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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117747
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20240822BHJP
【FI】
G06Q50/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020830
(22)【出願日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2023023103
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FACEBOOK
(71)【出願人】
【識別番号】516063278
【氏名又は名称】株式会社ELEMENTS
(71)【出願人】
【識別番号】522395358
【氏名又は名称】株式会社グローバルヒューマニー・テック
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城谷 尚文
(72)【発明者】
【氏名】平嶋 健朗
(72)【発明者】
【氏名】近藤 潤也
(72)【発明者】
【氏名】高松 雅尭
(57)【要約】
【課題】就労を希望する外国人労働者に対してeKYCによる本人認証を行うとともに、出勤時においてeKYC時のデータに基づいて本人確認を行うことのできる情報処理システムを提供する。
【解決手段】雇用を希望する外国人労働者の利用者端末20と、雇用先または就労先の企業に備えられた企業端末30および認証装置40aと、利用者端末20、企業端末30、認証装置40aと相互にネットワーク60で接続されたサーバー10aとを含み、利用者が雇用を希望する場合、サーバー10aは利用者端末20と協働してeKYCにより本人認証を行うとともに本人認証に成功した場合には利用者の本人認証の結果を企業端末30に送信し、認証装置40aは、雇用された、または就労した利用者に対して、eKYCによる本人認証時の顔容貌画像と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外国人労働者を対象とする情報処理システムであって、
雇用を希望する外国人労働者の利用者端末と、
雇用先または就労先の企業に備えられた企業端末と、
前記企業に備えられた認証装置と、
前記利用者端末、前記企業端末、前記認証装置と相互にネットワークで接続されたサーバーと、を含み、
前記利用者端末は、
利用者が雇用を希望する場合、前記サーバーと協働して在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのうちの少なくともいずれか1つを用いてeKYCにより本人認証を行う機能を備え、
前記サーバーは、
前記利用者端末と協働して前記在留カード、前記特別永住者証明書、前記マイナンバーカード、前記運転免許証、前記パスポートのうちの少なくともいずれか1つを用いてeKYCにより本人認証を行う機能と、
本人認証に成功した場合には利用者の本人認証の結果を前記企業端末に送信する機能と、を備え、
前記認証装置は、前記雇用された、または就労した利用者に対して、前記eKYCの本人認証時の顔容貌画像と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行う機能を備える、情報処理システム。
【請求項2】
さらに労務管理機能を含み、
前記認証装置は出勤時の本人確認に基づく出勤情報を前記サーバーに送信し、
前記サーバーは、前記認証装置から出勤情報を受信して蓄積し、eKYCの本人認証で取得した情報と出勤情報とに基づき就労違反の有無を確認し、結果を前記企業端末および/または前記認証装置に送信する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
さらに就労支援機能を含み、
前記利用者端末は、前記サーバーに蓄積された外国人労働者向けの雇用情報を閲覧する機能と、利用者の雇用希望を前記サーバーに登録する機能とを備え、
前記サーバーは、前記企業の前記雇用情報を蓄積するとともに、利用者の雇用希望および就労可否を含む前記本人認証の結果を前記企業端末に送信し、前記企業端末から回答を受信した場合には前記企業の回答を前記利用者端末に送信する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
さらに信用情報提供機能を含み、
前記サーバーは、利用者の許諾のもとに、出勤情報に基づいて信用スコアを計算し、外国人も対象とするサービス展開業者に前記信用スコアを含む信用情報を提供する、請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
さらに信用情報提供機能を含み、
前記サーバーは、利用者の許諾のもとに、信用関連情報を取得し、信用関連情報に基づいて信用スコアを計算し、外国人も対象とするサービス展開業者に前記信用スコアを含む信用情報を提供する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記サーバーは、機械学習を用いた信用スコア計算部を備え、
複数の外国人労働者の信用関連情報の少なくとも一部とトラブルの有無とを教師データとして入力して前記信用スコア計算部に学習させ、
利用者の前記信用関連情報の少なくとも一部を学習後の前記信用スコア計算部に入力し、トラブル発生の確率を含む前記信用スコアを算出する、請求項4または5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記サーバーは、eKYCの本人認証部を備え、
前記利用者端末が撮影した利用者の顔容貌画像と前記在留カード、前記特別永住者証明書、前記マイナンバーカード、前記運転免許証、前記パスポートのうちの少なくともいずれか1つから読み出した顔容貌画像とが一致しているかどうかを判定する第1認証と、利用者の動作を必要としないパッシブ認証、および/または、利用者の動作を必要とするアクティブ認証によって撮影された顔容貌画像が現実在の人の顔容貌画像であることを判定する第2認証と、を有し、前記第1認証および前記第2認証の両方で認証に成功した場合に、利用者が前記在留カード、前記特別永住者証明書、前記マイナンバーカード、前記運転免許証、前記パスポートのうちの少なくともいずれか1つに記載されている本人であると認証する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記利用者端末は、カメラ、ディスプレイ、近距離通信(NFC)、および無線または有線の通信装置を備え、
利用者が本人認証を希望する場合には、前記近距離通信で前記在留カード、前記特別永住者証明書、前記マイナンバーカード、前記運転免許証、前記パスポートのうちの少なくともいずれか1つのデータを読み取るとともに前記カメラで利用者の顔画像を撮影して、前記データと利用者の顔画像とを前記通信装置を介して前記サーバーに送信し、
前記サーバーから利用者への動作指示を受信した場合には、利用者に動作を指示し、指示後の利用者の顔画像を撮影して、前記サーバーに送信し、
前記サーバーから本人認証成功を受信した場合には、前記本人認証成功を前記ディスプレイに表示する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記認証装置は、カメラ、本人確認部、記憶部、および通信部を備え、
前記本人確認部は、前記カメラで出勤者の顔容貌画像を撮影し、前記記憶部に記憶されたeKYCの前記本人認証時の顔容貌画像を含む情報と比較することによって出勤者がeKYCで認証された本人であるかどうかを確認する、請求項1に記載の情報処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外国人労働者を対象とする情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外国人労働者を対象とする情報処理システムに関しては、以下のような特許が出願されている。
例えば、特許文献1(特開2022-085640号公報)には、雇用主と在留カードを持ち就労活動をする者の夫々にメリットのある情報処理装置が開示されている。
特許文献1に記載の情報処理装置は、所定国における所定雇用主に対して就労活動をする者の在留カードに記録された、当該所定国の資格に関する情報を取得する取得手段と、在留カードから取得された資格に関する情報に基づいて、就労活動をする者の資格が、所定国において就労可能な資格か否かを確認する資格確認手段と、資格確認手段による確認結果に基づいて、就労活動をする者に対する雇用の可否を判定する雇用可否判定手段と、を備える。
【0003】
特許文献2(特開2020-107339号公報)には、求人雇用主が、特別な知識を有することなく、在留資格が網羅的に考慮された就労希望外国人を管理するための情報処理装置が開示されている。
特許文献2に記載の情報処理装置は、求人を希望する雇用主と、就労を希望する就労希望者とのマッチングを支援する情報処理装置において、雇用主の求人の条件を示す情報を少なくとも含む雇用主に関する第1情報と、就労希望者が所定国に在留する条件を示す情報を少なくとも含む就労希望者に関する第2情報とを取得して管理する管理手段と、第1情報と第2情報とに基づいて、雇用主と就労希望者とのマッチングを行うマッチング手段と、マッチングの結果を少なくとも含む第3情報を、雇用主及び就労希望者の少なくとも一方に提示する提示手段と、を備える。
【0004】
特許文献3(特開2022-039018号公報)には、金融機関における、外国人口座の開設や当該口座の管理等を、不正回避の観点を踏まえた適正、かつ、効率的なものとする管理支援装置、管理支援方法及び管理支援システムが開示されている。
特許文献3に記載の管理支援装置は、金融機関の各外国人顧客が提示した在留カードの情報、及び在留カード以外の当該外国人顧客の属性情報を格納する記憶装置と、属性情報のうち当該外国人に関して発生したトラブルの情報と、当該外国人顧客の在留カード及び属性情報との間の相関関係を推定する処理、金融機関における金融サービスの利用を望む外国人顧客候補に関して、当該外国人顧客候補から得た在留カードの情報及び属性情報を、推定した相関関係に適用し、当該外国人顧客候補に関する金融犯罪の発生確率を推定する処理、を実行する演算装置と、を備える。
【0005】
特許文献4(特開2021-144657号公報)には、在留外国人の口座管理のための情報を容易に収集可能にする情報収集支援プログラムが開示されている。
特許文献4に記載の情報収集支援プログラムは、口座情報の入力を受け付けると、入力された口座情報を、金融機関に対応する認証システムに送信し、認証システムから口座情報に基づき認証が成功した旨の認証結果を受信した場合に、在留カード番号の入力を受け付ける画面を出力し、在留カード番号の入力を受け付けると、在留カード番号に基づき読み取り許可される、在留カードに記憶されたユーザの画像を含む情報を読み取るとともに、ユーザを含む撮影画像を撮影し、読み取った情報に含まれるユーザの画像と、撮影したユーザを含む撮影画像とに基づいて、顔照合処理を行う、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-085640号公報
【特許文献2】特開2020-107339号公報
【特許文献3】特開2022-039018号公報
【特許文献4】特開2021-144657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、日本国内に在住し、就労を希望する外国人労働者が増加している。また、外国人労働者を雇用したい雇用先企業も増加している。
しかし、就労を希望する外国人労働者は外国人労働者向けの雇用情報の入手が困難な場合があり、また、雇用先企業は就労を希望する外国人労働者の情報の入手が困難な場合がある。
また、外国人労働者が雇用先企業に就労を希望した場合、雇用先企業は確実に在留資格確認および本人確認を行う必要がある。
さらに、雇用先企業が外国人労働者を雇用した場合、毎日の勤怠管理においても本人確認を行う必要がある。
一方、外国人労働者は海外送金、借入などのために銀行口座開設などのサービスの提供を必要とするが、銀行などのサービス提供企業は、借入可否の判断等において、在留資格確認および本人確認に加えて、外国人労働者本人の勤怠実績および/または金融関連情報等に基づく信用スコアを必要とする。したがって、外国人労働者にとっても、勤怠実績および/または金融関連情報等に基づく信用スコアを提供することによって、借入等をスムーズに行うことができればその方が望ましい。
これらの、就労を希望する外国人労働者、外国人労働者を雇用したい雇用先企業、および外国人労働者にサービスを提供する企業に対して、的確な情報を提供する総合的な情報処理システムが必要である。
【0008】
特許文献1に記載の情報処理装置では、在留カードから取得された資格に関する情報に基づいて就労活動をする者に対する雇用の可否を判定する機能を備えているが、就労希望者の本人確認機能、および雇用した場合の毎日の勤怠管理における本人確認機能を備えておらず、別途本人確認が必要になる。
【0009】
特許文献2に記載の情報処理装置においても、雇用主と就労希望者とのマッチングを行うマッチング手段を備えてはいるが、就労希望者の本人確認機能、および雇用した場合の毎日の勤怠管理における本人確認機能を備えておらず、別途本人確認が必要になる。
【0010】
特許文献3に記載の管理支援装置では、金融機関における、外国人口座の開設や当該口座の管理等のための管理支援装置であって、在留カードの情報、及び在留カード以外の当該外国人顧客の属性情報を入力して、当該外国人顧客候補に関する金融犯罪の発生確率を推定するものである。
特許文献3に記載の管理支援装置は、就労を希望する外国人労働者と外国人労働者を雇用したい雇用先企業との仲介機能を備えておらず、また、本人確認機能も備えていない。また、属性情報については、「窓口での面談や過去の取引履歴等で得られる、在留カード以外の情報」(明細書段落[0024]参照)とされており、属性情報には外国人顧客の信用スコアにおいて重要な勤務先での勤怠に関する情報が含まれていない。
【0011】
特許文献4に記載の情報収集支援プログラムは、在留外国人の口座管理のために、在留カードの読み取りおよび画像撮影による本人確認を行う機能を備えている。しかし、就労を希望する外国人労働者と外国人労働者を雇用したい雇用先企業との仲介機能は備えていない。
【0012】
以上のように、従来技術では、就労を希望する外国人労働者、外国人労働者を雇用したい雇用先企業、および外国人労働者にサービスを提供する企業が必要とする機能のうちの一部の機能しか備えておらず、就労を希望する外国人労働者と外国人労働者を雇用したい雇用先企業との仲介機能、就労希望者の本人確認機能、雇用した場合の毎日の勤怠管理における本人確認機能、外国人労働者本人の勤怠実績および/または金融関連情報等に基づく信用スコアの提供機能などを総合的に提供できる情報処理システムはなかった。
【0013】
本発明の第1の目的は、就労を希望する外国人労働者に対してeKYCによる本人認証を行うとともに、雇用または就労後の出勤時においてeKYC時のデータに基づいて本人確認を行うことのできる情報処理システムを提供することにある。
本発明の第2の目的は、外国人労働者の雇用または就労後において、eKYC時の本人認証で取得した情報と出勤情報とに基づいて就労違反の有無を確認することのできる情報処理システムを提供することにある。
本発明の第3の目的は、就労を希望する外国人労働者と雇用を希望する企業との間のマッチングを支援することのできる情報処理システムを提供することにある。
本発明の第4の目的は、外国人労働者の雇用後において、当人の勤怠情報および/または金融関連情報に基づいて信用スコアを算出し、外国人も対象とするサービス展開業者に信用スコアを含む信用情報を提供することのできる情報処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)
一局面に従う情報処理システムは、外国人労働者を対象とする情報処理システムであって、雇用を希望する外国人労働者の利用者端末と、雇用先または就労先の企業に備えられた企業端末と、企業に備えられた認証装置と、利用者端末、企業端末、認証装置と相互にネットワークで接続されたサーバーと、を含み、利用者端末は、利用者が雇用を希望する場合、サーバーと協働して在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのうちの少なくともいずれか1つを用いてeKYCにより本人認証を行う機能を備え、サーバーは、利用者端末と協働して在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのうちの少なくともいずれか1つを用いてeKYCにより本人認証を行う機能と、本人認証に成功した場合には利用者の本人認証の結果を企業端末に送信する機能と、を備え、認証装置は、雇用された、または就労した利用者に対して、eKYCの本人認証時の顔容貌画像と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行う機能を備える。
【0015】
近年、日本国内に在住し、就労を希望する外国人労働者、および外国人労働者を雇用したい雇用先企業が増加している。
外国人を採用するにあたっては、採用時に、在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのうちの少なくともいずれか1つを用いてeKYCによる本人認証をおこなうことで、採用希望者が、在留カード等に記載された当人であることを確認することはできる。しかし、外国人労働者の場合、雇用または就労後において、在留カードに記載された当人とは異なる人が入れ替わって出勤してくるとのトラブルもあり、このようなトラブルを防止することが重要である。
しかし、従来の外国人労働者向けの雇用仲介システム等では、仲介時の本人認証機能と雇用後の出勤時の本人確認の機能とを連携した雇用仲介システムは存在しない
一局面に従う情報処理システムは、就労を希望する外国人労働者に対してeKYCによる本人認証を行うとともに、雇用または就労後の出勤時においてeKYC時のデータに基づいて本人確認を行うことにより、労働者の入れ替わりなどのトラブルを未然に防止することができる。
なお、利用者端末は、例えば、アプリケーションをインストールしたスマートフォンであってもよい。また、本情報処理システムを活用するために、Facebookのダイレクトメール等を利用して、外国人労働者にこの情報処理システムを周知することが望ましい。
また、雇用先企業または就労先企業に関して補足説明すると、雇用先企業とはその企業内部で直接労働者が業務を担当する場合の企業に相当し、就労先企業とは派遣労働者の場合などのように雇用先企業とは別の企業で業務を担当する場合の企業に相当する。
【0016】
(2)
第2の発明に係る情報処理システムは、一局面に従う情報処理システムにおいて、さらに労務管理機能を含み、認証装置は出勤時の本人確認に基づく出勤情報をサーバーに送信し、サーバーは、認証装置から出勤情報を受信して蓄積し、eKYCの本人認証で取得した情報と出勤情報とに基づき就労違反の有無を確認し、結果を企業端末および/または認証装置に送信してもよい。
【0017】
外国人労働者の就労に関しては、就労先の業務内容に対して、就労可能な業務であるかどうか、または、就労時間に制限があるかどうか、などの複雑な規制があり、eKYCの本人認証で取得した情報と出勤情報とに基づき就労違反の有無を確認する必要がある。さらにこれらの規制に関して、場合によっては、所轄官庁のホームページあるいはデータベースで確認する必要がある。
第2の発明に係る情報処理システムでは、eKYCの本人認証で取得した情報に対応する規制と出勤情報とに基づき就労違反の有無を確認することにより、確率にかつ効率よく外国人労働者の労務管理を行うことができる。
【0018】
(3)
第3の発明に係る情報処理システムは、一局面に従う情報処理システムにおいて、さらに就労支援機能を含み、利用者端末は、サーバーに蓄積された外国人労働者向けの雇用情報を閲覧する機能と、利用者の雇用希望をサーバーに登録する機能とを備え、サーバーは、企業の雇用情報を蓄積するとともに、利用者の雇用希望および就労可否を含む本人認証の結果を企業端末に送信し、企業端末から回答を受信した場合には企業の回答を利用者端末に送信してもよい。
【0019】
近年、就労を希望する外国人労働者、および外国人労働者を雇用したい雇用先企業が増加している。これに伴い、外国人労働者向けの就労支援サイトも増加している。しかし、従来の外国人向け就労支援サイトでは、例えば在留カードに記載されている人とは別の人が採用面談に参加したり、または、採用面談に参加した人は在留カードに記載されている人であるが、採用後の出勤開始時には別の人が出勤してきたりする場合があった。また、雇用先企業の担当者が在留カードに記載された情報を見ても、その在留カードの持ち主が雇用先または就労先企業が募集している業務に就労可能かどうかが分からない場合もあった。
第3の発明に係る情報処理システムでは、eKYCによって外国人労働者の本人認証を確実に行い、かつ、本人認証時に取得した情報に基づき、その外国人労働者が募集している業務に就労可能かどうかを確認したうえで、就労を希望する外国人労働者を雇用先企業に紹介するため、確実でかつ効率よく就労を希望する外国人労働者の情報を入手することができる。
また、就労を希望する外国人労働者は、スマートフォンなどの利用者端末で雇用情報を閲覧し、希望する雇用先が見つかった場合、eKYCにより本人認証を行い、雇用希望をサーバーに登録するだけで、雇用希望企業に確実に紹介してもらえるため、安心して就職活動をすることができる。
【0020】
(4)
第4の発明に係る情報処理システムは、第2の発明に係る情報処理システムにおいて、さらに信用情報提供機能を含み、サーバーは、利用者の許諾のもとに、出勤情報に基づいて信用スコアを計算し、外国人も対象とするサービス展開業者に信用スコアを含む信用情報を提供してもよい。
【0021】
日本国内在住の外国人労働者が銀行口座の開設などを希望する場合、従来は、在留カードの読み取りおよび本人の容貌画像により本人認証を行っていた。しかし、この場合、本人認証が正しくできても、開設した口座が、その後の口座売買またはマネーロンダリング等の不正取引に悪用されるリスクが存在する。そして、銀行など外国人も対象とするサービス展開業者の側では、このようなリスクを避けるために、外国人の口座開設に二の足を踏む場合もある。
特許文献3に記載の管理支援システムでは、本人認証に加えて属性情報(窓口での面談や過去の取引履歴等で得られる、在留カード以外の情報)を利用することで口座が不正取引に悪用されるリスクを低減しようとしているが、口座開設時にこのような属性情報が入手できるとは限らない。
第4の発明に係る情報処理システムでは、利用者の出勤情報を受信し、出勤情報に基づいて信用スコアを算出して、本人の許諾のもとに信用スコアおよびその他の信用に関する事実情報を銀行などに提供することで、外国人労働者の口座開設、借入などをスムーズに行えるようにしている。
なお、提供する信用情報には、算出した信用スコアに加えて信用に関する事実情報も含まれる場合がある。
【0022】
(5)
第5の発明に係る情報処理システムは、一局面に従う情報処理システムにおいて、さらに信用情報提供機能を含み、サーバーは、利用者の許諾のもとに信用関連情報を取得し、信用関連情報に基づいて信用スコアを計算し、外国人も対象とするサービス展開業者に信用スコアを含む信用情報を提供してもよい。
【0023】
信用関連情報には、以下に列挙した類型の情報が含まれる。
勤務情報としては、勤務日数、勤務時間、遅刻回数、無断欠勤回数などが含まれる。
雇用情報としては、雇用先、雇用開始日、雇用終了日、雇用形態などが含まれる。
資格情報としては、国家資格、民間資格、在留資格などが含まれる。
滞在情報としては、国内滞在歴、在留資格取得歴、在留期限、国外滞在歴などが含まれる。
金融情報としては、預貯金額、保有する金融資産、保有する実物資産、借入先、借入履歴、返済履歴、借入残高、振込先、振込履歴、個人年収、世帯年収などが含まれる。
住居情報としては、居住先、居住形態、居住開始日、居住終了日などが含まれる。
家族情報としては、世帯主との続柄、配偶者の有無、扶養人数などが含まれる。
第5の発明に係る情報処理システムでは、これらの信用関連情報を広く取得し、信用スコア算出に利用することで、信用スコアの精度を向上させることができる。
【0024】
(6)
第6の発明に係る情報処理システムは、第4または第5の発明に係る情報処理システムにおいて、サーバーは、機械学習を用いた信用スコア計算部を備え、複数の外国人労働者の信用関連情報の少なくとも一部とトラブルの有無とを教師データとして入力して信用スコア計算部に学習させ、利用者の信用関連情報の少なくとも一部を学習後の信用スコア計算部に入力し、トラブル発生の確率を含む信用スコアを算出してもよい。
【0025】
サーバーは、外国人労働者の信用関連情報の少なくとも一部とトラブルの有無およびトラブルの種類とを教師データとして入力して信用スコア計算部に学習させ、学習後の信用スコア計算部に利用者の信用関連情報の少なくとも一部を入力してトラブル発生の確率を含む信用スコアを算出する。
信用スコア計算部に入力する信用関連情報としては、上に列挙した類型の情報の少なくとも一部が含まれる。ただし、利用者の出勤情報は雇用先または就労先の認証装置から確実に受信でき、かつ、信用関連情報として重要であることから、出勤情報のみを用いて信用スコアに計算してもよい。なお、信用スコア計算部への入力として、どの信用関連情報を選択するかについては、信用関連情報の入手の容易さ、信用情報の提供先、信用情報提供の目的などに基づいて適宜選択される。
信用スコア計算部の出力としては、例えば、開設口座によるマネーロンダリングのリスク、住居賃貸または保険加入後のトラブル発生のリスク、ローン許諾後の返却遅れ貸し倒れのリスクなどが挙げられる。
信用スコアを算出する機械学習の信用スコアリングモデルとしては、例えばGBDT(Gradient Boosting Decision Tree)、ニューラルネットワークなどを用いることができる。
【0026】
(7)
第7の発明に係る情報処理システムは、一局面に従う情報処理システムにおいて、前記サーバーは、eKYCの本人認証部を備え、利用者端末が撮影した利用者の顔容貌画像と在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのうちの少なくともいずれか1つから読み出した顔容貌画像とが一致しているかどうかを判定する第1認証と、利用者の動作を必要としないパッシブ認証、および/または、利用者の動作を必要とするアクティブ認証によって撮影された顔容貌画像が現実在の人の顔容貌画像であることを判定する第2認証と、を有し、第1認証および第2認証の両方で認証に成功した場合に、利用者が在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのうちの少なくともいずれか1つに記載されている本人であると認証してもよい。
【0027】
利用者端末が撮影した利用者の顔容貌画像と在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのうちの少なくともいずれか1つから読み出した顔容貌画像とが一致しているかどうかを判定する第1認証だけで、利用者が在留カードなどに記載されている本人であると認証した場合、利用者端末が在留カードに記載されている本人の写真を撮影することによって、利用者が在留カードなどに記載されている本人でないにもかかわらず本人であると認証してしまう可能性がある。
第7の発明に係る情報処理システムでは、第1認証の後に、利用者の動作を必要としないパッシブ認証、および/または、利用者の動作を必要とするアクティブ認証によって撮影された顔容貌画像が現実在の人の顔容貌画像であることを判定する第2認証を行うことで、利用者端末が在留カードに記載されている本人の写真を撮影する等による誤認証を回避することができる。
なお、パッシブ認証としては、例えば所定の時間動画を撮影して瞬きの有無を調べる、スマートフォンの画面からフラッシュを投射し、フラッシュによる顔の反射内容から真贋判定を行うなどの方法がある。また、アクティブ認証としては利用者に所定の動作を要求した後に撮影した利用者の顔容貌画像と最初に撮影した利用者の顔容貌画像とを比較し、要求した所定の動作を利用者が行ったかどうかを判定する、などの方法がある。しかし、本発明は上記認証方法には限定されない。
【0028】
(8)
第8の発明に係る情報処理システムは、一局面に従う情報処理システムにおいて、利用者端末は、カメラ、ディスプレイ、近距離通信(NFC)、および無線または有線の通信装置を備え、利用者が本人認証を希望する場合には、近距離通信で在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのうちの少なくともいずれか1つのデータを読み取るとともにカメラで利用者の顔画像を撮影して、データと利用者の顔画像とを通信装置を介してサーバーに送信し、サーバーから利用者への動作指示を受信した場合には、利用者に動作を指示し、指示後の利用者の顔画像を撮影して、サーバーに送信し、サーバーから本人認証成功を受信した場合には、本人認証成功をディスプレイに表示してもよい。
【0029】
この場合、在留カードに記録された顔画像と撮影した利用者の顔画像との一致を確認したうえで、アクティブ認証の場合には、例えば指示後の利用者の顔画像の変化と指示内容との一致を確認することで、撮影した利用者の顔画像が利用者の写真を撮影したものでないこと、すなわち、利用者が在留カードに記載された在留者本人であることが確認できる。また、利用者の動作を必要としないパッシブ認証によって撮影された顔容貌画像が現実在の人の顔容貌画像であることを判定してもよい。
また、第8の発明に係る情報処理システムの利用者端末の機能は、標準的なスマートフォンに搭載されているため、本情報処理システム用のアプリをスマートフォンにインストールすることで利用者端末として使用することができる。また、利用者端末は音声出力を備えてもよい。この場合は、利用者に対する指示などを音声出力を用いて行うことができる。
【0030】
(9)
第9の発明に係る情報処理システムは、一局面に従う情報処理システムにおいて、認証装置は、カメラ、本人確認部、記憶部、および通信部を備え、本人確認部は、カメラで出勤者の顔容貌画像を撮影し、記憶部に記憶されたeKYCの本人認証時の顔容貌画像を含む情報と比較することによって出勤者がeKYCで認証された本人であるかどうかを確認してもよい。
【0031】
この場合、出勤するたびに、eKYC本人認証時の顔容貌画像を、出勤者の顔容貌画像と比較するため、雇用後における、eKYC本人認証時と異なる外国人労働者によるなりすまし出勤などのリスクを回避することができる。
なお、出勤時の本人確認において用いられる基準となる顔容貌画像は、雇用開始時はeKYCによる認証時に撮影した顔容貌写真を用いることになるが、雇用期間が所定の期間を超えた場合には、再度eKYCを行って撮影した顔画像、または出勤の本人確認時に撮影した顔容貌画像など、より最近の顔容貌画像を基準画像とすることが望ましい。基準画像を更新する期間としては、例えば、雇用開始から1年、または、新たな会計年度の開始時などが挙げられる。
【0032】
以下に、本特許の優先権出願(特願2023-23103)における、課題を解決するための手段の記載を転記する。なお、例えば(1a)は優先権出願時における請求項1に係る発明に対応し、(2a)は請求項2に係る発明に対応する。
【0033】
(1a)
第1aの発明に係る情報処理システムは、相互にネットワークで接続された利用者端末とサーバーと雇用先企業端末と勤怠管理装置とで構成される、日本国内在住の外国人労働者を対象とする情報処理システムであって、利用者端末は、サーバーに蓄積された外国人労働者向けの雇用情報を閲覧する機能と、利用者が雇用を希望する場合には、サーバーと協働して在留カードを用いてeKYCにより本人認証を行う機能と、利用者の雇用希望および本人認証結果をサーバーに登録する機能とを備え、サーバーは、雇用先企業の雇用情報を蓄積するとともに、利用者端末から雇用希望を受信した場合には利用者端末と協働して在留カードを用いてeKYCにより本人認証を行う機能と、本人認証に成功した場合には利用者の雇用希望および本人認証結果を雇用先企業端末に送信し、雇用先企業端末から回答を受信した場合には雇用先企業の回答を利用者端末に送信する機能とを備え、雇用先企業端末は利用者の雇用希望および本人認証結果をサーバーから受信し、利用者の雇用希望に対する回答をサーバーに送信する機能を備え、勤怠管理装置は雇用先企業に配置され、利用者を雇用した場合、在留カードと本人認証結果と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行う機能と、勤怠管理の機能とを備える。
【0034】
(2a)
第2aの発明に係る情報処理システムは、第1aの発明に係る情報処理システムにおいて、サーバーは勤怠管理装置から利用者の勤怠情報を受信し、利用者の許諾のもとに信用スコアを算出し、銀行および外国人向けサービス展開業者に信用スコアを提供してもよい。
【0035】
(3a)
第3aの発明に係る情報処理システムは、第2aの発明に係る情報処理システムにおいて、サーバーは、さらに、利用者の許諾のもとに、利用者の借入、前払および返済実績を含む金融関連情報を受信し、信用スコア算出に利用してもよい。
【0036】
(4a)
第4aの発明に係る情報処理システムは、第1aの発明に係る情報処理システムにおいて、サーバーは、eKYC本人認証部を備え、利用者端末が撮影した利用者の顔容貌画像と在留カードから読み出した顔容貌画像とが一致しているかどうかを判定する第1認証と、利用者に所定の動作を要求した後に撮影した利用者の顔容貌画像と最初に撮影した利用者の顔容貌画像とを比較し、要求した所定の動作を利用者が行ったかどうかを判定する第2認証とにおいてともに認証に成功した場合に、利用者が在留カードに記載されている本人であると認証してもよい。
【0037】
(5a)
第5aの発明に係る情報処理システムは、第1aの発明に係る情報処理システムにおいて、サーバーは、機械学習を用いた信用スコア計算部を備え、複数の外国人労働者の在留カード情報、勤怠情報および/または金融関連情報とトラブルの有無とを教師データとして入力して信用スコア計算部に学習させ、勤怠管理装置および/または金融機関から利用者本人の勤怠情報および/または金融関連情報を受信して学習後の信用スコア計算部に入力し、トラブル発生の確率を含む信用スコアを算出してもよい。
【0038】
(6a)
第6aの発明に係る情報処理システムは、第1aの発明に係る情報処理システムにおいて、利用者端末は、カメラ、ディスプレイ、音声出力、近距離通信(NFC)、および無線または有線の通信装置を備え、利用者が雇用を希望する場合には、近距離通信で在留カードのデータを読み取るとともにカメラで利用者の顔画像を撮影して、利用者の雇用希望と在留カードのデータと利用者の顔画像とを通信装置を介してサーバーに送信し、サーバーから利用者への動作指示を受信した場合には、ディスプレイまたは音声出力を介して利用者に動作を指示し、指示後の利用者の顔画像を撮影して、サーバーに送信し、サーバーから本人認証成功を受信した場合には、本人認証成功をディスプレイに表示してもよい。
【0039】
(7a)
第7aの発明に係る情報処理システムは、第1aの発明に係る情報処理システムにおいて、勤怠管理装置は、カメラ、近距離通信(NFC)、本人確認部、勤怠管理部、記憶部、および通信部を備え、本人確認部は、出勤者が勤怠管理装置に近接すると、近距離通信で出勤者の所持する在留カードのデータを読み取るとともにカメラで出勤者の顔容貌画像を撮影し、記憶部に記憶されたeKYC本人認証時の顔容貌画像を含む情報と比較することによって出勤者が在留カードを所持する本人であるかどうかを確認し、本人であることを確認できた場合は勤怠管理部に出勤情報を伝達してもよい。
【0040】
(8a)
第8aの発明に係る情報処理システムは、第1aの発明に係る情報処理システムにおいて、サーバーは、勤怠管理装置および/または金融機関から各利用者の勤怠情報および/または金融関連情報を受信して蓄積し、利用者端末は、サーバーより利用者本人の勤怠情報および/または金融関連情報を受信し、ディスプレイに表示する機能を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】第1の実施形態にかかる情報処理システムの構成の一例を示す模式図である。
図2】サーバーの構成の一例を示す模式図である。
図3】利用者端末の構成の一例を示す模式図である。
図4】勤務管理装置の構成の一例を示す模式図である。
図5】eKYCによる本人認証のフローチャートの一例を示す模式図である。
図6】勤怠管理装置による出勤時の本人確認のフローチャートの一例を示す模式図である。
図7】信用スコア計算部の機能の一例を示す模式図である。
図8】信用スコア計算のための教師データの一例を示す表である。
図9】第2の実施形態にかかる情報処理システムの構成の一例を示す模式図である。
図10】第2の実施形態のサーバーの構成の一例を示す模式図である。
図11】第2の実施形態の認証装置の構成の一例を示す模式図である。
図12】第2の実施形態のeKYCによる本人認証のフローチャートの一例を示す模式図である。
図13】第2の実施形態の認証装置による出勤時の本人確認のフローチャートの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0043】
[第1の実施形態]
本実施形態の情報処理システム100は、日本国内在住の外国人労働者を対象として、雇用先企業との仲介をするとともに、外国人労働者の雇用希望時および雇用後の勤怠管理における本人確認を行うことを目的とするものである。
なお、第1の実施形態は本特許の優先権出願(特願2023-23103)における実施形態であり、課題を解決するための手段に記載の第1aの発明から第8aの発明までに対応する。
【0044】
(情報処理システム100の構成)
図1は本実施形態における情報処理システム100の構成の一例を示す模式図であり、図2は利用者端末20の構成の一例を示す模式図であり、図3はサーバー10の構成の一例を示す模式図であり、図4は勤怠管理装置40の構成の一例を示す模式図である。
【0045】
図1に示すように、情報処理システム100は、サーバー10、利用者端末20、雇用先企業端末30、勤怠管理装置40、および銀行などの金融機関端末50がネットワーク60に接続されて構成されている。なお、金融機関への信用スコアの提供および利用者端末20での口座残高等の金融関連情報の表示を行わない場合は、金融機関端末50とのネットワーク接続は無くてもよい。
【0046】
図2に示すように、サーバー10は、eKYC本人認証部11、信用スコア計算部12、記憶部13、制御部14、通信部15で構成されている。
eKYC本人認証部11は、利用者端末20と協働して、eKYCによる本人認証を行う。eKYCによる本人認証の詳細については後述する。
信用スコア計算部12は、機械学習機能を備え、複数の外国人労働者の在留カード情報、勤怠情報および/または金融関連情報とトラブル発生の有無とを教師データとして学習する。
【0047】
そして、学習した信用スコア計算部12は、利用者端末20から受信した利用者の在留カード情報、勤怠管理装置40から受信した利用者の勤怠情報、および/または金融機関から受信した利用者の金融関連情報を入力して、利用者について、住居賃貸、保険加入、借入の可否などに関する信用スコアを計算する。なお、借入の可否など金融機関に提供する信用スコアを計算しない場合は、利用者の金融関連情報に関する教師データを用いた学習はしなくてもよい。また、信用スコア計算の詳細については後述する。
【0048】
記憶部13は利用者の本人認証に関する情報、勤怠に関する情報、および金融関連情報を記憶する。制御部14はCPU(中央演算処理装置)を備え、eKYC本人認証部11および信用スコア計算部12等を制御する。なお、eKYC本人認証および信用スコア計算は、制御部14のCPUと記憶部13のメモリーとソフトウエアとにより実行してもよい。通信部15はネットワーク60を介した通信を行う。
【0049】
図3に示すように、利用者端末20は、カメラ21、ディスプレイ22、入力装置23、近距離通信(NFC)24、音声出力25、記憶部26、制御部27、通信部28で構成されている。
カメラ21は、eKYC本人認証時に顔容貌を撮影する。
ディスプレイ22は、利用者に情報処理システム100の使用方法を表示するとともに、eKYC本人認証時の顔の向きを変えるなどの動作指示の表示、本人認証結果の表示、雇用先企業の雇用可否の表示、利用者の勤怠情報および/または金融関連情報の表示などを行う。なお、eKYC本人認証時の動作指示は音声で行ってもよく、その場合は、音声出力25を用いる。また、ディスプレイ22は、本人認証成功または失敗などの情報を受信した場合、それらの情報を表示する。
【0050】
入力装置23は、eKYC本人認証時に必要な情報の入力、雇用希望の入力などを行う。入力装置23はタッチディスプレイのタッチ機能を利用してもよい。
近距離通信(NFC:Near Field Communication)24は、eKYC本人認証時、在留カードを読み取る。
通信部28は無線または有線通信により、ネットワーク60に接続する。
利用者端末20の機能は、例えば、近距離通信24を備えたスマートフォンに本情報処理システム用のアプリをインストールすることで実現できる。
【0051】
図4に示すように、勤怠管理装置40は、カメラ41、近距離通信(NFC)42、本人確認部43、勤怠管理部44、記憶部45、制御部46、通信部47で構成されている。
勤怠管理装置40は雇用先企業に配置され、企業の人事管理システムに接続されるとともに、雇用先企業端末30を介してサーバー10に接続されている。勤怠管理装置40の記憶部45には、サーバー10から送信された、各外国人労働者の顔容貌画像のデータと在留カードから読み取った在留カード所持者の顔容貌画像を含むデータとが保存されている。
【0052】
利用者の出勤退勤時、本人確認部43は、近距離通信42で在留カードを読み取るとともに、カメラ41で利用者の顔容貌を撮影し、サーバー10から提供された、eKYC認証時に撮影した顔容貌映像を含む利用者情報と比較することで利用者本人であることを確認して勤怠管理部44に出勤情報を伝達する。
勤怠管理部44は、本人確認部43の出勤情報をもとに、勤怠を管理し、勤怠情報を企業の人事管理システムに送信する。また、勤怠管理部44は雇用先企業端末30を介してサーバー10にも利用者の勤怠情報を提供してもよい。
【0053】
(eKYCによる本人認証のフロー)
図5に、eKYCによる本人認証のフローチャートの一例を示す。
利用者が外国人労働者向けの雇用情報を閲覧し、雇用を希望する場合に、サーバー10は利用者端末20を介してeKYCによる本人認証を行うよう要請する。
利用者がeKYCによる本人認証を希望すると(ステップS1)、利用者端末20は在留カードを提示するよう案内し、近距離通信24で在留カードのデータを読み取る(ステップS2)。
【0054】
在留カードには、例えば氏名、生年月日、性別、国籍、地域、住居地、在留資格、在留期間、就労制限の有無、許可の種類、許可年月日、交付年月日等の情報が記録されている。また、在留カード所持者の顔容貌画像データも含まれている。
外国人労働者の場合、在留資格、就労制限などによっては雇用先企業の期待する仕事に就けない場合もある。本発明の情報処理システム100では、在留カードから必要な情報を読み出すことによって確実に就労希望者が雇用先企業の期待する仕事に就けることを確認することができる。
【0055】
次に、利用者端末20は、利用者を誘導してカメラ21で利用者の顔容貌を撮影する(ステップS3)。この場合、利用者端末20はディスプレイ22に、カメラ21で撮影した利用者の画像と望ましい利用者の顔の位置および向きを示すフレームとを表示してもよい。
撮影が終わったら、利用者端末20は通信部28からネットワーク60を介して、サーバー10に利用者の顔容貌画像のデータと在留カードから読み取った在留カード所持者の顔容貌画像を含むデータを送信する(ステップS4)。
【0056】
利用者の顔容貌画像と在留カードから読み取ったデータを受信したサーバー10は、第1認証として、撮影した利用者の顔容貌画像と在留カードから読み取った顔容貌画像とを比較する(ステップS5)。第1認証においては、在留カードに記録されている氏名他の情報に不審な点がないかについても確認することが望ましい。
【0057】
第1認証において、顔容貌画像が一致しない場合、あるいは、在留カードから読み取ったデータに不審な点があり、第1認証に失敗した場合は、サーバー10は利用者端末20に、もう一度在留カードの読み取りから認証作業を再開するよう伝達する(ステップS6)。なお、この第1認証の繰り返しは所定の回数以下とし、所定の回数以内に第1認証に成功しない場合は第1認証不成功とすることが望ましい。
【0058】
ステップS6において第1認証に成功した場合は、サーバー10は利用者端末20に第1認証成功を伝達するとともに利用者に所定の動作を要求するよう指示する(ステップS7)。なお、利用者に要求する所定の動作は複数であることが望ましい。
利用者端末20はディスプレイ22または音声出力25を介して、利用者に所定の動作をするよう指示する(ステップS8)。所定の動作とは、例えば、顔を右、あるいは左に向ける、視線を右、あるいは左に向ける等の動作である。
【0059】
利用者端末20は利用者に所定の動作をするよう指示してから所定の時間経過後に、カメラ21で再度利用者の顔容貌を撮影する(ステップS9)。なお、ステップS8およびステップS9は利用者に指示する動作を変更して複数回繰り返すことが望ましい。
利用者の顔容貌の撮影が終わったら、利用者端末20は撮影した利用者の顔容貌データをサーバー10に送信する(ステップS10)。
【0060】
サーバー10は受信した利用者の顔容貌データをステップS4で受信した顔容貌データと比較し、第2認証として、指示した所定の動作が行われているかどうかを判定する(ステップS11)。
第2認証において、指示した所定の動作が行われていない場合は、サーバー10は利用者端末20にもう一度動作要求を送信し(ステップS7)、動作要求指示(ステップS8)から認証作業を再開するよう伝達する(ステップS12)。なお、この第2認証の繰り返しも所定の回数以下とし、所定の回数以内に第2認証に成功しない場合は第2認証不成功とすることが望ましい。
第2認証において指示した所定の動作が行われていると判断された場合には、利用者は在留カードに記載された外国人本人であると判断する。すなわち本人認証成功である。
【0061】
(勤怠管理装置40による出勤時の本人確認のフロー)
図6に、勤怠管理装置40による出勤時の本人確認のフローチャートの一例を示す。
勤怠管理装置40はカメラ41またはその他のセンサーで出勤者が近接しているかどうかを確認する(ステップS21)
【0062】
出勤者が近接している場合には、勤怠管理装置40は近距離通信42で出勤者が所持する在留カードを読み取るとともに(ステップS22)、カメラ41で出勤者の顔容貌を撮影する(ステップS23)。勤怠管理装置40は、カメラ41で撮影した出勤者の顔容貌を、記憶部45に保存している、eKYCによる本人認証時に撮影した出勤者の顔容貌と比較し、同一人物であるかどうかを判断する(ステップS24)。同一人物でないと判断した場合は、再度在留カードの読み取り(ステップS22)から認証作業を再開する(ステップS25)。なお、認証作業によるエラーは少ないと思われる場合には、繰り返し回数を少なくする、または1度目の認証不成功で認証不成功としてもよい。
【0063】
ステップS25で認証に成功した場合には勤怠管理部44において出勤を登録する(ステップS26)。
毎日の出勤時に上記のフローで出勤登録することにより、eKYC本人認証時と異なる外国人労働者によるなりすまし出勤などのリスクを未然防止することができる。
【0064】
勤怠管理装置40は、退勤時においても、同様のフローで退勤を登録する。ただし、出勤時に上記のフローで出勤登録した場合には、退勤時はなりすましの可能性が低くなるので在留カードの読み取りだけで退勤登録をしてもよい。
また、ステップS24の認証において用いられる基準となる顔容貌画像は、雇用開始時はeKYCによる認証時に撮影した顔容貌画像を用いることになるが、雇用期間が所定の期間を超えた場合には、出勤の本人確認時に撮影した顔容貌画像など、より最近の顔容貌画像を基準画像とすることが望ましい。基準画像を更新する期間としては、例えば、雇用開始から1年、または、新たな会計年度の開始時などが挙げられる。
【0065】
(信用スコア計算部12の構成と機能)
図7は、信用スコア計算部12の構成と機能を示す模式図であり、図8は、信用スコア計算部12の学習に用いる教師データの一例を示す表である。
【0066】
信用スコア計算部12は、機械学習機能を備え、複数の外国人労働者の在留カード情報(または在留資格情報)、勤怠実績情報および/または金融関連情報と住居賃貸トラブル、保険加入トラブル、借入トラブルなどの有無とのデータを教師データとして学習する。
また、学習後は、学習済みの機械学習機能を用いて、複数の外国人労働者の在留カード情報、勤怠実績情報および/または金融関連情報を入力して、住居賃貸リスク、保険加入リスク、および/または借入リスクの予測値を計算し、出力する。
【0067】
信用スコア計算部12の学習には、例えば図8の表のような教師データを用いることができる。
すなわち、例えば、外国人労働者の、在留期間、留学在留資格の有無(1は留学在留資格あり)、日本人配偶者の有無などの在留カード情報、勤務年数、勤務時間、遅刻回数、無断欠勤回数などの勤怠実績情報、および、振込金額、振込回数、振込先リスク度(例えば0~3段階でカウント)、借入、前払および返済実績などの金融関連情報と、該当する外国人労働者の、住居賃貸トラブルの有無、保険加入トラブルの有無、および借入トラブルの有無などの実績のデータとを収集し、信用スコア計算部12に学習させる。
【0068】
なお、図8の表では、在留カード情報、勤怠実績情報、金融関連情報と、住居賃貸トラブル、保険加入トラブル、借入トラブルの有無のすべてのデータが記載されているが、例えば、在留カード情報、勤怠実績情報、および住居賃貸トラブルのみが記載された教師データを用いて信用スコア計算部12を学習させてもよい。この場合は、信用スコア計算部12は住居賃貸トラブルの発生確率のみを予測することができる。
【0069】
教師データを用いて学習させた信用スコア計算部12は、外国人労働者の在留カード情報、勤怠実績情報、および/または金融関連情報を入力することにより、該当する外国人労働者の住居賃貸リスク、保険加入リスク、および/または借入リスクの予測値を計算することができる。
【0070】
なお、これら、在留カード情報、勤怠実績情報、および金融関連情報は個人情報に相当することから、信用スコア計算部12にこれらの情報を入力して計算させること、および計算結果の住居賃貸リスク、保険加入リスク、および借入リスクを不動産仲介業者、保険会社、または金融機関に提供することについては、外国人労働者本人の許諾のもとに行うことが必要である。
【0071】
信用スコア計算部12で用いる機械学習の種類は特に限定されないが、例えば、GBDT(Gradient Boosting Decision Tree)、ニューラルネットワークなどが挙げられる。
GBDTとは「勾配降下法(Gradient)」と「Boosting(アンサンブル)」、「決定木(Decision Tree)」を組み合わせた手法であり、澤木太郎他著の「機械学習による中小企業の信用スコアリングモデルの構築」(https://sigfin.org/?plugin=attach&refer=019-04&openfile=SIG-FIN-019-04.pdf)において、もっとも予測精度が高く、有効な方法であるとされている。
【0072】
一方、ニューラルネットワークは、脳内の神経細胞(ニューロン)のネットワーク構造を模した数学モデルであり、相互に接続する複数ノードからなる多層で構築されている。上記資料によれば、GBDTと比較した場合、予測精度が少し劣るとされている。しかし、ニューラルネットワークは学習モデルの構築が容易であることから、機械学習への入力および出力のバリエーションが多い本実施形態の信用スコア計算部12に用いるには好適である。
何れの方法を用いるにせよ、重要な点は多くの教師データを集積することであり、本発明の情報処理システム100においても、多くの外国人労働者、雇用先企業、および銀行などの外国人向けサービス展開業者に本発明の情報処理システム100を利用してもらい、データを蓄積することが望ましい。
【0073】
(利用者端末の追加機能)
サーバー10は、勤怠管理装置40より利用者の勤怠情報を入手し、蓄積している。また、利用者の信用スコアを計算する場合には、サーバー10は金融機関端末50から銀行口座残高など利用者の金融関連情報を入手し、蓄積している。
一方、利用者は、自分の勤怠情報および/または金融関連情報を知りたい場合がある。しかし、これらの情報は重要な個人情報であるため、サーバー10は容易には提供することができない。
【0074】
しかし、本発明の利用者端末20は、eKYC本人認証に用いられた端末であり、在留カードを所持する本人が使用する端末であることが確認されているため、利用者が本人の勤怠情報および/または金融関連情報の提供を希望した場合、それらの情報を提供してもセキュリティ面でのリスクが少ない。
【0075】
以上のように、本発明によれば、外国人労働者と雇用先企業との仲介をするとともに、外国人労働者の雇用希望時および雇用後の勤怠管理における本人確認を行うことができる。また、外国人労働者の雇用後において、当人の勤怠情報および/または金融関連情報に基づいて信用スコアを算出し、銀行および外国人向けサービス展開業者に提供することができる。
【0076】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は第1の実施形態の変形例であり、本発明の特許請求の範囲に対応する実施例である。
以下、第2の実施形態の第1の実施形態との主な違いを列挙する。
(a)第1の実施形態では、eKYCによる本人認証機能および出勤時の本人確認機能と勤怠などの労務管理機能、就労支援機能、および信用情報提供機能と一体となっているが、第2の実施形態では、eKYCによる本人認証機能および出勤時の本人確認機能を基本機能とし、労務管理機能、就労支援機能、および信用情報提供機能はそれぞれユニット化されて必要に応じて追加できるように構成されている。
なお、eKYCに用いることのできる身分証明書は、第1の実施形態では在留カードのみであるが、第2の実施形態では、在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのうちの少なくともいずれか1つである。
【0077】
(b)第1の実施形態では、在留カードと本人認証結果と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行うこととしているが、第2の実施形態では在留カードのチェックは必須ではなく、eKYCの本人認証時の顔容貌画像と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行う。
(c)第1の実施形態では企業側に勤怠管理装置40があり、就労者の勤怠を管理しているのに対して、第2の実施形態ではサーバー10aに労務管理ユニット16があり、企業側の勤怠管理は必須ではない。
【0078】
(d)第1の実施形態ではeKYCによる本人認証の顔容貌画像が現実在の人の顔容貌画像であることを判定する第2認証は利用者の動作を必要とするアクティブ認証に限定しているが、第2の実施形態では第2認証を、利用者の動作を必要としないパッシブ認証、および/または、前記利用者の動作を必要とするアクティブ認証としている。
(e)第1の実施形態では、利用者の勤怠情報、および/または利用者の借入、前払および返済実績を含む金融関連情報を用いて信用スコアを算出し、銀行および外国人向けサービス展開業に提供しているが、第2の実施形態では、利用者の出勤情報、または、利用者の信用関連情報の少なくとも一部を用いて信用スコアを算出するとともに、外国人も対象とするサービス展開業者に、算出した信用スコアだけでなく信用に関わる事実情報も提供する。
【0079】
以下、第2の実施形態の第1の実施形態からの変更点について、図を用いて具体的に説明する。
図9は第2の実施形態にかかる情報処理システム100aの構成の一例を示す模式図であり、第1の実施形態の図1に対応する。第2の実施形態の情報処理システム100aでは、サーバー10aの機能が第1の実施形態のサーバー10と異なり、また、第1の実施形態の勤怠管理装置40が認証装置40aに置き換えられている。それぞれの変更内容の詳細については後述する。
【0080】
(サーバー10aの構成と機能)
図10は第2の実施形態のサーバー10aの構成の一例を示す模式図であり、第1の実施形態の図2に対応する。図10では、制御部14aに労務管理ユニット16、就労支援ユニット17および信用情報提供ユニット18を設けた。それぞれのユニットはオプショナルであり、必要に応じてソフトウエア等を追加することによりサーバー10aに機能を追加することができる。それらのユニットを追加しない場合は、サーバー10aはeKYCによる本人認証機能および出勤時の本人確認機能のみを備える。
【0081】
このうち、eKYCによる本人認証機能に関しては、第1の実施形態では第2認証は利用者の動作を必要とするアクティブ認証のみが利用可能であるが、第2の実施形態では第2認証として利用者の動作を必要としないパッシブ認証、および/または、前記利用者の動作を必要とするアクティブ認証が利用可能である。
また、出勤時の本人確認機能に関しては、第1の実施形態では、在留カードと本人認証結果と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行うこととしているが、第2の実施形態では在留カードのチェックは必須ではなく、eKYCの本人認証時の顔容貌画像と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行う。
【0082】
労務管理ユニット16は、認証装置40aから出勤情報を受信して蓄積し、eKYCの本人認証で取得した情報と出勤情報とに基づき就労違反の有無を確認し、結果を企業端末30および/または認証装置40aに送信する。したがって、労務管理ユニット16は勤怠装置の機能と就労違反の有無の確認機能を備える。
【0083】
外国人労働者の就労に関しては、就労先の業務内容に対して、就労可能な業務であるかどうか、または、就労時間に制限があるかどうか、などの複雑な規制があり、eKYCの本人認証で取得した在留カードなどの情報と出勤情報とに基づき就労違反の有無を確認する必要がある。さらにこれらの規制に関しては、場合によっては、所轄官庁のホームページあるいはデータベースで確認する必要がある。これらの記載事項および追加の情報を雇用先または就労先で収集し、出勤情報と比較して就労違反の有無を確認するには時間を要する。。
【0084】
第2の実施形態の労務管理ユニット16は、eKYCの本人認証で取得した在留カードなどの情報に基づき就労(就業)可能業務、就労(就業)時間制限等の情報を整理し、本人の出勤情報と比較して就労違反の有無を確認し、企業端末30および/または認証装置40aに送信する。就労違反の有無を認証装置40aに送信するのは、即時に就労を禁止するなどの対応が必要になる場合があるためである。
【0085】
就労支援ユニット17は、企業の雇用情報を蓄積し、利用者端末20から閲覧希望を受信した場合には企業の雇用情報を利用者端末20に送信し、利用者端末20から雇用希望を受信した場合にはeKYCによる本人認証を受けるよう誘導する。さらにeKYCによる本人認証に成功した場合には、利用者の雇用希望および就労可否を含む本人認証の結果を企業端末30に送信し、企業端末30から回答を受信した場合には企業の回答を利用者端末20に送信する。ただし、eKYCによる本人認証と雇用希望の企業端末への送信との順序に関しては上記に限定されない。例えば雇用希望を企業端末へ送信し、企業側から面談要請があった場合にeKYCによる本人認証を受けるよう誘導するようにしてもよい。
【0086】
従来の就労支援サイトでは、雇用希望者の情報を企業に紹介するのみであった。
例えば、本人認証または/および就労可否の確認が伴わず問題となったり、雇用面接時と就労(就業)開始時との労働者自身の入れ替わりが問題となったり、募集業務と就労可能業務とのミスマッチが問題となったりなど、種々の課題があった。
これに対して、就労支援ユニット17による就労支援では、eKYCによる本人認証とeKYCで取得した情報に基づく就労可否の確認を伴うため、このような課題を未然に防止することができる。
【0087】
信用情報提供ユニット18は、利用者の許諾のもとに、利用者の出勤情報および/または、信用関連情報に基づいて信用スコアを計算し、銀行など、外国人も対象とするサービス展開業者端末50aに信用スコアを含む信用情報を提供する。
【0088】
サービス展開業者端末50aは、これらの信用情報を受けることにより、口座開設、ローン許諾などの際における、開設口座によるマネーロンダリング、ローン返済遅れ、貸倒れなどのリスクを下げることができる。
また、利用者はこれらの信用情報を提供することにより、口座開設、ローン許諾などをスムーズに受けることができる。
【0089】
(認証装置40aの構成と機能)
図11は、第2の実施形態の認証装置40aの構成の一例を示す模式図であり、第1の実施形態の勤怠管理装置40(図4)に対応する。
認証装置40aを勤怠管理装置40と比較すると、勤怠管理部44および近距離通信42が認証装置40aにはない。
勤怠管理部44がないのは、第2の実施形態では出勤情報の管理がサーバー10aの労務管理ユニット16で行われるためである。もちろん、サーバー10aの労務管理ユニット16とは別に、企業が勤怠管理部44に相当する勤怠管理機能を設けてもよい。
【0090】
また、第2の実施形態の認証装置40aでは、eKYCの本人認証時の顔容貌画像と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行うことを基本とするが、第1の実施形態のように出勤時の本人確認において在留カードを近距離通信24で読出すようにしてもよいし、あるいは、企業独自の社員カードを利用者に持たせて近距離通信24で読出すようにしてもよい。このような場合には、認証装置40aにも近距離通信24を備える必要がある。
【0091】
(第2の実施形態のeKYCによる本人認証のフロー)
図12は第2の実施形態のeKYCによる本人認証のフローチャートの一例を示す模式図であり、第1の実施形態の本人認証のフローチャート(図5)に対応する。
第1の実施形態の本人認証では第2認証としてアクティブ認証を行うのに対して、第2の実施形態の本人認証では、第2認証としてパッシブ認証とアクティブ認証のうちのいずれかを選択して認証する点が異なる。これに伴い、図12のフローチャートでは、ステップS13~ステップS14が追加されている。
また、第1の実施形態ではeKYCによる本人認証のために読み取るカードが在留カードとなっているが(ステップS2)、第2の実施形態ではeKYCによる本人認証のために読み取るカードが在留カード等となっている(ステップS2a)。これは、第2の実施形態では、eKYCによる本人認証のために読み取るカードが、在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートのうちの少なくともいずれか1つに変更されているためである。
【0092】
その他のステップは図4の第1の実施形態の本人認証のフローチャートと同一であるため、ここではステップS13~ステップS14について説明する。
(ステップS13)第2認証としてアクティブ認証かパッシブ認証かを選択する。アクティブ認証の場合はステップS7の動作要求送信に、パッシブ認証の場合はステップS14のパッシブ第2認証に移る。
(ステップS14)パッシブ第2認証を実行する。パッシブ認証の具体的なフローはパッシブ認証方法によって異なる。例えば、瞬きの有無によって現実在の人の顔容貌画像であるかどうかを認証する場合には一定時間顔容貌の動画像を撮影する。また、スマートフォンの画面からフラッシュを投射し、フラッシュによる顔の反射内容から真贋判定を行う場合には、フラッシュの投射と顔容貌の撮影とをフラッシュの投射光の色を変えて何回か繰り返す。また、最近、画像処理技術の知見をもとにした高水準の品質判定を撮影時に行い、撮影のしやすさと撮影画像の品質の高さを両立したパッシブ認証方法も発表されている(例えばhttps://liquidinc.asia/2023-05-31/参照)。第2の実施形態のパッシブ第2認証では、パッシブ認証方法は特に限定されないため、フローチャートでは具体的なフローは記載していない。
【0093】
なお、図12では第2認証としてパッシブ認証とアクティブ認証のうちのいずれかを選択するようになっているが、より認証の精度を高めるために、パッシブ認証とアクティブ認証の両方を行ってもよい。
【0094】
(第2の実施形態の出勤時の本人確認のフロー)
図13は第2の実施形態の認証装置40aによる出勤時の本人確認のフローチャートの一例を示す模式図であり、第1の実施形態の本人確認のフローチャート(図6)に対応する。
第1の実施形態の本人確認では、在留カードと本人認証結果と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行うため、近距離通信42による在留カードの読み取りが必要であるが、第2の実施形態の本人確認ではeKYCの本人認証時の顔容貌画像と撮影した利用者の顔容貌画像とに基づいて出勤時の本人確認を行う。
【0095】
このため、第2の実施形態では出勤者が近接するまで待機するステップS21と在留カードを読み取るステップS22は必須ではない。したがって、第2の実施形態の本人確認のフローチャートは以下のようになる。
(ステップS23)出勤者の顔容貌画像を撮影する。
(ステップS24a)撮影した顔容貌画像と保存済みのeKYCの本人認証時の顔容貌画像とを比較し、同一人物であると判断できれば認証成功とする。
(ステップS25、S26)認証成功の場合は本人確認結果を企業端末30を介してサーバー10aに報告する。また、認証不成功の場合は、そのまま本人確認不成功として報告してもよいが、顔容貌の撮影角度等が適切でない場合もあるので、所定の回数顔容貌撮影と認証とを繰り返すようにしてもよい。
【0096】
なお、ステップS24aの認証にあたっては、事前にICカード、社員番号入力、QRコード(登録商標)読取などで照合先を特定してもよいし、候補となる対象者全員と照合して本人判断可能な閾値を超える人物を探し出してもよい。
【0097】
(信用スコア計算部)
信用スコア計算部12の構成および機能は、図7に記載の第1の実施形態の信用スコア計算部12に類似しているが、信用スコア計算部12への入力が、第1の実施形態では在留カード情報(または在留資格情報)、勤怠実績情報および/または金融関連情報であるのに対して、第2の実施形態では以下に列挙する信用関連情報の少なくとも一部である点で異なる。なお、信用スコア計算部12への入力として、どの信用関連情報を選択するかについては、信用関連情報の入手の容易さ、信用情報の提供先、信用情報提供の目的などに基づいて適宜選択される。
【0098】
勤務情報としては、勤務日数、勤務時間、遅刻回数、無断欠勤回数などが含まれる。
雇用情報としては、雇用先、雇用開始日、雇用終了日、雇用形態などが含まれる。
資格情報としては、国家資格、民間資格、在留資格などが含まれる。
滞在情報としては、国内滞在歴、在留資格取得歴、在留期限、国外滞在歴などが含まれる。
金融情報としては、預貯金額、保有する金融資産、保有する実物資産、借入先、借入履歴、返済履歴、借入残高、振込先、振込履歴、個人年収、世帯年収などが含まれる。
住居情報としては、居住先、居住形態、居住開始日、居住終了日などが含まれる。
家族情報としては、世帯主との続柄、配偶者の有無、扶養人数などが含まれる。
【0099】
また、第1の実施形態では、信用情報の提供先が「銀行および外国人向けサービス展開業者」であるのに対して、第2の実施形態では「外国人も対象とするサービス展開業者」である。これは、銀行もサービス展開業者であると考えられること、および、サービス展開業者の多くが外国人も対象とするようになり、サービス展開業者を外国人向けに限定することが適切でなくなったためである。
【0100】
また、第1の実施形態では、情報処理システム100は信用スコアを提供するのに対して、第2の実施形態では情報処理システム100aは信用スコアを含む信用情報を提供する。すなわち、信用情報として、算出された信用スコアだけでなく、信用に関わる事実情報(例えば上記信用関連情報そのもの)が必要な場合があり、そのような場合には、情報処理システム100aは事実情報自体も提供する場合がある。
【0101】
本実施形態においては、利用者端末20が「利用者端末」に相当し、サーバー10、10aが「サーバー」に相当し、雇用先企業端末30が「雇用先企業端末」に相当し、勤怠管理装置40が「勤怠管理装置」に相当し、認証装置40aが「認証装置」に相当し、情報処理システム100、100aが「情報処理システム」に相当し、金融機関端末50が「銀行および外国人向けサービス展開業者端末」に相当し、サービス展開業者端末50aが「サービス展開業者端末」に相当し、eKYC本人認証部11が「eKYC本人認証部」に相当し、信用スコア計算部12が「信用スコア計算部」に相当し、カメラ21、41が「カメラ」に相当し、ディスプレイ22が「ディスプレイ」に相当し、音声出力25が「音声出力」に相当し、近距離通信24、42が「近距離通信(NFC)」に相当し、通信部28が「無線または有線の通信装置」に相当し、記憶部45が「記憶部」に相当する。
【0102】
本発明の好ましい一実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0103】
10、10a サーバー
11 eKYC本人認証部
12 信用スコア計算部
20 利用者端末
21、41 カメラ
22 ディスプレイ
23 入力装置
24、42 近距離通信(NFC)
25 音声出力
28 通信部
30 雇用先企業端末
40 勤怠管理装置
40a 認証装置
45 記憶部
50 銀行および外国人向けサービス展開業者端末
50a サービス展開業者端末
60 ネットワーク
100、100a 情報処理システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13