(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117887
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】排水装置及びその洗浄方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/22 20060101AFI20240823BHJP
E03C 1/126 20060101ALI20240823BHJP
E03C 1/30 20060101ALI20240823BHJP
E03C 1/28 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
E03C1/22 Z
E03C1/126
E03C1/30
E03C1/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023954
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】櫻 健一
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061AA01
2D061AA02
2D061AB10
2D061AE03
2D061AE10
2D061DA01
2D061DA02
2D061DA03
2D061DD03
2D061DD20
2D061DE17
2D061DE30
(57)【要約】
【課題】
排水配管内を洗浄可能な排水装置、及びその洗浄方法を提供する。
【解決手段】
排水装置1は槽体Bの湯水を排出する装置であって、排水配管2と、給水部材3、給水管5、電磁弁6、バキュームブレーカ7、洗浄水生成装置8とを備える。排水装置1による洗浄が開始されると、噴射ノズル31より洗浄水(湯水)が噴射され、水受け部212内において旋回流を生じさせる。この時、洗浄水は排水器21内に流入した湯水に向けて噴射されるため、排水器21内における湯水の流れが洗浄水によって阻害される。水受け部212内の水位が上昇し、通常使用以上に湯水が貯留された状態となることによって水受け部212及びゴミカゴ215が洗浄水に浸される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の排水口から湯水を排出する排水装置であって、
前記排水口から連続する排水配管と、
前記排水配管内に湯水を噴射し、前記排水配管内に通常使用以上に湯水を貯留する給水部材とを備えることを特徴とする排水装置。
【請求項2】
前記給水部材は、
前記排水配管内の湯水に向けて湯水を噴射する噴射ノズルを有することを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
前記排水配管内の洗浄を行う洗浄手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項4】
前記洗浄手段は前記排水配管内に通常使用以上に湯水が貯留された状態で洗浄を実行することを特徴とする請求項3に記載の排水装置。
【請求項5】
前記排水配管は、封水を形成する排水トラップを有し、
前記噴射ノズルは、封水の上流側に配置されることを特徴とする請求項2に記載の排水装置。
【請求項6】
前記排水配管は、封水を形成する排水トラップを有し、
前記噴射ノズルは、封水の下流側に配置されることを特徴とする請求項2に記載の排水装置。
【請求項7】
湯水の噴射によって前記排水配管内に通常使用以上に湯水を貯留する工程と、
通常使用以上に湯水が貯留された状態で前記洗浄手段によって前記排水配管内の汚れを除去する工程とを有することを特徴とする請求項3に記載の排水装置の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口から湯水を排出する排水装置であって、排水配管内を洗浄する排水装置、及びその洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シンクや浴槽、洗面ボウル等の槽体は、使用に伴い排水口より湯水を排出する。排出された湯水は排水口から連続する排水配管を通じて下水側へと排出される。又、排水配管は槽体から排出された湯水によって排水流路の一部を満水状態とすることで封水を形成する排水トラップを有しており、下流側からの臭気や害虫の逆流を防止する構造が知られている。
【0003】
ここで、上記槽体や排水配管内は塵芥や雑菌によって汚れが生じやすく、排水トラップは内部に湯水を貯留することから特に汚れが生じやすい。そこで、種々の手段によって排水配管内を洗浄する構造が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には羽根車の回転動作によって渦流を生成し、当該渦流の水勢によって汚れを除去する排水トラップが記載されている。
【0005】
又、特許文献2には除菌又は抗菌効果を有する薬剤が滲み出る薬剤滲出機構を備える排水栓が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-122527号公報
【特許文献2】特開2020-153201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような従来技術を背景として、排水配管内を洗浄可能な排水装置、及びその洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る排水装置は、槽体の排水口から湯水を排出する排水装置であって、
前記排水口から連続する排水配管と、
前記排水配管内に湯水を噴射し、前記排水配管内に通常使用以上に湯水を貯留する給水部材とを備えることを特徴とする排水装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様に係る排水装置によれば、排水配管内に湯水を噴射し、排水配管内に通常使用以上に湯水を貯留することで排水配管内の洗浄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態に係る排水装置を示す断面図である。
【
図2】給水部材によって噴射された湯水の流れる様子を示す平面断面図である。
【
図3】給水部材によって排水配管内に通常使用以上の湯水が貯留された状態を示す断面図である。
【
図4】第二実施形態に係る排水装置を示す断面図である。
【
図5】給水部材によって排水配管内に通常使用以上の湯水が貯留された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の態様に係る排水装置は、槽体の排水口から湯水を排出する排水装置であって、前記排水口から連続する排水配管と、前記排水配管内に湯水を噴射し、前記排水配管内に通常使用以上に湯水を貯留する給水部材とを備える。
【0012】
本態様によれば、排水配管内に湯水を噴射し、排水配管内に通常使用以上に湯水を貯留することで排水配管内の洗浄が可能となる。又、排水配管が排水トラップを有する場合、通常使用以上に湯水が貯留されることにより、特に汚れが付着しやすい封水の水面の洗浄を行うことが可能となる。尚、噴射されるのは洗浄水であるのに対し、「湯水を貯留する」と記載しているのは、貯留されるのは洗浄水だけでなく、吐水栓からの水道水や排水トラップ内の封水その他の湯水と併せて貯留されることがあるためである。
【0013】
又、本発明の第2の態様に係る排水装置では、第1の態様において、前記給水部材は、
前記排水配管内の湯水に向けて湯水を噴射する噴射ノズルを有しても良い。
【0014】
本態様によれば、噴射ノズルから噴射された湯水が排水配管中の湯水の流れを阻害することにより、排水配管内に通常使用以上に湯水を貯留することが可能となる。又、噴射された湯水の水勢によって排水配管内の汚れを洗い流すことも可能となる。
【0015】
又、本発明の第3の様態に係る排水装置では、第1の態様又は第2の態様において、前記排水配管内の洗浄を行う洗浄手段を備えても良い。
【0016】
本態様によれば、洗浄手段によって排水配管内の洗浄を行うことが可能となる。具体的には薬剤やオゾン水・次亜塩素酸水により形成された洗浄水による洗浄や、温水による洗浄、旋回流による洗浄等が挙げられる。
【0017】
又、本発明の第4の様態に係る排水装置では、第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様において、前記洗浄手段は前記排水配管内に通常使用以上に湯水が貯留された状態で洗浄を実行しても良い。
【0018】
本態様によれば、排水配管内を好適に洗浄することが可能となる。又、排水配管が排水トラップを有する場合、通常使用以上に湯水が貯留されることにより、特に汚れが付着しやすい封水の水面の洗浄を行うことが可能となる。
【0019】
又、本発明の第5の様態に係る排水装置では、第2の態様において、前記排水配管は、封水を形成する排水トラップを有し、前記噴射ノズルは、前記封水の上流側に配置されても良い。
【0020】
本態様によれば、排水配管内を好適に洗浄することが可能となる。
【0021】
又、本発明の第6の様態に係る排水装置では、第2の態様において、前記排水配管は、封水を形成する排水トラップを有し、前記噴射ノズルは、前記封水の下流側に配置されても良い。
【0022】
本態様によれば、特に汚れが付着しやすい封水の水面の洗浄を行うことが可能となる。
【0023】
又、本発明の第7の様態に係る排水装置では、第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様において、湯水の噴射によって前記排水配管内に通常使用以上に湯水を貯留する工程と、通常使用以上に湯水が貯留された状態で前記洗浄手段によって前記排水配管内の汚れを除去する工程とを有しても良い。
【0024】
本態様によれば、排水配管内を好適に洗浄することが可能となる。
【0025】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。尚、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。又、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0026】
(第一実施形態)
[1.排水装置の構成]
まず、
図1を参照しながら、第一実施形態に係る排水装置1について説明する。
図1は、第一実施形態に係る排水装置1の設置例を示す図である。尚、以降において特に指定の無い限り「湯水」とは槽体や排水配管内に生じる水を包括的に指すものであり、噴射ノズルから噴射された水や水道水、排水等を含み、その由来・成分・特徴・目的・温度に関係なく使用する。一方、具体的な特徴・目的等を有する湯水を指す場合には「洗浄水」「水道水」「排水」「温水」のように特徴や目的等に沿った記載をする場合がある。
例えば、「洗浄水」とは、排水配管2の洗浄の際に利用する湯水や洗浄時に排水配管2内に存在する湯水を目的に合わせて「洗浄水」として記載するものであり、後述する洗浄水生成装置8によって生成した洗浄用の薬剤を混入した湯水の他、洗浄の際に利用される湯水であれば特に薬剤等が混入されていなくとも「洗浄水」として記載する。
【0027】
図1に示すように、排水装置1は槽体Bの湯水を排出する装置であって、排水配管2と、給水部材3、給水管5、電磁弁6、バキュームブレーカ7、洗浄水生成装置8とを備える。又、給水部材3、給水管5、電磁弁6、バキュームブレーカ7、洗浄水生成装置8によって洗浄装置を構成する。尚、洗浄水生成装置8によって生成された薬剤入りの湯水が洗浄水として噴射ノズル31より噴射される。
【0028】
槽体Bはキッチンのシンクであって、底面に排水口100が形成され、縁部には吐水栓(図示せず)が取り付けられている。
【0029】
排水配管2は排水口100から連続し、槽体Bの底部に取り付けられる排水器21と、排水器21の下流側に接続される排水トラップ22を有する。
【0030】
排水器21は槽体Bから排出される湯水を受ける水受け部212と、水受け部212の下流側に設けられた排出口213を有し、排出口213の近傍には噴射ノズル31が形成されている。又、排水器21にはゴミカゴ215が載置されている。尚、食器の洗浄や調理等、槽体Bが通常使用される際において、排水器21(水受け部212)内には湯水は貯留されず、排出口213から排出される。
【0031】
水受け部212は排水口100からの湯水を受ける椀状であって、上端外周には排水口100の周縁に係止する鍔部214が外側に向けて全周に亘り延設されている。
【0032】
排出口213は水受け部212の側面において開口し、エルボ部材を介して排水トラップ22が接続されている。
【0033】
ゴミカゴ215は排水口100から流入した塵芥等を捕集する網目状の捕集部を有し、水受け部212内に形成された段部に載置されている。尚、ゴミカゴ215が水受け部212内の段部に載置された状態において、ゴミカゴ215の外周面と水受け部212の内側面との間には、洗浄水が流れる隙間が形成されている。又、ゴミカゴ215の上面には排水プレート216が載置されている。
【0034】
排水トラップ22は円筒状の配管を略S字状に屈曲させて形成されており、第一下り部221、第一屈曲部222、上り部223、第二屈曲部224、第二下り部225を有する。又、第一屈曲部222及び第二屈曲部224にはキャップ226が取り付けられている。尚、食器の洗浄や調理等、槽体Bが通常使用される際において、排水トラップ22内には吐水栓等から吐出された湯水が貯留されることによって封水が形成されており、封水の水面は第二屈曲部224の底面と同一の高さとなっている。
【0035】
上記排水トラップ22に対して湯水が流入すると、第一下り部221、第一屈曲部222、上り部223に湯水が貯留される。この時、排水トラップ22は内部の流路が湯水(排水)で満たされることにより封水を形成し、下流側からの臭気や害虫の逆流を防止する。
【0036】
洗浄装置は給水部材3、給水管5、電磁弁6、バキュームブレーカ7、洗浄水生成装置8より構成される。
【0037】
給水部材3は水受け部212に向け、洗浄水生成装置8によって生成された洗浄水を噴射する噴射ノズル31を有する。
図2は噴射ノズル31の高さ位置において水受け部212を切断した断面図である。噴射ノズル31は
図2に示すように、水受け部212の中心を挟んで排出口213と点対称となる位置に取り付けられており、水受け部212の接線方向に向けて開口している。従って、噴射ノズル31より噴射される洗浄水は水受け部212の内側面に沿うように排出口213へと流れ、水受け部212内において旋回流を生じさせる。ここで、水受け部212内の湯水は排出口213から排出されることから、洗浄水は排水器21内に流入した湯水に向けて噴射されることとなり、排水器21内における湯水の流れは噴射された洗浄水によって阻害され、排水配管2内の水位が上昇する。
【0038】
給水管5は噴射ノズル31へ向けて水道水を供給する管体である。又、給水管5から噴射ノズル31までの経路には電磁弁6、バキュームブレーカ7が設けられており、洗浄水や槽体Bからの湯水等が逆流することを防止している。
【0039】
洗浄水生成装置8はバキュームブレーカ7と噴射ノズル31の間に配置されており、給水管5より供給された水道水に対して薬剤を投入することで洗浄水を生成する。
【0040】
[2.洗浄手段]
次に、本実施形態における洗浄手段について説明する。
【0041】
本実施形態における洗浄手段は、主に次の3つの手段を有する。
(1)薬剤を混入した洗浄水による汚れの剥離
(2)洗浄水の噴射による洗い流し
(3)貯留された洗浄水の排出による洗い流し
【0042】
洗浄水は洗浄水生成装置8によって薬剤が投入されており、当該薬剤の成分によって汚れを洗浄する。尚、薬剤は家庭用洗剤、重曹、クエン酸その他の薬剤を使用可能であり、成分等を限定するものではない。又、洗浄水は水受け部212の内側面に沿うように噴射されることから、薬剤によって浮いた水受け部212内の汚れやゴミカゴ215に付着した汚れを水勢によって洗い流す。
又、洗浄水の噴射が終了すると、貯留された洗浄水が一気に排出されることにより排水流路内にサイホン現象を生じさせ、排水配管2内の汚れを水勢により洗い流す。尚、サイホン現象は排水流路が満水状態となることで発生し、下流側が負圧となることによって、排水の流速が増加する現象である。
【0043】
以上より、洗浄手段は、洗浄水の成分による洗浄と、噴射される洗浄水の水勢と、洗浄水の排出時における水勢によって構成され、排水配管2内の汚れを除去する。
【0044】
[3.排水装置による洗浄動作]
次に、本実施形態に係る排水装置1による洗浄動作について説明する。
【0045】
図1は排水装置1による洗浄動作前の状態を示している。洗浄動作前において、排水トラップ22の内部には吐水栓等から吐出された湯水が貯留されることによって封水が形成されており、封水の水面は第二屈曲部224の底面と同一の高さとなっている。
【0046】
排水装置1による洗浄が開始されると、噴射ノズル31より洗浄水が噴射され、水受け部212内において旋回流を生じさせる。尚、
図2においては矢印によって噴射された洗浄水の流れを示している。この時、洗浄水は排水器21内に流入した湯水に向けて噴射されるため、排出口213を通過して排水器21の外に流出しようとする湯水の流れが洗浄水の噴射によって阻害される。この洗浄水の噴射により排水性能が悪化し、
図3に示すように、水受け部212内の水位が上昇し、通常使用以上に湯水が貯留された状態となることによって水受け部212及びゴミカゴ215が洗浄水を含む湯水に浸される。
【0047】
尚、噴射によって湯水の排出は完全に遮断されるものではなく、洗浄水の一部は排出口213より排出される。従って、水受け部212内に貯留される洗浄水の水位は洗浄水の噴射量や噴射される水圧によって調整可能であり、水位を調整することで槽体B内にまで洗浄水を貯留することも可能である。
【0048】
上記水受け部212内に貯留された洗浄水により、水受け部212及びゴミカゴ215に付着した汚れは洗浄水に溶け込んだ薬剤の成分によって浮かされるとともに、噴射された洗浄水の水勢によって洗い流される。又、排水トラップ22の内部に排出された洗浄水によって、排水トラップ22内の汚れも浮いた状態となる。
【0049】
洗浄水の噴射が終了すると、水受け部212内に貯留されていた洗浄水が汚れとともに一気に排出口213より排出される。この時、排水流路が満水状態となり、サイホン現象によって流速が増加した洗浄水により、排水配管2内の汚れが落とされて洗浄水とともに排出される。
【0050】
最後に、サイホン現象によって減少した封水を噴射ノズル31より補充し、本実施形態における洗浄動作が終了する。
【0051】
以上のように、本実施形態の排水装置1では、洗浄水の噴射によって排水配管2である水受け部212内に洗浄水を含む湯水を貯留し、洗浄水の成分による洗浄と、噴射される洗浄水の水勢と、洗浄水の排出時における水勢から成る洗浄手段によって排水配管2内の汚れを除去する。これにより、従来の排水装置と比較して高い洗浄効果を発揮することが可能となる。
【0052】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る排水装置10について、
図4及び
図5を用いて上記第二実施形態との違いを中心に説明する。尚、以下に記載する説明においては、第一実施形態と異なる構成についてのみ説明し、第一実施形態と同一の構成については、特に説明の無い限り同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
[1.排水装置の構成]
上記第一実施形態に係る排水装置において、給水部材3の噴射ノズル31は封水よりも上流側であって、水受け部212内に配置されていたが、第二実施形態に係る排水装置10では、給水部材30の噴射ノズル301は排水トラップ22内であって、封水よりも下流側に配置されている。尚、洗浄水生成装置8によって生成された薬剤入りの湯水が洗浄水として噴射ノズル301より噴射される。
【0054】
図4に示すように、排水トラップ22は第一実施形態と同様に、第一下り部221、第一屈曲部222、上り部223、第二屈曲部224、第二下り部225を有する。又、第二屈曲部224の外周側の側面に噴射ノズル301が取り付けられている。尚、食器の洗浄や調理等、槽体Bが通常使用される際において、排水トラップ22内には吐水栓等から吐出された湯水が貯留されることによって封水が形成されており、封水の水面は第二屈曲部224の底面と同一の高さとなっている。
【0055】
噴射ノズル301は洗浄水生成装置8によって生成された洗浄水を噴射する。又、噴射ノズル301は排水トラップ22の第二屈曲部224の外周側の側面において、上流側を向いて開口しており、排水トラップ22内を流れる湯水に対向する方向に向けて洗浄水を噴射する。従って、噴射ノズル301より噴射される洗浄水は排水トラップ22を逆流するように流れ、排水トラップ22内における湯水の流れは洗浄水によって阻害され、排水配管2内の水位が上昇し、通常使用以上に湯水が貯留される。
【0056】
[2.洗浄手段]
次に、本実施形態における洗浄手段について説明する。
【0057】
本実施形態における洗浄手段は、主に次の2つの手段を有する。
(1)薬剤を混入した洗浄水による汚れの剥離
(2)貯留された洗浄水の排出による洗い流し
【0058】
噴射ノズル301より噴射される洗浄水は上流側、即ち排水トラップ22内を流れる湯水に向けて噴射される。これにより、排水トラップ22における湯水の流れが阻害されることで、第二屈曲部224より上流側に洗浄水が貯留され、排水配管2内に通常使用以上に湯水が貯留される。又、洗浄水は洗浄水生成装置8によって薬剤が投入されており、貯留された洗浄水中の薬剤の成分によって排水配管2内の汚れを洗浄する。尚、薬剤は家庭用洗剤、重曹、クエン酸その他の薬剤を使用可能であり、成分等を限定するものではない。
又、洗浄水の噴射が終了すると、貯留された洗浄水が一気に排出されることにより排水流路内にサイホン現象を生じさせ、排水配管2内の汚れを水勢により洗い流す。尚、サイホン現象は排水流路が満水状態となることで発生し、下流側が負圧となることによって、排水の流速が増加する現象である。
【0059】
即ち、洗浄手段は、洗浄水の成分による洗浄と、洗浄水の排出時における水勢によって構成され、排水配管2内の汚れを除去する。
【0060】
[3.排水装置による洗浄動作]
次に、本実施形態に係る排水装置10による洗浄動作について説明する。
【0061】
図4は排水装置10による洗浄動作前の状態を示している。洗浄動作前において、排水トラップ22の内部には吐水栓から吐出された湯水が貯留されることによって封水が形成されており、封水の水面は第二屈曲部224の底面と同一の高さとなっている。
【0062】
排水装置10による洗浄が開始されると、噴射ノズル301より洗浄水が噴射され、排水トラップ22内における湯水の流れが洗浄水によって阻害される。これにより、
図5に示すように、水受け部212及び排水トラップ22内の水位が上昇し、通常使用以上に湯水が貯留された状態となることによって、水受け部212、ゴミカゴ215、及び排水トラップ22が洗浄水を含む湯水に浸される。
【0063】
尚、噴射によって排出口213からの湯水の排出が完全に遮断されものではなく、排水配管2内の湯水及び洗浄水の一部は第二下り部225より排出される。従って、水受け部212内に貯留される洗浄水の水位は洗浄水の噴射量や噴射される水圧によって調整可能であり、水位を調整することで槽体B内にまで洗浄水を含む湯水を貯留することも可能である。
【0064】
上記水受け部212及び排水トラップ22内に貯留された洗浄水により、水受け部212、ゴミカゴ215、及び排水トラップ22に付着した汚れは洗浄水に溶け込んだ薬剤の成分によって浮かされる。
【0065】
洗浄水の噴射が終了すると、水受け部212内に貯留されていた洗浄水を含む湯水が汚れとともに一気に排出される。この時、排水流路が満水状態となり、サイホン現象によって流速が増加した洗浄水を含む湯水により、排水流路内の汚れが落とされて洗浄水を含む湯水とともに排出される。
【0066】
最後に、サイホン現象によって減少した封水を噴射ノズル31より補充し、本実施形態における洗浄動作が終了する。
【0067】
上記第二実施形態の排水装置10では、洗浄水の噴射によって排水配管2内に洗浄水を含む湯水を貯留し、洗浄水の成分による洗浄と、洗浄水の排出時における水勢から成る洗浄手段によって排水配管2内の汚れを除去する。これにより、従来の排水装置と比較して高い洗浄効果を発揮することが可能となる。又、第二実施形態においては水受け部212と排水トラップ22との間に配置されたエルボ部材等の配管内部も洗浄することが可能となる。特に、汚れが付着しやすい排水トラップ22の封水の水面を洗浄することが可能となる。
【0068】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、湯水の貯留は噴射ノズルからの噴射のみで行う必要はなく、吐水栓からの吐水によっても行われても良い。
【0069】
又、給水部材3、30は洗浄水を勢いよく噴射するためにポンプ等を有していても良い。
【0070】
又、洗浄水は噴射ノズル31、301より噴射されていたが、噴射ノズルからは水道水等の湯水を噴射し、薬剤等が投入された洗浄水は噴射ノズルとは別に設けた供給装置から供給しても良い。
【0071】
又、洗浄水は薬剤の投入によってのみ生成される必要はなく、水道水よりオゾン水や次亜塩素酸水を生成し、洗浄水としても良い。又、ヒータによって加熱された温水を洗浄水としても良い。
【0072】
又、洗浄手段は上記各実施形態に記載されたもの以外に、洗浄水の噴射によって貯留された湯水に旋回流を生じさせて洗浄を行っても良く、貯留された湯水内に超音波を発振させて洗浄を行っても良い。又、上記旋回流や超音波による洗浄と薬剤、オゾン水、次亜塩素酸水、温水から成る洗浄水による洗浄を併用しても良い。
【0073】
又、洗浄装置によって上昇する水位を調整し、槽体内まで洗浄水を貯留させることにより、槽体及び排水配管内を洗浄しても良い。
【0074】
又、噴射ノズルが設けられる箇所は各実施形態に記載された箇所に限られるものではなく、例えば排水トラップの第一屈曲部等に設けられても良い。
【0075】
又、排水トラップの形状は断面視略S字状に限られるものではなく、封水筒等を備えた構成であっても良い。
【0076】
又、槽体はキッチンのシンクに限られるものではなく、洗面ボウルや浴槽等であっても良い。
【符号の説明】
【0077】
B 槽体
1、10 排水装置
100 排水口
2 排水配管
21 排水器
212 水受け部
213 排出口
214 鍔部
215 ゴミカゴ
216 排水プレート
22 排水トラップ
221 第一下り部
222 第一屈曲部
223 上り部
224 第二屈曲部
225 第二下り部
226 キャップ
3、30 給水部材
31、301 噴射ノズル
5 給水管
6 電磁弁
7 バキュームブレーカ
8 洗浄水生成装置