(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117886
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】排気再循環システムを備えた車両
(51)【国際特許分類】
F02M 26/06 20160101AFI20240823BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20240823BHJP
F02M 25/08 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F02M26/06 311
F02B37/00 302F
F02M25/08 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023953
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦山 朋之
(72)【発明者】
【氏名】萩原 裕充
(72)【発明者】
【氏名】竹山 若葉
(72)【発明者】
【氏名】山口 和博
(72)【発明者】
【氏名】本間 勇人
【テーマコード(参考)】
3G005
3G062
3G144
【Fターム(参考)】
3G005EA14
3G005FA35
3G005HA12
3G062AA05
3G062EA10
3G062ED08
3G144AA03
3G144DA01
(57)【要約】
【課題】LP-EGRにおいて少ない部品構成でEGR量を確保可能な排気再循環システムを備えた車両を提供する。
【解決手段】本開示の車両は、エンジンと、ターボチャージャと、ターボチャージャの排気路と吸気路とを接続するEGR流路を備えたLP-EGRシステムと、ターボチャージャのコンプレッサから流れ出た圧縮気体の一部をコンプレッサの上流側へ還流させる還流回路と、この還流回路に配置されてEGR流路と接続されるエジェクタと、を備える。エジェクタから送出される圧縮空気の負圧作用によってEGR流路を流れる排気ガスが吸引されてコンプレッサの上流側へ流入される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに圧縮空気を供給するターボチャージャと、
前記ターボチャージャの排気路と吸気路とを接続するEGR流路を備えて、前記排気路を流通する排気ガスを前記吸気路に還流させるLP-EGRシステムと、
前記吸気路のうち、前記ターボチャージャを構成するコンプレッサの下流側取出口と、前記コンプレッサの上流側取入口と、を接続し、前記コンプレッサから流れ出た圧縮気体の一部を前記コンプレッサの上流側へ還流させる還流回路と、
前記還流回路に配置されて前記EGR流路と接続されるエジェクタと、を含み、
前記エジェクタから送出される前記圧縮空気の負圧作用によって、前記EGR流路を流れる排気ガスが吸引されて前記コンプレッサの上流側へ流入される、
車両。
【請求項2】
前記エジェクタは、ノズルと前記ノズルの周囲に設けられた気体取入口とを含み、
前記コンプレッサの下流側から上流側へ向けて前記還流回路を流れる前記圧縮気体が前記ノズルを流通するとともに、
前記EGR流路のうち前記排気ガスを前記吸気路に還流させる戻り口は、前記還流回路のうち前記気体取入口と連通されてなる、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記還流回路は、前記コンプレッサの下流における余剰圧力を調整可能なエアバイパスバルブを備え、
前記エジェクタは、前記還流回路のうち前記エアバイパスバルブと前記上流側取入口との間に配置されてなる、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記EGR流路に設けられて前記EGR流路を開閉可能なEGRバルブと、
前記EGRバルブおよび前記エアバイパスバルブを制御する制御装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記EGRバルブと前記エアバイパスバルブを共に開状態に制御することで、前記エジェクタから送出される前記圧縮空気によって前記EGR流路を介して前記排気ガスを前記コンプレッサの上流側へ流入させる、
請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記エンジンに供給する燃料を貯留する燃料タンクと連通するとともに、前記燃料タンク内で生じた燃料蒸発ガスを吸着するキャニスタと、
前記キャニスタと前記還流回路とを接続するパージ流路と、をさらに備え、
前記パージ流路は、前記エジェクタのうちの前記気体取入口と連通されてなる、
請求項2~4のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンからの排気を吸気路に環流させる排気再循環(EGR)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、過給機を備えるエンジンからの排気ガス(未燃焼ガス)を、吸気路に環流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)を搭載した車両が公知である。
かようなEGRは、排気ガスをエンジンの排気ポート直下からインテークマニホールドに帰還させるHP-EGRと、排気ガスをタービンの下流からコンプレッサの上流に帰還させるLP-EGRと、に大別される。
【0003】
このうちLP-EGRは、タービンの下流から排気ガスを取り込んで吸気路に帰還させるため、HP-EGRと比較して排気圧と吸気圧との差圧を得られにくい。そのため従来では、下記の特許文献に例示するように、LP-EGR回路における排気再循環の量(EGR量とも称する)を増やすためにエジェクタ機構を追加することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たしかに特許文献1においてもエジェクタ機構を追加することで、LP-EGRにおいてもEGR量を増加させることは可能である。しかしながら、例えば特許文献1では過給機を構成するコンプレッサの他に追加の空気圧縮機を要するなど、設置スペースに制約があるのみならず設置コストも大きく増加してしまう。
【0006】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、LP-EGRにおいて少ない部品構成でEGR量を確保可能な排気再循環システムを備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の一形態における車両は、エンジンと、前記エンジンに圧縮空気を供給するターボチャージャと、前記ターボチャージャの排気路と吸気路とを接続するEGR流路を備えて、前記排気路を流通する排気ガスを前記吸気路に還流させるLP-EGRシステムと、前記吸気路のうち、前記ターボチャージャを構成するコンプレッサの下流側取出口と、前記コンプレッサの上流側取入口と、を接続し、前記コンプレッサから流れ出た圧縮気体の一部を前記コンプレッサの上流側へ還流させる還流回路と、前記還流回路に配置されて前記EGR流路と接続されるエジェクタと、を含み、前記エジェクタから送出される前記圧縮空気の負圧作用によって、前記EGR流路を流れる排気ガスが吸引されて前記コンプレッサの上流側へ流入される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、少ない部品構成でLP-EGRにおけるEGR量を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る車両の構成例を示す模式図である。
【
図2】第1LP-EGRシステムが作動した際における気体の流れを模式的に示す状態図である。
【
図3】第2実施形態に係る車両の構成例を示す模式図である。
【
図4】第2LP-EGRシステムが作動した際における気体の流れを模式的に示す状態図である。
【
図5】第3実施形態に係る車両の構成例を示す模式図である。
【
図6】第3LP-EGRシステムが作動した際における気体の流れを模式的に示す状態図である。
【
図7】第4実施形態に係る車両の構成例を示す模式図である。
【
図8】第4LP-EGRシステムが作動した際における気体の流れを模式的に示す状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本開示の車両を実施するための好適な実施形態について説明する。なお本開示に直接関係のない要素や構造に関する図示は適宜省略する場合がある。従って以下で詳述する構成以外のエンジン及び排気再循環システム並びにその他の車両構造については、例えば特開2016-104977号公報などに記載された構造や、その他の公知の構造を適宜補完して実施してもよい。
【0011】
≪第1実施形態≫
[車両100]
図1に、本開示のLP-EGRシステム30のうち第1実施形態である第1LP-EGRシステム30Aを搭載する車両100の要部を示す。
【0012】
図1などから理解されるとおり、本実施形態の車両100は、エンジン10、過給機としてエンジン10に圧縮空気を供給するターボチャージャ20および第1LP-EGRシステム30Aを含んで構成されている。
【0013】
エンジン10としては、例えば公知の水平対向エンジンが好適であるが、V型エンジンなど他の公知のエンジンであってもよい。また、本開示に好適な車両100は、上述のエンジン10と公知の二次電池とが併載されたハイブリッド車であってもよいし、二輪自動車であってもよい。また、車両100の駆動方式に関しても、前輪駆動であってもよいし、後輪駆動であってもよいし、全輪駆動であってもよい。
【0014】
図示されるとおり、エンジン10には公知の吸気路Riおよび排気路Reが夫々接続されている。このうち吸気路Riには、それぞれ公知のエアクリーナ11、インタークーラ12及びスロットルバルブ13が実装されている。また、吸気路Riのうちエアクリーナ11とインタークーラ12の間には、ターボチャージャ20のコンプレッサ21が設けられている。
【0015】
排気路Reには、それぞれ公知のフロント触媒14、リア触媒15及びマフラー16が実装されている。なおリア触媒15とマフラー16の間には公知のLNT触媒がさらに設けられていてもよい。また、排気路Reのうちフロント触媒14の上流側にはターボチャージャ20のタービン22が設けられている。さらに排気路Reのうちフロント触媒14とリア触媒15の間には、後述する第1LP-EGRシステム30AにおけるEGR流路31の流入口(上流端31a)が接続されている。
【0016】
従ってエンジン10から排気路Reに流出した排気ガスは、上記したタービン22を介してフロント触媒14にまず流入する。次いでフロント触媒14を通過した排気ガスは、上記した第1LP-EGRシステム30AのEGR流路31とリア触媒15へと分流する。このうちリア触媒15へ流入した排気ガスは、その後に上記したLNT触媒などを適宜介して浄化され、最終的にマフラー16を介して図示しない排気口から大気中に排出される。
【0017】
一方で
図1に示すように、吸気路Riには、コンプレッサ21の下流側と上流側とを連通するエアバイパス流路Rdが設けられている。このエアバイパス流路Rdには、公知の電動アクチュエータによって開閉駆動される弁体を備えたエアバイパスバルブ43が設置されている。後述する制御装置70は、このエアバイパスバルブ43の開閉を制御することでコンプレッサ21の下流での余剰圧力を調整し、これにより例えばコンプレッサ21とスロットルバルブ13との間のサージ圧の発生を抑制し得る。
【0018】
また本実施形態の車両100では、上記したエアバイパス流路Rdの他に、コンプレッサ21の下流側から上流側へ圧縮気体を還流させる還流回路40が設けられている。より具体的に還流回路40は、コンプレッサ21の下流側(例えば吸気路Riのうちコンプレッサ21とインタークーラ12との間)に取出口41を備えると共に、コンプレッサ21の上流側(例えば吸気路Riのうちエアクリーナ11とコンプレッサ21との間)に流入口42を備えてなる。このように還流回路40は、吸気路Riのうち、ターボチャージャ20を構成するコンプレッサ21の下流側取出口(取出口41)と、コンプレッサ21の上流側取入口(流入口42)と、を接続し、コンプレッサ21から流れ出た圧縮気体の一部をコンプレッサ21の上流側へ還流させる機能を備えてなる。
【0019】
なお
図1において、取出口41は、吸気路Riのうちエアバイパス流路Rdとインタークーラ12の間に接続されているが、この形態に限られずコンプレッサ21とエアバイパス流路Rdとの間に接続される構成であってもよい。同様に
図1において流入口42は、吸気路Riのうちエアクリーナ11とエアバイパス流路Rdとの間に接続されているが、この形態に限られずエアバイパス流路Rdとコンプレッサ21との間に接続される構成であってもよい。
【0020】
また本実施形態の車両100は公知のキャニスタ機構を含んで構成されている。車両100の燃料タンク17では、貯留された燃料の一部が蒸発して蒸発燃料(エバポとも称される)が発生する。この蒸発燃料の外部漏出を抑えるため、エンジン10の吸気系に対してパージ機構PMが設けられている。
【0021】
より具体的に本実施形態のパージ機構PMは、キャニスタ60、燃料タンク17とキャニスタ60とを連通するベーパ流路61、キャニスタ60とエンジン10の吸気系とを連通するパージ流路Rp、パージ流路Rpに設置されたパージ制御弁62、及び、キャニスタ60と連通して不図示のフィルタを介して大気開放されたガス流路63などを含んで構成されている。
【0022】
パージ流路Rpは、途中で分岐しており、一方はスロットルバルブ13とエンジン10の間における吸気路Riに接続される下流側パージ流路と、他方はエアクリーナ11とコンプレッサ21の間における吸気路Riに接続される上流側パージ流路と、を含んで構成されている。
【0023】
また上流側パージ流路には第1パージ制御弁62aが設けれており、後述する制御装置70による制御の下で上流側パージ流路を流れる蒸発燃料の流量を調整可能となっている。さらに下流側パージ流路には第2パージ制御弁62bが設けれており、制御装置70による制御の下で上流側パージ流路を流れる蒸発燃料の流量を調整可能となっている。
【0024】
従って、例えばターボチャージャ20が十分な過給をおこなっていない、すなわち作動していない時には、制御装置70は、パージ制御弁62を介して上流側パージ流路を閉塞すると共に下流側パージ流路を開放する制御を実行する。これによりターボチャージャ20の作動していない時には下流側パージ流路を介してキャニスタ60から蒸発燃料をエンジン10に供給することができる。
【0025】
一方でターボチャージャ20が作動している時には、制御装置70は、パージ制御弁62を介して上流側パージ流路を開放すると共に下流側パージ流路を閉塞する制御を実行する。これによりターボチャージャ20の作動時には上流側パージ流路を介してキャニスタ60から蒸発燃料をエンジン10に供給することができる。
【0026】
キャニスタ60は、エンジン10に供給する燃料を貯留する燃料タンク17と連通するとともに、この燃料タンク内で生じた燃料蒸発ガスを吸着する機能を有して構成されている。なおキャニスタ60の具体的な形態については、特に制限はなく公知のキャニスタ構造が適用できる。一例としてキャニスタ60の内部には公知の活性炭が充填されており、燃料タンク17で発生した蒸発燃料がこの活性炭に吸着可能となっている。
【0027】
制御装置70は、前述したパージ制御弁62や後述するEGRバルブ33の動作などを制御する機能を有して構成されている。制御装置70は、車載されるECU(電子制御ユニット)として構成されてもよく、例えばCPU(Central Processing Unit)等の一つ又は複数のプロセッサと、当該プロセッサと通信可能に接続されたRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の一つ又は複数のメモリを備えて構成されていてもよい。このように制御装置70は、一つ又は複数のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで、上述のパージ制御弁62やEGRバルブ33の開度を制御する弁制御装置として機能することができる。
【0028】
当該コンピュータプログラムは、制御装置70が実行すべき動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、制御装置70に備えられた不図示の記憶部(メモリ)として機能する記録媒体に記録されていてもよく、制御装置70に内蔵された記録媒体又は制御装置70に外付け可能な公知の記録媒体に記録されていてもよく、あるいは車両100の外部から公知のネットワークを介してダウンロード可能に構成されていてもよい。
【0029】
なおコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM及びROM等の記憶素子、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のフラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0030】
<LP-EGRシステムにおけるエジェクタ構造(第1LP-EGRシステム30A)>
本実施形態の第1LP-EGRシステム30Aは、排気路Reを流通する排気ガスを吸気路Riに還流させる機能を備えて構成されている。より具体的に第1LP-EGRシステム30Aは、前記したターボチャージャ20の排気路Reと吸気路Riとを接続するEGR流路31と、このEGR流路31に配置された公知のEGRクーラ32と、EGR流路31に設けられてEGR流路31を開閉可能な公知のEGRバルブ33と、を備えてなる。
従って制御装置70は、上記したEGRバルブ33の開度を制御することで、EGR流路31を介した排気ガスの還流量を調整することが可能となっている。
【0031】
さらに本実施形態の第1LP-EGRシステム30Aは、前記した還流回路に配置されて前記EGR流路と接続されるエジェクタ50を含んで構成されている。後述するとおり、このエジェクタ50から送出される圧縮空気の負圧作用によって、EGR流路31を流れる排気ガスが吸引されてコンプレッサ21の上流側へ流入される。
【0032】
より具体的に本実施形態のエジェクタ50は、ノズル51と、このノズル51の周囲に設けられた気体取入口52と、ノズル51を収容すると共に気体取入口52が形成された筐体53とを含んで構成されている。なおノズル51の構造としては、エジェクタ作用を有する公知の種々のノズル形状を適用できる。
【0033】
また、上記したEGR流路31の上流端31aは、排気路Reのうちタービン22の下流側(本例ではフロント触媒14とリア触媒15の間)に接続されてなる。さらにEGR流路31の下流端31bは、エジェクタ50のうち上記した気体取入口52に接続されてなる。このようにEGR流路31のうち排気ガスを吸気路Riに還流させる戻り口は、還流回路40のうち気体取入口52と連通されてなる。
【0034】
かような構造を有する第1LP-EGRシステム30Aにおけるエジェクタ構造においては、コンプレッサ21の下流側から上流側へ向けて還流回路40を流れる圧縮気体がノズル51を流通するとともに、気体取入口52を介してEGR流路31を流れる排気ガスが流入する。
【0035】
図2に、本実施形態の第1LP-EGRシステム30Aが作動した際における気体の流れを模式的に示す。
このように本実施形態における車両100に搭載された第1LP-EGRシステム30Aによれば、吸気路Riのうちコンプレッサ21の直下(本例ではインタークーラ12よりも上流)から圧縮空気の一部を分流させて還流回路40を介してエジェクタ50のノズル51に流通させることから、エジェクタ50による負圧作用を効率的に発生させることが可能となっている。
【0036】
また、第1LP-EGRシステム30Aによれば、排気路Reのうちタービン22よりも下流側で取り出した排気ガスを上記したエジェクタ50の気体取入口52に流通させることから、上記負圧作用によって高効率で排気ガスを還流させることが可能となる。
以上説明した第1実施形態における排気再循環システム(第1LP-EGRシステム30A)によれば、少ない部品構成でLP-EGRにおけるEGR量を確保することが可能となる。
【0037】
≪第2実施形態≫
図3に、本開示の第2実施形態である第2LP-EGRシステム30Bを搭載する車両100の要部を示す。なお以下に示す実施形態では第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態と同じ機能を奏する構成については同一の参照番号を付してその説明は適宜省略する(後述する第3、第4実施形態でも同様)。
【0038】
この第2LP-EGRシステム30Bでは、上記した第1LP-EGRシステム30Aに対し、還流回路40とエアバイパス流路Rdとが統合されると共に、エアバイパス流路Rd内に上記したエジェクタ50が設置されている点などに主とした特徴がある。
図3に示すように、第2LP-EGRシステム30Bは、還流回路40のうちエアバイパスバルブ43と上流側取入口(流入口42)との間にエジェクタ50を備えて構成されている。
【0039】
従って、EGR流路31の下流端31bは、統合された還流回路40とエアバイパス流路Rd内に配置されたエジェクタ50の気体取入口52と連通されてなる。なお本例のエジェクタ50は、エアバイパスバルブ43と上流側取入口(流入口42)との間に配置されているが、取出口41とエアバイパスバルブ43との間に配置されていてもよい。
【0040】
図4に、本実施形態の第2LP-EGRシステム30Bが作動した際における気体の流れを模式的に示す。このように制御装置70は、例えばEGRバルブ33とエアバイパスバルブ43を共に開状態に制御することで、エジェクタ50から送出される圧縮空気によってEGR流路31を介して排気ガスをコンプレッサ21の上流側へ流入させる制御を実行する。換言すれば、本例におけるエアバイパスバルブ43は、エジェクタ50のノズル51からの圧縮気体の噴射量を制御することで、上記したEGR量の増減を調整する機能を兼備する。
【0041】
かような構成を有する第2LP-EGRシステム30Bによれば、上記した第1LP-EGRシステム30Aの効果に加え、エアバイパス流路Rdと還流回路40とを機能統合することで、より少ない部品構成でLP-EGRにおけるEGR量を確保することが可能となる。
【0042】
≪第3実施形態≫
図5に、本開示の第3実施形態である第3LP-EGRシステム30Cを搭載する車両100の要部を示す。
【0043】
同図に示すように、この第3LP-EGRシステム30Cでは、上記した第1LP-EGRシステム30Aに対し、還流回路40とパージ流路Rpとが統合されると共に、上流側パージ流路における下流側の末端が還流回路40のエジェクタ50に連通している。
換言すれば、本実施形態におけるパージ流路Rpは、上述したキャニスタ60と還流回路40とを接続する機能を有していると言える。
【0044】
より具体的に本実施形態のエジェクタ50では、EGR流路31の下流端31bが第1気体取入口52aに連通すると共に、上流側パージ流路の末端が第2気体取入口52bに連通している。このように本実施形態のエジェクタ50は、異なる2つの気体取入口52を有して構成される。これにより本実施形態のエジェクタ50では、一方の口からEGR流路31を介して排気ガスが筐体53内に流通すると共に他方の口からパージ流路Rpを介して蒸発燃料が筐体53内に流通することになる。
【0045】
図6に、本実施形態の第3LP-EGRシステム30Cが作動した際における気体の流れを模式的に示す。
かような構成を有する第3LP-EGRシステム30Cによれば、上記した第1LP-EGRシステム30Aの効果に加え、パージ流路Rpと還流回路40とを機能統合することで、より少ない部品構成でLP-EGRにおけるEGR量を確保しつつ上記した圧縮気体の作用によって蒸発燃料の吸引量も並行して増加可能となる。
【0046】
≪第4実施形態≫
図7に、本開示の第4実施形態である第4LP-EGRシステム30Dを搭載する車両100の要部を示す。
【0047】
同図に示すように、この第4LP-EGRシステム30Dでは、上記した第1LP-EGRシステム30Aに対し、還流回路40とパージ流路Rp及びエアバイパス流路Rdが統合されている。
【0048】
より具体的に本実施形態のエジェクタ50では、還流回路40のうちエアバイパスバルブ43と上流側取入口(流入口42)との間にエジェクタ50が設置され、EGR流路31の下流端31bが第1気体取入口52aに連通すると共に、上流側パージ流路の末端が第2気体取入口52bに連通している。
【0049】
このように本実施形態のエジェクタ50は、機能統合されたエアバイパス流路(還流回路)からノズル51を介して圧縮気体を噴射可能に構成されている。また、本実施形態のエジェクタ50は、異なる2つの気体取入口52を有して構成されている。かようなエジェクタ50においては、一方の口からEGR流路31を介して排気ガスが筐体53内に流通すると共に、他方の口からパージ流路Rpを介して蒸発燃料が筐体53内に流通することになる。
【0050】
図8に、本実施形態の第4LP-EGRシステム30Dが作動した際における気体の流れを模式的に示す。
かような構成を有する第4LP-EGRシステム30Dによれば、上記した第1LP-EGRシステム30Aの効果に加え、パージ流路Rpのみならずエアバイパス流路Rdを還流回路40と機能統合することで、より少ない部品構成でコンプレッサ21の下流での余剰圧力を調整しながらLP-EGRにおけるEGR量を確保しつつ、さらには上記した圧縮気体の作用によって蒸発燃料の吸引量も並行して増加できる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、これら実施形態や変形例に対して更なる修正を試みることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0052】
10 エンジン
20 ターボチャージャ
30 LP-EGRシステム
40 還流回路
50 エジェクタ
60 キャニスタ
70 制御装置
100 車両