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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117727
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H02K3/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012274
(22)【出願日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2023023238
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】桑原 優
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA01
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB14
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC17
5H603CE04
(57)【要約】
【課題】コイル部での損失を低減することができる回転電機を提供する。
【解決手段】モータは、コイル部211を有している。コイル部211は、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bを有している。内周コイル線状体220Bは、コイル軸方向αに積層されるようにステータコアに対して巻回されている。外周コイル線状体220Aは、内周コイル線状体220Bの外周側に設けられ、内周コイル線状体220Bに並行して巻回されている。外周コイル線状体220Aは、複数の外周コイル線221Aが撚られて線状に形成されている。内周コイル線状体220Bは、複数の内周コイル線221Bが撚られて線状に形成されている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル線(221A,221B)により形成されたコイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転し、前記回転軸線に沿って前記ステータに並べられたロータ(300a,300b)と、
を備え、
前記コイル部は、
前記コイル線である第1コイル線(221A)を複数有し、複数の前記第1コイル線が撚られて線状に形成され、巻回された第1線状体(220A)と、
前記コイル線である第2コイル線(221B)を複数有し、複数の前記第2コイル線が撚られて線状に形成され、前記コイル部の径方向(γ)において前記第1線状体の内周側に並べられ、前記第1線状体に並行して巻回された第2線状体(220B)と、
を有している回転電機。
【請求項2】
前記コイル部の径方向(γ)での前記第1線状体の幅寸法(WA)は、前記径方向での前記第2線状体の幅寸法(WB)よりも大きい、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
複数の前記第1コイル線が有する導体(222)の断面積(ScA)を合計した第1断面積(StA)は、複数の前記第2コイル線が有する導体(222)の断面積(ScB)を合計した第2断面積(StB)よりも大きい、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第1コイル線の数は、前記第2コイル線の数よりも多い、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第1コイル線が有する導体(222)の断面積(ScA)が、前記第2コイル線が有する導体(222)の断面積(ScB)よりも大きい、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項6】
前記コイル部は、
前記第1線状体と前記第2線状体との間に設けられ、前記第1線状体と前記第2線状体とを接合している接合部(226)、を有している請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項7】
前記ステータは、
前記コイル部である第1コイル部(219a)と、前記第1コイル部と同相の前記コイル部であって前記コイル部に通電可能に接続された第2コイル部(219b)と、を含んで構成されたコイル部ユニット(219)と、
前記第1コイル部が有する前記第1線状体と前記第2コイル部が有する前記第2線状体とを通電可能に接続している第1接続線(218a)と、
前記第2コイル部が有する前記第1線状体と前記第1コイル部が有する前記第1線状体とを通電可能に接続している第2接続線(218b)と、
を有している、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項8】
前記第1線状体は、複数の前記第1コイル線により形成された外周面(220Aos)を有し、
前記第2線状体は、複数の前記第2コイル線により形成された外周面(220Bos)を有している、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項9】
前記ロータである第1ロータ(300a)と、
前記ロータであり、前記コイル部を介して前記第1ロータに前記回転軸線に沿って並べられた第2ロータ(300b)と、
を備えている請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項10】
飛行体(10)に設けられ、前記飛行体を飛行させるために駆動する回転電機である、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項11】
前記第1線状体及び前記第2線状体では、前記コイル部の径方向(γ)に並んだ前記コイル線の数が、前記コイル部の軸方向(α)に並んだ前記コイル線の数よりも多い、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項12】
前記第1線状体及び前記第2線状体は、前記コイル部の径方向(γ)での前記第1線状体及び前記第2線状体の幅寸法(WA,WB)が前記コイル部の軸方向(α)での前記第1線状体及び前記第2線状体の厚さ寸法(DA,DB)よりも大きくなるように扁平している、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項13】
前記ステータは、
前記第1線状体及び前記第2線状体の少なくとも一方により形成され、前記コイル部から引き出されたコイル引出線(212,213)、を有している請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項14】
前記コイル線は、
通電可能な導体である素線(222)と、
電気絶縁性を有し、前記素線を被覆する被覆部(223)と、
を有しており、
前記第1線状体及び前記第2線状体では、前記コイル部の周方向(β)に直交する方向に隣り合う2つの前記コイル線がそれぞれの前記被覆部で互いに密着するように、複数の前記コイル線が撚られている、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項15】
前記コイル部は、
前記コイル部の周方向(β)に直交する方向に隣り合う2つの前記コイル線の間に設けられ、これらコイル線を接合している接合部(225)、を有している請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項16】
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル線(221A,221B)により形成されたコイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転し、前記回転軸線に沿って前記ステータに並べられたロータ(300a,300b)と、
を備え、
前記コイル部は、
前記コイル線である第1コイル線(221A)を複数有し、複数の前記第1コイル線が撚られて線状に形成され、巻回された第1線状体(220A)と、
前記コイル線である第2コイル線(221B)を複数有し、複数の前記第2コイル線が撚られて線状に形成され、前記コイル部の径方向(γ)において前記第1線状体の内周側に並べられ、前記第1線状体に並行して巻回された第2線状体(220B)と、
前記コイル線である第3コイル線(221C)を複数有し、複数の前記第3コイル線が撚られて線状に形成され、前記径方向において前記第1線状体と前記第2線状体との間に設けられ、前記第1線状体及び前記第2線状体に並行して巻回された第3線状体(220C)と、
を有している回転電機。
【請求項17】
前記第3コイル線が有する導体(222)の断面積(ScC)は、前記第1コイル線が有する導体(222)の断面積(ScA)よりも小さく、前記第2コイル線が有する導体(222)の断面積(ScB)よりも大きい、請求項16に記載の回転電機。
【請求項18】
前記第3線状体の撚りは、前記第1線状体の撚りよりも強く、前記第2線状体の撚りよりも弱い、請求項16又は17に記載の回転電機。
【請求項19】
前記コイル部として、各線状体が前記コイル部の第1端面(211c)及び第2端面(211d)のうち一方から他方に向けて前記コイル部の軸方向(α)に積層される向きを基準にして右巻きに巻回された右巻きコイル部(211R)と、
前記コイル部として、各線状体が前記向きを基準にして左巻きに巻回された左巻きコイル部(211L)と、
を備え、
前記右巻きコイル部において複数の前記コイル線が撚られた向きと、前記左巻きコイル部において複数の前記コイル線が撚られた向きとが逆向きである、請求項1又は16に記載の回転電機。
【請求項20】
前記第2線状体の撚りは、前記第1線状体の撚りよりも強い、請求項1又は16に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アキシャルギャップ式のモータについて記載されている。このモータでは、ロータとステータとが軸方向に並べられている。このロータは、2本の平角線により形成されたコイルを有している。このコイルでは、2本の平角線がコイルの径方向に並べられた状態で巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-137183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、2本の平角線のうち内周側の平角線において鎖交磁束等による損失が増加しやすい。このため、コイルでの損失が増加することが懸念される。
【0005】
本開示の1つの目的は、コイル部での損失を低減することができる回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するため、開示された第1の態様は、
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル線(221A,221B)により形成されたコイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転し、回転軸線に沿ってステータに並べられたロータ(300a,300b)と、
を備え、
コイル部は、
コイル線である第1コイル線(221A)を複数有し、複数の第1コイル線が撚られて線状に形成され、巻回された第1線状体(220A)と、
コイル線である第2コイル線(221B)を複数有し、複数の第2コイル線が撚られて線状に形成され、コイル部の径方向(γ)において第1線状体の内周側に並べられ、第1線状体に並行して巻回された第2線状体(220B)と、
を有している回転電機。である。
【0008】
第1の態様によれば、第1線状体及び第2線状体について、コイル部を構成する線状体は、コイル線が複数撚られて線状に形成されている。この構成では、線状体において、複数のコイル線が順番に入れ替わるようにしてコイル部の内周側に配置される。このため、線状体において、コイル部の内周側に配置された特定のコイル線で鎖交磁束等による損失が増加する、ということを回避できる。したがって、コイル部での損失を低減することができる。
【0009】
しかも、第1線状体と第2線状体とがコイル径方向に並べられている。この構成では、第1線状体及び第2線状体の幅寸法がコイル部の幅寸法よりも小さくなる。このため、第1線状体及び第2線状体のそれぞれにおいて、コイル周方向において内周端の長さと外周端の長さとの差を低減できる。したがって、コイル部では、第1線状体及び第2線状体のそれぞれにおいて、外周側の部位が伸びすぎて切れるなどの異常が発生する、ということを抑制できる。このように、第1線状体及び第2線状体の異常発生を抑制することで、コイル部での損失を更に低減することができる。
【0010】
第2の態様は、
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル線(221A,221B)により形成されたコイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転し、回転軸線に沿ってステータに並べられたロータ(300a,300b)と、
を備え、
コイル部は、
コイル線である第1コイル線(221A)を複数有し、複数の第1コイル線が撚られて線状に形成され、巻回された第1線状体(220A)と、
コイル線である第2コイル線(221B)を複数有し、複数の第2コイル線が撚られて線状に形成され、コイル部の径方向(γ)において第1線状体の内周側に並べられ、第1線状体に並行して巻回された第2線状体(220B)と、
コイル線である第3コイル線(221C)を複数有し、複数の第3コイル線が撚られて線状に形成され、径方向において第1線状体と第2線状体との間に設けられ、第1線状体及び第2線状体に並行して巻回された第3線状体(220C)と、
を有している回転電機である。
【0011】
第2の態様によれば、第1線状体、第2線状体及び第3線状体はいずれも、コイル線が複数撚られて線状に形成されている。このため、上記第1の態様と同様に、コイル部での損失を低減することができる。
【0012】
しかも、第1線状体と第2線状体と第3線状体とがコイル径方向に並べられている。この構成では、第1線状体、第2線状体及び第3線状体の幅寸法がコイル部の幅寸法よりも小さくなる。このため、第1線状体、第2線状体及び第3線状体のそれぞれにおいて、コイル周方向において内周端の長さと外周端の長さとの差を低減できる。したがって、コイル部では、第1線状体、第2線状体及び第3線状体のそれぞれにおいて、外周側の部位が伸びすぎて切れるなどの異常が発生する、ということを抑制できる。このように、第1線状体、第2線状体及び第3線状体の異常発生を抑制することで、コイル部での損失を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態におけるeVTOLの構成を示す図。
図2】推進システムの電気的な構成を示す図。
図3】EPUの概略斜視図。
図4】モータ装置の縦断面図。
図5】コイルユニット及びモータハウジングの平面図。
図6】モータ装置の概略縦断面図。
図7】コイル線の一例を示すコイル部の概略平面図。
図8】比較例において比較外周線及び比較内周線を示すコイル部の概略平面図。
図9】コイル部の電気的な構成を示す図。
図10】コイル線状体を拡大したコイル部の概略平面図。
図11】コイル内周側からコイル線状体を拡大したコイル部の概略側面図
図12図8のXII-XII線断面図であり、コイル線状体の縦断面図。
図13】第2実施形態におけるコイル線状体の縦断面図。
図14】第3実施形態におけるコイル線状体の縦断面図。
図15】第4実施形態におけるコイル線状体の縦断面図。
図16】第5実施形態におけるコイル線状体の縦断面図。
図17】第6実施形態におけるコイル線状体の縦断面図。
図18】第7実施形態におけるコイル部の電気的な構成を示す図。
図19】第8実施形態におけるコイルユニットの一部を拡大した平面図。
図20】コイルユニットの一部をモータ径方向の内側から見た概略正面図。
図21】コイル部の概略平面図。
図22】コイル部の電気的な構成を示す図。
図23】コイル線状体を拡大したコイル部の概略平面図。
図24】コイル線状体の縦断面図。
図25】左巻きコイル部及び右巻きコイル部の平面図。
図26】左巻きコイル部と右巻きコイル部との境界部周辺の拡大平面図。
図27】第9実施形態におけるコイル線状体を拡大したコイル部の概略平面図。
図28】左巻きコイル部と右巻きコイル部との境界部周辺の拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0015】
<第1実施形態>
図1に示す推進システム30は、eVTOL10に搭載されている。eVTOL10は、電動垂直離着陸機であり、垂直方向に離着陸することが可能である。eVTOLは、electric Vertical Take-Off and Landing aircraftの略称である。eVTOL10は、大気中を飛行する航空機であり、飛行体に相当する。eVTOL10は、電動式の電動航空機でもあり、電動飛行体と称されることがある。eVTOL10は、乗員が乗る有人航空機である。推進システム30は、eVTOL10を飛行させるために駆動するシステムである。
【0016】
eVTOL10は、機体11及びプロペラ20を有している。機体11は、機体本体12及び翼13を有している。機体本体12は、機体11の胴体であり、例えば前後に延びた形状になっている。機体本体12は、乗員が乗るための乗員室を有している。翼13は、機体本体12から延びており、機体本体12に複数設けられている。翼13は固定翼である。複数の翼13には、主翼、尾翼などが含まれている。
【0017】
プロペラ20は、機体11に複数設けられている。eVTOL10は、少なくとも3つのプロペラ20を有するマルチコプタである。例えばプロペラ20は、機体11に少なくとも4つ設けられている。プロペラ20は、機体本体12及び翼13のそれぞれに設けられている。プロペラ20は、プロペラ軸線を中心に回転する。プロペラ軸線は、例えばプロペラ20の中心線である。プロペラ20は、eVTOL10に推力や揚力を生じさせることが可能である。また、プロペラ20は、ロータや回転翼と称されることがある。
【0018】
プロペラ20は、ブレード21及びボス22を有している。ブレード21は、プロペラ軸線の周方向に複数並べられている。ボス22は、複数のブレード21を連結している。ブレード21は、ボス22からプロペラ軸線の径方向に延びている。プロペラ20は、図示しないプロペラシャフトを有している。プロペラシャフトは、プロペラ20の回転軸であり、ボス22からプロペラ軸線に沿って延びている。
【0019】
eVTOL10は、チルトロータ機である。eVTOL10においては、プロペラ20のチルト角を調整可能になっている。なお、eVTOL10は、チルトロータ機でなくてもよい。例えば、eVTOL10は、リフト用のプロペラ20とクルーズ用のプロペラ20とのそれぞれを有していてもよい。
【0020】
eVTOL10は、バッテリ31、分配器32、飛行制御装置40及びEPU50を有している。バッテリ31、分配器32、飛行制御装置40及びEPU50は、推進システム30に含まれている。バッテリ31は、複数のEPU50に通電可能に接続されている。バッテリ31は、EPU50に電力を供給する電力供給部であり、電源部に相当する。バッテリ31は、EPU50に直流電圧を印加する直流電圧源である。バッテリ31は、充放電可能な2次電池を有している。バッテリ31は、飛行制御装置40にも電力を供給する。なお、電源部としては、バッテリ31に加えて又は代えて、燃料電池や発電機などが用いられてもよい。
【0021】
分配器32は、バッテリ31及び複数のEPU50に電気的に接続されている。分配器32は、バッテリ31からの電力を複数のEPU50に分配する。分配器32がEPU50に分配する電力は、EPU50を駆動させるための駆動電力である。
【0022】
飛行制御装置40は、推進システム30を制御する。飛行制御装置40は、eVTOL10を飛行させるための飛行制御を行う。飛行制御装置40は、複数のEPU50に通信可能に接続されている。飛行制御装置40は、複数のEPU50を個別に制御する。飛行制御装置40は、後述する制御回路160を介してEPU50の制御を行う。飛行制御装置40は、制御回路160の制御を行う。
【0023】
EPU50は、プロペラ20を駆動回転させるために駆動する装置であり、駆動装置に相当する。EPUは、Electric Propulsion Unitの略称である。EPU50は、電駆動装置や電駆動システムと称されることがある。EPU50は、複数のプロペラ20のそれぞれに対して個別に設けられている。EPU50は、プロペラ軸線に沿ってプロペラ20に並べられている。複数のEPU50はいずれも、機体11に固定されている。EPU50は、プロペラ20を回転可能に支持している。EPU50は、プロペラ20に接続されている。プロペラ20は、EPU50を介して機体11に固定されている。プロペラ20のチルト角が変更される場合、EPU50の角度も変更される。
【0024】
eVTOL10は、推進装置15を有している。推進装置15は、eVTOL10を推進させるための装置である。eVTOL10は、推進装置15による推進によりリフト等の飛行が可能になる。推進装置15は、プロペラ20及びEPU50を有している。推進装置15では、EPU50の駆動に伴ってプロペラ20が回転する。プロペラ20は回転体に相当する。eVTOL10は、プロペラ20の回転により飛行する。すなわち、eVTOL10は、プロペラ20の回転により移動する。eVTOL10は、移動体に相当する。
【0025】
図1図2に示すように、EPU50は、モータ装置60及びインバータ装置80を有している。モータ装置60はモータ61を有している。モータ装置60が回転電機に相当する。インバータ装置80はインバータ81を有している。モータ61は、インバータ81を介してバッテリ31に通電可能に接続されている。モータ61は、インバータ81を介してバッテリ31から供給される電力に応じて駆動する。
【0026】
モータ61は、複数相の交流モータである。モータ61は、例えば3相交流方式のモータであり、U相、V相、W相を有している。モータ61は、移動体が移動するための移動駆動源であり、電動機として機能する。モータ61としては、例えばブラシレスモータが用いられている。モータ61は、回生時に発電機として機能する。モータ61は、複数相のコイル64を有している。コイル64は、巻線であり、電機子を形成している。コイル64は、U相、V相、W相のそれぞれに設けられている。モータ61では、複数相のコイル64が中性点65にて互いに接続されている。
【0027】
図2において、インバータ81は、モータ61に供給する電力を変換することでモータ61を駆動する。インバータ81は、モータ61に供給される電力を直流から交流に変換する。インバータ81は、電力を変換する電力変換部である。インバータ81は、複数相の電力変換部であり、複数相のそれぞれについて電力変換を行う。インバータ81は、例えば3相インバータであり、U相、V相、W相のそれぞれについて電力変換を行う。インバータ装置80は、電力変換装置と称されることがある。
【0028】
インバータ装置80は、Pライン141、Nライン142を有している。Pライン141及びNライン142は、バッテリ31とインバータ81とを電気的に接続している。Pライン141は、バッテリ31の正極に電気的に接続されている。Nライン142は、バッテリ31の負極に電気的に接続されている。バッテリ31においては、正極が高電位側の電極であり、負極が低電位側の電極である。Pライン141及びNライン142は、電力を供給するための電力ラインである。Pライン141は、高電位側の電力ラインであり、高電位ラインと称されることがある。Nライン142は、低電位側の電力ラインであり、低電位ラインと称されることがある。
【0029】
EPU50は、出力ライン143を有している。出力ライン143は、モータ61に電力を供給するための電力ラインである。出力ライン143は、モータ61とインバータ81とを電気的に接続している。出力ライン143は、モータ装置60とインバータ装置80とにかけ渡された状態になっている。
【0030】
インバータ装置80は、平滑コンデンサ145を有している。平滑コンデンサ145は、バッテリ31から供給される直流電圧を平滑化するコンデンサである。平滑コンデンサ145は、バッテリ31とインバータ81との間において、Pライン141とNライン142とに接続されている。平滑コンデンサ145は、インバータ81に対して並列に接続されている。
【0031】
インバータ81は、電力変換回路であり、例えばDC-AC変換回路である。インバータ81は、複数相分の上下アーム回路85を有している。例えば、インバータ81は、U相、V相、W相のそれぞれについて上下アーム回路85を有している。上下アーム回路85は、上アーム85aと、下アーム85bを有している。上アーム85a及び下アーム85bは、バッテリ31に対して直列に接続されている。上アーム85aはPライン141に接続され、下アーム85bはNライン142に接続されている。
【0032】
出力ライン143は、複数相分のそれぞれについて上下アーム回路85に接続されている。出力ライン143は、上アーム85aと下アーム85bとの間に接続されている。出力ライン143は、複数相のそれぞれにおいて、上下アーム回路85とコイル64とを接続している。出力ライン143は、コイル64において中性点65とは反対側に接続されている。
【0033】
上アーム85a及び下アーム85bは、アームスイッチ86及びダイオード87を有している。アームスイッチ86は、例えばMOSFET等のトランジスタである。MOSFETは、Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistorの略称である。アームスイッチ86は、スイッチ素子であり、スイッチングにより電力を変換することが可能である。スイッチ素子は、パワー素子等の半導体素子であればよい。アームスイッチ86は、電力を変換するための変換スイッチである。
【0034】
EPU50は、制御回路160を有している。制御回路160は、インバータ装置80に含まれている。制御回路160は、インバータ81の駆動を制御する。制御回路160は、インバータ81を介してモータ61の駆動を制御する。制御回路160は、モータ制御部と称されることがある。図2では、制御回路160をCDと図示している。
【0035】
図3に示すように、EPU50では、モータ装置60とインバータ装置80とがモータ軸線Cmに沿って軸方向ADに並べられている。モータ装置60は、軸方向ADにおいてプロペラ20とインバータ装置80との間に設けられている。モータ軸線Cmは、モータ61の中心線であり、直線状に延びる仮想線である。モータ軸線Cmが回転軸線に相当する。軸方向ADは、モータ軸線Cmが延びた方向である。
【0036】
モータ軸線Cmについては、軸方向ADと周方向CDと径方向RDとが互いに直交している。周方向CDは、モータ61の回転方向である。径方向RDについては、外側が径方向外側や外周側と称され、内側が径方向内側や内周側と称されることがある。軸方向ADは、アキシャル方向と称されることがある。
【0037】
EPU50は、モータハウジング70及びインバータハウジング90を有している。モータハウジング70は、モータ装置60に含まれている。モータハウジング70は、モータ61を収容している。インバータハウジング90は、インバータ装置80に含まれている。インバータハウジング90は、インバータ81を収容している。モータハウジング70とインバータハウジング90とは、互いに接続されている。
【0038】
図4に示すように、モータハウジング70は、モータ外周壁71、リアフレーム370及びドライブフレーム390を有している。モータ外周壁71及びフレーム370,390は、金属材料等により形成されており、熱伝導性を有している。モータ外周壁71は、筒状に形成されており、軸方向ADに延びている。フレーム370,390は、板状に形成されており、軸方向ADに直交する方向に延びている。リアフレーム370とドライブフレーム390とは、モータ外周壁71を介して軸方向ADに並べられている。フレーム370,390は、ボルト等の固定具によりモータ外周壁71に固定されている。なお、図4には、モータ装置60をモータ軸線Cmに沿って切断した縦断面が図示されている。
【0039】
モータハウジング70は、モータハウジング外周面70a及びモータハウジング内周面70bを有している。モータハウジング外周面70aは、モータハウジング70の外周面であり、モータハウジング70の外面に含まれている。モータハウジング内周面70bは、モータハウジング70の内周面であり、モータハウジング70の内面に含まれている。モータハウジング外周面70a及びモータハウジング内周面70bは、モータ外周壁71により形成されている。
【0040】
リアフレーム370は、モータ外周壁71の内側空間をインバータ装置80側から覆っている。リアフレーム370は、モータ外周壁71を介してプロペラ20とは反対側に設けられている。ドライブフレーム390は、モータ外周壁71の内側空間をインバータ装置80とは反対側から覆っている。ドライブフレーム390は、モータ外周壁71を介してプロペラ20側に設けられている。
【0041】
モータハウジング70は、モータフィン72を有している。モータフィン72は、モータハウジング70の外面に設けられている。例えば、モータフィン72は、モータハウジング外周面70aに設けられている。モータフィン72は、モータ外周壁71から外周側に向けて突出している。モータフィン72は、周方向CDに直交する方向に延びている。モータフィン72は、周方向CDに複数並べられている。モータフィン72は、モータ装置60の熱を外部に放出する放熱フィンである。
【0042】
モータ61は、ステータ200、第1ロータ300a、第2ロータ300b及びシャフト340を有している。ステータ200は固定子である。ステータ200は、コイル64を有している。ロータ300a,300bは回転子である。ロータ300a,300bは、ステータ200に対して相対的に回転する。ロータ300a,300bは、モータ軸線Cmを中心に回転する。モータ軸線Cmは、ロータ300a,300bの中心線である。ステータ200は、周方向CDに環状に延びている。モータ軸線Cmは、ステータ200の中心線に一致している。
【0043】
モータ装置60は、アキシャルギャップ式の回転電機である。モータ61は、アキシャルギャップ式のモータである。モータ61では、ステータ200とロータ300a,300bとがモータ軸線Cmに沿って軸方向ADに並べられている。モータ装置60は、ダブルロータ式の回転電機である。モータ61は、ダブルロータ式のモータである。第1ロータ300aと第2ロータ300bとは、ステータ200を介して軸方向ADに並べられている。ステータ200は、第1ロータ300a及び第2ロータ300bという2つのロータの間に設けられている。本実施形態のモータ61は、ダブルアキシャルモータと称されることがある。
【0044】
シャフト340は、ロータ300a,300bを支持している。シャフト340は、ロータ300a,300bと共にモータ軸線Cmを中心に回転する。シャフト340の中心線は、モータ軸線Cmに一致している。シャフト340は、ロータ300a,300bとプロペラ20とを接続している。
【0045】
ロータ300a,300bは、磁石部310及び磁石ホルダ320を有している。磁石部310は、ロータ300a,300bのそれぞれにおいて周方向CDに複数並べられている。複数の磁石部310は、ロータ300a,300bの回転方向に並べられている。周方向CDに隣り合う2つの磁石部310は、接着剤等で互いに固定されている。磁石部310は、永久磁石を含んで構成されており、界磁を形成している。ロータ300a,300bでは、磁石部310が磁束を発生させる。第1ロータ300aの磁石部310と第2ロータ300bの磁石部310とは、ステータ200を介して軸方向ADに並べられている。磁石ホルダ320は、磁石部310を支持している。磁石ホルダ320は、ロータ300a,300bの外周端及び内周端を形成している。
【0046】
ステータ200は、コイルユニット210を有している。コイルユニット210は、周方向CDに環状に延びている。コイルユニット210は、コイル64を形成している。コイルユニット210は、コイル部211及びステータコア231を有している。コイル部211は、電線等により形成されており、通電可能である。コイル部211は、ステータコア231に巻回されている。コイル部211は、全体として筒状に形成されており、軸方向ADに延びている。ステータコア231は、鉄心であり、軸方向ADに延びている。コイル部211及びステータコア231は、モータハウジング内周面70bに沿って周方向CDに複数並べられている。コイルユニット210では、複数のコイル部211によりコイル64が形成されている。
【0047】
モータ61は、第1アキシャルギャップ305a及び第2アキシャルギャップ305bを有している。アキシャルギャップ305a,305bは、ステータ200とロータ300a,300bとの隙間である。アキシャルギャップ305a,305bには、磁石部310とステータコア231との隙間が含まれている。アキシャルギャップ305a,305bは、ステータ200とロータ300a,300bとの間において、軸方向ADに直交する方向に延びている。第1アキシャルギャップ305aは、ステータ200と第1ロータ300aとの隙間である。第2アキシャルギャップ305bは、ステータ200と第2ロータ300bとの隙間である。
【0048】
モータ装置60は、リアベアリング350及びドライブベアリング360を有している。ベアリング350,360は、シャフト340を回転可能に支持している。ベアリング350,360は、周方向CDに環状に延びている。リアベアリング350とドライブベアリング360とは、ロータ300a,300bを介して軸方向ADに並べられている。ベアリング350,360は、モータハウジング70に固定されている。リアベアリング350は、リアフレーム370に固定されている。ドライブベアリング360は、ドライブフレーム390に固定されている。
【0049】
図5図6に示すように、ステータ200は、コアモジュール230を有している。コアモジュール230は、ステータコア231を有しており、コイルユニット210に含まれている。コアモジュール230が周方向CDに複数並べられていることで、ステータコア231が周方向CDに複数並べられている。コアモジュール230は、ステータコア231に加えて、ボビン240を有している。ボビン240は、樹脂材料等により形成されており、電気絶縁性を有している。ボビン240は、熱伝導性を有している。ボビン240は、全体として筒状に形成されており、軸方向ADに延びている。ボビン240は、ステータコア231の外周面を覆うようにステータコア231の少なくとも一部を収容している。コイル部211は、ボビン240を介してステータコア231に巻回されている。
【0050】
図7に示すように、コイル部211は、コイル軸線Ccに沿ってコイル軸方向αに延びている。コイル軸線Ccは、コイル部211の中心線であり、直線状に延びる仮想線である。コイル軸方向αは、コイル軸線Ccの軸方向であり、コイル部211の軸方向に相当する。コイル軸線Ccについては、コイル軸方向αとコイル周方向βとコイル径方向γとが互いに直交している。コイル周方向βは、コイル軸線Ccの周方向であり、コイル部211の周方向に相当する。コイル径方向γは、コイル軸線Ccの径方向であり、コイル部211の径方向に相当する。コイル部211は、コイル周方向βに環状に延びている。コイル径方向γについては、外側が径方向外側や外周側と称され、内側が径方向内側や内周側と称されることがある。
【0051】
コイル部211は、コイル軸方向αが軸方向ADになるように設けられている。軸方向AD、周方向CD及び径方向RDは、モータ軸線Cmを基準にした方向である。軸方向ADはモータ軸方向ADと称され、周方向CDはモータ周方向CDと称され、径方向RDはモータ径方向RDと称されることがある。
【0052】
コイル部211は、コイル外周面211a及びコイル内周面211bを有している。コイル外周面211aは、コイル部211の外周面である。コイル内周面211bは、コイル部211の内周面である。コイル外周面211a及びコイル内周面211bは、コイル部211の外面に含まれている。コイル外周面211aとコイル内周面211bとは、コイル径方向γに並べられている。コイル外周面211a及びコイル内周面211bは、コイル周方向βに環状に延びている。コイル外周面211a及びコイル内周面211bは、コイル軸方向αに延びている。
【0053】
図6図7に示すように、コイル部211は、外周コイル環状部271A及び内周コイル環状部271Bを有している。コイル環状部271A,271Bは、コイル軸方向αに複数並べられている。複数のコイル環状部271A,271Bは、コイル軸方向αに積層されている。コイル環状部271A,271Bは、コイル周方向βにリング状に延びている。コイル環状部271A,271Bは、全体として板状に形成されており、コイル軸方向αに直交する方向に延びている。コイル環状部271A,271Bは、コイル軸方向αに潰れるように扁平した形状になっている。コイル環状部271A,271Bは、コイル径方向γの幅寸法がコイル軸方向αの厚さ寸法より大きくなるように扁平している。
【0054】
コイル環状部271A,271Bは、環状外周面272、環状内周面273及び環状板面274を有している。環状外周面272、環状内周面273及び環状板面274は、コイル環状部271A,271Bの外面に含まれている。環状外周面272は、コイル環状部271A,271Bの外周面である。環状内周面273は、コイル環状部271A,271Bの内周面である。コイル部211では、外周コイル環状部271Aの環状外周面272がコイル外周面211aに含まれている。また、内周コイル環状部271Bの環状内周面273がコイル内周面211bに含まれている。
【0055】
環状板面274は、コイル環状部271A,271Bの板面である。環状板面274は、コイル軸方向αに直交する方向に延びている。環状板面274は、コイル軸方向αに一対並べられている。環状外周面272及び環状内周面273は、一対の環状板面274にかけ渡されるようにコイル軸方向αに延びている。コイル軸方向αに隣り合う2つのコイル環状部271A,271Bでは、それぞれの環状板面274が互いに重ねられた状態になっている。
【0056】
外周コイル環状部271Aと内周コイル環状部271Bとは、コイル径方向γに並べられている。外周コイル環状部271Aは、コイル径方向γにおいて内周コイル環状部271Bの外周側に設けられている。外周コイル環状部271Aは、コイル外周面211aを形成している。内周コイル環状部271Bは、コイル内周面211bを形成している。外周コイル環状部271Aと内周コイル環状部271Bとの境界部では、外周コイル環状部271Aの環状内周面273と内周コイル環状部271Bの環状外周面272とが、互いに重ねられるように接触している。
【0057】
図9図10図11に示すように、コイル部211は、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bを有している。コイル部211は、コイル線状体220A,220Bが巻回されることで形成されている。コイル線状体220A,220Bは、コアモジュール230に巻回されている。コイル線状体220A,220Bは、ボビン240を介してステータコア231に巻回されている。コイル線状体220A,220Bは、コイル周方向βに巻回されている。コイル線状体220A,220Bは、コイル軸方向αに積層されるように巻回されている。
【0058】
外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとは、コイル径方向γに並べられ、互いに並行して巻回されている。内周コイル線状体220Bは、ボビン240を介してステータコア231に巻回されている。外周コイル線状体220Aは、コイル径方向γの外周側から内周コイル線状体220Bに巻回されている。コイル部211では、コイル線状体220A,220Bがコイル径方向γに二重に巻回された状態になっている。外周コイル線状体220Aが第1線状体に相当し、内周コイル線状体220Bが第2線状体に相当する。
【0059】
コイル線状体220A,220Bは、全体として板状に形成されている。コイル線状体220A,220Bは、全体として平角線のような形状になっている。コイル部211は、全体としてエッジワイズコイルのような形状になっている。コイル部211では、コイル線状体220A,220Bがコイル軸方向αに直交する方向に延びている。
【0060】
外周コイル線状体220Aは、電線等の線材として外周コイル線221Aを複数有している。外周コイル線状体220Aは、複数の外周コイル線221Aが撚られて線状に形成されている。外周コイル線221Aが第1コイル線に相当する。内周コイル線状体220Bは、電線等の線材として内周コイル線221Bを複数有している。内周コイル線状体220Bは、複数の内周コイル線221Bが撚られて線状に形成されている。内周コイル線221Bが第2コイル線に相当する。
【0061】
外周コイル線状体220Aは、複数の外周コイル線221Aが互いに巻き付くようにねじられた状態でコイル周方向βに延びている。外周コイル線221Aは、コイル周方向βに直交する方向に移動しながらコイル周方向βに延びた状態になっている。外周コイル線221Aは、外周コイル線状体220Aにおいてコイル周方向βの位置が異なると、コイル軸方向αやコイル径方向γの位置が異なる。
【0062】
内周コイル線状体220Bは、複数の内周コイル線221Bが互いに巻き付くようにねじられた状態でコイル周方向βに延びている。内周コイル線221Bは、コイル周方向βに直交する方向に移動しながらコイル周方向βに延びた状態になっている。内周コイル線221Bは、内周コイル線状体220Bにおいてコイル周方向βの位置が異なると、コイル軸方向αやコイル径方向γの位置が異なる。
【0063】
外周コイル線状体220Aは、外周線状面220Aosを有している。外周線状面220Aosは、外周コイル線状体220Aの外周面である。内周コイル線状体220Bは、内周線状面220Bosを有している。内周線状面220Bosは、内周コイル線状体220Bの外周面である。コイル線状体220A,220Bでは、コイル線221A,221Bにより線状面220Aos,220Bosが形成されている。コイル線221A,221Bは、コイル線状体220A,220Bの外側に露出することで線状面220Aos,220Bosを形成している。コイル線状体220A,220Bは、複数のコイル線221A,221Bをまとめて覆うような被覆部を有していない。
【0064】
外周コイル線状体220Aは、外周コイル環状部271Aを形成している。内周コイル線状体220Bは、内周コイル環状部271Bを形成している。コイル線状体220A,220Bが複数回巻かれることで、複数のコイル環状部271A,271Bが形成されている。線状面220Aos,220Bosは、コイル環状部271A,271Bの外周面に含まれている。コイル線状体220A,220Bは、コイル環状部271A,271Bにおいて環状外周面272と環状内周面273とにかけ渡されるようにコイル径方向γに延びている。コイル環状部271A,271Bでは、1つのコイル線状体220A,220Bが環状外周面272及び環状内周面273の両方を形成している。
【0065】
コイル部211では、コイル外周面211aが外周コイル線状体220Aにより形成されており、コイル内周面211bが内周コイル線状体220Bにより形成されている。コイル線状体220A,220Bは、コイル部211においてモータ軸方向ADの一方側だけに向けて積層されるように巻回されている。
【0066】
図7に示すように、外周コイル線221Aは、外周コイル環状部271Aの外周面の少なくとも一部を形成している。外周コイル線221Aは、外周コイル環状部271Aの外側に露出している。内周コイル線221Bは、内周コイル環状部271Bの外周面の少なくとも一部を形成している。内周コイル線221Bは、内周コイル環状部271Bの外側に露出している。
【0067】
外周コイル線221A及び内周コイル線221Bはそれぞれ、外周露出部224a、内周露出部224b及び板面露出部224cを有している。板面露出部224cは、コイル線221A,221Bにおいて環状板面274に露出した部位である。板面露出部224cは、環状板面274の一部を形成している。
【0068】
外周露出部224aは、コイル線221A,221Bにおいて環状外周面272に露出した部位である。外周露出部224aは、環状外周面272の一部を形成している。外周露出部224aは、コイル外周面211aに露出した部位である。外周露出部224aは、コイル外周面211aの一部を形成している。外周露出部224aは、外周形成部に相当する。
【0069】
内周露出部224bは、コイル線221A,221Bにおいて環状内周面273に露出した部位である。内周露出部224bは、環状内周面273の一部を形成している。内周露出部224bは、コイル部211においてコイル外周面211aに露出した部位である。内周露出部224bは、コイル内周面211bの一部を形成している。内周露出部224bは、内周形成部に相当する。
【0070】
外周コイル線221Aが外周コイル環状部271Aの外面に露出する部位は、コイル周方向βでの位置が異なるとコイル軸方向αやコイル径方向γに変位する。内周コイル線221Bが内周コイル環状部271Bの外面に露出する部位は、コイル周方向βでの位置が異なるとコイル軸方向αやコイル径方向γに変位する。外周コイル線221A及び内周コイル線221Bのそれぞれでは、外周露出部224a、内周露出部224b及び板面露出部224cがコイル周方向βに並べられている。コイル周方向βでは、板面露出部224cが外周露出部224aと内周露出部224bとにかけ渡されるように延びている。
【0071】
例えば、図7図10に示すように、外周コイル環状部271Aでは、板面露出部224cが、外周露出部224aと内周露出部224bとにかけ渡されるようにコイル周方向βに延びている。板面露出部224cは、外周コイル線状体220Aをコイル径方向γに横断しながらコイル周方向βに延びている。外周コイル環状部271Aと同様に、内周コイル環状部271Bでは、板面露出部224cが、外周露出部224aと内周露出部224bとにかけ渡されるようにコイル周方向βに延びている。また、板面露出部224cは、内周コイル線状体220Bをコイル径方向γに横断しながらコイル周方向βに延びている。
【0072】
図11に示すように、内周コイル環状部271Bでは、外周露出部224a及び内周露出部224bは、一対の環状板面274の一方側の板面露出部224cと他方側の板面露出部224cとにかけ渡されるようにコイル周方向βに延びている。外周露出部224a及び内周露出部224bは、内周コイル線状体220Bをコイル軸方向αに横断しながらコイル周方向βに延びている。内周コイル環状部271Bと同様に、外周コイル環状部271Aでは、外周露出部224a及び内周露出部224bは、一対の環状板面274の一方側の板面露出部224cと他方側の板面露出部224cとにかけ渡されるようにコイル周方向βに延びている。外周露出部224a及び内周露出部224bは、外周コイル線状体220Aをコイル軸方向αに横断しながらコイル周方向βに延びている。
【0073】
例えば、本実施形態とは異なり、複数のコイル線221が撚られていない比較線状体220Xを比較例として想定する。この比較例では、コイル部211が、コイル線221A,221B及びコイル環状部271A,271Bに代えて、コイル線221及びコイル環状部271を有している。比較線状体220Xは、図8に示すように、コイル部211及びコイル環状部271を形成している。
【0074】
比較線状体220Xでは、コイル線221がコイル環状部271の外面に露出する部位は、コイル周方向βでの位置が異なってもコイル軸方向αやコイル径方向γに変位しない。例えば、比較線状体220Xが有する複数のコイル線221には、比較外周線221X及び比較内周線221Yが含まれている。比較外周線221Xは、コイル周方向βにおいて環状外周面272の全体を形成している。比較内周線221Yは、コイル周方向βにおいて環状内周面273の全体を形成している。
【0075】
コイル環状部271では、比較外周線221Xが比較内周線221Yよりも長い。このため、コイル部211の製造時において、比較線状体220Xが巻回される場合、比較外周線221Xは、比較内周線221Yよりもコイル周方向βに伸ばされた状態になる。比較線状体220Xでは、比較外周線221Xに生じる引っ張り応力が過剰になるなどして、比較外周線221Xに切断などの異常が発生しやすくなることが懸念される。
【0076】
コイル環状部271では、コイル径方向γにおいて内周側の部位ほど、鎖交磁束が多いことなどにより損失が生じやすい。このため、比較内周線221Yにおいて鎖交磁束等により生じる損失が過剰に増加することが懸念される。
【0077】
これに対して、本実施形態の外周コイル線221Aでは、外周コイル線状体220Aにおいてコイル周方向βの位置が異なると、コイル軸方向αやコイル径方向γの位置が異なる。同様に、内周コイル線221Bでは、内周コイル線状体220Bにおいてコイル周方向βの位置が異なると、コイル軸方向αやコイル径方向γの位置が異なる。このため、比較外周線221Xのように特定のコイル線221に切断などの異常が発生しやすい、ということが抑制される。また、比較内周線221Yのように特定のコイル線221での損失が過剰に増加しやすい、ということが抑制される。
【0078】
図6に示すように、モータ装置60は、バスバユニット260を有している。バスバユニット260は、モータ周方向CDに環状に延びている。バスバユニット260は、ステータ200にモータ径方向RDに並べられている。バスバユニット260は、電力バスバ261及びバスバ保護部270を有している。電力バスバ261及びバスバ保護部270は、周方向CDに環状に延びている。電力バスバ261は、バスバ部材等により形成されている。電力バスバ261は、出力ライン143の少なくとも一部を形成している。バスバ保護部270は、樹脂材料等により形成されており、電気絶縁性を有している。バスバ保護部270は、電力バスバ261を覆った状態で保護している。
【0079】
バスバユニット260は、ネジ等の固定具によりリアフレーム370に固定されている。バスバユニット260は、リアフレーム370を介してステータ200とは反対側に設けられている。
【0080】
図6図9において、コイルユニット210は、電力引出線212及び中性引出線213を有している。引出線212,213は、モータ装置60及びステータ200に含まれている。引出線212,213は、コイル部211から引き出されている。引出線212,213は、コイル引出線に相当する。引出線212,213は、周方向CDに複数並べられている。引出線212,213は、コイル線状体220A,220Bにより形成されている。コイル線状体220A,220Bは、引出線212,213の少なくとも一部を形成している。例えば、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bの両方が、電力引出線212の全体を形成している。また、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bの両方が、中性引出線213の全体を形成している。電力引出線212は、出力ライン143の少なくとも一部を形成している。中性引出線213は、コイル64と中性点65とを接続する経路の少なくとも一部を形成している。
【0081】
電力引出線212は、コイル部211と電力バスバ261とを通電可能に接続している。電力引出線212は、バスバ引出線265を介して電力バスバ261に接続されている。バスバ引出線265は、出力ライン143の少なくとも一部を形成している。バスバ引出線265は、平角線等の電線により形成されており、電力バスバ261から引き出されている。バスバ引出線265は、バスバユニット260に含まれている。
【0082】
電力引出線212は、リアフレーム370のリア配線孔373を通じて電力バスバ261側に引き出されている。リア配線孔373は、リアフレーム370に設けられた孔である。リア配線孔373は、リアフレーム370をモータ軸方向ADに貫通している。リア配線孔373は、リアフレーム370の外周縁に沿って周方向CDに複数並べられている。
【0083】
外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとは、電気的に並列に接続されている。外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとは、電力引出線212と電力バスバ261との接続部分や、中性引出線213と中性点65との接続部分などにおいて、電気的に互いに接続されている。
【0084】
外周コイル線状体220Aでは、複数の外周コイル線221Aが電気的に並列に接続されている。複数の外周コイル線221Aは、電力引出線212と電力バスバ261との接続部分や、中性引出線213と中性点65との接続部分などにおいて、電気的に互いに接続されている。内周コイル線状体220Bでは、複数の内周コイル線221Bが電気的に並列に接続されている。複数の内周コイル線221Bは、電力引出線212と電力バスバ261との接続部分や、中性引出線213と中性点65との接続部分などにおいて、電気的に互いに接続されている。
【0085】
図6図12に示すように、ステータ200は、コイル放熱部295を有している。コイル放熱部295は、コイル部211とモータ外周壁71との間に設けられている。コイル放熱部295は、モータ外周壁71側から外周コイル線状体220Aや外周コイル環状部271Aに密着した状態になっている。コイル放熱部295は、コイル部211やコイル線状体220A,220Bの熱をモータ外周壁71に放出可能である。コイル放熱部295は、モータハウジング内周面70bに沿って周方向CDに環状に延びている。
【0086】
コイル放熱部295は、熱可塑性樹脂等の樹脂材料等により形成されており、熱伝導性を有している。例えば、コイル放熱部295は、シリコン系やシリコン系の樹脂材料により形成された樹脂層と、金属材料により形成されて樹脂層に混入されたフィラーと、を有している。なお、コイル放熱部295は、熱伝導性を有していれば、セラミック材料や金属材料により形成されていてもよく、ジェル状に形成されていてもよい。
【0087】
モータハウジング70は、壁内凸部73を有している。壁内凸部73は、モータハウジング内周面70bに設けられた凸部である。壁内凸部73は、モータ外周壁71から内周側に向けて突出している。壁内凸部73は、周方向CDに環状に延びている。コイル放熱部295は、壁内凸部73を介してコイル部211とモータ外周壁71との間に設けられている。コイル放熱部295は、壁内凸部73を介してコイル部211の熱をモータ外周壁71に放出可能である。
【0088】
図12に示すように、コイル線状体220A,220Bは、コイル軸方向αに潰れるように扁平した形状になっている。コイル線状体220A,220Bでは、コイル径方向γの幅寸法WA,WBがコイル軸方向αの厚さ寸法DA,DBよりも大きい。コイル線状体220A,220Bでは、コイル径方向γに並んだコイル線221A,221Bの数がコイル軸方向αに並んだコイル線221A,221Bの数よりも多い。例えば、コイル線221A,221Bは、2段でコイル径方向γに3本以上並べられている。
【0089】
外周コイル線状体220Aの幅寸法WAは、内周コイル線状体220Bの幅寸法WBよりも大きい。幅寸法WAは、外周コイル環状部271Aの幅寸法である。幅寸法WBは、内周コイル環状部271Bの幅寸法である。幅寸法WA,WBは、コイル部211の幅寸法W1よりも小さい。すなわち、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bは、コイル部211よりもコイル径方向γに細い。幅寸法W1は、コイル径方向γでのコイル外周面211aとコイル内周面211bとの距離である。幅寸法W1は、幅寸法WAと幅寸法WBとを合計した値になっている。
【0090】
コイル部211では、コイル周方向βにおいてコイル外周面211aがコイル内周面211bよりも長い。外周コイル環状部271Aでは、コイル周方向βにおいて環状外周面272が環状内周面273よりも長い。内周コイル環状部271Bでは、コイル周方向βにおいて環状外周面272が環状内周面273よりも長い。コイル環状部271A,271Bでは、環状外周面272がコイル線状体220A,220Bの外周端に相当し、環状内周面273がコイル線状体220A,220Bの内周端に相当する。
【0091】
上述したように、外周コイル線状体220Aがコイル部211よりもコイル周方向βに細い。このため、外周コイル環状部271Aにおいて環状外周面272と環状内周面273との長さ差ΔLAは、コイル外周面211aとコイル内周面211bとの長さ差ΔLよりも小さい。これも上述したように、内周コイル線状体220Bがコイル部211よりもコイル周方向βに細い。このため、内周コイル環状部271Bにおいて環状外周面272と環状内周面273との長さ差ΔLBは、長さ差ΔLよりも小さい。
【0092】
外周コイル線状体220Aが有する外周コイル線221Aの数は、内周コイル線状体220Bが有する内周コイル線221Bの数よりも多い。例えば、コイル径方向γに並んだ外周コイル線221Aの数は、コイル径方向γに並んだ内周コイル線221Bの数よりも多い。また、コイル軸方向αに並んだ外周コイル線221Aの数と、コイル軸方向αに並んだ内周コイル線221Bの数とは同じである。例えば、内周コイル線221Bは、2段でコイル径方向γに3本以上並べられており、外周コイル線221Aは、2段でコイル径方向γに4本以上並べられている。
【0093】
コイル線221A,221Bは、コイル素線222及び素線被覆223を有している。コイル素線222は、コイル線221A,221Bの導体である。コイル素線222は、銅等の導電材料により形成されており、導電性を有している。コイル素線222は、通電可能であり、素線に相当する。コイル素線222は、1本の導体により形成されていてもよく、複数本の導体により形成されていてもよい。素線被覆223は、コイル素線222を被覆している。素線被覆223は、樹脂材料等により形成されており、電気絶縁性を有している。素線被覆223は、被覆部に相当する。
【0094】
外周コイル線状体220Aでは、外周コイル線221Aの断面形状や太さなどが複数の外周コイル線221Aで均一化されている。外周コイル線221Aの断面積は、複数の外周コイル線221Aでほぼ同じである。外周コイル線221Aの外周断面積ScAは、複数の外周コイル線221Aでほぼ同じである。外周断面積ScAは、外周コイル線221Aが有するコイル素線222の断面積である。外周断面積ScAは、コイル素線222においてコイル周方向βに直交する断面の面積である。外周コイル線状体220Aでは、コイル径方向γにおいて外周側の外周コイル線221Aほど外周断面積ScAが小さくなりやすい。外周コイル線状体220Aの総外周断面積StAは、コイル素線222が有する外周断面積ScAを複数の外周コイル線221Aで合計した値である。総外周断面積StAは、コイル素線222という導体の断面積を複数の外周コイル線221Aで合計した値である。
【0095】
内周コイル線状体220Bでは、内周コイル線221Bの断面形状や太さなどが複数の内周コイル線221Bで均一化されている。内周コイル線221Bの断面積は、複数の内周コイル線221Bでほぼ同じである。内周コイル線221Bの内周断面積ScBは、複数の内周コイル線221Bでほぼ同じである。内周断面積ScBは、内周コイル線221Bが有するコイル素線222の断面積である。内周断面積ScBは、コイル素線222においてコイル周方向βに直交する断面の面積である。内周コイル線状体220Bでは、コイル径方向γにおいて外周側の内周コイル線221Bほど内周断面積ScBが小さくなりやすい。内周コイル線状体220Bの総内周断面積StBは、コイル素線222が有する内周断面積ScBを複数の内周コイル線221Bで合計した値である。総内周断面積StBは、コイル素線222という導体の断面積を複数の内周コイル線221Bで合計した値である。
【0096】
外周コイル線状体220Aの断面積は、内周コイル線状体220Bの断面積より大きい。外周コイル線状体220Aの総外周断面積StAは、内周コイル線状体220Bの総内周断面積StBよりも大きい。一方で、外周コイル線221Aの外周断面積ScAは、内周コイル線221Bの内周断面積ScBとほぼ同じである。外周コイル線221Aの数が内周コイル線221Bの数よりも多いことで、総外周断面積StAが総内周断面積StBよりも大きくなっている。総外周断面積StAが第1断面積に相当し、総内周断面積StBが第2断面積に相当する。
【0097】
外周コイル線状体220Aでは、複数の外周コイル線221Aが互いに密着した状態になっている。例えば、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つの外周コイル線221Aでは、それぞれの素線被覆223が互いに密着している。複数の外周コイル線221Aでは、それぞれの素線被覆223が融着や溶着により接合されている。隣り合う2つの外周コイル線221Aのそれぞれの素線被覆223は、互いに当接している。例えば、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つの外周コイル線状体220Aでは、それぞれの素線被覆223の少なくとも一部が接合されている。なお、隣り合う2つの外周コイル線状体220Aの間には、隙間が形成されていてもよい。
【0098】
内周コイル線状体220Bでは、複数の内周コイル線221Bが互いに密着した状態になっている。例えば、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つの内周コイル線221Bでは、それぞれの素線被覆223が互いに密着している。複数の内周コイル線221Bでは、それぞれの素線被覆223が融着や溶着により接合されている。隣り合う2つの内周コイル線221Bのそれぞれの素線被覆223は、互いに当接している。例えば、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つの内周コイル線状体220Bでは、それぞれの素線被覆223の少なくとも一部が接合されている。なお、隣り合う2つの内周コイル線状体220Bの間には、隙間が形成されていてもよい。
【0099】
外周コイル環状部271Aと内周コイル環状部271Bとの境界部では、外周コイル環状部271Aと内周コイル環状部271Bとが互いに固定されている。例えば、外周コイル環状部271Aが有する素線被覆223と、内周コイル環状部271Bが有する素線被覆223と、が溶着等により接合されている。
【0100】
コイル線状体220A,220Bは、複数のコイル線221A,221Bが互いに密着するように圧延されながら撚られた状態になっている。例えば、コイル線状体220A,220Bでは、コイル線221A,221Bの断面形状がコイル線状体220A,220Bの圧延に伴って変化した形状になっている。例えば、コイル素線222の外周面には、コイル径方向γやコイル軸方向αに直交する方向に延びた平坦面が含まれている。この平坦面は、コイル線状体220A,220Bの圧延に伴うコイル素線222の変形により形成された面である。コイル線状体220A,220Bが圧延されることで、コイル線状体220A,220Bの占積率が高められている。占積率は、コイル部211の断面において複数のコイル素線222が占める割合である。占積率は、導体占積率と称されることがある。
【0101】
ここまで説明した本実施形態によれば、コイル部211は、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bにより形成されている。外周コイル線状体220Aは、複数の外周コイル線221Aが撚られて線状に形成されている。外周コイル線状体220Aでは、コイル周方向βでの位置が異なると、複数の外周コイル線221Aが順番に入れ替わるようにしてコイル部211の内周側に配置される。このため、例えば比較内周線221Yでの損失が増加するように、コイル部211の内周側に配置された特定の外周コイル線221Aでの損失が増加する、ということを回避できる。
【0102】
外周コイル線状体220Aと同様に、内周コイル線状体220Bは、複数の内周コイル線221Bが撚られて線状に形成されている。内周コイル線状体220Bでは、コイル周方向βでの位置が異なると、複数の内周コイル線221Bが順番に入れ替わるようにしてコイル部211の内周側に配置される。このため、例えば比較内周線221Yでの損失が増加するように、コイル部211の内周側に配置された特定の内周コイル線221Bでの損失が増加する、ということを回避できる。
【0103】
これらのように、複数の外周コイル線221Aが撚られていること及び複数の内周コイル線221Bが撚られていることにより、コイル部211での損失を低減することができる。
【0104】
しかも、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとがコイル径方向γに並べられている。この構成では、コイル線状体220A,220Bの幅寸法WA,WBがコイル部211の幅寸法W1よりも小さくなる。このため、コイル線状体220A,220Bでは、コイル周方向βにおいて環状外周面272と環状内周面273との長さ差ΔLA,ΔLBを、コイル外周面211aとコイル内周面211bとの長さ差ΔLよりも小さくできる。したがって、コイル部211では、コイル線状体220A,220Bにおいて、外周側にある外周露出部224aなどの部位が伸びすぎて切れるなどの異常が発生する、ということを抑制できる。このように、コイル線状体220A,220Bの異常発生を抑制することで、コイル部211での損失を更に低減することができる。
【0105】
しかも、外周線状面220Aosは、複数の外周コイル線221Aにより形成されている。この構成では、複数の外周コイル線221Aをまとめて覆うような被覆を外周コイル線状体220Aに設ける必要がない。このため、複数の外周コイル線221Aを覆うような被覆がない分だけコイル部211の占積率を高めることができる。したがって、外周コイル線状体220Aでの損失を更に低減することができる。
【0106】
内周線状面220Bosは、複数の内周コイル線221Bにより形成されている。この構成では、複数の内周コイル線221Bをまとめて覆うような被覆を内周コイル線状体220Bに設ける必要がない。このため、複数の内周コイル線221Bを覆うような被覆がない分だけコイル部211の占積率を高めることができる。したがって、内周コイル線状体220Bでの損失を更に低減することができる。
【0107】
外周コイル環状部271Aでは、外周コイル線状体220Aの導体部分が複数のコイル素線222に分割された状態になっている。また、内周コイル環状部271Bでは、内周コイル線状体220Bの導体部分が複数のコイル素線222に分割された状態になっている。これら構成では、コイル素線222という1つの導体の断面積が低減されるため、1つの導体での渦電流が発生する面積を低減できる。このため、交番磁石磁束や電機子磁束によってコイル環状部271A,271Bの導体部分に発生する渦電流損を低減できる。
【0108】
外周コイル環状部271Aでは、複数の外周コイル線221Aが撚られているため、鎖交磁束が比較内周線221Yなど特定の外周コイル線221Aだけに鎖交するということを回避できる。例えば、外周コイル線221Aでは、内周露出部224bでの鎖交磁束が増加しやすくても、外周露出部224aでの鎖交磁束が低減しやすい。このため、外周露出部224aのように、ステータコア231からの距離がコイル径方向γに大きく離れた部位が外周コイル線221Aに含まれていることで、1本の外周コイル線221Aの全体で渦電流損が増加するということを抑制できる。
【0109】
内周コイル環状部271Bでは、複数の内周コイル線221Bが撚られているため、鎖交磁束が比較内周線221Yなど特定の内周コイル線221Bだけに鎖交するということを回避できる。例えば、内周コイル線221Bでは、内周露出部224bでの鎖交磁束が増加しやすくても、外周露出部224aでの鎖交磁束が低減しやすい。このため、外周露出部224aのように、ステータコア231からの距離がコイル径方向γに大きく離れた部位が内周コイル線221Bに含まれていることで、1本の内周コイル線221Bの全体で渦電流損が増加するということを抑制できる。
【0110】
また、外周コイル環状部271Aでは、一対の環状板面274のうちアキシャルギャップ305a,305bとは反対側の環状板面274での鎖交磁束は、アキシャルギャップ305a,305b側の環状板面274での鎖交磁束よりも少なくなりやすい。このため、アキシャルギャップ305a,305bとは反対側にある板面露出部224cが外周コイル線221Aに含まれていることで、1本の外周コイル線221Aの全体で渦電流損が増加するということを抑制できる。すなわち、複数の外周コイル線221Aが撚られていることで、外周コイル線221Aをアキシャルギャップ305a,305bから部分的に遠ざけることで、外周コイル線221Aでの渦電流損を低減できる。
【0111】
内周コイル環状部271Bでは、一対の環状板面274のうちアキシャルギャップ305a,305bとは反対側の環状板面274での鎖交磁束は、アキシャルギャップ305a,305b側の環状板面274での鎖交磁束よりも少なくなりやすい。このため、アキシャルギャップ305a,305bとは反対側にある板面露出部224cが内周コイル線221Bに含まれていることで、1本の内周コイル線221Bの全体で渦電流損が増加するということを抑制できる。すなわち、複数の内周コイル線221Bが撚られていることで、内周コイル線221Bをアキシャルギャップ305a,305bから部分的に遠ざけることで、内周コイル線221Bでの渦電流損を低減できる。
【0112】
例えば、比較線状体220Xでは、比較外周線221Xの長さ寸法と比較内周線221Yの長さ寸法とが大きすぎる。このように比較外周線221Xと比較内周線221Yとで長さが大きく異なると、比較外周線221Xでの電気抵抗と比較内周線221Yでの電気抵抗との差が大きくなりやすい。そうすると、抵抗差により生じる循環電流が比較外周線221Xと比較内周線221Yとの間を循環するように流れることが懸念される。
【0113】
これに対して、本実施形態では、外周コイル環状部271Aにおいて複数の外周コイル線221Aが撚られているため、複数の外周コイル線221Aに長さ寸法の差が生じにくい。すなわち、複数の外周コイル線221Aに電気抵抗の差が生じにくい。このため、電気抵抗の差によって外周コイル線221Aに循環電流が流れるということを抑制できる。
【0114】
内周コイル環状部271Bにおいて複数の内周コイル線221Bが撚られているため、複数の内周コイル線221Bに長さ寸法の差が生じにくい。すなわち、複数の内周コイル線221Bに電気抵抗の差が生じにくい。このため、電気抵抗の差によって内周コイル線221Bに循環電流が流れるということを抑制できる。
【0115】
また、複数の外周コイル線221Aが撚られた状態になっており、且つ複数の内周コイル線221Bが撚られた状態になっている。このため、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとを循環するように流れる循環電流を抑制できる。
【0116】
本実施形態では、コイル部211が外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bという2つのコイル線群に分けられている。この構成では、例えばコイル部211が1つのコイル線群により形成された構成に比べて、外周コイル線状体220Aがコイル径方向γに細くなっている。このため、コイル外周面211aにおいて外周コイル線状体220Aが伸びすぎた状態になるということが生じにくい。このように外周コイル線状体220Aの外周部分が伸びすぎていないため、外周コイル線221Aが断線することや、外周コイル線221Aの素線被覆223が薄くなりすぎること、などを抑制できる。
【0117】
例えば、本実施形態とは異なり、コイル部211が1つのコイル線群により形成された構成を想定する。この構成では、1つのコイル線群において、その外周部分の曲がり度合いがコイル外周面211aに合わせられ、且つその内周部分の曲がり度合いがコイル内周面211bに合わせられた状態になる。このため、1つのコイル線群では、外周部分の伸び度合いが内周部分の伸び度合いよりも大きくなりすぎることで、外周部分にてコイル素線222が断線することや、素線被覆223が薄膜化することなどが懸念される。コイル素線222が断線すると、コイル部211での損失が増加しやすくなってしまう。素線被覆223が薄膜化すると、コイル部211の電気絶縁性が低下しやすくなってしまう。
【0118】
例えば本実施形態とは異なり、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとが電気的に直列に接続された構成を想定する。この構成では、外周コイル環状部271Aと、この外周コイル環状部271Aにコイル径方向γに並べられた内周コイル環状部271Bと、の間に生じる電位差が大きくなりやすい。このため、内周コイル環状部271Bと外周コイル環状部271Aとを電気的に絶縁しようとすると、外周コイル線状体220Aの絶縁被覆や内周コイル線状体220Bの絶縁被覆を分厚くせざるを得ない。そして、外周コイル線状体220Aの絶縁被覆や内周コイル線状体の絶縁被覆が分厚いほどコイル部211の占積率が低下してしまう。
【0119】
これに対して、本実施形態によれば、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとが電気的に並列に接続されている。この構成では、外周コイル環状部271Aと、この外周コイル環状部271Aにコイル径方向γに並べられた内周コイル環状部271Bと、の間に電位差が生じにくい。このため、外周コイル線状体220Aの絶縁被覆や内周コイル線状体220Bの絶縁被覆を極力薄くできる。したがって、複数の外周コイル線221Aをまとめて覆うような被覆部を外周コイル線状体220Aに設ける必要がない。同様に、複数の内周コイル線221Bをまとめて覆うような被覆部を内周コイル線状体220Bに設ける必要がない。また、外周コイル線状体220Aや内周コイル線状体220Bにおいて素線被覆223を極力薄くすることができる。これらのように外周コイル線状体220Aの絶縁被覆や内周コイル線状体220Bの絶縁被覆を極力薄くすることで、コイル部211の占有率を高めることができる。素線被覆223の厚さは、極力薄くされているが、例えば10μm以上である。
【0120】
コイル部211では、コイル軸方向αに隣り合う2つの外周コイル環状部271Aの間に電位差が生じる。この電位差は、素線被覆223が2つの外周コイル環状部271Aを電気的に絶縁できるほどに小さい。外周コイル線状体220Aでは、複数の外周コイル線221Aのそれぞれが素線被覆223を有していることで、それぞれのコイル素線222が素線被覆223により電気的に絶縁されている。このため、外周コイル線状体220Aでは、複数のコイル素線222に跨るように渦電流が流れるということを素線被覆223により抑制できる。したがって、外周コイル線状体220Aで生じる渦電流損を低減できる。
【0121】
外周コイル線状体220Aでは、素線被覆223が渦電流損を低減するために必要な素線被覆223の厚さは、例えば4μm程度である。また、コイル軸方向αに隣り合う2つの外周コイル環状部271Aを素線被覆223が電気的に絶縁するために必要な素線被覆223の厚さ寸法は、例えば2~5μm程度である。本実施形態では、素線被覆223の厚さが、渦電流損を低減するために必要な厚さ、及び2つの外周コイル環状部271Aを電気的に絶縁するために必要な厚さ、のいずれよりも大きい。このため、コイル部211では、渦電流損の低減と、2つの外周コイル環状部271Aの電気的な絶縁と、の両方を素線被覆223により実現できる。
【0122】
コイル部211では、コイル軸方向αに隣り合う2つの内周コイル環状部271Bの間に電位差が生じる。この電位差は、素線被覆223が2つの内周コイル環状部271Bを電気的に絶縁できるほどに小さい。内周コイル線状体220Bでは、複数の内周コイル線221Bのそれぞれが素線被覆223を有していることで、それぞれのコイル素線222が素線被覆223により電気的に絶縁されている。このため、内周コイル線状体220Bでは、複数のコイル素線222に跨るように渦電流が流れるということを素線被覆223により抑制できる。したがって、内周コイル線状体220Bで生じる渦電流損を低減できる。
【0123】
外周コイル線状体220Aと同様に、内周コイル線状体220Bでは、素線被覆223が渦電流損を低減するために必要な素線被覆223の厚さは、例えば4μm程度である。また、コイル軸方向αに隣り合う2つの内周コイル環状部271Bを素線被覆223が電気的に絶縁するために必要な素線被覆223の厚さ寸法は、例えば2~5μm程度である。本実施形態では、素線被覆223の厚さが、渦電流損を低減するために必要な厚さ、及び2つの内周コイル環状部271Bを電気的に絶縁するために必要な厚さ、のいずれよりも大きい。このため、コイル部211では、渦電流損の低減と、2つの内周コイル環状部271Bの電気的な絶縁と、の両方を素線被覆223により実現できる。
【0124】
本実施形態では、コイル径方向γにおいて外周コイル線状体220Aが内周コイル線状体220Bの外側に設けられている。この構成では、外周コイル線状体220Aが内周コイル線状体220Bよりも長いことに起因して、外周コイル線状体220Aでの電気抵抗が内周コイル線状体220Bの電気抵抗よりも大きくなりやすい。このように外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとで電気抵抗に差が生じると、この抵抗差により生じる循環電流が外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとを循環するように流れることが懸念される。
【0125】
これに対して、本実施形態によれば、外周コイル線状体220Aの幅寸法WAは、内周コイル線状体220Bの幅寸法WBよりも大きい。この構成では、外周コイル線状体220Aを内周コイル線状体220Bよりも太くしやすくなる。すなわち、総外周断面積StAを総内周断面積StBよりも大きくしやすくなる。このため、外周コイル線状体220Aの電気抵抗を内周コイル線状体220Bの電気抵抗に近づくように低減しやすくなる。したがって、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとの間を循環電流が流れることを抑制できる。これにより、コイル部211において循環電流により生じる損失を低減できる。
【0126】
本実施形態によれば、総外周断面積StAが総内周断面積StBよりも大きい。このため、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとの間に電気抵抗の差が生じることを抑制できる。したがって、コイル部211での循環電流の発生を抑制できる。
【0127】
本実施形態によれば、外周コイル線状体220Aが有する外周コイル線221Aの数が、内周コイル線状体220Bが有する内周コイル線221Bの数よりも多い。このため、総外周断面積StAが総内周断面積StBよりも大きいという構成を実現できる。しかも、コイル線221A,221Bの数に差をつけることで総外周断面積StAと総内周断面積StBとに差をつけているため、コイル線221A,221Bの断面積ScA,ScBに差をつける必要がない。このため、外周コイル線221Aと内周コイル線221Bとを共通の電線等で形成することができる。すなわち、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとを共通の電線等で形成することができる。したがって、コイル部211を製造する際の作業を容易化することや、材料コストを低減することが可能になる。
【0128】
本実施形態によれば、外周線状面220Aosは、複数の外周コイル線221Aにより形成されている。この構成では、複数の外周コイル線221Aをまとめて覆うような被覆を外周コイル線状体220Aに設ける必要がない。このため、複数の外周コイル線221Aを覆うような被覆がない分だけコイル部211の占積率を高めることができる。また、内周線状面220Bosは、複数の内周コイル線221Bにより形成されている。この構成では、複数の内周コイル線221Bをまとめて覆うような被覆を内周コイル線状体220Bに設ける必要がない。このため、複数の内周コイル線221Bを覆うような被覆がない分だけコイル部211の占積率を高めることができる。
【0129】
アキシャルギャップ式のモータ61では、コイル部211及びステータコア231とロータ300a,300bとがモータ軸方向ADに並べられていることに起因して、コイル部211側への漏れ磁束が多くなりやすい。しかも、ダブルロータ式のモータ61では、モータ軸方向ADの一方側及び他方側の両方から漏れ磁束が生じることで、コイル部211側への漏れ磁束が増加しやすい。これに対して、本実施形態によれば、鎖交磁束の差によってコイル線221A,221Bに循環電流が流れるということが抑制されるため、ダブルアキシャルモータにとって効果的である。
【0130】
本実施形態によれば、モータ装置60は、eVTOL10を飛行させるために駆動する。この構成では、モータ装置60の駆動によりeVTOL10が飛行している状態で、コイル部211での損失を低減することができる。このように、モータ装置60においてコイル部211での損失を低減することでeVTOL10の安全性を高めることができる。
【0131】
本実施形態によれば、コイル線状体220A,220Bでは、コイル径方向γに並んだコイル線221A,221Bの数が、コイル軸方向αに並んだコイル線221A,221Bの数よりも多い。この構成では、複数のコイル線221A,221Bにより、コイル線状体220A,220Bを板状に形成することができる。このようにコイル線状体220A,220Bを板状に形成することで、コイル部211の占積率を高めることができる。
【0132】
本実施形態によれば、コイル環状部271A,271Bでは、コイル径方向γの幅寸法WA,WBがコイル軸方向αの厚さ寸法DA,DBよりも大きい。この構成では、コイル環状部271A,271Bによりコイル部211をエッジワイズコイルのように形成することができるため、コイル部211の占積率を高めることができる。
【0133】
本実施形態によれば、電力引出線212や中性引出線213がコイル線状体220A,220Bにより形成されている。このため、コイル線221A,221Bの線長差などによって電力引出線212や中性引出線213に損失が生じることをコイル線状体220A,220Bにより抑制できる。
【0134】
本実施形態によれば、コイル線状体220A,220Bでは、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つのコイル線221A,221Bがそれぞれの素線被覆223で密着するように、複数のコイル線221A,221Bが撚られている。この構成では、コイル線状体220A,220Bが圧延されたような状態になっているため、コイル部211の占積率を高めることができる。
【0135】
本実施形態によれば、外周コイル線状体220Aでは、外周コイル線221Aが外周露出部224a及び内周露出部224bの両方を有するように複数の外周コイル線221Aが撚られている。この構成では、外周コイル線221Aがコイル周方向βに直交する方向に移動しながらコイル周方向βに延びた状態になっているため、複数の外周コイル線221Aに線長差が生じることを抑制できる。このため、複数の外周コイル線221Aにおいて、線長差に伴う電気抵抗の差によって生じる循環電流を低減することができる。この効果は、内周コイル線状体220Bについても同様に得られる。
【0136】
本実施形態では、外周コイル環状部271Aがコイル放熱部295に密着した状態になっている。このため、外周コイル環状部271Aからモータ外周壁71への放熱効果をコイル放熱部295により高めることができる。しかも、外周コイル線221Aが外周露出部224aを有するように複数の外周コイル線221Aが撚られている。このため、外周コイル環状部271Aでは、外周露出部224aがコイル放熱部295に密着した状態を、複数の外周コイル線221Aのそれぞれについて実現することが可能である。このため、外周露出部224aの放熱効果が外周コイル線状体220Aにより高められた構成を、複数の外周コイル線221Aのそれぞれについて実現できる。
【0137】
外周コイル環状部271Aでは、コイル径方向γにおいてコイル内周面211bに近い部位ほど温度が高くなることが懸念される。すなわち、外周コイル線状体220Aでは、内周露出部224bに近い部位ほど温度が高くなることが懸念される。例えば、内周露出部224bでは、鎖交磁束等による損失が増加しやすいことで熱が発生しやすい。また、ステータコア231の熱が内周露出部224bに伝わりやすい。
【0138】
これに対して、本実施形態では、外周コイル線221Aにおいて外周露出部224aと内周露出部224bとが板面露出部224cにより接続されている。この構成では、内周露出部224bの熱が板面露出部224cを介して外周露出部224aからコイル部211の外部に放出されやすい。このため、内周露出部224bの熱がコイル内周面211bに近い部位にこもり、コイル部211の温度が過剰に高くなるということを抑制できる。したがって、コイル部211の放熱効果を外周コイル線状体220Aにより高めることができる。
【0139】
例えば、図8に示す比較線状体220Xでは、比較内周線221Yの熱が比較外周線221Xから放出されるためには、この熱が複数のコイル線221をコイル径方向γの外側に向けて伝わっていく必要がある。この熱は、コイル径方向γに隣り合う2つのコイル線221において、一方のコイル素線222から素線被覆223や空気を介して他方のコイル素線222に伝わる。素線被覆223や空気は、熱抵抗が比較的高いため、比較内周線221Yの熱が比較外周線221Xまで伝わりにくい。
【0140】
これに対して、本実施形態では、1つの外周コイル線221Aが外周露出部224a及び内周露出部224bを有している。外周コイル線状体220Aでは、内周露出部224bの熱がコイル素線222を介して外周露出部224aに伝わる。コイル素線222の熱抵抗は、素線被覆223や空気に比べて低い。このため、内周露出部224bの熱が外周露出部224aに伝わりやすい。このように、外周コイル線221Aが外周露出部224a及び内周露出部224bの両方を有していることで、コイル部211の放熱効果を高めることができる。
【0141】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、コイル部211において外周コイル線221Aの数と内周コイル線221Bの数とが異なっている。これに対して、第2実施形態では、コイル部211において外周コイル線221Aの外周断面積ScAと内周コイル線221Bの内周断面積ScBとが異なっている。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第2本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0142】
図13に示すように、外周コイル線221Aが内周コイル線221Bよりも太くなっている。外周断面積ScAは、内周断面積ScBよりも大きくなっている。一方で、外周コイル線状体220Aが有する外周コイル線221Aの数は、内周コイル線状体220Bが有する内周コイル線221Bの数と同じである。このように外周コイル線221Aの数と内周コイル線221Bの数とが同じでも、外周断面積ScAが内周断面積ScBよりも大きいことで、総外周断面積StAが総内周断面積StBよりも大きい。
【0143】
本実施形態によれば、外周断面積ScAが内周断面積ScBよりも大きい。このため、総外周断面積StAが総内周断面積StBよりも大きいという構成を実現できる。したがって、総外周断面積StAが総内周断面積StBよりも大きいという構成を実現するために、必ずしも外周コイル線221Aの数を内周コイル線221Bの数より多くする必要がない。
【0144】
本実施形態では、コイル径方向γにおいて外周コイル線221Aが内周コイル線221Bの外側に設けられている。この構成では、外周コイル線221Aが内周コイル線221Bよりも長いことに起因して、外周コイル線221Aでの電気抵抗が内周コイル線221Bの電気抵抗よりも大きくなりやすい。このように外周コイル線221Aと内周コイル線221Bとで電気抵抗に差が生じると、この抵抗差により生じる循環電流が外周コイル線221Aと内周コイル線221Bとを循環するように流れることが懸念される。
【0145】
これに対して、本実施形態によれば、外周断面積ScAが内周断面積ScBよりも大きいため、外周コイル線221Aの電気抵抗を内周コイル線221Bの電気抵抗に近づくように低減しやすくなる。したがって、外周コイル線221Aと内周コイル線221Bとの間を循環電流が流れることを抑制できる。これにより、コイル線221A,221Bを流れる循環電流により生じる損失を低減できる。
【0146】
<第3実施形態>
上記第1実施形態では、外周コイル線状体220Aの太さと内周コイル線状体220Bの太さが異なっている。これに対して、第3実施形態では、外周コイル線状体220Aの太さと内周コイル線状体220Bの太さがほぼ同じになっている。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第3本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0147】
図14に示すように、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとで、断面形状や太さなどがほぼ同じになっている。例えば、総外周断面積StAと総内周断面積StBとが同じである。外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとでは、幅寸法WA,WBが同じであり、厚さ寸法DA,DBが同じである。外周コイル線221Aの数と内周コイル線221Bの数とが同じである。外周コイル線221Aと内周コイル線221Bとで、断面形状や太さなどが同じになっている。例えば、外周断面積ScAと内周断面積ScBとが同じである。
【0148】
<第4実施形態>
上記第1実施形態では、外周コイル環状部271Aと内周コイル環状部271Bとの境界部において、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとが接触している。これに対して、第4実施形態では、この境界部において、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとが接触していなくてもよい。第4実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第4本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0149】
図15に示すように、コイル部211は、コイル融着部226を有している。コイル融着部226は、外周コイル環状部271Aと内周コイル環状部271Bとの間に設けられている。コイル融着部226は、外周コイル環状部271Aと内周コイル環状部271Bとを融着により接合している。コイル融着部226は、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとの間に設けられ、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとを融着により接合している。コイル融着部226は、外周コイル線221Aと内周コイル線221Bとの間に設けられ、外周コイル線221Aと内周コイル線221Bとを融着している。コイル融着部226は、接合部に相当する。コイル融着部226は、融着材が固化することで形成されており、熱伝導性を有している。コイル融着部226では、融着材が樹脂材料等により形成されている。
【0150】
なお、コイル融着部226は、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとを溶着していれば、これら外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとの間に入り込んでいなくてもよい。また、コイル融着部226は、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとを溶着や接着により接合していてもよい。
【0151】
本実施形態によれば、コイル融着部226は、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとの間に設けられ、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとを接合している。この構成では、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとの隙間をコイル融着部226により埋めることが可能であるため、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとの間で熱が伝わりやすくなる。このため、ステータコア231やコイル線221A,221Bの熱が、内周コイル線状体220Bから外周コイル線状体220Aを介してコイル放熱部295に伝わりやすくなる。したがって、モータ装置60の放熱効果をコイル融着部226により高めることができる。
【0152】
<第5実施形態>
上記第1実施形態では、コイル線状体220A,220Bにおいて複数のコイル線221A,221Bは、互いに当接した状態で直接的に接合されている。これに対して、第5実施形態では、複数のコイル線221A,221Bは、間接的に接合されていてもよい。第5実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第5本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0153】
図16に示すように、コイル線状体220A,220Bは、線状融着部225を有している。線状融着部225は、複数のコイル線221A,221Bの間に設けられており、複数のコイル線221A,221Bを融着している。例えば、線状融着部225は、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つのコイル線221A,221Bの間に設けられており、これらコイル線221A,221Bを融着により接合している。線状融着部225は、接合部に相当する。線状融着部225は、複数のコイル線221A,221Bの素線被覆223を融着している。線状融着部225は、融着材が固化することで形成されており、熱伝導性を有している。線状融着部225では、融着材が樹脂材料等により形成されている。
【0154】
なお、線状融着部225は、隣り合う2つの外周コイル線221Aを融着していれば、これら外周コイル線221Aの間に入り込んでいなくてもよい。また、線状融着部225は、隣り合う2つの外周コイル線221Aを溶着や接着により接合していてもよい。線状融着部225は、隣り合う2つの内周コイル線221Bを融着していれば、これら内周コイル線221Bの間に入り込んでいなくてもよい。また、線状融着部225は、隣り合う2つの内周コイル線221Bを溶着や接着により接合していてもよい。
【0155】
コイル線状体220A,220Bでは、複数のコイル線221A,221Bの隙間が線状融着部225により埋められた状態になっている。なお、線状融着部225には、ボイド等の空隙や隙間が形成されていてもよい。例えば、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つのコイル線221A,221Bの間では、一方のコイル線221A,221B側の線状融着部225と、他方のコイル線221A,221B側の線状融着部225との間に隙間が生じていてもよい。
【0156】
<第6実施形態>
上記第1実施形態では、コイル線状体220A,220Bにおいて複数のコイル線221A,221Bが互いに密着した状態になっている。これに対して、第6実施形態では、複数のコイル線221A,221Bが互いに密着した状態になっていなくてもよい。第6実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第6本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0157】
図17において、コイル線状体220A,220Bでは、複数のコイル線221A,221Bが圧延されずに撚られてた状態になっている。コイル線状体220A,220Bでは、コイル線221A,221Bの断面形状がコイル線状体220A,220Bの圧延が行われていない形状になっている。例えば、コイル線221A,221Bの断面径状が、平坦面を有していない円状になっている。本実施形態では、上記第2実施形態と同様に、コイル線状体220A,220Bにおいて複数のコイル線221A,221Bが線状融着部225により接合されている。
【0158】
本実施形態によれば、線状融着部225は、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つのコイル線221A,221Bの間に設けられ、これらコイル線221A,221Bを融着している。この構成では、隣り合う2つのコイル線221A,221Bの隙間を線状融着部225で埋めることが可能であるため、これらコイル線221A,221Bの間で熱が伝わりやすくなる。このため、ステータコア231やコイル線221A,221Bの熱がコイル線状体220A,220Bからコイル放熱部295に伝わりやすくなる。したがって、モータ装置60の放熱効果を線状融着部225により高めることができる。
【0159】
<第7実施形態>
第7実施形態では、ステータ200において、同相のコイル部211がモータ周方向CDに隣り合うように複数並べられている。第7実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第7本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0160】
図18において、モータ装置60は、コイル部ユニット219を有している。コイル部ユニット219は、周方向CDに複数並べられている。複数のコイル部ユニット219は、コイルユニット210に含まれている。コイル部ユニット219は、相ごとに設けられている。コイル部ユニット219は、複数のコイル部211を有している。1つのコイル部ユニット219は、複数相のうち1相のコイル部211を複数有している。
【0161】
コイル部ユニット219は、コイル部211として、第1コイル部219a及び第2コイル部219bを有している。第1コイル部219aと第2コイル部219bとは、周方向CDに並べられている。コイル部ユニット219では、第1コイル部219a及び第2コイル部219bのうち、第1コイル部219aから電力引出線212が引き出され、第2コイル部219bから中性引出線213が引き出されている。
【0162】
コイル部ユニット219は、第1コイル接続線218a及び第2コイル接続線218bを有している。コイル接続線218a,218bは、第1コイル部219aと第2コイル部219bとを接続している。コイル接続線218a,218bは、第1コイル部219a及び第2コイル部219bのうち一方の外周コイル線状体220Aと他方の内周コイル線状体220Bとを通電可能に接続している。
【0163】
例えば、第1コイル接続線218aは、第1コイル部219aの外周コイル線状体220Aと第2コイル部219bの内周コイル線状体220Bとを接続している。第2コイル接続線218bは、第2コイル部219bの外周コイル線状体220Aと第1コイル部219aの内周コイル線状体220Bとを接続している。第1コイル接続線218aが第1接続線に相当し、第2コイル接続線218bが第2接続線に相当する。
【0164】
本実施形態によれば、第1コイル接続線218aは、第1コイル部219aが有する外周コイル線状体220Aと第2コイル部219bが有する内周コイル線状体220Bとを通電可能に接続している。また、第2コイル接続線218bは、第2コイル部219bが有する外周コイル線状体220Aと第1コイル部219aが有する内周コイル線状体220Bとを通電可能に接続している。この構成では、コイル部ユニット219において、第1コイル接続線218aを含む第1経路の長さと、第2コイル接続線218bを含む第2経路の長さとの差が生じにくい。このため、第1経路の電気抵抗と第2経路の電気抵抗とに差が生じにくい。したがって、電気抵抗の差によって第1経路と第2経路とに循環電流が流れるということを抑制できる。このように、抵抗差により生じる循環電流が第1コイル部219aと第2コイル部219bとを循環するように流れることを抑制できる。
【0165】
<第8実施形態>
上記第1実施形態では、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bという2本の線状体が巻回されることでコイル部211が形成されている。これに対して、第8実施形態では、2本よりも多い線状体が巻回されることでコイル部211が形成されている。第8実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第8本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0166】
図19に示すように、コイルユニット210は、上記第7実施形態と同様に、コイル部ユニット219を有している。コイル部ユニット219では、上記第7実施形態とは異なり、第1コイル部219aと第2コイル部219bとで外周コイル線状体220A同士が接続され、内周コイル線状体220B同士が接続されている。なお、コイル部ユニット219では、上記第7実施形態と同様に、第1コイル部219a及び第2コイル部219bのうち一方の外周コイル線状体220Aと他方の内周コイル線状体220Bとが接続されていてもよい。
【0167】
コイルユニット210では、モータ周方向CDに隣り合う2つのコイル部ユニット219が互いに異なる相になっている。例えば、モータ周方向CDに隣り合う2つのコイル部ユニット219のうち一方がU相であれば、他方はV相又はW相である。1つのコイル部ユニット219では、上記第7実施形態と同様に、複数のコイル部211が同じ相である。例えば、1つのコイル部ユニット219では、第1コイル部219aと第2コイル部219bとが同じ相である。
【0168】
図19図20に示すように、コイル部211は、第1端面211c及び第2端面211dを有している。コイル部211が有する一対の端面のうち一方が第1端面211cであり、他方が第2端面211dである。第1端面211cと第2端面211dとは、コイル外周面211a及びコイル内周面211bを介してコイル軸方向αに並べられている。例えば、第1端面211cは、コイル軸方向αにおいて一方側の端位置にあるコイル環状部271A、271Bにより形成されている。第2端面211dは、コイル軸方向αにおいて他方側の端位置にあるコイル環状部271A,271Bにより形成されている。
【0169】
コイル部211では、電力引出線212と中性引出線213とがコイル径方向γに並べられている。コイル部211からは、モータ径方向RDの一方側に向けて電力引出線212が引き出され、他方側に向けて中性引出線213が引き出されている。例えば、電力引出線212は、コイル部211からモータ径方向RDの外側に向けて引き出されている。中性引出線213は、コイル部211からモータ径方向RDの内側に向けて引き出されている。
【0170】
電力引出線212及び中性引出線213は、コイル軸方向αにおいて第1端面211c及び第2端面211dのうち一方側に設けられている。例えば、電力引出線212及び中性引出線213は、コイル軸方向αにおいて第1端面211c側に設けられている。電力引出線212及び中性引出線213は、第1端面211cを形成しているコイル環状部271A,271Bから引き出されている。
【0171】
図19に示すように、コイルユニット210は、中性バスバ401を有している。中性バスバ401は、バスバ部材等により形成されている。中性バスバ401は、中性点65を形成している。中性バスバ401は、複数のコイル部ユニット219を通電可能に接続している。例えば、中性バスバ401は、U相のコイル部ユニット219とV相のコイル部ユニット219とW相のコイル部ユニット219とを通電可能に接続している。中性バスバ401は、中性引出線213に接続されていることで、コイル部ユニット219に通電可能に接続されている。
【0172】
中性バスバ401は、コイル軸方向αにおいて第1端面211c側に設けられている。中性バスバ401は、モータ径方向RDにおいて中性引出線213に並べられている。中性バスバ401は、モータ径方向RDにおいてコイル部211の内側に設けられている。中性バスバ401は、複数のコイル部ユニット219にかけ渡されるようにモータ周方向CDに延びている。
【0173】
コイルユニット210は、中継引出線214及び中継バスバ402を有している。中継引出線214及び中継バスバ402は、コイル部ユニット219に含まれている。中継引出線214及び中継バスバ402は、コイル部ユニット219において複数のコイル部211を通電可能に接続している。例えば、中継引出線214及び中継バスバ402は、第1コイル部219aと第2コイル部219bとを接続している。
【0174】
中継引出線214は、電力引出線212及び中性引出線213と同様に、コイル部211から引き出されている。中継引出線214は、コイル引出線に相当する。中継引出線214の少なくとも一部は、コイル線状体220A,220Bにより形成されている。中継引出線214は、コイル部211からモータ径方向RDの内側に向けて引き出されている。図20に示すように、中継引出線214は、電力引出線212及び中継引出線214からコイル軸方向αに離れた位置に設けられている。中継引出線214は、コイル軸方向αにおいて第2端面211d側に設けられている。中継引出線214は、第1コイル部219a及び第2コイル部219bのそれぞれに設けられている。
【0175】
図19に示すように、中継バスバ402は、第1コイル部219aから引き出された中継引出線214と、第2コイル部219bから引き出された中継引出線214とのそれぞれに接続されている。中継バスバ402は、バスバ部材等により形成されている。中継バスバ402は、中性バスバ401からコイル軸方向αに離れた位置に設けられている。中継バスバ402は、コイル軸方向αにおいて第2端面211d側に設けられている。中継バスバ402は、モータ径方向RDにおいて中継引出線214に並べられている。中継バスバ402は、モータ径方向RDにおいてコイル部211の内側に設けられている。中継バスバ402は、第1コイル部219aと第2コイル部219bとにかけ渡されるようにモータ周方向CDに延びている。
【0176】
コイル部ユニット219は、上記第7実施形態と同様に、図示しないコイル接続線218a,218bを有している。コイル接続線218a,218bの少なくとも一部は、中継引出線214及び中継バスバ402により形成されている。
【0177】
図21に示すように、コイル部211は、外周コイル環状部271A及び内周コイル環状部271Bに加えて、介在コイル環状部271Cを有している。介在コイル環状部271Cは、コイル軸方向αに複数並べられている。複数の介在コイル環状部271Cは、コイル軸方向αに積層されている。介在コイル環状部271Cは、コイル周方向βにリング状に延びている。介在コイル環状部271Cは、コイル環状部271A,271Bと同様の環状部である。介在コイル環状部271Cは、全体として板状に形成されており、コイル軸方向αに直交する方向に延びている。介在コイル環状部271Cは、コイル軸方向αに潰れるように扁平した形状になっている。介在コイル環状部271Cは、コイル径方向γの幅寸法がコイル軸方向αの厚さ寸法より大きくなるように扁平している。
【0178】
介在コイル環状部271Cは、コイル環状部271A,271Bと同様に、環状外周面272、環状内周面273及び環状板面274を有している。環状外周面272、環状内周面273及び環状板面274については、介在コイル環状部271Cでの構成が環状部271A,271Bでの構成と同様になっている。
【0179】
コイル環状部271A~271Cは、コイル径方向γに並べられている。介在コイル環状部271Cは、コイル径方向γにおいて外周コイル環状部271Aと内周コイル環状部271Bとの間に設けられている。外周コイル環状部271Aと介在コイル環状部271Cとの境界部では、外周コイル環状部271Aの環状内周面273と介在コイル環状部271Cの環状外周面272とが、互いに重ねられるように接触している。内周コイル環状部271Bと介在コイル環状部271Cとの境界部では、内周コイル環状部271Bの環状外周面272と介在コイル環状部271Cの環状内周面273とが、互いに重ねられるように接触している。
【0180】
図21図22に示すように、コイル部211は、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bに加えて、介在コイル線状体220Cを有している。コイル部211は、コイル線状体220A~220Cが巻回されることで形成されている。コイル線状体220A~220Cは、ステータコア231に対して巻回されている。
【0181】
コイル線状体220A~220Cは、コイル径方向γに並べられ、互いに並行して巻回されている。介在コイル線状体220Cは、コイル径方向γにおいて外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとの間に設けられている。コイル部211では、コイル線状体220A~220Cがコイル径方向γに三重に巻回された状態になっている。介在コイル線状体220Cは、第3線状体に相当する。
【0182】
介在コイル線状体220Cは、コイル線状体220A,220Bと同様の線状体である。例えば、介在コイル線状体220Cは、全体として板状に形成されている。介在コイル線状体220Cは、全体として平角線のような形状になっている。介在コイル線状体220Cは、コイル軸方向αに直交する方向に延びている。
【0183】
図23に示すように、介在コイル線状体220Cは、電線等の線材として介在コイル線221Cを複数有している。介在コイル線状体220Cは、複数の介在コイル線221Cが撚られて線状に形成されている。介在コイル線状体220Cは、複数の介在コイル線221Cが互いに巻き付くようにねじられた状態でコイル周方向βに延びている。介在コイル線221Cは、コイル周方向βに直交する方向に移動しながらコイル周方向βに延びた状態になっている。介在コイル線221Cは、介在コイル線状体220Cにおいてコイル周方向βの位置が異なると、コイル軸方向αやコイル径方向γの位置が異なる。
【0184】
介在コイル線状体220Cは、介在線状面220Cosを有している。介在線状面220Cosは、介在コイル線状体220Cの外周面である。介在コイル線状体220Cでは、介在コイル線221Cにより介在線状面220Cosが形成されている。介在コイル線221Cは、介在コイル線状体220Cの外側に露出することで介在線状面220Cosを形成している。介在コイル線状体220Cは、複数の介在コイル線221Cをまとめて覆うような被覆部を有していない。
【0185】
図21に示すように、介在コイル線状体220Cは、介在コイル環状部271Cを形成している。介在コイル線状体220Cが複数回巻かれることで、複数の介在コイル環状部271Cが形成されている。介在線状面220Cosは、介在コイル環状部271Cの外周面に含まれている。介在コイル線状体220Cは、介在コイル環状部271Cにおいて環状外周面272と環状内周面273とにかけ渡されるようにコイル径方向γに延びている。介在コイル環状部271Cでは、1つの介在コイル線状体220Cが環状外周面272及び環状内周面273の両方を形成している。介在コイル線状体220Cは、コイル部211においてモータ軸方向ADの一方側だけに向けて積層されるように巻回されている。
【0186】
図23に示すように、1本の介在コイル線221Cは、介在コイル環状部271Cの外周面の少なくとも一部を形成している。介在コイル線221Cは、介在コイル環状部271Cの外側に露出している。
【0187】
介在コイル線221Cは、コイル線221A,221Bと同様に、外周露出部224a、内周露出部224b及び板面露出部224cを有している。外周露出部224a、内周露出部224b及び板面露出部224cについては、介在コイル線221Cでの構成がコイル線221A,221Bでの構成と同様になっている。
【0188】
コイル部211では、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bと介在コイル線状体220Cとで撚りの状態が異なっている。外周コイル線状体220Aの撚りが最も弱く、内周コイル線状体220Bの撚りが最も強い。介在コイル線状体220Cの撚りは、外周コイル線状体220Aの撚りよりも強い一方で、内周コイル線状体220Bの撚りよりも弱い。コイル線状体220A~220Cの撚りの強さは、複数のコイル線221A~221Cが撚られた度合いである。
【0189】
コイル線状体220A~220Cの撚りの強さが異なっている構成としては、コイル線状体220A~220Cの撚り角度θや撚りピッチP、撚り回数が異なっている構成などがある。撚り角度θや撚りピッチP、撚り回数は、コイル線221A~221Cの撚りの強さを示すための値である。なお、撚り角度θや撚りピッチP、撚り回数は、コイル線状体220A~220Cの撚りの強さに加えて、コイル線221A~221Cの太さや数によっても増減することがある。
【0190】
コイル線状体220A~220Cでは、撚りが強いほど撚り角度θが大きくなりやすい。撚り角度θは、複数のコイル線221A~221Cが撚られた角度である。撚り角度θは、線状体軸線Cβに対するコイル線221A~221Cの傾斜角度である。線状体軸線Cβは、コイル線221A~221Cの中心を通ってコイル周方向βに延びる仮想線である。例えば、撚り角度θは、線状体軸線Cβとコイル線221A~221Cの中心線との間の角度である。コイル線221A~221Cの中心線は、コイル線221A~221Cの中心を通ってコイル線221A~221Cの長手方向に延びる仮想線である。
【0191】
コイル線状体220A~220Cでは、外周撚り角度θaが最も小さく、内周撚り角度θbが最も大きい。介在撚り角度θcは、外周撚り角度θaよりも大きい一方で、内周撚り角度θbよりも小さい。外周撚り角度θaは、外周コイル線状体220Aの撚り角度θである。内周撚り角度θbは、内周コイル線状体220Bの撚り角度θである。介在撚り角度θcは、介在コイル線状体220Cの撚り角度θである。
【0192】
コイル線状体220A~220Cでは、撚りが強いほど撚りピッチPが小さくなりやすい。撚りピッチPは、コイル線状体220A~220Cの1回の撚りに対するコイル線状体220A~220Cの長さに相関する値である。コイル線状体220A~220Cの1回の撚りに対するコイル線状体220A~220Cの長さが大きいほど、撚りピッチPは大きい値になる。例えば、撚りピッチPは、1本のコイル線221A~221Cにおいて、コイル周方向βでの外周露出部224aと内周露出部224bとの距離である。
【0193】
コイル線状体220A~220Cでは、外周撚りピッチPaが最も大きく、内周撚りピッチPbが最も小さい。介在ピッチPcは、外周撚りピッチPaよりも小さい一方で、内周撚りピッチPbよりも大きい。外周撚りピッチPaは、外周コイル線状体220Aの撚りピッチPである。内周撚りピッチPbは、内周コイル線状体220Bの撚りピッチPである。介在ピッチPcは、介在コイル線状体220Cの撚りピッチPである。
【0194】
コイル線状体220A~220Cでは、撚りが強いほど撚り回数が大きくなりやすい。撚り回数は、コイル線状体220A~220Cの1回の巻回に対するコイル線状体220A~220Cの撚りの回数である。例えば、撚り回数は、1つのコイル環状部271A~271Cにおいてコイル線状体220A~220Cが撚られた回数である。なお、撚り回数は、コイル線状体220A~220Cの単位長さに対するコイル線状体220A~220Cの撚りの回数などでもよい。
【0195】
コイル線状体220A~220Cでは、外周撚り回数が最も少なく、内周撚り回数が最も多い。介在撚り回数は、外周撚り回数よりも多い一方で、内周撚り回数よりも少ない。外周撚り回数は、外周コイル線状体220Aの撚り回数である。内周撚り回数は、内周コイル線状体220Bの撚り回数である。介在撚り回数は、介在コイル線状体220Cの撚り回数である。
【0196】
図24に示すように、介在コイル線状体220Cは、コイル線状体220A,220Bと同様に、コイル軸方向αに潰れるように扁平した形状になっている。介在コイル線状体220Cでは、コイル径方向γの幅寸法WCがコイル軸方向αの厚さ寸法DCよりも大きい。
【0197】
コイル線状体220A~220Cは、互いに異なる太さを有している。介在コイル線状体220Cは、外周コイル線状体220Aよりも細い一方で、内周コイル線状体220Bよりも太い。介在コイル線状体220Cの幅寸法WCは、外周コイル線状体220Aの幅寸法WAよりも小さい一方で、内周コイル線状体220Bの幅寸法WBよりも大きい。幅寸法WCは、介在コイル環状部271Cの幅寸法である。
【0198】
介在コイル環状部271Cでは、コイル環状部271A,271Bと同様に、コイル周方向βにおいて環状外周面272が環状内周面273よりも長い。介在コイル環状部271Cでは、環状外周面272が介在コイル線状体220Cの外周端に相当し、環状内周面273が介在コイル線状体220Cの内周端に相当する。
【0199】
介在コイル線状体220Cは、コイル線状体220A,220Bと同様に、コイル部211よりも細い状態でコイル周方向βに延びている。このため、介在コイル環状部271Cにおいて環状外周面272と環状内周面273との長さ差ΔLCは、長さ差ΔLA,ΔLBと同様に、コイル外周面211aとコイル内周面211bとの長さ差ΔLよりも小さい。本実施形態では、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとの間に介在コイル線状体220Cがある分だけ、上記第1実施形態に比べて、コイル線状体220A,220Bの幅寸法WA,WBが小さくなりやすい。このため、コイル環状部271A~271Cについて、長さ差ΔLA~ΔLCが小さくなりやすい。
【0200】
コイル線状体220A~220Cについて、コイル部211を形成するために必要な長さは、外周コイル線状体220Aが最も長く、内周コイル線状体220Bが最も短い。また、介在コイル線状体220Cは、外周コイル線状体220Aよりも短い一方で、内周コイル線状体220Bよりも長い。コイル線状体220A~220Cと同様に、コイル線状体220B~221Cについても、コイル部211を形成するために必要な長さは、外周コイル線221Aが最も長く、内周コイル線221B最も短い。また、介在コイル線221Cは、外周コイル線221Aよりも短い一方で、内周コイル線221Bよりも長い。
【0201】
コイル部211では、外周コイル線221Aの数と内周コイル線221Bの数と介在コイル線221Cの数とが同じである。例えば、コイル軸方向αに並んだ数は、外周コイル線221Aと内周コイル線221Bと介在コイル線221Cとで同じである。また、コイル径方向γに並んだ数も、外周コイル線221Aと内周コイル線221Bと介在コイル線221Cとで同じである。
【0202】
介在コイル線221Cは、コイル線221A,221Bと同様に、コイル素線222及び素線被覆223を有している。コイル素線222及び素線被覆223については、介在コイル線221Cでの構成が、コイル線221A,221Bでの構成と同様になっている。
【0203】
介在コイル線状体220Cでは、介在コイル線221Cの断面形状や太さなどが複数の介在コイル線221Cで均一化されている。介在コイル線221Cの断面積は、複数の介在コイル線221Cでほぼ同じである。介在コイル線221Cが介在断面積ScCは、複数の介在コイル線221Cでほぼ同じである。介在断面積ScCは、介在コイル線221Cが有するコイル素線222の断面積である。介在断面積ScCは、コイル素線222においてコイル周方向βに直交する断面の面積である。介在コイル線状体220Cでは、コイル径方向γにおいて外周側の介在コイル線221Cほど介在断面積ScCが小さくなりやすい。介在コイル線状体220Cの総介在断面積StCは、コイル素線222が有する介在断面積ScCを複数の介在コイル線221Cで合計した値である。総介在断面積StCは、コイル素線222という導体の断面積を複数の介在コイル線221Cで合計した値である。
【0204】
介在コイル線状体220Cの断面積は、外周コイル線状体220Aの断面積よりも小さい一方で、内周コイル線状体220Bの断面積よりも大きい。総介在断面積StCは、総外周断面積StAよりも小さい一方で、総内周断面積StBよりも大きい。外周コイル線221Aの数と介在コイル線221Cの数とが同じでも、介在断面積ScCが外周断面積ScAよりも小さいことで、総介在断面積StCが総外周断面積StAよりも小さい。内周コイル線221Bの数と介在コイル線221Cの数とが同じでも、介在断面積ScCが内周断面積ScBよりも大きいことで、総介在断面積StCが総内周断面積StBよりも大きい。総介在断面積StCは、第3断面積に相当する。
【0205】
図24において、介在コイル線状体220Cでは、複数の介在コイル線221Cが互いに密着した状態になっている。例えば、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つの介在コイル線221Cでは、それぞれの素線被覆223が互いに密着している。複数の介在コイル線221Cでは、それぞれの素線被覆223が融着や溶着により接合されている。隣り合う2つの介在コイル線221Cのそれぞれの素線被覆223は、互いに当接している。例えば、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つの介在コイル線状体220Cでは、それぞれの素線被覆223の少なくとも一部が接合されている。なお、隣り合う2つの介在コイル線状体220Cの間には、隙間が形成されていてもよい。
【0206】
外周コイル環状部271Aと介在コイル環状部271Cとの境界部では、外周コイル環状部271Aと介在コイル環状部271Cとが互いに固定されている。例えば、外周コイル環状部271Aが有する素線被覆223と、介在コイル環状部271Cが有する素線被覆223と、が溶着等により接合されている。また、内周コイル環状部271Bと介在コイル環状部271Cとの境界部では、内周コイル環状部271Bと介在コイル環状部271Cとが互いに固定されている。例えば、内周コイル環状部271Bが有する素線被覆223と、介在コイル環状部271Cが有する素線被覆223と、が溶着等により接合されている。
【0207】
介在コイル線状体220Cは、複数の介在コイル線221Cが互いに密着するように圧延されながら撚られた状態になっている。例えば、介在コイル線状体220Cでは、介在コイル線221Cの断面形状が介在コイル線状体220Cの圧延に伴って変化した形状になっている。介在コイル線状体220Cが圧延されることで、介在コイル線状体220Cの占積率が高められている。
【0208】
図25に示すように、コイルユニット210では、複数のコイル部211に左巻きコイル部211L及び右巻きコイル部211Rが含まれている。左巻きコイル部211Lと右巻きコイル部211Rとでは、コイル線状体220A~220Cが巻回された向きが逆になっている。左巻きコイル部211Lでは、コイル線状体220A~220Cが左巻きに巻回されている。右巻きコイル部211Rでは、コイル線状体220A~220Cが右巻きに巻回されている。
【0209】
左巻きコイル部211Lと右巻きコイル部211Rとでは、コイル軸方向αにおいて第1端面211c及び第2端面211dのうち一方から他方に向かう向きを基準にして、コイル線状体220A~220Cが巻回される向きが逆になっている。例えば、左巻きコイル部211Lでは、コイル線状体220A~220Cが第1端面211cから第2端面211dに向けてコイル軸方向αに積層される向きを基準にすると、コイル線状体220A~220Cが左巻きに巻回されている。右巻きコイル部211Rでは、左巻きコイル部211Lと同様に、コイル線状体220A~220Cが第1端面211cから第2端面211dに向けてコイル軸方向αに積層される向きを基準にすると、コイル線状体220A~220Cが右巻きに巻回されている。
【0210】
図19に示すように、1つのコイル部ユニット219は、左巻きコイル部211L及び右巻きコイル部211Rのうち一方だけを有している。例えば、1つのコイル部ユニット219では、第1コイル部219a及び第2コイル部219bの両方が、左巻きコイル部211L及び右巻きコイル部211Rのうち一方になっている。モータ周方向CDに隣り合う2つのコイル部ユニット219のうち一方では、全てのコイル部211が左巻きコイル部211Lになっており、他方では、全てのコイル部211が右巻きコイル部211Rになっている。
【0211】
コイルユニット210では、コイル部211への通電に伴って磁束が発生する。1つのコイル部ユニット219では、第1コイル部219aの内周側に生じる磁束mfの向きと、第2コイル部219bの内周側に生じる磁束mfの向きとが、モータ軸方向ADにおいて逆向きになっている。また、左巻きコイル部211Lと右巻きコイル部211Rとがモータ周方向CDに隣り合っている部分では、これら2つのコイル部211L,211Rにて生じる磁束mfの向きが同じになっている。
【0212】
コイルユニット210では、複数のコイル部211に左巻きコイル部211L及び右巻きコイル部211Rの両方が含まれていることで、全てのコイル部211で中性引出線213をモータ軸方向ADでの第1端面211c側から引き出すことが可能になっている。このため、コイル部211から引き出された中性引出線213を中性バスバ401に接続するためにモータ軸方向ADに延ばす、という必要がない。
【0213】
例えば本実施形態とは異なり、コイルユニット210が有する全てのコイル部211でコイル線状体220A~220Cの巻回向きが同じになっている構成を想定する。この構成では、コイル周方向βに隣り合う2つのコイル部ユニット219のうち一方では、中性引出線213がモータ軸方向ADでの第1端面211c側から引き出され、他方では、中性引出線213が第2端面211d側から引き出される。このため、中性引出線213や中性バスバ401の形状が複雑になることが懸念される。
【0214】
これに対して、本実施形態では、全てのコイル部ユニット219について、中性引出線213と中性バスバ401とをモータ径方向RDやモータ周方向CDに並べることが可能である。このため、中性引出線213や中性バスバ401を単にモータ径方向RDやモータ周方向CDに延ばすことで、中性引出線213と中性バスバ401とを接続することが可能になる。例えば、中性引出線213と中性バスバ401とを接続するために、中性引出線213や中性バスバ401をモータ軸方向ADに延ばす必要がない。したがって、中性引出線213や中性バスバ401の形状が複雑になるということが抑制される。
【0215】
図26に示すように、左巻きコイル部211Lと右巻きコイル部211Rとでは、コイル線状体220A~220Cが撚られた向きが逆になっている。コイル線状体220A~220Cが撚られた向きは、複数のコイル線221A~221Cが撚られた向きでもある。左巻きコイル部211Lは、左巻き用線状体220Lを有している。左巻き用線状体220Lは、左巻きに適した向きで撚られたコイル線状体220A~220Cである。すなわち、左巻きコイル部211Lが有するコイル線状体220A~220Cがいずれも、左巻き用線状体220Lである。例えば、左巻き用線状体220Lは、左巻き用線状体220Lが電力引出線212又は中性引出線213から中継引出線214に延びる向きを基準にして、左向き又は右向きに撚られている。
【0216】
右巻きコイル部211Rは、右巻き用線状体220Rを有している。右巻き用線状体220Rは、右巻きに適した向きで撚られたコイル線状体220A~220Cである。すなわち、右巻きコイル部211Rが有するコイル線状体220A~220Cがいずれも、右巻き用線状体220Rである。例えば、右巻き用線状体220Rは、右巻き用線状体220Rが電力引出線212又は中性引出線213から中継引出線214に延びる向きを基準 にして、左巻き用線状体220Lとは逆向きに撚られている。
【0217】
本実施形態によれば、コイル部211は、コイル線状体220A,220Bに加えて介在コイル線状体220Cにより形成されている。そして、介在コイル線状体220Cは、複数の介在コイル線221Cが撚られて線状に形成されている。介在コイル線状体220Cでは、コイル周方向βでの位置が異なると、複数の介在コイル線221Cが順番に入れ替わるようにしてコイル部211の内周側に配置される。このため、介在コイル線状体220Cにおいて特定の介在コイル線221Cだけの損失が増加する、ということを抑制できる。したがって、複数の外周コイル線221A及び複数の内周コイル線221Bに加えて、複数の介在コイル線221Cが撚られていることにより、コイル部211での損失を低減することができる。
【0218】
しかも、介在コイル線状体220Cは、コイル径方向γにおいて外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとの間に設けられている。この構成では、コイル線状体220A~220Cの幅寸法WA~WCがコイル部211の幅寸法W1よりも小さくなる。このため、コイル線状体220A~220Cでの長さ差ΔLA~ΔLCがコイル部211での長さ差ΔLよりも小さくなる。したがって、コイル部211では、コイル線状体220A~220Cにおいて、外周側にある外周露出部224aなどの部位が伸びすぎて切れるなどの異常が発生する、ということを抑制できる。このように、コイル線状体220A~220Cの異常発生を抑制することで、コイル部211での損失を更に低減することができる。
【0219】
コイル部211では、コイル線211A~221Cの長さにばらつきがあると、コイル線211A~221Cの電気抵抗にばらつきが生じやすい。コイル部211では、コイル線211A~221Cが長いほど、コイル線211A~221Cの電気抵抗が大きくなりやすい。このため、コイル部211では、外周コイル線221Aが最も長いことで、外周コイル線221Aの電気抵抗が最も大きくなりやすい。また、内周コイル線221Bが最も短いことで、内周コイル線221Bの電気抵抗が最も小さくなりやすい。介在コイル線221Cの電気抵抗は、外周コイル線221Aの電気抵抗よりも小さくなりやすい一方で、内周コイル線221Bの電気抵抗よりも大きくなりやすい。
【0220】
コイル部211では、コイル線211A~221Cの各電気抵抗に差があると、この差により循環電流が生じることがある。コイル部211にて生じる循環電流としては、図22に示すように、第1循環電流Ic1や第2循環電流Ic2、第3循環電流Ic3などがある。第1循環電流Ic1は、外周コイル線221Aと介在コイル線221Cとの間を流れる循環電流である。第1循環電流Ic1は、外周コイル線221Aの電気抵抗と介在コイル線221Cの電気抵抗とに差があることで生じる電流である。第2循環電流Ic2は、内周コイル線221Bと介在コイル線221Cとの間を流れる循環電流である。第2循環電流Ic2は、内周コイル線221Bの電気抵抗と介在コイル線221Cの電気抵抗とに差があることで生じる電流である。第3循環電流Ic3は、外周コイル線221Aと内周コイル線221Bとの間を流れる循環電流である。第3循環電流Ic3は、外周コイル線221Aの電気抵抗と内周コイル線221Bの電気抵抗とに差があることで生じる電流である。
【0221】
これに対して、本実施形態によれば、介在断面積ScCは、外周断面積ScAよりも小さく、内周断面積ScBよりも大きい。この構成では、外周断面積ScAが極力大きくされているため、外周コイル線221Aの電気抵抗が低減されやすい。このため、外周コイル線221Aが内周コイル線221B及び介在コイル線221Cより長い構成でも、外周コイル線221Aの電気抵抗と、内周コイル線221Bの電気抵抗及び介在コイル線221Cの電気抵抗との差を低減できる。このため、外周コイル線221Aに第1循環電流Ic1や第3循環電流Ic3などの循環電流が流れるということを抑制できる。
【0222】
また、この構成では、介在断面積ScCが外周断面積ScAよりも小さい範囲で、極力大きくされているため、介在コイル線221Cの電気抵抗が低減されやすい。このため、介在コイル線221Cが内周コイル線221Bより長い構成でも、介在コイル線221Cの電気抵抗と内周コイル線221Bにお電気抵抗との差を低減できる。このため、介在コイル線221Cに第2循環電流Ic2などの循環電流が流れるということを抑制できる。
【0223】
コイル部211において、コイル線状体220A~220Cの曲がりがきつい部分では、コイル線状体220A~220Cの撚りがほどけるように複数のコイル線221A~221Cがばらけることが懸念される。例えば、コイル部211では、介在コイル線状体220Cの曲がりが外周コイル線状体220Aの曲がりよりもきつい状態になっていることに起因して、介在コイル線状体220Cが複数の介在コイル線221Cにばらけた状態になることが懸念される。また、内周コイル線状体220Bの曲がりが介在コイル線状体220Cの曲がりよりもきつい状態になっていることに起因して、内周コイル線状体220Bが複数の内周コイル線221Bにばらけた状態になることが懸念される。
【0224】
これに対して、本実施形態によれば、介在コイル線状体220Cの撚りは、外周コイル線状体220Aの撚りよりも強く、内周コイル線状体220Bの撚りよりも弱い。この構成では、介在コイル線状体220Cの撚りが外周コイル線状体220Aの撚りよりも強いため、介在コイル線状体220Cが曲げられた部分などでも介在コイル線状体220Cの撚りが保持されやすい。このため、介在コイル線状体220Cが複数の介在コイル線221Cにばらけた状態になるということを抑制できる。
【0225】
また、この構成では、内周コイル線状体220Bの撚りが介在コイル線状体220Cの撚りよりも強いため、内周コイル線状体220Bが曲げられた部分などでも内周コイル線状体220Bの撚りが保持されやすい。このため、内周コイル線状体220Bが複数の内周コイル線221Bにばらけた状態になるということを抑制できる。
【0226】
本実施形態によれば、左巻きコイル部211Lにおいてコイル線状体220A~220Cが撚られた向きと、右巻きコイル部211Rにおいてコイル線状体220A~220Cが撚られた向きとが逆向きである。この構成では、左巻きコイル部211L及び右巻きコイル部211Rのそれぞれにおいて、コイル線状体220A~220Cの撚りがほどけにくい向きでコイル線状体220A~220Cを巻回することができる。このため、左巻きコイル部211L及び右巻きコイル部211Rのうち一方が他方に比べて、コイル線状体220A~220Cが複数のコイル線221A~221Cにばらけやすい、ということを抑制できる。
【0227】
例えば本実施形態とは異なり、左巻きコイル部211L及び右巻きコイル部211Rにおいて、コイル線状体220A~220Cが撚られた向きが同じである構成を想定する。この構成では、コイル線状体220A~220Cが巻回された向きと撚られた向きとの関係で、左巻きコイル部211L及び右巻きコイル部211Rのうち一方が他方に比べて、コイル線状体220A~220Cの撚りがほどけやすいことが懸念される。
【0228】
<第9実施形態>
第9実施形態では、外周コイル線状体220Aの撚りの強さと内周コイル線状体220Bの撚りの強さとが異なっている。第9実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第9本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0229】
本実施形態では、コイル部211が介在コイル線状体220Cを有していない点で、上記第8実施形態と異なっている。図27に示すように、コイル部211では、上記第8実施形態と同様に、外周コイル線状体220Aと内周コイル線状体220Bとで撚りの状態が異なっている。外周コイル線状体220Aの撚りが内周コイル線状体220Bの撚りよりも強い。例えば、コイル部211では、外周撚り角度θaが内周撚り角度θbよりも小さい。また、外周撚りピッチPaが内周撚りピッチPbよりも大きい。さらに、外周撚り回数が内周撚り回数よりも少ない。
【0230】
コイルユニット210では、上記第8実施形態と同様に、複数のコイル部211に左巻きコイル部211L及び右巻きコイル部211Rが含まれている。図28に示すように、左巻きコイル部211Lと右巻きコイル部211Rとでは、コイル線状体220A,220Bが巻回された向きが逆になっている。
【0231】
本実施形態によれば、外周コイル線状体220Aの撚りが内周コイル線状体220Bの撚りよりも強い。この構成では、外周コイル線状体220Aの内周側において、内周コイル線状体220Bが曲げられた部分などでも内周コイル線状体220Bの撚りが保持されやすい。このため、外周コイル線状体220Aの内周側において、内周コイル線状体220Bが複数の内周コイル線221Bにばらけた状態になるということを抑制できる。
【0232】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、又は組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0233】
上記各実施形態において、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bが巻回されることでコイル部211が形成されていれば、コイル部211はどのように形成されていてもよい。例えば、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bを含む3本以上の線状体が巻回されることでコイル部211が形成されていてもよい。
【0234】
上記各実施形態において、コイル線状体220A,220Bは、どのような断面形状や太さになっていてもよい。例えば、外周コイル線状体220Aの厚さ寸法DAと内周コイル線状体220Bの厚さ寸法DBとが異なっていてもよい。また、外周コイル線状体220Aが内周コイル線状体220Bより細くてもよい。例えば、総外周断面積StAが総外周断面積StAより小さくてもよい。
【0235】
上記各実施形態において、コイル線221A,221Bは、どのような断面形状や太さになっていてもよい。例えば、外周コイル線221Aが内周コイル線221Bより細くてもよい。例えば、外周断面積ScAが内周断面積ScBより小さくてもよい。また、コイル部211では、外周コイル線221Aの数が内周コイル線221Bの数より少なくてもよい。
【0236】
上記各実施形態において、複数のコイル線221A,221Bが撚られることでコイル線状体220A,220Bが形成されていれば、コイル線221A,221Bがどのように撚られていてもよい。コイル線状体220A,220Bでは、コイル線状体220A,220Bの径方向に複数の層が重なるように複数のコイル線221A,221Bが撚られていてもよい。例えば、コイル線状体220A,220Bでは、コイル線状体220A,220Bの径方向に内層と外層とが並べられていてもよい。内層は、コイル線221A,221Bを複数有している。内層では、複数のコイル線221A,221Bが撚られている。外層は、内層とは異なるコイル線221A,221Bを複数有している。外層では、内層を覆うように複数のコイル線221A,221Bが撚られている。内層に含まれたコイル線221A,221Bは、外周露出部224aや内周露出部224b、板面露出部224cを有していない。
【0237】
上記各実施形態において、コイル線状体220A,220Bにおいて複数のコイル線221A,221Bが撚られていれば、コイル線221A,221Bはどのような構成になっていてもよい。例えば、コイル線状体220A,220Bでは、コイル線221A,221Bの断面形状や太さなどが複数のコイル線221A,221Bで異なっていてもよい。例えば、コイル線221A,221Bの断面積が複数のコイル線221A,221Bで異なっていてもよい。
【0238】
上記各実施形態において、コイル線状体220A,220Bは、コイル部211を形成していればどのように巻回されていてもよい。例えば、コイル線状体220A,220Bは、コイル部211においてコイル径方向γに複数重ねて巻回されていてもよい。コイル線状体220A,220Bは、コイル径方向γに二重に巻回されていてもよい。また、コイル線状体220A,220Bは、コイル軸方向αに積層されていなくてもよい。
【0239】
上記各実施形態において、コイル線状体220A,220Bは、コイル部211の少なくとも一部を形成していればよい。例えば、コイル部211では、少なくとも一部のコイル環状部271A,271Bがコイル線状体220A,220Bにより形成されていればよい。この構成では、残りのコイル環状部271A,271Bが、複数のコイル線221A,221Bが撚られていない状態の電線等により形成されていればよい。
【0240】
上記各実施形態において、コイル線状体220A,220Bは、電力引出線212等のコイル引出線の少なくとも一部を形成していてもよい。例えば、外周コイル線状体220A及び内周コイル線状体220Bの少なくとも一方がコイル引出線を形成していればよい。また、コイル線状体220A,220Bは、コイル引出線を形成していなくてもよい。
【0241】
上記各実施形態において、介在コイル線状体220Cは、コイル線状体220A,220Bと同様に、どのような断面形状や太さになっていてもよい。また、介在コイル線221Cは、コイル線221A,221Bと同様に、どのような断面形状や太さになっていてもよい。さらに、介在コイル線状体220Cでは、コイル線状体220A,220Bと同様に、複数の介在コイル線221Cがどのように撚られていてもよい。加えて、複数の介在コイル線221Cは、複数のコイル線221A,221Bと同様に、断面形状や太さ、断面積などが互いに異なっていてもよい。介在コイル線状体220Cは、コイル線状体220A,220Bと同様に、コイル部211を形成していればどのように巻回されていてもよい。介在コイル線状体220Cは、コイル線状体220A,220Bと同様に、コイル部211の少なくとも一部を形成していればよい。介在コイル線状体220Cは、コイル線状体220A,220Bと同様に、電力引出線212とのコイル引出線の少なくとも一部を形成していてもよく、コイル引出線を形成していなくてもよい。
【0242】
上記各実施形態において、コイル径方向γにおいて第1線状体と第2線状体との間には、介在コイル線状体220C等の第3線状体を含む複数の線状体が設けられていてもよい。例えば、第1線状体と第2線状体との間には、第3線状体に加えて第4線状体が設けられていてもよい。第4線状体は、コイル径方向γにおいて第3線状体の内周側に設けられていてもよく、第3線状体の外周側に設けられていてもよい。
【0243】
上記各実施形態において、コイル部211が第1線状体、第2線状体及び第3線状体を有する構成では、第3線状体がどこに設けられていてもよい。例えば、第3線状体は、モータ径方向RDにおいて第1線状体の外周側に設けられていてもよく、第2線状体の内周側に設けられていてもよい。
【0244】
上記各実施形態において、モータ61は、ダブルロータ式のモータでなくてもよい。例えば、モータ61は、シングルロータ式のモータでもよい。
【0245】
上記各実施形態において、モータ装置60が搭載される飛行体は、電動式であれば、垂直離着陸機でなくてもよい。例えば、飛行体は、電動航空機として、滑走を伴う離着陸が可能な飛行体でもよい。さらに、飛行体は、回転翼機又は固定翼機でもよい。飛行体は、人が乗らない無人飛行体でもよい。
【0246】
上記各実施形態において、モータ装置60が搭載される移動体は、回転体の回転により移動可能であれば、飛行体でなくてもよい。例えば、移動体は、車両、船舶、建設機械、農業機械であってもよい。例えば、移動体が車両や建設機械などである場合、回転体は移動用の車輪などであり、出力軸部は車軸などである。移動体が船舶である場合、回転体は推進用のスクリュープロペラなどであり、出力軸部はプロペラ軸などである。また、モータ装置60は、定置式の各種設備に設けられていてもよい。
【0247】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0248】
(技術的思想1)
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル線(221A,221B)により形成されたコイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転し、前記回転軸線に沿って前記ステータに並べられたロータ(300a,300b)と、
を備え、
前記コイル部は、
前記コイル線である第1コイル線(221A)を複数有し、複数の前記第1コイル線が撚られて線状に形成され、巻回された第1線状体(220A)と、
前記コイル線である第2コイル線(221B)を複数有し、複数の前記第2コイル線が撚られて線状に形成され、前記コイル部の径方向(γ)において前記第1線状体の内周側に並べられ、前記第1線状体に並行して巻回された第2線状体(220B)と、
を有している回転電機。
【0249】
(技術的思想2)
前記コイル部の径方向(γ)での前記第1線状体の幅寸法(WA)は、前記径方向での前記第2線状体の幅寸法(WB)よりも大きい、技術的思想1に記載の回転電機。
【0250】
(技術的思想3)
複数の前記第1コイル線が有する導体(222)の断面積(ScA)を合計した第1断面積(StA)は、複数の前記第2コイル線が有する導体(222)の断面積(ScB)を合計した第2断面積(StB)よりも大きい、技術的思想1又は2に記載の回転電機。
【0251】
(技術的思想4)
前記第1コイル線の数は、前記第2コイル線の数よりも多い、技術的思想1~3のいずれか1つに記載の回転電機。
【0252】
(技術的思想5)
前記第1コイル線が有する導体(222)の断面積(ScA)が、前記第2コイル線が有する導体(222)の断面積(ScB)よりも大きい、技術的思想1~4のいずれか1つに記載の回転電機。
【0253】
(技術的思想6)
前記コイル部は、
前記第1線状体と前記第2線状体との間に設けられ、前記第1線状体と前記第2線状体とを接合している接合部(226)、を有している技術的思想1~5のいずれか1つに記載の回転電機。
【0254】
(技術的思想7)
前記ステータは、
前記コイル部である第1コイル部(219a)と、前記第1コイル部と同相の前記コイル部であって前記コイル部に通電可能に接続された第2コイル部(219b)と、を含んで構成されたコイル部ユニット(219)と、
前記第1コイル部が有する前記第1線状体と前記第2コイル部が有する前記第2線状体とを通電可能に接続している第1接続線(218a)と、
前記第2コイル部が有する前記第1線状体と前記第1コイル部が有する前記第1線状体とを通電可能に接続している第2接続線(218b)と、
を有している、技術的思想1~6のいずれか1つに記載の回転電機。
【0255】
(技術的思想8)
前記第1線状体は、複数の前記第1コイル線により形成された外周面(220Aos)を有し、
前記第2線状体は、複数の前記第2コイル線により形成された外周面(220Bos)を有している、技術的思想1~7のいずれか1つに記載の回転電機。
【0256】
(技術的思想9)
前記ロータである第1ロータ(300a)と、
前記ロータであり、前記コイル部を介して前記第1ロータに前記回転軸線に沿って並べられた第2ロータ(300b)と、
を備えている技術的思想1~8のいずれか1つに記載の回転電機。
【0257】
(技術的思想10)
飛行体(10)に設けられ、前記飛行体を飛行させるために駆動する回転電機である、技術的思想1~9のいずれか1つに記載の回転電機。
【0258】
(技術的思想11)
前記第1線状体及び前記第2線状体では、前記コイル部の径方向(γ)に並んだ前記コイル線の数が、前記コイル部の軸方向(α)に並んだ前記コイル線の数よりも多い、技術的思想1~10のいずれか1つに記載の回転電機。
【0259】
(技術的思想12)
前記第1線状体及び前記第2線状体は、前記コイル部の径方向(γ)での前記第1線状体及び前記第2線状体の幅寸法(WA,WB)が前記コイル部の軸方向(α)での前記第1線状体及び前記第2線状体の厚さ寸法(DA,DB)よりも大きくなるように扁平している、技術的思想1~11のいずれか1つに記載の回転電機。
【0260】
(技術的思想13)
前記ステータは、
前記第1線状体及び前記第2線状体の少なくとも一方により形成され、前記コイル部から引き出されたコイル引出線(212,213)、を有している技術的思想1~12のいずれか1つに記載の回転電機。
【0261】
(技術的思想14)
前記コイル線は、
通電可能な導体である素線(222)と、
電気絶縁性を有し、前記素線を被覆する被覆部(223)と、
を有しており、
前記第1線状体及び前記第2線状体では、前記コイル部の周方向(β)に直交する方向に隣り合う2つの前記コイル線がそれぞれの前記被覆部で互いに密着するように、複数の前記コイル線が撚られている、技術的思想1~13のいずれか1つに記載の回転電機。
【0262】
(技術的思想15)
前記コイル部は、
前記コイル部の周方向(β)に直交する方向に隣り合う2つの前記コイル線の間に設けられ、これらコイル線を接合している接合部(225)、を有している技術的思想1~14のいずれか1つに記載の回転電機。
【0263】
(技術的思想16)
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル線(221A,221B)により形成されたコイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転し、前記回転軸線に沿って前記ステータに並べられたロータ(300a,300b)と、
を備え、
前記コイル部は、
前記コイル線である第1コイル線(221A)を複数有し、複数の前記第1コイル線が撚られて線状に形成され、巻回された第1線状体(220A)と、
前記コイル線である第2コイル線(221B)を複数有し、複数の前記第2コイル線が撚られて線状に形成され、前記コイル部の径方向(γ)において前記第1線状体の内周側に並べられ、前記第1線状体に並行して巻回された第2線状体(220B)と、
前記コイル線である第3コイル線(221C)を複数有し、複数の前記第3コイル線が撚られて線状に形成され、前記径方向において前記第1線状体と前記第2線状体との間に設けられ、前記第1線状体及び前記第2線状体に並行して巻回された第3線状体(220C)と、
を有している回転電機。
【0264】
(技術的思想17)
前記第3コイル線が有する導体(222)の断面積(ScC)は、前記第1コイル線が有する導体(222)の断面積(ScA)よりも小さく、前記第2コイル線が有する導体(222)の断面積(ScB)よりも大きい、技術的思想16に記載の回転電機。
【0265】
(技術的思想18)
前記第3線状体の撚りは、前記第1線状体の撚りよりも強く、前記第2線状体の撚りよりも弱い、技術的思想16又は17に記載の回転電機。
【0266】
(技術的思想19)
前記コイル部として、各線状体が前記コイル部の第1端面(211c)及び第2端面(211d)のうち一方から他方に向けて前記コイル部の軸方向(α)に積層される向きを基準にして右巻きに巻回された右巻きコイル部(211R)と、
前記コイル部として、各線状体が前記向きを基準にして左巻きに巻回された左巻きコイル部(211L)と、
を備え、
前記右巻きコイル部において複数の前記コイル線が撚られた向きと、前記左巻きコイル部において複数の前記コイル線が撚られた向きとが逆向きである、技術的思想1~18のいずれか1つに記載の回転電機。
【0267】
(技術的思想20)
前記第2線状体の撚りは、前記第1線状体の撚りよりも強い、技術的思想1~19のいずれか1つに記載の回転電機。
【符号の説明】
【0268】
10…飛行体としてのeVTOL、60…回転電機としてのモータ装置、200…ステータ、211…コイル部、211c…第1端面、211d…第2端面、211L…左巻きコイル部、211R…右巻きコイル部、212…コイル引出線としての電力引出線、213…コイル引出線としての中性引出線、218a…第1コイル接続線、218b…第2コイル接続線、219…コイル部ユニット、219a…第1コイル部、219b…第2コイル部、220A…第1線状体としての外周コイル線状体、220B…第2線状体としての内周コイル線状体、220C…第3線状体としての介在コイル線状体、220Aos…外周面としての第1線状面、220Bos…外周面としての第2線状面、221A…第1コイル線としての外周コイル線、221B…第2コイル線としての内周コイル線、222…導体及び素線としてのコイル素線、223…被覆部としての素線被覆、225…接合部としての線状融着部、226…接合部としてのコイル融着部、300a…ロータとしての第1ロータ、300b…ロータとしての第2ロータ、ScA…断面積としての外周断面積、ScB…断面積としての内周断面積、ScC…断面積としての介在断面積、StA…断面積としての総外周断面積、StB…断面積としての総内周断面積、DA,DB…厚さ寸法、WA,WB…幅寸法、Cm…回転軸線としてのモータ軸線、α…軸方向としてのコイル軸方向、β…周方向としてのコイル周方向、γ…径方向としてのコイル径方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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