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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117872
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240823BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 305
B41J2/17 103
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023933
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】飯島 愛璃
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC07
2C056EC29
2C056HA15
2C056HA28
2C056HA29
2C056HA60
2C056JC13
2C056JC17
(57)【要約】
【課題】搬送装置において、簡素な構成で、発熱部の排熱を行う。
【解決手段】搬送装置(印刷装置1)は、発熱する発熱部(印刷部40)と、媒体(用紙P)を搬送する搬送部材(搬送ローラ31)と、この搬送部材の搬送動作に連動して回転することによって、発熱部を通る気流Fを生じさせる回転体Rとを備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱する発熱部と、
媒体を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材の搬送動作に連動して回転することによって、前記発熱部を通る気流を生じさせる回転体と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記発熱部は、インクを吐出することにより前記媒体に印刷を行う印刷部であり、
前記搬送装置は、
前記回転体の回転によって生じる前記気流の流路に配置され、前記印刷部から放出されるインクのミストを回収するミスト回収部を更に備える
ことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送部材の搬送動作に対する前記回転体の回転比を調整する回転比調整機構と、
前記回転比調整機構を制御する制御部と
を更に備えることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項4】
装置筐体と、
前記搬送部材を有し、前記装置筐体の内部に前記媒体を供給する供給部と、
前記搬送部材を有し、前記装置筐体の外部に前記媒体を排出する排出部と、
前記供給部の前記搬送部材に連動して回転することによって前記装置筐体の外部からの吸気の気流を生じさせる吸気回転体と、前記排出部の前記搬送部材に連動して回転することによって前記装置筐体の内部からの排気の気流を生じさせる排気回転体と
を備えることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項5】
前記回転体は、径方向に突出する羽根を有する
ことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部を備える搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛直方向に沿って配列された複数の画像形成部と、これらの画像形成部に沿って、上昇気流の流動方向に記録媒体を搬送する無端帯状体とを備え、上昇気流を用いて排気を行う画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4069953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ライン式インクジェット印刷装置では、複数のヘッドや周辺の電子機器が印刷部に固定されており、駆動時に熱が発生する。この発熱により、所定の温度を超えると、冷却のために印刷動作が止まってしまう等の不具合が発生する恐れがある。加えて、熱による劣化で構成部品の寿命が短くなったり、温度依存性の高いインクの粘度などの物性値が変わって吐出制御が複雑になったり、半導体においては熱暴走を起こす可能性があったりする。したがって、印刷部の周囲には、排熱・冷却機構が配置されることが望ましい。
【0005】
しかしながら、印刷部の周囲に印刷部に送風を行うファンなどの排熱・冷却機構を配置する場合、この排熱・冷却機構を駆動するための電力や駆動機構も必要となる。そのため、構造が複雑化する。
【0006】
また、上述の画像形成装置のように上昇気流を用いて排熱を行う場合、画像形成部を鉛直方向に配列することが必須となるなど装置構成に大きな制約が生じる。更には、特に、インクを吐出する印刷部を鉛直方向に配列する場合、それぞれの印刷部でノズルの圧力が変動するため、この圧力変動に対応するための制御機構が必要になる。
【0007】
なお、排熱や冷却が必要となるのは、印刷装置の印刷部に限らず、印刷部以外の発熱部においても同様である。
【0008】
本発明の目的は、簡素な構成で、発熱部の排熱を行うことができる搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、搬送装置は、発熱する発熱部と、媒体を搬送する搬送部材と、前記搬送部材の搬送動作に連動して回転することによって、前記発熱部を通る気流を生じさせる回転体とを備える。
【発明の効果】
【0010】
前記態様によれば、簡素な構成で、発熱部の排熱を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態における印刷装置の内部構造を示す図である。
図2】一実施の形態における印刷装置の制御構成を示す図である。
図3】一実施の形態における回転体を示す斜視図である。
図4】一実施の形態におけるミストを含む気流を示す正面図である。
図5】一実施の形態におけるミスト回収部を通る気流を説明するための正面図である。
図6】一実施の形態における回転体の回転比の調整を説明するための表である。
図7】一実施の形態における回転比調整機構を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態の形態に係る搬送装置について、印刷装置を一例として、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、一実施の形態における印刷装置1の内部構造を示す図である。
【0014】
図2は、印刷装置1の制御構成を示す図である。
【0015】
なお、図1並びに後述する図3図5及び図7に示す上下、前後、及び左右の各方向は、説明の便宜上の一例であるが、例えば、上下方向が鉛直方向であり、前後方向及び左右方向が水平方向である。
【0016】
図1に示すように、印刷装置1は、装置筐体2と、外部給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部40と、印刷搬送部50と、排紙部60と、ミスト回収部70と、複数の回転体Rと、温度センサSとを備える。また、図2に示すように、印刷装置1は、搬送部30(図1の搬送ローラ31等)と、制御部81と、記憶部82と、インターフェース部83と、回転比調整機構90とを備える。
【0017】
なお、本実施の形態における用紙Pは、媒体の一例であり、この媒体としては、紙以外の素材からなるシート状のものや、封筒などの折り返し部分を有するものなどであってもよい。そのため、本明細書において、給紙は供給の一例であり、排紙は排出の一例である。したがって、給紙は供給に、排紙は排出に、用紙は媒体に、それぞれ置き換えることができる。図1には、外部給紙部10又は内部給紙部20から排紙部60に続く用紙Pの搬送経路を実線で、両面印刷用のスイッチバック経路34を破線で示す。
【0018】
外部給紙部10は、給紙トレイ11と、給紙ローラ12と、捌き板13とを有する。外部給紙部10は、供給部の一例であり、例えば、装置筐体2の外部に露出するように配置され、装置筐体2の内部に用紙Pを給紙する。
【0019】
給紙トレイ11には、印刷前の用紙Pが積載される。給紙ローラ12は、例えば、用紙Pの搬送方向に並んで2つ配置されており、給紙トレイ11に積載された複数枚の用紙Pのうち最上位に位置する用紙Pを繰り出して搬送する。なお、給紙ローラ12は、後述する搬送ローラ31等と同様に、媒体(用紙P)を搬送する搬送部材の一例である。捌き板13は、給紙ローラ12との間で用紙Pを挟み込んで1枚ずつに分離させる。図示はしないが、外部給紙部10には、給紙トレイ11を昇降させる昇降駆動部や、給紙ローラ12を駆動する給紙駆動部なども配置されている。これらの駆動部は、例えば、モータ等のアクチュエータである。
【0020】
内部給紙部20は、第1給紙部21と、第2給紙部22と、第3給紙部23とを有する。
【0021】
第1給紙部21、第2給紙部22、及び第3給紙部23は、この順に上から並んで、装置筐体2の内部に配置されている。第1給紙部21、第2給紙部22、及び第3給紙部23のそれぞれは、印刷前の用紙Pが積載される給紙トレイ21a,22a,23aと、この給紙トレイ21a,22a,23aに積載された複数枚の用紙Pのうち最上位に位置する用紙Pを繰り出して搬送する給紙ローラ21b,22b,23bとを有する。図示はしないが、内部給紙部20には、給紙ローラ21b,22b,23bを駆動するモータ等のアクチュエータなども配置されている。
【0022】
図2に示す搬送部30は、図1に示すように、複数の搬送ローラ31と、経路切り替え部32と、スイッチバックローラ33と、スイッチバック経路34と、これらを駆動するモータ等のアクチュエータである図示しない搬送駆動部とを有する。搬送部30は、両面印刷用に用紙Pを循環させて印刷部40に再供給可能に搬送する。
【0023】
搬送ローラ31は、例えば、装置筐体2の内部における用紙Pの搬送経路において、用紙Pを挟持するように1対ずつ配置され、用紙Pを搬送する。搬送ローラ31は、媒体(用紙P)を搬送する搬送部材の一例である。この搬送部材としては、搬送ベルトなどであってもよい。
【0024】
経路切り替え部32は、印刷部40によって印刷が行われた用紙Pの搬送経路を、排紙部60とスイッチバック経路34とに切り替える。経路切り替え部32は、例えばフリッパである。スイッチバックローラ33は、スイッチバック経路34において用紙Pをスイッチバック搬送することによって、用紙Pの表裏を反転させる。
【0025】
印刷部40は、例えば、印刷に用いられる各色分の図示しないラインヘッド型インクジェットヘッドを有し、インクを吐出することにより用紙Pに印刷を行う。なお、印刷部40の印刷方式は、インクジェット印刷方式以外の印刷方式であってもよい。
【0026】
また、印刷部40は、発熱する発熱部の一例である。この発熱部としては、用紙Pに印刷以外の処理(例えば、検査、加熱、乾燥など)を行う処理部であってもよいし、或いは、処理部以外の発熱部(例えば、光源、制御基板など)であってもよい。印刷部40以外の処理部を備える装置は、処理装置と呼ぶことができる。この処理装置も、印刷装置1も、搬送装置の一例である。
【0027】
印刷搬送部50は、印刷部40に対向するように配置され、印刷部40において用紙Pを搬送する。印刷搬送部50は、複数のプーリ51と、これらのプーリ51に掛け渡されたベルト52と、このベルト52に設けられた複数の孔を通してエアを吸引することによって用紙Pをベルト52に吸着させる吸引ファン53と、印刷搬送部50の搬送方向上流側端部のプーリ51に対向するように配置されたガイドローラ54と、印刷搬送部50の搬送方向下流側端部のプーリ51に対向するように配置されたガイドローラ55とを有する。これらのガイドローラ54,55は、上述の搬送ローラ31等と同様に、媒体(用紙P)を搬送する搬送部材の一例である。
【0028】
排紙部60は、排紙トレイ61と、排紙ローラ62とを有する。排紙部60は、排出部の一例であり、例えば、装置筐体2の外部に露出するように配置され、装置筐体2の外部に用紙Pを排紙する。
【0029】
排紙トレイ61には、印刷後の用紙Pが積載される。排紙ローラ62は、例えば上下一対で配置され、排紙トレイ61に向けて用紙Pを搬送する。この排紙ローラ62は、上述の搬送ローラ31等と同様に、媒体(用紙P)を搬送する搬送部材の一例である。図示はしないが、排紙部60には、排紙ローラ62を駆動する排紙駆動部なども配置されている。この駆動部は、例えば、モータ等のアクチュエータである。
【0030】
ミスト回収部70は、後述する回転体Rの回転によって生じる気流Fの流路に配置され、印刷部40から放出されるインクのミストを回収する。ミスト回収部70は、気流Fにおける印刷部40の下流側近傍に配置されていることが望ましい。一例ではあるが、ミスト回収部70は、例えば、気流Fの上流側に開口した円筒形状を呈し、気流Fの下流側端部において、ミストを回収するフィルタを有する。
【0031】
回転体Rは、搬送ローラ31、給紙ローラ12、ガイドローラ54,55、排紙ローラ62等の搬送部材の搬送動作に連動して回転する。回転体Rは、このように回転することによって、例えば、用紙Pの搬送経路に沿って、印刷部40を通る気流Fを生じさせる。この気流Fは、用紙Pの搬送によっても生じるものであるが、回転体Rは、搬送気流よりも流量が多い(又は速い)気流Fを生じさせているといえる。回転体Rは、少なくとも1つ配置されていればよいが、例えば、用紙Pを循環搬送するために印刷部40を取り囲むように配置される搬送経路(循環経路)の内側の複数(すべて)の搬送ローラ31と、ガイドローラ54,55と、給紙ローラ12と、排紙ローラ62とに連動して回転するように、複数配置されているとよい。特に、循環経路が印刷部40の上方に位置する場合には、印刷部40から放出された熱が上昇しても、回転体Rが生じさせる気流Fに乗せることができる。
【0032】
回転体Rは、例えば、図7に示す後述する回転比調整機構90等の連結部材を介して、搬送ローラ31等の搬送部材とは互いに非接触で配置されている。但し、回転体Rは、外周面において搬送部材の外周面に接触することで搬送部材に連動して回転してもよい。
【0033】
回転体Rは、円柱形状のローラなどであってもよいが、回転することによって気流Fを生じさせるものであるため、より気流Fを生じさせやすくするために、図3に示すように、径方向に突出する羽根Raを有するとよい。図3に示す羽根Raは、回転体Rの回転軸方向(前後方向)に螺旋状に延びることによって、周囲の空気を巻き込んで、用紙Pの搬送気流に加算した搬送方向への定常的な気流Fを生じさせることができる。なお、羽根Raは、複数に分離して配置されていてもよいし、或いは、回転体Rの回転軸方向と径方向とに拡がる板状などの他の形状を呈していてもよい。
【0034】
ここで、外部給紙部10の給紙ローラ12に連動して回転する回転体Rは、吸気回転体R1である。また、排紙部60の排紙ローラ62に連動して回転する回転体Rは、排気回転体R2である。
【0035】
吸気回転体R1は、給紙ローラ12に連動して回転することによって、装置筐体2の外部からの吸気F1の気流Fを生じさせる。また、排気回転体R2は、排紙ローラ62に連動して回転することによって、装置筐体2の内部からの排気F2の気流Fを生じさせる。なお、装置筐体2には、図示しない吸排気のための通気孔が設けられている。
【0036】
図2に示す制御部81は、印刷装置1全体の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU)を有する。このプロセッサは、例えば、記憶部82から、或いは、印刷装置1に対して着脱可能な記憶媒体(非一過性のコンピュータ読取り可能記録媒体)から、所定のプログラムを読み出して実行することにより、回転体Rの回転比を調整するように回転比調整機構90を制御するなど、印刷装置1の各部を制御する。このように、制御部81、又は印刷装置1(制御部81及び記憶部82)は、プログラムを実行するコンピュータとして機能する。
【0037】
記憶部82は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)などのメモリを有する。
【0038】
インターフェース部83は、外部機器との各種情報の授受を行う。例えば、インターフェース部83cは、印刷制御装置やユーザ端末から印刷データを含む印刷ジョブを受信する。
【0039】
図7に示す回転比調整機構90は、搬送ローラ31等の搬送部材の搬送動作に対する回転体Rの回転比を調整する。例えば、回転比調整機構90は、ローラギア91と、回転体大径ギア92と、回転体小径ギア93と、伝動ベルト94とを有する。
【0040】
ローラギア91は、搬送ローラ31とシャフトなどで接続され、搬送ローラ31と一体に回転する。回転体大径ギア92及び回転体小径ギア93は、回転体Rとシャフトなどで接続され、回転体Rと一体に回転する。伝動ベルト94は、ローラギア91と、回転体大径ギア92及び回転体小径ギア93のうちの一方とに架け渡され、搬送ローラ31の動力を回転体Rに伝達する。
【0041】
例えば、搬送ローラ31と回転体大径ギア92とは、同一の径を有し、搬送ローラ31の1回転によって回転体大径ギア92が1回転する。一方、回転体小径ギア93は、搬送ローラ31及び回転体大径ギア92よりも小径であり、搬送ローラ31の1回転によって1回転よりも多く回転する。そのため、制御部81の制御によって回転体大径ギア92及び回転体小径ギア93を例えば前後方向に移動させ、伝動ベルト94に噛み合う対象を回転体大径ギア92と回転体小径ギア93とで切り替えることで、搬送ローラ31の搬送動作に対する回転体Rの回転比を調整することができる。
【0042】
なお、図7に示す回転比調整機構90の構造は、あくまで一例であり、回転比調整機構90としては、搬送ローラ31等の搬送部材の搬送動作に対する回転体Rの回転比を調整するものであれば、その他の構造であっても採用可能である。また、回転体Rの回転比の調整は、3段階以上に又は段数なく任意の値に調整可能であってもよい。また、回転比調整機構90の内部に又は回転比調整機構90とは独立して、搬送ローラ31の動力を回転体Rに伝達する状態と伝達しない状態とに切替可能な電磁クラッチ等の切替機構が配置されていれば、回転体Rを搬送部材に連動して回転する状態と回転しない状態とに切り替えることができる。
【0043】
温度センサSは、例えば、印刷部40の上方に配置され、印刷装置1(装置筐体2)の内部の温度を検知する。制御部81は、温度センサSによって検知された温度に基づいて、吸気回転体R1、排気回転体R2、又は他の回転体Rについて、上述の電磁クラッチ等の切替機構によって搬送ローラ31等の搬送部材に連動した回転を停止させたり、或いは、上述の回転比調整機構90の回転比を調整したりすることができる。
【0044】
例えば、制御部81は、温度センサSの温度が規定温度以上であれば、切替機構によって吸気回転体R1及び排気回転体R2を、給紙ローラ12又は排紙ローラ62に連動して回転する状態に切り替えて吸気F1及び排気F2を行わせ、温度センサSの温度が規定温度未満であれば、切替機構によって吸気回転体R1及び排気回転体R2を、給紙ローラ12又は排紙ローラ62に連動して回転しない状態に切り替えて吸気F1及び排気F2を停止させる。
【0045】
ここで、図5に示すように、図1に示す気流Fのうち、印刷部40の上方又は印刷部40の横を通った高温化しやすい気流FA、印刷部40の下方を通り、印刷部40から放出されたインクのミストを含む気流FB(図4参照)、及び、これらの気流FA,FBが合流し、ミスト回収部70を通る気流FCについて考える。図5の例では、ガイドローラ55に連動して回転する回転体RAが気流FBを生じさせ、印刷部40よりも気流Fの下流側の搬送ローラ31に連動して回転する回転体RBが気流FA(気流FC)を生じさせるといえる。なお、図4の気流FB以外の小さい矢印も、すべて空気の流れを示す。
【0046】
図6に示すように、印刷部40が用紙Pに印刷を行う印刷内容の印字率(例えば、1枚の用紙Pの平均印字率)が相対的に低い場合、制御部81は、回転体RA及び回転体RBの回転比を「小」(例えば、ガイドローラ55や搬送ローラ31と同じ回転数)となるように回転比調整機構90を制御する。
【0047】
次に、印刷初期(例えば、印刷部40のインク吐出開始から一定期間)では、印刷部40からの放熱量に対してミスト放出量が多くなるため、制御部81は、回転体RAの回転比を「大」(例えば、ガイドローラ55よりも多い回転数)とし、回転体RRの回転比を「小」となるように回転比調整機構90を制御する。
【0048】
次に、印刷後(例えば、印刷部40のインク吐出終了から一定期間)では、印刷部40からのミスト放出量に対して放熱量が多くなるため、制御部81は、回転体RBの回転比を「大」(例えば、搬送ローラ31よりも多い回転数)とし、回転体RAの回転比を「小」となるように回転比調整機構90を制御する。
【0049】
次に、印字率が相対的に高い場合、印刷部40からミストが放出されやすく且つ印刷部40からの放熱量が多くなるため、制御部81は、回転体RA及び回転体RBの回転比を「大」(例えば、ガイドローラ55及び搬送ローラ31よりも多い回転数)となるように回転比調整機構90を制御する。
【0050】
なお、回転比の「小」は、ガイドローラ55や搬送ローラ31と同じ回転数に限らず、例えば、上述の電磁クラッチ等の切替機構によって、回転体RA及び回転体RBがガイドローラ55や搬送ローラ31に連動して回転しない状態であってもよい。また、図6に示す4つの例(印字率低、印刷初期、印刷後、及び印字率高)のうち一部のみ(少なくとも1つ)の制御が行われてもよい。また、温度センサSの温度が高温であれば、回転体RBの回転比を「大」にするなど、温度センサSの検知結果に基づいて、制御部81が回転体RBや他の回転体R(吸気回転体R1及び排気回転体R2を含む)の回転数を上げるように回転比調整機構90を制御してもよい。また、図6に示す制御による回転比調整機構90による回転比の調整(特に回転体RBに対する調整)は、他の回転体Rに対して行ってもよい。
【0051】
以上説明した本実施の形態では、搬送装置の一例である印刷装置1は、発熱する発熱部の一例である印刷部40と、媒体の一例である用紙Pを搬送する搬送部材(例えば、搬送ローラ31、ガイドローラ54,55、給紙ローラ12、及び排紙ローラ62)と、この搬送部材の搬送動作に連動して回転することによって、印刷部40を通る気流Fを生じさせる回転体Rとを備える。
【0052】
このように、気流Fが印刷部40を通ることによって、印刷部40の排熱(冷却)を行うことができるため、印刷部40の発熱によって、印刷動作の停止や、部品の劣化や、温度依存性の高いインクの粘度などの物性値が変わって吐出制御が複雑になることや、半導体の熱暴走などが生じるのを回避することができる。また、回転体Rが搬送部材に連動して回転することによって、新たにファンなどの排熱機構を配置したり、この排熱機構を駆動するための電力や駆動機構が必要になったりするのを回避することができる。よって、本実施の形態によれば、簡素な構成で、発熱部(例えば印刷部40)の排熱を行うことができる。
【0053】
また、本実施の形態では、発熱する発熱部は、インクを吐出することにより用紙P(媒体)に印刷を行う印刷部40であり、印刷装置1(搬送装置)は、ミスト回収部70を備え、このミスト回収部70は、回転体Rの回転によって生じる気流Fの流路に配置され、印刷部40から放出されるインクのミストを回収する。
【0054】
このように、ミスト回収部70が気流Fの流路に配置されることによって、印刷部40から放出されるインクのミストを回収することができる。したがって、排熱のための気流Fを用いてインクのミストを回収することもできる。なお、ミスト回収部70がミストを回収することによって、ミストが装置筐体2の内部を浮遊し、搬送ローラ31等の各部や用紙Pに付着するのを防止することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、印刷装置1(搬送装置)は、搬送部材(例えば、搬送ローラ31、ガイドローラ54,55、給紙ローラ12、及び排紙ローラ62)の搬送動作に対する回転体R(例えば、回転体RA及び回転体RB)の回転比を調整する回転比調整機構90と、この回転比調整機構90を制御する制御部81とを更に備える。
【0056】
そのため、回転体Rの回転数を調整することで、気流Fを調整することができる。したがって、例えば、図5及び図6に示すように、印刷初期や印字率が高い場合などに、インクのミストを含む気流FBを生じさせる回転体RAの回転数を上げることでミストを回収しやすくしたり、印刷後や印字率が高い場合などに、印刷部40を通った高温化しやすい気流FAを生じさせる回転体RBの回転数を上げることで排熱を行いやすくしたりすることができる。
【0057】
また、本実施の形態では、印刷装置1(搬送装置)は、装置筐体2と、給紙ローラ12(搬送部材)を有し、装置筐体2の内部に用紙P(媒体)を供給する外部給紙部10(供給部)と、排紙ローラ62(搬送部材)を有し、装置筐体2の外部に用紙Pを排出する排紙部60(排出部)と、外部給紙部10の給紙ローラ12に連動して回転することによって装置筐体2の外部からの吸気F1の気流Fを生じさせる吸気回転体R1と、排紙部60の排紙ローラ62に連動して回転することによって装置筐体2の内部からの排気F2の気流Fを生じさせる排気回転体R2とを備える。
【0058】
これにより、搬送部材(例えば、給紙ローラ12及び排紙ローラ62)に連動して回転する吸気回転体R1及び排気回転体R2によって、吸気F1及び排気F2を行うことができる。そのため、吸気や排気のための吸排気機構を配置したり、この吸排気機構を駆動するための電力や駆動機構が必要になったりするのを回避することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、回転体Rは、径方向に突出する羽根Raを有する。
【0060】
このように、回転体Rが羽根Raを有することによって、搬送部材(例えば、搬送ローラ31、ガイドローラ54,55、給紙ローラ12、及び排紙ローラ62)に連動して回転する際に、羽根Raを有さない場合と比較して、気流Fの流量や流速を速くし、より一層、印刷部40の排熱を行うことができる。
【0061】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の明細書に記載の一部の発明を付記する。
【0062】
[付記1]
発熱する発熱部と、
媒体を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材の搬送動作に連動して回転することによって、前記発熱部を通る気流を生じさせる回転体と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【0063】
[付記2]
前記発熱部は、インクを吐出することにより前記媒体に印刷を行う印刷部であり、
前記搬送装置は、
前記回転体の回転によって生じる前記気流の流路に配置され、前記印刷部から放出されるインクのミストを回収するミスト回収部を更に備える
ことを特徴とする付記1記載の搬送装置。
【0064】
[付記3]
前記搬送部材の搬送動作に対する前記回転体の回転比を調整する回転比調整機構と、
前記回転比調整機構を制御する制御部と
を更に備えることを特徴とする付記1又は2記載の搬送装置。
【0065】
[付記4]
装置筐体と、
前記搬送部材を有し、前記装置筐体の内部に前記媒体を供給する供給部と、
前記搬送部材を有し、前記装置筐体の外部に前記媒体を排出する排出部と、
前記供給部の前記搬送部材に連動して回転することによって前記装置筐体の外部からの吸気の気流を生じさせる吸気回転体と、前記排出部の前記搬送部材に連動して回転することによって前記装置筐体の内部からの排気の気流を生じさせる排気回転体と
を備えることを特徴とする付記1から3のいずれか記載の搬送装置。
【0066】
[付記5]
前記回転体は、径方向に突出する羽根を有する
ことを特徴とする付記1から4のいずれか記載の搬送装置。
【符号の説明】
【0067】
1 印刷装置
2 装置筐体
10 外部給紙部
11 給紙トレイ
12 給紙ローラ
13 捌き板
20 内部給紙部
21 第1給紙部
22 第2給紙部
23 第3給紙部
21a,22a,23a 給紙トレイ
21b,22b,23b 給紙ローラ
30 搬送部
31 搬送ローラ
32 経路切り替え部
33 スイッチバックローラ
34 スイッチバック経路
40 印刷部
50 印刷搬送部
51 プーリ
52 ベルト
53 吸引ファン
54,55 ガイドローラ
60 排紙部
61 排紙トレイ
62 排紙ローラ
70 ミスト回収部
81 制御部
82 記憶部
83 インターフェース部
90 回転比調整機構
91 ローラギア
92 回転体大径ギア
93 回転体小径ギア
94 伝動ベルト
F,FA,FB,FC 気流
F1 吸気
F2 排気
P 用紙
R,RA,RB 回転体
Ra 羽根
R1 吸気回転体
R2 排気回転体
S 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7