすべきである。監視システムは、環状ギアの定位置を検出して、ピッチ駆動系68及びメインブレーキが要求通り機能しているという情報を提供する。
【0055】
一方、メインブレーキが作動しているにも関わらず環状ギアの回転が検知されたときは、故障が検出されて補助ブレーキを作動状態に切り替えることができる。
【0056】
この例では、故障の検出は、2つの独立したシステムで環状ギアの位置を決定することを含んでいてもよい。
【0057】
幾つかの例では、故障を検出するための監視システム又は制御システムは、第1の位置センサ93及び第2の位置センサ73を備えていてもよい。特に、ピッチシステム32は環状ギアと共に配置された第1の位置センサ93を備えていてもよく、ピッチ駆動系68は第2の位置センサ73を備えていてもよい。第1及び第2の位置センサ93,73は、制御システム80と通信していてもよく、ピッチ駆動系での故障の検出に使用し得る情報を提供し得る。幾つかの例では、第1の位置センサ93はレゾルバであってもよく、第2の位置センサ73はピッチモータのエンコーダであってもよい。
【0058】
第1及び第2の位置センサ93,73は、環状ギア79の位置に関する情報を含む冗長信号を発信するように構成し得る。ピッチ駆動系68のすべての部品が正しく機能しているときは、第1及び第2の位置センサ93,73は、環状ギア79の位置に関して或いは環状ギアの回転(従ってハブに対するブレードの動き)に関して、一致する信号を発信する。こうして、ピッチシステムを適切に監視することができる。
【0059】
ピッチ駆動系6が故障した場合、例えばギアボックス、モータ、モータのコントローラ又はピッチ駆動系のピニオンが損傷した場合、ピッチ駆動系の第2の位置センサ73は、第1の位置センサ93で求めた位置とは矛盾する位置信号を発信することがある。
【0060】
第1及び第2の位置センサ93,73からの異なる信号は、ピッチシステムの故障を示し得る。補助ブレーキ95は、監視システムの第1及び第2の位置センサ93,73間に食い違いがあるときは作動状態に切り替わるように構成し得る。こうして、補助ブレーキは、ピッチ駆動系に故障が検知されたときに作動する非常ブレーキとして作用し得る。
【0061】
図3に示すように、補助ブレーキ95は、補助ブレーキの状態を切り替えるように構成された制御システム80に連結し得る。制御システム80は、第1及び第2の位置センサ93,73を備える監視システムと通信し得る。ピッチ駆動系68で故障が検出された場合、制御システム80は、補助ブレーキ95の状態を作動状態に切り替えるように構成し得る。こうしてブレードのピッチ運動を停止させることができる。
【0062】
ピッチ駆動系の故障は、ハブに対するブレードの無制御な動きを招きかねない。幾つかの例では、補助ブレーキは、遠心ブレーキを備えていてもよい。遠心ブレーキは、環状ギアの回転が所定の速度に達したときに作動状態に切り替わるように構成し得る。つまり、ピッチ駆動システムが故障して、ブレードが緩むと、ブレードがその長手軸の周りで比較的速く回転するおそれがある。速度が特定の閾値に達すると、遠心ブレーキが自動的に作動し、制動力が加わる。ブレードの回転速度が遅くなると制動力が消失する。
【0063】
本開示の別の態様では、方法400を開示する。
図4は、風力タービンのブレード用のピッチシステムに緊急ピッチ制動トルクをかける方法400の一例のフローチャートである。
【0064】
図4に示すように、方法400は、ブロック402において、ピッチシステムのピッチ駆動系での故障を検出することを含んでおり、ピッチ駆動系は、モータ、ギアボックス、メインブレーキ、及びピッチシステムの環状ギアと係合するピニオンを含む。さらに、本方法は、ブロック404において、故障が検出されたときに補助ブレーキを非作動状態から作動状態に切り替えることを含む。作動状態では、補助ブレーキが環状ギアと噛み合う補助ピニオンをブロックし、環状ギアに制動力を加えてブレードを瞬時位置に維持する。
【0065】
方法400は、ピッチシステムの環状ギアに確実に制動力を加えることのできる単純で信頼性の高い方法を提供する。方法400は、風力タービンのハブに対してブレードの無制御な動きが起こるのを防止する。
【0066】
補助ブレーキは、補助ギアボックスに連結してもよく、補助ギアボックスは、補助ピニオンに連結してもよい。補助ピニオンは、ピッチシステムの環状ギアに連結してもよい。非作動状態では、補助ブレーキはピッチシステムの環状ギアの動きに影響を与えない。
【0067】
しかし、補助ブレーキが非作動状態から作動状態に切り替わると、補助ブレーキが制動力を補助ギアボックスに加え、この制動力が補助ピニオンに伝達され、環状ギアが動かなくなる。従って、ハブに対するブレードの動きが阻止される。
【0068】
補助ブレーキは、例えば、モータなどの駆動機構に作動可能に接続されていなくてもよい。従って、風力タービンブレードのピッチ角に関係なく環状ギアに制動力を加えることのできる簡易な補助ブレーキを設けてもよい。補助ブレーキの追加部品の使用を減らすことができ、複雑でなく信頼性の高いピッチシステムを提供することができる。
【0069】
幾つかの例では、故障の検出は、環状ギアに制動力を加える際の故障を検出することを含む。監視システムは、環状ギアに加わる制動力を監視するように構成してもよく、故障を制御システムによって検出してもよく、上述の通り、制御システムによって補助ブレーキを非作動状態から作動状態に切り替えてもよい。
【0070】
この例では、故障の検出は、2つの独立した(センサ)システムを有する環状ギアの位置を決定することを含んでいてもよい。
【0071】
この例では、風力タービンは、2つのさらなるブレードを備えており、本方法は、2つのさらなるブレードが羽根のある位置に向かってピッチングされるシャットダウン手順中に実施し得る。かかるシナリオでは、ブレードが緩むと非常に高い負荷が発生し、重大な負荷ケースを構成することさえあることがわかっている。
【0072】
別の態様では、風力タービンのブレードに対するピッチシステムを備える風力タービンが開示される。ピッチシステムは、風力タービンのハブに連結された第1の軸受リング及びブレードに連結された第2の軸受リングを有するピッチ軸受を備えており、第1の軸受リングは、第2の軸受リングに対して回転可能である。ピッチシステムは、環状ギアも含んでいる。本システムはさらに、モータ、ギアボックス、メインブレーキ、及び環状ギアと係合するピニオンを有するピッチ駆動系を含む。加えて、ピッチシステムは、環状ギアと係合する補助ブレーキと、補助ピニオンとを有する補助ブレーキシステムを含んでおり、補助ブレーキは、環状ギアに制動力が加わりる作動状態と、環状ギアに実質的に制動力が加わりない非作動状態とを切り替えるように構成され、補助ブレーキのデフォルト状態が非作動状態である。
【0073】
風力タービンは、本願全体で開示された実施例のいずれかに係るピッチシステムを備えることができる。幾つかの例では、風力タービンは、そのブレードの少なくとも1枚にピッチシステムを備えていてもよい。他の例では、風力タービンは、そのブレード全てにピッチシステムを備えていてもよい。
【0074】
本明細書では、本発明を好ましい実施形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲と文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と非本質的な差しかない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。当業者であれば、本願に記載した様々な実施形態の様々な態様並びにかかる各態様について公知の他の均等物を適宜組み合わせて、本願の原則に則した追加の実施形態及び技術を構成することができる。図面に関する符号が特許請求の範囲に括弧書きで記載されている場合、そうした符号は、特許請求の範囲の記載を理解し易くするためのものにすぎず、特許請求の範囲に記載された技術的範囲を限定するものと解すべきではない。
【符号の説明】
【0075】
20 ハブ
22 ロータブレード
34 ピッチ軸
66 ピッチアセンブリ
68 ピッチ駆動システム
70 センサ
72 ピッチ軸受
73 第2の位置センサ
74 ピッチ駆動モータ
75 メインブレーキ
76 ギアボックス
78 ピッチ駆動ピニオン
79 環状ギア
80 ピッチ制御システム
93 第1の位置センサ
95 補助ブレーキ
96 補助ギアボックス
98 補助ピニオン
【外国語明細書】