(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117903
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】機能水の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/68 20230101AFI20240823BHJP
【FI】
C02F1/68 510B
C02F1/68 510Z
C02F1/68 520K
C02F1/68 530Z
C02F1/68 540Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023987
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】507302874
【氏名又は名称】株式会社夢職人
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【弁理士】
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】辻 陽平
(57)【要約】
【課題】我が国の水道水水質基準に準拠している飲用可能な機能水であって、種々の用途に利用可能な機能水の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】水1Lあたり2g以上の玄武岩と接触させた状態で2気圧以上の圧力をかけて加熱し、100℃以上における前記水と前記玄武岩との接触状態を5分間維持し、常温に戻した後、凍結させたものを解凍してなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水1Lあたり2g以上の玄武岩と接触させた状態で2気圧以上の圧力をかけて加熱し、100℃以上における前記水と前記玄武岩との接触状態を5分間維持し、常温に戻した後、凍結させたものを解凍してなることを特徴とする機能水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面張力を弱めたり、個体の表面に親水性皮膜を形成させる事が出来る飲用可能な機能水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水に様々な機能、例えば、洗浄機能、防汚機能などの機能を付加した水(機能水)を製造することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、洗剤を含まずに油等の汚れを落すことができる洗浄機能を有する機能水の製造方法が開示されており、イオン交換樹脂を内蔵する軟水生成器と、トルマリンと金属とを有するトルマリン混合体を内蔵するイオン生成器とを順に連結し、イオン交換樹脂とトルマリン混合体との順に水を通過させることにより、ヒドロキシルイオンとヒドロニウムイオンが含まれた洗浄機能を有する機能水が製造できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願人においても機能水の鋭意研究を行なっており、この度、界面張力を弱めたり、個体の表面に親水性皮膜を形成させる事が出来る飲用可能な機能水の製造方法を完成させるに至った。
【0006】
本発明は、界面張力を弱めたり、個体の表面に親水性皮膜を形成させる事が出来る飲用可能な機能水の製造方法であって、その目的は、我が国の水道水水質基準に準拠している飲用可能な機能水であって、種々の用途に利用可能な機能水の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明の機能水の製造方法は、水1Lあたり2g以上の玄武岩と接触させた状態で2気圧以上の圧力をかけて加熱し、100℃以上における前記水と前記玄武岩との接触状態を5分間維持し、常温に戻した後、凍結させたものを解凍してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の機能水の製造方法によれば、界面張力を弱めたり、個体の表面に親水性皮膜を形成させる事が出来る飲用可能な機能水を製造することができる。また、本発明の機能水の製造方法によれば、対象物への皮膜形成に、下地剤を用いたり、加圧された圧縮空気と共に吹き付ける必要がない。製造された機能水を物質の表面に塗布することで物質面にミネラルの皮膜を構成し、紫外線の照射によっても機能性が失われず、また皮膜は静電気を抑える効果を奏することを新たに見出した。
【0009】
また、例えば、製造された機能水を自動車の塗装面などに塗布すれば、従来の石油油脂製のワックスなどでは紫外線の影響で変色したり防汚効果が劣化するのに対し、長期間、塗装表面に親水性を与え続けることができるため、汚れの固着を防ぎ、雨水によるセルフクリーニング機能も期待できる。界面張力の低い機能水によって、例えば、従来は界面活性剤を使っていたメガネレンズの皮脂汚れの除去にも使え、汚れを浮かせて除去し、親水性機能によって空気中の湿度によってレンズ表面に水分膜を作ることで汚れはレンズ界面に固着せず、清掃性が向上し、帯電防止剤などに頼らなくても静電気が減るため、例えばティッシュペーパーのようなもので拭いても紙片埃が付かないなどの機能性を得られることを新たに見出した。
【0010】
その他にも、自動車や船舶、航空機などのガラス、メガネのレンズなどにこの機能水を使用すると油脂汚れを浮き立たせて除去でき、皮膜層を形成し、ぬれ性のよさによって曇りにくく、静電気を抑制し埃が付きにくくなり、その後の油脂汚れはぬれ性のよさによって簡単に除去できるようになる。なお、反射防止、耐油、防傷、耐熱などの特殊加工メガネレンズへのティッシュペーパーを使った耐久試験において1,000回の使用でもレンズ表面加工の剥離などは発生しなかった。エアコンの熱交換器に機能水を使用すると、皮膜層が形成し、ぬれ性のよさによって静電気を抑制し埃が付きにくくなり、カビの発生を抑制し、熱交換の効率悪化を防ぐ働きが認められる。化学繊維の絨毯や樹脂床などに機能水を使用すると、皮膜層を形成し、静電気の発生を抑制し、乾燥する季節にも不快な放電による刺激を低減することができる。導気管の内壁に機能水を使用すると皮膜層を形成し、静電気の発生を抑えて、内壁界面での摩擦を減らし、空気抵抗が減り、通気効率を上げることができる。農薬の溶解に機能水を用いれば、ぬれ性のよさによって展着剤のように葉面への薬剤の付着を助ける効果が期待できるため、農薬の散布効果を引き上げることが出来る。液体肥料の溶解に機能水を用いれば、ぬれ性のよさによって根や葉面からの吸収を助け、肥料の散布効果を高め、植物の成長を助長する。浴槽や便器、洗面台などに機能水を使用すると皮膜を形成し、ぬれ性のよさによって汚れの界面への固着を防ぎ、水によって汚れを簡便に除去できる等といった種々の効果をこの機能水は奏することができる。
【0011】
なお、製造された機能水は、我が国の水道水水質基準に準拠しているため、従来の化学物質の使用が難しい、食品衛生分野や、人が直接触れる箇所、気密性が高く化学物質の使用が慎重であるべき箇所、化学物質過敏症によって化学品の使用を控えるべき環境下での使用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】ガラス表面の状態を顕微鏡を介して撮影した画像。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
2gの粒状の玄武岩を1Lのイオン交換水に浸漬するとともに加熱容器に収容して2気圧以上の圧力をかけて加熱し、100℃以上における前記水と前記玄武岩との接触状態を5分間維持し、常温に戻した後、凍結させたものを解凍することにより、機能水を得た。
【0015】
下表1の組成の玄武岩を用いた場合に得られたミネラル水を定法により分析したところ、表のようになった。尚、このミネラル水を、水道法に基づく水質基準(厚生省令第101号 法定51項目)に照らした場合、法定51項目すべてについて、生涯にわたる連続的な摂取をしても人の健康に影響が生じない水準の飲用水として適合していることがわかり、本発明の機能水は、食品衛生面での使用のほか、直接飲用としても好適に利用可能なものであることがわかった。
【0016】
【0017】
【0018】
このようにして得られた機能水は、たとえばスプレー容器等に移した状態で使用される。
【実施例0019】
以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
まず、ガラス表面をクリーニングのみと、実施の形態において得られた機能水(以下「機能水」と言う。)を用いて表面を拭き上げた2種類のガラス板を用意する。このそれぞれのガラス板上に、
図1に示すように、液滴針を介して超純水、パラフィン及び機能水をそれぞれ滴下し、ガラス表面上に形成された液滴の接触角を測定した。
【0020】
図1(1)には接触角測定方法が模式的に図示されており、左側は滴下する前、右側は滴下後でありガラス表面に液滴が形成され、その液滴の実像(液滴実像)と、この液滴の反射像(液滴反射像)が形成された状態が図示されている。
図1(2)は接触角を説明するための図であり、
図1(3)は共和界面科学株式会社製の接触計(FACE CA-X510)により撮影された画像であり、右側がガラス表面をクリーニングのみにしたガラス板上の液滴の画像、左側が機能水を用いて表面を拭き上げたガラス板(機能水コーティング)上の液滴の画像である。この画像を対比すると明らかに左側の方が接触角が低いことがわかる。この接触角を測定した結果が下記表3である。
【0021】
【0022】
表3を参照すると、滴下試料を超純水とした場合、ガラス表面の表面処理をクリーニングのみにしたものと機能水コーティングしたものとを比べると、その接触角の差は約2倍であり、機能水の有意な親水性が認められた。
【0023】
図2は走査型レーザー顕微鏡(×20)を介してガラス表面の状態を撮影した画像であり、右側がクリーニングのみ、左側が機能水コーティングしたものであるが、ガラスの表面の差異に大きな違いは見られず、機能水コーティングは、極めて薄いコーティング層を形成して効果を発揮していることがわかる。