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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117902
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ゴルフ練習用器具
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
A63B69/36 501H
A63B69/36 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023984
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】323002129
【氏名又は名称】四元 千尋
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】四元 千尋
(57)【要約】
【課題】興趣の低下の防止を図りつつ、ゴルフの上達に寄与することの可能なゴルフ練習用器具を提供する。
【解決手段】
ゴルフ練習用器具1は、クラブヘッド2と、ソケット3と、シャフト4と、固定グリップ5と、緩衝材6と、シャフト4に外挿された可動グリップ7とを備える。可動グリップ7は、シャフト4の長手方向において、常時、ソケット3と緩衝材6との間に位置し、且つ、スライド可能、及び、回転可能に設けられる。「素振り」時には、固定グリップ5のみを握ることで、可動グリップ7がソケット3に衝突し、衝突音が発現し、インパクト感を堪能できる。「ゴルフボールの打撃」時には、固定グリップ5、及び、可動グリップ7を握ることで、打撃はもちろん、可動グリップ7の回動の程度を確認することでスイング矯正を図ることができる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打球面を有するクラブヘッドと、
前記クラブヘッドと接合されるソケットと、
前記ソケットと接合されるシャフトと、
前記シャフトに設けられた固定グリップ、及び、可動グリップとを備えたゴルフ練習用器具であって、
前記固定グリップは、前記シャフトに固着され、前記可動グリップよりも前記ソケットから離間した位置に設けられ、
前記可動グリップは、前記シャフトに外挿され、その内径が、前記シャフトの外径よりも大きく、且つ、前記固定グリップの外径、及び、前記ソケットの外径よりも小さく形成された内周面を有することを特徴とするゴルフ練習用器具。
【請求項2】
前記可動グリップが、前記シャフト、及び、前記固定グリップのうち少なくとも一方に対して、どの程度回動したかを確認するための回動確認手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフ練習用器具。
【請求項3】
前記可動グリップは、内筒と、当該内筒より高弾性の外グリップ部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフ練習用器具。
【請求項4】
前記固定グリップの長さと、前記可動グリップの長さとが同等であり、且つ、前記可動グリップの前記外グリップ部は、前記固定グリップと同一の素材により構成されていることを特徴とする請求項3に記載のゴルフ練習用器具。
【請求項5】
前記シャフトには、前記固定グリップと前記可動グリップとの間に、緩衝材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフ練習用器具。
【請求項6】
前記緩衝材の外径が、前記固定グリップの外径と、前記可動グリップの外径との間に設定されていることを特徴とする請求項5に記載のゴルフ練習用器具。
【請求項7】
前記シャフトには、前記可動グリップの前記シャフトの長手方向の移動を規制する移動規制手段が着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のゴルフ練習用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ練習時に用いられるゴルフ練習用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフ練習用器具の種類は多岐にわたる。例えば、理想的なスイングの動きを体感するため、クラブヘッドの向きや軌道を視認して自身のスイングを矯正するため、或いは、体幹強化によってスイングの安定を図るため、等といった具合に、ゴルフ競技者の目的に応じた多種多様なゴルフ練習用器具が知られている。
【0003】
一例として、素振りするだけで、実際にゴルフボールを打ったときに近い打撃感触を体感できるゴルフ練習用器具がある(例えば、特許文献1等参照。)。当該ゴルフ練習用器具は、シャフトと、シャフトの基端部に設けられた把持部と、シャフトの先端部に設けられた被打撃部材と、把持部と被打撃部材との間に設けられ、且つ、シャフト長さ方向において移動自在に設けられた打撃部材とを備えている。上述した構成により、素振り時には、遠心力により打撃部材がシャフトに沿って移動し、被打撃部材に衝突することで、実際にボールを打ったときのような打撃感触等を味わうことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-24386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の器具は、その使用方法が「素振り」に限定されるため、実際にゴルフボールを打つことはできない。そのため、実際にゴルフボールの打撃を伴う練習(例えば、ゴルフ練習場における打ちっぱなし練習)を行う場合と比較すると、従来の器具では、リアリティーに欠け、興趣の低下に繋がってしまうといった懸念がある。
【0006】
また、ゴルフの上達を図る為には、適切なスイングフォームでゴルフボールを打つことが大切であり、特に、インパクト(ボールを打つ瞬間)に際しての、クラブヘッドの動き(角度、位置、方向)が適切であるか否かが非常に重要なポイントとなる。具体的には、インパクト時におけるクラブヘッドの傾きが適正な角度であること、クラブフェイス(クラブヘッドの打球面)の芯でボールを確実にとらえていること、そして、クラブフェイスが目標方向を向いていることの3点が重要ポイントとして挙げられる。しかしながら、従来技術のゴルフ練習用器具には、そもそもクラブヘッドが設けられていないため、前述した重要ポイントを理解していたとしても、体得することは困難であり、この点においてゴルフの上達に支障を来たすおそれがある。
【0007】
本発明は上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、興趣の低下の防止を図りつつ、ゴルフの上達に寄与することの可能なゴルフ練習用器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0009】
手段1.打球面を有するクラブヘッドと、
前記クラブヘッドと接合されるソケットと、
前記ソケットと接合されるシャフトと、
前記シャフトに設けられた固定グリップ、及び、可動グリップとを備えたゴルフ練習用器具であって、
前記固定グリップは、前記シャフトに固着され、前記可動グリップよりも前記ソケットから離間した位置に設けられ、
前記可動グリップは、前記シャフトに外挿され、その内径が、前記シャフトの外径よりも大きく、且つ、前記固定グリップの外径、及び、前記ソケットの外径よりも小さく形成された内周面を有することを特徴とするゴルフ練習用器具。
【0010】
手段1によれば、可動グリップの内周面の内径は、シャフトの外径よりも大きい。そのため、可動グリップは、シャフトの長手方向において、スライド可能、且つ、回転可能に設けられることとなる。また、可動グリップの内周面の内径は、固定グリップの外径、及び、ソケットの外径よりも小さい。さらに、シャフトに固着された固定グリップは、可動グリップよりもソケットから離間した位置に設けられている。すなわち、可動グリップは、常時、シャフトの長手方向において、ソケットと固定グリップとの間に位置することとなる。
【0011】
上述した構成をまとめると、本手段の可動グリップは、シャフトの長手方向において、常時、ソケットと固定グリップとの間に位置し、且つ、スライド可能、及び、回転可能に設けられていることとなる。
【0012】
本手段のゴルフ練習用器具は、「素振り」を行う第1使用方法と、「ゴルフボールの打撃」を行う第2使用方法との、少なくとも2通りの方法で練習を行うことが可能となっている。
【0013】
「素振り」を行う第1使用方法の手順としては、まず、固定グリップを両手で握り、アドレス(ゴルフボールを打つための構え)をとる。その際、可動グリップは、重力に従ってソケットと接触した状態となる。その後、いわゆるトップ姿勢(両手の位置が最も高くなる姿勢)までテイクバック(器具を後方に引く動作)を行う。その際、ソケットに接触していた可動グリップは、ソケットが固定グリップよりも上方に位置した所定のタイミングから、重力に従って固定グリップの方へと移動し、トップ姿勢では固定グリップと接触した状態となる。その後、ダウンスイングを行う。その際、固定グリップに接触していた可動グリップは、スイングの遠心力により、シャフトに沿って急速に移動し、ソケットに衝突する。当該衝突により、衝突音が発現し、スイングした者は、実際にゴルフボールを打ったときに似通った感覚を味わうことができる。また、衝突が起こるタイミングは、両グリップの長さや重量、及び、シャフトの長さや重量等、諸々の条件によって異なるが、おおむねクラブヘッドが最下点に到達したとき、すなわち、インパクトの瞬間とほぼ一致する。但し、本使用方法ではゴルフボールを用いないため、当然、実際にインパクトが行われるわけではない。また、その後は、フィニッシュ(スイングの一連の動きが終わり静止した姿勢)までフォロースルー(腕を振り切る動作)を行う。
【0014】
次に、「ゴルフボールの打撃」を行う第2使用方法の手順について説明する。但し、ここでは便宜上、右利きの人が練習を行う場合について説明する(以下においても同様)。まず、ゴルフボールの打撃が可能な場所において、当該ゴルフボールを地面(又はティーの上)に載置する。そして、固定グリップと可動グリップとを接触させた状態のまま、固定グリップを左手で、可動グリップを右手で、それぞれ握る。その後は、上記第1使用方法と同様の手順で、一連の動作(アドレスからフィニッシュまで)を行う。本使用方法において、可動グリップは右手で把持されているため、可動グリップがシャフトの長手方向において、大きく移動することはない。それ故、第1使用方法のように、可動グリップがソケットに衝突することで、衝突音が発現するといったことは起こらない。その代わりに、本使用方法では、実際にゴルフボールを打撃するインパクトを堪能することができる。
【0015】
このように、本手段によれば、「素振り」に加え、「ゴルフボールの打撃」を行うことができる。そのため、使用方法が「素振り」に限定される従来の器具に比べ、リアリティーの高い練習を行うことができ、興趣の低下の防止を図ることができる。
【0016】
また、本手段によれば、クラブヘッドを有していることから、インパクトの瞬間において重要なポイントであるクラブヘッドの角度、位置、方向の3点を確認しながら、練習することで、当該ポイントを比較的体得しやすい。加えて、本手段のゴルフ練習用器具は、その大部分において、ゴルフクラブと一致しているため、身体とゴルフクラブとを同調させた適切なスイングフォームを体得しやすくなる。そのため、より一層、ゴルフが上達しやすくなるといった効果も奏される。
【0017】
ところで、ゴルフ上達の重要なポイントとして、(右利きの人にとって)「左腕の外旋」が挙げられる。「左腕の外旋」とは、左腕を自分から見て左へと回旋(捻る)させる動きのことである。一般的には、ダウンスイングからフィニッシュにかけて、「左腕の外旋」を正しく行うことで、クラブヘッドが加速し、ゴルフボールをより遠くへ飛ばすことが可能となる。しかしながら、例えば初心者等がスイングを行う場合、ゴルフボールを遠くに飛ばそうとして、「右手のグリッププレッシャー」(グリップの握り加減)が不用意に強くなり、「左腕の外旋」の正しい動きが阻害されてしまう懸念がある。
【0018】
この点、本手段の第2使用方法によれば、固定グリップを左手で、可動グリップを右手で、それぞれ握ることとなる。このため、可動グリップは、固定グリップに対し、相対的に回動し得ることとなる。従って、過度な「右手のグリッププレッシャー」によって「左腕の外旋」の正しい動きが阻害されてしまうといった事態を防止しつつ、ゴルフボールを打撃する練習を行うことが可能となる。
【0019】
尚、上述した握り方を行う場合、左手は固定グリップの下部に位置することとなる。すなわち、固定グリップの握られている箇所から上方(固定グリップの上端部)にかけて、握られていない空き部分が生じる。このため、別途指導者がいる場合には、当該空き部分を指導者が持ち、練習者に適切なスイングフォームを体得させるといったこともできる。この点において、ますますゴルフが上達しやすくなるといった効果が奏される。
【0020】
尚、ここでは詳述しないが、第1使用方法の握り方(固定グリップを両手で握る。スイングを行った際には、可動グリップがソケットに衝突することで、衝突音が発現する。)において、実際にゴルフボールを打撃するといった練習を行うことも、当然可能である。
【0021】
手段2.前記可動グリップが、前記シャフト、及び、前記固定グリップのうち少なくとも一方に対して、どの程度回動したかを確認するための回動確認手段を備えていることを特徴とする手段1に記載のゴルフ練習用器具。
【0022】
手段2によれば、回動確認手段により、前述した「左腕の外旋」や「右手のグリッププレッシャー」の程度を視覚的に確認することができる。従って、比較的早期に練習者のスイングの癖を認知し、矯正していくことが可能となる。そのため、より一層、ゴルフが上達しやすくなる。
【0023】
手段3.前記可動グリップは、内筒と、当該内筒より高弾性の外グリップ部とを備えていることを特徴とする手段1に記載のゴルフ練習用器具。
【0024】
手段3によれば、可動グリップを把持したときの不快感を低減でき、また、内筒として外グリップ部よりも硬質の(摩擦係数の小さい)素材を用いることで、スムースなスライド等を期待できる。
【0025】
手段4.前記固定グリップの長さと、前記可動グリップの長さとが同等であり、且つ、前記可動グリップの前記外グリップ部は、前記固定グリップと同一の素材により構成されていることを特徴とする手段3に記載のゴルフ練習用器具。
【0026】
手段4によれば、固定グリップを左手で、可動グリップを右手で、それぞれ握る場合(例えば第2使用方法)において、掌に違和感を感じることなく握ることが可能となる。また、器具の製造に際して、例えば、一本の市販のグリップを半分に切断した上で、一方を固定グリップとして、他方を可動グリップの外グリップ部として用いることとすれば、歩留まりの向上を図ることができ、ひいては生産性が向上する。
【0027】
手段5.前記シャフトには、前記固定グリップと前記可動グリップとの間に、緩衝材が設けられていることを特徴とする手段1に記載のゴルフ練習用器具。
【0028】
手段5によれば、例えば、固定グリップと可動グリップとの間に、指を挟んでしまうことに起因する不具合を防止することが可能となる。加えて、固定グリップと可動グリップの接触を防止することで、ゴルフ練習用器具の製品寿命を延ばすことが可能となる。
【0029】
手段6.前記緩衝材の外径が、前記固定グリップの外径と、前記可動グリップの外径との間に設定されていることを特徴とする手段5に記載のゴルフ練習用器具。
【0030】
手段6によれば、例えば固定グリップを左手で、可動グリップを右手で、それぞれ握る場合(例えば第2使用方法)において、掌に違和感を感じることなく握ることが可能となる。
【0031】
手段7.前記シャフトには、前記可動グリップの前記シャフトの長手方向の移動を規制する移動規制手段が着脱可能に設けられていることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載のゴルフ練習用器具。
【0032】
手段7によれば、例えば、固定グリップを左手で、可動グリップを右手で、それぞれ握ってスイングする場合(例えば第2使用方法)において、可動グリップが、固定グリップから離間してしまうことによる不具合、例えば、適切なフォームでスイングすることが困難になるといった事態を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ゴルフ練習用器具の第1状態を示す斜視図である。
図2】ゴルフ練習用器具の第2状態を示す斜視図である。
図3】可動グリップ等を示す断面図である。
図4】ゴルフ練習用器具を示す正面図であり、(a)は第1状態を示し、(b)は第2状態を示す。
図5】ゴルフ練習用器具の第1使用方法の態様を示す説明図である。
図6】ゴルフ練習用器具の第2使用方法の態様を示す説明図である。
図7】ゴルフ練習用器具の第2使用方法の手元の態様を示す説明図である。
図8】別の実施形態におけるゴルフ練習用器具を示す斜視図である。
図9】別の実施形態におけるゴルフ練習用器具の手元の態様を示す説明図である。
図10】別の実施形態として用いる固定部材を示す斜視図である。
図11】別の実施形態として用いる固定部材をシャフトに取付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。尚、各図面においての寸法、縮尺は、便宜上、簡略化している部分があるため、実際の寸法、縮尺と必ずしも一致するわけではない。
【0035】
図1、及び、図2に示すように本実施形態のゴルフ練習用器具1は、いわゆるアイアンタイプのものであって、打球面を有するクラブヘッド2と、クラブヘッド2と接合されるゴム製のソケット3と、ソケット3と接合されるシャフト4と、シャフト4の先端部に固着されたゴム製の固定グリップ5と、該固定グリップ5に隣接してシャフト4に固着されたフェルト製の緩衝材6と、シャフト4に外挿された可動グリップ7とを備えている。
【0036】
図3に示すように、可動グリップ7は、固定グリップ5と同素材よりなるゴム製の外グリップ部8と、外グリップ部8よりも低弾性、且つ、外グリップ部8の内周面に固着された内筒9とを備えている。本実施形態において、内筒9は、ポリカーボネートよりなり、その内周面の内径は、シャフト4の外径よりも大きく設定されている。このため、内筒9の内周面と、シャフト4の外周面との間には隙間が形成され、これにより、可動グリップ7は、シャフト4の長手方向において、スライド可能、且つ、回転可能に設けられている。また、内筒9の内周面の内径は、緩衝材6の外径、及び、ソケット3の外径よりも小さい。すなわち、可動グリップ7は、常時、シャフト4の長手方向において、ソケット3と緩衝材6との間に位置することとなる。まとめると、可動グリップ7は、シャフト4の長手方向において、常時、ソケット3と緩衝材6との間に位置し、且つ、スライド可能、及び、回転可能に設けられている。本実施形態では、図1に示すように、可動グリップ7がソケット3と接触した状態を第1状態とし、図2に示すように、可動グリップ7が緩衝材6と接触した状態を第2状態と称することとする。
【0037】
また、図4に示すように、固定グリップ5及び緩衝材6には、第1マーク10が付されており、可動グリップ7には第2マーク11が付されている。各マーク10、11は、可動グリップ7が、シャフト4、及び、固定グリップ5のうち少なくとも一方に対して、どの程度回動したかを確認するための回動確認手段として用いられる。各マーク10、11は、図4(b)に示すように、第2状態(可動グリップ7が緩衝材6と接触した状態)において、ゴルフ練習器具1を正面視した際に、固定グリップ5及び緩衝材6、並びに、可動グリップ7の中央に位置する箇所に対して、一本の直線を描くようにして設けられている。尚、各マーク10、11の長さは、それぞれ、約4cm程度となっている。各マーク10、11は、印刷、ペン等によるマーキング、刻印、異種素材の埋設等により形成される。
【0038】
ゴルフ練習用器具1に関し、寸法や重量については特に制限はないが、寸法の一例としては、長手方向の全長(クラブヘッド2の中心点から固定グリップ5の先端まで)は約95cm、ソケット3の長さは約1cm、固定グリップ5の長さは約20cm、緩衝材6の長さは約1cm、可動グリップ7の長さは約15cmとなっている。
【0039】
また、重量の一例として、総重量は約483g、クラブヘッド2は約293g、ソケット3と緩衝材6との合計重量は約5g、シャフト4は約112g、固定グリップ5と可動グリップ7との合計重量は約73gとなっている。
【0040】
さて、本実施形態のゴルフ練習用器具1は、「素振り」を行う第1使用方法と、「ゴルフボールの打撃」を行う第2使用方法との、少なくとも2通りの方法で練習を行うことが可能となっている。
【0041】
「素振り」を行う第1使用方法の手順を、図5を用いて説明する。まず、図5(a)に示すように、固定グリップ5を両手で握り、アドレス(ゴルフボールを打つための構え)をとる。その際、可動グリップ7は、重力に従ってソケット3と接触した状態(第1状態)となる。その後、図5(b)に示すように、テイクバック(器具を後方に引く動作)を行う。その際、ソケット3に接触していた可動グリップ7は、ソケット3が緩衝材6よりも上方に位置した所定のタイミングから、重力に従って緩衝材6の方へと徐々に移動する。次に、図5(c)に示すように、いわゆるトップ姿勢(両手の位置が最も高くなる姿勢)をとる。トップ姿勢では、可動グリップ7が緩衝材6と接触した状態(第2状態)となる。その後、図5(d)に示すように、ダウンスイングを行う。その際、緩衝材6に接触していた可動グリップ7は、スイングの遠心力により、シャフト4に沿って急速に移動する。そして、図5(e)に示すように、おおむねクラブヘッド2が最下点に到達したとき、すなわち、インパクトの瞬間とほぼ一致するタイミングで、可動グリップ7がソケット3に衝突する(第1状態)。但し、本使用方法ではゴルフボールを用いないため、当然、実際にインパクトが行われるわけではない。そして、衝突により、衝突音が発現し、スイングした者は、実際にゴルフボールを打ったときに似通った感覚を味わうこととなる。また、その後は、図5(f)に示すように、フィニッシュ(スイングの一連の動きが終わり静止した姿勢)までフォロースルー(腕を振り切る動作)を行う。
【0042】
次に、図6図7を用いて、「ゴルフボールの打撃」を行う第2使用方法の手順について説明する。まず、図6(a)に示すように、ゴルフボールの打撃が可能な場所において、ゴルフボールを地面(又はティーの上)に載置する。そして、可動グリップ7と緩衝材6とを接触させた状態(第2状態)のまま、固定グリップ5を左手で、可動グリップ7を右手で、それぞれ握る。このとき、図7(a)、図7(b)に示すように、第1マーク10と第2マーク11との位置を合わせた状態とし、固定グリップ5を左手で、可動グリップ7を右手で、それぞれ握る。そしてその後は、図6(b)、図6(c)、図6(d)に示すように、上記第1使用方法と同様の手順で、一連の動作(アドレスからフィニッシュまで)を行う。本使用方法において、可動グリップ7は、右手で把持されているため、シャフト4の長手方向において、大きく移動することはない。それ故、第1使用方法のように、可動グリップ7がソケット3に衝突することで、衝突音が発現するといったことは起こらない。その代わりに、本使用方法では、実際にゴルフボールを打撃するインパクトを堪能することができる。
【0043】
さて、上記のように第1マーク10と第2マーク11とを位置合わせ状態で握った上で、適切なフォームでスイングを行った場合、図7(c)に示すように、左手(左腕)を自分から見て左へと回旋(捻る)させる動きがとられる。一般的には、当該動きを(右利きの人にとって)「左腕の外旋」という。当該動きに伴い、左手で把持されている固定グリップ5、緩衝材6、及び、シャフト4も自分から見て左へと回旋(捻る)させる動きがとられる。対して、可動グリップ7は、当該可動グリップ7にかかる「右手のグリッププレッシャー」(グリップの握り加減)が適切(適度な強さ)であった場合、可動グリップ7は、固定グリップ5ほど回旋させられず、スイング後は、図7(d)に示すように、第1マーク10と第2マーク11との位置がずれた(第1マーク10の方がより大きく回動した)状態となる。尚、「右手のグリッププレッシャー」が過度に大きい場合には、可動グリップ7は、固定グリップ5よりも大きく回旋させられ、第1マーク10と第2マーク11との位置がずれた(第2マーク11の方がより大きく回動した)状態となる。加えて、「右手のグリッププレッシャー」が過度に小さい場合には、可動グリップ7は、固定グリップ5よりも小さく回旋させられ、第1マーク10と第2マーク11との位置がずれた(第1マーク10の方がより大きく回動した)状態となる。
【0044】
以上詳述したように、本実施形態では、「素振り」に加え、「ゴルフボールの打撃」を行うことができる。そのため、使用方法が「素振り」に限定される従来の器具に比べ、リアリティーの高い練習を行うことができ、興趣の低下の防止を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、クラブヘッド2を有していることから、インパクトの瞬間において重要なポイントであるクラブヘッド2の角度、位置、方向の3点を確認しながら、練習することで、当該ポイントを比較的体得しやすい。加えて、本実施形態のゴルフ練習用器具1は、その大部分において、ゴルフクラブと一致しているため、身体とゴルフクラブとを同調させた適切なスイングフォームを体得しやすくなる。そのため、より一層、ゴルフが上達しやすくなるといった効果も奏される。
【0046】
ところで、ゴルフ上達の重要なポイントとして、前述した「左腕の外旋」が挙げられる。一般的には、ダウンスイングからフィニッシュにかけて、「左腕の外旋」を正しく行うことで、クラブヘッドが加速し、ゴルフボールをより遠くへ飛ばすことが可能となる。しかしながら、例えば初心者等がスイングを行う場合、ゴルフボールを遠くに飛ばそうとして、「右手のグリッププレッシャー」が不用意に強くなり、「左腕の外旋」の正しい動きが阻害されてしまう懸念がある。
【0047】
この点、本実施形態の第2使用方法によれば、固定グリップ5を左手で、可動グリップ7を右手で、それぞれ握ることとなる。そのため、スイング時には、「右手のグリッププレッシャー」の影響を受けることなく、「左腕の外旋」を行うことができる。また適切なスイングが行われていた場合には、上述したように、可動グリップ7が、固定グリップ5に対し、相対的に回動する。従って、過度な「右手のグリッププレッシャー」によって「左腕の外旋」の正しい動きが阻害されてしまうといった事態を防止しつつ、ゴルフボールを打撃する練習を行うことが可能となる。加えて、本実施形態では、第1マーク10と第2マーク11とが、両グリップ5、7に付されており、「左腕の外旋」や「右手のグリッププレッシャー」の程度を視覚的に確認することができる。従って、比較的早期に練習者のスイングの癖を認知し、矯正していくことが可能となる。
【0048】
尚、上述した握り方を行う場合、左手は固定グリップ5の下部に位置することとなる。すなわち、固定グリップ5の握られている箇所から上方(固定グリップ5の上端部)にかけて、握られていない空き部分が生じる。このため、別途指導者がいる場合には、当該空き部分を指導者が持ち、練習者に適切なスイングフォームを体得させるといったこともできる。この点において、ますますゴルフが上達しやすくなるといった効果が奏される。
【0049】
さらに、固定グリップ5と可動グリップ7との間には、緩衝材6が設けられている。そのため、例えば、固定グリップ5と可動グリップ7との間に、指を挟んでしまうことに起因する不具合を防止することが可能となる。加えて、固定グリップ5と可動グリップ7の接触を防止することで、ゴルフ練習用器具1の製品寿命を延ばすことが可能となる。
【0050】
また、可動グリップ7は、固定グリップ5と同素材の外グリップ部8を備えている。そのため、可動グリップ7を把持したときの不快感を低減でき、また、内筒9として、外グリップ部8よりも硬質かつ摩擦係数の小さいポリカーボネートを用いることで、スムースなスライド等を期待できる。
【0051】
また、第1使用方法のテイクバックに際しては、ソケット3に接触していた可動グリップ7を、重力に従わせ徐々に移動させ、トップ姿勢時に、緩衝材6と接触した状態にさせることとするのが望ましい。このように意識させることで、練習者は、比較的時間を掛けて(ゆっくりと)テイクバックを行うことができ、また、オーバースイング(必要以上に大きく振りかぶってしまうこと)を防止することができ、トップ姿勢を安定させることができる。
【0052】
上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0053】
(a)上記実施形態では、「素振り」を行う第1使用方法と、「ゴルフボールの打撃」を行う第2使用方法との、2通りの使用方法を説明しているが、例えば、第1使用方法の握り方(固定グリップ5を両手で握る。スイングを行った際には、可動グリップ7がソケット3に衝突することで、衝突音が発現する。)において、実際にゴルフボールを打撃するといった練習を行うことも、当然可能である。
【0054】
(b)上記実施形態では、アイアン形状のクラブヘッド2が用いられているが、打球面を有していれば、クラブヘッド2の形状、素材は特に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、ウッドタイプ(例えば、ドライバー)のクラブヘッド21を用いることとしても良い。また、ユーティリティタイプ、或いは、ウェッジタイプであっても良い。さらに、シャフト4の素材も特に限定される訳ではなく、スチール製でもカーボン製でも良い。
【0055】
(c)上記実施形態では、回動確認手段として、直線状の第1マーク10、及び、第2マーク11が用いられているが、形状や、マークを付する方法は、特に限定されるものではない。
【0056】
例えば、文字や記号や図形等でマークを構成しても良い。また、図9に示すように、両グリップ5、7の表面を、それぞれ2色に色分けすることで、回動の程度を確認することとしても良い。この場合、各色の境界部が回動確認手段を構成する。尚、図9のうち、図9(a)は第2使用方法におけるスイング開始時の両グリップ5、7の状態(各色の境界部が合致している状態)、図9(b)は第2使用方法におけるスイング終了時の両グリップ5、7の状態(各色の境界部がずれた状態)をそれぞれ示している。尚、回動確認手段としては、可動グリップ7の回動の程度が視認できればよく、設置部位やサイズは上記各例に限定されるものではない。
【0057】
(d)上記実施形態においては特に言及しなかったが、例えば、図10、及び、図11に示すように、第2状態(可動グリップ7が緩衝材6と接触した状態)において、シャフト4に対し、可動グリップ7の長手方向への移動を規制し、且つ、固定部材31を着脱可能に設けることとしても良い。固定部材31を設けることにより、固定グリップ5を左手で、可動グリップ7を右手で、それぞれ握ってスイングする場合(例えば第2使用方法)において、可動グリップ7が、固定グリップ5から離間してしまうことによる不具合、例えば、適切なフォームでスイングすることが困難になるといった事態を抑制することができる。
【0058】
(e)上記実施形態では、可動グリップ7の内筒9として、ポリカーボネートが用いられているが、材質は特に限定されるものではない。但し、外グリップ部8よりも低弾性、且つ、低摩擦係数のものが好ましい。また、可動グリップ7を2層構造としなくても良く、1層構造であっても、3層構造であっても良い。
【0059】
(f)上記実施形態では、ゴム製のソケット3が用いられているが、材質は特に限定されるものではなく、例えば樹脂製であっても良い。但し、可動グリップ7による衝突に耐え得る耐久性を備えていることが好ましい。
【0060】
(g)上記実施形態では、フェルト製の緩衝材6が用いられているが、材質は特に限定されるものではない。但し、スポンジやコットン布帛等、なるべく手に優しい素材を用いることが好ましい。
【0061】
(h)例えば、固定グリップ5の長さと、可動グリップ7の長さとを同等とし、且つ、固定グリップ5と、可動グリップ7の外グリップ部8とを同一素材で構成することとしても良い。当該構成にすることで、固定グリップ5を左手で、可動グリップ7を右手で、それぞれ握る場合(例えば第2使用方法)において、掌に違和感を感じることなく握ることが可能となる。また、ゴルフ練習用器具1の製造に際して、例えば、一本の市販のグリップを半分に切断した上で、一方を固定グリップ5として、他方を可動グリップ7の外グリップ部8として用いることとすれば、歩留まりの向上を図ることができ、ひいては生産性が向上するといった効果が奏される。
【0062】
(i)緩衝材6の外径は、内筒9の内径よりも大きい必要があるが、これに加え、例えば、緩衝材6の外径を、固定グリップ5の外径と、可動グリップ7の外径との間に設定することとしても良い。当該設定により、例えば、固定グリップ5を左手で、可動グリップ7を右手で、それぞれ握る場合(例えば第2使用方法)において、掌に違和感を感じることなく握ることが可能となる。
【0063】
(j)例えば、可動グリップ7を、固定グリップ5又は緩衝材6側にくっつけておくことのできる磁石を設けることとしても良い。但し、磁石の磁力を、ダウンスイングによる遠心力によって、可動グリップ7が固定グリップ5、又は、緩衝材6に対し離間する程度に弱くしておくのが望ましい。
【符号の説明】
【0064】
1…ゴルフ練習用器具、2…クラブヘッド、3…ソケット、4…シャフト、5…固定グリップ、6…緩衝材、7…可動グリップ、8…外グリップ部、9…内筒、10…回動確認手段を構成する第1マーク、11…回動確認手段を構成する第2マーク、31…移動規制手段としての固定部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11