(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117885
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】背負いかばん
(51)【国際特許分類】
A45F 3/04 20060101AFI20240823BHJP
A45F 3/02 20060101ALI20240823BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
A45F3/04 300
A45F3/02 410
C09K3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023952
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】518320085
【氏名又は名称】株式会社アール・イー・シー・エクイップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【弁理士】
【氏名又は名称】寒川 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100224915
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 茉友
(74)【代理人】
【識別番号】100229116
【弁理士】
【氏名又は名称】日笠 竜斗
(72)【発明者】
【氏名】間 義孝
【テーマコード(参考)】
2E181
3B045
【Fターム(参考)】
2E181AA00
2E181BA03
2E181BD01
3B045AA35
3B045CA07
3B045CD00
3B045GA03
3B045GB03
(57)【要約】
【課題】見栄えの良さを損なうことなく、背負ったときの蒸れを効果的に抑制し得る背負いかばんを提供する。
【解決手段】かばん本体2に肩ベルト3,3が取り付けられた背負いかばん1において、背負った時に背中と接する背あてパネル部6と肩回りと接する肩ベルト3,3の少なくとも一方に、相転移物質を含んだ冷感材料110を塗布する冷感処理が施されている。この冷感処理は、相転移物質を封入したマイクロカプセルを含有するインクを用い、このインクを背あてパネル部6および/または肩ベルト3を構成する布地にプリントすることにより行われる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背負い時に背中に接する背あてパネル部を有するかばん本体と、前記かばん本体に取り付けられる一対の肩ベルトとを有する背負いかばんにおいて、
前記背あてパネル部および前記肩ベルトの少なくとも一方に、相転移物質を含んだ冷感材料が塗布されたシート状の部材を用いた冷感処理が施されている
ことを特徴とする背負いかばん。
【請求項2】
前記冷感処理は、裏面に相転移物質を含んだ冷感材料が塗布されたシート状の生地の表面側を外部に露出させて配置してなる
ことを特徴とする請求項1に記載の背負いかばん。
【請求項3】
前記シート状の生地として、弾力性のあるメッシュ地が用いられていることを特徴とする請求項2に記載の背負いかばん。
【請求項4】
前記冷感処理は、外部に露出する表層シートと、前記表層シートの下に配置される下層シートとを有し、前記下層シートに相転移物質を含んだ冷感材料が塗布されたシート状の生地が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の背負いかばん。
【請求項5】
前記シート状の生地として、不織布が用いられていることを特徴とする請求項4に記載の背負いかばん。
【請求項6】
前記冷感材料は、相転移物質を封入したマイクロカプセルを含んでいることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の背負いかばん。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は背負いかばんに関し、より詳細には、通勤や通学など日常での使用に適した背負いかばんに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通勤や通学にリュックサックなどの背負いかばんを使用する者が増えている。この種の背負いかばんは、携行性に優れ、かつ、重い荷物の運搬に適していることが知られているが、背負ったときに背あて部分や肩ベルトが体と接触するため、夏場などの高温環境下で使用すると、背負いかばんと接触する背中や肩が汗などで蒸れるという欠点がある。
【0003】
このような欠点を解消するため、この種の背負いかばんでは、体と接触する部位に通気性の良い素材、たとえば、メッシュ地の素材を用いて通気性を高めることで蒸れを防止するもの(たとえば、特許文献1参照)や、背あて部分と背中との間に物理的に空間を形成させるスペーサを設けることで蒸れを防止するもの(たとえば、特許文献2参照)、さらには、背負いかばんに送風用のファンを設け、このファンが起こす風によって背中との接触部位を冷やすもの(たとえば、特許文献3参照)、などが提案されている。
【0004】
また最近では、背負いかばんの背あて部分に着脱自在に装着する冷感製品(リュック用背あて)が提案されている(たとえば、特許文献4参照)。この冷感製品は、
図6に示すように、薄手のシートa,aを袋状に構成し、その内部に冷却媒体bを充填・収容してなる構造を有している。そして、使用にあたっては、あらかじめこの冷感製品を紐などの装着具を使って背負いかばんの背あて部分に装着しておくことで、背負いかばんを背負ったときに冷感製品が背中に当たり、これによって背中が冷却され、蒸れが防止されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-165020号公報
【特許文献2】特開2020-54836号公報
【特許文献3】実用新案登録第3228654号公報
【特許文献4】意匠登録第1698401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のリュックサックには以下のような問題があった。
すなわち、背負いかばんについて、体と接触する部位に通気性の良い素材を用いたり、あるいは、背あて部分と背中との間に物理的に空間を形成させたりする方法は、いずれも風通しが良いときにはそれなりに効果を発揮するが、風通しがあまりよくない環境下では熱気が抜けにくく有効ではなかった。
【0007】
一方、送風用のファンを設けたり、冷感製品を装着する方法は、風通しの影響をほとんど受けることなく蒸れ防止の効果が期待できる。しかし、前者はファンを駆動する駆動機構を要するため、ファンの駆動機構によってコンパートメント(荷室)が狭められ、背負いかばんの収容能力が損なわれるおそれがあった。また、ファンは見栄えが良くないという問題もあった。他方、後者は冷感製品の着脱が面倒である。また、背負いかばんとは別体の製品となるため、嵩が張って見た目もよくないという問題もあった。なお、通勤、通学への背負いかばんの普及には、背負いかばんのデザイン性の向上が大きく影響している。したがって、この種の背負いかばんにおいて見栄えの良し悪しは極めて重要である。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、見栄えの良さを損なうことなく、背負ったときの蒸れを効果的に抑制し得る背負いかばんを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る背負いかばんは、背負い時に背中に接する背あてパネル部を有するかばん本体と、上記かばん本体に取り付けられる一対の肩ベルトとを有する背負いかばんにおいて、上記背あてパネル部および上記肩ベルトの少なくとも一方に、相転移物質を含んだ冷感材料が塗布されたシート状の部材を用いた冷感処理が施されていることを特徴とする。
【0010】
この背負いかばんによれば、背あてパネル部および肩ベルトの少なくとも一方に冷感処理が施されているので、背負いかばんを装着したときに、背中および/または肩ベルトを架け回す肩周辺部が冷たく感じられる。また、冷感処理に用いるシート状の部材は、相転移物質を含んだ冷感材料を塗布してなるので、シート状の部材を薄く構成できる。そのため、冷感処理を施すにあたって、背あてパネル部および/または肩ベルトの厚みが増加するのを最小限に抑えることができる。
【0011】
また、本発明はその好適な実施態様として、上記冷感処理は、裏面に相転移物質を含んだ冷感材料が塗布されたシート状の生地の表面側を外部に露出させて配置してなることを特徴とする。そして、上記シート状の生地として、弾力性のあるメッシュ地が用いられていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は他の好適な実施態様として、上記冷感処理は、外部に露出する表層シートと、上記表層シートの下に配置される下層シートとを有し、上記下層シートに相転移物質を含んだ冷感材料が塗布されたシート状の生地が配置されていることを特徴とする。そして、上記シート状の生地として、不織布が用いられていることを特徴とする。
【0013】
なお、本発明における上記冷感材料としては、相転移物質を封入したマイクロカプセルを含んだ冷感材料が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、背負いかばんの装着時に身体と接する背あてパネル部および肩ベルトの少なくとも一方に冷感処理が施されているので、高温環境下で背負いかばんを背負っても、背中および/または肩周辺部が冷たく感じられる。そのため、身体との接触部分が熱で蒸れることがなく、装着時に不快な思いをすることが解消される。
【0015】
また、冷感処理は、相転移物質を含んだ冷感材料が塗布されたシート状の部材を用いて行われるので、背あてパネル部および/または肩ベルトの厚みが増加させることなく所望の冷感処理を施すことができる。そのため、冷感処理によって見栄えが損なわれることが防止され、見栄えの良い背負いかばんを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に背負いかばんの外観構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】同背負いかばんの背あてパネル部および肩ベルトの一例を示した背負いかばんの背面図である。
【
図3】冷感材料が塗布されたシート状の生地における冷感材料の塗布パターンの一例を示す説明図である。
【
図4】同シート状の生地における冷感材料の塗布状態を模式的に示した断面図である。
【
図5】同シート状の生地を用いた冷感処理の一例を模式的に示した説明図であり、
図5(a)は身体と接触する表層の生地に冷感材料を塗布した構造を示しており、
図5(b)は身体と接触する表層の生地の下に冷感材料を塗布したシートを配置する構造を示している。
【
図6】背負いかばんの背あて部分に着脱自在に装着する従来の冷感製品の構造を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
本発明に係る背負いかばん1は、背負ったときに背中や肩の周辺が蒸れない背負いかばんであって、
図1および
図2に示すように、かばん本体2と、かばん本体2に取り付けられた一対の肩ベルト3,3とを主要部として構成されている。
【0018】
かばん本体2は、主たる荷室として、第1の荷室4と第2の荷室5とを有している。
第1の荷室4は、背負い時に背中側に配置される荷室であって、背あてパネル部6と、背あてパネル部6の周囲に形成されるマチ形成帯部7と、マチ形成帯部7の背あてパネル部6とは反対側に配置される表側パネル部(図示せず)とによって形成されている。すなわち、背あてパネル部6と、マチ形成帯部7と、表側パネル部とによって形成される空間が第1の荷室4を構成している。
【0019】
背あてパネル部6は、背負い時に背中と接する側に配置されるパネルであって、柔軟性を有するシート状の部材で構成される。本実施形態では、この背あてパネル部6は、外部に露出する表地シート100と、表地シート100の裏面側に配置されるクッション材101と、クッション材101の裏面側に配置される裏地シート102とから構成されており、これらが積層状態で配置されている(
図5(a)参照)。
【0020】
表地シート100は、背中との当接面を形成する部材であり、たとえば、ナイロン、ポリエステルなどの化学繊維を用いた布地で構成される。本実施形態では、この表地シート100にはナイロンツイルを用いている。
【0021】
クッション材101は、背あてパネル部6に弾力性を付与する部材であり、たとえば、ポリウレタンフォームやポリオレフィンフォーム、ゴムスポンジなどの伸縮性の高い材料で構成される。本実施形態では、クッション材101として、厚さ数mm程度の半硬質のウレタンフォームを用いている。なお、このクッション材101は、第1の荷室4の型崩れを防止し得る程度の保形性を備えていることが望ましい。
【0022】
裏地シート102は、クッション材101と第1の荷室4との仕切りを構成する部材であり、表地シート100と同様、たとえば、ナイロン、ポリエステルなどの化学繊維を用いた布地で構成される。なお、本実施形態では、この裏地シート102は、表地シート100と同様にナイロンツイルが用いられる。
【0023】
そして、本実施形態に示す背負いかばん1では、この表地シート100に冷感処理が施されている。
図3および
図4はこの冷感処理の一例を示している。本実施形態では、冷感処理として、図に示すように、表地シート100の裏面100bに相転移物質(PCM:Phase Change Material)を含んだ冷感材料110を塗布している。冷感材料110としては、たとえば、相転移物質を封入したマイクロカプセルを含有するインクが用いられる。本実施形態では、相転移物質を含んだ液状またはゲル状のインクを用いて、表地シート100の裏面100bに所定のパターン(図示例では亀甲模様)をプリントすることで、表地シート100に冷感処理を施している。
【0024】
プリントするパターンとして、本実施形態では、縦横の寸法がそれぞれ数mm乃至数cm程度の大きさの六角形が縦横に連続する亀甲模様を採用している(
図3参照)。亀甲模様は、プリント部分(インクが塗布された六角形の部分)の周囲に非プリント部分(インクが塗布されない部分)が形成されるため、プリント部分に亀裂が入り難く、使用による冷感材料110の剥離を最小限に抑えることができる。なお、プリントするパターンは、亀甲模様に限定されず適宜変更可能である。たとえば、プリント部分の周囲に非プリント部分が形成される模様が好ましく、水玉模様や市松模様、丸形・三角形・四角形のプリント部分を散在させた図柄など適宜設定される。
【0025】
また、このプリントは表地シート100の全面に施される。すなわち、本実施形態では、背あてパネル部6の全面に冷感処理が施されている。これは背あてパネル部6のいずれの部分が背中にあたっても冷感を感じられるようにするためである。ただし、冷感材料110をプリントする範囲は適宜変更可能である。したがって、表地シート100の一部にのみ冷感材料110をプリントすることも可能である。この場合、背あてパネル部6は、冷感材料110がプリントされた部分(一部)についてのみ冷感処理が施されることになる。
【0026】
また、本実施形態では、表地シート100の裏面に冷感材料110がプリント(塗布)されている。これは、背あてパネル部6として外部に露出する表地シート100の表面側に冷感材料110を塗布すると、使用による身体との接触によって、塗布された冷感材料110が摩耗、剥離し、その結果、短期間で冷感を得られなくなるおそれがあるからである。本実施形態では、表地シート100において、外部に露出しない裏面側に冷感材料110を塗布することで、冷感材料110の摩耗、剥離を抑制し、長期間にわたって冷感が得られるようにしている。なお、冷感材料110の摩耗による冷感効果の低下を気にしなければ、表地シート100の表面側に冷感材料110を塗布するように構成してもよい。
【0027】
マチ形成帯部7は、第1の荷室4の奥行き(マチ幅)を決定する部材であって、柔軟性のある帯状を呈するシート状の部材、たとえば、ナイロン、ポリエステルなどの化学繊維を用いた布地で構成されており、その長手側の一端が背あてパネル部6の外周部に縫着されている。マチ形成帯部7において、かばんの頂上側に位置する部位には線ファスナ8が配設されており、この線ファスナ8によって第1の荷室4が開閉可能になっている。なお、マチ形成帯部7による第1の荷室4のマチ幅は適宜に設定される。本実施形態では、このマチ幅は5cm程度に設定されている。
【0028】
表側パネル部は、背あてパネル部6とほぼ同形状を呈する柔軟性のあるシート状の部材、たとえば、ナイロン、ポリエステルなどの化学繊維を用いた布地で構成される。そして、この表側パネル部の外周部がマチ形成帯部7の長手側の他端に縫着されることで、背あてパネル部6とマチ形成帯部7と表側パネル部とによって囲繞された第1の荷室4が形成される。
【0029】
第2の荷室5は、第1の荷室4を形成する表側パネル部の外側に形成される。
具体的には、この第2の荷室5は、表側パネル部を一側面として包含する巾着袋状の形態をしている。第2の荷室5を構成する巾着袋状の荷室は、少なくとも表面に露出する外被部9に柔軟性を有するシート状の部材、たとえば、ナイロン、ポリエステルなどの化学繊維を用いた布地が用いられており、この布地を表面パネル部の外側に表面パネル部を囲む袋状に配置することによって、表側パネル部を包含する巾着袋状の外被部9が構成されている。
【0030】
そして、この第2の荷室5の上端付近、すなわち、外被部9の上端付近には、
図1に示すように、周縁部10aに締め上げ用の紐材11が挿通された開口部(第2の荷室5の開口部)10が形成されている。本実施形態では、第2の荷室5の開口部10は、一カ所で開口部10を締め上げる(閉じる)ことができるタイプ、いわゆる片ひもタイプの開口部で構成されている。紐材11の先端には先端同士を連結して保護する端部保護具12が取り付けられる。また、紐材11には、締め上げた状態で開口部10を仮止めできるコードストッパ13が備えられている。なお、このコードストッパ13は、任意の位置で仮止め可能なスプリング式のコードストッパで構成されている。
【0031】
肩ベルト3は、背負いかばん1を背負う際に両肩に架け回す左右一対の帯状の部材であって、上方から下方に向かってそれぞれ外側に緩やかに湾曲した形状を有している。本実施形態では、肩ベルト3は、
図2に示すように、ベルト本体15と、長さ調節用のテープ16とを主要部として構成されている。
【0032】
ベルト本体15は、内部にクッション材(図示せず)を収容した構造を有している。本実施形態では、ベルト本体15は、背あてパネル部6と同じの構造を備えている。すなわち、ベルト本体15において、身体に当接する側には表地シート100に相当する内側シート104が配置される。そして、この内側シート104の下に図示しないクッション材が配置され、さらにこのクッション材の下に裏地シート102に相当する外側シート105が配置され、これらによる積層構造とされている。
【0033】
そして、本実施形態では、この内側シート104の裏面にも、背あてパネル部6と同様の冷感処理が施されている。すなわち、内側シート104の裏面(クッション材と接する側の面)に相転移物質を含んだ冷感材料110が塗布されている。
【0034】
ベルト本体15は、長手方向の一端が背あてパネル部6の上端部に縫着されるとともに、長手方向の他端にはテープ16の一端が縫着されている。テープ16は、肩ベルト3の長さを調節するための部材であって、一端がベルト本体15に縫着される一方、その他端は背あてパネル部6の下端部に縫着され、これによって、背あてパネル部6の上端から下端にかけて肩ベルト3が架け渡されている。なお、テープ16には、テープアジャスタ17が備えられており、このテープアジャスタ17によって肩ベルト3の長さを調節できるようになっている。
【0035】
しかして、このように構成された背負いかばん1は、背あてパネル部6と肩ベルト3に相転移物質を含んだ冷感材料110による冷感処理が施されているので、背負いかばん1を背負ったときに、これらの部位と接触すると冷たく感じられる。そのため、身体との接触部分が熱で蒸れることがなく、装着時に不快な思いをすることが解消される。
【0036】
また、冷感処理は、相転移物質を含んだ液状またはゲル状の冷感材料110を布地にプリント(塗布)することによって行われるので、背あてパネル部6や肩ベルト3の厚みは冷感処理の前後で殆ど変わらない(わずかに厚くなるが見た目にはわからない程度の変化に過ぎない)。そのため、冷感処理によって見栄えが損なわれることはなく、見栄えの良い背負いかばん1を提供することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、背あてパネル部6と肩ベルト3の双方に冷感処理を施した場合を示したが、冷感処理は背あてパネル部6と肩ベルト3の少なくも一方に施されていればよい。また、本実施形態では、背あてパネル部6と肩ベルト3のそれぞれ全面に冷感処理を施した場合を示したが、背あてパネル部6の一部や肩ベルト3の一部の領域にのみ冷感処理を施すように構成してもよい。
【0038】
実施形態2
次に、本発明に係る背負いかばん1の第2の実施形態について、
図5(b)を用いて説明する。
図5(b)は、背あてパネル部6の積層構造の改変例を示している。本実施形態に係る背負いかばんは、この背あてパネル部6の積層構造の改変を除き、その他の部分は上述した実施形態1に示す背負いかばん1と構成が共通する。したがって、構成が共通する部分には同一の符合を付して説明を省略する。
【0039】
具体的には、本実施形態に示す背負いかばん1では、背あてパネル部6の表地シート100とクッション材101との間に冷感処理を施した冷感シート103が介装される。すなわち、本実施形態に示す背あてパネル部6は、外部に露出する表地シート100と、表地シート100の下に配置される冷感シート103と、冷感シート103の下に配置されるクッション材101と、クッション材101の下に配置される裏地シート102とからなる積層構造を有している(
図5(b)参照)。
【0040】
このように冷感シート103を用いることで、表地シート100への冷感処理を省略できる。たとえば、表地シート100として光沢のある布地を用いた場合、表面に塗布された冷感材料110は剥離しやすい傾向がある。そのような場合、表地シート100に代えて、冷感材料110の付着性が高い冷感シート103を用いることは、冷感性能を長期間維持するのに有効である。本実施形態では、冷感シート103として、液状またはゲル状のインクが強固に付着し得るシート材が用いられる。具体的には、たとえば、不織布が好適に用いられる。
【0041】
本実施形態によれば、背あてパネル部6において、外部に露出する表地シート(表層シート)100の下に、相転移物質を含んだ冷感材料110が塗布された冷感シート(下層シート)103が配置されるので、冷感材料110による冷感性能を長期間維持可能な背負いかばん1を提供することができる。また、背あてパネル部6を構成する積層構造に冷感シート103が追加されることになるが、冷感シート103を構成する生地として不織布などの薄い生地を採用することで、実施形態1の積層構造と同様に、見栄えを損なうことなく、見栄えの良い背負いかばん1を提供することができる。
【0042】
なお、本実施形態に示す背あてパネル部6の積層構造は、実施形態1と同様に、肩ベルト3のベルト本体15にも適用可能である。また、冷感シート103に冷感材料110をプリント(塗布)するにあたり、亀甲模様などの所定のパターンが用いるのが好ましい点も実施形態1と同様である。
【0043】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなくその範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0044】
たとえば、上述した実施形態では、背負いかばん1として、第1の荷室4と第2の荷室5とを有する背負いかばん1を例示したが、背負い時に背中と当接する背あてパネル部6を有し、背負い用の肩ベルト3を有する背負いかばんであれば、荷室の形状、構成等に関係なく本発明を適用することができる。
【0045】
また、上述した実施形態では、背あてパネル部6の表地シート100や肩ベルト3の内側シート104として、ナイロン、ポリエステルなどの化学繊維を用いた布地(具体的には、ナイロンツイル)を用いた場合を示したが、これらを通気性の優れた素材、たとえば、メッシュ地や弾力性のあるメッシュ地(クッションメッシュ地など)で構成することも勿論可能である。
【0046】
さらに、上述した実施形態では、冷感処理に用いる冷感材料110として、相転移物質を封入したマイクロカプセルを含有するインクを用いた場合を示したが、相転移物質以外の材料、たとえば、冷感を生じさせる鉱物などを含有しる冷感材料を用いて冷感処理を行ってもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、冷感材料として、相転移物質を含んだインクを用いた場合を示したが、インク以外の材料(たとえば、表地シート100などに塗布することで、表地シート100などの表面に接着する粘着性のある接着剤など)を冷感材料として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 背負いかばん
2 かばん本体
3 肩ベルト
4 第1の荷室
5 第2の荷室
6 背あてパネル部
7 マチ形成帯部
8 線ファスナ
9 外被部
11 紐材
100 表地シート
101 クッション材
102 裏地シート
110 冷感材料