(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117855
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】台船
(51)【国際特許分類】
B63B 35/00 20200101AFI20240823BHJP
E02F 3/88 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B63B35/00 D
E02F3/88 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023903
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】502362460
【氏名又は名称】小柳建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141106
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 清志
(72)【発明者】
【氏名】井出 光
(72)【発明者】
【氏名】南澤 宏安
(57)【要約】
【課題】低空頭の環境を安定して航行する。
【解決手段】先端部に設けられ、バックホー2を載置する載置台102を備え、上下方向における載置台102の表面の位置は、所定の重機を載置したときの喫水線より低く、載置台102上に水が侵入するように設けられており、載置台102の航行方向前方にはフロータ103が設けられ、載置台102の航行方向側方にはフロータ104a,104bが設けられており、バックホー2が有する集泥装置22により集泥された泥土を、台船1の後端部に設けられた吸引圧送タンク室305へ搬送する送泥管の少なくとも航行方向における先端部から載置台102の後端部までは、吸引圧送タンク室305が載置された床面より下方に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に設けられ、重機を載置する載置台を備え、
上下方向における前記載置台の表面の位置は、喫水線より低く、前記載置台上に水が侵入するように設けられている
ことを特徴とする台船。
【請求項2】
上下方向における前記載置台の表面の位置は、前記重機を載置したときの喫水線より低く設けられた
ことを特徴とする請求項1記載の台船。
【請求項3】
前記載置台の前方に前方フロータが設けられた
ことを特徴とする請求項1記載の台船。
【請求項4】
前記重機が有する吸引部により吸引された泥土を、前記台船の後端部に設けられたタンクへ搬送する送泥管の少なくとも前記先端部から前記載置台の後端部までは、前記タンクが載置された床面より下方に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の台船。
【請求項5】
前記載置台の側方に側方フロータが設けられた
ことを特徴とする請求項1記載の台船。
【請求項6】
前記送泥管で泥土を搬送するために圧空を供給する圧空供給手段と、前記圧空供給手段を制御する制御手段とが、前記台船の先端部から後端部に向かって直線上に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の台船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台船に関し、特に、安定して航行できる台船に関する。
【背景技術】
【0002】
浚渫作業を行うためのバックホーを搭載した台船が一般的によく知られている。この台船が河川や海上の橋桁下等の低空頭の環境を航行する際、バックホーのアームやブーム等の作業機が橋桁に接触し、橋桁に損傷を与える可能性がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、作業台船と、作業台船に搭載された重機と、システム全体を制御する制御手段とを含む浚渫作業システムに関する技術が開示されている。重機は、ブーム 、アーム、バケットで構成される作業機を有するバックホーであり、バックホーの旋回台を作業台船に直接的に据付けたものである旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の浚渫作業システムでは、バックホーの旋回台を作業台船に直接的に据付けているため、ブームの本体部への取り付け位置が高い。そのため、ブームやアーム、また本体上部の位置が高く、これらが作業船の航行中に上方にある橋桁や橋脚等の接触警戒対象物に接触する可能性が高かった。
【0006】
また、ブームやアーム、また本体上部の位置が高いため、バックホーを載置したときの作業船の重心が高く不安定になるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、低空頭の環境を安定して航行する台船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するため、本発明に係る台船の第1の特徴は、
先端部に設けられ、重機を載置する載置台を備え、
上下方向における前記載置台の表面の位置は、喫水線より低く、前記載置台上に水が侵入するように設けられている
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る台船によれば、低空頭の環境を安定して航行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る台船の平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る台船の前面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る台船の
図1に示したA1-A2断面における断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る台船の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る台船に設けられた圧送装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0012】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る台船の平面図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係る台船の前面図であり、
図3は、本発明の一実施形態に係る台船の
図1に示したA1-A2断面における断面図であり、
図4は、本発明の一実施形態に係る台船の斜視図である。以下、
図2に示す紙面に対して左右方向、上下方向をそれぞれ左右方向、上下方向として説明し、
図2に示す紙面に向かう方向を前方向、紙面から遠ざかる方向を後方向として説明する。
【0014】
本発明の一実施形態に係る台船1は、河川、池、湖、海などの水底に堆積した泥土を採取して処理する、所謂、浚渫工事を行うバックホー2や圧送装置3などの各種装置が搭載されている。
【0015】
台船1の上板101には、圧送装置3と、台船用クレーン41,42と、スパット51,52と、発電装置6と、制御室7とが設けられている。
【0016】
また、台船1の前側には、上板101より下方に位置している載置台102が設けられている。この載置台102上には、重量が約1(t)~3(t)であるバックホー2が載置されており、このバックホー2のブーム21の先端に集泥装置22を連結している。バックホー2は、旋回可能で、ブーム21はリンク機構により集泥装置22を上下動すると共に、水平に保持できるようになっている。
【0017】
台船1の載置台102の前方には、浮力を有するフロータ103が接続されており、このフロータ103の表面(上面)の位置は、上下方向において、載置台102と同レベルとなっている。載置台102の前方にフロータ103が接続されることにより、載置台102にバックホー2が載置されたとき、載置台102への水の侵入を容易にしつつ載置台102が必要以上に沈み込むことを防止し、台船1の前後方向におけるバランスを良好に保持することができる。
【0018】
また、台船1の載置台102の左右方向両側には、浮力を有するフロータ104a,104bが接続されており、このフロータ104a,104bの表面の位置は、上下方向において、上板101と同レベルとなっている。載置台102の側方にフロータ104a,104bが接続されることにより、フロータ104a,104bの表面は喫水線より上に位置するので、より載置台102にバックホー2が載置されたときの左右方向における安定性を向上させることができる。
【0019】
バックホー2が載置台102上に載置されたとき、
図2に示すように、上下方向における載置台102の表面のレベル(位置)L3は、バックホー2を載置したときの喫水レベルL1より低く、載置台102上に水が侵入するように設けられている。
【0020】
載置台102が低い位置に設けられているので、バックホー2を低い位置で載置でき、バックホー2本体の最高部のレベル(位置)L2を低くすることができる。なお、
図2では、スパット51,52は、レベル(位置)L2より高い位置にあるが、台船1の航行中には、レベル(位置)L2より低くなるように高さを調整させることができる。
【0021】
このように、載置台102の表面のレベル(位置)L3は、バックホー2を載置したときの喫水レベルL1より低くなるように設けられているので、バックホー2を低い位置で載置でき、ブームやアーム、またバックホー2本体上部が台船1の航行中に上方にある橋桁や橋脚等の接触警戒対象物に接触することを防止することができる。すなわち、台船1は、レベルL1からレベルL2までの距離Lが、レベルL1から橋桁や橋脚等の接触警戒対象物までの距離より短ければ、橋桁や橋脚等の接触警戒対象物に接触することなく河川などを航行することができる。
【0022】
また、重心が低くなるので、台船1が安定して航行することができる。さらに、バックホー2を低い位置で載置できるので、集泥装置22がより深い水底に到達することができるので、より深い位置の汚泥を回収することができる。
【0023】
圧送装置3は、集泥装置22により浚渫した水底の浚渫泥土を圧送する。詳細は後述する。
【0024】
台船用クレーン41,42は、台船1本体や、台船1上に設けられた圧送装置3や発電装置6などの保守を行うための重機である。
【0025】
スパット51,52は、台船1の左右方向両端に設けられている。台船1が浚渫場所まで移動したときにスパット51,52を降下させ、水底に打ち込むことで台船1を位置固定する。上述したように、スパット51,52は、上下方向に高さ調整可能に設けられている。具体的には、スパット51,52は、それぞれ複数の部品で構成されており、部品を接続することにより上方向に伸長することができる。また、部品接続され伸長されたスパット51,52をそれぞれ分解することにより、最頂部のレベル(位置)を、バックホー2本体の最高部のレベル(位置)L2より低くすることができる。
【0026】
発電装置6は、圧送装置3など台船1に配置された各種電動機器に給電する。
【0027】
制御室7は、内部に制御装置を有しており、操作者が制御装置を操作することにより、浚渫工事を実施することができる。
【0028】
圧送装置3は、第1送泥管301と、第1加圧用コンプレッサ302と、第2加圧用コンプレッサ303と、吸引用コンプレッサ304と、吸引圧送タンク室305と、セパレータタンク306と、計装用コンプレッサ307とを有している。
【0029】
第1加圧用コンプレッサ302と、第2加圧用コンプレッサ303と、吸引用コンプレッサ304とは、台船1の幅方向(左右方向)において中心部であり、かつ台船の先端部から後端部に向かって航行方向(前後方向)に直線上に一列になるように配置されている。比較的重量の重い第1加圧用コンプレッサ302と、第2加圧用コンプレッサ303と、吸引用コンプレッサ304とがこのように配置されることにより、より台船1の安定性が向上する。また、制御室7も第1加圧用コンプレッサ302と、第2加圧用コンプレッサ303と、吸引用コンプレッサ304とに対して、台船1の幅方向(左右方向)において中心部であり、かつ航行方向(前後方向)に直線上に一列になるように配置されている。なお、制御室7と、第1加圧用コンプレッサ302と、第2加圧用コンプレッサ303と、吸引用コンプレッサ304とは、直線上に配置されておればよく、幅方向(左右方向)において多少ずらして配置するようにしてもよい。
【0030】
第1送泥管301は、バックホー2が有する集泥装置22により浚渫した水底の浚渫泥土を、台船1の後端部に設けられた吸引圧送タンク室305へ搬送する。この第1送泥管301は、
図3に示すように、航行方向(前後方向)における先端部R1から載置台102の後端部R2まで、吸引圧送タンク室305が載置された上板101より下方に配置されている。また、本実施形態では、載置台102の後端部R2から吸引用コンプレッサ304の後端部R3まで上板101より下方に配置されている。そして、第1送泥管301の後端部R3より後側は、立ち上がり上板101より上方に配置されている。
【0031】
また、第1送泥管301は、台船1の幅方向(左右方向)における中心部に配置された制御室7と、第1加圧用コンプレッサ302と、第2加圧用コンプレッサ303と、吸引用コンプレッサ304との下方に配置されると、配管部品の交換や清掃など保守作業の際、作業性が悪くなる。そこで、
図1,
図2に示すように、第1送泥管301は、制御室7と、第1加圧用コンプレッサ302と、第2加圧用コンプレッサ303と、吸引用コンプレッサ304との下方を避けるように、前方から向かって制御室7と、第1加圧用コンプレッサ302と、第2加圧用コンプレッサ303と、吸引用コンプレッサ304との左右方向における左側に配置されている。なお、ここでは左側に配置しているが、右側に配置するようにしてもよい。
【0032】
このように、集泥装置22により浚渫した水底の浚渫泥土を、台船1の後端部に設けられた吸引圧送タンク室305へ搬送する第1送泥管301の少なくとも航行方向(前後方向)における先端部R1から載置台102の後端部R2までは、吸引圧送タンク室305が載置された床面(上板101)より下方に配置されているので、台船1の重心を低くすることができ、また、集泥装置22が干渉することを防止することができる。
【0033】
次に、本発明の一実施形態に係る台船1に設けられた圧送装置3の構成および圧送装置3による圧送動作について説明する。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態に係る台船1に設けられた圧送装置の概略構成図である。圧送装置3は、制御室7に設置された制御装置により制御される。
【0035】
集泥装置22と第1送泥管301とがフレキシブルホースで接続されており、第1送泥管301の下流端が、第2送泥管312及び第3送泥管313に分岐している。第2送泥管312の下流側には第1貯泥タンク314Aが接続されており、第3送泥管313の下流側には第2貯泥タンク314Bが接続されている。第1貯泥タンク314Aおよび第2貯泥タンク314Bは、吸引圧送タンク室305の内部に設置されている。
【0036】
第1貯泥タンク314Aの底部には、第1排泥管315Aが接続されており、第2貯泥タンク314Bの底部には、第2排泥管315Bが接続されている。第1排泥管315Aと第2排泥管315Bとは下流側で合流管316において合流する。
【0037】
合流管316には、外部圧送管317が接続され、この外部圧送管317は、水上に設けたフロート(図示せず)上に設けられる。
【0038】
第1貯泥タンク314Aの上部に第1吸引管320Aの上流端を接続し、第2貯泥タンク314Bの上部に第2吸引管320Bの上流端を接続し、第1吸引管320Aおよび第2吸引管320Bの下流端を1つの管路を構成する吸引合流管321に接続している。この吸引合流管321に1台のセパレータタンク306を接続し、このセパレータタンク306と吸引用コンプレッサ304とを下流吸引管323により接続している。
【0039】
第1吸引管320Aには電磁式開閉弁などの第1吸引バルブ324Aが設けられており、第2吸引管320Bには電磁式開閉弁などの第2吸引バルブ324Bが設けられている。吸引用コンプレッサ304は、第1及び第2吸引バルブ324A,324Bの切換えにより、第1及び第2貯泥タンク314A,314Bに選択的に連通する。
【0040】
第1及び第2貯泥タンク314A,314Bの上部に、第1及び第2吸引管320A,320Bの上流端側を介して、第1及び第2接続管325A,325Bの一端を接続し、これら第1及び第2接続管325A,325Bの他端に第1及び第2圧縮空気供給管326A,326Bの下流側を接続している。これら第1及び第2圧縮空気供給管326A,326Bの上流側は供給合流管327により合流しており、この供給合流管327の上流に一対の分岐管328A,328Bを設け、これら一対の分岐管328A,328Bに第1および第2加圧用コンプレッサ302,303が接続されている。
【0041】
また、第1及び第2圧縮空気供給管326A,326Bには、電磁式開閉弁などの加圧バルブ329A,329Bが設けられている。第1および第2加圧用コンプレッサ302,303は、加圧バルブ329A,329Bの切換えにより、第1及び第2貯泥タンク314A,314Bに選択的に連通する。
【0042】
第1及び第2接続管325A,325Bの他端には分岐部330A,330Bが設けられており、これら分岐部330A,330Bに第1及び第2圧縮空気供給管326A,326Bと第1及び第2大気開放管331A,331Bが接続されている。これら第1及び第2大気開放管331A,331Bは、下流側で合流し、開閉弁332と接続されている。また、第1及び第2大気開放管331A,331Bには合流前にそれぞれ電磁式開閉弁などの第1及び第2大気開放バルブ333A,333Bが設けられ、第1及び第2大気開放管331A,331Bには第1及び第2大気開放バルブ333A,333Bの下流側で合流前にそれぞれ逆止弁334A,334Bが設けられ、この逆止弁334A,334Bは第1及び第2貯泥タンク314A,314B側への逆流を防止する。なお、第1及び第2接続管325A,325Bの一端を、第1及び第2吸引管320A,320Bの下流側に接続することにより、第1及び第2接続管325A,325Bの一端が第1及び第2貯泥タンク314A,314Bに連通する。
【0043】
次に、圧送装置3による圧送動作について説明すると、まず、複数の閉成したバルブの中で、第1吸引バルブ324Aを開成状態とし、吸引用コンプレッサ304を作動させ、第1貯泥タンク314Aに負圧をかけて減圧する。これにより集泥装置22により浚渫した水底の浚渫泥土が第1送泥管301および第2送泥管312を介して第1貯泥タンク314A内に吸引される。
【0044】
吸引用コンプレッサ304により第1貯泥タンク314A内の空気を排気すると、排気された空気は、第1貯泥タンク314A内から第1吸引管320Aと吸引合流管321を通り、セパレータタンク306を通過することで、空気内の水分及び不純物がタンク本体の下部に落とされ、空気中の水分及び不純物が取り除かれた後、吸引用コンプレッサ304に吸引される。
【0045】
ここで、第1貯泥タンク314A内の浚渫泥土が定量となると、制御室7内の制御装置により第1吸引バルブ324Aを閉成すると共に、第2吸引バルブ324Bを開成することにより、第2貯泥タンク314Bと吸引用コンプレッサ304が連通し、吸引用コンプレッサ304により第2貯泥タンク314Bに負圧をかける。
【0046】
これにより、集泥装置22により浚渫した水底の浚渫泥土が第1送泥管301および第3送泥管313を介して第2貯泥タンク314Bに吸引される。同時に第1貯泥タンク314A内における浚渫泥土の排出を行う。第1貯泥タンク314A内における浚渫泥土の排出は、加圧バルブ329Aを開成し、第1圧縮空気供給管326Aにより接続された第1および第2加圧用コンプレッサ302,303を作動させ、第1貯泥タンク314A内に圧縮空気を供給し、第1貯泥タンク314A内の浚渫泥土が第1排泥管315Aを通って合流管316に圧送される。
【0047】
そして、第1貯泥タンク314A内における浚渫泥土の排出を完了させた後、第1および第2加圧用コンプレッサ302,303を停止させ、第1貯泥タンク314Aに接続した第1大気開放バルブ333Aを開き、空となった第1貯泥タンク314A内を大気圧に戻す。
【0048】
そして、第2貯泥タンク314B内の浚渫泥土が定量となった状態で、第2吸引バルブ324Bを開成し、第1吸引バルブ324Aを閉成し、第1貯泥タンク314Aと吸引用コンプレッサ304とを連通させ、吸引用コンプレッサ304により、第1貯泥タンク314Aに負圧をかけ、浚渫泥土を第1貯泥タンク314Aに送り込む。
【0049】
このように、吸引用コンプレッサ304を常時作動させた状態で、第1貯泥タンク314Aと第2貯泥タンク314Bに交互に浚渫泥土の吸引,圧送・大気開放を行い、水底における浚渫泥土の吸引・圧送を行う。
【0050】
なお、本発明の一実施形態に係る台船1の載置台102に載置された重機としては、バックホー2を例に挙げて説明したが、これに限らず集泥装置22を上下左右に移動させることが可能な重機であればどのような重機であってもよい。本発明の一実施形態に係る台船1の載置台102に載置されたバックホー2は、載置台102上で動かないように固定するようにしてもよい。さらに、固定が容易に外れないようにロック機構を有するようにしてもよい。
【0051】
また、本発明の一実施形態に係る台船1では、バックホー2が載置台102上に載置されたとき、上下方向における載置台102の表面のレベル(位置)L3は、バックホー2を載置したときの喫水レベルL1より低く、載置台102上に水が侵入するように設けられたが、載置台102上に重機が載置されていない場合でも、載置台102の表面のレベル(位置)L3が喫水レベルL1より低くなるように設けられていてもよい。ただし、載置台102上に重機が載置されていない場合、重機が上方の接触警戒対象物に接触することがないので、より高い推進性を担保するために、載置台102上に重機が載置されていない場合には、上下方向における載置台102の表面のレベル(位置)L3が、重機を載置したときの喫水レベルより高くなるように設けられ、かつ、重機が載置台102上に載置されたとき、上下方向における載置台102の表面のレベル(位置)L3が、重機を載置したときの喫水レベルL1より低くなるように設けられていることが望ましい。
【0052】
なお、本発明の一実施形態では、河川、池、湖、海などの水底に堆積した泥土を採取して処理する浚渫工事を行うバックホー2や圧送装置3などの各種装置が搭載された台船1について説明したが、台船1の用途は浚渫工事とは限らず、重機を載置可能な台船であればよく建設工事全般に用いられることが可能である。
【0053】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
(付記1)
先端部に設けられ、重機を載置する載置台を備え、
上下方向における前記載置台の表面の位置は、喫水線より低く、前記載置台上に水が侵入するように設けられている
ことを特徴とする台船。
このように、載置台が低い位置に設けられているので、重機を低い位置で載置できるので、重機が台船の航行中に上方にある橋桁や橋脚等の接触警戒対象物に接触することを防止することができる。また、重心が低くなるので、台船が安定して航行することができる。
【0054】
(付記2)
上下方向における前記載置台の表面の位置は、前記重機を載置したときの喫水線より低く設けられた
ことを特徴とする(付記1)記載の台船。
これにより、載置台上に重機が載置されていないと、上下方向における載置台の表面の位置は喫水線より高くなる場合がある。この場合、重機が上方の接触警戒対象物に接触することがないので、より高い推進性を担保することができる。
【0055】
(付記3)
前記載置台の前方に前方フロータが設けられた
ことを特徴とする(付記1)記載の台船。
これにより、載置台に重機が載置されたとき、載置台が必要以上に沈み込むことを防止し、台船の前後方向におけるバランスを良好に保持することができる。
【0056】
(付記4)
前記重機が有する吸引部により吸引された泥土を、前記台船の後端部に設けられたタンクへ搬送する送泥管の少なくとも前記先端部から前記載置台の後端部までは、前記タンクが載置された床面より下方に配置されている
ことを特徴とする(付記1)記載の台船。
これにより、台船の重心を低くすることができ、また、集泥装置が重機に干渉することを防止することができる。
【0057】
(付記5)
前記載置台の側方に側方フロータが設けられた
ことを特徴とする(付記1)記載の台船。
これにより、載置台に重機が載置されたときの左右方向における安定性を向上させることができる。
【0058】
(付記6)
前記送泥管で泥土を搬送するために圧空を供給する圧空供給手段と、前記圧空供給手段を制御する制御手段とが、前記台船の先端部から後端部に向かって直線上に配置されている
ことを特徴とする(付記1)記載の台船。
比較的重量の重い圧空供給手段と制御手段とが直線上に配置されていることにより、より台船の安定性が向上する。ここで、圧空とは圧縮空気のことをいう。
【符号の説明】
【0059】
1 台船
2 バックホー
3 圧送装置
6 発電装置
7 制御室
22 集泥装置
41,42 台船用クレーン
51,52 スパット
101 上板
102 載置台
103 フロータ(前方フロータ)
104a,104b フロータ(側方フロータ)
301 第1送泥管
302 第1加圧用コンプレッサ(圧空供給手段)
303 第2加圧用コンプレッサ(圧空供給手段)
304 吸引用コンプレッサ(圧空供給手段)
305 吸引圧送タンク室
306 セパレータタンク
307 計装用コンプレッサ
312 第2送泥管
313 第3送泥管
314A 第1貯泥タンク
314B 第2貯泥タンク