IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タケトモの特許一覧

<>
  • 特開-PTP包装体用蓋材 図1
  • 特開-PTP包装体用蓋材 図2
  • 特開-PTP包装体用蓋材 図3
  • 特開-PTP包装体用蓋材 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117840
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】PTP包装体用蓋材
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/34 20060101AFI20240822BHJP
   B65D 83/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B65D75/34
B65D83/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024105962
(22)【出願日】2024-07-01
(62)【分割の表示】P 2018104039の分割
【原出願日】2018-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】396023328
【氏名又は名称】株式会社タケトモ
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 一浩
(57)【要約】
【課題】樹脂フィルムを用いずにチャイルドレジスタンス機能を備えたPTP包装体用蓋材を提供する。
【解決手段】PTP包装体用蓋材1は、アルミニウム箔層2を備え、樹脂フィルム層を有さず、アルミニウム箔層2が厚み25μm~33μmの軟質アルミニウム箔からなり、蓋材1のミューレン破裂強度が225kPa~300kPaであることを特徴とする。蓋材1の押出強度は35N~80Nであるのが好ましく、例えば、アルミニウム箔層2の裏面側にヒートシール層3を備え、アルミニウム箔層2の表面側に印刷層4と、その上にオーバープリント層5を備えることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔層を備え、樹脂フィルム層を有さないPTP包装体用蓋材であって、
前記アルミニウム箔層が厚み25μm~33μmの軟質アルミニウム箔からなり、前記蓋材のミューレン破裂強度が225kPa~300kPaである、PTP包装体用蓋材。
【請求項2】
前記蓋材の押出強度が35N~80Nである請求項1に記載のPTP包装体用蓋材。
【請求項3】
前記軟質アルミニウム箔の伸びが5%以上であり、降伏応力が100N/mm以下であり、引張強度が100N/mm以下である、請求項2に記載のPTP包装体用蓋材。
【請求項4】
前記アルミニウム箔層の裏面側にヒートシール層を備え、前記アルミニウム箔層の表面側に印刷層と、前記印刷層の上にオーバープリント層を備えた請求項1~3のいずれか一項に記載のPTP包装体用蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に錠剤などの医薬品等を包装するPTP包装体に用いる蓋材に関し、より詳しくは、チャイルドレジスタンス機能を備えたPTP包装体用蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤、カプセル剤などの医薬品の包装には、PTP包装体(プレススルーパック)が用いられることが多い。PTP包装体は、例えば、塩化ビニルなどからなる底材のポケット部(収容凹部)に錠剤などの医薬品を個別に収納し、アルミニウム箔又は樹脂フィルムなどからなる蓋材で被覆されている。ポケット部(収容凹部)を指などで押圧することにより、錠剤などの医薬品が、蓋材を破り貫通して、医薬品を簡単に取り出せるようにしたものである。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、全面に微細な多数の孔を形成した厚さが10~30μmのポリテレフタル酸エチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムに厚さが10~40μmのシーラント層を積層してなるPTP包装用のトップフィルムであって、上記孔はシーラント層に向って逆円錐又は逆角錐状あるいは逆円錐台又は逆角錐台状に形成されてシーラント層との積層面で15μmφ以下の径を有し、かつ該孔を1cm当り400~3000個設けてなることを特徴とするPTP包装用トップフィルムが開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、樹脂フィルム層、基材層および熱接着層をこの順に有する蓋材と、フランジ部および多数のポケット部を有する容器とを備え、プレススルー機能とイージーピール機能とを併せ持ち、樹脂フィルム層の一方面に、連続した直線状のハーフカットが、複数互いに略平行に、条をなすように設けられ、隣り合うハーフカットの間隔は、ポケット部の平均径よりも小さく、ハーフカットの少なくとも部分が、すべてのポケット部に対応する領域に位置し、かつ、熱接着層がイージーピール性熱接着層からなり、イージーピール性熱接着層によって基材層とフランジ部とが接着され、蓋材を引き剥がす方向と条の方向とが一致するように、プレススルーパック包装体の周縁部の一辺全体にわたる掴み部を設けたことを特徴とする、プレススルーパック包装体が示され、これは、老人や幼児などにとっては薬剤を押し出しやすく、さらに病院などでは、一度に多数の薬剤を容易に取り出すことができるようにしたものである。
【0005】
しかし、近年では、PTP包装体から医薬品が簡単に取り出せてしまうと、幼児や子供が誤飲してしまうおそれがあり問題となっていた。そこで、大人には簡単に取り出せる(シニアフレンドリー)が、幼児・子供には取り出しにくくしたチャイルドレジスタンス機能(略してCR機能ともいう。)を備えたPTP包装体の蓋材が開発されている。
【0006】
例えば、下記特許文献3には、樹脂フィルム、アルミニウム箔、および熱接着層を備え、前記樹脂フィルムに、テーパー状の貫通孔が形成されている、プレススルーパックの蓋材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3035462号公報
【特許文献2】特許第5376646号公報
【特許文献3】特開2014-181069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1又は2に開示された蓋材は、穿孔やハーフカットなどの加工を施さなければならないため、製造において新たな設備を準備しなければならず、コストが高くなるという製造上の問題があった。
また、医薬品を収容するPTP包装体は、医薬品の劣化を防ぐため密閉する必要がある。そのため、例えば、約260±10℃と高温でヒートシールする必要がある。このような高温でヒートシールすると、上記特許文献3に開示された蓋材では、樹脂フィルムが溶融し、貫通孔が塞がれて医薬品が全く押し出せなくなるおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、樹脂フィルムを用いずにチャイルドレジスタンス機能を備えたPTP包装体用蓋材を提供することにあり、さらには、このPTP包装体用蓋材は製造において新たな設備を必要としないなどの利点もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態のPTP包装体用蓋材は、アルミニウム箔層を備え、樹脂フィルム層を有さないPTP包装体用蓋材であって、アルミニウム箔層が厚み25μm~33μmの軟質アルミニウム箔からなり、蓋材のミューレン破裂強度が225kPa~300kPaである、ことを特徴とする。
【0011】
従来では、PTP包装体の蓋材にアルミニウム箔層を設ける場合は、主に硬質アルミニウム箔を用いていたが、本形態の蓋材は軟質アルミニウム箔を用いることにより、硬質アルミニウム箔よりも伸びるため収容物を押し出そうとする際に小さな圧ではアルミ箔が伸びて押出しにくくなる。また、蓋材のミューレン破裂強度が200kPa以上であることにより、大人では取り出せるが幼児・子供では取出しにくい強度にすることができ、シニアフレンドリーでありながらチャイルドレジスタンス機能を備えた蓋材にすることができる。
【0012】
上記一形態の蓋材は、ミューレン破裂強度を200kPa~300kPaにするのが好ましい。ミューレン破裂強度がこの値を超えると蓋材が破れにくくなり、大人でも収容物を取出しにくくなるおそれがある。
【0013】
上記一形態の蓋材において、軟質アルミニウム箔は、厚みが17μm~45μmであり、また、JISH4160に規定される合金番号1N30、8079、8021のいずれかに属するものであるのが好ましい。特にこのような軟質アルミニウム箔がチャイルドレジスタンス機能を備えた蓋材にするのに適している。
【0014】
上記一形態の蓋材は、押出強度を35N以上にするのが好ましい。この値未満であると幼児・子供でも収容物を容易に取り出せてしまうおそれがある。
【0015】
上記一形態の蓋材は、アルミニウム箔層の裏面側にヒートシール層を備え、アルミニウム箔層の表面側に印刷層と、印刷層の上にオーバープリント層を備えた積層構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態のPTP包装体用蓋材を模式的に示した断面図である。
図2】本発明の他の実施形態のPTP包装体用蓋材を模式的に示した断面図である。
図3図1の蓋材を底材に貼付したPTP包装体を模式的に示した側面図である。
図4】実施例で用いたプラセボ錠を模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態のPTP包装体用蓋材を説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の一実施形態のPTP包装体用蓋材1(以下、蓋材1という。)は、図1に示すように、少なくともアルミニウム箔層2を備えたものであり、樹脂フィルムを積層しないことを特徴としたものである。
なお、樹脂フィルムとは、例えば、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリアミド(ナイロン)系フィルム、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アセタール系樹脂などの樹脂フィルムを示す。
【0019】
蓋材1は、本実施形態において、アルミニウム箔層2の裏面側にヒートシール層3(以下、HS層3ともいう。)を備え、表面側に印刷層4と、その上にオーバープリント層5(以下、OP層5ともいう。)を備える。
【0020】
アルミニウム箔層2は、軟質アルミニウム箔からなるものであり、特に限定するものではないが、JISH4160に規定される合金番号1N30、8079、8021のいずれかに属するものであることが好ましい。
なお、軟質アルミニウム箔とは、硬質アルミニウム箔に熱処理をして軟らかくしたものであり、例えば、アルミを圧延して薄く延ばした硬質アルミニウム箔に、400℃前後の熱処理をして作製することができる。
【0021】
アルミニウム箔層2の厚みは、特に限定するものではないが、好ましくは17μm~45μm、特に好ましくは20μm~35μm、さらに好ましくは25μm~33μmである。17μm未満であると破れやすくなり、45μmを超えると収容物を押し出しにくくなる。
【0022】
アルミニウム箔層2を形成する軟質アルミニウム箔は、伸びが、5%以上であるのが好ましく、7%~20%であるのが特に好ましい。5%以上であることにより、適度に伸びて幼児・子供が収容物を取り出しにくい蓋材1にすることができる。伸びは、アルミニウム箔層2の厚みを厚くすることや材質を選択することなどにより高めることができる。
なお、伸びは、例えば、下記実施例に示す測定方法により測定することができる。
【0023】
アルミニウム箔層2を形成する軟質アルミニウム箔は、降伏応力が、100N/mm以下であるのが好ましく、20N/mm~70N/mmであるのが特に好ましい。100N/mm以下であることにより、適度な応力で蓋材1が破れて大人が収容物を取り出しやすい蓋材1にすることができる。降伏応力は、アルミニウム箔層2の厚みを厚くすることや材質を選択することなどにより高めることができる。
なお、降伏応力は、例えば、下記実施例に示す測定方法により測定することができる。
【0024】
アルミニウム箔層2を形成する軟質アルミニウム箔は、引張強度が、100N/mm以下であるのが好ましく、50N/mm~80N/mmであるのが特に好ましい。100N/mm以下であることにより、適度な応力で蓋材1が破れて大人が収容物を取り出しやすい蓋材1にすることができる。
なお、引張強度は、例えば、下記実施例に示す測定方法により測定することができる。
【0025】
HS層3は、従来公知のヒートシール剤を用いて形成することができ、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などからなるヒートシール剤を用いて形成することができる。
HS層3は、例えば、ヒートシール剤をグラビアコートなどで塗布して形成することができ、コート量は、特に限定するものではないが、単位面積当たり2g/m~5g/m、好ましくは2.5g/m~4g/mに形成することができる。
【0026】
印刷層4は、例えば、文字、図形、記号、より具体的には、品名、価格、用量、効能・効果等の不変情報や製造年月日、ロット番号、有効期限等の可変情報などを印刷して形成することができる。なかでも、製品の個別の情報である、製造年月日やロット番号などの可変情報を含む一次元コード(例えばバーコード)や二次元コード(例えばQRコード(登録商標))を印刷することが好ましく、医薬品用のバーコードであるGS1(旧RSSコード)、GS1-RSSリミテッド合成シンボルCC-A、GS1-RSS14スタック合成シンボルCC-Aなどを印刷することが好ましい。
【0027】
印刷層4は、いずれの色で印刷してもよく、例えば、黒、青、緑、赤、黄などで印刷することができる。印刷層4の印刷に用いるインキは、従来公知のインキを用いることができ、例えば、印刷を黒色にする場合は、カーボンブラックを含むインキが好ましい。
印刷層4は、従来公知の方法で形成することができ、例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷などで形成することができる。
なお、印刷層4は、アルミニウム箔層2の裏面(HS層3側)に設けることもでき、アルミニウム箔層2の両面に設けてもよい。
【0028】
OP層5は、印刷層4等を保護するための層であり、従来公知のPTP包装体のOP層に用いられていたもので形成することができ、例えば、ニトロセルロース系、アクリル系、エポキシ系などの透明樹脂からなるOPコート剤をグラビアコートなどで塗布して形成することができる。
OP層5のコート量は、特に限定するものではないが、単位面積当たり0.5g/m~2.5g/m、好ましくは0.5g/m~1.5g/mで形成することができる。OP層5には、酸化ケイ素などのマット剤を3~5質量%含んでいてもよい。
【0029】
蓋材1は、アルミニウム箔層2、HS層3、印刷層4、OP層5以外の他の層を積層してもよく、例えば、アンカーコート層、プライマーコート層、着色層などを積層してもよい。着色層は、例えば、酸化チタンを白色顔料として含む白色層などにすることができる。
【0030】
蓋材1は、上から順に、OP層5/印刷層4/アルミニウム箔層2/HS層3の積層構成としてあるが、これに限定されるものではなく、例えば、図2に示すように、OP層5/印刷層4/アルミニウム箔層2/印刷層4/HS層3などの積層構成にすることができる。
【0031】
蓋材1の全体厚みは、特に限定するものではないが、25μm~55μmであるのが好ましく、30μm~45μmであるのが特に好ましい。
【0032】
蓋材1は、ミューレン破裂強度が200kPa以上であるのが好ましく、200kPa~300kPaであるのが特に好ましく、220kPa~280kPaであるのがさらに好ましい。このようにすることにより、幼児が医薬品などを取出しにくい蓋材1にすることができる。ミューレン破裂強度は、アルミニウム箔層2の厚みを厚くすることなどにより高めることができる。
なお、ミューレン破裂強度は、例えば、JIS P8131に準拠して測定することができる。
【0033】
蓋材1は、押出強度が35N以上であるのが好ましく、40N~80Nであるのが特に好ましく、45N~65Nであるのがさらに好ましい。このようにすることにより、幼児が医薬品などを取出しにくい蓋材1にすることができる。押出強度は、アルミニウム箔層2の厚みを厚くすることなどにより高めることができる。
なお、押出強度は、例えば、下記実施例に示す測定方法で測定することができる。
【0034】
蓋材1は、図3に示すように、塩化ビニルなどからなる底材6にヒートシールして貼付し、PTP包装体7とすることができる。ヒートシールは、例えば、約220℃~270℃、約0.2MPa~0.4MPaの条件でヒートシールすることができる。
PTP包装体7は、ポケット(収容凹部)8に、例えば、錠剤、カプセル剤などの医薬品や水銀電池などの電子部品などを収容することができ、幼児・子供が誤飲するおそれのあるものを収容することができる。
【0035】
蓋材1は、PTP包装体にした場合、幼児・子供には破れにくく、大人には容易に破ることができるため、シニアフレンドリーでありながらチャイルドレジスタンス機能を備えたPTP包装体にすることができる。従来のPTP包装体と同様にポケット8を押せば、内部の医薬品等を取り出すことができるため、使用方法は従来と変わらず、患者向けに詳しい指示をする必要がない。
また、樹脂フィルムを用いずにチャイルドレジスタンス機能を備えたPTP包装体にすることができ、従来の蓋材のように樹脂フィルムに穿孔などの加工を施す必要がなく、従来のラインスピードで生産でき、品質のばらつきを少なくすることができる。
さらに、コスト的にも安価にでき、例えば、既存の包装設備(PTP包装機、結束機、カートナーなど)が使えるため、従来よりも製造工数が増えることがない。
【実施例0036】
以下、本発明の一実施例のPTP包装体用蓋材を説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0037】
<実施例1>
実施例1のPTP包装体用蓋材を以下のように作製した。
【0038】
(アルミニウム箔層)
アルミニウム箔層として、JISH4160に基づく1N30材の軟質アルミニウム箔を用いた。その厚みは30μmである。
この軟質アルミニウム箔の伸びは9.10%、降伏応力は31.50N/mm、引張強度は64.00N/mmである。
【0039】
なお、アルミニウム箔の伸び、降伏応力、引張強度は、島津製作所製(株)の引張試験機(オートグラフ(登録商標)AGS-500NJ)を用いて測定した。アルミニウム箔の試験片としては、幅15.1mm×長さ150mmのものを用いた。以下の実施例2~4及び比較例1も同様に測定した。
この際の試験条件は、H材(硬質材)においてスタートから変位点までを1mm/minで引張し、変位点以降を2.5mm/minで引張するように設定した。また、O材(軟質材)においてスタートから変位点までを1mm/minで引張し、変位点以降を5mm/minで引張するように設定した。
【0040】
(印刷層)
印刷層として、アルミニウム箔層の表面(OP層側)に白色インキを全面に塗布し、その上にGS1データバーリミテッドを印刷した。また、裏面(HS層側)に、薬品名などを墨色、藍色、赤色のインキを用いて印刷した。
【0041】
(ヒートシール層)
ヒートシール層として、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体からなる大日精化工業(株)製ヒートシール剤(Aタイプ)を用い、アルミニウム箔層の裏面にグラビアコートして形成した。そのコート量は3.3g/mである。
【0042】
(オーバープリント層)
オーバープリント層として、東洋インキ(株)製OP剤(アクリル系透明樹脂)を用い、印刷層の上にグラビアコートして形成した。そのコート量は1.7g/mである。
【0043】
<実施例2>
実施例2のPTP包装体用蓋材は、アルミニウム箔層として以下のアルミニウム箔を用いた以外は実施例1と同様に作製した。
【0044】
(アルミニウム箔層)
アルミニウム箔層として、JISH4160に基づく8079材の軟質アルミニウム箔を用いた。その厚みは25μmである。
この軟質アルミニウム箔の伸びは12.50%、降伏応力は40.00N/mm、引張強度は79.50N/mmである。
【0045】
<実施例3>
実施例3のPTP包装体用蓋材は、アルミニウム箔層として以下のアルミニウム箔を用い、ヒートシール層を以下の構成にした以外は実施例1と同様に作製した。
【0046】
(アルミニウム箔層)
アルミニウム箔層として、JISH4160に基づく8079材の軟質アルミニウム箔を用いた。その厚みは30μmである。
この軟質アルミニウム箔の伸びは12.70%、降伏応力は40.00N/mm、引張強度は77.00N/mmである。
【0047】
(ヒートシール層)
ヒートシール層として、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体からなる大日精化工業(株)製ヒートシール剤(Aタイプ)を用い、アルミニウム箔層の裏面にグラビアコートして形成した。そのコート量は3.3g/mである。
【0048】
<実施例4>
実施例4のPTP包装体用蓋材は、アルミニウム箔層として以下のアルミニウム箔を用い、ヒートシール層を以下の構成にした以外は実施例1と同様に作製した。
【0049】
(アルミニウム箔層)
アルミニウム箔層として、JISH4160に基づく8079材の軟質アルミニウム箔を用いた。その厚みは30μmである。
この軟質アルミニウム箔の伸びは12.70%、降伏応力は40.00N/mm、引張強度は77.00N/mmである。
【0050】
(ヒートシール層)
ヒートシール層として、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体からなる大日精化工業(株)製ヒートシール剤(Bタイプ)を用い、アルミニウム箔層の裏面にグラビアコートして形成した。そのコート量は3.5g/mである。
【0051】
<比較例1>
比較例1のPTP包装体用蓋材は、アルミニウム箔層として以下のアルミニウム箔を用いた以外は実施例1と同様に作製した。
【0052】
(アルミニウム箔層)
アルミニウム箔層として、JISH4160に基づく1N30材の硬質アルミニウム箔を用いた。その厚みは20μmである。
この硬質アルミニウム箔の伸びは2.25%、降伏応力は160.00N/mm、引張強度は185.00N/mmである。
【0053】
<ミューレン破裂強度試験>
実施例1~4及び比較例1の蓋材を用い、ミューレン破裂強度試験をJIS P8131に準拠して行った。
実施例1~3及び比較例1はHS層側から測定し、実施例4はHS層側及びOP層側の両方から測定した。測定を3回行い、平均値を算出した。
その結果を下記表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
(PTP包装体の作製)
実施例1~4及び比較例1の蓋材を、塩化ビニル(厚み250μm)からなり、ポケット(収容凹部)を10ヶ(2列×5行)有する底材に、240℃、0.4Paの条件でヒートシールしてPTP包装体を作製した。なお、各ポケットの大きさは最大直径約10mm、最大深さ約4.8mmであった。この際、底材の各ポケットにプラセボ錠(プラセボ製薬(株)製「還元麦芽糖加工食品」)を計10錠収容した。このプラセボ錠は、図4に示すように、直径(寸法X)が約8mm、最大厚み(寸法Y)が約3.5mm、最小厚み(寸法Z)が約2.1mmであった。
【0056】
<押出強度試験>
押出強度試験は、(株)エー・アンド・ディ製フォーステスター(型式;MCT-2150)を用いて行った。より具体的には、直径が5mmの円柱状の押出治具を底材に当て、10mm/minの速度で底材側から錠剤を圧迫し、蓋材が錠剤によって破断する最大荷重を測定した。この値を5回測定して平均値を算出した。
その結果を下記表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
<チャイルドレジスタント試験>
実施例4及び比較例1の蓋材から作製した上記PTP包装体を用いて、チャイルドレジスタント試験を以下の条件で行った。
1.年齢が42~60ヶ月の子供(パネラー)に対してPTP包装体を与える。
2.彼らはどのような手段で開封してもよい(噛むなども可)。
3.子供に5分間与え、何個取り出せるか計測する。但し、パネラー本人から「固くて取り出せない」などの申告(ギブアップ申告)があれば、その時点で試験終了とする。
4.なお、実施例4又は比較例1のどちらのPTP包装体から試験するかは、パネラーの選択とした。
【0059】
チャイルドレジスタント試験の試験結果を下記表3に示す。なお、表3中のgive upは、ギブアップ申告があった時間を示す。
【0060】
【表3】
【0061】
(チャイルドレジスタント試験結果)
実施例4のPTP包装体は、取出せた錠剤の個数は平均約1.4錠であった。10錠を全て取り出せる子供もいたが、18名中13名は1錠も取り出せなかった。また、15名は途中でギブアップ申告をして開封するのをあきらめた。
よって、実施例4のPTP包装体は、錠剤を取出しにくく、チャイルドレジスタンス機能を備えたPTP包装体であることが確認された。
【0062】
これに対し、比較例1のPTP包装体は、18名全員が10錠の全てを取り出すことができた。蓋材は簡単に破ることができ、錠剤などの医薬品が簡単に取り出されてしまうものであった。
【0063】
<シニアフレンドリー試験>
実施例4の蓋材から作製した上記PTP包装体を用いて、シニアフレンドリー試験を以下の条件で行った。
1.年齢が50~80歳のパネラーに対してPTP包装体を与える。
2.彼らはどのような手段で開封してもよい。
3.パネラーが5分以内に何錠を取り出せたかを記録する。
4.その後、ヒアリングを行い、錠剤の取り出し性について下記のA~Dのいずれに該当するかを回答してもらった。
A 固すぎ 製品としては不適と思われる
B かなり固い 幅広いユーザーを勘案すると問題がある
C やや固い 取出しに特段の困難さは感じない
D 固くない 通常の製品と変わらない
【0064】
シニアフレンドリー試験の試験結果を下記表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
(シニアフレンドリー試験結果)
大人(シニア)は、実施例4のPTP包装体でも時間内に10錠を全て取り出すことができた。従来と同じように、大人には容易に取り出せるシニアフレンドリーなPTP包装体であることが確認された。
【符号の説明】
【0067】
1…蓋材
2…アルミニウム箔層
3…ヒートシール(HS)層
4…印刷層
5…オーバープリント(OP)層
6…底材
7…PTP包装体
8…ポケット(収容凹部)
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔層を備え、樹脂フィルム層を有さないPTP包装体用蓋材であって、
前記アルミニウム箔層が厚み25μm~33μmの軟質アルミニウム箔からなり、前記蓋材のミューレン破裂強度が225kPa~300kPaである、PTP包装体用蓋材。