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特開2024-117810バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体
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  • 特開-バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体 図1
  • 特開-バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117810
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240822BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240822BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240822BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240822BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/36
B32B9/00 A
B32B15/08 F
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099130
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2022179111の分割
【原出願日】2013-01-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】國弘 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓
(72)【発明者】
【氏名】戸田 清志
(57)【要約】
【課題】バイオマス由来のエチレンを用いたカーボンニュートラルなポリオレフィンを含むバイオマスポリオレフィン樹脂層を有してなる積層体を提供する。
【解決手段】本発明による包装製品用積層体は、化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、無機物を含むバリア層と、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、を有してなり、前記のものも含め非バイオマスポリオレフィン樹脂層を2層以上有してなり、少なくとも1層の前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層を構成する樹脂が、ポリプロピレンである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、
無機物を含むバリア層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、
を有してなり、
前記のものも含め非バイオマスポリオレフィン樹脂層を2層以上有してなり、
少なくとも1層の前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層を構成する樹脂が、ポリプロピレンである、包装製品用積層体。
【請求項2】
前記バリア層が無機物単体または無機酸化物の蒸着膜を含む、請求項1に記載の包装製品用積層体。
【請求項3】
前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンおよび/またはバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでなる、請求項1または2に記載の包装製品用積層体。
【請求項4】
前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、前記バイオマス由来のエチレンを前記バイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装製品用積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の包装製品用積層体を備える、包装製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体に関し、より詳細には、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステルを含んでなるバイオマスポリエステル樹脂層と、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0003】
バイオマス由来の樹脂としては、乳酸発酵を経由して製造されるポリ乳酸(PLA)が先行して商業生産が始まったが、生分解性であることをはじめ、プラスチックとしての性能が現在の汎用プラスチックとは大きく異なるため、製品用途や製品製造方法に限界があり広く普及するには至っていない。また、PLAに対しては、ライフサイクルアセスメント(LCA)評価が行われており、PLA製造時の消費エネルギーおよび汎用プラスチック代替時の等価性等について議論がなされている。
【0004】
ここで、汎用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等、様々な種類が用いられている。特に、ポリエチレンは、フィルム、シート、ボトル等に成形され、包装材等の種々の用途に供されており、世界中での使用量が多い。そのため、従来の化石燃料由来のポリエチレンを用いることは環境負荷が大きい。
【0005】
そのため、ポリエチレンの製造にバイオマス由来の原料を用いて、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。例えば、現在までに、ポリオレフィン樹脂の原料となるエチレンやブチレンを、再生可能な天然原料から製造することが研究されてきた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2011-506628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリオレフィン積層体の原料であるエチレンに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたポリオレフィンのバイオマスポリオレフィン樹脂層を有する積層体は、従来の化石燃料から得られるエチレンを用いて製造されたポリオレフィン樹脂の積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、バイオマス由来のエチレンを用いたカーボンニュートラルなポリオレフィンを含むバイオマスポリオレフィン樹脂層を有してなる積層体を提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン樹脂層を有する積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないバイオマス樹脂層を有する積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様においては、
化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料ポリエステル樹脂層と、
無機物を含むバリア層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と、
化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層と、
を有してなり、
前記のものも含め非バイオマスポリオレフィン樹脂層を2層以上有してなり、
少なくとも1層の前記非バイオマスポリオレフィン樹脂層を構成する樹脂が、ポリプロピレンである、包装製品用積層体が提供される。
また、本発明の態様においては、前記バリア層が無機物単体または無機酸化物の蒸着膜を含むことが好ましい。
また、本発明の態様においては、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンおよび/またはバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでなることが好ましい。
また、本発明の態様においては、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、前記バイオマス由来のエチレンを前記バイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上含んでなることが好ましい。
また、本発明の別の態様においては、上記包装製品用積層体を備える、包装製品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明による積層体は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層を有してなることで、カーボンニュートラルなバイオマス樹脂層を有する積層体を実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明による積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造された樹脂の積層体と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来の樹脂の積層体を代替することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
図2】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、「バイオマスポリエステル樹脂組成物」、「バイオマスポリエステル樹脂層」、「バイオマスポリオレフィン樹脂組成物」、および「バイオマスポリオレフィン樹脂層」とは、原料として少なくとも一部にバイオマス由来の原料を用いたものであって、原料の全てがバイオマス由来のものであることを意味するものではない。
【0013】
積層体
本発明による積層体は、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールである、バイオマスポリエステル樹脂層、または化石燃料由来のジオール単位と化石燃料由来のジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる化石燃料ポリエステル樹脂組成物からなる、化石燃料バイオマスポリエステル樹脂層と、バイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなるものである。積層体は、バイオマスポリオレフィン樹脂層を有することで、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂の積層体を実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明による積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン樹脂の積層体と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来のポリオレフィン樹脂の積層体を代替することができる。
【0014】
本発明による積層体の一例の模式断面図を図1および図2に示す。図1に示される積層体10は、バイオマスポリエステル樹脂層11と、バイオマスポリエステル樹脂層11上に形成されたバイオマスポリオレフィン樹脂層12とを有してなるものである。図2に示される積層体20は、バイオマスポリエステル樹脂層21と、バイオマスポリエステル樹脂層21上に形成された第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層22と、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層22上に形成された第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層23とをこの順に有してなるものである。以下、積層体を構成する各層について説明する。
【0015】
バイオマスポリエステル樹脂層
本発明において、バイオマスポリエステル樹脂層は、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる下記のバイオマスポリエステル樹脂組成物からなる。
【0016】
バイオマスポリエステル
バイオマスポリエステル樹脂組成物中に含まれるバイオマスポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなり、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールである。ジカルボン酸単位は化石燃料由来のジカルボン酸であってもよい。バイオマスポリエステルは、このようなバイオマス由来のエチレングリコールと化石燃料由来のジカルボン酸を用いた重縮合反応により得ることができる。
【0017】
バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
【0018】
バイオマスポリエステルのジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を用いてもよい。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を制限なく使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
【0019】
また、脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の、通常炭素数が2以上40以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステルや例えば無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物が挙げられる。これらのなかでも、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸又はこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、又はこれらの混合物がより好ましい。
【0020】
これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0021】
バイオマスポリエステルは、上記のジオール成分とジカルボン酸成分に加えて、第3成分として共重合成分を加えた共重合バイオマスポリエステルであっても良い。共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度の共重合バイオマスポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能及び/又は3官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、後述する鎖延長剤を使用することなく、極少量で容易に高重合度のバイオマスポリエステルを製造できるので最も好ましい。
【0022】
また、上記バイオマスポリエステルは、これらの共重合バイオマスポリエステルを鎖延長(カップリング)した高分子量のバイオマスポリエステルであってもよい。鎖延長剤としては、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできるが、その量は、通常バイオマスポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対し、カーボネート結合ならびにウレタン結合が通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。
【0023】
カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物が使用可能である。
【0024】
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが挙げられる。
【0025】
バイオマスポリエステルは、上記したジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合させる従来公知の方法により得ることができる。具体的には、上記のジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができる。
【0026】
バイオマスポリエステルを製造する際に用いるジオールの使用量は、ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化及び/又はエステル交換反応及び/又は縮重合反応中の留出があることから、0.1~20モル%過剰に用いられる。
【0027】
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下に行うのが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
【0028】
重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く第1族~第14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ-ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やバイオマスポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
【0029】
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネートが挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も好適に用いられる。更には、酸化チタンや、チタンと珪素を含む複合酸化物も好適に用いられる。これらの中でも、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ-n-ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C-94)が好ましく、特に、テトラ-n-ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C-94)が好ましい。
【0030】
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ-n-プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-t-ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が挙げられる。また、酸化ジルコニウムや、例えばジルコニウムと珪素を含む複合酸化物を使用してもよい。これらの中でも、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ-n-プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-t-ブトキシドが好ましい。
【0031】
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0032】
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒使用量は、生成するバイオマスポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。ここで使用する触媒量としては、その使用量を低減させる程生成するバイオマスポリエステルの末端カルボキシル基量が低減されるので使用触媒量を低減させる方法は好ましい態様である。
【0033】
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、通常、150~260℃の範囲であり、反応雰囲気は、通常窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。また、反応圧力は、通常、常圧~10kPaである。また、反応時間は、通常、1時間~10時間程度である。
【0034】
上記した製造工程において、鎖延長剤(カップリング剤)を反応系に添加してもよい。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で、無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたバイオマスポリエステルと反応させる。
【0035】
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量バイオマスポリエステルは公知の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたバイオマスポリエステルと反応させる。具体的には、ジオールとジカルボン酸とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、質量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のバイオマスポリエステルプレポリマーに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したバイオマスポリエステル系樹脂を得ることができる。質量平均分子量が20,000以上のプレポリマーであれば、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のバイオマスポリエステルを製造することができる。
【0036】
得られたバイオマスポリエステルは、固化させた後、さらに重合度を高めたり、環状三量体などのオリゴマーを除去したりするために、必要に応じて固相重合を行ってもよい。具体的には、バイオマスポリエステルをチップ化して乾燥させた後、100~180℃の温度で1~8時間程度加熱してバイオマスポリエステルを予備結晶化させ、続いて、190~230℃の温度で、不活性ガス流通下または減圧下で1~数十時間加熱することにより行われる。
【0037】
上記のようにして得られるバイオマスポリエステルの固有粘度(オルトクロロフェノール溶液で、35℃にて測定)は、0.5dl/g~1.5dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.6dl/g~1.2dl/gである。固有粘度が0.5dl/g未満の場合は引裂き強度をはじめ、半透過反射フィルム基材としてバイオマスポリエステルフィルムに要求される機械特性が不足することがある。他方、固有粘度が1.5dl/gを越えると、原料製造工程およびフィルム製膜工程における生産性が損なわれる。
【0038】
バイオマスポリエステルの製造工程において、または製造されたバイオマスポリエステルには、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤を添加してもよく、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、バイオマスポリエステル樹脂組成物全体に対して、5~50質量%、好ましくは5~20質量%の範囲で添加される。
【0039】
バイオマスポリエステル樹脂組成物中に5~45質量%の割合で含まれてもよいポリエステル(以下、リサイクルポリエステルともいう)は、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなり、ジオール単位として化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールを用い、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を用いて重縮合反応により得られたポリエステル樹脂からなる製品をリサイクルして得られるポリエステルである。
【0040】
リサイクルポリエステルのもとになる樹脂(すなわち、リサイクル前のポリエステル樹脂)としては、ジオール単位およびジカルボン酸単位がともに化石燃料由来の原料からなるもの(非バイオマスポリエステル)であっても、上記したようなバイオマスポリエステルであってもよい。
【0041】
リサイクルポリエステルのもとになる樹脂に使用される化石燃料由来のジオールとしては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、およびその誘導体が挙げられ、従来のバイオマスポリエステルのジオール単位として用いられるものを好適に使用することができる。脂肪族ジオールとは、2個のOH基を有する脂肪族及び脂環式化合物であれば特に制限はされないが、炭素数の下限値が2以上であり、上限値が通常10以下、好ましくは6以下の脂肪族ジオールが挙げられる。具体的には、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコ-ル、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。これらの中でも、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロピレングリコ-ル及び1,4-シクロヘキサンジメタノ-ルが好ましく、特にエチレングリコールが好ましい。
【0042】
上記のようにして得られるバイオマスポリエステルを含むバイオマスポリエステル樹脂組成物は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、バイオマスポリエステル中の全炭素に対して10~19%含まれることが好ましい。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、バイオマスポリエステル中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、バイオマスポリエステル中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioを、以下のように定義する。
bio(%)=PC14/105.5×100
【0043】
ポリエチレンテレフタレートを例にとると、ポリエチレンテレフタレートは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、バイオマスポリエステル中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioは20%となる。本発明においては、バイオマスポリエステル樹脂組成物中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10~19%であることが好ましい。バイオマスポリエステル樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量が10%未満であると、カーボンオフセット材料としての効果が乏しくなる。一方、上記したように、バイオマスポリエステル樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量は20%に近いほど好ましいが、フィルムの製造工程上の問題や物性面から、樹脂中には上記したようなリサイクルポリエステルや添加剤を含む方が好ましいため、実際の上限は18%となる。
【0044】
バイオマスポリエステル樹脂層は、上記したバイオマスポリエステル樹脂組成物からなるバイオマスポリエステル樹脂フィルムであることが好ましい。バイオマスポリエステル樹脂組成物をフィルムに加工するには、従来のポリエステル樹脂からフィルムを成形する方法を採用することができる。具体的には、上記したバイオマスポリエステル樹脂組成物を乾燥させた後、バイオマスポリエステルの融点以上の温度(Tm)~Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、バイオマスポリエステル樹脂組成物を溶融し、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化することによりフィルムを成形することができる。溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
【0045】
バイオマスポリエステル樹脂フィルムは、2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸は従来公知の方法で行うことができる。例えば、上記のようにして冷却ドラム上に押し出されたフィルムを、続いて、ロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムとする。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸は、通常、50~100℃の温度範囲で行われる。また、縦延伸の倍率は、フィルム用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.2倍以下とするのが好ましい。延伸倍率が2.5倍未満の場合は、バイオマスポリエステルフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムを得ることが難しい。
【0046】
縦延伸されたフィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩の各処理工程を順次施して二軸延伸フィルムとなる。横延伸は、通常、50~100℃の温度範囲で行われる。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上5.0倍以下が好ましい。2.5倍未満の場合はフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムが得られにくく、5.0倍を超える場合は製膜中に破断が発生しやすくなる。
【0047】
横延伸のあと、続いて熱固定処理を行うが、好ましい熱固定の温度範囲は、バイオマスポリエステルのTg+70~Tm-10℃である。また、熱固定時間は1~60秒が好ましい。さらに熱収縮率の低滅が必要な用途については、必要に応じて熱弛緩処理を行ってもよい。
【0048】
上記のようにして得られる樹脂フィルムは、延伸フィルムの厚さは、その用途に応じて任意であるが、通常、5~500μm程度である。このような樹脂フィルムの破断強度は、MD方向で5~40kg/mm、TD方向で5~35kg/mmであり、また、破断伸度は、MD方向で50~350%、TD方向で50~300%である。また、150℃の温度環境下に30分放置した時の収縮率は、0.1~5%である。このように、本発明による積層体のバイオマス樹脂層として用いられるバイオマスポリエステル樹脂フィルムは、従来の化石燃料由来の材料のみから製造されるポリエステル樹脂フィルムの物性と同等である。
【0049】
バイオマスポリオレフィン樹脂層
本発明において、バイオマスポリオレフィン樹脂層は、下記のバイオマス由来のエチレンをバイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは25~75質量%含んでなるものである。バイオマスポリオレフィン樹脂層は、少なくとも2層以上からなるものであってもよく、例えば、バイオマスポリエステル樹脂層側から順に第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層と第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる。積層体のシール層およびコア層は、両者がバイオマスポリオレフィン樹脂層であってもよく、いずれか一方のみがバイオマスポリオレフィン樹脂層であってもよい。
【0050】
第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層
本発明において、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、積層体のコア層としての機能を果たすものであってもよい。積層体はコア層を有することで、破断せず、優れた屈曲性を示すことができる。
【0051】
第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、バイオマス由来のエチレンを第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものである。第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂の積層体を実現できる。
【0052】
第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、好ましくは0.915~0.96g/cm、より好ましくは0.92~0.955g/cm、さらに好ましくは0.93~0.955g/cmの密度を有するものである。第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層の密度が0.915g/cm以上であれば、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層の剛性を高めることができる。また、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層密度が0.96g/cm以下であれば、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層の透明性や機械的強度を高めることができる。
【0053】
第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、1~30g/10分、好ましくは3~25g/10分、より好ましくは4~20g/10分、のメルトフローレート(MFR)を有するものである。メルトフローレートとは、JIS K7210-1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層のMFRが1g/10分以上であれば、成形加工時の押出負荷を低減することができる。また、バイオマスポリオレフィン樹脂組成物のMFRが30g/10分以下であれば、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層の機械的強度を高めることができる。
【0054】
第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、10~100μm、好ましくは10~50μm、より好ましくは15~30μmの厚さを有するものである。
【0055】
第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層
本発明において、第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、積層体のシール層としての機能を果たすものであってもよい。積層体はヒートシール層を有することで、他の樹脂フィルム上に積層する際に接着剤等を用いなくとも、強固に接着させることができる。
【0056】
第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、バイオマス由来のエチレンを第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは25~75質量%含んでなるものである。第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルなポリオレフィン積層体を実現できる。
【0057】
第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、0.90~0.925g/cm、好ましくは0.905~0.925g/cmの密度を有するものである。第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層の密度が0.90g/cm以上であれば、第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層の剛性を高めることができる。また、第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層の密度が0.925g/cm以下であれば、第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層の透明性や機械的強度を高めることができる。
【0058】
第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、1~30g/10分、好ましくは3~25g/10分、より好ましくは4~20g/10分、のメルトフローレート(MFR)を有するものである。メルトフローレートとは、JIS K7210-1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層のMFRが1g/10分以上であれば、成形加工時の押出負荷を低減することができる。また、バイオマスポリオレフィン樹脂組成物のMFRが30g/10分以下であれば、第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層の機械的強度を高めることができる。
【0059】
第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、1~50μm、好ましくは1~20μm、より好ましくは1~10μmの厚さを有するものである。
【0060】
本発明においては、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層と第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層が、密度、厚さ、MFR、およびバイオマス度(バイオマス由来のエチレン濃度)について、以下の特定の関係を満たすものであることが好ましい。
【0061】
本発明においては、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層の密度dと第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層の密度dが、d>dを満たすことが好ましい。第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層はコア層として機能するため、剛性が要求され、第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層はヒートシール層として機能するため、柔軟性が要求されるからである。
【0062】
本発明においては、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層の厚さtと第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層の厚さtが、t>tを満たすことが好ましい。第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層はコア層として機能するため、厚みが要求され、第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層はヒートシール層として機能するため、コア層ほどの厚みは必要ないからである。
【0063】
本発明においては、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層のMFRと第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層のMFRが、MFR>MFRを満たすことが好ましい。第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層はコア層として機能するため、剛性が要求され、第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層はヒートシール層として機能するため、柔軟性が要求されるからである。
【0064】
本発明においては、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層のバイオマス由来のエチレン濃度Cと第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層のバイオマス由来のエチレン濃度Cが、C>Cを満たすことが好ましい。第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層はコア層として機能するため、厚みが大きくエチレン使用量が多いことから、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層のバイオマス度を上げることで化石燃料の使用量をより削減できるからである。
【0065】
バイオマス由来のエチレン
本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンの原料となるバイオマス由来のエチレンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により得ることができる。以下、バイオマス由来のエチレンの製造方法の一例を説明する。
【0066】
バイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
【0067】
本発明において、バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
【0068】
本発明のエチレンを得るために、この段階で、エタノール中の不純物総量が1ppm以下にする等の高度な精製をさらに行ってもよい。
【0069】
エタノールの脱水反応によりエチレンを得る際には通常触媒が用いられるが、この触媒は、特に限定されず、従来公知の触媒を用いることができる。プロセス上有利なのは、触媒と生成物の分離が容易な固定床流通反応であり、例えば、γ―アルミナ等が好ましい。
【0070】
この脱水反応は吸熱反応であるため、通常加熱条件で行う。商業的に有用な反応速度で反応が進行すれば、加熱温度は限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上の温度が適当である。上限も特に限定されないが、エネルギー収支および設備の観点から、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下である。
【0071】
反応圧力も特に限定されないが、後続の気液分離を容易にするため常圧以上の圧力が好ましい。工業的には触媒の分離の容易な固定床流通反応が好適であるが、液相懸濁床、流動床等でもよい。
【0072】
エタノールの脱水反応においては、原料として供給するエタノール中に含まれる水分量によって反応の収率が左右される。一般的に、脱水反応を行う場合には、水の除去効率を考えると水が無いほうが好ましい。しかしながら、固体触媒を用いたエタノールの脱水反応の場合、水が存在しないと他のオレフィン、特にブテンの生成量が増加する傾向にあることが判明した。恐らく、少量の水が存在しないと脱水後のエチレン二量化を押さえることができないためと推察している。許容される水の含有量の下限は、0.1%以上、好ましくは0.5%以上必要である。上限は特に限定されないが、物質収支上および熱収支の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0073】
このようにしてエタノールの脱水反応を行うことによりエチレン、水および少量の未反応エタノールの混合部が得られるが、常温において約5MPa以下ではエチレンは気体であるため、これら混合部から気液分離により水やエタノールを除きエチレンを得ることができる。この方法は公知の方法で行えばよい。
【0074】
気液分離により得られたエチレンはさらに蒸留され、このときの操作圧力が常圧以上であること以外は、蒸留方法、操作温度、および滞留時間等は特に制約されない。
【0075】
原料がバイオマス由来のエタノールの場合、得られたエチレンには、エタノール発酵工程で混入した不純物であるケトン、アルデヒド、およびエステル等のカルボニル化合物ならびにその分解物である炭酸ガスや、酵素の分解物・夾雑物であるアミンおよびアミノ酸等の含窒素化合物ならびにその分解物であるアンモニア等が極微量含まれる。エチレンの用途によっては、これら極微量の不純物が問題となるおそれがあるので、精製により除去しても良い。精製方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。好適な精製操作としては、例えば、吸着精製法をあげることができる。用いる吸着剤は特に限定されず、従来公知の吸着剤を用いることができる。例えば、高表面積の材料が好ましく、吸着剤の種類としては、バイオマス由来のエタノールの脱水反応により得られるエチレン中の不純物の種類・量に応じて選択される。
【0076】
なお、エチレン中の不純物の精製方法として苛性水処理を併用してもよい。苛性水処理をする場合は、吸着精製前に行うことが望ましい。その場合、苛性処理後、吸着精製前に水分除去処理を施す必要がある。
【0077】
バイオマスポリオレフィン
本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンには、上記の製造方法により得られたものを用いることが好ましい。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。なお、ポリオレフィンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
【0078】
バイオマス由来のポリオレフィンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
【0079】
上記のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリオレフィンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
【0080】
上記のポリオレフィンが、ポリエチレンであることが好ましい。バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となるからである。
【0081】
上記のポリオレフィン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリオレフィン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、ポリオレフィン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=PC14/105.5×100
【0082】
本発明においては、理論上、ポリオレフィンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリオレフィンのバイオマス度は100%となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリオレフィン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリオレフィンのバイオマス度は0%となる。
【0083】
本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンやバイオマス由来の樹脂層は、バイオマス度が100%である必要はない。積層体の一部にでもバイオマス由来の原料が用いられていれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減するという本発明の趣旨に沿うからである。
【0084】
本発明において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
【0085】
ポリオレフィン、特に、エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0086】
上記のシングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調整される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合することができるため好ましい。シングルサイト触媒としては、特に、メタロセン系触媒を用いることが好ましい。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分とを含む触媒である。
【0087】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体等を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0088】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。なお、架橋基としては炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基等の置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基等の置換ゲルミレン基等が挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。
【0089】
周期律表第IV族の遷移金属化合物において、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、代表的なものとして、水素、炭素数1~20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基等が挙げられる。
【0090】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種または二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0091】
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタン等のランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物等が挙げられる。
【0092】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイト等のイオン交換性層状珪酸塩、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられる。
【0093】
また更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等が例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0094】
また、ポリオレフィンとして、エチレンの重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0095】
バイオマスポリオレフィン樹脂組成物
本発明において、バイオマスポリオレフィン樹脂組成物は、上記のポリオレフィンを主成分として含むものである。バイオマスポリオレフィン樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンをバイオマスポリオレフィン樹脂組成物全体に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは25~75質量%含んでなるものである。バイオマスポリオレフィン樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルなポリオレフィン積層体を実現できる。
【0096】
バイオマスポリオレフィン樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリオレフィンを2種以上含むものであってもよく、バイオマスポリオレフィン樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0097】
バイオマスポリオレフィン樹脂組成物は、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンとを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含んでもよい。つまり、本発明においては、バイオマスポリオレフィン樹脂組成物は、バイオマス由来のポリオレフィンと、化石燃料由来のポリオレフィンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
【0098】
本発明の態様によれば、バイオマスポリオレフィン樹脂組成物は、好ましくは5~90質量%、より好ましくは25~75質量%のバイオマス由来のポリオレフィンと、好ましくは10~95質量%、より好ましくは25~75質量%の化石燃料由来のポリオレフィンとを含むものである。このような混合物のバイオマスポリオレフィン樹脂組成物を用いた場合でも、バイオマスポリオレフィン樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0099】
上記のバイオマスポリオレフィン樹脂組成物の製造工程において、または製造されたバイオマスポリオレフィン樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリオレフィン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、バイオマスポリオレフィン樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
【0100】
非バイオマスポリオレフィン樹脂層
本発明よる積層体は、非バイオマスポリオレフィン樹脂層をさらに有してもよい。非バイオマスポリオレフィン樹脂層は、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる樹脂層であり、バイオマス度は0%である。積層体のコア層およびシール層のいずれか一方のみがバイオマスポリオレフィン樹脂層である場合には、他方は非バイオマスポリオレフィン樹脂層であってもよい。非バイオマスポリオレフィン樹脂層は、非バイオマスポリオレフィン樹脂層は、従来公知の原料を用いて形成することができ、その組成および形成方法は、特に限定されない。積層体が、非バイオマスポリオレフィン樹脂層をさらに有することで、耐熱性、耐圧性、耐水性、ヒートシール性、耐ピンホール性、耐突き刺し性、およびその他の物性を付与ないし向上させることができる。なお、積層体は、非バイオマスポリオレフィン樹脂層を2層以上有してもよい。非バイオマスポリオレフィン樹脂層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0101】
非バイオマスポリオレフィン樹脂層としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体またはアイオノマー等樹脂を使用できる。これらの樹脂を押し出しラミネート法により形成しても良いし、予め、Tダイ法またはインフレーション法等により製膜したフィルムとして、耐熱性基材層とドライラミネートあるいは押出ラミネート法等により積層しても良い。
【0102】
また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、シリカ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミナ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、シリカ蒸着延伸ナイロンフィルム、アルミナ蒸着延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールコート延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロン6/メタキシリレンジアミンナイロン6共押共延伸フィルムまたはポリプロピレン/ エチレン-ビニルアルコール共重合体共押共延伸フィルム等のいずれか、またはこれらの2以上のフィルムを積層した複合フィルムであってもよい。
【0103】
バリア層
本発明よる積層体は、バリア層をさらに有してもよい。バリア層は、無機物および/または無機酸化物からなるものであり、無機物もしくは無機酸化物の蒸着膜または金属箔からなるものが好ましい。蒸着膜は、従来公知の無機物または無機酸化物を用いて、従来公知の方法により形成することができ、その組成および形成方法は特に限定されない。積層体が、バリア層をさらに有することで、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性を、付与ないし向上させることができる。なお、積層体は、バリア層を2層以上有してもよい。バリア層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0104】
蒸着膜としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の無機物または無機酸化物の蒸着膜を使用することができる。特に、包装用材料(袋)等に適するものとしては、アルミニウム金属の蒸着膜、あるいは、ケイ素酸化物またはアルミニウム金属もしくはアルミニウム酸化物の蒸着膜を用いるのがよい。
【0105】
無機酸化物の表記は、例えば、SiO、AlO等のようにMO(ただし、式中、Mは、無機元素を表し、Xの値は、無機元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。Xの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0~2、アルミニウム(Al)は、0~1.5、マグネシウム(Mg)は、0~1、カルシウム(Ca)は、0~1、カリウム(K)は、0~0.5、スズ(Sn)は、0~2、ナトリウム(Na)は、0~0.5、ホウ素(B)は、0~1、5、チタン(Ti)は、0~2、鉛(Pb)は、0~1、ジルコニウム(Zr)は0~2、イットリウム(Y)は、0~1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではなく、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。包装用材料には、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)が好適に使用され、ケイ素(Si)は、1.0~2.0、アルミニウム(Al)は、0.5~1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0106】
本発明において、上記のような無機物または無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、使用する無機物または無機酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50~2000Å位、好ましくは、100~1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。更に具体的に説明すると、アルミニウムの蒸着膜の場合には、膜厚50~600Å位、更に、好ましくは、100~450Å位が望ましく、また、酸化アルミニウムあるいは酸化珪素の蒸着膜の場合には、膜厚50~500Å位、更に、好ましくは、100~300Å位が望ましいものである。
【0107】
蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0108】
また、他の態様によれば、バリア層は、金属を圧延して得られた金属箔であってもよい。金属箔としては、従来公知の金属箔を用いることができる。酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性の点からは、アルミニウム箔等が好ましい。
【0109】
紙層
本発明よる積層体は、紙層をさらに有してもよい。積層体が紙層を有することで、容器としての剛性を持たせることができる。紙層として用いる紙は、好ましくは10~150g/m、より好ましくは20~100g/mの坪量を有するものである。紙層としては、「洋紙中」の「包装用紙」全般が対象だが、安全性の観点から化学パルプ100%を用いた上質紙、アート紙等の使用が好ましい。また、天然パルプ等のバイオマス由来の紙層を有することで、積層体全体のバイオマス度を向上させることができ、オールバイオマスの積層体を実現することもできる。
【0110】
その他の層
本発明による積層体は、上記の層以外に、その他の層を少なくとも1層さらに有してもよい。その他の層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。その他の層は、上記の層のいずれか1層または2層以上の上に、形成することができる。その他の層としては、例えば、印刷層や接着層を挙げることができる。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されない。また、接着層は、いずれか2層をラミネートにより貼合するために形成される、接着剤層または接着樹脂層である。ラミネート用接着剤としては、例えば、1液あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等のラミネート用接着剤を使用することができる。上記の接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。その塗布量としては、0.1g/m~10g/m(乾燥状態)位が好ましく、1g/m~5g/m(乾燥状態)位がより好ましい。
【0111】
また、接着樹脂層としては、熱可塑性樹脂層からなる樹脂層が使用される。具体的には、接着樹脂層の材料としては、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン・αオレフィンとの共重合体樹脂、エチレン・ポリプロピレン共重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン・マレイン酸共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂、無水マレイン酸をポリオレフィン樹脂にグラフト変性した樹脂等を使用することができる。これらの材料は、一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0112】
本発明による積層体の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本発明においては、バイオマスポリエステル樹脂層上にバイオマスポリオレフィン樹脂層を押出成形により形成することが好ましく、バイオマスポリオレフィン樹脂層が共押出成形により形成されてなることがより好ましい。共押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われることがさらに好ましい。
【0113】
例えば、以下の方法で、押出成形により積層体を成形することができる。上記したバイオマスポリオレフィン樹脂組成物を乾燥させた後、ポリオレフィンの融点以上の温度(Tm)~Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、バイオマスポリオレフィン樹脂組成物を溶融し、バイオマスポリエステル樹脂層上に例えばTダイ等のダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラム等で急冷固化することにより積層体を成形することができる。溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
【0114】
上記のようにして得られる積層体の厚さは、その用途に応じて任意であるが、通常、5~500μm程度、好ましくは20~300μm程度である。
【0115】
本発明による積層体には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。また、本発明による積層体に、ラミネート加工(ドライラミネートや押し出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施して、成型品を製造することもできる。
【0116】
用途
本発明による積層体は、包装容器や包装袋等の包装製品、化粧シートやトレー等のシート成形品、積層フィルム、光学フィルム、樹脂板、各種ラベル材料、蓋材、およびラミネートチューブ等の各種用途に好適に使用することができ、特に、包装製品が好ましい。
【0117】
他の態様
本発明は、バイオマス由来のエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含むバイオマスポリエステル樹脂層と、バイオマス由来のエチレンを用いたカーボンニュートラルなポリオレフィンを含むバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる積層体を提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂層とポリオレフィン樹脂層を有する積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないバイオマス樹脂の積層体を提供することも目的とする。
本発明の更なる他の態様によれば、
ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールである、バイオマスポリエステル樹脂層と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層と
を有してなる、積層体が提供される。
本発明の態様においては、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、前記バイオマス由来のエチレンを前記バイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上含んでもよい。
本発明の態様においては、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、前記バイオマスポリエステル樹脂層側から順に第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層と第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなり、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層が、前記バイオマス由来のエチレンを第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上含んでなり、第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層が、前記バイオマス由来のエチレンを第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上含んでもよい。
本発明の態様においては、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層中のバイオマス由来のエチレン濃度Cと第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層中のバイオマス由来のエチレン濃度Cが、C>Cを満たしてもよい。
本発明の態様においては、前記モノマーが、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含んでもよい。
本発明の態様においては、前記モノマーが、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
本発明の態様においては、前記バイオマスポリオレフィン樹脂組成物が、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンとを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含んでもよい。
本発明の態様においては、前記バイオマスポリオレフィン樹脂組成物が、5~90質量%の前記バイオマス由来のポリオレフィンと、10~95質量%の前記化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでもよい。
本発明の態様においては、前記α-オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであってもよい。
本発明の態様においては、前記ポリオレフィンが、ポリエチレンであってもよい。
本発明の態様においては、前記積層体が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層をさらに有してもよい。
本発明の態様においては、前記積層体が、無機物および/または無機酸化物からなるバリア層をさらに有してもよい。
本発明の態様においては、前記積層体が、紙層をさらに有してもよい。
本発明の態様においては、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、前記バイオマスポリエステル樹脂層上に押出成形により形成されてもよい。
本発明の態様においては、前記バイオマスポリオレフィン樹脂層が、共押出成形により形成されてもよい。
本発明の態様においては、前記共押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われてもよい。
本発明の別の態様においては、前記積層体からなる、包装製品が提供される。
このような本発明による積層体は、バイオマス由来のエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含むバイオマスポリエステル樹脂層と、バイオマス由来のエチレンを用いたカーボンニュートラルなポリオレフィンを含むバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる積層体を有することで、カーボンニュートラルなバイオマス樹脂の積層体を実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明による積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造された樹脂の積層体と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来の樹脂の積層体を代替することができる。
【実施例0118】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。
【0119】
測定・条件
下記の参考例、参考比較例、実施例、および比較例において、バイオマス度とは、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量の値である。
【0120】
下記で用いた押出製膜機の条件は、以下のとおりであった。
スクリュー径:90mm
スクリュー型式:フルフライト
L/D:28
Tダイ:11S型ストレートマニホールド
Tダイ有効開口長:560mm
【0121】
コア層用樹脂フィルムの作製
参考例1
バイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SHA7260、バイオマス度:94.5%、密度:0.955g/cm、MFR:20g/10分)を290℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
【0122】
参考例2
バイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SHA7260、バイオマス度:94.5%、密度:0.955g/cm、MFR:20g/10分)50質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC701、バイオマス度:0%、密度:0.919g/cm、MFR:14g/10分)50質量部とをドライブレンドした樹脂(バイオマス度:48%、密度:0.937g/cm、MFR:17g/10分)を、290℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
【0123】
参考例3
バイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SHA7260、バイオマス度:94.5%、密度:0.955g/cm、MFR:20g/10分)33質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC701、バイオマス度:0%、密度:0.919g/cm、MFR:14g/10分)67質量部とをドライブレンドした樹脂(バイオマス度:32%、密度:0.931g/cm、MFR:16g/10分)を、290℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
【0124】
参考比較例1
化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC701、バイオマス度:0%、密度:0.919g/cm、MFR:14g/10分)を290℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
【0125】
バイオマスポリオレフィン樹脂組成物および樹脂フィルムの評価
上記の参考例1~3および参考比較例1で用いたバイオマスポリオレフィン樹脂組成物の加工適性および得られたフィルムの特性について、以下の各種評価:(1)ドローダウン、(2)ネックイン、(3)モーター負荷、(4)樹脂圧力、(5)ループスティフネス、を行った。
(1)ドローダウン
上記の参考例1~3および参考比較例1で用いたバイオマスポリオレフィン樹脂組成物を、上記の押出製膜機を用いて、Tダイ幅560mm、樹脂温度290℃、スクリュー回転数34rpmの条件で、押出コーティング膜が膜切れするか、サージングする最高引取り速度(m/分)を測定した。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
【0126】
(2)ネックイン
上記の参考例1~3および参考比較例1で用いたバイオマスポリオレフィン樹脂組成物を、上記の押出製膜機を用いて、Tダイ幅560mm、スクリュー回転数105rpmの条件で、引取り速度140m/分、エアーギャップ120mmの時の両耳ネックイン(mm)を測定した。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
【0127】
(3)モーター負荷
上記の参考例1~3および参考比較例1において、上記の押出製膜機を用いて樹脂フィルムを製造した際のモーター負荷(A)を測定した。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
【0128】
(4)樹脂圧力
上記の参考例1~3および参考比較例1において、上記の押出製膜機を用いて樹脂フィルムを製造した際の樹脂圧力(MPa)を測定した。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
【0129】
(5)ループスティフネス
上記の参考例1~3および参考比較例1で得られた樹脂フィルムを、幅15mm、長さ150mmに切り出し、剛性試験機(東洋精機製作所社製、商品名:ループステフネステスタ)を用いてフィルムの剛性(N)の測定を行った。ループの長さは60mmとした。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
【0130】
【表1】
【0131】
シール層用樹脂フィルムの作製
参考例4
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SLL318、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm、MFR:2.7g/10分)を320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
【0132】
参考例5
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm、MFR:2.7g/10分)33質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC604、バイオマス度:0%、密度:0.918g/cm、MFR:8g/10分)67質量部とをメルトブレンドした樹脂(バイオマス度:29%、密度:0.918g/cm、MFR:6.3g/10分)を、320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
【0133】
参考例6
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SLL318、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm、MFR:2.7g/10分)33質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC604、バイオマス度:0%、密度:0.918g/cm、MFR:8g/10分)37質量部と、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:KC573、バイオマス度:0%、密度:0.910g/cm、MFR:15g/10分)30質量部とをメルトブレンドした樹脂(バイオマス度:29%、密度:0.916g/cm、MFR:8.4g/10分)を、320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
【0134】
参考例7
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SLL318、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm、MFR:2.7g/10分)33質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC604、バイオマス度:0%、密度:0.918g/cm、MFR:8g/10分)37質量部と、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:KS560T、バイオマス度:0%、密度:0.898g/cm、MFR:16g/10分)30質量部とをメルトブレンドした樹脂(バイオマス度:29%、密度:0.912g/cm、MFR:8.7g/10分)を、320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
【0135】
参考比較例2
化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC600A、バイオマス度:0%、密度:0.919g/cm、MFR:7g/10分)を320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
【0136】
バイオマスポリオレフィン樹脂組成物および樹脂フィルムの評価
上記の参考例4~7および参考比較例2で用いたバイオマスポリオレフィン樹脂組成物の加工適性および得られたフィルムの特性について、以下の各種評価:(6)ドローダウン、(7)ネックイン、(8)モーター負荷、(9)樹脂圧力、(10)シール開始温度、を行った。
【0137】
(6)ドローダウン
上記の参考例4~7および参考比較例2で用いたバイオマスポリオレフィン樹脂組成物を、上記の押出製膜機を用いて、Tダイ幅560mm、樹脂温度290℃、スクリュー回転数34rpmの条件で、押出コーティング膜が膜切れするか、サージングする最高引取り速度(m/分)を測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0138】
(7)ネックイン
上記の参考例4~7および参考比較例2で用いたバイオマスポリオレフィン樹脂組成物を、上記の押出製膜機を用いて、Tダイ幅560mm、スクリュー回転数105rpmの条件で、引取り速度140m/分、エアーギャップ120mmの時の両耳ネックイン(mm)を測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0139】
(8)モーター負荷
上記の参考例4~7および参考比較例2において、上記の押出製膜機を用いて樹脂フィルムを製造した際のモーター負荷(A)を測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0140】
(9)樹脂圧力
上記の参考例4~7および参考比較例2において、上記の押出製膜機を用いて樹脂フィルムを製造した際の樹脂圧力(MPa)を測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0141】
(10)シール開始温度
上記の参考例4~7および参考比較例2で得られた樹脂フィルムを、厚さ幅15mm、長さ200mmに切り出し、シール温度は90~150℃、シール圧力は30N/cm、シール時間は1秒でヒートシールした。この試験片を引張試験機(テンシロンRTC-125A、オリエンテック社製)を用いて、引張速度300mm/分でT時剥離強度の測定を行い、シールが開始される温度(℃)を特定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0142】
【表2】
【0143】
実施例1
化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC701、MFR:14、密度:0.919)とバイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製:SHA7260、MFR:20、密度:0.955、バイオマス度:94.5%)とを50:50でドライブレンドした樹脂を用意した。この樹脂を、紙(純白、坪量30g/m)に15μmの厚みで押出しコーティングを行い、バイオマスPETフィルム(12μm、バイオマス度:14%)と貼り合わせた。
【0144】
次に、バイオマスPETフィルム(12μm、バイオマス度:14%)の内側のコア層として、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC701、MFR:14、密度:0.919)とバイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製:SHA7260、MFR:20、密度:0.955、バイオマス度:94.5%)を50:50でドライブレンドした樹脂を用意した。また、シール層として、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:KC581、MFR:11、密度:0.919)とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)とを67:33でメルトブレンドした樹脂を用意した。バイオマスPETフィルムの内側にアンカーコート剤を介して、上記の樹脂をそれぞれ290℃および320℃の樹脂温で共押し(コア層:15μm、シール層:5μm)にて押出しコーティングし、積層体を得た。押出し層のバイオマス度は44%であった。この積層体を用いて、外寸法20mm×100mm、背シール巾部5mmのピロー袋を作成した。
【0145】
比較例1
紙(純白、坪量30g/m)に化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC701、MFR:14、密度:0.919)を厚み15μmで押出しコーティングを行い、バイオマスPETフィルム(12μm、バイオマス度:14%)と貼り合わせた。
【0146】
次に、バイオマスPETフィルム(12μm、バイオマス度:14%)の内側のコア層として、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC701、MFR:14、密度:0.919)を用意した。また、シール層として、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:KC581、MFR:11、密度:0.919)を用意した。バイオマスPETフィルムの内側にアンカーコート剤を介して、上記の樹脂をそれぞれ290℃および320℃の樹脂温で共押し(コア層:15μm、シール層:5μm)にて押出しコーティングし、積層体を得た。押出し層のバイオマス度は0%であった。この積層体を用いて、外寸法20mm×100mm、背シール巾部5mmのピロー袋を作成した。
【0147】
実施例1および比較例1で得られた各積層体を、幅15mm、長さ200mmに切り出し、シール温度は110~180℃、シール圧力は30N/cm、シール時間は1秒でヒートシールした。この試験片を引張試験機(テンシロンRTC-125A、オリエンテック社製)を用いて、引張速度300mm/分でT時剥離強度の測定を行い、シールが開始される温度を特定した。測定結果は、下記の表3に示される通りであった。
【表3】
【0148】
実施例2
バイオマス由来のPETフィルム(厚さ12μm、バイオマス度:14%)に、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC701、MFR:14、密度:0.919)50質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)50質量部とをドライブレンドした樹脂を、アンカーコートを介して300℃の樹脂温で押出し(15μm)、アルミ箔(日本製箔社製:1N30材、厚さ7μm)と貼合した。さらに、アルミ箔上に、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC701、MFR:14、密度:0.919)50質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)50質量部とをドライブレンドした樹脂を、押し出しラミネート法により、アンカーコートを介して300℃の樹脂温で押出し(30μm)て、積層体を得た。
【0149】
比較例2
バイオマス由来のPETフィルム(厚さ12μm、バイオマス度:14%)に、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC701、MFR:14、密度:0.919)を、アンカーコートを介して300℃の樹脂温で押出し(15μm)、アルミ箔(日本製箔社製:1N30材、厚さ7μm)と貼合した。さらに、アルミ箔上に、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC701、MFR:14、密度:0.919)を、押し出しラミネート法により、アンカーコートを介して300℃の樹脂温で押出し(30μm)て、積層体を得た。
【0150】
実施例2および比較例2で得られた各積層体を、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とした。PETフィルムとアルミ箔の間を剥離し、引張試験機(テンシロンRTC-125A、オリエンテック社製)を用いて、T時剥離強度の測定を行った。この測定における引張速度は50mm/分であった。測定結果は、下記の表4に示される通りであった。
【0151】
実施例2および比較例2で得られた各積層体を、試験条件をシール圧力は30N/cm、シール時間は1秒、シール温度は170℃、引張速度は300mm/分とした以外は上記と同様の条件で、シール強度を測定した。測定結果は、下記の表に示される通りであった。
【表4】
【0152】
実施例3
長期保存型液体紙容器の内面フィルム用途として、アルミ箔(東洋アルミ社製、7μm)と厚み12μmのバイオマス由来のPETフィルム(東洋紡社製:DE024、12μm)をドライラミネート(DIC製:主剤LX-703A/硬化剤KR-90)にて貼り合せた。その後、PETフィルム面側にポリエステルポリオール/イソシアネート2液硬化型アンカー剤のコーティングを行い、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520(MFR:3.6、密度:0.923))50質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)50質量部とをドライブレンドした樹脂を、320℃の樹脂温にて押し出し(20μm、ライン速度100m/分)ながら、低密度ポリエチレンフィルム(大日本印刷製:SKL、密度:0.923、40μm)と貼り合せて、積層体を得た。積層体全体のバイオマス度は10%であった。
【0153】
比較例3
長期保存型液体紙容器の内面フィルム用途として、アルミ箔(東洋アルミ社製、7μm)と化石燃料由来のPETフィルム(東洋紡社製:E5100、12μm)をドライラミネート(DIC製:主剤LX-703A/硬化剤KR-90)にて貼り合せた。その後、PETフィルム面側にポリエステルポリオール/イソシアネート2液硬化型アンカー剤のコーティングを行い、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520(MFR:3.6、密度:0.923))50質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)50質量部とをドライブレンドした樹脂を320℃の樹脂温にて押し出し(20μm、ライン速度100m/分)ながら、低密度ポリエチレンフィルム(大日本印刷製:SKL、密度:0.923、40μm)と貼り合せて、積層体を得た。積層体全体のバイオマス度は7%であった。
【符号の説明】
【0154】
10 積層体
11 バイオマスポリエステル樹脂層
12 バイオマスポリオレフィン樹脂層
20 積層体
21 バイオマスポリエステル樹脂層
22 第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層
23 第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層
図1
図2