(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117833
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ハンド装置、物品移送装置および物品取出方法
(51)【国際特許分類】
B65G 61/00 20060101AFI20240822BHJP
B65G 59/02 20060101ALI20240822BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B65G61/00
B65G59/02 Z
B25J15/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103108
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2020187311の分割
【原出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000103426
【氏名又は名称】オークラ輸送機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 倫三
(57)【要約】
【課題】物品を確実に保持できるハンド装置を提供する。
【解決手段】側面に被係合部28を有する物品12を保持し、移動装置に装着されるハンド装置20である。ハンド装置20は、パーム40と、パーム40に設けられ、上下方向に間隔を空けて配置され、上下方向に接近または離間可能な物品12に係合する係合部48と押え部53とを備える。上下方向に接近した係合部48が下方から被係合部28と係合するとともに押え部53が物品12を上方から押圧することで、係合部48および押え部53により物品12を挟持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に被係合部を有する物品を保持し、移動装置に装着されるハンド装置であって、
前記移動装置に取り付けられるベースと、
前記ベースに設けられたパームと、
前記パームに上下方向に間隔を空けて配置され、前記上下方向に接近または離間可能な前記物品に係合する係合部と押え部とを備え、
前記上下方向に接近した前記係合部が下方から前記被係合部と係合するとともに前記押え部が前記物品を上方から押圧することで、前記係合部および前記押え部により前記物品が挟持される
ことを特徴とするハンド装置。
【請求項2】
前記係合部は、載置された起立姿勢の前記物品の前記被係合部を上方に移動させることで、前記物品の底面の一辺を支点に他辺が持ち上がる傾斜姿勢に前記物品を傾動させ、
前記押え部は、傾斜した前記物品を上方から押圧することで、傾斜姿勢の前記物品を前記係合部とで挟持する
ことを特徴とする請求項1記載のハンド装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のハンド装置と、
前記ハンド装置を移動させる移動装置と
を備えることを特徴とする物品移送装置。
【請求項4】
側面に被係合部を有する物品を移載装置に装着されるハンド装置により取り出す物品取出方法であって、
前記ハンド装置が備えるパームを前記物品の側面側に位置させるステップと、
前記パームに設けられた係合部を上昇させ、前記係合部を前記被係合部に下方から係合させて前記物品を上昇させるステップと、
前記パームに設けられた押え部を下降させ、前記押え部で前記物品を上方から押圧して前記係合部との間に挟持するステップと
を備えることを特徴とする物品取出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を保持するハンド装置、このハンド装置を備えた物品移送装置、およびハンド装置を用いて物品を取り出す物品取出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載されたハンド装置が知られている。
【0003】
このハンド装置では、ベースに沿って移動可能とする移動体が物品に向けて前進移動し、移動体に設けられている吸着パッドが物品の側面を吸着して持ち上げ、この移動体が前進移動とは反対方向に後退移動し、ベースに固定されている支持部上に吸着パッドで吸着している物品を引き上げ、支持部上に物品を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなハンド装置では、物品の側面を吸着して保持するが、物品の形状や仕様によっては吸着による保持が適さない場合がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、物品を確実に保持できるハンド装置、物品移送装置および物品取出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のハンド装置は、側面に被係合部を有する物品を保持し、移動装置に装着されるハンド装置であって、前記移動装置に取り付けられるベースと、前記ベースに設けられたパームと、前記パームに上下方向に間隔を空けて配置され、前記上下方向に接近または離間可能な前記物品に係合する係合部と押え部とを備え、前記上下方向に接近した前記係合部が下方から前記被係合部と係合するとともに前記押え部が前記物品を上方から押圧することで、前記係合部および前記押え部により前記物品が挟持される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、物品を確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態を示すハンド装置の正面図である。
【
図2】同上ハンド装置の第1移動体を示す
図1のA矢視の拡大側面図である。
【
図3】同上ハンド装置の第2移動体を示す
図1のB矢視の拡大側面図である。
【
図5】同上ハンド装置を用いた物品移送装置を含む物品移送ステムの正面図である。
【
図6】同上ハンド装置が取り扱う物品を示し、(a)は蓋体を容器本体から開けた物品の正面図、(b)は蓋体を容器本体に閉じた物品の正面図である。
【
図7】同上ハンド装置を用いた物品取出方法を(a)~(c)の順に示す正面図である。
【
図8】同上
図7(a)~(c)に続く物品取出方法を
図8(a)~(c)の順に示す正面図である。
【
図9】同上
図8(a)~(c)に続く物品取出方法を
図9(a)~(c)の順に示す正面図である。
【
図10】同上
図9(a)~(c)に続く物品取出方法を
図10(a)~(b)の順に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図5に物品移送システム10を示す。物品移送システム10は、例えばパレット11上に複数積み重ねられた物品12を1つずつ取り出し、所定の移送場所に移送するデパレタイジングシステムである。
【0012】
物品移送システム10は、物品12の取出動作を行う物品移送装置15と、パレット11により物品12が供給される物品供給部16と、物品移送装置15により取り出した物品12を移送する移送場所である物品移送部17とを備えている。
【0013】
物品移送装置15は、物品12を保持するハンド装置20と、このハンド装置20を移動させる移動装置21とを備えている。本実施形態では、移動装置21は、多関節型のロボットであり、床面などに設置される基台22と、この基台22上に旋回可能に設けられた複数の回動可能な軸を有する多関節型のロボットアーム23とを備えている。なお、移動装置21は、多関節型のロボットに限らず、例えば3軸の直交するスライド軸により構成される直交形の移動装置などでもよい。
【0014】
また、物品供給部16には、複数の物品12が積み重ねられたパレット11が供給され、パレット11上の物品12が所定の位置に位置決め配置される。物品供給部16は、複数の物品12が積み重ねられたパレット(実パレット)11を搬入し、物品12が取り出されて空となったパレット(空パレット)11を搬出するコンベヤを用いてもよい。
【0015】
また、物品移送部17は、物品移送装置15により取り出した物品12が移載される。物品移送部17には、物品移送装置15により移載された物品12を所定の搬送場所へ向けて搬送するステーションコンベヤが用いられている。ステーションコンベヤには、ローラコンベヤなどが用いられている。
【0016】
そして、
図6に示すように、物品12は、内部に収納物を収納可能とする平面視長方形の四角形箱状の容器である。物品12は、上面側が開口された容器本体25と、下面側が開口され、容器本体25の上部外側に上方から着脱可能に被せられる蓋体26と、容器本体25の側面の外周に設けられ、容器本体25に被せられる蓋体26の下辺部を支持する突出部27とを備えている。突出部27は、物品12の側面から外方に突出され、ハンド装置20の一部が下方から係合可能とする被係合部28として構成されている。このような物品12は、側面に突出部27が突出されているため、側面を吸着により保持することは適さず、また、上面は上方に開放される蓋体26であるため、上面を吸着により保持することも適さないものである。そして、ハンド装置20は、このような物品12を保持可能としている。なお、物品12の被係合部28が形成された側面を第1面12aとすると、被係合部28が物品12の立側面に形成されているため、この第1面12aに交差する物品12の上面または底面が第2面12bとなる。
【0017】
図5に示すように、物品12は、輸送時などに、パレット11上に、1段に例えば物品12の長手方向および短手方向のそれぞれに少なくとも2つずつの計4つ以上並べた状態で、複数段に積み重ねられている。物品12の積み重ね方は、パレット11上に搭載された各物品12上にそれぞれ上段の物品12を載置して積み重ねられている。各段の水平方向に隣り合う物品12は互いに接触した状態にあってもよいし、少し離れた状態にあってもよい。なお、上段の物品12が下段の複数の物品12上に跨って載置されるように積み重ねられていてもよい。
【0018】
次に、
図1ないし
図4にハンド装置20の構成を示す。ハンド装置20は、ベース30と、このベース30の下面側に沿って移動可能とする移動体である第1移動体31および第2移動体32と、ベース30の下面側に設けられた押えユニット33とを備えている。移動体31,32がベース30に沿って移動する移動方向を左右方向である第1方向xとするとともにベース30の長手方向とする。このベース30の長手方向の中央域に第1移動体31がベース30の長手方向に沿って移動可能に配置され、第1移動体31よりもベース30の長手方向の一端側に第2移動体32がベース30の長手方向に沿って移動可能に配置され、第1移動体31よりもベース30の長手方向の他端側に押えユニット33が固定的に配置されている。なお、以下、長手方向に対して直交しかつベース30の下面側に平行な方向を幅方向といい、また、移動体31,32の物品12に向けた移動を前進および方向を前進方向、移動体31,32が物品12から離れる移動を後退および方向を後退方向という。
【0019】
ベース30は、幅方向に平行に対向配置される一対の長尺なベースフレーム35、およびこれらベースフレーム35を一体的に連結する連結部材36を備えている。連結部材36は、一対のベースフレーム35の上面側に取り付けられている。連結部材36の中央は、ロボットアーム23の先端の支持軸23aに取り付けられて支持される。ロボットアーム23の支持軸23aに支持されるベース30の位置は、ハンド装置20で物品12を保持して持ち上げた際の重心位置を考慮して、ベース30の長手方向の中央よりも押えユニット33が配置されている他端側にオフセットした位置とされている。
【0020】
各ベースフレーム35の下面側には、移動体31,32を移動可能に支持するガイドレール37がベースフレーム35の長手方向に沿って取り付けられている。
【0021】
また、第1移動体31は、可動パーム40を備えている。可動パーム40は、ガイドレール37に沿ってスライド可能に係合するスライダ41を備えた移動フレーム42に取り付けられている。可動パーム40は、ベース30に取り付けられた第1駆動部であるパームシリンダ43の動作によりベース30の長手方向に沿って左右方向である第1方向xに移動する。パームシリンダ43は、ブレーキ機構を有し、可動パーム40の移動中に任意の位置で停止させることができる。なお、左右方向である第1方向xに交差する方向のうち上下方向を第2方向yとする。
【0022】
可動パーム40は、平板状に設けられ、上部側が移動フレーム42に取り付けられ、下部側が下方に突出されている。可動パーム40の幅方向の寸法は物品12の側面の幅よりも小さく設けられている。可動パーム40の一方の面である前面であって物品12に対向される面には、取出動作に伴って物品12が動いた際にその動きを規制する押え面44が設けられている。可動パーム40の下側中央に係合部用の切欠き部45が設けられ、この切欠き部45よりも上方で可動パーム40の幅方向両側に押え部用の切欠き部46が設けられている。
【0023】
さらに、可動パーム40には、物品12に係合可能とするフックである係合部48が設けられている。係合部48は、進退駆動部49より可動パーム40の押え面44から進退可能に設けられているとともに、係合用昇降駆動部50により可動パーム40に対して昇降可能に設けられている。進退駆動部49は、例えばシリンダが用いられ、可動パーム40の押え面44の上部側に取り付けられ、可動パーム40の押え面44とは反対側に配置される支持部材51を支持するとともにこの支持部材51を可動パーム40に対して接近、離反する方向つまり可動パーム40の移動方向と同じ左右方向である第1方向xに移動させる。係合用昇降駆動部50は、例えばシリンダが用いられ、支持部材51の下部側に取り付けられ、係合部48を昇降可能に支持している。
【0024】
係合部48は、幅方向に広い平板状に設けられ、係合用昇降駆動部50により略水平状に支持されている。係合部48は、可動パーム40の係合部用の切欠き部45に進入して昇降可能とする。そして、係合部48は、進退駆動部49により、左右方向である第1方向xに移動され、可動パーム40の押え面44から係合部48のフック部である先端側が突出する前進位置と、可動パーム40の押え面44から後退する後退位置との間で進退可能とする。さらに、係合部48は、係合用昇降駆動部50により、上下方向である第2方向yに移動され、切欠き部45の上部側に上昇する上昇位置と、切欠き部45の下部側に下降する下降位置との間で昇降される。そして、係合部48は、前進位置かつ下降位置からの上昇により物品12の側面の被係合部28に下方から係合して物品12を上昇可能とする。
【0025】
さらに、可動パーム40には、係合部48との間に物品12を押える押え部53が設けられている。押え部53は、押え用昇降駆動部54により昇降可能に支持され、上下方向である第2方向yに移動される。押え用昇降駆動部54は、例えばシリンダが用いられ、可動パーム40の押え面44とは反対側の背面に、幅方向中央の支持部材51の両側でかつ両側の押え部用の切欠き部46の下部側に取り付けられている。
【0026】
押え部53は、基端側が押え用昇降駆動部54に支持され、先端側が押え部用の切欠き部46を挿通して可動パーム40の押え面44から突出され、押え用昇降駆動部54により昇降可能とする。押え部53の先端側には、可動パーム40の押え面44から離れるにしたがって下降するように傾斜する傾斜部55が設けられている。押え部53の先端側である傾斜部55の下面には、物品12の上面に接触して上方から押える押え部材56が取り付けられている。押え部材56は弾性を有するとともに摩擦係数の高い例えばゴムや樹脂などによって形成されている。
【0027】
そして、係合部48と押え部53は、上下方向である第2方向yに間隔を空けて配置され、第2方向yに接近または離反可能であり、接近した状態で物品12を挟持可能である。
【0028】
さらに、可動パーム40には、可動パーム40の押え面44が物品12の側面に向けて移動する際に、押え面44が物品12の側面に接触した位置で可動パーム40の移動を停止するために、押え面44が接触する物品12の位置を検知する物品検知部が設けられている。物品検知部は、例えば光電センサなどが用いられている。
【0029】
また、第2移動体32は、支持部であるフォーク60を備えている。このフォーク60は、ガイドレール37に沿ってスライド可能に係合するスライダ61を設けた移動フレーム62に取り付けられている。フォーク60は、ベース30に取り付けられた第2駆動部であるフォークシリンダ63の動作によりベース30の長手方向に沿って左右方向である第1方向xに移動する。
【0030】
フォーク60は、略L字形で、例えば2本用いられ、基端側が移動フレーム62にフォーク支持体64を介して取り付けられ、先端側が可動パーム40に向けて略水平状に突出されている。フォーク60の先端側は、可動パーム40と干渉しないように可動パーム40よりも下方に配置され、かつ下降した係合部48と干渉しないように係合部48に対して幅方向の両側に離れた位置に配置されている。
【0031】
また、押えユニット33は、物品12を上方から押える押え部材70と、この押え部材70を上下方向である第2方向yに昇降させる昇降駆動部71とを備えている。押え部材70は、物品12の上面に接触する部分が弾性を有するとともに摩擦係数の高い例えばゴムや樹脂によって形成されている。昇降駆動部71は、例えばシリンダが用いられ、ベース30の下面に固定された取付部材72に取り付けられている。
【0032】
また、物品移送装置15は、この物品移送装置15を制御する制御部を備えている。制御部は、移動装置21の各軸を駆動する各軸モータを制御する各軸制御部と、ハンド装置20の物品検知部などの検知部からの検知信号を入力してシリンダ43,63および各駆動部49,50,71などを制御するハンド制御部とを備えている。
【0033】
次に、制御部の制御による物品移送装置15のハンド装置20を用いた物品取出方法を
図7ないし
図10を参照して説明する。
【0034】
図7(a)に物品取出方法のステップ1を示す。移動装置21によりハンド装置20を、物品供給部16上の取り出す物品12の取出位置に移動させて停止させる。ハンド装置20の取出位置への移動は、物品供給部16上の物品12が所定の位置に位置決めされていること、および物品供給部16上での物品12の荷積み状況の情報が制御部に予め入力されていることにより、取り出す物品12の取出位置にハンド装置20を移動させることが可能となっている。なお、物品供給部16の物品12の荷積み状況を撮像した撮像情報から物品12の位置を特定し、取り出す物品12の取出位置にハンド装置20を移動させてもよいし、センサからの検知信号によって停止位置の位置決めを実行してもよい。
【0035】
取出位置に移動させるときのハンド装置20は、可動パーム40およびフォーク60がそれぞれ後退した原点位置にあり、可動パーム40の係合部48が上昇かつ後退移動されているとともに押え部53が上昇移動された状態にあり、押えユニット33の押え部材70が上昇移動された状態にある。
【0036】
ハンド装置20の取出位置では、可動パーム40の押え面44が取り出す物品12の側面に対向され、押え部53が取り出す物品12よりも上方に位置され、また、押えユニット33の押え部材70が取り出す物品12よりも上方に位置してその物品12の上面に対向され、また、フォーク60の先端側が取り出す物品12に対して下側の物品12またはパレット11よりも少し高い高さに位置される。
【0037】
続いて、
図7(b)に物品取出方法のステップ2を示す。押えユニット33の押え部材70を下降させ、取り出す物品12を上方から押える。これは、可動パーム40が取り出す物品12の側面に接触した場合でも取り出す物品12およびこの物品12に隣り合う物品12の位置がずれるのを防止するためである。
【0038】
押えユニット33の押え部材70を下降させるのと略同時に、可動パーム40の係合部48を下降位置に下降させる。下降位置に下降した係合部48は、取り出す物品12の被係合部28よりも下方に位置される。
【0039】
続いて、
図7(c)に物品取出方法のステップ3を示す。可動パーム40の進退駆動部49により係合部48を前進させて可動パーム40の押え面44から突出させる。
【0040】
続いて、
図8(a)に物品取出方法のステップ4を示す。パームシリンダ43により可動パーム40を物品12に向けて前進させ、可動パーム40に設けられている物品検知部の検知信号に基づいて、可動パーム40の押え面44が取り出す物品12の側面に近接または接触した位置で前進完了を検知し、可動パーム40の前進を停止させる。なお、可動パーム40の押え面44が物品12の側面に接触する場合には、物品12は側面から被係合部28が突出されているため、可動パーム40の押え面44は物品12の側面の一部である被係合部28に接触することになる。また、物品12や被係合部28の形状によっては、可動パーム40の押え面44を物品12の側面に非接触の近接位置で停止させることも可能である。
【0041】
可動パーム40の押え面44が物品12の側面に近接または接触した位置では、係合部48の先端側が物品12の被係合部28の下方領域に進入した位置に位置される。
【0042】
続いて、
図8(b)に物品取出方法のステップ5を示す。可動パーム40の前進完了の検知に基づいて、押えユニット33の昇降駆動部71により押え部材70を上昇させ、取り出す物品12の上方からの押えを解除する。
【0043】
続いて、
図8(c)に物品取出方法のステップ6を示す。可動パーム40の係合用昇降駆動部50により係合部48を上昇位置に上昇させる。上昇する係合部48は、物品12の側面の被係合部28に係合し、係合状態のまま物品12の片側を持ち上げる。これにより、取り出す物品12が載置された状態の起立姿勢から傾いた傾斜姿勢となり、下側の物品12との間あるいはパレット11との間にフォーク60を差し込み可能な隙間が形成される。この状態では、物品12の底面の1辺が支点となって載置面と接触し、底面の他辺が持ち上がった状態となっている。詳しくは、第1面12aとしての物品12の側面とは、反対側の側面と底面とで形成される1辺が支点となって、物品12全体が傾斜した姿勢となっている。そして、物品12の姿勢が起立姿勢から傾斜姿勢に変化したことにより、物品12の底面下側に隙間が空くことになる。
【0044】
続いて、
図9(a)に物品取出方法のステップ7を示す。可動パーム40の押え用昇降駆動部54により押え部53を下降させる。下降する押え部53は、物品12の上面に上方から接触して押え、係合部48との間に物品12を挟持する。押え部53の先端側には先端側に向って下降傾斜する傾斜部55が設けられているため、押え部53が傾斜している物品12の上面に沿って接触し、この押え部53と係合部48との間に物品12を確実に挟持できる。
【0045】
続いて、
図9(b)に物品取出方法のステップ8を示す。フォークシリンダ63によりフォーク60を前進させ、持ち上げられている取り出す物品12と下側の物品12あるいはパレット11との間の隙間に差し込む。同時に、パームシリンダ43により可動パーム40を後退させて原点位置に戻す。可動パーム40を後退させると、係合部48と押え部53との間で挟持している物品12も可動パーム40と一緒に移動する。そのため、フォーク60と物品12とが互いに接近移動し、フォーク60上に物品12を迅速に乗り移らせることができる。そして、可動パーム40の後退時には、物品12を下方と上方を係合部48と押え部53とで挟持した状態で、さらに可動パーム40が物品12の側面の側に位置するため、物品12が水平方向に位置ずれを起こすことを防止することができる。
【0046】
続いて、
図9(c)に物品取出方法のステップ9を示す。可動パーム40の押え用昇降駆動部54により押え部53を上昇させて物品12から上方に離反させるとともに、可動パーム40の係合用昇降駆動部50により係合部48を下降させて物品12の被係合部28から下方に離反させて係合部48と被係合部28との係合状態を解消し、物品12の挟持を解除する。挟持が解除された物品12は、フォーク60の先端側との接触位置と物品12の重心との関係により物品12の底面がフォーク60上に載るように水平状態の起立姿勢となってフォーク60上に積載される。なお、フォーク60の先端側との接触位置と物品12の重心との関係により物品12が傾斜した状態を保つ場合もある。
【0047】
続いて、
図10(a)に物品取出方法のステップ10を示す。押えユニット33の昇降駆動部71により押え部材70を下降させ、物品12を上方から押えてフォーク60との間に挟み込んで保持する。このとき、上述したように物品12が傾斜した状態にあった場合には、押え部材70で物品12を上方から押えることにより、物品12の底面がフォーク60上に載るように水平姿勢となってフォーク60上に積載される。そして、物品12を側方の可動パーム40と、下方のフォーク60と、上方の押え部材70との3方向から支持することで、ハンド装置20内に物品12を確実に保持することができる。
【0048】
続いて、
図10(b)に物品取出方法のステップ11を示す。可動パーム40の係合用昇降駆動部50により係合部48を上昇させる。これは、ハンド装置20で保持した物品12を物品移送部17のステーションコンベヤに移載する際に、係合部48がステーションコンベヤのローラなどと干渉するのを防止するためである。なお、係合部48がステーションコンベヤのローラなどと干渉することがない場合には、このステップ11は不要であり、さらにステップ2の係合部48の下降も不要である。
【0049】
そして、物品12を保持したハンド装置20を移動装置21により物品移送部17に移動させ、ハンド装置20からステーションコンベヤに物品12を移載する。物品12の移載は、ステーションコンベヤ上で押えユニット33の押え部材70を上昇させて保持を解除し、フォーク60を下降させてフォーク60上の物品12をステーションコンベヤ上に移載し、フォーク60を後退させて物品12の下側から引き抜く。
【0050】
以上のように本実施形態のハンド装置20により、側面に突出部27を有するなどのために側面の吸着が適さない物品12を確実に保持することができる。
【0051】
すなわち、可動パーム40が物品12の側面に近接または接触した状態で、係合部48が被係合部28と係合するとともに押え部53が物品12を上方から押圧することにより、係合部48および押え部53により物品12を確実に挟持し、ハンド装置20により物品12を保持できる。
【0052】
しかも、物品12の下方と上方を係合部48と押え部53とで挟持した状態で、可動パーム40が物品12の側面に近接または接触しているため、可動パーム40が移動しても、物品12の回転などによる位置ずれを起こすことを防止することができる。
【0053】
さらに、係合部48は、載置された起立姿勢の物品12の被係合部28を上昇させることで、物品12の底面の一辺を支点に他辺が持ち上がる傾斜姿勢に物品12を傾動させ、また、押え部53は、傾斜した物品12を上方から押圧することで、傾斜姿勢の物品12を係合部48とで挟持するため、物品12を傾斜姿勢で保持することができる。
【0054】
さらに、フォーク60は、物品12の起立姿勢から傾斜姿勢への変化によって生じた物品12の底面下側の隙間に向けて進出することにより、係合部48と被係合部28との係合が解消されて起立姿勢に復帰した物品12の底面を支持することができる。
【0055】
さらに、フォーク60を物品12の底面下側に差し込む際、可動パーム40の係合部48と押え部53により挟持された状態の物品12をフォーク60上に移動させるようにフォーク60が差し込まれる方向とは反対方向に向けて可動パーム40を移動させることにより、フォーク60の短い移動距離で、フォーク60上に物品12を迅速に積載でき、積載処理を効率的にできる。
【0056】
また、係合部48による係合状態を解除して起立姿勢に戻った物品12の側面の対向位置に可動パーム40が位置するため、物品12を下方のフォーク60と、上方の押え部材70とで保持した際に可動パーム40が物品12の回転などによる位置ずれを防止することになり、ハンド装置20の全体が移動する際に物品12が位置ずれしないように確実に保持することができる。
【0057】
また、係合部48は、可動パーム40の押え面44から進退可能に設けられるため、物品12の被係合部28に係合させるとき以外には後退させ、物品12との干渉による物品12の位置ずれなどの発生を防止することができる。
【0058】
なお、上述した物品12の場合、側面に突出する突出部27を係合部48が係合可能な被係合部28としたが、例えば、被係合部28は物品12の側面に設けられた孔部や段差部などでもよく、いずれの形態でも被係合部28が側面に設けられた物品12であればハンド装置20により保持できる。
【0059】
また、上面に被係合部28を有する物品12の場合でも、ハンド装置20の向きを90°変更することにより物品12を保持することが可能となる。
【0060】
なお、ハンド装置20は、パレタイジングに使用してもよく、その場合はステーションコンベヤ等から個別に載置された物品12を取り出して移載先である例えばパレット11に移載することになる。ステーションコンベヤから物品12を取り出す際は、
図7ないし
図8に記載の動作をさせてもよいが、プッシャを用いてハンド装置20内へ物品12を搬入し、押えユニット33の押え部材70と支持部であるフォーク60とで物品12を挟持してもよい。つまり、ハンド装置20は、パレタイジング、デパレタイジングを含む移載作業の目的に関係なく、物品12を取り出す目的であれば各種の作業に使用することができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態およびその変形例について説明したが、種々の構成の組み合わせ、一部の省略、置き換えおよび変更も可能である。
【符号の説明】
【0062】
12 物品
15 物品移送装置
20 ハンド装置
21 移動装置
30 ベース
40 パームである可動パーム
48 係合部
53 押え部