(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117741
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】リニアガイド装置
(51)【国際特許分類】
F16C 29/04 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F16C29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024019311
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】63/485,606
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516122151
【氏名又は名称】シュネーベルガー・ホールディング・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・グロリムント
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA12
3J104AA23
3J104AA34
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104AA77
3J104AA79
3J104BA41
3J104BA80
3J104DA03
3J104DA11
3J104EA01
3J104EA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケージワンダリングを防止すること及び/又はリニアガイド装置の構成及び組立を単純化することができる選択的なもしくは改善されたリニアガイド装置を提供する。
【解決手段】リニアガイド装置は、縦方向(L)に沿って延在する第1の送り装置(8)を備えるレール(2)と、縦方向(L)に沿ってレール(2)に対して移動可能に設けられかつ縦方向(L)に沿って延在する第2の送り装置を備えるキャリッジと、縦方向(L)に沿ってレール(2)及びキャリッジに対して移動可能に設けられたケージ(4)と、縦方向(L)に沿ってレール(2)対して相対的にキャリッジを送る時に、レール(2)及び/又はキャリッジに対するケージ(4)の移動を生じさせるため、第1及び第2の送り装置に同時に係合するように形成された連結要素(6)と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向(L)に沿って延在する第1の送り装置(8)を備えるレール(2)と、
縦方向(L)に沿ってレール(2)に対して移動可能に設けられかつ縦方向(L)に沿って延在する第2の送り装置(9)を備えるキャリッジ(3)と、
縦方向(L)に沿ってレール(2)及びキャリッジ(3)に対して移動可能に設けられたケージ(4)と、
縦方向(L)に沿ってレール(2)対して相対的にキャリッジ(3)を送る時に、レール(2)及び/又はキャリッジ(3)に対するケージ(4)の移動を生じさせるため、第1及び第2の送り装置に同時に係合するように形成された連結要素(6)と、
を有するリニアガイド装置において、
連結要素(6)をリニアガイド装置(1)内に保持するため、連結要素(6)が、レール及び/又はキャリッジに形成されたストッパ面(13a,14,35a,36)と協働する少なくとも1つの突起(43,44)を備えること、を特徴とするリニアガイド装置。
【請求項2】
連結要素が、歯車(6)として形成され、この歯車が、回転軸(A)を中心として回転可能にリニアガイド装置(1)内に設けられ、回転軸(A)が、縦方向(L)に対して横、好ましくは垂直に延在し、少なくとも1つの突起(43,44)が、回転軸(A)の方向に歯車(6)から突出すること、を特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置。
【請求項3】
ケージ(4)が、凹部(7,51,52)を備え、この凹部を経て、連結要素(6)が延在すること、及び、レール(2)及び/又はキャリッジ(3)に対するケージ(4)の移動を生じさせるため、連結要素の突起(43,44)が、凹部の境界に当接すること、を特徴とする請求項1又は2に記載のリニアガイド装置。
【請求項4】
リニアガイド装置(1)において、連結要素(6)がケージ(4)に固定されていないこと、を特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【請求項5】
連結要素の少なくとも1つの突起(43,44)が、実質的にシリンダ状に形成され、シリンダ状の突起の直径(D2,D3)が、連結要素の直径(D1)よりも小さいこと、を特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【請求項6】
レール(2)及び/又はキャリッジ(3)の方向の連結要素(6)の移動を防止するため、ストッパ面が、キャリッジ(3)及び/又はレール(2)のケージ(4)に対向する境界(11,14,34,36)、特にキャリッジ(3)の下面(34,36)及び/又はレール(2)の上面(11,14)であること、を特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【請求項7】
キャリッジ(3)及び/又はレール(2)に対して平行な連結要素(6)の移動を制限するため、レール(2)及び/又はキャリッジ(3)が、溝(13,35)、特に縦方向(L)に延在する及び/又は第1もしくは第2の送り装置(8,9)の横に設けられた溝を備え、ストッパ面が、溝の壁(13a,35a)によって構成されていること、を特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【請求項8】
連結要素(6)が、少なくとも、レール及び/又はキャリッジの溝(13,35)に当接する第1の突起(43)と、キャリッジ及び/又はレールのケージ(4)に対向する境界(11,14,34,36)に当接する第2の突起(44)を備えること、及び、好ましくは、第1の突起(43)の寸法、特に直径(D2)が、第2の突起(44)の寸法、特に直径(D3)よりも大きいこと、を特徴とする請求項6及び7に記載のリニアガイド装置。
【請求項9】
ケージ(4)が、レール(2)とキャリッジ(3)の間に配置されていること、を特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【請求項10】
ケージ(4)が、複数の転動体(5)を備え、これら転動体が、それぞれ、キャリッジ(3)及びレール(2)に転動可能に当接すること、を特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【請求項11】
ケージ(4)が、1つの基体(21)、好ましくは実質的に平らに形成された1つの基体と、この基体(21)から突出する、好ましくは垂直に突出する2つの脚(22a,22b)を備え、これら脚が、両脚の間に構成されるスペースにレール(2)を収容するように形成されていること、を特徴とする請求項1~10のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【請求項12】
キャリッジ(3)が、縦方向(L)に対して垂直な平面内で実質的にU字状に形成され、U字状のキャリッジの脚(32a,32b)が、両脚の間に構成されるスペース内にケージ(4)を収容するように形成されていること、を特徴とする請求項1~11のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【請求項13】
更に、縦方向(L)のレール(2)及び/又はキャリッジ(3)に対するケージ(4)の移動を制限するエンドストッパを有し、このエンドストッパが、好ましくは、ケージ(4)内の細長く形成された開口(25)と、この開口を経て延在する、レール(2)又はキャリッジ(3)に固定されたネジ(10)として形成されていること、を特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【請求項14】
第1及び/又は第2の送り構造が、ラック(8,9)として形成されていること、を特徴とする請求項1~13のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【請求項15】
更に、縦方向(L)に沿ってレール(2)に対してキャリッジ(3)を移動可能に駆動するように形成された駆動装置を有すること、を特徴とする請求項1~14のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアガイド装置の使用範囲は、非常に多様であり、例えば、リニアガイド装置は、プロファイルレール、測定システム、リニアテーブル、ローラテーブル、位置決めシステム等で使用される。
【0003】
リニアガイドとも呼ばれるリニアガイド装置は、一般に、例えば不動に取り付けられ得るレールと、ケージに回転可能に支承された転動体によってリニアガイド装置の縦方向に直線的に往復移動可能なスライドもしくはキャリッジ又はテーブルを含む。ケージに設けられた転動体は、レールとキャリッジの両方に転動可能に当接するので、ケージは、レールに対するキャリッジの移動時に所定の量もしくはストロークだけレールとキャリッジの両方に対して相対的に移動する。
【0004】
ケージストロークは、理想的に、テーブルもしくはキャリッジストロークの半分に一致する。しかしながら、実際には、生じるケージストロークは、これとは異なり、即ち、ケージはシフト(位置ズレ)するが、これはケージワンダリングとも呼ばれる。従って、ストローク移動が行なわれる時に、ケージは、通常は、ストローク毎に小さいステップで連続的に1つの方向に連続的に位置ズレし、リニアガイド装置が垂直に取り付けられる場合、大抵は下方に位置ズレする。ケージワンダリングは、リニアガイド装置のガイド機能を著しく阻害し得る。特に、ケージワンダリングにより、最適な荷重分布は、もはや生じ得ない。数回の小さいストローク後にフルストロークが必要とされる場合、ケージは、リニアガイド装置の終端部分に当接し、もはやスムーズに移動することができないので、ガイドは、多くの力を消費してしか更に移動され得ない。これにより、例えば、軌道又は転動体の滑り面の摩耗、転動体が脱落するまでのケージの変形、終端部分のゆがみ又は折損、並びに、駆動要素の損傷のような損害が生じ得る。
【0005】
加えて、ケージワンダリングは、例えば、不正確なレール、軌道及び転動体ジオメトリ、リニアガイド装置の垂直な取付け、不均一なプリロード(組立誤差)、生じる加速、不利な作業サイクル、温度差、接続構造並びに不均一な荷重分布のような別の要因によっても促進される。
【0006】
ケージワンダリングは、ケージを常にストロークの半分だけシフトさせる、ケージ強制ガイドとも呼ばれるケージ強制制御を設けることによって防止することができる。
【0007】
独国特許出願公開第102015205922号明細書には、ストローク移動を実施するためにローラガイド装置によって駆動ハウジング移動可能に支承された被動キャリッジを備えるリニア駆動装置が記載されている。ローラガイド装置のケージ体には、連結ローラが回転可能に支承され、この連結ローラは、同時に、駆動ハウジング及び被動キャリッジの転動面に当接する。連結ローラの側面又は転動面の一方は、弾性的に可撓性であるので、連結ローラは、プリロードによって、同時に公差を補正しつつ両転動面に押し付けられる。
【0008】
米国特許第5076715号明細書には、U字状のテーブル及びU字状のレールと、テーブルとレールの間の相対的な直線移動のための、ボールとして形成された転動体を備えた保持装置とを有するリニアガイドユニットが記載されている。スリップを防止するため、保持装置には、テーブルとレールのラックに係合する歯車が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102015205922号明細書
【特許文献2】米国特許第5076715号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ケージワンダリングを防止すること及び/又はリニアガイド装置の構成及び組立を単純化することができる選択的なもしくは改善されたリニアガイド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1によるリニアガイド装置によって解決される。本発明の発展形は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明によるリニアガイド装置は、縦方向に沿って延在する第1の送り装置を備えるレールと、縦方向に沿ってレールに対して移動可能に設けられかつ縦方向に沿って延在する第2の送り装置を備えるキャリッジと、縦方向に沿ってレール及びキャリッジに対して移動可能に設けられたケージと、縦方向に沿ってレール対して相対的にキャリッジを送る時に、レール及び/又はキャリッジに対するケージの移動を生じさせるため、第1及び第2の送り装置に同時に係合するように形成された連結要素と、を有する。連結要素をリニアガイド装置内に保持するため、連結要素は、レール及び/又はキャリッジに形成されたストッパ面と協働する少なくとも1つの突起を備える。好ましくは、リニアガイド装置において、連結要素がケージに固定されていないので、連結要素は、可動に支承されている。
【0013】
好ましくは、連結要素の少なくとも1つの突起は、特に、キャリッジが、ストローク移動とも呼ばれる、レールに対して相対的な縦方向の移動を実行する時に、レール及び/又はキャリッジのストッパ面から離間して位置する。好ましくは、連結要素の少なくとも1つの突起は、連結要素の望ましくない変位を防止するように形成された肩部を構成する。レールに対するキャリッジの移動時、少なくとも1つの突起は、例えば、ストッパ面に接触し、従って、連結要素を横に摺動するように保持することができる。少なくとも1つの突起及びストッパ面による、例えば、連結要素は、嵌合式に又は離間してリニアガイド装置内に保持することができる。
【0014】
好ましくは、連結要素は、ストッパ面と少なくとも1つの突起の協働だけによって、リニアガイド装置内に位置不動に支承又は保持されている。好ましくは、連結要素は、ケージへの結合なしに設けられている、及び/又は、リニアガイド装置は、連結要素をケージに保持又は固定するホルダを有しない。換言すれば、好ましくは、ストッパ面との少なくとも1つの突起の協働によって、リニアガイド装置の縦方向に対して横の、好ましくは垂直な少なくとも1つの方向の連結要素の移動が防止される。同時に、レール及び/又はキャリッジに対して相対的な縦方向の連結要素の移動が可能になる。従って、連結要素は、リニアガイド装置内に可動に支承されている。好ましくは、連結要素は、レールに対して相対的なキャリッジの送り(ストローク移動)時に、ケージストロークとも呼ばれるケージの移動を生じさせるドライバとして機能する。これにより、ケージ強制制御又はケージ強制ガイドを提供することができる。
【0015】
特に、リニアガイド装置は、小型リニアガイド装置であり得る。ホルダなしの、即ち、特に、連結要素をその軸又は突起によってケージに保持することなしの、連結要素の取付けにより、例えば、特に小型リニアガイド装置の構成を単純化することができる。
【0016】
好ましくは、連結要素が、歯車として形成され、この歯車が、回転軸を中心として回転可能にリニアガイド装置内に設けられ、回転軸が、縦方向に対して横、好ましくは垂直に延在し、少なくとも1つの突起が、回転軸の方向に歯車から突出する。選択的又は付加的に、好ましくは、第1及び/又は第2の送り構造が、ラックとして形成されている。歯車としての連結要素の形成及び/又はラックとしての送り構造の形成により、例えば、容易に実現し得る及び/又は安価なケージ強制制御又はケージ強制ガイドを提供することができる。
【0017】
好ましくは、ケージが、凹部を備え、この凹部を経て、連結要素が延在し、レール及び/又はキャリッジに対するケージの移動を生じさせるため、連結要素の突起が、凹部の境界に当接する。これにより、例えば、ケージの移動(ケージストローク)をキャリッジ及び/又はレールの移動を連結することが、容易に可能である。
【0018】
好ましくは、連結要素の少なくとも1つの突起が、実質的にシリンダ状に形成され、シリンダ状の突起の直径が、連結要素の直径よりも小さい。更に好ましくは、シリンダ状の突起のシリンダ軸は、連結要素の回転軸に対して平行、特に同一である。シリンダ状の突起は、例えば、ケージとキャリッジ及び/又はレールとの間の相対移動時のストッパ面に沿った突起の滑動又は摺動を可能にすること、及び/又は、摩擦に起因下損失を軽減すること、ができる。
【0019】
好ましくは、レール及び/又はキャリッジの方向の連結要素の移動を防止するため、ストッパ面が、キャリッジ及び/又はレールのケージに対向する境界、特にキャリッジの下面及び/又はレールの上面である。好ましくは、シリンダ状の突起の半径方向の周面が、ストッパ面に当接する。これにより、例えば、連結要素の高さ方向の移動を防止すること、又は、連結要素を垂直方向に位置不動に保持すること、ができる。
【0020】
選択的又は付加的に、キャリッジ及び/又はレールに対して平行な連結要素の移動を防止するため、好ましくは、レール及び/又はキャリッジが、溝、特に縦方向に延在する及び/又は第1もしくは第2の送り装置の横に設けられた溝を備え、ストッパ面が、溝の壁によって構成されている。溝は、特に、キャリッジの下面及び/又はレールの上面に形成された凹部とすることができ、好ましくは、溝の1つの側面が、ストッパ面として使用される。これにより、例えば、連結要素の水平移動を防止すること、又は、連結要素を水平方向に位置不動に保持すること、ができる。好ましくは、シリンダ状の突起の軸方向の境界は、ストッパ面上に位置する。
【0021】
更に好ましくは、連結要素が、少なくとも、レール及び/又はキャリッジの溝に当接する第1の突起と、キャリッジ及び/又はレールのケージに対向する境界に当接する第2の突起を備え、好ましくは、第1の突起の寸法、特に直径が、第2の突起の寸法、特に直径よりも大きい。第1及び/又は第2の突起は、例えば、水平及び/又は垂直方向の、即ち一般に縦方向に対して垂直な連結要素の望ましくない変位を防止し得る肩部を構成することができる。レールに対するキャリッジの移動時、少なくとも1つの突起(肩部)は、例えば、溝、もしくはケージに対向する境界に接触し、従って、連結要素を横に摺動するように保持することができる。
【0022】
好ましくは、ケージが、レールとキャリッジの間に配置されている。選択的又は付加的に、ケージが、好ましくは、複数の転動体を備え、これら転動体が、それぞれ、キャリッジ及びレールに転動可能に当接する。これにより、例えば、レールに対するキャリッジの相対移動用の転動体ガイドを提供することが容易に可能である。好ましくは、転動要素とも呼ばれる転動体は、回転可能にケージ内に支承され、各転動体は、キャリッジのガイドトラック及びレールのガイドトラックに同時に転動可能に当接する。従って、例えば、縦方向のレールに対して相対的なキャリッジのストローク移動時、ケージは、レールとスライドの両方に対して相対的に、特にストロークの半分だけ移動することができる。好ましくは、縦方向に垂直に、キャリッジは転動体に支持され、ケージは、転動体を介してレールに支持される。
【0023】
好ましくは、ケージが、1つの基体、好ましくは実質的に平らに形成された1つの基体と、この基体から突出する、好ましくは垂直に突出する2つの脚を備え、これら脚が、両脚の間に構成されるスペースにレールを収容するように形成されている。選択的又は付加的に、キャリッジが、縦方向に対して垂直な平面内で実質的にU字状に形成され、U字状のキャリッジの脚が、両脚の間に構成されるスペース内にケージを収容するように形成されている。
【0024】
これにより、例えば、実質的にU字状に形成されたケージを提供することができる。好ましくは、凹部-この凹部を経て連結要素が延在する-が、ケージの基体に設けられている、及び/又は、転動体が、ケージの脚に設けられている。
【0025】
好ましくは、キャリッジの脚は、その内側にガイドトラックを備え、このガイドトラックに沿って、転動体が移動し得る。好ましくは、レールは、ガイドトラックを備え、このガイドトラックに沿って、転動体が移動し得る。好ましくは、キャリッジは、基体、特に実質的に平らに形成された基体を備え、この基体に、脚が設けられている。好ましくは、第2の送り装置及び/又はストッパ面は、キャリッジの基体に設けられている。
【0026】
リニアガイド装置は、逆に構成することもでき、即ち、ケージの脚は、その間に構成されるスペース内にキャリッジを収容するように形成することができ、レールは、U字状に形成され、その脚の間に構成されるスペース内にケージを収容する。
【0027】
好ましくは、リニアガイド装置が、更に、縦方向のレール及び/又はキャリッジに対するケージの移動を制限するエンドストッパを有し、このエンドストッパが、好ましくは、ケージ内の細長く形成された開口と、この開口を経て延在する、レール又はキャリッジに固定されたネジ、ピン又は他の突出形状として形成されている。これにより、例えば、縦方向のケージの移動を容易に制限することができる。
【0028】
好ましくは、リニアガイド装置が、更に、縦方向に沿ってレールに対してキャリッジを移動可能に駆動するように形成された駆動装置を有する。
【0029】
本発明の別の利点は、添付図による実施例の説明によって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるリニアガイド装置の概略斜視図を示す。
【
図2】キャリッジを取り外した時の
図1に示したリニアガイド装置の概略斜視図を示す。
【
図3】リニアガイド装置の
図2にBで指示した領域の概略斜視拡大図を示す。
【
図4】
図1~3のリニアガイド装置に設けられた連結要素の概略斜視図を示す。
【
図5】
図1~4に示したリニアガイド装置の正面から見た概略図を示す。
【
図6】リニアガイド装置の
図5にCで指示した領域の概略拡大図を示す。
【
図7】
図1の線F-Fに沿った断面における
図1~6に示したリニアガイド装置の概略図を示す。
【
図8】リニアガイド装置の
図7にEで指示した領域の概略拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下で、
図1~8を参照して本発明の1つの実施形態によるリニアガイド装置を説明する。
【0032】
リニアガイド装置1は、レール2と、スライド又はキャリッジ3と、レール2とキャリッジ3の間に配置されたケージ4とを備える。レール2、キャリッジ3及びケージ4は、共通の縦軸Lを備える。ケージ4には、複数の転動体5が設けられ、これら転動体は、キャリッジ3及びレール2に転動可能に当接する。従って、ケージ4は、レール2に縦方向Lに移動可能に設けられ、キャリッジ3は、ケージ4に縦方向Lに移動可能に設けられている。
図1の図で、ケージ4は、キャリッジ3によって覆われている。
【0033】
更に、リニアガイド装置1は、歯車6の形態の連結要素を備え、この連結要素は、ラック8,9として形成された、レール2及びキャリッジ3のそれぞれの送り装置に係合するために、ケージ4に設けられた凹部7を経て延在する。
【0034】
レール2は、この実施形態では上面11として形成された、ケージ4もしくはキャリッジ3に対向する境界を備える。更に、レール2は、2つの側面12を備え、これら側面のそれぞれ一方が、後述するケージ4の脚22a,22bの一方に対向する。
【0035】
その上面11に、レール2は、歯車6が係合するラック8を備える。ラック8は、レール2の上面11において縦方向Lに延在する。ラック8は、レール2の縦方向Lに延在する中心軸に対して非中心に設けられている。換言すれば、ラック8は、中心軸に対して、キャリッジの一方の側に向かって位置ズレして設けられている。更に、レール2は、その上面11に、縦方向Lに延在する2つの溝13を備える(
図6,8参照)。この実施形態で、溝13は、それぞれ、レールの上面11においてラック8の横に設けられている。溝13は、ケージ4の方向に、即ちこの実施形態では上に向かって開放して形成されている。溝は、後述する歯車6の第1の突起43を収容するように形成されている。溝の側壁13aは、歯車の第1の突起43用のストッパ面として使用される(
図6,8参照)。
【0036】
オプションで、上面11で溝13の横に、それぞれ1つの凹部14が設けられ(
図6,8参照)、この凹部は、以下で詳細に説明するように、後述する歯車6の第2の突起44用のストッパ面として使用される。選択的に、上面11は、凹部14なしで形成することもでき、歯車6の第2の突起44は、上面11に直接的に当接することができ、こうして、この上面がストッパ面を構成する。
【0037】
レール2の側面12に、縦方向Lに延在するガイドトラック15が設けられており、このガイドトラックに、ケージ4の転動体5が転動可能に当接する。
図1及び2で、ガイドトラック15は、それぞれ、側面12に設けられた突起として形成され、この突起上に、転動体が裁置されている。ケージ4は、その転動体5でもってレールのガイドトラック15に支持される。
【0038】
レール2は、好ましくは不動に、例えば工作機械、測定システム等に取り付けられている。
【0039】
ケージ4は、縦方向Lに対して垂直なリニアガイド装置1の横断面で、実質的にU字状に形成されている。詳細には、ケージ4は、この実施形態では実質的に平らに形成された1つの基体もしくは1つのベースプレート21と、ベースプレート21から突出する、好ましくは垂直に突出する2つの脚22a,22bを備える。脚22a,22bは、これら脚が、その間に、レール2を少なくとも部分的に収容するスペースを構成するように形成されている。リニアガイド装置1のこの実施形態の場合、ケージ4は、逆U字の形態(即ち、ベースプレート21が上に向き、U字形の開口が下に向く)でレール2上に取り付けられている。
【0040】
ケージ4のベースプレート21は、前述の凹部7を備え、この凹部を経て、歯車6が延在する。
【0041】
更に、ケージ4のベースプレート21は、リニアガイド装置1の縦方向Lに細長く形成された開口25を備える(
図2参照)。この開口を経て、レール2又はキャリッジ3に固定されたネジ10(
図1,7参照)が延在する。縦方向Lの細長い開口25の終端は、縦方向Lのレール2及び/又はキャリッジ3に対するケージ4の移動を制限するエンドストッパを構成する。
【0042】
ケージ4の転動体5は、それぞれ、ケージの脚22a,22bに設けられている。このため、転動体5は、回転可能にケージ4の脚22a,22bに支承され、縦方向Lに沿って互いに離間して、好ましくは互いに等間隔に離間して配置されている。転動体5は、例えば、ボール及び/又はローラとして形成することができる。転動体は、U字状のケージ4の内側と外側の両方に向かって脚22a,22bから突出するので、転動体は、レール2及びキャリッジ3のガイドトラック15,33に転動可能に当接する。従って、ケージ4は、レール2に対してもキャリッジ3に対しても縦方向Lに移動可能に配置されている。
【0043】
キャリッジ3は、ケージ4と同様に、縦方向Lに対して垂直なリニアガイド装置1の横断面で、実質的にU字状に形成されている。詳細には、キャリッジ3は、この実施形態では本質的に平らに形成された1つの基体もしくは1つのベースプレート31と、ベースプレート31から突出する、好ましくは垂直に突出する2つの脚32a,32bを備える。脚32a,32bは、これら脚が、その間に、ケージ4を少なくとも部分的に収容するスペースを構成するように形成されている。図に図示したリニアガイド装置1の実施形態の場合、キャリッジ3は、逆U字の形態(即ち、ベースプレート31が上に向き、U字形の開口が下に向く)でケージ4上に取り付けられている。
【0044】
ベースプレート31の下面34、即ちベースプレート31のケージ4もしくはレール2に対向する境界に、キャリッジ3は、歯車6が係合するラック9を備える(
図6,8参照)。ラック9は、ベースプレート31の下面34において縦方向Lに延在する。ラック9は、キャリッジ3の縦方向Lに延在する中心軸に対して非中心に設けられている。換言すれば、ラック9は、中心軸に対して、キャリッジの一方の側に向かって位置ズレして設けられている。更に、ベースプレート31の下面34は、縦方向Lに延在する2つの溝35を備える(
図6,
図8参照)。この実施形態で、溝35は、それぞれ、ベースプレート31の下面34においてラック9の横に設けられている。溝35は、ケージ4の方向に、即ちこの実施形態では下に向かって開放して形成されている。溝は、後述する歯車6の第1の突起43を収容するように形成されている。溝の側壁35aは、歯車の第1の突起43用のストッパ面として使用される(
図6,8参照)。
【0045】
オプションで、ベースプレート31の下面34で溝35の横に、それぞれ1つの凹部36が設けられ(
図6,8参照)、この凹部は、以下で詳細に説明するように、後述する歯車6の第2の突起44用のストッパ面として使用される。選択的に、ベースプレート31の下面34は、凹部36なしで形成することもでき、歯車6の第2の突起44は、ベースプレート31の下面34に直接的に当接することができ、こうして、この下面がストッパ面を構成する。
【0046】
脚32a,32bの内側、即ちケージ4に対向する側に、キャリッジ3は、縦方向Lに延在するガイドトラック33を備え、これらガイドトラックに、ケージ4の転動体5が、転動可能に当接する。キャリッジは、ガイドトラック33でもってケージ4の転動体5に支持される。
【0047】
更に、リニアガイド装置1は、縦方向Lに沿ってレール2に対してキャリッジ3を移動可能に駆動するように形成された、図に詳細には示してない駆動装置を備える。
【0048】
以下で、歯車6を、
図4を参照して詳細に説明する。歯車6は、回転軸Aを中心として回転可能にリニアガイド装置1に設けられ、回転軸Aは、縦方向Lに対して垂直に設けられている(
図2も参照)。歯車6は、ギャップ42によって周方向に互いに離間された複数の歯41を有し、これら歯は、レール2及びキャリッジ3のラック8,9(
図2,5~8参照)に係合するように形成されている。ギャップ42の底は、歯車6の第1の直径D1を規定する。
【0049】
更に、歯車6は、レール2の溝13とキャリッジ3の溝35に同時に当接するように形成された第1の突起43と、レール2の上面11もしくはこの上面に形成された凹部14と、キャリッジ3の下面34もしくはこの下面に形成された凹部36に同時に当接するように形成された第2の突起44を備える。
【0050】
この実施形態では、第1の突起43及び第2の突起44は、それぞれシリンダ状に形成され、歯車の回転軸Aをシリンダ軸としている。詳細には、突起43,44は、シリンダ状の突起の側面を構成する周面43a,44aと、シリンダ状の突起の基面を構成する端面43b,44bを備える。
【0051】
第1の突起43は、回転軸Aに対して垂直に、歯車6の第1の直径D1よりも小さい第2の直径D2を備える。第2の突起44は、回転軸Aに対して垂直に、歯車6の第1の直径D1よりも小さく、この実施形態では第1の突起43の第2の直径D2よりも小さい第3の直径D3を備える。第1の突起43は、歯車6に設けられ、回転軸Aの方向に歯車6から突出する。第2の突起44は、第1の突起43に設けられ、回転軸Aの方向に第1の突起43から突出する。
【0052】
回転軸Aの方向の第1の突起43の幅は、歯車がリニアガイド装置1に設けられている時に、第1の突起の端面43bがレール2の溝13の側壁13a及びキャリッジ3の溝35の側壁35aに当接するか、実質的に当接するように選択される。第2の突起44の第3の直径D3は、歯車6がリニアガイド装置1に設けられている時に、その周面44aが、レール2の上面11の凹部14又は上面11自体に及びキャリッジ4の下面34の凹部36又はキャリッジの下面34自体に当接するように選択される。従って、溝13,35の側壁13a,35aは、第1の突起43もしくはその端面43b用のストッパ面として使用され、凹部14,36又はレール2の上面11及びキャリッジ3の下面34は、第2の突起44もしくはその周面44a用のストッパ面として使用される。
【0053】
この実施形態で、歯車は、それぞれ、回転軸Aに沿って歯車6の両側に対をなして配置された2つの第1の突起43と2つの第2の突起44を備える。
図4の図で、後方の突起は、歯車によって部分的に覆われている。
【0054】
以下で、
図3及び4を参照して、ケージ4のベースプレート21内の凹部7-この凹部を経て歯車6が延在する-を詳細に説明する。凹部7は、第1の凹部分51と、第2の凹部分52を備え、これら凹部分は、それぞれ細長く形成されかつ垂直もしくは十字状に交差する。第1の凹部分51は、第1の突起43が設けられた歯車6を収容するために形成され、第2の凹部分52は、歯車6の第2の突起44を収容するために形成されている。
【0055】
詳細には、第1の凹部分51は、リニアガイド装置1の縦方向Lに沿って、縦方向Lに対して垂直な第1の凹部分51の幅N1よりも大きい長さM1にわたって延在する。第1の凹部分51の長さM1は、歯車の歯41の自由端によって規定される歯車6の最大直径よりも大きいので、歯車6は、凹部7内に設けられている時に、その回転軸Aを中心として自由に回転可能である。第1の凹部分51の幅N1は、回転軸Aに沿って歯車6の両側に配置された第1の突起43の端面43bの間の歯車6の幅以上の大きさである。
【0056】
第2の凹部分52は、リニアガイド装置1の縦方向に対して垂直に(即ち歯車6の回転軸Aに沿って)、縦方向Lの第2の凹部分52の幅N2よりも大きい長さM2にわたって延在する。第2の凹部分52の長さM2は、回転軸Aに沿って歯車6の両側に配置された第2の突起44の端面44b(
図4参照)の間の歯車6の全幅よりも大きい。第2の凹部分52の幅N2は、歯車6の第2の突起44の第3の直径D3以上の大きさである。
【0057】
第2の凹部分52は、その内部に設けられた歯車6の第2の突起44が、第2の凹部分52の壁、即ち境界に、リニアガイド装置1の縦方向Lに当接し、縦方向Lの歯車6の移動をケージ4に伝達し得るように、形成されている。換言すれば、歯車6は、縦方向Lの移動時のケージ4のドライバとして作用する。
【0058】
歯車6は、リニア装置1のこの実施形態で、ケージ4には固定されていない。むしろ、歯車6は、突起43,44と、レール2及びキャリッジ3に形成された対応するストッパ面との協働によってのみ、リニアガイド装置1内に可動に保持もしくは固定されている。
【0059】
図6及び8から最もよくわかるように、歯車6の両方の第1の突起43の端面43bは、取り付けられた状態で、レール2及びキャリッジ3に形成された溝13,35の側壁13a,35aに当接するか、離間して位置する。これにより、縦方向Lに対して垂直かつレール2及びキャリッジ3に対して平行な歯車6の移動、この実施形態の場合は歯車6の横の移動が防止される。加えて、両方の第2の突起44の周面44aは、キャリッジ3の下面34及びレールの上面11に形成された凹部14,36に当接する。これにより、縦方向Lに対して垂直なかつレール2の方向又はキャリッジ3の方向の歯車6の移動、この実施の形態の場合は歯車6の高さ方向の移動が防止される。
【0060】
換言すれば、歯車6は、溝13,35の側壁13a,35aと、縦方向Lに対して垂直な移動に対するストッパ面としての凹部14,36(又はキャリッジ3の下面34及びレール2の上面11自体)によって、位置不動かつ可動にリニアガイド装置1内に保持されている。ケージにおける歯車用の付加的なホルダは必要ない。
【0061】
リニアガイド装置の操作中、図には示してない駆動装置によって駆動力がキャリッジ3に加えられ、この駆動力が、縦方向Lにストロークとも呼ばれる設定量だけキャリッジ3をレール2に対して移動させる。歯車6は、ラック8,9の間で、キャリッジ3の移動量の半分(ストロークの半分)だけ縦方向Lに沿ってレール2に対して転動する。歯車6の移動時、その突起43,44は、摺動するようにキャリッジ3及びレール2のストッパ面上で転動する。これにより、縦方向Lに対して垂直な、即ちリニアガイド装置の高さ方向及び幅方向の歯車6の移動を防止することができる。第2の突起の周面44aは、ケージ4の凹部7の第2の凹部分52の壁に接触し、ケージ4が、歯車6と共に縦方向Lにキャリッジ3の移動量の半分(ストロークの半分)だけレール2に対して移動することを生じさせる。従って、ケージ4は、縦方向Lに沿ったその移動中に、レール2に沿ったキャリッジ3の移動と連結されている。換言すれば、歯車は、縦方向Lの移動時のケージ4用のドライバとして作用する。
【0062】
ネジ10と協働する、その縦方向Lの終端が、縦方向Lのレール2及び/又はキャリッジ3に対するケージ4の移動のためのエンドストッパを構成する細長い開口25の提供に対して選択的又は付加的に、エンドストッパは、溝13,35を相応に形成することによって形成することができる。例えば、溝は、縦方向Lの歯車6の移動を制限するために、縦方向Lのエンドストッパとして、歯車6が当接する突起を備えることができる。
【0063】
本発明は、前述の図に図示したリニアガイド装置の実施形態に限定されていない。むしろ、リニアガイド装置の変更が可能である。例えば、個々の要素は、説明した要素と、その大きさ及び/又は形状が異なっていてもよい。例えば、第1の突起43及び/又は第2の突起44の形状は、シリンダ形状と異なっていてもよい。
【0064】
歯車の代わりに、レールに対して相対的なキャリッジの送り時にレール及び/又はキャリッジに対するケージの移動を生じさせるため、レールもしくはキャリッジの第1及び第2の送り装置に同時に係合するように形成された他の連結要素を設けることができる。それに応じて、送り装置は、前記ラックとは異なるように形成することもできる。例えば、連結要素は、送り装置と協働して回転送りを行なうように形成することができ、連結要素の回転軸は、好ましくは、レールの縦方向に対して垂直に設けられている、及び/又は、回転軸は、好ましくは、レール及びキャリッジに対して相対的に固定されている。
【外国語明細書】