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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117742
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】抗菌除菌剤コーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 9/10 20060101AFI20240822BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20240822BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240822BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240822BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240822BHJP
   A61L 2/28 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B05C9/10
B05C9/12
B05D3/00 D
B05D5/00 H
B05D7/24 302A
A61L2/28
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019331
(22)【出願日】2024-02-13
(62)【分割の表示】P 2023187016の分割
【原出願日】2023-10-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2023023152
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520291135
【氏名又は名称】大栄産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼宮 昭人
【テーマコード(参考)】
4C058
4D075
4F042
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058DD15
4C058EE26
4D075BB91X
4D075BB91Z
4D075CA34
4D075CA45
4D075DB12
4D075DC02
4D075DC03
4D075DC12
4D075EA12
4D075EB01
4F042BA22
4F042BA27
4F042EA02
4F042ED08
(57)【要約】
【課題】建物の屋内及び屋外,車両その他において、抗菌除菌及び抗ウイルス除ウイルスのための抗菌除菌剤のコーティングを必要とする対象物に抗菌除菌剤のコーティングを行う前後において、コーティングの施工が適正に行われたことを確認する抗菌除菌剤コーティング確認装置とすること。
【解決手段】複数の工程によって対象物に施工される抗菌除菌剤コーティングにおいて、
抗菌除菌剤のコーティング施工前の初期段階の予備工程で前記対象物の状態を検査確認する有機物検査機21と無機物検査機22が具備された事前確認手段と、前記抗菌除菌剤のコーティング施工完了後の最終段階となる第3工程で前記対象物の抗菌除菌剤のコーティングの状態を検査確認する前記有機物検査機21と前記無機物検査機22とが具備された最終確認手段とが設けられてなること。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程によって対象物に施工される抗菌除菌剤コーティングにおいて、
抗菌除菌剤のコーティング施工前の初期段階の予備工程で前記対象物の状態を検査確認する有機物検査機と無機物検査機が具備された事前確認手段と、
前記抗菌除菌剤のコーティング施工完了後の最終段階となる第3工程で前記対象物の抗菌除菌剤のコーティングの状態を検査確認する前記有機物検査機と前記無機物検査機とが具備された最終確認手段とが設けられてなることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング確認装置。
【請求項2】
請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング確認装置において、前記事前確認手段は、施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記有機物検査機と前記無機物検査機とにより前記対象物に対して細菌,ウイルスの有無が確認されると共に、前記対象物の状態が確認されてなることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング確認装置。
【請求項3】
請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング確認装置において、前記最終確認手段は、コーティングの施工を施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記無機物検査機により前記対象物に対する前記抗菌除菌剤のコーティングの状態及び前記有機物検査機により細菌,ウイルスが消滅されたことを前記第三者が確認されることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング確認装置。
【請求項4】
請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング確認装置において、前記事前確認手段は、施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記有機物検査機と前記無機物検査機とにより前記対象物に対して細菌,ウイルスの有無が確認されると共に、前記対象物の状態が確認され、前記最終確認手段は、コーティングの施工を施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記無機物検査機とにより前記対象物に対する前記抗菌除菌剤のコーティングの状態及び有機物検査機により細菌,ウイルスが消滅されたことを前記第三者が確認されることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋内及び屋外,車両その他において、抗菌除菌及び抗ウイルス除ウイルスのための抗菌除菌剤のコーティングを必要とする対象物に抗菌除菌剤のコーティングを行う前後において、コーティングの施工が適正に行われたことを確認する抗菌除菌剤コーティング確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス(正式名称COVID-19)等の感染力の強力なウイルスが世界的に蔓延流行しており、人類において極めて脅威な事態となっている。そのため、このような新型のウイルス或いは従来からのインフルエンザウイルスについても新種が次々と現れ、これらに対して何らかの予防策が種々講じられている。その中でも、人が出入りする建物,車両において、それらの壁面,内室面及び椅子,テーブル等室内装備品に付着しようとするウイルス或いは細菌を防ぐための手段が求められ、その研究が盛んになされている。
【0003】
この要求に応じるものとして、特許文献1に開示されたものでは、直接、人体に除菌剤を噴射する装置等が存在する。この装置によって、建物内を出入りする人に対して一定の効き目を上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-74211号公報
【特許文献2】国際公開第2017/119015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1(特開2017-74211号)の内容は直接、人体に抗菌除菌剤を吹付けるもので人によっては、不快に感じるものとなり、このような装置を拒む人或いは場所もある。そして、中には、抗菌除菌剤が直接、体に吹付けられることで体調を悪くする人も現れることもありうる。さらに、以上のことを考慮して、抗菌除菌剤の量を低く抑えて人体に吹付けた場合では、除菌の効き目が十分とはいえないこともあり、不安が残ることになる。次に、特許文献2(国際公開第2017/119015号公報)では、空港施設におけるウイルス感染予防剤のコーティング方法、及び、それを用いた光触媒コーティング膜、並びに、コーティング膜の可視化方法に関し、特に、熟練者を要することなく、一般作業者が空港施設内のあらゆる場所に容易かつ正確で効率的にウイルス感染予防剤をコーティングできる方法、及び、それによって成膜された光触媒コーティング膜の構造、並びに、コーティング膜の可視化(見える化)方法が開示されている。特許文献2では、スプレーガンの噴射による施設への予防材コーティングを行うタイプのものである。特許文献2によれば、無機バインダーとして機能するナノレベルのシリカ粒子を含有する下層膜を基体表面にコーティングする第1の工程と、ナノレベルの光触媒剤、及び、無機バインダーとしてシリカ粒子を共に有する上層膜を前記下層膜が被着された基体に重ねてコーティングする第2の工程によって空港施設におけるウイルス感染予防剤のコーティングすることが記載されている。特許文献2では、第1の工程において、下層膜は無機バインダーとして機能するものであり、ナノレベルのシリカ粒子が含有されているが、シリカ粒子は、略球状であることが知られている。そのために、コーティングによって形成される下層膜に含有されているシリカ粒子と、壁等の基体との接触状態は、略点接触であり、個々のシリカ粒子と基体との接触面積が極めて小さいので、コーティングによる下層膜と基体との吸着性は悪く、剥がれ易いことが予想される。そして、このような下層膜に、ウイルス感染予防剤である上層膜をコーティングしたものは、耐久性に劣るものとなる。
【0006】
本発明の目的は、新型コロナウイルス等の感染を防ぐため、建物室内及び室外及び車両の室内等に強力な抗菌除菌剤のコーティングを行うことにより、人には一切抗菌除菌剤を吹付けることなく、人体以外の対象物に抗菌除菌剤を正確且つ効率的に吹付けて感染を防止することを達成し、且つ抗菌除菌剤のコーティングの対象物への付着性を極めて良好にし、耐久性のあるコーティングの施工を実現するための抗菌除菌剤コーティング確認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、複数の工程によって対象物に施工される抗菌除菌剤コーティングにおいて、抗菌除菌剤のコーティング施工前の初期段階の予備工程で前記対象物の状態を検査確認する有機物検査機と無機物検査機が具備された事前確認手段と、前記抗菌除菌剤のコーティング施工完了後の最終段階となる第3工程で前記対象物の抗菌除菌剤のコーティングの状態を検査確認する前記有機物検査機と前記無機物検査機とが具備された最終確認手段とが設けられてなることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング確認装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0008】
請求項2の発明を、請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング確認装置において、前記事前確認手段は、施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記有機物検査機と前記無機物検査機とにより前記対象物に対して細菌,ウイルスの有無が確認されると共に、前記対象物の状態が確認されてなることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング確認装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項3の発明を、請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング確認装置において、前記最終確認手段は、コーティングの施工を施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記無機物検査機により前記対象物に対する前記抗菌除菌剤のコーティングの状態及び前記有機物検査機により細菌,ウイルスが消滅されたことを前記第三者が確認されることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング確認装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項4の発明を、請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング確認装置において、前記事前確認手段は、施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記有機物検査機と前記無機物検査機とにより前記対象物に対して細菌,ウイルスの有無が確認されると共に、前記対象物の状態が確認され、前記最終確認手段は、コーティングの施工を施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記無機物検査機とにより前記対象物に対する前記抗菌除菌剤のコーティングの状態及び有機物検査機により細菌,ウイルスが消滅されたことを前記第三者が確認されることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング確認装置。
としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、第1工程を開始する前段階で行う予備工程は、事前確認手段により検査機によって、コーティングが施工されていない状態を検査確認するものであり、抗菌除菌剤のコーティングが施される以前の状態を作業員以外の依頼者等の第三者に顕示するものであり、コーティングの施工開始前と施工完了後の比較が行われ易くするものである。
【0012】
第2工程の次に行う第3工程は、最終確認手段により有機物検査機及び無機物検査機によって、抗菌除菌剤の有無の検査確認をして、コーティングが十分且つ良好に行われていることを作業員以外の依頼者等の第三者に顕示し、抗菌除菌剤のコーティングが確実に行われ、コーティングの仕上が高い精度で行われていることを依頼者に顕示し、信頼性を得ることができる。請求項2乃至請求項4の発明では、作業員が第三者(依頼者)に対して対象物の状態を知らせるために行うものであり、よって依頼者立ち合いの元で行うものである。そして、依頼者に対して第1工程以降の下地コート剤及び抗菌除菌剤のコーティングを施工するための作業が適正に行われることを認識してもらう役目をなすものであり、これによって依頼者から作業の精度の確認及び施工作業における信頼性を得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は本発明におけるスプレーガンにて下地コート剤及び抗菌除菌剤によるコーティングを施工する図、(B)はスプレーガンを所定間隔を維持して往路移動及び復路移動を行う作業状態を示す平面図、(C)は対象物の表面に下地コート剤によるコーティング及び抗菌除菌剤によるコーティングを施した状態の平端面図、(D)は(C)の(α)部拡大図である。
図2】本発明における予備工程,第1工程,第2工程及び第3工程の作業を示す流れ図である。
図3】(A)は本発明の対象物の表面に下地コート剤によるコーティング及び抗菌除菌剤によるコーティングが施された状態を示す正面図、(B)は(A)のY1-Y1矢視断面図、(C)は(B)の(β)部拡大図、(D)は(C)の(γ)部拡大図である。
図4】(A)は対象物の表面にスプレーガンにて下地コート剤を吹付けている状態図、(B)は(A)のY2-Y2矢視図、(C)は(A)の(δ)部拡大図、(D)は対象物の表面にスプレーガンを吹付けるときの往路移動及び復路移動を示す正面図である。
図5】(A)はスプレーガンにて下地コート剤を吹付ける横方向に往復移動する状態を示す正面図、(B)はスプレーガンにて下地コート剤を吹付ける縦方向に往復移動する状態を示す正面図である。
図6】(A)はスプレーガンにて抗菌除菌剤を吹付ける横方向に往復移動する状態を示す正面図、(B)はスプレーガンにて抗菌除菌剤を吹付ける縦方向に往復移動する状態を示す正面図である。
図7】(A)乃至(E)はスプレーガンの吹付け方向に対応して容器の据付状態を種々変化させた図である。
図8】(A)は有機物検査機の一例を示す斜視図、(B)は有機物検査機にて抗菌除菌剤の施工完了したコーティングの細菌,ウイルスの有無を検査している略示図である。
図9】(A)は無機物検査機の一例を示す斜視図、(B)抗菌除菌剤の施工完了したコーティングの抗菌除菌における剤無機物の有無を検査している略示図である。
図10】(A)は検査機による検査箇所を黒点で示すサンプリング検査の図、(B)は無機物検査機による結果を示す表である。
図11】航空機の室内の(i),(ii),(iii),(iv),(v)における箇所を下地コート剤及び抗菌除菌剤にてコーティングする状態を示す全体図及び各拡大図である。
図12】(A)は光源ライトが装着されたスプレーガンにより対象物に噴射吹付けが行われ且つ光源ライトにて噴射吹付け領域を照射している状態を示す側面図、(B)は光源ライトが装着されたスプレーガンにより対象物に噴射吹付けが行われ且つ光源ライトにて噴射吹付け領域を照射している状態を示す平面図、(C)は噴射量調整ツマミの状態し示す略示図、(D)は(A)のS1-S1矢視図である。
図13】(A)は光源ライトが装着されたスプレーガンにより対象物に噴射吹付けが行われ且つ光源ライトにて噴射吹付け領域を照射している状態を示す側面図、(B)(A)のS2-S2矢視図、(C)はスプレーガンに光源ライトを装着するホルダの正面図である。
図14】(A)は対象物に下地コート剤及び抗菌除菌剤をコーティングした状態のイメージ断面図、(B)は(A)のさらに拡大したイメージ図、(C)は(B)の(β)部拡大図である。
図15】(A)は吹付け量と距離の比較グラフ、(B)は圧力計を示す図、(C)は液垂れ無し状態を示す軽量状態の図、(D)は液垂れありの状態を示す軽量状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本発明は、抗菌除菌剤を、抗菌除菌を必要とする対象物5に吹付けて、該対象物5の表面に抗菌除菌剤によるコーティングをが適正に行われたことを確認するための抗菌除菌剤コーティング確認装置の発明である。前記対象物5とは、ビル,一般家屋等の建築物の室内及び室外の壁,天井,床,階段及び柱等であり、又は椅子,机,ベッド寝具,キッチンセット等の家具である。さらに、対象物5として旅客機等の航空機の機内,自動車,客船又は遊覧船の船舶及び鉄道車両の室内(室外もある)等で、不特定多数の人が頻繁に出入りする場所の壁,天井及び床等である。
【0015】
本発明の抗菌除菌剤コーティング方法は、複数の施工工程から構成され、その工程は、下地コート剤3及び抗菌除菌剤4のそれぞれのコーティングを必要とする対象物5の状態を検査確認する予備工程,下地コート剤3を対象物5に吹き付ける第1工程,抗菌除菌剤4を下地コート剤3上に吹き付ける第2工程、施工完了したコーティングの状態を検査確認する第3工程である。また、本発明において、抗菌除菌剤4のコーティングにおいて必要とする機器は、スプレーガン装置1と検査機2であり、該検査機2は有機物検査機21と無機物検査機22である。
【0016】
前記スプレーガン装置1は、前記対象物5に下地コート剤3と抗菌除菌剤4を吹付けるための機器であり、主にスプレーガン11とコンプレッサ12とホース13等を備えたものである〔図1(A)参照〕。また、検査機2は、コーティングの施工を開始する前段階の状態の検査する予備工程と、コーティングの施工完了後の状態を検査する第3工程において状態を検査し確認する役目をなすものである。ここで、本発明において、抗菌除菌剤4は、原則として抗細菌,除細菌及び抗ウイルス,除ウイルスの役目を有するものであり、細菌及びウイルスに対抗し、これらを消滅することを目的としたものであり、具体的には光触媒を利用する種類のものである。
【0017】
検査機2は、前述したように、対象物5に対して、コーティング施工前における細菌,ウイルス等の有機物による汚染状態の検査確認と、コーティング施工完了後においてコーティングが適正な状態であることを検査確認するものである。ここで、前記検査内容は、二つの状態,状況を検査し確認するものである。また、本発明では、有機物とは主に細菌,ウイルスとする。
【0018】
その第1は、汚染に係る細菌,ウイルス等の有機物の存在の有無を検査し確認するものである。この細菌,ウイルス等の有機物の検査は、具体的には細菌の発見検出ではATP検査である。ATP検査は、本発明においては、主に細菌の存在の有無を検査確認するものである(図8参照)。また、或いはウイルスの発見検出においても、専用の機器や、キットが使用される。その第2は、抗菌除菌剤4に含まれる無機物の主要な成分の存在の有無を検査し確認するものである(図9参照)。また、無機物は抗菌除菌剤4を構成する主成分であり、本発明では具体的にはチタンである。なお、チタンはチタニアと称することもある。
【0019】
したがって、前記第1及び第2の検査を行うために、有機物検査機21及び無機物検査機22の2種類の異なる検査機が備えられている。有機物検査機21は、細菌,ウイルス等の有機物を発見・検出する機器である。この有機物検査機21は、種々存在するが、具体的には一般に市販されているもので、主に、ATP拭き取り検査を行うことができる検査機である。これは、検査機本体21aに拭き取り棒21bが具備されており、該拭き取り棒21bを被検査面にこすり、次いで前記拭き取り棒21bを検査機本体21aの所定位置に収納することで、検査機本体21aのディスプレイに、細菌,ウイルス等の有機物の有無が表示されるものである(図8参照)。また、前述したように、ウイルスの発見検出では、この作業に対応する専用の機器や、キットが使用される。
【0020】
また、無機物検査機22は、種々存在するが、一般的に市販されているものであり、エックス線装置はガンタイプでコンパクトな本体部22aに収められ、スイッチが備えられたグリップ22bが設けられ、片手で操作できるものである(図9参照)。そして、エックス線の照射を利用して被検査物の成分の検出し、その存在の有無を検査確認するものである。このようなタイプの無機物検査機22をハンドタイプ蛍光X線分析計と称することもある。また、前記ハンドタイプ蛍光X線分析計とした無機物検査機22の代わりに軽元素金属等検出機が使用されることもある。該軽元素金属等検出機によって、マグネシウムNo12~ウランNo92までの金属を検出できる。有機物検査機21及び無機物検査機22は、予備工程及び第3工程における有機物及び無機物の検査で使用されるものである。
【0021】
また、本発明において、使用される抗菌除菌剤4に含有される無機物の主成分としてチタンが含まれる場合に無機物検査機22が使用されるものである。なお、無機物が含まれない抗菌除菌剤4が使用される場合では、予備工程及び第3工程で、無機物検査機22が使用されないこともある。前述した予備工程は、コーティングの施工を開始する前段階の状態の検査するものであり、有機物検査機21及び無機物検査機22が使用され、対象物5の状態を確認するものであり、有機物検査機21及び無機物検査機22が使用され、これを事前確認手段と称する。つまり、予備工程は、事前確認手段によって行われる。また、第3工程はコーティングの施工完了後の状態を検査確認するものであり、前記有機物検査機21及び前記無機物検査機22が使用され、これを最終確認手段と称する。つまり、第3工程は、最終確認手段によって行われる。そして、事前確認手段と最終確認手段の両手段を抗菌除菌剤コーティング確認装置と称する。
【0022】
下地コート剤3は、抗菌除菌剤4を吹付けの下地として使用されるものであり、共に液剤であり、粘性の低い、サラサラ状のものである。抗菌除菌剤4は、具体的には透明液体状であり、光触媒による作用を利用したものである。さらに具体的には、可視光応答型光触媒であり、光が当たるごとに繰り返して除菌が行われるものである。抗菌除菌剤4が光触媒である場合は、主要成分としてチタンが含有されるものである。
【0023】
前記下地コート剤3は、無機物であり、抗菌除菌剤4とは構造状態が違う同一のチタンである。そして、前記抗菌除菌剤4によって、コーティングが施工される対象物5の基材が有機物である場合、その基材を抗菌除菌剤4が分解するおそれがあるため、抗菌除菌剤4の下地として前記下地コート剤3が対象物5に吹付けられ、下地コート剤3によるコーティングが行われる。
【0024】
さらに、下地コート剤3には、有機剤である抗菌除菌剤4から対象物5を保護するための役目と、抗菌除菌剤4の対象物5に対する密着性を良好にする役目も有している。つまり、下地コート剤3によるコーティング面の断面を拡大するとギザギザ状となっており、スプレーガン11によって吹付けられる抗菌除菌剤4が極めて付着し易く、且つ強固に付着することができる。
【0025】
スプレーガン11は、主にガン本体11aと容器11b等とから構成されている。ガン本体11aは、トリガーを有しており、該トリガーを引くことにより、噴射口からエアと共に下地コート剤3又は抗菌除菌剤4が噴射されて吹き付けられる〔図1(A),図4(A)等参照〕。トリガーの引き具合によって、噴射圧力が調整され、下地コート剤3又は抗菌除菌剤4の噴射量を調整できる。容器11bは、下地コート剤3又は抗菌除菌剤4を充填し、ガン本体11aの噴射口へ移送させ、これらの液剤を噴射させる役目をなしている。容器は、ガン本体11aに対して、据付角度が可変するタイプのものが使用される。つまり、容器の液剤移送部とガン本体11aとの連結部分が回動自在となる連結構造となっている(図7参照)。
【0026】
この据付角度の可変タイプによって、容器11bは、ガン本体11aに対して常時垂直状態となるように調整できるものであり、対象物5が垂直状の壁面等である場合は、ガン本体11aを水平状で容器11bが垂直状とし〔図7(A)参照〕、対象物5が天井の場合では、ガン本体11aは噴射方向が上方に向かって垂直となるようにセットされ〔図7(
C)参照〕、同様に容器も垂直状である。
【0027】
さらに、対象物5が床である場合は、ガン本体11aの噴射口方向が下方に向かって垂直となるようにセットされ、同様に容器も垂直状である〔図7(E)参照〕。スプレーガン装置1のコンプレッサ12は、電動モータによって稼働するものであるが、小型エンジンによって稼働するものを使用してもかまわない。
【0028】
次に、下地コート剤3及び抗菌除菌剤4によって対象物5に抗菌除菌剤のコーティングを施工する工程について説明する。この説明において、抗菌除菌を必要とする対象物5は、垂直状の壁面51であることを前提とする。この垂直状の壁面51は、壁を備えたビル等の建築物の室内の壁を想定したものである。
【0029】
スプレーガン装置1のスプレーガン11は、下地コート剤3及び抗菌除菌剤4が噴射される方向が水平方向となるように噴射口を設定し、また容器11bは、スプレーガン11のガン本体11aに対して垂直状とする。このとき容器11bは略垂直状であればよい。容器11bは、液剤状の下地コート剤3及び抗菌除菌剤4が充填されるものであり、通常であれば容器11bには蓋が備わっているので、容器が多少傾いても構わない。ここで、対象物5に対してスプレーガン11による下地コート剤3の吹付けにより施工されたコーティングをコーティング3cとし、該コーティング3c上にスプレーガン11による抗菌除菌剤4の吹付けにより施工されたコーティングをコーティング4cとする。
【0030】
本発明では、対象物5における抗菌除菌剤4によるコーティング施工前の状態を検査確認する事前確認手段によって行われる予備工程と、対象物5に下地コート剤3を吹付ける第1工程と、対象物5に吹付けが完了した下地コート剤3上への抗菌除菌剤4を吹付ける第2工程と、下地コート剤3によるコーティング3c及び抗菌除菌剤4によるコーティング4cの仕上がり状態を検査する最終確認手段によって行われる第3工程によって構成される方法である(図2参照)。
【0031】
まず、予備工程では、事前確認手段によりコーティング施工前の対象物5の表面51の状態を検査確認するものであり、さらに具体的には有機物検査機21と無機物検査機22によって対象物5上の細菌,ウイルスによる有機物の汚染の状態及び下地コート剤3及び抗菌除菌剤4が存在しないことを検査確認する。この予備工程は、作業員が依頼者に対して第1工程以降の作業を行う前に対象物5の状態を知らせるために行うものであり、よって依頼者立ち合いの元で行うものである。そして、依頼者に対して第1工程以降の下地コート剤3及び抗菌除菌剤4のコーティングを施工するための作業が適正に行われることを認識してもらう役目をなすものであり、これによって依頼者から作業の精度の確認及び施工作業における信頼性を得るものである。
【0032】
予備工程は、対象物5に対する細菌,ウイルスによる付着・汚染状態を検査確認するものであり、具体的には、有機物検査機21によって、ATP拭き取り検査として細菌の有無を検査確認し、またウイルス検査装置又は検査手段によってウイルスの有無の検査確認を行うことになる。また、対象物5に対して過去において抗菌除菌剤4によるコーティングが行われ、長期間の経過に伴い再度抗菌除菌剤4による施工が必要となった場合では、以前の下地コート剤3及び抗菌除菌剤4が残留・付着しているか否かを検査確認するために、無機物検査機22が使用される事前確認手段にて行われることになる。
【0033】
以前の下地コート剤3及び抗菌除菌剤4が僅かに残留している場合に、残留した下地コート剤3及び抗菌除菌剤4は除去するか否かは、その都度判断してもよい。ただし、予備工程では有機物検査機21による対象物5の細菌,ウイルスによる汚染状態を検査確認するのみで、無機物検査機22による検査確認は省略して行われないこともある。
【0034】
次に、第1工程では、スプレーガン11の容器11bに下地コート剤3を充填する。そして、コンプレッサ12を始動して、スプレーガン11のトリガーを引くと容器内の下地コート剤3がガン本体11aとの連結部を通して、ガン本体11aの噴射口から噴射できる状態とし、トリガーを引くと下地コート剤3の噴射ができ、トリガーを元に戻すと噴射が停止する。
【0035】
スプレーガン11の噴射口を対象物5の表面に対して、該表面から所定間隔を離れた位置に設定する〔図1(B)参照〕。この所定間隔の距離寸法Wとすると、該距離寸法Wは不変とし維持されなければならないが、多少の変動は許容される。また、吹付け圧力及び一定領域における下地コート剤3の吹付け量は一定とし、これには略一定とし多少の量の変動が含まれる。
【0036】
スプレーガン11の動きは、前述したスプレーガン11と対象物5との距離寸法Wを有して所定間隔を維持しつつ、トリガーを引いた状態でスプレーガン11から下地コート剤3を噴射しつつ所定方向に直線状に移動させ対象物5に下地コート剤3が吹き付けられてゆく。この下地コート剤3の吹付け作業の起点から一定の距離を水平且つ直線状に移動し、目標とする位置まで移動させる〔図4(D)参照〕。この起点から任意の端点までの移動を吹付けにおける往路移動と称する〔図4(D),図5参照〕。
【0037】
そして、往路移動の端点に到達すると、ここで折り返し、スプレーガン11を往路移動方向とは反対方向にスプレーガン11の噴射を行いつつ直線状に移動する。この移動を吹付けにおける復路移動と称する〔図4(D),図5参照〕。該復路移動は前記往路移動よりも下方の位置で行われる。
【0038】
次に、復路移動では、スプレーガン11は前記往路移動の端点位置側から起点位置側に向かって水平且つ直線状に行われる。スプレーガン11による下地コート剤3の吹付けにおける往路移動は、復路移動の下地コート剤3の噴射吹付けの移動軌跡3mの下方で行われる〔図4(D),図5参照〕。スプレーガン11が復路移動において端点側から起点側に向かって移動し、起点に到達すると、該起点の位置で折り返し、前記復路移動の移動軌跡3mよりも下方の位置で往路移動を行う〔図4(D),図5参照〕。このように、スプレーガン11の往路移動及び往路移動を(1),(2),(3),(4),(5)に沿って行う〔図4(D),図5
参照〕。このスプレーガンの往路移動と復路移動とジグザグ状の軌跡3mとなるように複数回繰り返し、対象物5に下地コート剤3によるコーティング3cが出来上がる〔図4(
D),図5参照〕。
【0039】
スプレーガン11の往路移動と復路移動とによる下地コート剤3の吹付け箇所同士はそれぞれの吹付け幅Jの半分以上が重なる領域を有するようにしてジグザグ状に往復を繰り返すものである〔図3(A),(C),図4(A),(B),(C),図5参照〕。ここで、前記吹付け幅Jとは、スプレーガン11の往路移動及び復路移動において、それぞれの移動方向に直交する方向における幅のことを言う〔図4(B)参照〕。そして、往路移動の吹付け幅Jと、復路移動の吹付け幅Jとは互いに半分以上の部分同士が重なり合うようにしている〔図3(C),図4参照〕。
【0040】
したがって、スプレーガン11による下地コート剤3の吹付けにおける往路移動と復路移動とをジグザグ状に繰り返すことで、最初の往路移動と最後の復路移動とを除いて、吹付けの往路移動と復路移動同士の重なり部分により下地コート剤3の吹付け部分は略全面が2度吹付けとなる〔図3(A)参照〕。なお、最後の復路移動は、往路移動で吹付けが終了した場合では最後の往路移動となることもある。そして、対象物5に対する下地コート剤3による吹付け作業は、原則として2回繰り返して行われる。つまり、対象物5の所定箇所に対する下地コート剤3による吹付けを完了した後、同じ箇所にもう一度同じように下地コート剤3の吹付けを行うものである。
【0041】
また、第1工程における下地コート剤3の吹付けにおいて、横方向のジグザグ状の往復とし〔図5(A)参照〕、縦方向のジグザグ状の往復とが存在する〔図5(B)参照〕。作業員は何れの方向を選択してもよい。このようにして、対象物5の表面に下地コート剤3のコーティング3cが出来上がると、第1工程が完了することになる。
【0042】
次に、第1工程が完了した後に、その対象物5における下地コート剤3のコーティング3cの部分に抗菌除菌剤4によるコーティング4cを施工する第2工程が行われる(図3
図6参照)。第2工程は、スプレーガン11の容器11bに抗菌除菌剤4を充填し、第
1工程によって施された下地コート剤3のコーティング3c上に抗菌除菌剤4によるコーティング4cを施工する作業である。第2工程のスプレーガン11の動作は、第1工程におけるスプレーガン11の動作と略同一であり、その第2工程を繰り返しとなるが説明する。
【0043】
第2工程におけるスプレーガン11は第1工程に使用されたスプレーガン11と同一である。スプレーガン11の容器11bには抗菌除菌剤4が充填される。スプレーガン11と対象物5との距離寸法Wを有して所定間隔を維持しつつ、トリガーを引いた状態でスプレーガン11から抗菌除菌剤4を噴射しつつ所定方向に直線状に移動させる〔図1(B)参照〕。
【0044】
この抗菌除菌剤4の吹付け作業の起点から一定の距離を水平且つ直線状に移動し、目標とする位置まで移動させる。この起点から任意の端点までの移動を吹付けにおける第1工程と同様に往路移動と称する。そして、往路移動の端点に到達すると、ここで折り返し、スプレーガン11を往路移動方向とは反対方向に前記スプレーガン11の噴射を行いつつ直線状に移動する。この移動を第1工程と同様に吹付けにおける復路移動と称する。該復路移動は前記往路移動よりも下方の位置で行われる。
【0045】
そして、復路移動では、スプレーガン11は前記往路移動の端点位置側から起点位置側に向かって水平且つ直線状に行われる。往路移動は、復路移動のスプレーガン11による抗菌除菌剤4の噴射の移動軌跡4mの下方で行われる〔図6(A)参照〕。スプレーガン11が復路移動において端点側から起点側に向かって移動し、起点に到達すると、該起点の位置で折り返し、前記復路移動の軌跡4mよりも下方の位置で往路移動を行う〔図4(D),図6(A)参照〕。このように、スプレーガン11の往路移動及び往路移動を(1),(2),(3),(4),(5)に沿って行う〔図6(A)参照〕。このスプレーガンの往路移動と復路移動とジ
グザグ状の軌跡4mとなるように複数回繰り返し、対象物5の下地コート剤3によるコーティング3c上に抗菌除菌剤4のコーティング4cが出来上がる〔図1(C),図3図5等参照〕。
【0046】
スプレーガン11の往路移動と復路移動とによる抗菌除菌剤の吹付け箇所同士はそれぞれの吹付け幅Jの半分以上が重なる領域を有するようにしてジグザグ状に往復を繰り返す。ここで、抗菌除菌剤4における前記吹付け幅Jとは、下地コート剤3における吹付け幅Jと同様に、スプレーガンの往路移動及び復路移動において、それぞれの移動方向に直交する方向における幅のことを言う。そして、往路移動の吹付け幅Jと、復路移動の吹付け幅Jとは互いに半分以上の部分同士が重なり合うようにしている。
【0047】
したがって、スプレーガン11による抗菌除菌剤4の吹付けにおける往路移動と復路移動とをジグザグ状に繰り返すことで、最初の往路移動と最後の復路移動とを除いて、吹付けの往路移動と復路移動同士の重なり部分により抗菌除菌剤4の吹付け部分は略全面が2度吹付けとなる〔図3(A)参照〕。なお、最後の復路移動は、往路移動で吹付けが終了した場合では最後の往路移動となることもある。そして、対象物5に対する抗菌除菌剤4による吹付け作業は、原則として2回繰り返して行われる。
【0048】
つまり、対象物5の所定箇所に対する抗菌除菌剤4による吹付けを完了した後、同じ箇所にもう一度同じように抗菌除菌剤4の吹付けを行うものである。また、第2工程における抗菌除菌剤4の吹付けにおいて、横方向のジグザグ状の往復とし〔図6(A)参照〕、縦方向のジグザグ状の往復とが存在する〔図6(B)参照〕。作業員は何れの方向を選択してもよい。このようにして、対象物5の下地コート剤3によるコーティング3c表面上に抗菌除菌剤4のコーティング4cが出来上がることによって、第2工程が完了することになる。
【0049】
第1工程及び第2工程において、スプレーガン11と対象物5との間隔は約20cm程度以上約60cm程度以下が好適である。また、スプレーガンの往路移動及び復路移動における移動速度については、約0.1m/s~約0.5m/sとし、換言すると約1m程度を約2秒程度~約6秒程度で移動する速度とすることが好適である。ただし、スプレーガン11には、種々のタイプが存在し、必要に応じて、上記数値は変更されることも十分にありうる。
【0050】
第1工程における下地コート剤3の吹付けにおいて、1回目は横方向のジグザグ状の往復とし〔図5(A)参照〕、2回目は縦方向のジグザグ状の往復とし〔図5(B)参照〕することがある。同様に、第2工程において、抗菌除菌剤4の吹付けにおいて、1回目はジグザグ状の横方向の往復とし〔図6(A)参照〕、2回目はジグザグ状の縦方向の往復とすることがある〔図6(B)参照〕。また、第1工程及び第2工程において、それぞれの吹付けで1回目を縦方向のジグザグ状の往復とし、2回目は横方向のジグザグ状の往復としてもかまわない。
【0051】
なお、前記予備工程と第1工程との間にクリーニング・養生作業が必要に応じて行われることもある。これは、次亜塩素酸水やアルコールにて軽微な清掃クリーニングを行い、また下地コート剤3及び抗菌除菌剤4によるコーティングを行わない場所,機器の養生を行い、これらを保護するものである。
【0052】
次に、第2工程が完了後に行われる第3工程は、最終確認手段によって有機物検査機21及び無機物検査機22にて対象物5上の施工が完了した抗菌除菌剤4によるコーティングの仕上がり状態を検査確認する工程である(図2参照)。まず、有機物検査機21によって、細菌,ウイルス等の汚染に係る有機物の有無を検査確認する。この有機物検査機21による検査は予備工程で行われたATP拭き取り検査等である。また、ウイルスの検査では、この作業に対応する専用の機器や、キット或いはその他のウイルス検査手段が使用される。
【0053】
この有機物検査機21による検査によって、汚染に係る細菌,ウイルス等の有機物の検査によって、汚染に係る細菌,ウイルス等の有機物の量が安全基準を十分に満たしていることが確認される。さらに、第3工程では、最終確認手段における無機物検査機22によって抗菌除菌剤4の主成分となる無機物の有無を確認する。本発明において、抗菌除菌剤4は光触媒によって抗菌除菌が行われる種類のものが使用されることを前提とすると、抗菌除菌剤4の無機物の主成分はチタンとなる。
【0054】
無機物検査機22は、目標に向かって検査対象を検査する本体部22aと、スイッチを備えたグリップ22bと、検査結果を表示するディスプレイ22cとを有している(図9
参照)。そして、無機物検査機22の本体部22aを抗菌除菌剤4によるコーティング4
cの任意の位置に近づけてグリップ22bに設けられたスイッチを入れ、これによってディスプレイ22cに抗菌除菌剤4の主要な成分が表示されるものである。そして、前記無機物検査機22による抗菌除菌剤4のコーティング完了箇所における検査地点は、複数の任意の点を選択して行うサンプリング検査とする〔図10(A)参照〕。検査地点は、適当にばらついていることが必要である。図10(A)では、黒点箇所がサンプリング検査における検査ポイント(地点)である。
【0055】
無機物検査機22によって、施工が完了した抗菌除菌剤4によるコーティング4cには必要な量のチタンの有無の検査が行われることとなる。第1工程及び第2工程が適正に施工されていれば、第3工程による最終確認手段にて行われる無機物検査機22の検査で、無機物の主成分としてチタンが抗菌除菌剤4によるコーティング4cの層内に十分に含まれていることが確認されることとなり、施工業者は依頼者から信頼を得ることができ、依頼者は安心感を得ることができる。図10(B)は、無機物検査機22によって検出された、コーティングに含有されている無機物とその量を示している。
【0056】
また、第3工程では、最終確認手段により前記抗菌除菌剤4のコーティング4cから抗菌除菌を行う無機物の有無を検査確認するものとし、抗菌除菌剤4によるコーティング4cから細菌及びウイルスの有機物の有無の検査確認を行わないとする実施形態も存在する。つまり、この実施形態においては、第3工程では、無機物検査機22による、抗菌及び抗ウイルスの無機物(具体的にはチタン)の有無の検査確認のみを行うものである。さらに、この実施形態で予備工程が省かれることもある。このようなケースは依頼者から予備工程を要求されない場合で且つ施工時間の短縮が要求される場合に採用されるものである。
【0057】
上記実施形態における第3工程では、抗菌除菌を行う無機物のみの有無の検査確認を行い、細菌・ウイルスの検査確認は省略し、且つ予備工程も省かれることで、全体の作業時間の短縮を行うことができる。そして、抗菌除菌を行う無機物の有無を検査によって、抗菌除菌剤4によるコーティング4cの層内に抗菌除菌剤の有効成分が十分に含まれていることが確認されることにより、必然的にコーティング4cの抗菌除菌及び抗ウイルスの機能を有することについても確認されることとなり、施工業者は依頼者から信頼を得ることができ、依頼者は安心感を得ることができる。
【0058】
また、第1工程において下地コート剤3の吹付けは1回とし、次いで抗菌除菌剤4の吹付けの第2工程は2回繰り返される実施形態がある。これは、吹付けの総合的な回数を減らすことによって、作業時間を短縮することができるものである。さらに、下地コート剤3の吹付けの第1工程は2回の繰り返しとし、次いで抗菌除菌剤4の吹付けの第2工程は2回繰り返す実施形態も存在する。
【0059】
図11は、対象物5を航空機、特に旅客機の室内52の断面を示したものであり、機内の客室内52における両壁面と天井とが緩やかな曲面又は弧状面にて連続している。このような場所でも、本発明における予備工程,第1工程,第2工程及び第3工程によって、下地コート剤3及び抗菌除菌剤4による良好な抗菌及び抗ウイルスのコーティングが施工され、高い精度による検査確認を行うことができる。なお、本発明において、前記下地コート剤3の名称をアンダーコート3と称し、前記抗菌除菌剤4をトップコート4と称しても構わない。
【0060】
ここで、本発明における下地コート剤(アンダーコート)3及び抗菌除菌剤(トップコー
ト)4の成分及び特質について説明する。下地コート剤3及び抗菌除菌剤4は共に、ペル
オキソチタン酸を有しており、抗菌除菌剤4はペルオキソチタン酸とアナターゼゾルとが混合された成分を有している。
【0061】
アナターゼゾルについては、その一例として公知の技術(特開平10-67516)が存在し、チタン含有液体から沈殿形成によって形成した水酸化チタン、もしくはチタン酸化物を水中に分散した液に、過酸化物を添加してペルオキソチタン溶液とした後に、ペルオキソチタン溶液を、85℃~200℃において、40時間~2時間の加熱処理を行うことでアナターゼ分散液が製造されることについて知られている。なお、ペルオキソ改質アナターゼゾルとも称さるが、以下名称をアナターゼゾルに統一する。
【0062】
そして、ペルオキソチタン酸及びアナターゼゾルは、一般に知られているように通常、多角形柱状の結晶成分である。したがって、このペルオキソチタン酸を主成分とする下地コート剤3をスプレーガン11にて対象物5の表面に噴射吹付けすることで、ペルオキソチタン酸の成分がそれぞれ対象物5の表面と接触する面積が多くなり、下地コート剤3は必然的に対象物5の表面に食い込むように付着し、強固な下地コート剤3によるコーティングコが実現される。
【0063】
また、抗菌除菌剤4は、ペルオキソチタン酸とアナターゼゾルの混合成分を有するものであり、抗菌除菌剤4を構成するペルオキソチタンは、略同質の下地コート剤3のペルオキソチタン酸と良好に交わる。これによって、対象物5にコーティングされた下地コート剤3上にスプレーガン11にて抗菌除菌剤4を噴射吹付けすることで抗菌除菌剤4は下地コート剤3に対して強固に付着させることができ、抗菌除菌剤4は対象物5から剥がれ難く、強固で耐久性のあるものにできる。
【0064】
図14(A)は、図1(D)をさらに拡大したものであり、対象物5の表面に噴射吹付けによって下地コート剤3と抗菌除菌剤4がコーティングされた状態を拡大したイメージ図である。この図によって、下地コート剤3は、非球体で多角形柱状であるため、対象物5の表面に良好に付着していることが示されている。
【0065】
さらに図14(B)についても対象物5の表面に噴射吹付けによって下地コート剤3と抗菌除菌剤4がコーティングされた状態をさらに拡大したイメージ図であり、図14(C)は図14(B)を部分的に拡大した図である。この図によって、特に下地コート剤3は対象物5の表面に食い込みながら付着している状態を示し、また下地コート剤3のペルオキソチタン酸と、抗菌除菌剤4のペルオキソチタン酸とアナターゼゾルとの混合成分とが相互にかみ合って固着されている状態が示されている。
【0066】
次に、抗菌除菌剤4において、ペルオキソチタン酸とアナターゼゾルの混合比率について説明する。ペルオキソチタン酸は、主に下地コート剤3への付着に係り、アナターゼゾルは抗菌・除菌の役目を果たすものである。そして、抗菌除菌剤4においてペルオキソチタン酸の比率が多ければ下地コート剤3への付着力が強くなるが、アナターゼゾルの比率が少なくなり、抗菌・除菌が弱くなる。
【0067】
その反対に、抗菌除菌剤4においてアナターゼゾルの比率を多くすると、抗菌・除菌の力が強くなるが、ペルオキソチタン酸の比率が低くなり、下地コート剤3への付着力が弱まる。そこで、抗菌除菌剤4の下地コート剤3への付着力と、抗菌・除菌の力のバランスを考慮して、抗菌除菌剤4において、ペルオキソチタン酸は2以上とし、アナターゼゾルは8以下とする。
【0068】
つまり、ペルオキソチタン酸とアナターゼゾルとの比は、2(以上):8(以下)とする。この範囲の比率が、抗菌除菌剤4において最も安定したものとなる。そして、上記比率において、抗菌除菌剤4におけるペルオキソチタン酸とアナターゼゾルの混合比率を3:7が最適な比率である。
【0069】
次に、スプレーガン11による下地コート剤3と抗菌除菌剤4の噴射吹付けによる状態を示す。本発明では、スプレーガン11による下地コート剤3及び抗菌除菌剤4の対象物5に対する吹付け量について、次の試みを実施した。まず、スプレーガン11の所定の噴射圧力にて対象物5の表面に対して10cm平米において1秒間で0.05グラム乃至0.2グラム(好ましくは0.2グラム未満)となるように設定した。また、スプレーガン11における下地コート剤3と抗菌除菌剤4の噴射吹付け量は、スプレーガン11の噴射量調整ツマミ11dによって行われる〔図12(C)参照〕。
【0070】
スプレーガン11は、種々のメーカーによって多種存在するが、略全てにおいて、噴射量調整ツマミ11dが備わっていることは共通している。そして、噴射量調整ツマミ11dの回転角度に対応する噴射量についてもうち、各メーカーのスプレーガン11ではほとんど同じである。そこで、噴射量調整ツマミ11dの噴射量がゼロであるゼロ位置から150°,180°,210°,240°,270°で噴射吹付けを行った。
【0071】
これによれば、噴射量調整ツマミ11dをゼロ位置から150°又は180°に回転させたことで対象物5から30cm乃至50cmとした状態が略問題なく使用でいることが示された。そして、スプレーガン11による下地コート剤3及び抗菌除菌剤4の対象物5に対する付け量は、噴射圧力を0.3Mps〔図15(B)の圧力計を参照〕とし10cm平米において1秒間で0.1グラムとなるように設定することが好適であることが示された〔図15(A)参照〕。なお、圧力計は、スプレーガン11に装着されている。
【0072】
以上の条件にて、噴射量調整ツマミ11dがゼロ位置から180°回転させて、対象物5にスプレーガン11にて下地コート剤3或いは抗菌除菌剤4を噴射吹付けすると、液だれの無い良好な吹付け状態にできる。この条件つまり、噴射圧力,噴射吹付け量の条件を満たさない場合では、スプレーガン11によって対象物5に下地コート剤3或いは抗菌除菌剤4を噴射吹付けた場合、10cm平米において1秒間で0.2グラム以上となり液だれが生じ、良好な噴射吹付けができない〔図15(D)参照〕。
【0073】
次に、本発明における抗菌除菌剤コーティング方法に使用されるスプレーガン11には、光源ライト14が装着される実施形態が存在する(図12図13参照)。該光源ライト14はスプレーガン11による対象物5表面への下地コート剤3或いは抗菌除菌剤4の噴射吹付け領域を目標として、この部分照射するようにスプレーガン11に装着される。この装着構造は後述する。
【0074】
光源ライト14は、第1工程及び第2工程におけるスプレーガン11による下地コート剤3及び抗菌除菌剤4の対象物5への噴射箇所を照射により目視にて確認することができる。そして、光源ライト14はスプレーガン11に装着され一体化されているため、第1工程及び第2工程においてスプレーガン11を所定方向に直線状に往路移動,折り返し移動及び復路移動に光源ライト14の照射が的確に追従することができる。下地コート剤3及び抗菌除菌剤4は、液体(液剤)であり、スプレーガン11によって対象物5に噴射吹付けしたす直後は速乾性であるとしても対象物5表面に液体として湿った状態で残るため、対象物5の他の周囲の乾燥した部分との差が目視できるものである。
【0075】
そして、スプレーガン11の下地コート剤3或いは抗菌除菌剤4の噴射吹付けが水平且つ直線状に行われているか否かも確認でき、或いは、噴射吹付け直後の下地コート剤3或いは抗菌除菌剤4に液だれの有無についても光源ライト14の照射によって確認することができる。これによって、作業員はスプレーガン11による対象物5への下地コート剤3及び抗菌除菌剤4のコーティング作業が適正に行われているか否かを作業の進捗と共に確認することができ、極めて高い作業効率を実現できる。
【0076】
スプレーガン11による対象物5表面への下地コート剤3或いは抗菌除菌剤4の噴射吹付けの各瞬間に、略円形状或いは楕円形状の噴射領域が生じ、これを噴射吹付け領域Q1
と称する(図12図13参照)。また、スプレーガン11に装着された光源ライト14は、光源ライト14の照射によって対象物5の表面に円形状に照らし出された領域が生じ、これを照射領域Q2と称する(図12図13参照)。
【0077】
そして、スプレーガン11の噴射口と対象物5の表面との距離寸法Wを一定に定めておくことで、噴射吹付け領域Q1と照射領域Q2との形状は共に略不変で移動することができ、スプレーガン11による対象物5への噴射吹付け領域Q1に、光源ライト14による照射領域Q2が照らし出されることにより、噴射吹付け領域Q1の状態を瞬時に確認することができる。
【0078】
このように、光源ライト14による照射領域Q2は、スプレーガン11による噴射吹付
け領域Q1と形状及び大きさが同等であることが好ましい。さらに、照射領域Q2と噴射吹付け領域Q1とは大きさが略一致していることが好ましい〔図12(A),(B),(D)参照〕。また、噴射吹付け領域Q1と照射領域Q2とは、大きさ,形状が少し不揃いでも両者は同等であることに含まれる。作業員にとってスプレーガン11による噴射吹付けが行い易く、状態の確認も同時にできるものである。
【0079】
ここで、図12(D)において、噴射吹付け領域Q1と照射領域Q2とは、その位置が略一致している状態である。これは、図面上において、噴射吹付け領域Q1と照射領域Q2とを明確に見易くするために設定したものである。したがって、噴射吹付け領域Q1と照射領域Q2とが完全に一致するときは、噴射吹付け領域Q1と照射領域Q2とが完全に重合する。
【0080】
また、スプレーガン11に装着された光源ライト14による照射領域Q2は、スプレーガン11による下地コート剤3或いは抗菌除菌剤4の噴射吹付け領域Q1を覆うことがで
きるように照射領域Q2を噴射吹付け領域Q1よりも大きく設定されることもある〔図13(A),(B)参照〕。スプレーガン11に装着された光源ライト14による照射領域Q2は、スプレーガン11による抗菌除菌剤4の噴射吹付け領域Q1を覆うことができるように大きく設定されることもある。この場合では、照射領域Q2内に噴射吹付け領域Q1が含まれているものである。つまり、照射領域Q2内の何れの位置に噴射吹付け領域Q1が存在していてもかまわないが、照射領域Q2の中心と、噴射吹付け領域Q1の中心が、略一致していることが作業上において好適である。
【0081】
このように、照射領域Q2を噴射吹付け領域Q1よりも大きくつまりより広くなるようにすることで、照射領域Q2は対象物5表面の噴射吹付け領域Q1を覆うと共に、噴射吹付け領域Q1の周囲も照射することができる。これによって、スプレーガン11による噴射吹付け直後の噴射吹付け領域Q1の湿り気部分と、噴射吹付け領域Q1周囲の湿り気の無い部分との比較が目視でき、これによって、噴射吹付け領域Q1の状態の確認をより一層行い易いようにすることができる。照射領域Q2の大きさの変更は、スプレーガン11に対して光源ライト14の装着位置を前後にずらすのみで簡単にできる。
【0082】
光源ライト14は、通常の懐中電灯又はペン光源ライト等が使用され、通常の光源を有するものであり、具体的にはLEDが好適であるが,電球でもよい。また、UVライトを使用してもよい。光源ライト14は、前述したように、比較的小形の懐中電灯又はペン光源ライトであり、何れも棒状円筒体である。
【0083】
そして、光源ライト14は、スプレーガン11に対してホルダ15によって装着される〔図12(A),(B),図13(A),(C)参照〕。ホルダ15は、スプレーガン11側に取付固定するベース部15aと、光源ライト14を装着する被装着部15dとを有する。ベース部15aは、略ループ状(環状)に形成されスプレーガン11の本体部先端に装着することができるようになっている。そして、ベース部15aは、締付部15bを有しており、該締付部15bのボルト・ナットでロック及びロック解除を行い、スプレーガン11からホルダ15と打着することができる。被装着部15dは、円筒状の光源ライト14を挿入するようにして装着するものである。
【0084】
ベース部15aと被装着部15dとは相互に角度を適宜変更することができる。具体的には、ベース部15aに連結部15cが形成され、該連結部15cに被装着部15dがボルト・ナット等の固着具によって連結固定される。該固着具を締付け又は緩めることで、ベース部15aに対して被装着部15dの角度が変化し、スプレーガン11に対して光源ライト14の照射角度を調整することができる。ホルダ15によって、光源ライト14は、スプレーガン11に対して着脱自在にすることができ、これによって、持ち運びの際のケースに収納したりすることを簡単にすることができる。
【0085】
なお、光源ライト14の光源としては、下地コート剤3又は抗菌除菌剤4に含有されるペルオキシチタン酸或いはアナターゼゾルの存在を可視確認することができるものが使用されることもある。
【0086】
本発明では、以下の構成が含まれている。まず、記検査機は汚染に係る有機物の有無を検査確認する有機物検査機とし、前記予備工程と前記第3工程における検査は、汚染を引き起こす有機物の有無を前記有機物検査機にて検査確認すること。前記検査機は汚染に係る有機物の有無を検査確認する有機物検査機と、抗菌除菌を行う無機物の有無を検査確認する無機物検査機との2種類を備え、前記予備工程と前記第3工程における検査は、汚染に係る有機物及び抗菌除菌を行う無機物の有無を検査確認すること。
【0087】
前記下地コート剤吹付けの第1工程は1回とし、次いで前記抗菌除菌剤吹付けの第2工程を2回繰り返してなること。前記下地コート剤吹付けの第1工程は2回繰り返し、次いで前記抗菌除菌剤吹付けの第2工程を2回繰り返してなること。前記下地コート剤吹付けの第1工程と前記抗菌除菌剤の吹付けの第2工程では、それぞれの1回目の吹付け移動は横方向のジグザグ状の往復とし、それぞれの2回目の吹付け移動は縦方向のジグザグ状の往復としてなること。前記第3工程における前記検査機は、前記抗菌除菌剤の主要な成分を検知し、コーティング完了箇所における前記検査機による検査地点は、複数の任意の点を選択するサンプリング検査としてなること。
【0088】
第2工程の次に行う第3工程は、有機物検査機によって、抗菌除菌剤のコーティングにおいて細菌,ウイルス等の有機物の有無の検査確認及び抗菌除菌剤の有無の検査確認をして、コーティングが十分且つ良好に行われていることを作業員以外の依頼者等の第三者に顕示し、抗菌除菌剤のコーティングが確実に行われ、コーティングの仕上が高い精度で行われていることを依頼者に顕示し、信頼性を得ることができる。
【0089】
また、第1工程及び第2工程に従う抗菌除菌剤のスプレーガンによる吹付け作業によって、下地コート剤及び抗菌除菌剤の粘性が極めて小さく、通常の吹付けでは対象物の面上において垂れてしまうような場合でも、本発明の第1工程及び第2工程によって、スプレーガンによって吹付けられた下地コート剤及び抗菌除菌剤は、そのまま垂れることなく、対象物の表面に密着状で均一面となる仕上げにできる。本発明は、対象物は、建築物,公共乗物等の室内壁,窓等の抗菌除菌を必要とするものである。よって、人体に直接吹付けて抗菌除菌とするタイプものではなく、人に不快感を与えることはないものである。
【0090】
以上のことにより、前記検査機は汚染に係る有機物の有無を検査確認するものとし、前記予備工程と前記第3工程における検査は、汚染を引き起こす有機物の有無を検査確認することにより、汚染に係る細菌,ウイルス等の有機物の検査確認を行い、抗菌除菌剤の吹付けによる第2工程にて抗菌除菌剤が確実にコーティングの層内に含まれていることを確認することができる。この第3工程において、汚染に係る細菌,ウイルス等の有機物の検査によって、汚染に係る細菌,ウイルス等の有機物の量が安全基準を十分に満たしていることが確認されることにより、施工業者は依頼者から信頼を得ることができ、依頼者は安心感を得ることができる。
【0091】
また、前記検査機は無機物の有無を確認するものとし、前記予備工程と前記第3工程における検査は、抗菌除菌を行う無機物の有無を検査によって、コーティングの層内に抗菌除菌剤の有効成分が十分に含まれていることが確認されることにより、施工業者は依頼者から信頼を得ることができ、依頼者は安心感を得ることができる。さらに、前記検査機は汚染に係る有機物の有無を検査確認するものと、抗菌除菌を行う無機物の有無を検査確認するものとの2種類を備え、前記予備工程と前記第3工程における検査は、汚染に係る有機物及び抗菌除菌を行う無機物の有無を検査確認することにより、汚染に係る細菌,ウイルス等の有機物の検査によって、汚染に係る細菌,ウイルス等の有機物の量が安全基準を十分に満たしていることが確認されると共に、抗菌除菌を行う無機物の有無を検査によって、コーティングの層内に抗菌除菌剤の有効成分が十分に含まれていることが確認されることにより、施工業者は依頼者から信頼を得ることができ、依頼者は安心感を得ることができる。
【0092】
前記下地コート剤吹付けの第1工程は1回とし、次いで前記消毒除菌吹付け第2工程を2回繰り返すことにより、コーティングを施工する吹付け作業時間を短縮できる。請求項6では、前記下地コート剤吹付けの第1工程は2回繰り返すことにより、下地コート剤の層が厚くなり、抗菌除菌剤の対象物に対する付着力がより一層強固となり、抗菌除菌の効力をより一層長期間に亘って持続することができる。
【0093】
前記下地コート剤吹付けの第1工程の1回目は横方向のジグザグ状の往復とし、2回目は縦方向のジグザグ状の往復とし、前記抗菌除菌剤の前記第2工程の1回目はジグザグ状の横方向の往復とし、2回目はジグザグ状の縦方向の往復とすることにより、対象物に対して下地コート剤及び抗菌除菌剤による吹付け部分がより一層密状態にし易くなり、抗菌除菌剤の効力がより一層良好となる。請求項8の発明では、より一層、良好な吹付け仕上げにすることができる。
【0094】
第3工程において検査確認における作業を短時間で且つ効率的に行うことができる。予備工程が省かれることにより、作業時間の短縮を行うことができる。そして、抗菌除菌を行う無機物の有無を検査によって、コーティングの層内に抗菌除菌剤の有効成分が十分に含まれていることが確認されることにより、コーティングの抗菌除菌及び抗ウイルスについても確認されることとなり、施工業者は依頼者から信頼を得ることができ、依頼者は安心感を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、抗菌除菌剤コーティング方法において、予備工程と第3工程での対象物5の状態を検査,確認するための抗菌除菌剤コーティング確認装置である。そして、抗菌除菌剤コーティング方法では、除菌・抗菌・親水性等の効果のある低粘度の溶液及び塗料のコーティング方法として応用することもできる。具体的には、前記抗菌除菌剤4を第1液とし、下地コート剤3を第2液とする。そして、前記第1液を塗料又は抗菌性を有する塗料とし、第2液を塗料とした前記第1液の下地剤とする。そして、下地剤とした第2液を対象物5である屋外やビル等の建築物の外壁に吹付け手段等による塗装を施し、さらに塗料とした第1液を第2液によって構成された下地箇所に塗装を行うことにより、本発明を塗装に応用することは、十分に可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…スプレーガン装置、11…スプレーガン、11a…ガン本体、11b…容器、
14…光源ライト、21…有機物検査機,22…無機物検査機、3…下地コート剤、
3m…下地コート剤の軌跡、3c…下地コート剤のコーティング、4…抗菌除菌剤、
4m…抗菌除菌剤の軌跡、4c…抗菌除菌剤のコーティング、5…対象物、51…壁、
Q1…噴射吹付け領域、Q2…照射領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程によって対象物に施工される抗菌除菌剤をコーティングする方法において、下地コート剤と、抗菌除菌剤と、光源ライトが装着されたスプレーガンと、前記対象物の状態を検査確認する有機物検査機と無機物検査機を備え、
前記光源ライトは前記スプレーガンによる前記対象物表面への噴射吹付け領域を目標として照射されるものとし、
前記対象物におけるコーティングの施工を開始する前の状態を前記有機物検査機と前記無機物検査機にて検査確認する予備工程と、
前記下地コート剤を前記対象物に対して前記スプレーガンにて噴射する第1工程と、
前記抗菌除菌剤を前記対象物に前記スプレーガンにて噴射する第2工程と、
コーティングの施工完了後における前記対象物の前記抗菌除菌剤のコーティング状態を前記有機物検査機と前記無機物検査機にて検査確認する第3工程とからなることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング方法
【請求項2】
請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング方法において、前記予備工程は、施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記有機物検査機と前記無機物検査機とにより前記対象物に対して細菌,ウイルスの有無が確認されると共に、前記対象物の状態が確認されてなることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング方法
【請求項3】
請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング方法において、前記第3工程は、コーティングの施工を施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記無機物検査機により前記対象物に対する前記抗菌除菌剤のコーティングの状態及び前記有機物検査機により細菌,ウイルスが消滅されたことを前記第三者が確認されることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング方法
【請求項4】
請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング方法において、前記予備工程は、施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記有機物検査機と前記無機物検査機とにより前記対象物に対して細菌,ウイルスの有無が確認されると共に、前記対象物の状態が確認され、前記第3工程は、コーティングの施工を施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記無機物検査機により前記対象物に対する前記抗菌除菌剤のコーティングの状態及び前記有機物検査機により細菌,ウイルスが消滅されたことを前記第三者が確認されることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング方法
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、建物の屋内及び屋外,車両その他において、抗菌除菌及び抗ウイルス除ウイルスのための抗菌除菌剤のコーティングを必要とする対象物に抗菌除菌剤のコーティングを行う前後において、コーティングの施工が適正に行われたことを確認できる抗菌除菌剤コーティング方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の目的は、新型コロナウイルス等の感染を防ぐため、建物室内及び室外及び車両の室内等に強力な抗菌除菌剤のコーティングを行うことにより、人には一切抗菌除菌剤を吹付けることなく、人体以外の対象物に抗菌除菌剤を正確且つ効率的に吹付けて感染を防止することを達成し、且つ抗菌除菌剤のコーティングの対象物への付着性を極めて良好にし、耐久性のあるコーティングの施工を実現するための抗菌除菌剤コーティング方法を提供することにある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
そこで、発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、複数の工程によって対象物に施工される抗菌除菌剤をコーティングする方法において、下地コート剤と、抗菌除菌剤と、光源ライトが装着されたスプレーガンと、前記対象物の状態を検査確認する有機物検査機と無機物検査機を備え、前記光源ライトは前記スプレーガンによる前記対象物表面への噴射吹付け領域を目標として照射されるものとし、前記対象物におけるコーティングの施工を開始する前の状態を前記有機物検査機と前記無機物検査機にて検査確認する予備工程と、前記下地コート剤を前記対象物に対して前記スプレーガンにて噴射する第1工程と、前記抗菌除菌剤を前記対象物に前記スプレーガンにて噴射する第2工程と、コーティングの施工完了後における前記対象物の前記抗菌除菌剤のコーティング状態を前記有機物検査機と前記無機物検査機にて検査確認する第3工程とからなることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング方法としたことにより、上記課題を解決した。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項2の発明を、請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング方法において、前記予備工程は、施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記有機物検査機と前記無機物検査機とにより前記対象物に対して細菌,ウイルスの有無が確認されると共に、前記対象物の状態が確認されてなることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング方法としたことにより、上記課題を解決した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項3の発明を、請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング方法において、前記第3工程は、コーティングの施工を施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記無機物検査機により前記対象物に対する前記抗菌除菌剤のコーティングの状態及び前記有機物検査機により細菌,ウイルスが消滅されたことを前記第三者が確認されることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング方法としたことにより、上記課題を解決した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項4の発明を、請求項1に記載の抗菌除菌剤コーティング方法において、前記予備工程は、施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記有機物検査機と前記無機物検査機とにより前記対象物に対して細菌,ウイルスの有無が確認されると共に、前記対象物の状態が確認され、前記第3工程は、コーティングの施工を施工業者に依頼する第三者の立ち合いの元で行われ、前記無機物検査機により前記対象物に対する前記抗菌除菌剤のコーティングの状態及び前記有機物検査機により細菌,ウイルスが消滅されたことを前記第三者が確認されることを特徴とする抗菌除菌剤コーティング方法としたことにより、上記課題を解決した。