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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117857
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】被牽引車両の可搬式案内装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 69/30 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B65G69/30
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023907
(22)【出願日】2023-02-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】522390696
【氏名又は名称】株式会社ヤマナカ
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 崇
【テーマコード(参考)】
3F078
【Fターム(参考)】
3F078AA03
3F078DA01
3F078DA11
3F078DA13
(57)【要約】
【課題】
牽引車両で牽引される被牽引車両をドック位置(荷積み・荷卸し位置)に位置決めする時に、衝撃少なく目標位置に位置決めする。
【解決手段】
可搬式の案内装置は、牽引車両に牽引される被牽引車両を所定位置に位置決めする。案内装置は、被牽引車両が走行する走行路に配置され、被牽引車両の走行方向に延び互いに間隔を置いた1対の案内手段と、被牽引車両の走行面を形成する第1、第2のランプ部材と、第1、第2のランプ部材間に配置され、被牽引車両の走行方向に対し垂直な方向に移動可能な載置手段と、載置手段の下方に配置されるベース板と、被牽引車両の走行方向に対し垂直な方向に載置手段を移動可能にする移動手段を備える。案内手段の一端部を第1のランプ部材またはベース板に固定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車両に牽引される被牽引車両を所定位置に位置決めする可搬式案内装置において、
前記被牽引車両が走行する走行路に配置され、前記被牽引車両の走行方向に延び互いに間隔を置いた1対の案内手段と、
前記被牽引車両の走行面を形成する第1、第2のランプ部材と、
前記第1、第2のランプ部材間に配置され、前記被牽引車両の走行方向とは実質的に垂直な方向に移動可能な載置手段と、
前記載置手段の下方に配置されるベース板と、
前記載置手段を前記被牽引車両の走行方向とは実質的に垂直な方向に移動可能にする移動手段とを備え、前記案内手段の一端部を前記第1のランプ部材または前記ベース板に固定したことを特徴とする被牽引車両の可搬式案内装置。
【請求項2】
前記案内手段は、前記被牽引車両の走行方向に関して、互いの間の間隔がテーパ状に減少変化する部分を有していることを特徴とする請求項1に記載の被牽引車両の可搬式案内装置。
【請求項3】
前記載置手段は、載置面を形成する天板と、この天板の縁部に回動可能に配置された複数個のローラ手段を有し、前記ベース板に前記天板の移動を制限する移動制限手段、および前記天板を元の位置に復帰させる復帰手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の被牽引車両の可搬式案内装置。
【請求項4】
前記案内手段は、前記被牽引車両の走行方向に関して、互いの間の間隔がテーパ状に減少変化する部分を有していることを特徴とする請求項3に記載の被牽引車両の可搬式案内装置。
【請求項5】
前記復帰手段はばねであり、前記移動制限手段は前記ベース板の上面に回動可能に設けた複数個の第2のローラ手段を含むことを特徴とする請求項4に記載の被牽引車両の可搬式案内装置。
【請求項6】
前記牽引車両はAGVであり、前記被牽引車両はこのAGVに牽引される、一対のフォークを有する台車であることを特徴とする請求項4に記載の被牽引車両の可搬式案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AGV等の牽引車両により牽引される被牽引車両を所定経路に案内する案内装置に係り、特に荷卸し・荷積み位置に位置決めするのに好適な可搬式案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被牽引車両に物品を搭載する場合および被牽引車両から物品を荷卸しする場合、荷積み位置または荷卸し位置(ドック位置)に正確に被牽引車両を位置決めすると、荷積みや荷卸しに要する時間を大幅に低減できる。特に、被牽引車両がAGV(無人搬送車)であって荷積みの場合には、被牽引車である台車内への物品の積載状態を安定に保つことが可能になり、牽引車両の積載時及びその後の走行時に荷崩れの発生を防止できる。
【0003】
このように、無人運転を可能にして搬送効率を上げる場合には、ドック位置へ搬送台車を正確に位置決めすることが求められ、従来からいくつかの方法が提案されている。例えば、特許文献1には、冷凍保管倉庫へのころ付き台車の搬入・搬出作業をスムーズに行わせる様にし、かつ、ころ付き台車の配列を整然として入庫量を多くする発明が開示されている。すなわち、倉庫内に軌条を付設し、ころ付き台車を整列搬入できる構造にすると共に、軌条の倉庫出入口側には、高さ方向および/または幅方向にガイドテーパーを設けて、ころ付き台車の搬入を容易にしている。
【0004】
また、特許文献2には、台車に搭載したパイプ等の棒状の積載体を、検査・梱包・二次加工等の後工程の装置に供給するための台車位置決め装置が、開示されている。この公報では、台車位置決め装置が、台車を指定位置において幅方向に位置決めする位置決め手段と台車の引き込み・排出手段とを備え、位置決め手段は、緩隔度で外方へ開くテーパ部から指定位置を含む平行部の指定位置まで積載台車を誘導する1対のガイドからなり、テーパ部の先端は台車の幅の1.1~1.25倍の間隔で、平行部は台車の幅にほぼ等しくなるように構成されている。
【0005】
なお、特許文献3にはバックして積載空間に進むトラックの後車輪を積載位置に固定するために、積載空間側で後車輪に当接する車輪止めと、反積載空間側で後車輪に当接する車輪止めとをそれぞれ移動可能に設けている。具体的には、積載空間側の車輪止めは、トラックの進行方向に配置され後輪の車両幅方向間隔よりも広い間隔で配置された一対の長手方向ガイドの内側面に、長手方向に移動及び当接可能に配設されている。一方、反積載空間側の車輪止めは、長手方向ガイドの先端部に形成されたテーパ部に退避して配置され、後輪が車輪止め部を通過した後に長手方向ガイドのテーパ部から内面側に移動して、後輪に当接する。前後の車輪止め部で後輪を挟むことにより、後輪の移動を防止するとともに、トラックを積載空間に位置決めする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57-196002号公報
【特許文献2】特開平8-290823号公報
【特許文献3】特表2013-531592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
AGVで牽引される台車やピックアップトラック等で牽引されるプレジャーボート用の台車などの被牽引車両では、前進時には牽引車両に追随して曲線軌道を走行し、後退時には、牽引車両とともにほぼ同一の直線軌道を走行するように構成される。例えば、牽引車両がAGVであり、被牽引車両がAGVに連結されたフォーク付き台車の場合、パレット上に載置された物品をパレットごと搬送するためには、フォークを正確にパレットの所定位置に挿入できるようにして、フォークの上昇動作時や台車の走行時にパレット上の物品が荷崩れするのを防止する必要がある。
【0008】
上記特許文献1に記載の保管倉庫では、床面にテーパ部を有するガイドテーパを配置し、操舵性を有しないころ付き台車をテーパ部に当接させながら奥へ進行させ、テーパ部に連続する平行部へ台車を進ませている。しかしながらこの倉庫では、台車がテーパ部に当接すると、台車にはガイドテーパからの反力が作用する。この反力は、台車に搭載した積み荷に振動や衝撃として負荷されて積み荷の位置を変え、最悪の場合台車から積み荷が落ちる虞がある。また、台車が操舵性を有しないので、曲がった軌道でガイドテーパ部に台車が侵入すると、一方の車輪が床面から浮いた状態になり、台車上の積み荷の位置が変化し、上記不具合を助長する虞もある。
【0009】
特許文献2では、台車を案内するテーパ部を有するガイドが開示されている。しかしながら、この公報に記載のものはパイプ等の長尺の積み荷が前提であるため、ガイドへ台車が衝突的に当接した際に生じる衝撃や振動により、積み荷の位置変化が発生する虞がある点については十分に考慮されていない。なお、テーパ角度が15°以上であれば幅寄せ装置を併用するとの記載があるが、それほどの大角度の台車の進入でなくとも、積み荷保護の観点から当接時の衝撃緩和が求められる。
【0010】
特許文献3には、トラックの荷受け場での車輪固定のためにテーパ形状の長手方向ガイドを使用することが開示されている。この公報に記載の長手方向ガイドは、ラックの誘導の目安でしかなく、トラック自体は運転手の運転操作(後退運転)により直進させている。
【0011】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は牽引車両で牽引される被牽引車両をドック位置に位置決めする時に、衝撃少なく目標位置に位置決めできるようにすることにある。そして牽引車両がAGVであり被牽引車両がフォーク付き台車の場合には、上記目的に加え、フォークパレットにフォークを高精度で位置決め可能にすることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明の特徴は、牽引車両に牽引される被牽引車両を所定位置に位置決めする可搬式案内装置において、前記被牽引車両が走行する走行路に配置され、前記被牽引車両の走行方向に延び互いに間隔を置いた1対の案内手段と、前記被牽引車両の走行面を形成する第1、第2のランプ部材と、前記第1、第2のランプ部材間に配置され、前記被牽引車両の走行方向に実質的に垂直な方向に移動可能な載置手段と、前記載置手段の下方に配置されるベース板と、前記載置手段を前記被牽引車両の走行方向に実質的に垂直な方向に移動可能にする移動手段を備え、前記案内手段の一端部を前記第1のランプ部材または前記ベース板に固定したことにある。
【0013】
そしてこの特徴において、前記案内手段は、前記被牽引車両の走行方向に関して、互いの間の間隔がテーパ状に減少変化する部分を有していることが望ましく、前記載置手段は、載置面を形成する天板と、この天板の縁部に回動可能に配置された複数個のローラを有し、前記ベース板に前記天板の移動を制限する移動制限手段、および前記天板を元の位置に復帰させる復帰手段を設けることが望ましい。
【0014】
また上記特徴において、前記復帰手段はばねであり、前記移動制限手段は前記ベース板の上面に回動可能に設けた複数個の第2のローラを含むことが好ましく、前記牽引車両は無人で運転されるAGVであり、前記被牽引車両はこのAGVに牽引される、一対のフォークを有する台車であることが好ましく、牽引車両がピックアップトラックや乗用車で、被牽引車両がプレジャーボート等を載置可能な台車であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テーパ形状で窄まる第1の案内部材をランプ部材に固定し、載置手段をランプ部材に隣り合って横方向に移動可能に配置したので、たとえ無人の操作であっても被牽引車両が第1の案内部材に衝撃少なく案内されて、所定位置に位置決めされる。その結果、牽引車両がAGVであり被牽引車両がフォーク付き台車の場合には、フォークパレットにフォークを高精度で位置決めでき、台車への搭載時や走行時であっても積み荷の荷崩れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る案内装置の一実施例の上面斜視図である。
図2図1に示した案内装置の上面図(図2(a))および側面図(図2(b))である。
図3図1に示した案内装置が備える案内手段の主要部の断面図(図3(a))、および模式斜視図(図3(b)、(c))である。
図4図1に示した案内装置の動作を説明する上面図である。
図5図1の案内装置が有する、ランプ部材の一実施例の図であり、図5(a)はその部分斜視図、図5(b)はその分解上面図、図5(c)は側面図である。
図6】本発明に係る案内装置の他の実施例が有する案内手段の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明に係る被牽引車両の案内装置100の一実施例を、図面を用いて説明する。図1は、ドック位置に配置した、被牽引車両の案内装置100の上面斜視図である。図1では図示を省略しているが、図の上部右側に当たるドック位置には、物品を載置し搬送されるのを待っているフォークパレットが既に配置されている。図2は、図1に示した案内装置100の上面図(図2(a))および一部を断面で示した側面図(図2(b))である。
【0018】
以下の記載においては、被牽引車両は1対のフォークFkを有する台車WGNであり、牽引車両はAGV(無人搬送車)である。被牽引車両と牽引車両は牽引装置で連結され(図示せず)、ドック位置に被牽引車両(台車WGN)が進入する場合には、牽引車両であるAGVは被牽引車両(台車WGN)を押しながら後退(または後進)する。したがって、以下の記載においては、AGVの後退方向が後側であり、AGVの前進方向が前側である。図1の右側がAGVの(進行方向)左側であり、図1の左側がAGVの(進行方向)右側である。
【0019】
案内装置100は、傾斜して形成された2つのランプ部材110、120と、ランプ部材の間に、AGVの進行方向(前後方向)に対してほぼ垂直な方向(左右方向)に移動可能に配置された載置手段130を有する。載置手段130の下方には、載置手段130よりも大面積の平坦なベース板140が床面に配置されている。ベース板140は、載置手段130が左右方向に移動しても常に載置手段130をカバーする大きさになっている。
【0020】
前側の第1のランプ部材110の左右方向幅は、被牽引車両である台車WGNの幅よりはるかに大きいが、第2のランプ部材120の左右方向幅は、台車WGNが備える1対のフォークFkの左右方向幅よりもわずかに大きい程度である。これは後述するように、台車WGNが本案内装置100を通過した後では予定軌道に沿って後進して正確にフォークパレットに位置決めされる。一方、本案内装置100を通過する前は予定軌道、すなわちフォークパレットに正対する軌道からは外れて本案内装置100へ進入する可能性が高いためである。
【0021】
第1のランプ部材110の後ろ側であって載置手段130の上方には、1対の案内手段150、150が配置されている。1対の案内手段150、150は、後ろ側に行くに従い互いの間の距離が低減するテーパ部152と、テーパ部152の前方にあってベース板140または第1のランプ部材110の左右両側面に固定される取付け部154を有する。取付け部154の端部は、固定具(ボルトまたは溶接)156でベース板140または第1のランプ部材110に取り付けられる。なお、案内手段150の下方を載置手段130が左右方向に通過するので、案内手段150に設けられる第2の移動手段(ローラ手段)170との干渉を避けるため、取付け部154は第2の移動手段(ローラ手段)170との間に空間を形成するよう上方に曲げた形状に形成されている。
【0022】
載置手段130は、台車WGNが載置されるほぼ矩形状の板134と、板134を左右方向に移動可能にするため、板134の前後辺135、136に沿って配置された複数個の第2の移動手段(ローラ手段)170を有する。第2の移動手段(ローラ手段)170は、本実施例では、前辺135側に3個(左右辺137、138側の端部と中央部)、後辺136側に3個(左右辺137、138側の端部と中央部)、互いに間隔を置いて配置されている。
【0023】
載置手段130の板134が、前後に配置した第1、第2のランプ部材110、120間からはみ出ないように、第1のランプ部材110の後辺114に沿う左右方向中央部と、第2のランプ部材120の左右両側であってベース板140に、第1の移動手段(ローラ手段)160が配置されている。第2のランプ部材120の左右両側に配置した2個の第1の移動手段(ローラ手段)160は、第2のランプ部材120の前辺122の延長上の線(面)に当接するように配置される。
【0024】
載置手段130の板134の左辺137側に一方の取付け部212を有し、ベース板140に他方の取付け部214を有して、(左)バネ210が配置されている。同様に板134の右辺138側に一方の取付け部222を有し、ベース板140に他方の取付け部214を有して、(右)ばね220が配置されている。載置手段130に負荷が加えられていないときは、左右のバネ210、220は、板134を左右方向中央に位置付ける。この状態が、通常状態である(図2(a)、図4(d)参照)。
【0025】
次に、移動手段160、170の詳細を、図3を用いて説明する。図3(a)、(b)は、第2の移動手段170の模式図であり、図3(a)はその縦断面図、図3(b)は斜視図である。図3(c)は、第1の移動手段160の斜視図である。上述したように、第2の移動手段170は、載置手段130の板134の上面であって前後辺135、136に沿って配置される。したがって、図3(a)において左端(ローラ172の端面)は、ほぼ前後辺135、136に相当する。
【0026】
載置手段130の板134には、第2の移動手段170を配置した箇所に、矩形の切り欠き部132が形成されている。この切り欠き部132に沿ってほぼ直方体の取付け台174が板134に溶接等で固定されている。取付け台174には前後方向に水平に貫通する穴が形成されており、この穴に回動軸176が嵌合され、端部をナット等で締結されている。回動軸176は、前後方向に向いた水平軸である。回動軸176には軸受178を介してローラ172が取り付けられる。ローラ172には載置手段130に載置される被牽引車両の重量の一部が作用するので、ローラ172は金属製である。なお、軸受178とローラ172をまとめて、市販の転がり軸受のような汎用品を転用することも可能である。
【0027】
ローラ172の下端は、ベース板140に接触する。すなわち、ローラ172はベース板140上を転動する。ベース板140と載置手段130の板134が接触して摩擦抵抗を増大させるのを防止するよう、ローラ172の高さが設定される。これにより、板134が抵抗少なく左右方向に移動可能になる。
【0028】
図3(c)において、第1のローラ手段160は、回動可能なローラ162と、ローラ162に嵌合する回動軸164を有する。回動軸164は、垂直軸である。回動軸164の下端部は、ベース板140に固定されている。ローラ162も第1の移動手段(ローラ手段)160のローラ172と同様に金属製であり、市販の転がり軸受等を転用することも可能である。
【0029】
図2(a)から分かるように、複数の第1の移動手段160の内の1個と、複数の第2の移動手段170の内の2個は、第1のランプ部材110と載置手段130の板134のほぼ中央部に位置するので、被牽引車両(台車WGN)が移動する経路内にある。被牽引車両(台車WGN)がフォークFkを有するものでは、この位置はフォークFk間になる。被牽引車両の底面との干渉を回避するため、これらの移動手段160、170はその高さを低く抑えることが望ましい。
【0030】
本実施例では、第1、第2の移動手段160、170の大きさを、1辺4~5cmの直方体内に収まる大きさとしている。また、板134の前辺135側の左右両側に配置した第2の移動手段170は、案内手段150の下方を左右方向に通過するので、これらの第2の移動手段の大きさも、1辺4~5cmの直方体内に収まる大きさとし、特に板134の上面からの高さは4cmを超えないようにしている。
【0031】
このように構成した本発明に係る案内装置100の動作を、図4を用いて説明する。図4では、被牽引車両として1対のフォークFkを有する台車WGNを示す。なお、台車WGNはフォークFk部のみを記載し、他の部分は省略したまた、図の煩雑さを避けるため、第1、第2の移動手段160、170の図示を省略しているが、第2の移動手段170の取付け台174は、第1、第2の移動手段160、170を利用して左右に移動可能であることは言うまでもない。図4は、台車WGNが本案内装置100に斜行して進入した場合を示している。
【0032】
図示しない牽引車両に押されて、フォークパレットが置かれたドック位置へ向かう被牽引車両(台車WGN)は、フォークパレットの前面に配置された案内装置100が有する一方の案内手段150に、案内手段150の比較的前部で当接する(図4(a))。この時,案内手段150は当接部242でフォークFkの当接部(一般にはフォークFkの前輪252(車輪)の車軸端部)232と当接する。台車WGNの前輪252は、フォークFkの先端部に形成されている。
【0033】
案内手段150に当接する台車WGNの前輪252は、載置手段130の板134の上を走行している、すなわち板134に載置されているので、フォークFkが案内手段150に当接するとその当接力の反力が台車WGNに作用し、台車WGNを図中の右側(台車WGNの方向における左側)へ押し出す力を生む。そして、台車WGNと板134間の摩擦力により、板134を台車WGNごと動かす。
【0034】
この状態で、台車WGNをさらに後退させると、図4(b)の状態になる。台車WGNの当接部244は、案内手段150に形成されたテーパ形状に沿って後方に移動するとともに、台車WGN自体は案内手段150のテーパ形状により、幅方向中央部に向けて移動する。このとき、載置手段130の板134は、当接部244の反力により、バネ210、220のばね力に抗して、図中の右側に移動する。そして、台車WGNのドック位置へ向かう姿勢の斜行の度合いを緩和し、ドック位置へより正対する姿勢に変化させる。つまり、台車WGNは当接部232を中心として垂直軸回りに回転する。案内装置150に台車WGNのフォークFkが当接している間、この動作が連続して繰り返される。
【0035】
ここで、載置手段130の板134が左右方向に移動するときに、台車WGNの自重が加わった板134を移動させようとして第1、第2の移動手段160、170で生じる摩擦抵抗は、台車WGNと板134の間の静摩擦力よりもはるかに小さい。したがって、台車WGNと板314間には台車WGNの回動以外に滑りは生ぜず、台車WGNと板314は、主として第2の移動手段(ローラ手段)170がベース板140上を転動することにより、上述したように、一緒に左右方向に移動する。フォークFkと案内手段150が当接したときに、台車WGNが載置された板134が進行方向に直角な方向に速やかに移動するので、当接の際に生じる衝撃力が緩和され、フォークFkに積み荷がたとえ搭載されていても、積み荷の荷崩れを生じる虞はない。
【0036】
台車WGNのフォークFkと案内手段150との当接が外れるまで、被牽引車両により台車WGNが押し込まれると、載置手段130の板134は、図で最も右側(台車WGNの方向における左側)に移動する(図4(c))。この時、台車WGNの1対のフォークFk、Fkは、1対の案内手段150、150が形成するテーパの最狭隘部の間を通っている。また、図4(c)で左側(台車WGNの方向における右側)のばね220は最大伸びを示し、図4(c)における右側(台車WGNの方向における左側)のばね210は最大縮みを示す。
【0037】
台車WGNの前輪252が載置手段130の板134を超えて後退した図4(d)では、載置手段130の板134の上面には、負荷(台車WGNの自重)が加えられていないので、板134はバネ210、220のばね力により、元の位置に戻っている。この時、台車WGNのフォークFkが案内手段150の最狭隘部を通過しているので、台車WGNはドック位置に対して正対する。すなわち、フォークパレットに形成されたフォーク用穴に正確に位置決めされる。なお、上記実施例では台車WGNの右側のフォークFkが案内手段150に当接する場合を説明したが、台車WGNの左側のフォークFkが案内手段150に当接する場合も同様である。
【0038】
次に、台車WGNが本案内装置100に進入及び後退する場合に最初に台車WGNの前輪252が踏み入れる第1、第2のランプ部材110、120の詳細を、図5を用いて説明する。第1、第2のランプ部材110、120は、幅方向長さが異なっているが、その基本構造は同じであるから第1のランプ部材110を例にとり説明する。図5(a)はランプ部材110の部分斜視図であり、図5(b)はその分解上面図、図5(c)はその模式側面図である。
【0039】
案内装置100は、第1、第2のランプ部材110、120間に載置手段130の移動機構を有するため、床面より高くなっており、台車WGNは、第1、第2のランプ部材110、120に乗り上げる形で進退する。その際、第1、第2のランプ部材110、120の端部の高さが所定高さより高いと、台車WGNの前輪252は第1、第2のランプ部材110、120の端面に当接して持ち上がることができず、台車WGNは進行停止状態になる。
【0040】
この不具合を解消する最良の方法は、第1、第2のランプ部材110、120の端面を斜めに削ることであるが、そのためには多大の労力を要し高コスト製品となる。そこで、本発明者らは台車WGNの前輪252が乗り上げることができる最大高さを実験的に求めた。その結果、3mm以下であれば乗り上げることが可能であった。第1、第2のランプ部材110、120には市販の鋼板(材質SS400)を利用することでコスト上昇を抑制できるので、市販の規格品の鋼板から厚さ2.3mmの鋼板を選んで、最初に乗り上げる部分、すなわち導入部262に用いる。
【0041】
一方、台車WGNに満載した状態では総重量が5kN程度になり、それを2個の前輪252で負担すること及びそれら2個の前輪252の重量分担が必ずしも均等にはならないことから、第1、第2のランプ部材110、120には局所的に3kN以上の荷重が加わる虞がある。そのような場合、厚さ2.3mmの鋼板では変形を生じやすい。そこで、ランプ部材110、120の端部である平坦な床面に敷く導入部262に続く部分の傾斜部272に、導入部262より厚い鋼板を用いて耐荷重性を増している。上記したように台車WGNの前輪252は3mm程度の高さの差までしか乗り上げられないので、導入部262と傾斜部272の高さ方向の差も3mm以下に抑える必要がある。市販の鋼板(SS400材)を使用するので、傾斜部272の鋼板厚さを4.5mmとした。
【0042】
傾斜部272の鋼板の厚さをこのように設定したが、傾斜部272の裏面側は空洞であるから、それでも鋼板(天板)274が変形する虞がある。そこで、いくつかの補強材276、278を傾斜部272の鋼板(天板)274の裏面に溶接等で取り付けた。なお、傾斜部272の天板274の両側面にはランプ部材110、120の傾斜に合わせた側板280が溶接等で取り付けられている。側板280の一部に切り欠き282を形成し、ベース板140に設けた図示しない固定具に上方から取り外し可能に嵌合させる。これにより、傾斜部272がベース板140に固定され台車WGNの移動の有無にかかわらず、案内装置100を所定位置に保持する。
【0043】
傾斜部272の前端、すなわち導入部262に隣接する側には、幅方向複数個所(図では3か所)に切り欠き284を形成した。図5ではその切り欠き形状は部分円弧状である。この切り欠き284の形状に相補的な形状の突出部264を、導入部262に設けた。したがって、切り欠き284に突出部264を上方から取り外し可能に嵌合することで、導入部262と傾斜部272は一体化され固定される。
【0044】
ランプ部材110、120が導入部262と傾斜部272に分解可能であるとともに、ベース板140や載置手段130については、バネ220の取付けを外すことにより容易に分解できる。すなわち、本案内装置100は複数の部分に分解可能であり、各部分ごとにドック位置に持ち込むようにして、搬送を容易にしている。各部分の重量は、鋼板の重量が大部分を占めるので、鋼板の面積と厚さによりその重量が決定され、どの部分もおおよそ100N以下になっており、1人の力で容易に持ち運びできる。
【0045】
本発明に係る案内装置の他の実施例を、図6に斜視図で示す。本案内装置102が上記実施例の案内装置100と異なるのは、複数の移動手段170の代わりにローラコンベア300を使用していることである。その他の構成は、案内装置100と同様である。
【0046】
載置手段130は矩形状の板であり、幅方向両端部にばね210、220の取付け部214、224が設けられている。ローラコンベア300のフレーム304には、案内装置102の場合と同様に、第1の移動手段160が取り付けられていて載置手段130前後方向の移動を規制する。ローラコンベア300が有する複数のローラ302上を載置手段(本実施例では鋼板)130が幅方向に自在に移動することにより、案内手段150に当接した台車WGNのフォークFK位置が矯正され、台車WGNをドック位置に正確に位置決めする。
【0047】
以上説明したように、上記各実施例によれば牽引車両の後進または後退運動で、牽引車両に押し出されて移動する被牽引車両が、ドック位置に斜行して進入しても、テーパ部を有する案内手段によりその方向を修正されるとともに、被牽引車両のフォーク部が載置される載置手段の板が斜行の程度に応じて左右に移動するので、被牽引車両の姿勢が正される。したがって、パレットが配置されたドック位置に正確に位置決めされる。また載置手段の板が左右に抵抗少なく移動可能なので、被牽引車両がたとえ積み荷を載置していても、案内手段に当接して積み荷を崩す虞がない。
【0048】
また、本案内装置は総重量が400N未満程度であり、かつ全体をいくつかの部分に容易に分解できるので、分解した部分ごとに運搬することで、1運搬当たりの重量を100N程度まで低減でき、作業現場への搬送を容易にする。さらに、作業現場では、平坦な床面に配置すれば自重で位置が安定するし、床面に少しの凹凸があってもベース板やローラコンベア自体の接地面が平坦であるから、床面に案内装置を固定する特別な加工や設備を必要としない。
【0049】
したがって、牽引車両が移動可能な経路上であれば、どこにでもドック位置を設定でき、工場等における物品移載のためのレイアウトの尤度が増す。つまり、物品の種類の変更等があってドック位置を変更したときでも、ドック位置に沿って本案内装置を床面に置くだけで、正確にフォークパレットに台車を正対させることが可能になる。
【0050】
上記実施例では牽引車両をAGV、被牽引車両をフォークを有する台車としたが、牽引車両が乗用車やピックアップトラックで、被牽引車両がプレジャーボートを搭載する台車であっても、同様である。その場合ドック位置は水際になるが、台車が水際にまっすぐ進むことで、プレジャーボートを容易に海や河川へ進水することも、海や河川から引き上げることも可能になる。
【符号の説明】
【0051】
100、102…案内装置、110…(第1の)ランプ部材、112…切り欠き部、120…(第2の)ランプ部材、122…前辺、130…載置手段、132…切り欠き部、134…板、135…前辺、136…後辺、137…左辺、138…右辺、140…ベース板、150…(テーパ状)案内手段、152…テーパ部。154…取付け部、156…固定具(ボルトまたは溶接)、160…(第1の)移動手段(ローラ手段)、162…ローラ、164…回動軸、170…(第2の)移動手段(ローラ手段)、172…ローラ、174…取付け台、176…回動軸(固定手段)、210…(左辺側)ばね、212、214…取付け部、220…(右辺側)ばね、222、224…取付け部、232…(フォークの)当接部、242、244…(案内手段の)当接部、252…(台車の)車輪、262…導入部、264…突出部、272…傾斜部、274…鋼板(天板)、276、278…補強材、280…側板、282、284…切り欠き、300…ローラコンベア、302…ローラ、304…フレーム、278…Fk…フォーク、WGN…台車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車両に牽引される被牽引車両を所定位置に位置決めする可搬式案内装置において、
前記被牽引車両が走行する走行路に配置され、前記被牽引車両の走行方向に延び互いに間隔を置いた1対の案内手段と、
前記被牽引車両の走行面を形成する第1、第2のランプ部材と、
前記第1、第2のランプ部材間に配置され、前記被牽引車両の走行方向とは実質的に垂直な方向に移動可能な載置手段と、
前記載置手段の下方に配置されるベース板と、
前記載置手段を前記被牽引車両の走行方向とは実質的に垂直な方向に移動可能にする移動手段とを備え、前記案内手段の一端部を前記第1のランプ部材または前記ベース板に固定し
前記第1、第2のランプ部材は、設置面に沿って配置される薄板状の導入部と、前記導入部から前記載置手段への前記走行面を形成する傾斜部と、を接続して構成され、
前記導入部と前記傾斜部との接続部分には、前記傾斜部側が高くなった段差が形成され、前記段差の高さは、前記導入部の板厚とほぼ同一、又は、それ以下となるようにされ、
前記傾斜部、及び、前記導入部の一方は、前記接続部分に切り欠きを備え、他方は前記切り欠きに相補的な形状の突起部を備え、前記切り欠きと前記突起部とを嵌め合わせることにより分解可能に接続されることを特徴とする被牽引車両の可搬式案内装置。
【請求項2】
前記載置手段は、載置面を形成する天板と、この天板の縁部に回動可能に配置された複数個のローラ手段を有し、前記ベース板に前記天板の移動を制限する移動制限手段、および前記天板を元の位置に復帰させる復帰手段を設け
前記ローラ手段は、前記ベース板上に、その面の向く方向に延びて配置された垂直回転軸に嵌合して設けられる第1のローラと、前記天板に形成された切り欠きに、前記天板の側面から、その面に沿う方向に延びて配置された水平回転軸に嵌合する第2のローラと、を含んで構成され、
前記第1のローラは、前記第1、第2のランプ部材の前記載置手段側の辺の延長線上に当接するように配置され、
前記第2のローラは、前記天板における、前記第1、第2のランプ部材側の辺に沿って配置されることを特徴とする請求項1に記載の被牽引車両の可搬式案内装置。
【請求項3】
前記案内手段は、前記被牽引車両の走行方向に関して、互いの間の間隔がテーパ状に減少変化する部分を有していることを特徴とする請求項2に記載の被牽引車両の可搬式案内装置。
【請求項4】
前記復帰手段はばねである、請求項に記載の被牽引車両の可搬式案内装置。
【請求項5】
前記牽引車両はAGVであり、前記被牽引車両はこのAGVに牽引される、一対のフォークを有する台車であることを特徴とする請求項に記載の被牽引車両の可搬式案内装置。