(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117910
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】エレベータ内に設置される収納ボックスの昇降装置
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B66B11/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023997
(22)【出願日】2023-02-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】505151771
【氏名又は名称】ユニトレンド株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516112093
【氏名又は名称】株式会社LA・PITA
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】岡田 勝久
(72)【発明者】
【氏名】澤 直樹
【テーマコード(参考)】
3F306
【Fターム(参考)】
3F306CB05
3F306CB60
(57)【要約】
【課題】エレベータのかご内の壁面近くで且つ床面から離れた高い位置に収納ボックスを昇降させ、収納ボックスから収納品を取り出すときなどには、取り出しが容易な位置まで下降させることができ、かつエレベータのかご内の壁面に沿って堅固に設置することができる、収納ボックスの昇降装置を提供する。
【解決手段】昇降装置は、エレベータのかご内の壁面に沿って床と天井との間に設置される2本のポールと、2本のポールの上端に架設された当接部材と、2本のポールの下端に架設された当接部材と、2本のポールのそれぞれに敷設されたレールと、2本のレール上を走行して昇降し、収納ボックスを掛止することができる昇降板と、2本のポールの上端部に架設され、昇降板を昇降させることができる巻上機と、2本のポールに取り付けられた複数の磁石埋め込み部材とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご内において収納ボックスを昇降することができる昇降装置であって、
昇降装置は、エレベータのかご内の壁面に沿って天井と床との間に設置される2本のポールと、2本のポールの上端に架設された当接部材と、2本のポールの下端に架設された当接部材と、2本のポールのそれぞれに敷設されたレールと、2本のレール上を走行して昇降し、収納ボックスを掛止することができる昇降板と、2本のポールの上端部に架設され、昇降板を昇降させることができる巻上機と、2本のポールに取り付けられた複数の磁石埋め込み部材とを備え、
巻上機に取り付けられた巻上げ用チェーンにより昇降板を昇降させることができることを特徴とする、エレベータのかご内において収納ボックスを昇降することができる昇降装置。
【請求項2】
前記2本のポールの下端部のそれぞれには、高さ調整機構および高さ微調整機構が設けられ、高さ調整機構はポールの下端部に挿入される高さ調整用パイプを有し、高さ微調整機構は雌ネジを有する筒状部材と雄ネジ部材を有し、筒状部材の上端部は高さ調整用パイプの下端部に挿入され、前記2本のポールの下端に架設された当接部材は高さ微調整機構の雄ネジ部材の下端に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のエレベータのかご内において収納ボックスを昇降することができる昇降装置。
【請求項3】
前記磁石埋め込み部材が2本のポールに跨がって取り付けられ、該部材の長さが2本のポール間隔の外のり寸法と同じであることを特徴とする、請求項1または2に記載のエレベータのかご内において収納ボックスを昇降することができる昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかご内に設置され、防災用や非常用の品々が収納される収納ボックスの昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震などの発生により、昇降客がエレベータのかご内に閉じ込められる、いわゆる閉じ込めの被害が報告されている。エレベータは、通常、一定の震度を超えると最寄りの階に非常停止し、扉が開いて待機するように設定されている。また、エレベータによっては、非常停止した場合、かごの内部と外部の管理室や管制センターとインターホーンで交信できるようして、閉じ込めの被害を回避できるようになっている。
【0003】
大都市で直下型地震が発生すると多数のエレベータがほとんど同時に非常停止して多数のエレベータで閉じ込めが発生すると予想されている。また、震度の大きな地震では電話回線の輻輳や広域停電や交通渋滞をともなうことがあり、管制センターへの情報伝達の遅れや保守点検要員の現場到着が遅れるなどしてエレベータの復旧が遅れ、閉じ込めが長時間に及ぶことも予想されている。過去の震度の大きな地震により閉じ込め時間が3時間を超えることが閉じ込め数全体の10%以上を占める事例が報告されている。
【0004】
閉じ込めから救出されるまで長時間に及ぶ事態に対して、閉じ込められた人が健康状態を害することなく救出を待つことができるようにするためには、簡易トイレやペットボトルなどの飲料水等を収納した防災用の収納ボックスをエレベータのかご内に設置することが推奨され、すでに様々なタイプのものが提案されている。
【0005】
従来の防災用の収納ボックスは、特許文献1の
図2に示されるように、かご内の床面上に設置されるものであり、通常、かご内の奥隅の床面上に設置され、保安上の観点から、容易には開けることができないようになっている。
【0006】
しかし、従来のエレベータのかご内の防災用の収納ボックスは、床面上に設置するため、かご内にデッドスペースが発生して昇降客が利用できるスペースを小さくしている。また、収納ボックスの設置のためにエレベータのかご内の壁や床に穴を開けることは避けることになっているので、収納ボックスは、持ち出しを防ぐことが難しく、絶えず盗難や悪ふざけの対象となる危険をはらんでいる。
【0007】
そこで、本発明者らは、収納ボックスをかご内の床面上に設置するのではなく、かご内の壁面近くの床より2mほど高い、通常の背丈の人の頭上の位置に設置することにより、かご内にデッドスペースの発生を極力抑え、また収納ボックスが盗難や悪ふざけの対象となる危険性を小さくできると考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特許文献1:特開2009-120290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みて、エレベータのかご内の壁面近くで且つ床面から離れた高い位置に収納ボックスを上昇させて保持し、収納ボックスから収納品を取り出すときなどには、取り出しが容易な位置まで下降させることができる昇降装置であって、収納ボックスの上下の移動が容易に行え、かつエレベータのかご内の壁面に沿って堅固に設置することができる、収納ボックスの昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
[1]エレベータのかご内において収納ボックスを昇降することができる昇降装置であって、昇降装置は、エレベータのかご内の壁面に沿って床と天井との間に設置される2本のポールと、2本のポールの上端に架設された当接部材と、2本のポールの下端に架設された当接部材と、2本のポールのそれぞれに敷設されたレールと、2本のレール上を走行して昇降し、収納ボックスを掛止することができる昇降板と、2本のポールの上端部に架設され、昇降板を昇降させることができる巻上機と、2本のポールに取り付けられた複数の磁石埋め込み部材とを備え、巻上機に取り付けられた巻上げ用チェーンにより昇降板を昇降させることができることを特徴とする、エレベータのかご内において収納ボックスを昇降することができる昇降装置。
[2]前記2本のポールの下端部のそれぞれには、高さ調整機構および高さ微調整機構が設けられ、高さ調整機構はポールの下端部に挿入される高さ調整用パイプを有し、高さ微調整機構は雌ネジを有する筒状部材と雄ネジ部材を有し、筒状部材の上端部は高さ調整用パイプの下端部に挿入され、前記2本のポールの下端に架設された当接部材は高さ微調整機構の雄ネジ部材の下端に設けられていることを特徴とする、[1]に記載のエレベータのかご内において収納ボックスを昇降することができる昇降装置。
[3]前記磁石埋め込み部材が2本のポールに跨がって取り付けられ、該部材の長さが2本のポール間隔の外のり寸法と同じであることを特徴とする、[1]または[2]に記載のエレベータのかご内において収納ボックスを昇降することができる昇降装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上端と下端に当接部材を有する2本のポールがエレベータのかご内の壁面に沿って天井面と床面を押し当てた状態で設置され、さらに2本のポールのそれぞれのかご内の上記壁面側に取り付けた複数の磁石埋め込み部材により2本のポールをかご内の上記壁面から剥がされないようにしているので、本発明の昇降装置をエレベータのかご内の上記壁面に沿って堅固に設置することができる。そして、2本のポールのそれぞれに取り付けたレール上を走行する、収納ボックスを掛止することができる昇降板を2本のポールの上部に架設された巻上機により昇降させることにより、収納ボックスを掛止することができる昇降板をエレベータのかご内の上記壁面近くで且つ天井面近くに容易に保持できるとともに、その位置から容易に下降させ、また下降した位置から容易に上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)はエレベータのかご内の壁面に沿って設置された本発明の昇降装置の実施形態を示す。(b)はエレベータのかご内の壁面に沿って天井と床の間に設置される2本のポールを示す。
【
図2】2本のポールの上端部に架設された巻上機を示す。
【
図3】高さ調整機構を示す。(a)は高さ調整量が大きい場合を、(b)は高さ調整量が小さい場合をそれぞれ示す。
【
図5】ポールの下端部に備えられた高さ調整機構と高さ微調整機構を示す。
【
図6】磁石埋め込み部材のベースフレームを示す。(a)は表面を、(b)は背面をそれぞれ示す。
【
図7】磁石埋め込み部材の補助フレームを示す。(a)は表面を、(b)は背面をそれぞれ示す。
【
図8】ベースフレームと補助フレームからなる磁石埋め込み部材を示す。(a)は表面を、(b)は背面をそれぞれ示す。
【
図9】2本のポールに跨がって設置される磁石埋め込み部材および目隠しカバーを示す。
【
図10】収納ボックス(のフック部材が取り付けられた面)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下にエレベータのかご内に設置される収納ボックスの昇降装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
昇降装置1の基本的な構成として、
図1(a)に示すように、エレベータのかご内において、該かご内の壁面に沿って立設される2本のポール2と、防災グッズなどを収納できる収納ボックスを掛止することができる昇降板11と、この昇降板11を上昇または下降し、または所定の高さ位置で保持することができる巻上機5とを備えている(
図2参照)。また、ポール2にはレール12が敷設されており、昇降板11はこのレール上を昇降移動する。
【0014】
ポール2は、
図1(b)に示すように、かご内の壁面に沿ってかご内の天井100と床200との間に2本設置される。2本のポールの上端および下端には、それぞれ当接部材3、4が取り付けられている。2本のポール2の間隔は、昇降板11の幅の寸法などを考慮して決めればよい。
【0015】
エレベータのかご内の天井高さは、通常は2000~2300mm程度であり、ポール2の長さは、通常、2000mmを超える長いものであるので、ポール2は分割型とするのが取り扱い安く、例えば、複数の差込式のパイプで形成することもできる。2000mmを少し超える長さのポール2では、700mm前後の長さのパイプであれば3本で形成することができる〔
図1(b)参照〕。パイプは断面形状が中空の四角形の角パイプが好適であり、例えば断面が30mm×30mm程度の鋼製やアルミ製の角パイプを使用することができる。角パイプとしては角にアールが設けられているものが好ましい。
【0016】
ポール2は、エレベータのかご内の天井高さと同じ長さのものを製作してもよいが、エレベータのかご内の天井高さは一定とは限らないので、ポール2としては高さを調整できるものを使用することが望ましい。
ポール2として、相対(あいたい)する平面に伸縮と固定によって圧力を掛けて固定して用いる、いわゆる突っ張り棒を使用することができる。突っ張り棒は伸縮手段が予め内蔵されているが、そうでない場合は下端部に高さを調整する機構を備えるポール2を使用することができる。いずれの場合も、ポール2を天井面と床面に押し当てた状態で設置することができる。高さを調整する機構を備えるポール2については後述する。
【0017】
2本のポール2の上端には当接部材3が架設されている。したがって、2本のポール2の上端同士は当接部材3により連結されている。当接部材3は、2本のポールがかご内の壁面に沿って設置されると、天井100に当接することになる。
同様に、2本のポール2の下端についても、2本のポール2の下端には当接部材4が架設されている。したがって、2本のポール2の下端同士は当接部材4により連結されている。当接部材4は、2本のポールがかご内の壁面に沿って設置されると、床200に当接することになる。
【0018】
ポール2は、エレベータのかご内の壁面に沿って立設されるためには、当接部材3、4は、ポール2の正面側に庇のように出っ張ってもいいが、ポール2の背面側には庇のようなものができるだけ形成されないのが望ましい。
ここで、ポール2の背面および正面とは、ポール2がかご内の壁面に沿って立設されたときに、それぞれ、ポール2の該壁面側に向いている面、かご内側に向いている面を指している。
【0019】
2本のポール2の上端と下端のそれぞれを当接部材3、4で連結すると、2本のポール2と2つの当接部材3、4が形づくる長方形の枠組が平行四辺形にひしゃげて変形し難くなって丈夫になる。その結果として、2本のポールを壁面に沿って天井と床の間に配置することが容易に行え、2本のポール2を1本ずつ個別に設置する場合に比べて、短時間に設置できる。
なお、当接部材3の天井100に接する面や当接部材4の床200に接する面は、通常、緩衝材で構成される。
【0020】
2本のポール2の上部には巻上機5が架設され、この巻上機5により収納ボックスを掛止することができる昇降板11を昇降させたり、所定の高さ位置に保持したりすることができる。
巻上機5は、
図1(a)および
図2に示すように、2本のポール2の上部の正面側に架設されたケース8とケース8に回転自在に支持された回転軸(巻き上げ棒)6とこの回転軸6の一方の端部に固定されたプーリー(滑車)7を備えている。なお、
図1(a)および
図2ではケース8のカバーが外されている。
【0021】
プーリー7の外周には巻き上げ用チェーン9(通常はループを形成している)が掛けられ、一方のポール2〔
図1(a)では左側のポール2〕に沿うように垂れ下がっている。チェーン9のループを形成して2重になっている部位のいずれかを引き下げることにより、プーリー7が正回転あるいは逆回転し、同時に該プーリー7に固定された回転軸6を正あるいは逆の回転をさせることができる。
【0022】
回転軸6の中央部にはベルト10の一方の端部が取り付けられている。そして、ベルト10の他方の端部は昇降板11の上部に連結されている。したがって、回転軸6を回転させると、昇降板11を昇降させることができる。
図1(a)では、ベルト10が回転軸6の回転によって巻き上げられ、昇降板11がポール2の上部に位置している状態を示している。さらに巻き上げると、昇降板11の上縁(実際の使用時には、昇降板11に掛止されている収納ボックス16の上縁)がケース8のカバー(不図示)の下縁に接触して、上昇が止まる。この状態から回転軸6を逆方向に回転させると、昇降板11は下降する。また、回転軸6の回転を止めると昇降板11の移動が止まり、昇降板11は同じ位置(高さ)に留まる。
【0023】
2本のポール2のそれぞれの正面には、
図1(a)に示すように、ポール2のケース8の位置辺りから下に向かってレール12が敷設されている。
レール12はポール2の下端部近くまで敷設してもよいが、昇降板11に掛止される収納ボックスは、床面近くまで下ろす必要がなく、人の腰辺りで昇降板11から外せばよいから、レール12は、床面から1000mm前後の高さのところまででよい。この場合、2本のレールの下端面は、昇降板11がさらに下降して外れないように塞がなければならない。
図1(a)では、2本のポール2の間に横架部材13を架設して、レール12の下端面を塞いでいる。
【0024】
レール12は、断面がリップ溝形(溝形の両側からリップが出ている形状)のCチャンネルとも呼ばれる形材で製作することができる。他方、昇降板11の幅方向の端部近くの裏面の4箇所には、このレール12の溝にはまり込んで抜けない突起が形成されており、昇降板11はこの左右の2本のレール12に案内されて、レール12に沿って昇降することができる。
【0025】
昇降板11の表面側の面には複数の引っ掛け用のフック部材14が取り付けられている。
図1(a)に示す実施形態では昇降板11の四隅近くに4つのフック部材14が取り付けられている。
他方、
図10に示すように、防災用などの収納ボックス15の片面側には、フック部材14に掛止するフック部材16が取り付けられており、収納ボックス15を昇降板11に掛止することができるようになっている。なお、収納ボックス15は、
図10に示すような両開きできる手提げ鞄のタイプに限るものではない。
したがって、収納ボックス15を昇降板11に掛止しておけば、チェーン9を引き下げてプーリー7を正回転あるいは逆回転することにより、昇降板11に掛止された収納ボックス15を昇降させることができる。
【0026】
次に、下端部に高さを調整する機構を備えるポール2について説明する。
高さを調整する機構としては、高さ調整機構20および高さ微調整機構21の2種の機構を併用し、高さ調整機構20で大体の高さ調整を行った後、高さ微調整機構21で仕上げの細かい高さ調整を行う。
【0027】
高さ調整機構20は、
図3に示すように、ポール2の下端部の下端から、200~300mm程度の比較的長さの短い、高さ調整用パイプ22を差し込み、このパイプ22の差し込み量を調整して行うことで構成することができる。
高さ調整用パイプ22の上端部には1つの孔(不図示)が形成されているとともに内部にはV字状のバネ金具(不図示)が挿入されている。そして、このバネ金具の開いた部位の一方には固定用の突起が形成されており、上記の孔にこの突起がはまり込み、かつバネの弾性で押さえつけている。
他方、高さ調整用パイプ22が差し込まれるポール2の下端部の側面には、所定の間隔で縦一列に複数の孔23が形成されている。この孔23のいずれかの1つに上記の高さ調整用パイプ内のバネ金具の突起がはまり込むことにより、高さを調整することができる。
図3(a)では最下段の孔23に、
図3(b)では最上段の孔23にこの突起がはまり込んでいる。このようなバネ金具はパイプジョイントクリップとして市販されている。例えば、35mmの間隔で孔23をポール2の下端部に6~9個所に設けると、高さ調整用パイプ22の差し込み量を変えることにより、高さを175~280mm程度の範囲で調整することができる。
図3に示すものでは、6個の孔23が穿設されている。
【0028】
高さ微調整機構21は、雌ねじを有する筒状部材24と雄ねじが形成された棒状部を有する雄ねじ部材25とを組み合わせることで構成することができる。
図4に示すように、高さ調整機構20に使用される高さ調整用パイプ22の下端部に高さ微調整機構21を設ける。
【0029】
筒状部材24は筒内に雌ねじが形成されている。
筒状部材24の上部側の部位は、高さ調整用パイプ22の下端部に挿入され、筒状部材24の下部側の部位は高さ調整用パイプ22の下端部から露出している。
他方、雄ねじ部材25は、雄ねじが形成された棒状部とその下端に床200と接する当接部材4とからなる部材である。棒状部の雄ねじは筒状部材24の雌ねじにはまるようになっている。
【0030】
高さ調整用パイプ22の内部には横断面を塞ぐように仕切り板26が固定されている。仕切り板26には鉄板やアルミ板を使用することができ、溶接などで取り付けて固定することができる。
この仕切り板26の中央部には孔が形成され、雄ネジ部材25の棒状部はこの孔を通過できるが、筒状部材24はこの仕切り板26を超えることができない。
【0031】
筒状部材24の上端部は、
図4に示すように、高さ調整用パイプ22の下端から挿入されて、仕切り板26の下面に接する位置に配置され、同パイプ22の外側から内側に貫通して挿入される2本の対向するネジ部材27により該パイプ22に対して回転自在に支持されている。すなわち、筒状部材24の外周には、ネジ部材27の先端部が挿入できる溝が穿設されており、この溝に先端が溝の底には接しないようにネジ部材27が挿入されて、2本のネジ部材27が筒状部材24を吊り下げた状態で回転自在に支持している。なお、ネジ部材27は、高さ調整用パイプ22の対向する2面のパイプ壁面に貫通して固定された雌ネジリング部材28に挿入されている。
【0032】
したがって、筒状部材24の高さ調整用パイプ22の下端部から露出している部位を把持して筒状部材24を正回転または逆回転させると雄ねじ部材25の棒状部が筒状部材24の筒内において上または下に移動して、雄ねじ部材25の棒状部の筒状部材24の下端からの露出長さを変えることができ、このことにより、ポール2の高さを微調整することができる。
なお、高さ調整用パイプ22の内部には仕切り板26が固定されているから、筒状部材24を把持して回転させても、筒状部材24が上方向に移動できないから、がたつきの発生が小さくなりネジ部材27にかかる負荷を小さくできる。
筒状部材24の下部側の部位の横断面の外径形状は、円形ではなく、把持しやすいような形状、例えば6角形状にすると、筒状部材24を回転させやすくなり、ポール2の高さを微調整しやすい(
図5参照)。
【0033】
雄ねじ部材25は、その下端が床200と接するので、その下端には当接部材4を備えている。
上述の高さ調整機構20で天井高さとほぼ同じ高さに定めてポール2をかご内の床200と天井100との間に設置した後に、この高さ微調整機構21によりポール2の高さを微調整して、かご内の天井面と床面の間に堅固に設置することができる。
図5にポール2の下端部に備えられた高さ調整機構20と高さ微調整機構21を示す。
【0034】
上述の実施形態では、高さ調整装置20および高さ微調整機構21を使用して、2本のポール2をエレベータのかご内の壁面に沿って天井面と床面を当接部材3、4が押し当てた状態で堅固に設置することができるが、さらに、エレベータのかご内の壁面の材料が鋼の場合には、磁石を埋め込んだ部材をポール2に取り付けて磁力の作用により、2本のポール2を壁面から剥がされないようにし、より一層堅固にかご内の壁面に沿って設置することができる。以下、磁石を使用して、ポール2をかご内の壁面に沿って設置する実施形態を説明する。
【0035】
磁石を利用してポール2を設置するために、磁石30を埋め込んだ2種のフレームから構成される磁石埋め込み部材31を使用することができる。1つは2本のポール2の間に位置するベースフレーム32であり(
図6参照)、もう1つはベースフレーム32の両端部に取り付けられる補助フレーム33である(
図7参照)。したがって、磁石埋め込み部材31は1つのベースフレーム32と2つの補助フレーム33とから構成される(
図8参照)。
【0036】
ベースフレーム32の片面には磁石30が埋め込まれて露出している。
図6に示すものでは、8個の丸型磁石が埋め込まれている。磁石30の形状や磁石の数は
図6に示すものに限るものではない。
また、ベースフレーム32の両端部には孔34が形成され、
図6ではそれぞれに孔34が2個ずつ形成されている。この孔34にネジを磁石30が埋め込まれた面とは反対側の面(磁石30が露出していない面)からから差し込むことにより、後述するように、ベースフレーム32と補助フレーム33は結合することができる。
【0037】
補助フレーム33の片面には磁石30が埋め込まれて露出している。
図7に示すものでは、2個の丸型磁石が埋め込まれている。磁石30の形状や磁石の数は
図7に示すものに限るものではない。
補助フレーム33の磁石30が埋め込まれた面とは反対側の面(磁石30が露出していない面)には、
図7(a)に示すように、縦方向に板状突起35が形成され、2つの領域に分断している。そして一方の領域(
図7では左側)にはベースフレーム32の端部の孔34に差し込まれたネジを受け入れる雌ネジ孔が形成された断面が円形の隆起物36が形成され、他方の領域には中央部に孔37が形成され、この孔37を挟むように2本の柱状突起38が形成されている。補助フレーム33の磁石30は、他方の領域に埋め込まれている。
【0038】
補助フレーム33の上記の一方の領域において、ベースフレーム32の孔34に、ベースフレーム32の磁石が露出した面とは反対側の面から差し込まれるネジが補助フレーム33の隆起物36の雌ネジ孔にはまり、ベースフレーム32の両端部の各端部と補助フレーム33とがネジ止めされ、ベースフレーム32および補助フレーム33双方の磁石30が露出した面(上記の片面)同士が同じ側になるように結合して、磁石埋め込み部材31が形成される(
図8参照)。
ベースフレーム32の両端部の片面(磁石が露出している面)側には、孔34が補助フレーム33の隆起物36を受け入られるように広がるとともに上記の一方の領域の本体部(板状部)を受け入れる段差が形成され〔
図6(b)参照〕、磁石埋め込み部材31において、ベースフレーム32に埋め込まれた磁石30と補助フレーム33に埋め込まれた磁石30の露出面は同じ高さになるようになっている。
【0039】
ポール2の背面には、2本の柱状突起38を受け入れる2つの孔(不図示)と中央部に形成された孔37に差し込まれたネジとを受け入れるネジ孔(不図示)が形成されている。なお、2本の柱状突起38を受け入れる2つの孔は磁石埋め込み部材31の位置決めに役立つ。
したがって、補助フレーム33は、磁石30が露出した面とは反対側の面をポール2の背面に接触させて、孔37に差し込まれるネジによりポール2に結合することができるから、両端部に補助フレーム33が結合したベースフレーム32、すなわち磁石埋め込み部材31を、磁石30が露出した面をかご内の壁面に接触できるように、補助フレーム33を介して、2本のポール2の背面に架設することができる。
【0040】
図9には、かご内の壁面に沿って立設された2本のポール2に跨がって、ポール2の背面側に取り付けられた磁石埋め込み部材31が示されている。この図では、前記磁石埋め込み部材31の長さが2本のポール2の間隔の外のり寸法と同じにしてあるので、両端の補助フレーム33は板状突起35を除いてポール2の背面やベースフレーム32の両端部の背面に隠れており、ベースフレーム32は表面側(磁石が埋め込まれている面とは反対側の面)が見えている。
【0041】
図9では1本の磁石埋め込み部材31のみが示されているが、1本のみではポール2を堅固に床面と天井面の間に設置することは難しいので、ポール2の縦方向の複数箇所の2本のポール2の間に磁石埋め込み部材31を横方向に架設することが望ましい。磁石の磁力にも依るが、市販されている磁石を使用して、高さが2000mm程度のポール2であれば、高さ方向に3~5つの磁石埋め込み部材31を架設することで、2本のポール2を堅固に取り付けることが可能である。
このように複数の磁石埋め込み部材31を設けることにより、2本のポール2を堅固にかご内の壁面に沿って固定することができる。
【0042】
磁石埋め込み部材31が露出していると、剥がされる懸念があるので、
図9には目隠しカバー39が取り付けられている。この図では説明のためにポール2の下部に架設された1本の磁石埋め込み部材31が露出しているが、ポール2に取り付けられた複数のすべての磁石埋め込み部材31を目隠しカバー39で覆うことが望ましい。
【0043】
上述した磁石埋め込み部材31は2本のポール2の間に架設されるものであるが、磁石を利用して2本のポール2をエレベータのかご内の壁面に沿って設置する機構はこれに限るものではない。
例えば、2本のポール2の間に架設するのではなく、2本のポール2のそれぞれの単独のポール2に対して、ポール2の背面に磁石埋め込み部材を取り付けることによっても、2本のポール2をかご内の壁面に沿って天井100と床200との間に堅固に固定して設置できる。この場合も、2本のポール2のそれぞれの、高さ方向の複数箇所に磁石埋め込み部材を取り付けることができる。
【0044】
本発明の昇降装置により、昇降板11に掛止した収納ボックス15をエレベータのかご内壁面近くで且つ天井近くに保持することができるから、従来の収納ボックスを床面上に設置する場合に生じていたデッドスペースを小さくすることができる。また、収納ボックス15を下降させて、収納されている災害用などのグッズを容易に取り出すことが可能であるから、緊急時にも素早く対応できる。
【符号の説明】
【0045】
1:昇降装置
2:ポール
3:(天井に接する)当接部材
4:(床に接する)当接部材
5:巻上機
6:回転軸
7:プーリー(滑車)
8:ケース
9:チェーン
10:ベルト
11:昇降板
12:レール
13:横架部材
14:(昇降板の)フック部材
15:収納ボックス
16:(収納ボックスの)フック部材
・・・
20:高さ調整機構
21:高さ微調整機構
22:高さ調整用パイプ
23:ポールの下端部に形成された孔
24:雌ねじを有する筒状部材
25:雄ねじ部材
26:仕切り板
27:ネジ部材
28:雌ネジリング部材
・・・
30:磁石
31:磁石埋め込み部材
32:ベースフレーム
33:補助フレーム
34:ベースフレームの孔
35:板状突起
36:雌ネジ孔が形成された隆起物
37:補助フレームの孔
38:柱状突起
39:目隠しカバー
・・・
100:天井
200:床