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特開2024-117853アンテナ装置、アレーアンテナ、及びアンテナ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117853
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】アンテナ装置、アレーアンテナ、及びアンテナ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/24 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H01Q21/24
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023164
(22)【出願日】2023-02-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、「国立研究開発法人情報通信研究機構」、「革新的情報通信技術研究開発委託研究」、「Beyond 5G 次世代小型衛星コンステレーション向け電波・光ハイブリッド通信技術の研究開発」、「研究開発項目1)LEO コンステレーション用小型衛星搭載電波・光ハイブリッド通信技術の研究開発」、「研究開発項目2)超広帯域光衛星通信システムの実現に向けた基盤技術の研究開発」、「次世代 LEO 通信コンステレーション構築に向けた超小型・低コスト電波・光ハイブリッド通信システムおよび通信制御システムの研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】515039731
【氏名又は名称】株式会社アクセルスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】白根 篤史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健一
(72)【発明者】
【氏名】桧垣 誠
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021AB06
5J021JA06
(57)【要約】
【課題】回路構成を簡略化すると共に消費電力を低減することができるアンテナ装置、アレーアンテナ、及びアンテナ制御方法を提供する。
【解決手段】第1信号を入力し、位相及び振幅を調整する第1回路20と、第1回路に接続され、電磁波を放射するアンテナ素子3と、を備え、第1回路は、第1信号を分岐する第1分岐部23を備え、第1分岐部は、第1信号を分岐して第1分岐信号を出力する第1分岐回路24と、第1信号を分岐して第2分岐信号を出力する第2分岐回路25とを備え、第1分岐回路は、アンテナ素子に設けられた第1入力部に第1分岐信号を入力し、第2分岐回路は、第1信号を分岐して第1分岐信号に比して相対的に90度の第1位相差を与えて第2分岐信号を出力する第1遅延回路25Aを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号を入力し、位相及び振幅を調整する第1回路と、
前記第1回路に接続され、電磁波を放射するアンテナ素子と、を備え、
前記第1回路は、前記第1信号を分岐する第1分岐部を備え、
前記第1分岐部は、前記第1信号を分岐して第1分岐信号を出力する第1分岐回路と、前記第1信号を分岐して第2分岐信号を出力する第2分岐回路とを備え、
前記第1分岐回路は、前記アンテナ素子に設けられた第1入力部に前記第1分岐信号を入力し、
前記第2分岐回路は、前記第1信号を分岐して前記第1分岐信号に比して相対的に90度の第1位相差を与えて前記第2分岐信号を出力する第1遅延回路を備え、
前記第1遅延回路は、前記アンテナ素子に設けられた第2入力部に前記第2分岐信号を前記第1分岐信号と直交する方向に入力し、
前記アンテナ素子は、前記第1入力部に入力された前記第1分岐信号と、前記第2入力部に入力された前記第2分岐信号との合成波に基づいて第1回転方向の円偏波を放射する、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ素子に接続されると共に、第2信号を入力し、位相及び振幅を調整する第2回路を備え、
前記第2回路は、前記第2信号を分岐する第2分岐部を備え、
前記第2分岐部は、前記第2信号を分岐して第3分岐信号を出力する第3分岐回路と、前記第2信号を分岐して第4分岐信号を出力する第4分岐回路とを備え、
前記第3分岐回路は、前記第2入力部に前記第3分岐信号を入力し、
前記第4分岐回路は、前記第2信号を分岐して前記第3分岐信号に比して相対的に90度の第2位相差を与えて前記第4分岐信号を出力する第2遅延回路を備え、
前記第2遅延回路は、前記第1入力部に前記第4分岐信号を前記第3分岐信号と直交する方向に入力し、
前記アンテナ素子は、前記第2入力部に入力された前記第3分岐信号と、前記第1入力部に入力された前記第4分岐信号との合成波に基づいて前記第1回転方向と反対方向の第2回転方向の円偏波を放射する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1回路は、前記第1分岐回路に接続された前記第4分岐回路に入力される第1制御電圧に基づいて前記第1分岐信号の位相を調整する、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2回路は、前記第3分岐回路に接続された前記第2分岐回路に入力される第2制御電圧に基づいて前記第3分岐信号の位相を調整する、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか1項に記載された前記アンテナ装置を複数個備えた制御装置と、
前記制御装置に入力する前記第1信号を生成する信号生成部と、
前記制御装置を制御する制御部と、
複数の前記アンテナ素子が配置されたアンテナ部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記アンテナ装置に入力される前記第1信号の位相量を前記アンテナ装置毎に個別に制御して、前記アンテナ部から放射される前記第1回転方向の円偏波のビーム方向を調整する、
アレーアンテナ。
【請求項6】
前記信号生成部は、前記制御装置に入力する第2信号を生成し、
前記制御部は、複数の前記アンテナ装置に入力される前記第2信号の位相量を前記アンテナ装置毎に個別に制御して、前記アンテナ部から放射される前記第1回転方向と反対方向の第2回転方向の円偏波のビーム方向を調整する、
請求項5に記載のアレーアンテナ。
【請求項7】
位相及び振幅を調整する第1回路と、前記第1回路に接続され、電磁波を放射するアンテナ素子と、を備えるアンテナ装置のアンテナ制御方法であって、
第1信号を前記第1回路に入力し、
前記第1回路に設けられた第1分岐回路に前記第1信号を分岐した一方の前記第1信号を入力し、第1分岐信号を出力し、
前記第1分岐回路から前記アンテナ素子に設けられた第1入力部に前記第1分岐信号を入力し、
前記第1回路に設けられた第2分岐回路に前記第1信号を分岐した他方の前記第1信号を入力し、前記第2分岐回路に設けられた第1遅延回路において他方の前記第1信号を前記第1分岐信号に比して相対的に90度の第1位相差を与えて第2分岐信号を出力し、
前記アンテナ素子に設けられた第2入力部に前記第2分岐信号を前記第1分岐信号と直交する方向に入力し、
前記アンテナ素子において、前記第1入力部に入力された前記第1分岐信号と、前記第2入力部に入力された前記第2分岐信号との合成波に基づいて第1回転方向の円偏波を放射する、
アンテナ制御方法。
【請求項8】
前記アンテナ素子に接続されると共に、位相及び振幅を調整する第2回路に第2信号を入力し、
前記第2回路に設けられた第3分岐回路に前記第2信号を分岐した一方の前記第2信号を入力し、第3分岐信号を出力し、
前記第3分岐回路から前記第2入力部に前記第3分岐信号を入力し、
前記第2回路に設けられた第4分岐回路に前記第2信号を分岐した他方の前記第2信号を入力し、前記第4分岐回路に設けられた第2遅延回路において他方の前記第2信号を前記第3分岐信号に比して相対的に90度の第2位相差を与えて第4分岐信号を出力し、
前記第1入力部に前記第4分岐信号を前記第3分岐信号と直交する方向に入力し、
前記アンテナ素子において、前記第2入力部に入力された前記第3分岐信号と、前記第1入力部に入力された前記第4分岐信号との合成波に基づいて前記第1回転方向と反対方向の第2回転方向の円偏波を放射する、
請求項7に記載のアンテナ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏波を放射するアンテナ装置、アレーアンテナ、及びアンテナ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星の通信において、直線偏波を用いた無線通信を行うと、衛星の回転運動により偏波方向が変化して偏波面が定まらず、信号電波の受信が困難になる場合がある。そのため、人工衛星や移動体の通信においては、円偏波が用いられる。円偏波は、電磁波の進行方向に垂直な面内で、その励振周波数と等しい周期で電界の向きが回転しているという特性を有している。そのため、円偏波による無線通信により衛星通信を行うと、偏波面を定めなくても信号の受信が可能となるという特性がある。第5世代通信(5Generation:5G)等の高速かつ大容量化した次世代通信においては、円偏波を送受信する人工衛星を用いたネットワークが研究されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、円偏波を送受信するフェーズドアレーアンテナが提案されている。このフェーズドアレーアンテナは、複数のアンテナ素子を備えている。この複数のアンテナ素子は、マトリクス状に配置されている。各アンテナ素子は、円偏波を送受信するように構成されている。各アンテナ素子には、第1信号を入力する第1ポートと、第1信号と+90°または-90°の位相差を有する第2信号を入力する第2ポートとが接続されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kevin Kai Wei Low , Samet Zihir, Tumay Kanar, and Gabriel M. Rebeiz, ”A 27-31-GHz 1024-Element Ka-Band SATCOM Phased-Array Transmitter With 49.5-dBW Peak EIRP, 1-dB AR, and ±70 Beam Scanning” IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, VOL.70, NO.3, MARCH 2022.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載されたフェーズドアレーアンテナは、各アンテナ素子に対して、第1信号を生成する第1回路と、第1回路に対して別途設けられ第2信号を生成する第2回路と、が設けられている。このため、非特許文献1に記載されたフェーズドアレーアンテナは、回路が複雑化すると共に、大規模な構成となり、消費電力が増大するという課題がある。電源装置等のリソースが限られた移動通信や衛星通信においては、消費電力がなるべく低減されることが望ましい。
【0006】
本発明は、回路構成を簡略化すると共に消費電力を低減することができるアンテナ装置、アレーアンテナ、及びアンテナ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1信号を入力し、位相及び振幅を調整する第1回路と、前記第1回路に接続され、電磁波を放射するアンテナ素子と、を備え、前記第1回路は、前記第1信号を分岐する第1分岐部を備え、前記第1分岐部は、前記第1信号を分岐して第1分岐信号を出力する第1分岐回路と、前記第1信号を分岐して第2分岐信号を出力する第2分岐回路とを備え、前記第1分岐回路は、前記アンテナ素子に設けられた第1入力部に前記第1分岐信号を入力し、前記第2分岐回路は、前記第1信号を分岐して前記第1分岐信号に比して相対的に90度の第1位相差を与えて前記第2分岐信号を出力する第1遅延回路を備え、前記第1遅延回路は、前記アンテナ素子に設けられた第2入力部に前記第2分岐信号を前記第1分岐信号と直交する方向に入力し、前記アンテナ素子は、前記第1入力部に入力された前記第1分岐信号と、前記第2入力部に入力された前記第2分岐信号との合成波に基づいて第1回転方向の円偏波を放射する、アンテナ装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アレーアンテナにおいて回路構成を簡略化すると共に消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
図2】第1回転方向の円偏波を生成する第1回路の構成を示す図である。
図3】第2回転方向の円偏波を生成する第2回路の構成を示す図である。
図4】第1分岐部の動作を示す図である。
図5】第2分岐部の動作を示す図である。
図6】制御電圧と調整可能な位相差との関係を示す図である。
図7】アンテナ部の構成を示す図である。
図8】アレーアンテナの構成を示す図である。
図9】アレーアンテナの構成を示すブロック図である。
図10】アレーアンテナの特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1に示されるように、アンテナ装置1は、円偏波を放射可能に構成されている。アンテナ装置1は、例えば、信号を生成する信号生成部2に接続された制御回路10と、制御回路10に接続されたアンテナ素子3と、により構成されている。アンテナ装置1は、後述のアレーアンテナの構成要素であるが、単独の装置として適用され得る。
【0011】
アンテナ素子3は、例えば、金属薄膜により矩形に形成されたパッチアンテナである。アンテナ素子3の第1辺側(図の底辺)には、信号となる電力が入力される第1入力部4が設けられている。アンテナ素子3の第1辺に直交する第2辺側(図の左側の辺)には、信号となる電力が入力される第2入力部5が設けられている。第1入力部4には、所定の励振周波数を有する所定の信号が入力され、アンテナ素子3を励振する。アンテナ素子3は、2つの入力部により幾何的に直交する2つの電界を生成できさえすればよく、クロスダイポールアンテナ、クロススロットアンテナなど公知のアンテナ素子を用いることも可能である。
【0012】
第2入力部5には、所定の信号が第1入力部4に対して直交方向に入力され、アンテナ素子3を励振する。第2入力部5に入力される所定の信号には、後述のように第1入力部4に入力される信号に対して相対的に+90度又は-90度の位相差が付けられる。第1入力部4に入力される所定の信号と、第2入力部5に入力される所定の信号とが合成されると、アンテナ素子3は、放射方向に対して円偏波の電磁波を生成して放射する。
【0013】
図1の例では、第1入力部4に入力される所定の信号に比して第2入力部5に入力される所定の信号に相対的に+90度の位相差が付された場合、紙面に垂直手前向きに(手前向き)右旋回方向(第1回転方向)の円偏波が生成される。第1入力部4に入力される所定の信号に比して第2入力部5に入力される所定の信号に相対的に-90度の位相差が付された場合、手前向きに左旋回方向(第1回転方向と反対方向の第2回転方向)の円偏波が生成される。上記円偏波の回転方向は、第1入力部4と第2入力部5との配置関係や、第1入力部4に入力される信号と、第2入力部5に入力される信号とを相互に入れ替えることによって変更されてもよい。アンテナ素子3から放射される円偏波は、励振周波数と等しい周期で放射方向に垂直な面内において電界の向きが回転するという特性を有する。
【0014】
第1入力部4及び第2入力部5には、制御回路10の出力側が電気的に接続されている。制御回路10の入力側には、信号生成部2が電気的に接続されている。信号生成部2は、例えば、ベースバンド信号を生成するベースバンド部2Aと、一対のミキサ2B,2Cとにより構成されている。ベースバンド部2Aは、送信対象となる情報の周波数帯域のベースバンド信号に基づいてIF(Intermediate Frequency:中間周波)信号(送信信号)を生成する。
【0015】
ベースバンド部2Aから出力されたIF信号は、ミキサ2B,2Cのうち任意に選択されるいずれか一つに入力され、周波数変換のための局部発信器(Local Oscillator:LO)(不図示)に基づいて無線周波数帯の周波数に変調されたRF(Radio Frequency)信号となって出力される。ミキサ2Bは、第1信号を出力する。ミキサ2Cは、第2信号を出力する。第1信号と第2信号とは、同じ信号であってもよいし、異なる信号であってもよい。信号生成部2により生成された信号は、制御回路10に入力される。
【0016】
制御回路10は、入力された信号の位相及び振幅を調整すると共に増幅する。制御回路10は、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)デバイスである。制御回路10は、アンテナ素子3から右旋回の円偏波を放射させる第1回路20と、アンテナ素子3から左旋回の円偏波を放射させる第2回路30とを備えている。
【0017】
第1回路20は、信号生成部2により生成された第1信号を入力し、位相及び振幅を調整すると共に増幅する移相回路である。第1回路20は、第2回路30に設けられた後述の位相調整部31及び増幅器32が停止中に機能する。第1回路20の入力側には、信号生成部2が接続されている。第1回路20の出力側には、アンテナ素子3が接続されている。第1回路20に入力された第1信号は、まず入力側に設けられた位相調整部21に入力される。位相調整部21は、入力された第1信号の位相を調整する。位相調整部21は、第1信号の位相を調整可能であればどのような回路により構成されていてもよい。
【0018】
位相調整部21から出力された第1信号は、出力側に設けられた増幅器22に入力される。増幅器22は、入力された第1信号の利得を増幅することにより振幅を調整する可変利得増幅器(Variable Gain Amplifier: VGA)である。増幅器32は、制御電圧に基づいて第2信号の利得を変化させる。増幅器22から出力された第1信号は、出力側に設けられた第1分岐部23に入力される。
【0019】
第1分岐部23は、第1信号を2系統に分岐する第1分岐回路24と、第2分岐回路25とにより構成されている。第1分岐回路24には、一方に分岐された第1信号が入力される。第2分岐回路25には、他方に分岐された第1信号が入力される。
【0020】
第1分岐回路24は、入力側から第1スイッチ24A、及び増幅器24Bにより構成されている。第1スイッチ24Aは、第1分岐回路24のオン状態とオフ状態とを切り替え可能に構成されている。第1分岐回路24は、オン状態の第1スイッチ24Aにより機能する。第1分岐回路24において、分岐された一方の第1信号は、まず第1スイッチ24Aに入力される。オン状態の第1スイッチ24Aは、一方の第1信号を増幅器24Bに入力する。
【0021】
増幅器24Bは、入力された一方の第1信号の振幅を個別に微調整し出力する。増幅器24Bの出力側には、増幅器6が設けられている。増幅器24Bから出力された一方の第1信号は、増幅器6により振幅を所定値に増幅され、第1分岐信号として出力される。増幅器6は、入力される高周波の第1分岐信号を出力調整部8により必要な出力まで増幅した第4分岐信号をアンテナ素子3に供給する。出力調整部8は、例えば、電流の検出に基づいて一定の電圧を出力するLDO(Low Drop Out)レギュレータにより構成されている。出力調整部8は、設けられていなくてもよい。
【0022】
増幅器6から出力された第1分岐信号は、第1入力部4に入力される。即ち、第1分岐回路24は、分岐された一方の第1信号を入力し、第1信号と同位相の第1分岐信号を生成すると共に、アンテナ素子3に設けられた第1入力部4に第1分岐信号を入力する。
【0023】
第2分岐回路25は、入力側から第1遅延回路25A、第2スイッチ25B、及び増幅器25Cにより構成されている。第2スイッチ25Bは、第2分岐回路25のオン状態とオフ状態とを切り替え可能に構成されている。第2分岐回路は、オン状態の第2スイッチ25Bにより機能する。第2分岐回路25において、分岐された他方の第1信号は、まず第1遅延回路25Aに入力される。第1遅延回路25Aは、入力された信号に1/4波長分の遅延を与えて出力するように構成されている。即ち、第1遅延回路25Aは、入力された信号に対して90度の位相差を与えて出力する。第1遅延回路25Aは、入力された信号に位相差を与えることができればどのような回路が用いられてもよい。
【0024】
第1遅延回路25Aは、他方の第1信号を入力し、90度の位相差を与えた第1遅延信号を出力する。第1遅延回路25Aから出力された第1遅延信号は、オン状態の第2スイッチ25Bに入力され、第1遅延信号を増幅器25Cに入力する。増幅器25Cは、第1遅延信号の振幅を個別に微調整し出力する。増幅器25Cの出力側には、増幅器7が設けられている。増幅器25Cから出力された第1遅延信号は、増幅器7により振幅を所定値に増幅され、第2分岐信号として出力される。増幅器7は、入力される高周波の第1遅延信号を出力調整部8により必要な出力まで増幅した第2分岐信号をアンテナ素子3に供給する。
【0025】
増幅器7から出力された第2分岐信号は、第2入力部5に入力される。即ち、第2分岐回路25は、分岐された他方の第1信号を入力し、第1分岐信号に比して90度の位相差を与えて第2分岐信号を出力し、アンテナ素子3に設けられた第2入力部5に第2分岐信号を第1分岐信号と直交する方向に入力する。上記構成によりアンテナ素子3は、第1入力部4に入力された第1分岐信号と、第2入力部5に入力された第2分岐信号との合成波に基づいて右旋回(第1回転方向)の円偏波を放射する。
【0026】
第2回路30は、信号生成部2により生成された第2信号を入力し、位相及び振幅を調整すると共に増幅する移相回路である。第2回路30は、第1回路20と同様の回路に構成されている。第2回路30は、第1回路20に設けられた位相調整部21及び増幅器22が停止中に機能する。以下の説明においては、第1回路20と同様の構成については適宜説明を省略する。
【0027】
第2回路30の入力側には、信号生成部2が接続されている。第2回路30の出力側には、アンテナ素子3が接続されている。第2回路30に入力された第2信号は、まず入力側に設けられた位相調整部31に入力される。位相調整部31は、入力された第2信号の位相を調整する。
【0028】
位相調整部31から出力された第2信号は、出力側に設けられた増幅器32に入力される。増幅器32は、入力された第2信号の利得を増幅することにより振幅を調整する可変利得増幅器(Variable Gain Amplifier: VGA)である。増幅器32は、制御電圧に基づいて第2信号の利得を変化させる。増幅器32から出力された第3信号は、出力側に設けられた第2分岐部33に入力される。
【0029】
第2分岐部33は、第2信号を2系統に分岐する第3分岐回路34と、第4分岐回路35とにより構成されている。第3分岐回路34には、一方に分岐された第2信号が入力される。第4分岐回路35には、他方に分岐された第2信号が入力される。
【0030】
第3分岐回路34は、入力側から第3スイッチ34A、及び増幅器34Bにより構成されている。第3スイッチ34Aは、第3分岐回路34のオン状態とオフ状態とを切り替え可能に構成されている。第3分岐回路34は、オン状態の第3スイッチ34Aにより機能する。第3分岐回路34において、分岐された一方の第2信号は、まず第3スイッチ34Aに入力される。オン状態の第3スイッチ34Aは、一方の第2信号を増幅器34Bに入力する。
【0031】
増幅器34Bは、入力された一方の第2信号の振幅を個別に微調整し出力する。増幅器34Bの出力側には、増幅器7が設けられている。増幅器34Bから出力された一方の第2信号は、増幅器7により振幅を所定値に増幅され、第3分岐信号として出力される。増幅器7は、入力される高周波の一方の第2信号を出力調整部8により必要な出力まで増幅した第3分岐信号をアンテナ素子3に供給する。
【0032】
増幅器7から出力された第3分岐信号は、第2入力部5に入力される。即ち、第3分岐回路34は、分岐された一方の第2信号を入力し、第2信号と同位相の第3分岐信号を生成すると共に、アンテナ素子3に設けられた第2入力部5に第3分岐信号を入力する。
【0033】
第4分岐回路35は、入力側から第2遅延回路35A、第4スイッチ35B、及び増幅器35Cにより構成されている。第4スイッチ35Bは、第4分岐回路35のオン状態とオフ状態とを切り替え可能に構成されている。第4分岐回路は、オン状態の第4スイッチ35Bにより機能する。第4分岐回路35において、分岐された他方の第2信号は、まず第2遅延回路35Aに入力される。第2遅延回路35Aは、入力された信号に1/4波長分の遅延を与えて出力するように構成されている。即ち、第2遅延回路35Aは、入力された信号に対して90度の位相差を与えて出力する。第2遅延回路35Aは、入力された信号に位相差を与えることができればどのような回路が用いられてもよい。
【0034】
第2遅延回路35Aは、他方の第2信号を入力し、90度の位相差を与えた第2遅延信号を出力する。第2遅延回路35Aから出力された第2遅延信号は、オン状態の第4スイッチ35Bに入力され、第2遅延信号を増幅器35Cに入力する。増幅器35Cは、第2遅延信号の振幅を個別に微調整し出力する。増幅器35Cの出力側には、増幅器6が設けられている。増幅器35Cから出力された第2遅延信号は、増幅器6により振幅を所定値に増幅され、第4分岐信号として出力される。増幅器7は、入力される高周波の一方の第2遅延信号を出力調整部8により必要な出力まで増幅した第4分岐信号をアンテナ素子3に供給する。
【0035】
増幅器6から出力された第4分岐信号は、第1入力部4に入力される。即ち、第4分岐回路35は、分岐された他方の第2信号を入力し、第3分岐信号に比して90度の位相差を与えて第4分岐信号を出力し、アンテナ素子3に設けられた第1入力部4に第4分岐信号を第3分岐信号と直交する方向に入力する。上述した増幅器6と第1入力部4との間の電気経路の電気長と、増幅器7と第2入力部5との間の電気経路の電気長とは等長に形成されている。上記構成によりアンテナ素子3は、第2入力部5に入力された第3分岐信号と、第1入力部4に入力された第4分岐信号との合成波に基づいて左旋回(第2回転方向)の円偏波を放射する。
【0036】
図2には、第1回路20の動作が示されている。第1回路20が動作中の場合、第2回路30は停止している。この時、第2回路30において、第2分岐部33の第3スイッチ34A及び第4スイッチ35Bは、接地しておりオフ状態となっている。第1回路20において、第1分岐部23の第1スイッチ24A及び第2スイッチ25Bがオン状態である場合、第1分岐部23に入力された第1信号S1は、第1分岐回路24と、第2分岐回路25とにより2系統に分岐される。
【0037】
第1分岐回路24において、分岐された一方の第1信号S1は、第1スイッチ24A、増幅器24B、増幅器6を介して第1分岐信号S3として出力され、第1信号S1と同位相により第1入力部4に入力される。第2分岐回路25において、分岐された他方の第1信号S4は、第1遅延回路25Aに入力される。第1遅延回路25Aにおいて他方の第1信号S4は、一方の第1信号S2に比して相対的に90度の位相差を与えられ、第1遅延信号S5として出力される。第1遅延信号S5は、第2スイッチ25B、増幅器25C、増幅器7を介して第2分岐信号S6として出力され、第1信号S1と90度の位相差により第2入力部5に入力される。
【0038】
アンテナ素子3において、第1入力部4に入力された第1分岐信号S3と、第2入力部5に入力された第2分岐信号S6とが合成され、放射方向に沿って右旋回(第1回転方向)の円偏波P1が放射される。アンテナ装置1は、第1回路20に基づいて第1回転方向の円偏波を生成するため、第1回路及び第2回路に基づいて第1回転方向の円偏波を生成する従来技術に比して消費電力を低減することができる。
【0039】
図3には、第2回路30の動作が示されている。第2回路30が動作中の場合、第1回路20は停止している。この時、第1回路20において、第2分岐部33の第1スイッチ24A及び第2スイッチ25Bは、接地しておりオフ状態となっている。第2回路30において、第2分岐部33の第3スイッチ34A及び第4スイッチ35Bがオン状態である場合、第2分岐部33に入力された第2信号T1は、第3分岐回路34と、第4分岐回路35とにより2系統に分岐される。
【0040】
第3分岐回路34において、分岐された一方の第2信号T2は、第3スイッチ34A、増幅器34B、増幅器7を介して第3分岐信号T3として出力され、第2信号T1と同位相により第2入力部5に入力される。第4分岐回路35において、分岐された他方の第2信号T4は、第2遅延回路35Aに入力される。第2遅延回路35Aにおいて分岐された他方の第2信号T4は、一方の第2信号T1に比して相対的に90度の位相差を与えられ、第2遅延信号T5として出力される。第2遅延信号T5は、第4スイッチ35B、増幅器35C、増幅器7を介して第4分岐信号T6として出力され、第2信号T1と90度の位相差により第1入力部4に入力される。
【0041】
アンテナ素子3において、第2入力部5に入力された第3分岐信号T3と、第1入力部4に入力された第4分岐信号T6とが合成され、放射方向に沿って左旋回(第2回転方向)の円偏波P2が放射される。アンテナ装置1は、第2回路30に基づいて第2回転方向の円偏波を生成するため、第1回路及び第2回路に基づいて第2回転方向の円偏波を生成する従来技術に比して消費電力を低減することができる。
【0042】
図4には、動作状態における第1回路20の第1分岐部23が示されている。第1回路20の第1分岐部23が稼働している場合、第1分岐部23に接続された第2回路30の第2分岐部33は、オフ状態である。このとき、第2分岐部33において第4分岐回路35の増幅器35Cは、第1分岐部23に接続された可変容量のコンデンサとして機能する。
【0043】
このため、第2分岐部33の増幅器35Cに第1制御電圧Vc1を入力することにより、増幅器7から出力される第2分岐信号S6の位相が調整される。これにより、第1制御電圧Vc1に基づいて、増幅器7から出力される第2分岐信号S6と、増幅器6から出力される第1分岐信号S3との間の位相差を正確に90度に維持することができる。
【0044】
上記構成により、第1回路20は、第1分岐回路24に接続された第4分岐回路35に入力される第1制御電圧Vc1に基づいて、第1分岐信号S3の位相を調整することができる。第1回路20は、第2分岐回路25に接続された第4分岐回路35に第1制御電圧Vc1を入力することで、第2分岐信号S6の位相を調整してもよい。
【0045】
図5には、第2回路30の第2分岐部33が稼働している場合、第2分岐部33に接続された第1回路20の第1分岐部23は、オフ状態である。このとき、第1分岐部23の増幅器25Cは、第2分岐部33に接続された可変容量のコンデンサとして機能する。このため、第1分岐部23の増幅器25Cに第2制御電圧Vc2を入力することにより、増幅器6から出力される第3分岐信号T3の位相が調整される。これにより、第2制御電圧Vc2に基づいて、増幅器6から出力される第3分岐信号T3と、増幅器7から出力される第4分岐信号T6との間の位相差を正確に90度に維持することができる。
【0046】
上記構成により、第2回路30は、第3分岐回路34に接続された第2分岐回路25に入力される第2制御電圧Vc2に基づいて、第3分岐信号T3の位相を調整することができる。第2回路30は、第4分岐回路35に接続された第2分岐回路25に第2制御電圧Vc2を入力することで、第4分岐信号T6の位相を調整してもよい。
【0047】
図6に示されるように、第1分岐信号S3及び第3分岐信号T3は、第1制御電圧Vc1及び第2制御電圧Vc2(制御電圧Vc)に基づいて、位相を-60度から20度の80度の範囲内において調整することができる。
【0048】
上述したようにアンテナ装置1によれば、第1回路20に基づいて第1分岐信号S3及び第2分岐信号S6を生成し、第1回転方向の円偏波を生成するため、消費電力を低減することができる。アンテナ装置1によれば、第2回路30に基づいて第3分岐信号T3及び第4分岐信号T6を生成し、第2回転方向の円偏波を生成するため、消費電力を低減することができる。
【0049】
アンテナ装置1によれば、第1回路20の稼働中において、停止中の第2回路30に設けられた第2分岐部33の増幅器35Cに第1制御電圧Vc1を入力することにより、増幅器7から出力される第2分岐信号S6と、増幅器6から出力される第1分岐信号S3との間の位相差を正確に90度に維持することができる。
【0050】
アンテナ装置1によれば、第2回路30の稼働中において、停止中の第1回路20に設けられた第1分岐部23の増幅器25Cに第2制御電圧Vc2を入力することにより、増幅器6から出力される第3分岐信号T3と、増幅器7から出力される第2分岐信号S6との間の位相差を正確に90度に維持することができる。
【0051】
[第2実施形態]
第1実施形態のアンテナ装置1を用いることにより、複数のアンテナ素子3を備えるアレーアンテナを構成することができる。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については同一の名称及び符号を用い、重複する説明については適宜省略する。
【0052】
図7に示されるように、アレーアンテナ100は、複数のアンテナ素子3がm×n(m、n:任意の自然数)のマトリクス状に配列されたアンテナ部40を備えている。アンテナ部40には、例えば、16×16=256個のアンテナ素子3が配列されている。アレーアンテナ100は、複数のアンテナ素子3が配列されたフェーズドアレーアンテナに形成されている。アンテナ部40において、アンテナ素子3の個数及び配列態様は変更されてもよい
【0053】
図8及び図9に示されるように、アレーアンテナ100は、アンテナ装置1を複数個備えた制御装置50Uと、制御装置50Uに入力する第1信号及び第2信号を生成する信号生成部2と、制御装置50Uを制御する制御部102と、複数のアンテナ素子3が配置されたアンテナ部40と、制御において用いられるデータ及びプログラムを記憶する記憶部104とを備える。制御装置50Uは、入力される第1信号及び第2信号の位相及び振幅を含む移相量を調整するように構成されている。
【0054】
制御装置50Uは、64個の放射回路50により構成されている。制御装置50Uにおいて、放射ユニット10Uの個数は64個に限らない。放射回路50は、放射ユニット10Uを備えている。放射ユニット10Uは、4個の制御回路10により構成されている。4個の制御回路10は、アンテナ部40に配置された複数のアンテナ素子3のうち4個のアンテナ素子から放射される円偏波を制御する。放射ユニット10Uにおいて、制御回路10の個数は4個に限らない。
【0055】
信号生成部2は、例えば、制御装置50Uにおいて、64個の放射回路50の入力側に接続されている。信号生成部2は、制御部102により制御されている。信号生成部2と、各放射回路50とは、第1電気経路2D及び第2電気経路2Eにより接続されている。第1電気経路2D及び第2電気経路2Eは、例えば、信号生成部2と各放射回路50との間の電気長が等長となるようにトーナメント方式により接続されている(非特許文献1参照)。第1電気経路2Dには、第1信号が入力される。第2電気経路2Eには、第2信号が入力される。
第1電気経路2D及び第2電気経路2Eは、各放射回路50の入力側に接続されている。
【0056】
放射回路50は、入力される第1信号及び第2信号の位相及び振幅を含む移相量を放射ユニット10Uから放射される円偏波のビーム方向に応じて調整する。放射回路50の入力側には、一対の位相調整部51,52と、一対の増幅器53,54とが設けられている。位相調整部51,52は、入力される信号の位相を調整する。増幅器53,54は、入力される信号の振幅を調整可能な可変利得増幅器により構成されている。
【0057】
第1電気経路2Dは、位相調整部51の入力側に接続されている。位相調整部51の出力側は、増幅器53の入力側に接続されている。増幅器53の出力側は、放射ユニット10Uの入力側に接続されている。増幅器53の出力側と放射ユニット10Uの各制御回路10の入力側とは、第3電気経路55により接続されている。第3電気経路55は、例えば、増幅器53と各制御回路10との間の電気長が等長となるようにトーナメント方式により接続されている(非特許文献1参照)。第3電気経路55は、各制御回路10の位相調整部21の入力側に接続されている。
【0058】
第2電気経路2Eは、位相調整部52の入力側に接続されている。位相調整部52の出力側は、増幅器54の入力側に接続されている。増幅器54の出力側は、放射ユニット10Uの入力側に接続されている。増幅器54の出力側と放射ユニット10Uの各制御回路10の入力側とは、第4電気経路56により接続されている。第4電気経路56は、例えば、増幅器54と各制御回路10との間の電気長が等長となるようにトーナメント方式により接続されている(非特許文献1参照)。第4電気経路56は、各制御回路10の位相調整部31の入力側に接続されている。
【0059】
上記構成により信号生成部2は、生成した第1信号を、第1電気経路2Dを介して各放射回路50に分配して入力する。各放射回路50において、第1信号は、まず位相調整部51に入力される。位相調整部51は、入力された第1信号の位相を放射ユニット10Uから放射される円偏波のビーム方向に応じて調整する。位相量が調整された第1信号は、増幅器53に入力される。増幅器53は、第1信号の振幅を調整する。位相調整部51及び増幅器53により移相量が調整された第1信号は、放射ユニット10Uに入力される。放射ユニット10Uは、移相量が調整された第1信号を入力し、右旋回の円偏波を複数のアンテナ素子3から放射する。
【0060】
同様に、信号生成部2は、生成した第2信号を、第2電気経路2Eを介して各放射回路50に分配して入力する。各放射回路50において、第2信号は、まず位相調整部52に入力される。位相調整部52は、入力された第2信号の位相を放射ユニット10Uから放射される円偏波のビーム方向に応じて調整する。位相量が調整された第2信号は、増幅器54に入力される。増幅器54は、第2信号の振幅を調整する。位相調整部52及び増幅器54により移相量が調整された第2信号は、放射ユニット10Uに入力される。放射ユニット10Uは、移相量が調整された第2信号を入力し、左旋回の円偏波を複数のアンテナ素子3から放射する。
【0061】
図9に示されるように、制御部102は、例えば、記憶部104に記憶されたデータ及びプログラムに基づいて、アンテナ制御方法に関する処理を実行しアレーアンテナ100を制御する。制御部102は、複数のアンテナ装置1に入力される第1信号の位相量をアンテナ装置1毎に個別に制御して、アンテナ部40から放射される右旋回(第1回転方向)の円偏波のビーム方向を調整する。制御部102は、各アンテナ装置1を制御して、第1信号を分岐した第1分岐信号と、第1分岐信号に比して相対的に90度の第1位相差を与えた第2分岐信号を生成し、アンテナ部40から放射される右旋回の円偏波を生成する。制御部102は、第1制御電圧に基づいて第1分岐信号の位相を調整し、第1分岐信号と第2分岐信号との間の第1位相差を補償する。
【0062】
制御部102は、複数のアンテナ装置に入力される第2信号の位相量をアンテナ装置1毎に個別に制御して、アンテナ部40から放射される左旋回(第2回転方向)の円偏波のビーム方向を調整する。制御部102は、各アンテナ装置1を制御して、第2信号を分岐した第3分岐信号と、第3分岐信号に比して相対的に90度の第2位相差を与えた第4分岐信号を生成し、アンテナ部40から放射される左旋回の円偏波を生成する。制御部102は、第2制御電圧に基づいて第3分岐信号の位相を調整し、第3分岐信号と第4分岐信号との間の第2位相差を補償する。
【0063】
制御部102は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが記憶部104に記憶されたプログラムを実行するように構成されている。制御部102のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶部104が有するHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。また、プログラムは、必ずしも必要ではなく、制御回路10において順序回路を構成することにより所定の動作が実行されるようにしてもよい。
【0064】
図10には、アレーアンテナ100の消費電力と従来技術(例えば、特許文献1参照)の消費電力との比較結果が示されている。曲線A1は、アレーアンテナ100から放射される電磁波の送信電力EIRP(equivalent isotropic radiated power:等価等方放射電力)を示している。曲線B1は、従来技術のアレーアンテナから放射される電磁波の送信電力EIRPを示している。曲線A2は、アレーアンテナ100に入力される電源電流を示している。曲線B2は、従来技術のアレーアンテナに入力される電源電流を示している。図示するように、アレーアンテナ100によれば、例えば、C点において従来技術と同じ送信電力を得るために必要な電源電流は15.6Aである。従来技術に必要な電源電流が25.3Aであるので、アレーアンテナ100によれば、電源電流を38.3%低減している。
【0065】
本発明に係る各実施形態は、一例であり、発明の範囲を限定するものではない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0066】
例えば、アレーアンテナ100において制御部102は、第1回路20において第1分岐信号の位相及び振幅を調整し、第1分岐信号と第2分岐信号との間の移相量を調整し、アンテナ部40から放射されるビーム方向の調整を行ってもよい。アレーアンテナ100において制御部102は、第2回路30において第3分岐信号の位相及び振幅を調整し、第3分岐信号と第4分岐信号との間の移相量を調整し、アンテナ部40から放射されるビーム方向の調整を行ってもよい。
【0067】
アレーアンテナ100において制御部102は、第1回路20において第1分岐信号の位相及び振幅を調整し、第1分岐信号と第2分岐信号との間の移相量をアンテナ部40から放射されるビーム方向に応じて調整し、送信信号を補償してもよい。アレーアンテナ100において制御部102は、第2回路30において第3分岐信号の位相及び振幅を調整し、第3分岐信号と第4分岐信号との間の移相量をアンテナ部40から放射されるビーム方向に応じて調整し、送信信号を補償してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 アンテナ装置
2 信号生成部
2A ベースバンド部
2B ミキサ
2C ミキサ
2D 第1電気経路
2E 第2電気経路
3 アンテナ素子
4 第1入力部
5 第2入力部
6 増幅器
7 増幅器
8 出力調整部
10 制御回路
10U 放射ユニット
20 第1回路
21 位相調整部
22 増幅器
23 第1分岐部
24 第1分岐回路
24A 第1スイッチ
24B 増幅器
25 第2分岐回路
25A 第1遅延回路
25B 第2スイッチ
25C 増幅器
30 第2回路
31 位相調整部
32 増幅器
33 第2分岐部
34 第3分岐回路
34A 第3スイッチ
34B 増幅器
35 第4分岐回路
35A 第2遅延回路
35B 第4スイッチ
35C 増幅器
40 アンテナ部
50 放射回路
50U 制御装置
51 位相調整部
52 位相調整部
53 増幅器
54 増幅器
55 第3電気経路
56 第4電気経路
100 アレーアンテナ
102 制御部
104 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号を入力し、位相及び振幅を調整する第1回路と、
前記第1回路に接続され、電磁波を放射するアンテナ素子と、
前記アンテナ素子に接続されると共に、第2信号を入力し、位相及び振幅を調整する第2回路と、を備え、
前記第1回路は、前記第1信号を分岐する第1分岐部を備え、
前記第1分岐部は、前記第1信号を分岐して第1分岐信号を出力する第1分岐回路と、前記第1信号を分岐して第2分岐信号を出力する第2分岐回路とを備え、
前記第1分岐回路は、前記アンテナ素子に設けられた第1入力部に前記第1分岐信号を入力し、
前記第2分岐回路は、前記第1信号を分岐して前記第1分岐信号に比して相対的に90度の第1位相差を与えて前記第2分岐信号を出力する第1遅延回路を備え、
前記第1遅延回路は、前記アンテナ素子に設けられた第2入力部に前記第2分岐信号を前記第1分岐信号と直交する方向に入力し、
前記アンテナ素子は、前記第1入力部に入力された前記第1分岐信号と、前記第2入力部に入力された前記第2分岐信号との合成波に基づいて第1回転方向の円偏波を放射し、
前記第2回路は、前記第2信号を分岐する第2分岐部を備え、
前記第2分岐部は、前記第2信号を分岐して第3分岐信号を出力する第3分岐回路と、前記第2信号を分岐して第4分岐信号を出力する第4分岐回路とを備え、
前記第3分岐回路は、前記第2入力部に前記第3分岐信号を入力し、
前記第4分岐回路は、前記第2信号を分岐して前記第3分岐信号に比して相対的に90度の第2位相差を与えて前記第4分岐信号を出力する第2遅延回路を備え、
前記第2遅延回路は、前記第1入力部に前記第4分岐信号を前記第3分岐信号と直交する方向に入力し、
前記アンテナ素子は、前記第2入力部に入力された前記第3分岐信号と、前記第1入力部に入力された前記第4分岐信号との合成波に基づいて前記第1回転方向と反対方向の第2回転方向の円偏波を放射する、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1回路は、前記第1分岐回路に接続された前記第4分岐回路に入力される第1制御電圧に基づいて前記第1分岐信号の位相を調整する、
請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第2回路は、前記第3分岐回路に接続された前記第2分岐回路に入力される第2制御電圧に基づいて前記第3分岐信号の位相を調整する、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1からのうちいずれか1項に記載された前記アンテナ装置を複数個備えた制御装置と、
前記制御装置に入力する前記第1信号を生成する信号生成部と、
前記制御装置を制御する制御部と、
複数の前記アンテナ素子が配置されたアンテナ部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記アンテナ装置に入力される前記第1信号の位相量を前記アンテナ装置毎に個別に制御して、前記アンテナ部から放射される前記第1回転方向の円偏波のビーム方向を調整し、
前記信号生成部は、前記制御装置に入力する前記第2信号を生成し、
前記制御部は、複数の前記アンテナ装置に入力される前記第2信号の位相量を前記アンテナ装置毎に個別に制御して、前記アンテナ部から放射される前記第1回転方向と反対方向の第2回転方向の円偏波のビーム方向を調整する、
アレーアンテナ。
【請求項5】
位相及び振幅を調整する第1回路と、前記第1回路に接続され、電磁波を放射するアンテナ素子と、を備えるアンテナ装置のアンテナ制御方法であって、
第1信号を前記第1回路に入力し、
前記第1回路に設けられた第1分岐回路に前記第1信号を分岐した一方の前記第1信号を入力し、第1分岐信号を出力し、
前記第1分岐回路から前記アンテナ素子に設けられた第1入力部に前記第1分岐信号を入力し、
前記第1回路に設けられた第2分岐回路に前記第1信号を分岐した他方の前記第1信号を入力し、前記第2分岐回路に設けられた第1遅延回路において他方の前記第1信号を前記第1分岐信号に比して相対的に90度の第1位相差を与えて第2分岐信号を出力し、
前記アンテナ素子に設けられた第2入力部に前記第2分岐信号を前記第1分岐信号と直交する方向に入力し、
前記アンテナ素子において、前記第1入力部に入力された前記第1分岐信号と、前記第2入力部に入力された前記第2分岐信号との合成波に基づいて第1回転方向の円偏波を放射し、
前記アンテナ素子に接続されると共に、位相及び振幅を調整する第2回路に第2信号を入力し、
前記第2回路に設けられた第3分岐回路に前記第2信号を分岐した一方の前記第2信号を入力し、第3分岐信号を出力し、
前記第3分岐回路から前記第2入力部に前記第3分岐信号を入力し、
前記第2回路に設けられた第4分岐回路に前記第2信号を分岐した他方の前記第2信号を入力し、前記第4分岐回路に設けられた第2遅延回路において他方の前記第2信号を前記第3分岐信号に比して相対的に90度の第2位相差を与えて第4分岐信号を出力し、
前記第1入力部に前記第4分岐信号を前記第3分岐信号と直交する方向に入力し、
前記アンテナ素子において、前記第2入力部に入力された前記第3分岐信号と、前記第1入力部に入力された前記第4分岐信号との合成波に基づいて前記第1回転方向と反対方向の第2回転方向の円偏波を放射する、
アンテナ制御方法。