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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117851
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】器具用付属品
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240822BHJP
   A61B 1/01 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61B1/00 650
A61B1/01 513
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107098
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2022549414の分割
【原出願日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】62/978,018
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】パロマー-モレノ、ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ダガッド、ダルシャン
(72)【発明者】
【氏名】キルクーリー、ジョン
(57)【要約】
【課題】体内の状態の検査及び治療、例えば大腸内視鏡を通じた結腸内ポリープ切除に使用される処置の有効性と効率を向上すること。
【解決手段】器具用付属装置は拡張可能部材を備える。拡張可能部材は大腸内視鏡ルーメンを画定する内面と内面の周りに配置される外面とを備える。内面は、第一の弾性により特徴付けられる材料からなり、外面は第二の弾性により特徴付けられる材料からなり、第二の弾性は第一の弾性より高い。それによって、大腸内視鏡ルーメンが収縮状態で、大腸内視鏡検査処置中に展開され、展開された状態で、収縮状態から拡張状態に移行するように拡張され、展開された状態かつ拡張状態において、大腸内視鏡の少なくとも一部分を摺動可能に受けるように構成される。
【選択図】 図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具用付属装置であって、
拡張可能部材を備え、前記拡張可能部材は、近位端、遠位端、及び長さ方向に前記近位端と前記遠位端とを挿通する大腸内視鏡ルーメンを有し、前記拡張可能部材は前記大腸内視鏡ルーメンを画定する内面と前記内面の周りに配置される外面とを備え、前記拡張可能部材は収縮状態と拡張状態とを有し、
前記内面は第一の弾性により特徴付けられる材料からなり、前記外面は第二の弾性により特徴付けられる材料からなり、前記第二の弾性は前記第一の弾性よりも弾性が高く、それによって、前記大腸内視鏡ルーメンが
前記収縮状態で、大腸内視鏡検査処置中に展開され、
展開された状態で、前記収縮状態から前記拡張状態に移行するように拡張され、
展開された状態かつ前記拡張状態において、大腸内視鏡の少なくとも一部分を摺動可能に受ける
ように構成される、器具用付属装置。
【請求項2】
前記大腸内視鏡ルーメンは、前記拡張可能部材が前記収縮状態にある場合に前記大腸内視鏡と摩擦接触を保持するように構成される、請求項1に記載の器具用付属装置。
【請求項3】
前記大腸内視鏡ルーメンは、前記拡張可能部材が前記拡張状態にある場合に大腸内視鏡の並進移動を可能にするように構成される、請求項1又は2に記載の器具用付属装置。
【請求項4】
前記拡張可能部材が前記収縮状態にある場合には、拡張可能部材直径若しくは大腸内視鏡ルーメン直径又は前記拡張可能部材直径と前記大腸内視鏡ルーメン直径の双方は、大腸内視鏡の直径と概ね等しく、
前記拡張可能部材が前記拡張状態にある場合には、前記拡張可能部材直径若しくは前記大腸内視鏡ルーメン直径又は前記拡張可能部材直径と前記大腸内視鏡ルーメン直径の双方は、大腸内視鏡の直径よりも大きい、請求項1から3のいずれか一項に記載の器具用付属装置。
【請求項5】
前記内面及び前記外面は、結合されて閉じた空洞を形成する、請求項1~4の何れか1項に記載の器具用付属装置。
【請求項6】
流体入口をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の器具用付属装置。
【請求項7】
前記拡張可能部材の長さ方向軸線は、前記大腸内視鏡の長さ方向軸線と概ね平行である、請求項1~6の何れか1項に記載の器具用付属装置。
【請求項8】
前記外面の材料は柔軟であり、体内空洞に適合して拡張するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の器具用付属装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医療装置に関する。より詳しくは、本開示は、特にポリープ切除等の大腸内視鏡検査処置の有効性と効率を向上させ得るような器具用付属装置及び関連するシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、医療処置において体内の状態を検査し、治療するために使用される長い柔軟な器具である。内視鏡の一例は大腸内視鏡であり、大腸内視鏡検査に使用される。大腸内視鏡の長さと結腸の解剖学的特徴のために、幾つかの処置中、例えばポリープ切除中、大腸内視鏡が結腸内で変形し、又は「ループを形成」して、それが患者に苦痛を与え、処置時間を長引かせる可能性がある。ループの形成が起こると、内視鏡の移動可能性が限定され得る。その結果、大腸内視鏡検査処置をやり直す必要が生じ得、処置の有効性と効率が損なわれ得る。内視鏡医はループ形成を起こりにくくする方法の訓練を受けるものの、この問題は依然として繰り返されている。
【0003】
上記の事柄を考慮すると、本開示の改良は有益であり得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、その各種の態様において、概して器具用付属装置、実装方法、及び関連するシステムに関する。本明細書に記載されているものを含む本開示による実施形態は、特に体内の状態の検査及び治療、例えば大腸内視鏡を通じた結腸内ポリープ切除に使用される処置の有効性と効率を向上させ得る。
【0005】
ある態様において、装置は、近位端、遠位端、及び長さ方向に延びる器具ルーメンを有する拡張可能部材を備え得、拡張可能部材は、器具ルーメンを画定する内面と内面の周囲に配置される外面を備える。内面は、第一の弾性により特徴付けられる材料からなり、外面は第二の弾性により特徴付けられる材料からなり、第二の弾性は第一の弾性より高い。
【0006】
本明細書に記載されている、又はそれ以外の各種の実施形態において、器具ルーメンは、拡張可能部材が拡張状態にある場合に器具を受けるように構成され得る。器具ルーメンは、拡張可能部材が収縮状態にある場合に、器具との摩擦接触を保持するように構成され得る。器具ルーメンは、拡張可能部材が拡張状態にある場合に、器具の並進移動を可能にするように構成され得る。拡張可能部材が収縮状態にある場合、拡張可能部材の直径、器具ルーメンの直径、又はその両方は器具の直径に対応し、拡張可能部材が拡張状態にある場合、拡張可能部材の直径、器具ルーメンの直径、又はその両方は器具の直径より大きい。内面と外面は、結合されて閉じた空洞を形成し得る。装置は、流体入口をさらに含み得る。長さ方向軸線に沿った拡張可能部材の長さは、長さ方向軸線に沿った器具の長さと同一の範囲を有し得る。器具は、大腸内視鏡を含み得る。
【0007】
ある態様において、システムは大腸内視鏡を備え得る。システムは、大腸内視鏡の周囲に配置可能な大腸内視鏡用付属品を備え得る。大腸内視鏡用付属品は、近位端、遠位端、及び長さ方向に延びる器具ルーメンを有する拡張可能部材を備え得、拡張可能部材は、器具ルーメンを画定する内面と、内面の周囲に配置される外面とを備える。内面は、第一の弾性により特徴付けられる材料からなり、外面は第二の弾性により特徴付けられる材料からなり、第二の弾性は第一の弾性より高い。器具ルーメンは、拡張可能部材が拡張状態にある場合に、大腸内視鏡の少なくとも一部を摺動可能に受けるように構成され得る。
【0008】
本明細書に記載されている、又はそれ以外の各種の実施形態において、拡張可能部材は、拡張可能部材が収縮状態にある場合に大腸内視鏡との摩擦接触を保持し得る。内面は、第一の弾性により特徴付けられる材料からなり、外面は第二の弾性により特徴付けられる材料からなり、第二の弾性は第一の弾性より高い。外面の材料は柔軟であり、拡張して体内空洞の全部又は一部に適合するように構成され得る。拡張可能部材が拡張状態にあるとき、器具ルーメンの内径により大腸内視鏡は器具ルーメン内を自由に移動でき得る。拡張可能部材は、空気圧により、電気的に、又は機械的に拡張可能であり得る。
【0009】
ある態様において、体内管腔内で処置を行う方法は、器具を体内管腔内の少なくとも途中まで前進させるステップを含み得る。器具は、器具の少なくとも遠位部分の周囲に配置された拡張可能部材を有する器具用付属装置を備え得、拡張可能部材は近位端、遠位端、及びその中に長さ方向に延びる器具ルーメンを有する。拡張可能部材は、器具ルーメンを画定する内面と、内面の周囲に配置される外面とを備え得る。拡張可能部材は、拡張可能部材の直径と器具ルーメンの直径の一方又は両方が器具の直径に対応し得る収縮状態と、拡張可能部材の直径と器具ルーメンの直径の一方又は両方が器具の直径より大きい拡張状態を有し得る。方法は、拡張可能部材を拡張状態へと拡張させるステップと、拡張部材が拡張状態にある間に、体内管腔内で器具を、器具ルーメンを通じて前進又は後退させ続けるステップと、を含み得る。
【0010】
本明細書に記載されている、又はそれ以外の各種の実施形態において、体内管腔内で拡張可能部材を拡張させることによって、器具ルーメンの内径は、器具が拡張可能部材の器具ルーメン内で移動できるように拡張し得る。拡張可能部材を拡張させることにより、器具は器具ルーメン内で並進移動でき得る。拡張可能部材を拡張させるステップは、ガス又は液体を拡張可能部材に注入するステップを含み得る。拡張可能部材を収縮させるステップは、ガス又は液体を拡張可能部材から除去するステップを含み得る。外面は、拡張可能で体内管腔に適合し得る柔軟材料を含み得る。拡張可能部材の外径の拡張により、体内管腔内での拡張可能部材の移動が阻止され得る。体内管腔は結腸を含み得、器具は大腸内視鏡を含み得る。拡張可能部材の近位端は、処置中に体内管腔の外部にとどまり得る。拡張可能部材を拡張させることにより、拡張可能部材の外径が優先的に拡張し得る。
【0011】
ある態様において、外径は拡張し得る。外径を拡張させても内径を拡張しないようにし得る。器具は、拡張可能部材の内面との摩擦接触を保持し得る。
本開示の非限定的な例を添付の図面を参照しながら例として説明するが、図は概略的であり、正確な縮尺で描かれることは意図されていない。図中、同じ又はほとんど同じコンポーネントの各々は典型的に、1つの番号で表されている。明瞭にするために、全ての図面で全てのコンポーネントに符号が付けられているとはかぎらず、本開示の各実施形態のコンポーネントは、当業者が本開示を理解できるようにする上で図示が必要でなければ、その全てが示されているとはかぎらない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本開示のある実施形態において説明されているタイプの例示的な大腸内視鏡を示す。
図1B】本開示のある実施形態において説明されているタイプの例示的な大腸内視鏡システムを示す。
図2A】本開示のある実施形態による、体内で収縮状態である器具用付属装置と、そこを通って延びる、図1の大腸内視鏡等の例示的な大腸内視鏡を備える大腸内視鏡システムの部分断面図を示す。
図2B】本開示のある実施形態による、体内で拡張状態である図2Aの装置等の器具用付属装置と、そこを通って延びる、図1の大腸内視鏡等の例示的な大腸内視鏡を備える大腸内視鏡システムの部分断面図を示す。
図3A】本開示のある実施形態による収縮状態の器具用付属装置の斜視図を示す。
図3B】収縮状態にある図3Aの器具用付属装置の断面図を示す。
図4A】本開示のある実施形態による、完全に拡張状態にある器具用付属装置の斜視図を示す。
図4B】拡張状態にある図4Aの器具用付属装置の断面図を示す。
図5】本開示のある実施形態による、収縮状態にある大腸内視鏡システムの斜視図を示す。
図6】本開示のある実施形態による、大腸内視鏡を器具用付属装置に挿入しているときの大腸内視鏡システムの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は本開示の典型的又は例示的な実施形態のみを示そうとしている点に留意されたい。従って、図面は本開示の範囲を限定するものと考えないようにすべきである。本開示をここで、添付の図面を参照しながらより詳しく説明する。
【0014】
本開示による各種の実施形態を以下に説明する。本明細書中で使用されるかぎり、「近位端」とは、ある装置の、その装置を患者に導入する際に装置に沿って医療従事者に最も近い端を指し、「遠位端」とは、ある装置又は物体の、移植、配置、又は送達中にその装置に沿って医療従事者から最も遠くの端を指す。
【0015】
本明細書及び付属の特許請求の範囲の中で使用されるかぎり、単数形の冠詞(a、an、the)は、文脈上明らかに他の解釈が必要な場合を除き、複数形も含む。本明細書及び付属の特許請求の範囲の中で使用されるかぎり、「又は」という用語は、文脈上明らかに他の解釈が必要な場合を除き、概して「及び/又は」を含むその意味において使用されている。
【0016】
本明細書中で「ある実施形態」、「幾つかの実施形態」、「他の実施形態」等への言及は、説明されている実施形態が1つ又は複数の特定の特徴、構造、及び/又は特性を含み得ることを示している点に留意されたい。しかしながら、このような言及は必ずしも、全ての実施形態がその特定の特徴、構造、及び/又は特性を含むことを意味しているとはかぎらない。それに加えて、特定の特徴、構造、及び/又は特性が1つの実施形態に関連して記載されている場合、かかる特徴、構造、及び/又は特性は、明確な別段のことわりがないかぎり、明示的に記載されているか否かを問わず、他の実施形態に関連しても使用され得ると理解すべきである。
【0017】
詳細な説明は、図面を参照しながら読むべきであり、図は必ずしも正確な縮尺によらず、例示的な実施形態を示しており、本発明の範囲を限定しようとしていない。
本開示は、内視鏡又はその他のような器具と共に使用するための器具用付属品を含む装置の各種の実施形態を開示する。器具用付属品は、内視鏡、ハンドル、器具用付属品、及び膨張流体又はその他のうちの1つ又は複数を含む内視鏡システムの一部として含められ得る。各種の実施形態において、器具用付属品は、その中を長さ方向に延びる器具ルーメンを有する拡張可能部材を含み得る。器具用付属品は、拡張可能部材の外面が体内管腔に適合し、及び/又はそれを拡張させる拡張状態を有し得、適合するという用語は、外面が体内管腔に完全に密着するか、又は移動できなくなるのに十分に密着することを指す。拡張可能部材は、大腸内視鏡検査等の医療処置中に、膨張させられて拡張状態となり得る。理解すべき点として、大腸内視鏡検査処置中に結腸を拡張させる能力によって、手術者は結腸及び/又は大腸内視鏡内のループを解くことができ得る。幾つかの実施形態において、拡張状態では、器具ルーメンの直径は付随的に拡大され得、それによって大腸内視鏡を器具アセンブリ内で自由に並進移動させることができ、さらにループを修正することができる。並進移動は、拡張可能部材が十分に膨張させられると行われ得る。拡張可能部材は、器具の並進移動が可能となる点のみまで膨張させるべきである。幾つかの実施形態において、拡張可能部材は、ガス又は液体を含む膨張流体を使って拡張され得る。幾つかの実施形態において、体内管腔としては、例えば消化器系又はその他の中の管腔、器官、血管、通路、又はその他を含み得る。
【0018】
大腸内視鏡検査等の内視鏡検査は、直腸又は腸出血、腹痛、がんのスクリーニング、及びポリープ等の問題に関して消化器系を検査するために使用される一般的な医療処置である。大腸内視鏡は、直腸から患者の体内に導入され、大腸内を前進させられる。大腸内視鏡は、組織の検体を採取するほか、その領域を目視検査するために使用され得る。大腸内を移動させている間に、大腸内視鏡はループ(例えば、「N」又は螺旋、アルファ、及び深い横方向のループ)を形成し得、それが大腸内視鏡の移動を妨げ、患者に苦痛を与えるほか、処置時間を長引かせる。
【0019】
様々な体内管腔内での前述のような様々な目的のための大腸内視鏡又はその他の器具の様々な使用のために、本開示の付属装置、システム、及び方法の実施形態は、医師がこの付属装置を用いない場合より精密に、正確に、且つ容易に処置を実施できるようにするために利用され得る。
【0020】
1つの実施形態において、器具用付属装置は、その中に延びる器具ルーメンを有する拡張可能部材を含み得る。拡張可能部材は器具ルーメンを画定する内面を含み得、これはバルーン、メッシュ、網目、フラップ、又はその他等の半柔軟材料からなり得る。拡張可能部材は外面を含み得、これはバルーン、メッシュ、網目、フラップ、又はその他等の柔軟弾性材料であり得る。拡張可能部材の内面と外面は、バルーンを構成し得る。各種の実施形態において、拡張可能部材は収縮状態から拡張状態へと移行させるために機械的に作動させられ、電気的に作動させられ、空気圧により作動させられ、膨張させられ得る。拡張状態では、拡張可能部材は体内管腔を閉塞させ、引き伸ばし、開存性を確立させ、又は開存性を保持し得る。
【0021】
器具用付属装置は流体入口を有し得、これは拡張可能部材の外面を通って内面及び外面により画定される空洞内へと延び得る。流体入口は、拡張可能部材を拡張させ、及び逆拡張、すなわち収縮させるための膨張流体を受け入れ得る。
【0022】
大腸内視鏡検査を実行する1つの方法によれば、大腸内視鏡の遠位端が患者の直腸を介して大腸内で前進させられ得る。患者の体内に入ると、体外に残る大腸内視鏡の近位端におけるハンドルから作業チャネルの中に通される器具を使って消化器系を目視検査し、生検又は試験のための組織を採取し得る。
【0023】
図1Aは、本明細書に記載の器具アセンブリと共に使用され得る大腸内視鏡の1つの実施形態を示す。大腸内視鏡101は、遠位端103と近位端104を含み、ルーメン又は作業チャネルがその中に延びる。近位端104のハンドル105は、医療従事者により内視鏡101をコントロールするために操作され得る。大腸内視鏡101は、当該大腸内視鏡101が例えばハンドル105のステアリングノブの操作により、患者の体内で移動しやすく、曲がりやすくなるために、大腸内視鏡101の挿入部分(例えば、フレキシブルなチューブ)の壁107に沿った切欠き部又はチャネル106を含み得る。
【0024】
図1Bは、本開示の実施形態による大腸内視鏡システム110の1つの実施形態を示しており、これは大腸内視鏡101の周囲に摺動可能に配置された器具用付属装置102を含む。器具用付属装置102は、拡張可能部材201と流体入口206とを含む。拡張可能部材201は、大腸内視鏡101の周囲に配置され、大腸内視鏡101の近位端104から遠位端103に延びるように示されている。大腸内視鏡は、拡張可能部材の入口221の中に入り出口222から出るように延びる。内面302は大腸内視鏡101と密着し、外面301は内面302を取り囲む。ある実施形態において、大腸内視鏡101は、患者の体内で大腸内視鏡101の長手を操舵するためのハンドル105を備え得る。拡張可能部材201は近位端200から遠位端202まで、大腸内視鏡101のハンドルの遠位側の挿入部材の長さの大部分にわたって延びる。大腸内視鏡101の長さは1600mm~2100mmであり得、外径は11.5mm~15mmである。器具用付属装置102の長さは大腸内視鏡101と同様であり得る。
【0025】
図2A及び図2Bは、腸100内の本開示のある実施形態による大腸内視鏡システム110の図を示しており、大腸内視鏡システム110は、大腸内視鏡101の周囲に摺動可能に配置された器具用付属装置102を含む。大腸内視鏡システム110の遠位端103は腸100内で前進させられ得、大腸内視鏡システム110の近位端104は体外に残ったままである。大腸内視鏡101にループが形成されないかぎり、器具用付属装置102は大腸内視鏡101の周囲にその収縮した、又はしぼんだ状態で配置されたままであり得る。その状態では、拡張可能部材201の器具ルーメン及び/又は内面は大腸内視鏡101に概して密着し、各々が大腸内視鏡の外径に概して対応する直径を有する。大腸内視鏡101にループ108が形成されると、器具用付属装置102は膨張させられ得る(図2B)。装置102の拡張可能部材201は、その膨張状態にある間は体内管腔109を実質的に膨張させ得る。拡張可能部材201は、拡張可能部材201の外面を通って延びる流体入口から膨張流体を供給することによって、収縮状態から膨張状態へと移行させられ得る。体内管腔109、例えば大腸は、拡張可能部材201が拡張状態にある場合に拡張可能部材201により実質的に閉塞し得る。拡張可能部材201が拡張状態にあるとき、器具ルーメンの直径は、大腸内視鏡の外径より大きい直径までさらに拡張する。その結果、膨張によって大腸内視鏡101は器具ルーメン内で自由に並進移動できる。
【0026】
図3A及び図3Bは、収縮状態にある器具用付属装置102の1つの実施形態のそれぞれ斜視図と断面図を示す。器具用付属装置102は、近位端200、遠位端202、及び長さ方向軸線204を有する拡張可能部材201を含む。器具ルーメン205は拡張可能部材201の長さ方向軸線204に沿って延び、近位端200と遠位端202との間に延びて、拡張可能部材201の内面302により画定される。器具ルーメン205は、近位端200の入口221と遠位端202の出口222を備える。器具ルーメン205は器具を受けるように、例えば、器具ルーメン205内で延び得る図1Aの大腸内視鏡のフレキシブルチューブの少なくとも一部を受け入れるように構成される。例えば、器具ルーメン205は、収縮状態では、概して大腸内視鏡101の直径に対応する直径を有し得る。拡張可能部材201の外径を画定する外面301は、近位端200と遠位端202との間に、長さ方向軸線204に沿って延びる。器具ルーメン205の長さ方向軸線と拡張可能部材の長さ方向軸線は、図のように相互に概して平行であり得る。器具ルーメン205と拡張可能部材201は各々、それぞれの長さ方向軸線に沿った中心軸を有し得、これは相互に関して整列され、又はオフセットされ得る。外径304は内径303の周囲に配置され、拡張可能部材201の遠位端202と近位端200との間に延びる。図3A及び図3Bの付属装置は、近位端208、遠位端207、及びそれらの中に延びる膨張ルーメンを有する流体入口206を含む。幾つかの実施形態において、流体入口206の遠位端207は拡張可能部材201の外面301を通って延び得る。幾つかの実施形態において、拡張可能部材201の内面302は、拡張可能部材201が収縮すると収縮する。内面302は、寸法が可変の材料、例えば弾性材料、準弾性材料、織物、メッシュ又はその他であり得る。内面302は、収縮すると大腸内視鏡に沿ってそれに密着し得、又は幾つかの実施形態では、収縮したときに大腸内視鏡に沿って折り畳み部を形成し得る。内面302は拡張可能部材201の遠位端202及び近位端200において外面301と結合される。表面は、接着剤、テープ、流動材料、溶接(例えば、レーザ、超音波、ホットジョーサーマル等)、溶融/再溶融フロープロセス、又はその他により結合され得る。結合された表面により、拡張可能部材201の内面302と外面301との間に実質的に密閉された流体シールが形成され、それによって膨張流体を流体入口206の膨張ルーメンを通じて供給して、拡張可能部材を図3A及び図3Bの収縮状態から図4A及び図4Bの拡張状態へと移行させ得る。内面302と外面301は空洞305を画定し、これは流体入口206の中に挿入された流体により膨張させることができる。
【0027】
図4A及び図4Bは、拡張状態の図3A及び図3Bの実施形態を示す。拡張状態の拡張可能部材201は長尺状の楕円体形状で示されているが、拡張可能部材201は例えば球、円環、その組合せ又はその他等、他の形状であり得る。拡張可能部材201が収縮すると、図3Bの断面からわかるように、内面302の内径303は、拡張可能部材201が拡張して、図4Bの断面図からわかるように内面302の内径303がより大きい距離D2であるときより小さい距離D1である。拡張状態にあるとき、膨張流体が流体入口206を通じて入力される。拡張可能部材201の器具ルーメン205を通して延びる大腸内視鏡は、拡張可能部材201が収縮したときに、内面302が大腸内視鏡と摩擦接触したまま、体内管腔を検査するために使用され得る。拡張可能部材201が体内管腔内で拡張状態にあるとき、大腸内視鏡は、内径303が、拡張可能部材201が瞬間したときより大きく、大腸内視鏡と拡張可能部材201の内面302との間の摩擦接触がなくなっていることから、器具ルーメン205内で並進移動し得る。大腸内視鏡と内面302との間の摩擦接触により、器具用付属装置102は処置中、拡張可能部材201が拡張されるまで大腸内視鏡と一緒に移動できる。
【0028】
器具用付属装置102は図4A及び図4Bにおいて、それが近位端200を通じて遠位端202に向かって大腸内視鏡101を受けるように構成されているように示されている。器具用付属装置102の拡張可能部材201は拡張された状態で示され、それゆえ、器具ルーメン205は大腸内視鏡101を摺動可能に受けるように構成される。
【0029】
図5は、1つの実施形態における大腸内視鏡システム110の一部としての、収縮状態の器具用付属装置102を示している。ハンドル105は大腸内視鏡101の近位端104に配置される。器具用付属装置102は、大腸内視鏡101の近位端104に向かって延び、それによって器具用付属装置102の一部は常に患者の体外に残る。収縮状態で、拡張可能部材201は大腸内視鏡101の周囲に摩擦が生じるように配置される。大腸内視鏡101の遠位端103は器具用付属装置102の遠位端203より遠くまで延び、出口222を通過する。大腸内視鏡101は器具ルーメン205の中に延び、内面302と接触する。内面302と外面301はどちらも収縮する。器具用付属装置102の出口222の近位側には、大腸内視鏡101の近位端104があり、ハンドル105につながる。器具用付属装置102の近位端200には、流体入口206がある。拡張状態では、内面302の直径がより大きいことにより、器具ルーメン205内で大腸内視鏡101と内面302との間の空間ができる。外面301は外に向かって拡張可能で、体内管腔を拡張させる。
【0030】
図6を参照すると、本開示のある実施形態による、体内管腔に挿入する前に器具を導入中の器具用付属装置の図が示されている。器具用付属装置102は、拡張可能部材201が拡張した状態で器具用付属装置102の近位端200を通じて器具の遠位端103を受けることができ、大腸内視鏡101の近位端104とハンドル105は器具用付属装置102の外部に残る。拡張状態では、器具は、内面302の内径303が大きくなっていることから、器具ルーメン205内で自由に並進移動できる。内径がこのように大きくなることによって、器具は器具ルーメン205の中で移動できる。器具用付属装置102の近位端200を通り、器具ルーメン205の中に延びると、拡張可能部材201は収縮でき、システムは図5Aのそれと似た状態となる。
【0031】
各種の実施形態において、拡張可能部材は拡張状態と収縮状態を有し得る。拡張可能部材は、外面と内面を含み得る。外面は、様々な柔軟、半柔軟、又は非柔軟材料を含み得る。これらの材料としては、シリコーン、ラテックス、ポリウレタン、ゴム、イソブチレン、又はその他を含み得る。外面の壁の厚さは材料により異なり得、収縮及び拡張状態での外面の外径に関係し得る。内面は、様々な柔軟、半柔軟、又は非柔軟材料を含み得る。これらの材料としては、シリコーン、ラテックス、ポリウレタン、ゴム、イソブチレン、PEBA若しくはナイロン等の熱可塑性エラストマ、又はその他を含み得る。内面の壁の厚さは材料により異なり得、収縮及び拡張状態での内面の内径に関係し得る。内面は、収縮状態では折り畳まれ得る。内面と外面は、同程度に拡張しない場合もあり得る。拡張可能部材は、患者の体内で使用する前に、1回又は複数回にわたり拡張及び収縮され、又はそれ以外に引き伸ばされ得、これによって拡張可能部材の対称の膨張が改善され得、また拡張可能部材のセンタリング機構が改善され得る。拡張可能部材は、1つ又は複数の流体入口を通じた膨張流体の供給を通じて拡張され得る。拡張可能部材の拡張及び逆拡張に同じ流体入口が使用され得る。代替的に、供給流体入口と回帰流体入口を間欠的又は連続的に使用して、拡張可能部材内で膨張流体を循環させ得る。供給流体入口と回帰流体入口を通じて膨張流体を連続的に流すことにより、拡張可能部材内の膨張流体の所望の圧力を実質的に保持し得、又は膨張流体を加熱して、循環させて、拡張可能部材の所望の温度を保持し得る。
【0032】
各種の実施形態において、内面は外面と同程度まで拡張し得る。代替的実施形態において、内面は外面より低い程度まで拡張し得る。内面及び外面は、ポリマ材料を含み得る。拡張時、内面によって器具は器具ルーメン内で付属品とは関係なく摺動し得る。
【0033】
各種の実施形態において、器具用付属装置は使い捨てであり得る。代替的な実施形態において、器具用付属装置は再使用可能であり得る。幾つかの実施形態において、大腸内視鏡は、使用前に大腸内視鏡に事前装填済みの器具用付属品を含む単回使用装置であり得る。
【0034】
各種の実施形態において、器具用付属装置の長さは器具の長さとほぼ同じである。
各種の実施形態において、長尺状の送達部材を通じて供給される膨張流体としては、生理食塩水、水、CO、希釈造影剤、N、O、又はその他を含み得る。
【0035】
各種の実施形態において、大腸内視鏡検査を実行する方法は、拡張可能器具用付属品を拡張させるステップを含み得る。器具用付属品の拡張可能部材が拡張されると、器具は、拡張可能部材が拡張状態にある場合に器具ルーメン内で前進させられる。器具は、器具の遠位端が器具用付属品から突出するまで進められる。拡張可能部材は、それが装置の周囲に配置され、器具との摩擦接触を保持する状態となるように収縮される。器具と器具用付属装置は一緒に患者の体内に挿入される。器具は、患者の体内でS字状結腸及び/又は横行結腸まで進めることができ、そこでは器具のループ形成が生じる可能性がある。拡張可能部材は、患者の体内で拡張させることができ、それによって患者の体内管腔、例えば結腸、腸、又はその他が拡張される。器具ルーメンは、拡張可能部材が拡張するとその直径が大きくなり、それによって器具を調整できる。拡張可能部材はその後収縮され、大腸内視鏡検査が続けられる。拡張可能部材を拡張させることによって、器具は器具用付属品を移動させずに移動できる。これは外径が体内管腔を拡張させ、それにより装置が移動しないことによって可能となる。器具は、大腸内視鏡検査を実行するために使用されるあらゆる装置、例えば大腸内視鏡又はその他であり得る。
【0036】
各種の実施形態において、大腸内視鏡検査を実行する方法、拡張可能な器具用付属品を拡張させて、器具を調整するステップを含み得る。器具がループを形成した場合、拡張可能部材を患者の体内で拡張させることができ、それによって患者の体内管腔、例えば結腸、腸、又はその他を拡張させることができる。器具ルーメンは、拡張可能部材が拡張されるとその直径が大きくなり、それによって器具を調整してループを解くことができる。すると、拡張可能部材を収縮させ、大腸内視鏡検査を継続する。拡張可能部材を拡張させることにより、器具用付属品を移動させずに器具を移動させることができる。これは、外径が体内管腔を拡張させ、それにより装置が移動しないことにより可能となる。
【0037】
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下記載する。
[項目1]
システムであって、
該システムは、大腸内視鏡を備え、
該システムは、前記大腸内視鏡の周囲に配置可能な大腸内視鏡用付属品を備え、該大腸内視鏡用付属品は、
近位端、遠位端、及び長さ方向に延びる器具ルーメンを有する拡張可能部材を備え、前記拡張可能部材は、前記器具ルーメンを画定する内面と前記内面の周囲に配置される外面とを備え、
前記内面は、第一の弾性により特徴付けられる材料からなり、前記外面は第二の弾性により特徴付けられる材料からなり、前記第二の弾性は前記第一の弾性よりも弾性が高く、
前記器具ルーメンは、前記拡張可能部材が拡張状態にある場合に、前記大腸内視鏡の少なくとも一部を摺動可能に受けるように構成されるシステム。
[項目2]
前記拡張可能部材は、前記拡張可能部材が収縮状態にある場合に前記大腸内視鏡との摩擦接触を保持する、項目1に記載のシステム。
[項目3]
流体入口をさらに備える、項目1又は2に記載のシステム。
[項目4]
前記外面の前記材料は柔軟であり、拡張して体内管腔に適合するように構成される、項目1~3の何れか1項に記載のシステム。
[項目5]
前記拡張可能部材が前記拡張状態にある場合に、前記器具ルーメンの内径は前記大腸内視鏡が前記器具ルーメン内で自由に移動することを可能にする、項目1~4の何れか1項に記載のシステム。
[項目6]
前記拡張可能部材が収縮状態にある場合、前記拡張可能部材の直径、前記器具ルーメンの直径、又はその両方は前記器具の直径と概ね等しく、前記拡張可能部材が拡張状態にある場合、前記拡張可能部材の直径、前記器具ルーメンの直径、又はその両方は前記器具の直径より大きい、項目2~5の何れか1項に記載のシステム。
[項目7]
前記内面及び外面は、結合されて閉じた空洞を形成する、項目1~6の何れか1項に記載のシステム。
[項目8]
前記拡張可能部材の長さ方向軸線は、器具の長さ方向軸線と概ね平行である、項目1~6の何れか1項に記載のシステム。
本明細書に記載の各種の実施形態のほかに、本開示の変更、改良、及びその他の実装を当業者であれば着想するであろう。従って、本開示は上記の例示的な説明によってではなく、以下の特許請求の範囲により定義されるものとする。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6