(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117880
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】3次元計測装置及び3次元計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023945
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千賀 大輔
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD04
2F065FF01
2F065FF02
2F065FF04
2F065FF07
2F065FF09
2F065GG00
2F065HH06
2F065HH12
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL18
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】2次反射に起因する3次元形状の計測精度の低下を抑制する。
【解決手段】3次元計測装置は、正弦波状の明度分布の縞パターンを物体に投影する投影装置と、縞パターンが投影された物体を撮像する撮像装置と、投影装置及び撮像装置を制御する制御装置からなる。制御装置は、第1基準角度から位相シフトさせた複数の縞パターンの第1縞パターン、及び第2基準角度から位相シフトさせた複数の縞パターンの第2縞パターンを生成するパターン生成部と、第1縞パターンが投影された第1画像データ、及び第2縞パターンが投影された第2画像データを取得する画像データ取得部と、第1画像データの画素のそれぞれの位相値を示す第1位相値、及び第2画像データの複数の画素の位相値を示す第2位相値を算出する位相値算出部と、第1位相値と第2位相値とを照合してノイズを特定し、ノイズを含まない第1位相値に基づいて、物体の3次元形状を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正弦波状の明度分布の縞パターンを物体に投影する投影装置と、
前記縞パターンが投影された前記物体を撮像する撮像装置と、
前記投影装置及び前記撮像装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
第1基準角度から所定のシフト量で位相シフトさせた複数の前記縞パターンからなる第1縞パターン、及び第2基準角度から前記シフト量で位相シフトさせた複数の前記縞パターンからなる第2縞パターンを生成するパターン生成部と、
前記第1縞パターンが投影された前記物体の画像を示す第1画像データ、及び前記第2縞パターンが投影された前記物体の画像を示す第2画像データを取得する画像データ取得部と、
前記第1画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第1位相値、及び前記第2画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第2位相値を算出する位相値算出部と、
前記第1位相値と前記第2位相値とを照合してノイズを特定する照合部と、
前記ノイズを含まないと判定された第1位相値に基づいて、前記物体の3次元形状を算出する3次元形状算出部と、を備える、
3次元計測装置。
【請求項2】
前記第1基準角度と前記第2基準角度との差は、前記シフト量の1/2である、
請求項1に記載の3次元計測装置。
【請求項3】
前記第1縞パターンは、前記第1基準角度が0度であり、前記シフト量が90度である4つの縞パターンからなり、
前記第2縞パターンは、前記第2基準角度が45度であり、前記シフト量が90度である4つの縞パターンからなる、
請求項2に記載の3次元計測装置。
【請求項4】
前記第1位相値と前記第2位相値とを照合することは、前記第1画像データと前記第2画像データとの同一の画素の前記第1位相値と前記第2位相値との差分を算出することを含む、
請求項1に記載の3次元計測装置。
【請求項5】
第1基準角度から所定のシフト量で位相シフトさせた複数の正弦波状の明度分布の縞パターンからなる第1縞パターンを物体に投影することと、
第2基準角度から前記シフト量で位相シフトさせた複数の前記縞パターンからなる第2縞パターンを前記物体に投影することと、
前記第1縞パターンが投影された前記物体の画像を示す第1画像データを取得することと、
前記第2縞パターンが投影された前記物体の画像を示す第2画像データを取得することと、
前記第1画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第1位相値を算出することと、
前記第2画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第2位相値を算出することと、
前記第1位相値と前記第2位相値とを照合してノイズを特定することと、
前記ノイズを含まないと判定された第1位相値に基づいて、前記物体の3次元形状を算出することと、を含む、
3次元計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、3次元計測装置及び3次元計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の3次元形状を計測する技術として、位相シフト法が知られている。位相シフト法においては、正弦波状の明度分布の縞パターンが投影装置により物体に投影され、縞パターンが投影された物体が撮像装置により撮像される。物体の表面の形状に応じて物体の表面に投影された縞パターンに歪み(位相ずれ)が生じるので、撮像装置により撮像された物体の表面の縞パターンが解析されることにより、物体の3次元形状が計測される。
【0003】
投影装置は、物体の表面に縞パターンの光を照射する。撮像装置には、1次反射光のみならず、2次反射光が入射する可能性がある。1次反射光とは、計測対象の物体の表面で1回だけ反射した光をいう。2次反射光とは、計測対象の物体の表面又は他の物体の表面で2回以上反射した光をいう。2次反射光は、物体の表面に投影された縞パターンにノイズとして重畳され、縞パターンの解析に悪影響を与える。そのため、2次反射光が撮像装置に入射すると、物体の3次元形状の計測精度が低下する可能性がある。2次反射光により3次元形状の計測精度が低下する現象は、2次反射又は多重反射と呼ばれる。特許文献1には、計測対象に投影したパターンの位相を基に3次元形状を計測する方法において、多重反射の影響を低減し、計測精度を向上することを目的とした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術をはじめとして、2次反射に起因する3次元形状の計測精度の低下を抑制するための技術が種々発案されている。しかしながら、これらの技術には、改善の余地がある。
【0006】
本明細書で開示する技術は、2次反射に起因する3次元形状の計測精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、3次元計測装置を開示する。3次元計測装置は、正弦波状の明度分布の縞パターンを物体に投影する投影装置と、縞パターンが投影された物体を撮像する撮像装置と、投影装置及び撮像装置を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、第1基準角度から所定のシフト量で位相シフトさせた複数の縞パターンからなる第1縞パターン、及び第2基準角度から所定のシフト量で位相シフトさせた複数の縞パターンからなる第2縞パターンを生成するパターン生成部と、第1縞パターンが投影された物体の画像を示す第1画像データ、及び第2縞パターンが投影された物体の画像を示す第2画像データを取得する画像データ取得部と、第1画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第1位相値、及び第2画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第2位相値を算出する位相値算出部と、第1位相値と第2位相値とを照合してノイズを特定する照合部と、ノイズを含まないと判定された第1位相値に基づいて、物体の3次元形状を算出する3次元形状算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示する技術によれば、2次反射に起因する3次元形状の計測精度の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る3次元計測装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る制御装置を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る3次元計測方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る第1縞パターンを示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る第1位相値を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る第2縞パターンを示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る第2位相値を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る第1位相値と第2位相値との差分を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る照合部により特定されたノイズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。所定面のX軸と平行な方向をX軸方向とし、X軸と直交する所定面のY軸と平行な方向をY軸方向とし、所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。また、X軸を中心とする回転又は傾斜方向をθX方向とし、Y軸を中心とする回転又は傾斜方向をθY方向とし、Z軸を中心とする回転又は傾斜方向をθZ方向とする。XY平面は所定面である。
【0012】
[3次元計測装置]
図1は、実施形態に係る3次元計測装置1を模式的に示す図である。
図1に示すように、3次元計測装置1は、計測対象である物体Wを支持するステージ2と、ステージ2に支持されている物体Wにパターンを投影する投影装置3と、パターンが投影された物体Wを撮像する撮像装置4と、投影装置3及び撮像装置4を制御する制御装置5とを備える。
【0013】
投影装置3は、光を発生する光源31と、光源31から射出された光を光変調する光変調素子32と、光変調素子32で生成されたパターンを物体Wに投影する投影光学系33とを有する。
【0014】
光変調素子32は、デジタルミラーデバイス(Digital Mirror Device:DMD)を含む。なお、光変調素子32は、透過型の液晶パネルを含んでもよいし、反射型の液晶パネルを含んでもよい。光変調素子32は、制御装置5から出力されるパターンデータに基づいてパターンの光を生成する。投影装置3は、パターンデータに基づいてパターン化された光を物体Wに照射する。
【0015】
撮像装置4は、物体Wで反射した光を結像する結像光学系41と、結像光学系41を介して物体Wの画像データを取得する撮像素子42とを有する。撮像素子42は、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)又はCCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)を含む固体撮像素子である。
【0016】
制御装置5は、コンピュータシステムを含み、投影装置3及び撮像装置4を制御する。制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含む演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリ及びストレージを含む記憶装置とを有する。演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施する。
【0017】
実施形態において、3次元計測装置1は、位相シフト法に基づいて、物体Wの3次元形状を計測する。投影装置3は、位相シフト法に基づいて、正弦波状の明度分布の縞パターンを位相シフトさせながら物体Wに投影する。撮像装置4は、縞パターンが投影された物体Wを撮像する。
【0018】
[制御装置]
図2は、実施形態に係る制御装置5を示す機能ブロック図である。制御装置5は、入出力部51と、パターン生成部52と、画像データ取得部53と、位相値算出部54と、照合部55と、3次元形状算出部56とを有する。
【0019】
パターン生成部52は、物体Wに投影される縞パターンを生成する。パターン生成部52で生成された縞パターンに係るパターンデータは、入出力部51を介して光変調素子32に出力される。投影装置3は、パターン生成部52で生成された縞パターンを物体Wに投影する。実施形態において、パターン生成部52は、物体Wの表面の高さを算出するための第1縞パターンと、ノイズを判定するための第2縞パターンとを生成する。
【0020】
第1縞パターンは、第1基準角度から所定のシフト量で位相シフトさせた複数の縞パターンからなる。第2縞パターンは、第1基準角度とは異なる第2基準角度から所定のシフト量で位相シフトさせた複数の縞パターンからなる。以下の説明において、第1基準角度と第2基準角度との差を適宜、進角差、と称する。
【0021】
実施形態において、第1縞パターンは、第1基準角度が0度であり、シフト量が90度である4つの縞パターンからなる。第2縞パターンは、第2基準角度が45度であり、シフト量が90度である4つの縞パターンからなる。すなわち、第1基準角度と第2基準角度との差を示す進角差は、45度である。実施形態において、第1基準角度と第2基準角度との差を示す進角差は、シフト量の1/2である。
【0022】
画像データ取得部53は、入出力部51を介して、撮像素子42から画像データを取得する。実施形態において、画像データ取得部53は、第1縞パターンが投影された物体Wの画像を示す第1画像データ、及び第2縞パターンが投影された物体Wの画像を示す第2画像データを取得する。
【0023】
位相値算出部54は、位相シフトされた縞パターンのそれぞれが投影された物体Wの画像を示す複数の画像データの同一の点の輝度に基づいて、その点に対応する画像データの画素の位相値(位相ずれ)を算出する。位相値算出部54は、画像データの複数の点それぞれの輝度に基づいて、画像データの複数の画素それぞれの位相値を算出する。実施形態において、位相値算出部54は、第1画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第1位相値を算出する。位相値算出部54は、第2画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第2位相値を算出する。
【0024】
照合部55は、第1位相値と第2位相値とを照合して、2次反射に起因するノイズを特定する。照合部55は、第1画像データと第2画像データとの同一の画素の第1位相値と第2位相値とを照合して、第1画像データの複数の画素のうちノイズを含む画素を特定する。
【0025】
第1位相値を所定の進角差だけ進角させた位相値を示す進角位相値は、推測可能である。複数の画素のそれぞれがノイズを含まない場合、第1位相値を45度だけ進角させた進角位相値は、第2位相値に一致する。したがって、進角位相値と第2位相値とが一致しない画素が存在する場合、照合部55は、進角位相値と第2位相値とが一致しない画素にノイズが含まれていると判定することができる。
【0026】
実施形態において、第1位相値と第2位相値とを照合することは、第1画像データと第2画像データとの同一の画素の第1位相値と第2位相値との差分を算出することを含む。複数の画素のそれぞれがノイズを含まない場合、複数の画素のそれぞれにおいて、第1位相値と第2位相値との差分は、一定値になる。第1位相値と第2位相値との差分が異常値を示す画素が存在する場合、照合部55は、差分が異常値を示す画素にノイズが含まれていると判定することができる。
【0027】
3次元形状算出部56は、第1画像データの複数の画素のそれぞれの第1位相値に基づいて、第1画像データの複数の画素のそれぞれに対応する物体Wの複数の点それぞれの高さデータを算出して、物体Wの3次元形状を算出する。3次元形状算出部56は、ノイズを含まないと判定された画素の第1位相値に基づいて、物体Wの3次元形状を算出する。
【0028】
[3次元計測方法]
次に、実施形態に係る3次元計測方法について説明する。
図3は、実施形態に係る3次元計測方法を示すフローチャートである。
【0029】
パターン生成部52は、第1縞パターンを生成する。実施形態において、パターン生成部52は、第1縞パターンに係るパターンデータを生成する。第1縞パターンに係るパターンデータは、パターン生成部52から投影装置3の光変調素子32に送信される。投影装置3は、第1縞パターンを物体Wに投影する。撮像装置4は、第1縞パターンが投影された物体Wを撮像する(ステップS1)。
【0030】
図4は、実施形態に係る第1縞パターンを示す図である。
図4に示すように、第1縞パターンは、第1基準角度から所定のシフト量で位相シフトさせた複数の縞パターンからなる。実施形態において、第1縞パターンは、第1基準角度が0度であり、シフト量が90度である4つの縞パターンP11,P12,P13、P14からなる。4つの縞パターンP11,P12,P13、P14のそれぞれは、正弦波状の明度分布を有する。4つの縞パターンP11,P12,P13、P14の周期及び振幅は、同じである。
【0031】
縞パターンP11は、第1基準角度である0度を原点とする正弦波状の縞パターンである。縞パターンP12は、縞パターンP11をシフト量90度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。縞パターンP13は、縞パターンP11をシフト量180度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。縞パターンP14は、縞パターンP11をシフト量270度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。
【0032】
投影装置3は、縞パターンP11、縞パターンP12、縞パターンP13、及び縞パターンP14のそれぞれを物体Wに順次投影する。撮像装置4は、縞パターンP11が投影された物体W、縞パターンP12が投影された物体W、縞パターンP13が投影された物体W、及び縞パターンP14が投影された物体Wのそれぞれを順次撮像する。画像データ取得部53は、縞パターンP11が投影された物体Wの画像データ(第1画像データ)、縞パターンP12が投影された物体Wの画像データ(第1画像データ)、縞パターンP13が投影された物体Wの画像データ(第1画像データ)、及び縞パターンP14が投影された物体Wの画像データ(第1画像データ)を取得する。
【0033】
位相値算出部54は、第1縞パターン(縞パターンP11,P12,P13、P14)が投影された物体Wの画像を示す第1画像データの輝度に基づいて、第1画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第1位相値を算出する(ステップS2)。
【0034】
図5は、実施形態に係る第1位相値を示す図である。
図5に示すように、位相値算出部54は、第1縞パターンが投影された物体Wの画像を示す第1画像データの輝度に基づいて、第1画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第1位相値を算出することができる。
【0035】
パターン生成部52は、第2縞パターンを生成する。実施形態において、パターン生成部52は、第2縞パターンに係るパターンデータを生成する。第2縞パターンに係るパターンデータは、パターン生成部52から投影装置3の光変調素子32に送信される。投影装置3は、第2縞パターンを物体Wに投影する。撮像装置4は、第2縞パターンが投影された物体Wを撮像する(ステップS3)。
【0036】
図6は、実施形態に係る第2縞パターンを示す図である。
図6に示すように、第2縞パターンは、第2基準角度から所定のシフト量で位相シフトさせた複数の縞パターンからなる。実施形態において、第2縞パターンは、第2基準角度が45度であり、シフト量が90度である4つの縞パターンP21,P22,P23、P24からなる。4つの縞パターンP21,P22,P23、P24のそれぞれは、正弦波状の明度分布を有する。4つの縞パターンP21,P22,P23、P24の周期及び振幅は、同じである。
【0037】
縞パターンP21は、第2基準角度である45度を原点とする正弦波状の縞パターンである。縞パターンP22は、縞パターンP21をシフト量90度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。縞パターンP23は、縞パターンP21をシフト量180度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。縞パターンP24は、縞パターンP21をシフト量270度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。
【0038】
すなわち、縞パターンP21は、縞パターンP11を第1基準角度と第2基準角度との進角差である45度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。縞パターンP22は、縞パターンP12を45度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。縞パターンP23は、縞パターンP13を45度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。縞パターンP24は、縞パターンP14を45度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。すなわち、第2縞パターン(縞パターンP21,P22,P23,P24)は、第1縞パターン(縞パターンP11,P12,P13,P14)を第1基準角度と第2基準角度との進角差である45度だけ位相シフトさせた正弦波状の縞パターンである。縞パターンP11,P12,P13、P14,P21,P22,P23、P24の周期及び振幅は、同じである。
【0039】
投影装置3は、縞パターンP21、縞パターンP22、縞パターンP23、及び縞パターンP24のそれぞれを物体Wに順次投影する。撮像装置4は、縞パターンP21が投影された物体W、縞パターンP22が投影された物体W、縞パターンP23が投影された物体W、及び縞パターンP24が投影された物体Wのそれぞれを順次撮像する。画像データ取得部53は、縞パターンP21が投影された物体Wの画像データ(第2画像データ)、縞パターンP22が投影された物体Wの画像データ(第2画像データ)、縞パターンP23が投影された物体Wの画像データ(第2画像データ)、及び縞パターンP24が投影された物体Wの画像データ(第2画像データ)を取得する。
【0040】
位相値算出部54は、第2縞パターン(縞パターンP21,P22,P23、P24)が投影された物体Wの画像を示す第2画像データの輝度に基づいて、第2画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第2位相値を算出する(ステップS4)。
【0041】
図7は、実施形態に係る第1位相値を示す図である。
図7に示すように、位相値算出部54は、第2縞パターンが投影された物体Wの画像を示す第2画像データの輝度に基づいて、第2画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第2位相値を算出することができる。
【0042】
照合部55は、第1位相値と第2位相値とを照合して、2次反射に起因するノイズを特定する。実施形態において、照合部55は、第1位相値と第2位相値との差分を算出する(ステップS5)。
【0043】
図8は、実施形態に係る第1位相値と第2位相値との差分を示す図である。
図9は、実施形態に係る照合部55により特定されたノイズを示す図である。
【0044】
複数の画素のそれぞれがノイズを含まない場合、複数の画素のそれぞれにおいて、第1位相値と第2位相値との差分は、一定値になる。第1位相値と第2位相値との差分が異常値を示す画素が存在する場合、照合部55は、差分が異常値を示す画素にノイズが含まれていると判定することができる。
【0045】
3次元形状算出部56は、第1画像データの複数の画素のそれぞれの第1位相値に基づいて、第1画像データの複数の画素のそれぞれに対応する物体Wの複数の点それぞれの高さデータを算出して、物体Wの3次元形状を算出する。3次元形状算出部56は、ノイズを含まないと判定された画素の第1位相値に基づいて、物体Wの3次元形状を算出する。すなわち、3次元形状算出部56は、ノイズを含むと判定された画素に対応する物体Wの点の高さデータを算出しない。3次元形状算出部56は、ノイズを含まないと判定された画素に対応する物体Wの点の高さデータのみを算出して、物体Wの3次元形状を算出する(ステップS6)。
【0046】
[効果]
以上説明したように、実施形態において、3次元計測装置1は、正弦波状の明度分布の縞パターンを物体Wに投影する投影装置3と、縞パターンが投影された物体Wを撮像する撮像装置4と、投影装置3及び撮像装置4を制御する制御装置5と、を備える。制御装置5は、第1基準角度である0度から所定のシフト量である90度で位相シフトさせた複数の縞パターンP11,P12,P13,P14からなる第1縞パターン、及び第2基準角度である45度からシフト量である90度で位相シフトさせた複数の縞パターンP21,P22,P23,P24からなる第2縞パターンを生成するパターン生成部52と、第1縞パターンが投影された物体Wの画像を示す第1画像データ、及び第2縞パターンが投影された物体Wの画像を示す第2画像データを取得する画像データ取得部53と、第1画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第1位相値、及び第2画像データの複数の画素のそれぞれの位相値を示す第2位相値を算出する位相値算出部54と、第1位相値と第2位相値とを照合してノイズを特定する照合部55と、ノイズを含まないと判定された第1位相値に基づいて、物体Wの3次元形状を算出する3次元形状算出部56と、を備える。
【0047】
実施形態によれば、第1縞パターンと、第1縞パターンを所定のシフト量だけ位相シフトさせた第2縞パターンとの両方が物体Wに投影され、第1縞パターンが投影された物体Wの第1画像データと、第2縞パターンが投影された物体Wの第2画像データとが取得され、第1画像データから第1位相値が算出され、第2画像データから第2位相値が算出される。第1位相値を45度だけ進角させた位相値を示す進角位相値は、推測可能である。複数の画素のそれぞれがノイズを含まない場合、第1位相値を45度だけ進角させた進角位相値は、第2位相値に一致する。したがって、進角位相値と第2位相値とが一致しない画素が存在する場合、照合部55は、進角位相値と第2位相値とが一致しない画素に2次反射に起因するノイズが含まれていると判定することができる。3次元形状算出部56は、ノイズを含むと判定された第1位相値をリジェクトし、ノイズを含まないと判定された第1位相値に基づいて、物体Wの3次元形状を算出する。これにより、2次反射に起因する物体Wの3次元形状の計測精度の低下が抑制される。
【0048】
第1基準角度と第2基準角度との差を示す進角差は、シフト量の1/2である。実施形態において、シフト量は、90度であり、進角差は、45度である。進角差がシフト量の1/2なので、ノイズを含む画素が存在する場合、その画素における進角位相値と第2位相値との差が大きくなるので、ノイズの存在が分かり易くなる。
【0049】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、第1基準角度と第2基準角度との差を示す進角差は、シフト量の1/2であることとした。第1基準角度と第2基準角度との差を示す進角差は、シフト量の1/2でなくてもよい。例えば、第1縞パターンが、第1基準角度が0度であり、シフト量が90度である4つの縞パターンP11,P12,P13,P14からなる場合において、第2縞パターンは、第2基準角度が例えば10度であり、シフト量が90度である4つの縞パターンP21,P22,P23,P24からなってもよい。
【0050】
上述の実施形態において、第1縞パターンは、第1基準角度が0度であり、シフト量が90度である4つの縞パターンP11,P12,P13,P14からなり、第2縞パターンは、第2基準角度が45度であり、シフト量が90度である4つの縞パターンP21,P22,P23,P24からなることとした。第1縞パターンは、例えば、第1基準角度が0度であり、シフト量が120度である3つの縞パターンからなり、第2縞パターンは、第2基準角度が30度であり、シフト量が120度である3つの縞パターンからなってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…3次元計測装置、2…ステージ、3…投影装置、4…撮像装置、5…制御装置、31…光源、32…光変調素子、33…投影光学系、41…結像光学系、42…撮像素子、51…入出力部、52…パターン生成部、53…画像データ取得部、54…位相値算出部、55…照合部、56…3次元形状算出部、W…物体。