(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117914
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B64F 5/10 20170101AFI20240823BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20240823BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B64F5/10
B23P21/00 303Z
B64C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024003
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 豊
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 一眞
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030CC00
(57)【要約】
【課題】部品の連結によって構造体を製作する場合において、部品間にギャップが生じた際に適切な形状のシムを製作できるようにすることである。
【解決手段】実施形態に係る構造体の製造方法は、第1及び第2の部品の第1及び第2の合わせ面における第1及び第2のプロファイル並びに第1及び第2の部品の第3及び第4の面における第3及び第4のプロファイルを位置決め完了前に測定するステップと、第1及び第2の合わせ面を突き合わせて位置決めを行うステップと、位置決め完了後の第3及び第4の面における第5及び第6のプロファイルを測定するステップと、第1から第6のプロファイルに基づいて第1の部品と第2の部品との間に形成される隙間の大きさを算出するステップと、算出した隙間の大きさに基づいてシムを製作するステップと、隙間にシムを挿入して位置決めを行った状態で第1の部品と第2の部品を連結するステップとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部品と第2の部品との間に形成される隙間にシムを挿入して連結することによって、航空機、航空機部品、宇宙飛行体又は宇宙飛行体の部品からなる構造体を製造する製造方法において、
前記第1の部品の、前記第2の部品との第1の合わせ面における第1のプロファイルを、前記第1の部品及び前記第2の部品の連結位置への前記第1の部品及び前記第2の部品の位置決め完了前に測定するステップと、
前記第2の部品の、前記第1の部品との第2の合わせ面における第2のプロファイルを、前記位置決め完了前に測定するステップと、
前記第1の部品の、前記位置決め完了後に測定することが可能な少なくとも一部の第3の面における第3のプロファイルを前記位置決め完了前に測定するステップと、
前記第2の部品の、前記位置決め完了後に測定することが可能な少なくとも一部の第4の面における第4のプロファイルを前記位置決め完了前に測定するステップと、
前記第1の合わせ面と前記第2の合わせ面を突き合わせて前記位置決めを行うステップと、
前記位置決め完了後の前記第3の面における第5のプロファイルを測定するステップと、
前記位置決め完了後の前記第4の面における第6のプロファイルを測定するステップと、
測定した前記第1から第6のプロファイルに基づいて、前記隙間の大きさを算出するステップと、
算出した前記隙間の大きさに基づいて前記シムを製作するステップと、
前記隙間に前記シムを挿入して前記位置決めを行った状態で前記第1の部品と前記第2の部品を連結するステップと、
を有する構造体の製造方法。
【請求項2】
測定した前記第1から第6のプロファイルに基づいて、前記位置決め完了後の前記第1の合わせ面における第7のプロファイルと、前記位置決め完了後の前記第2の合わせ面における第8のプロファイルを算出し、
算出した前記第7及び第8の各プロファイルに基づいて、前記隙間の大きさを算出する請求項1記載の構造体の製造方法。
【請求項3】
測定した前記第3から第6のプロファイルに基づいて、前記位置決め完了後における前記第1の部品と前記第2の部品の各変形量を算出し、
算出した前記各変形量と、前記位置決め完了前に測定した前記第1及び第2の各プロファイルに基づいて、前記位置決め完了後の前記第1の合わせ面における第7のプロファイルと、前記位置決め完了後の前記第2の合わせ面における第8のプロファイルを算出する請求項2記載の構造体の製造方法。
【請求項4】
前記位置決め完了後における前記第1の合わせ面と、前記位置決め完了後における前記第2の合わせ面との間における距離を隙間ゲージで測定せずに、算出した前記隙間の大きさに基づいて前記シムを製作する請求項1記載の構造体の製造方法。
【請求項5】
ウェブを有する部品又はパネルからなる前記第1の部品と、ウェブを有する部品、パネル、補強部材又はフィッティングからなる前記第2の部品とを連結することによって前記構造体を製造する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
翼構造体等の航空機構造体は、部品の組立によって製作されるが、製造誤差等によって部品間にギャップが発生した場合には、ギャップを埋めるためのシムが挿入される(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。部品間に生じたギャップを埋めるためシムを製作するためには、製作すべきシムの形状を決定することが必要となる。そこで、多くの場合、部品間に生じたギャップを隙間ゲージで直接測定することによって、シムの形状が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-051751号公報
【特許文献2】特開2018-041439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、部品間に生じたギャップを隙間ゲージで測定しようとしても、部品同士を合わせる面の端部における隙間しか計測することができない。このため、部品同士を合わせる面の中央付近でギャップが膨らんでいる場合のように、部品の端部以外の部分においてギャップが膨らんでいても、ギャップが膨らんでいることを把握することができない。その結果、部品間に隙間が残ったり、シムの挿入後に隙間が発見された場合にはシムの再作が必要になったりするという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、部品の連結によって構造体を製作する場合において、部品間にギャップが生じた際に適切な形状のシムを製作できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る構造体の製造方法は、第1の部品と第2の部品との間に形成される隙間にシムを挿入して連結することによって、航空機、航空機部品、宇宙飛行体又は宇宙飛行体の部品からなる構造体を製造するものである。この製造方法は、前記第1の部品の、前記第2の部品との第1の合わせ面における第1のプロファイルを、前記第1の部品及び前記第2の部品の連結位置への前記第1の部品及び前記第2の部品の位置決め完了前に測定するステップと、前記第2の部品の、前記第1の部品との第2の合わせ面における第2のプロファイルを、前記位置決め完了前に測定するステップと、前記第1の部品の、前記位置決め完了後に測定することが可能な少なくとも一部の第3の面における第3のプロファイルを前記位置決め完了前に測定するステップと、前記第2の部品の、前記位置決め完了後に測定することが可能な少なくとも一部の第4の面における第4のプロファイルを前記位置決め完了前に測定するステップと、前記第1の合わせ面と前記第2の合わせ面を突き合わせて前記位置決めを行うステップと、前記位置決め完了後の前記第3の面における第5のプロファイルを測定するステップと、前記位置決め完了後の前記第4の面における第6のプロファイルを測定するステップと、測定した前記第1から第6のプロファイルに基づいて、前記隙間の大きさを算出するステップと、算出した前記隙間の大きさに基づいて前記シムを製作するステップと、前記隙間に前記シムを挿入して前記位置決めを行った状態で前記第1の部品と前記第2の部品を連結するステップとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る構造体の製造方法の流れを示すフローチャート。
【
図2】
図1に示す製造方法で製造される構造体の組立順序を概略的に説明する図。
【
図3】
図1に示す製造方法で製造される構造体の第1の例を示す斜視図。
【
図4】
図1に示す製造方法で製造される構造体の第2の例を示す斜視図。
【
図5】
図1に示す製造方法で製造される構造体の第3の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る構造体の製造方法について添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る構造体の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【0010】
図1に示す構造体の製造方法は、第1の部品と第2の部品との間に形成される隙間にシムを挿入して連結することによって、構造体を製造する場合に採用することができる。すなわち、構造体は、少なくとも第1の部品と第2の部品を組立てることによって製作され、第1の部品と第2の部品との間に形成される隙間にシムが挿入される。
【0011】
このような構造体の典型例としては、航空機、航空機部品、ロケット等の宇宙飛行体及び宇宙飛行体の部品が挙げられる。従って、航空機、航空機部品、宇宙飛行体又は宇宙飛行体の部品からなる構造体の製造方法として、
図1に示す製造方法を採用することができる。航空機は、固定翼機に限らず、ヘリコプタ、マルチコプタ、ドローン、空飛ぶくるま等の回転翼航空機であっても良い。
【0012】
図2は、
図1に示す製造方法で製造される構造体1の組立順序を概略的に説明する図である。尚、
図2において構造体1を構成する第1の部品2Aと、第2の部品2Bの変形量は強調して図示されている。
【0013】
図2(A)に示す第1の部品2Aと、第2の部品2Bを、それぞれ
図2(B)に示すように組立治具JA、JBに固定し、第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bを突き合わせて配置することができる。すなわち、第1の部品2Aと、第2の部品2Bを、第1の部品2Aと第2の部品2Bを組立てた後の位置に、それぞれ位置決めすることができる。
【0014】
尚、第1の部品2A及び第2の部品2Bの少なくとも一方を、組立治具JA、JBの代わりに、或いは組立治具JA、JBに加えて、クランプ等を用いて他方の部品2A、2Bに仮留めしても良い。従って、第1の部品2A及び第2の部品2Bの位置決めは、組立治具JA、JBに設けられたピンと位置決め孔や基準面等の位置決め構造に限らず、他方の部品2A、2Bに設けられた位置決め構造を利用して行うことができる。
【0015】
第1の部品2Aと、第2の部品2Bの位置決めが完了すると、
図2(B)に示すように第1の部品2Aの形状と、第2の部品2Bの形状が、それぞれ初期形状から変形する。すなわち、位置決め前における第1の部品2Aの形状と、位置決め後における第1の部品2Aの形状は互いに異なる。同様に、位置決め前における第2の部品2Bの形状と、位置決め後における第2の部品2Bの形状は互いに異なる。
【0016】
従って、位置決め後における第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと、位置決め後における第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bとの間には、変形後における第1の部品2Aの形状と、変形後における第2の部品2Bの形状に応じた隙間4が生じる。具体的には、変形後における第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと、変形後における第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bとの間における距離が、隙間4の大きさとなる。
【0017】
変形後における第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと、変形後における第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bとの間における距離は、位置ごとに同一とは限らない。このため、隙間4の大きさは、厚さが一定でない板状の空間の広さ、具体的には、第1の合わせ面3Aと第2の合わせ面3Bとの間における各位置の距離で表すことができる。
【0018】
次に、位置決めによる変形後における第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと、位置決めによる変形後における第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bとの間に生じた隙間4を埋めるためのシム5が、
図2(C)に示すように製作される。製作すべきシム5の形状は、隙間4の形状にフィットする形状とすることが適切である。従って、シム5の形状は、厚さが一定でない板状となる。
【0019】
但し、隙間ゲージで測定可能な隙間4の距離は、第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aの縁と、第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bの縁との間における隙間4の距離に限られる。このため、
図2(B)に示すように、第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aの縁と、第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bの縁との間における隙間4の距離が、内部における隙間4の距離よりも小さい場合には、内部における隙間4の距離を予測してシム5の形状を設計せざるを得ない。
【0020】
シム5が製作されると、
図2(C)に示すように第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと、第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bが一旦、引き離される。尚、
図2(C)に示す例では、組立治具JA、JBとともに第1の部品2A及び第2の部品2Bの一方又は双方を平行移動させることによって、第1の合わせ面3Aと第2の合わせ面3Bが互いに引き離されているが、第1の部品2A及び第2の部品2Bの一方又は双方を組立治具JA、JB又は他方の部品2A、2Bから取外すことによって、第1の合わせ面3Aと第2の合わせ面3Bを互いに引き離すようにしても良い。
【0021】
第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと、第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bを、少なくとも板状のシム5の最大厚さより長い距離だけ引き離すと、
図2(C)に示すように、隙間4の位置に合わせてシム5を配置することができる。例えば、第1の部品2A及び第2の部品2Bの一方が下方に配置される場合であれば、下方に配置された部品2A、2Bの上にシム5を載置することができる。
【0022】
次に
図2(D)に示すように再び第1の部品2Aと第2の部品2Bの位置決めが行われる。すなわち、シム5で隙間4を埋めた状態で、第1の部品2Aと第2の部品2Bの位置決めを行うことができる。その後、必要な穿孔を行い、ボルトやリベット等のファスナで第1の部品2Aと第2の部品2Bの連結を行うことによって構造体1を製造することができる。
【0023】
図2(A)、(B)、(C)及び(D)に示す手順で組立てられる構造体1を
図1に示す製造方法で製造することができる。
図1に示す製造方法は、
図2(B)に示すように、第1の部品2A及び第2の部品2Bの連結位置への第1の部品2A及び第2の部品2Bの位置決めが完了した後における隙間4の大きさを予測し、予測した隙間4の大きさに合わせて製作したシム5を挟んで
図2(D)に示すように第1の部品2Aと第2の部品2Bを連結する方法である。
【0024】
具体的には、まずステップS1において、第1の部品2Aの、第2の部品2Bとの第1の合わせ面3Aにおける第1のプロファイル(輪郭)と、第2の部品2Bの、第1の部品2Aとの第2の合わせ面3Bにおける第2のプロファイルが、第1の部品2A及び第2の部品2Bの連結位置への位置決め完了前にそれぞれ測定される。すなわち、第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aにおける第1のプロファイルと、第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bにおける第2のプロファイルが、それぞれ
図2(A)に示すような単品段階において測定される。
【0025】
加えて、第1の部品2Aの、
図2(B)に示すように位置決め完了後に測定することが可能な少なくとも一部の第3の面6Aにおける第3のプロファイルと、第2の部品2Bの、
図2(B)に示すように位置決め完了後に測定することが可能な少なくとも一部の第4の面6Bにおける第4のプロファイルが、第1の部品2A及び第2の部品2Bの連結位置への位置決め完了前にそれぞれ測定される。すなわち、第1の部品2Aの位置決め完了後に測定することが可能な第3の面6Aにおける第3のプロファイルと、第2の部品2Bの位置決め完了後に測定することが可能な第4の面6Bにおける第4のプロファイルも、それぞれ
図2(A)に示すような単品段階において測定される。
【0026】
第1の合わせ面3A、第2の合わせ面3B、第3の面6A及び第4の面6Bの各プロファイルは、公知の三次元測定機で測定することができる。接触式の三次元測定機としては、プローブを被測定物に接触させて表面のプロファイルを測定するものが代表的である。一方、非接触式の三次元測定機としては、レーザ光等の光を照射して被測定物の表面のプロファイルを測定するものが代表的である。第1の合わせ面3A、第2の合わせ面3B、第3の面6A及び第4の面6Bの各プロファイルは、三次元測定機で測定することによって、三次元の空間座標で定義される各面上における点群データとしてそれぞれ取得することができる。
【0027】
尚、組立治具JA、JBや第1の部品2A及び第2の部品2Bと三次元測定機との間に干渉が無ければ、第1の部品2A及び第2の部品2Bの一方の位置決めが完了した後において、第1の合わせ面3A、第2の合わせ面3B、第3の面6A及び第4の面6Bの少なくとも1つのプロファイルを三次元測定機で測定するようにしても良い。換言すれば、第1の部品2A及び第2の部品2B双方の位置決めが完全に完了する前において測定可能であれば、第1の合わせ面3A、第2の合わせ面3B、第3の面6A及び第4の面6Bの少なくとも1つのプロファイルを三次元測定機で測定することができる。具体例として、第1の部品2Aを組立治具JAにセットして位置決めした後、第1の部品2Aを移動させずに第2の部品2Bを位置決めする場合であれば、第1の部品2Aについては位置決め完了後に第1の合わせ面3A及び第3の面6Aの各プロファイルを測定する一方、第2の部品2Bについては位置決め前に第2の合わせ面3B及び第4の面6Bの各プロファイルを測定することができる。
【0028】
次に、ステップS2において、第1の部品2A及び第2の部品2Bの連結位置への位置決めが行われる。その結果、
図2(B)に示すように第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bが、互いに突き合わせられる。位置決めは、上述したように、組立治具JA、JB及び部品2A、2Bの少なくとも一方に設けられた位置決め構造を利用して行うことができる。
【0029】
第1の部品2A及び第2の部品2Bの位置決めが完了すると、第1の部品2Aと第2の部品2Bとの間における接触、第1の部品2A及び第2の部品2Bの組立治具JA、JBへの各取付け、一方の部品2A、2Bと他方の部品2A、2Bをセットするための組立治具JA、JBとの間における接触等によって第1の部品2A及び第2の部品2Bが変形する。そして、上述したように、
図2(B)に示すように、変形後における第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bとの間に隙間4が生じる。
【0030】
次に、ステップS3において、第1の合わせ面3Aが第2の合わせ面3Bと突き合わされて変形した状態の位置決め完了後における第1の部品2Aの第3の面6Aにおける第5のプロファイルと、第2の合わせ面3Bが第1の合わせ面3Aと突き合わされて変形した状態の位置決め完了後における第2の部品2Bの第4の面6Bにおける第6のプロファイルが、それぞれ三次元測定機で測定される。すなわち、第1の部品2Aの第3の面6Aと、第2の部品2Bの第4の面6Bについては、それぞれ位置決めに伴う第1の部品2A及び第2の部品2Bの変形前後において、各プロファイルが測定される。
【0031】
このように、位置決め完了前の第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aにおける第1のプロファイル、位置決め完了前の第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bにおける第2のプロファイル、位置決め完了前の第1の部品2Aの第3の面6Aにおける第3のプロファイル、位置決め完了前の第2の部品2Bの第4の面6Bにおける第4のプロファイル、位置決め完了後における第1の部品2Aの第3の面6Aにおける第5のプロファイル並びに位置決め完了後における第2の部品2Bの第4の面6Bにおける第6のプロファイルが測定されると、測定した第1から第6のプロファイルに基づいて、位置決め完了後の第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aにおける第7のプロファイルと、位置決め完了後の第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bにおける第8のプロファイルを算出することが可能となる、
【0032】
具体的には、ステップS4において、測定した第3から第6のプロファイルに基づいて、位置決め完了後における第1の部品2Aと第2の部品2Bの各変形量が算出される。すなわち、第1の部品2Aの第3の面6Aの変形前における第3のプロファイルと、第1の部品2Aの第3の面6Aの変形後における第5のプロファイルに基づいて、第1の部品2Aの変形量が算出される。同様に、第2の部品2Bの第4の面6Bの変形前における第4のプロファイルと、第2の部品2Bの第4の面6Bの変形後における第6のプロファイルに基づいて、第2の部品2Bの変形量が算出される。
【0033】
第1の部品2Aの変形量は、第1の部品2Aの第3の面6Aの変形後における第5のプロファイルを表す点群データから、第1の部品2Aの第3の面6Aの変形前における第3のプロファイルを表す点群データを減算する演算、すなわち位置ごとの引き算によって算出することができる。同様に、第2の部品2Bの変形量も、第2の部品2Bの第4の面6Bの変形後における第6のプロファイルを表す点群データから、第2の部品2Bの第4の面6Bの変形前における第4のプロファイルを表す点群データを減算する演算、すなわち位置ごとの引き算によって算出することができる。このため、第1の部品2Aの変形量も第2の部品2Bの変形量も位置ごとの変形量を表す点群データとして算出される。
【0034】
尚、第1の部品2A及び第2の部品2Bの位置決め完了後に干渉等によって三次元測定機で測定できない面や断面の変形前後におけるプロファイルが第1の部品2A及び第2の部品2Bの各変形量の算出に必要となる場合には、離散的なプロファイルに基づく外挿や内挿等の補間によって当該プロファイルを算出することができる。或いは、第3から第6のプロファイルに基づいて第1の部品2A及び第2の部品2Bの各変形量を離散的に算出した後、算出した離散的な変形量に基づく補間によって連続的かつ完全な変形量を算出するようにしても良い。
【0035】
また、第1の部品2A及び第2の部品2Bの形状が複雑である場合には、有限要素法(FEM:Finite Element Method)等による公知の解析で、位置決め完了後における第1の部品2Aと第2の部品2Bの各変形量を算出するようにしても良い。その場合には、位置決め完了後における第1の部品2Aと第2の部品2Bの各変形量を算出するための計算に、第1の部品2Aの変形前における第1の合わせ面3Aの第1のプロファイルと、第2の部品2Bの変形前における第2の合わせ面3Bの第2のプロファイルを用いても良い。
【0036】
次に、ステップS5において、第1の部品2A及び第2の部品2Bの各変形量と、位置決め完了前に測定した第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aにおける第1のプロファイル及び第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bにおける第2のプロファイルに基づいて、位置決め完了後の第1の合わせ面3Aにおける第7のプロファイルと、位置決め完了後の第2の合わせ面3Bにおける第8のプロファイルが算出される。
【0037】
位置決め完了後の第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aにおける第7のプロファイルは、位置決め完了前に測定した第1の合わせ面3Aにおける第1のプロファイルを表す点群データに第1の部品2Aの変形量を表す点群データを加算することによって算出することができる。同様に、位置決め完了後の第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bにおける第8のプロファイルは、位置決め完了前に測定した第2の合わせ面3Bにおける第2のプロファイルを表す点群データに第2の部品2Bの変形量を表す点群データを加算することによって算出することができる。
【0038】
尚、第1の部品2A及び第2の部品2Bの位置決め完了後に干渉等によって三次元測定機で測定できない面や断面の変形前後におけるプロファイルが第1の部品2A及び第2の部品2Bの各変形量の算出に必要となる場合において、補間処理の対象を、第1の部品2Aの第3の面6A及び第2の部品2Bの第4の面6Bの第3から第6までの各プロファイルとしたり、第1の部品2A及び第2の部品2Bの各変形量としたりせずに、位置決め完了後の第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aにおける第7のプロファイル及び位置決め完了後の第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bにおける第8のプロファイルとしても良い。
【0039】
次に、ステップS6において、位置決め完了後の第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aにおける第7のプロファイルと、位置決め完了後の第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bにおける第8のプロファイルに基づいて、位置決め完了後の第1の部品2Aと位置決め完了後の第2の部品2Bとの間における隙間4の大きさが算出される。
【0040】
隙間4の大きさは、位置決め完了後の第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aにおける第7のプロファイルを表す点群データと、位置決め完了後の第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bにおける第8のプロファイルを表す点群データとの間におけるサブトラクション処理によって算出することができる。つまり、位置決め完了後の第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと、位置決め完了後の第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bとの間における位置ごとの距離として、隙間4の大きさを算出することができる。
【0041】
このように、位置決め完了前の第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aにおける第1のプロファイル、位置決め完了前の第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bにおける第2のプロファイル、位置決め完了前の第1の部品2Aの第3の面6Aにおける第3のプロファイル、位置決め完了前の第2の部品2Bの第4の面6Bにおける第4のプロファイル、位置決め完了後における第1の部品2Aの第3の面6Aにおける第5のプロファイル並びに位置決め完了後における第2の部品2Bの第4の面6Bにおける第6のプロファイルを測定すれば、測定した第1から第6のプロファイルに基づいて、隙間4の大きさを算出することができる。
【0042】
尚、第1の部品2A及び第2の部品2Bの位置決め完了後に干渉等によって三次元測定機で測定できない面や断面の変形前後におけるプロファイルが第1の部品2A及び第2の部品2Bの各変形量の算出に必要となる場合において、補間処理の対象を、隙間4の大きさとしても良い。その場合には、隙間4の大きさを算出するための第1の部品2A及び第2の部品2Bの各変形量や各プロファイル等の中間データを離散的なデータとして扱うことができる。
【0043】
また、上述したようにFEM解析等の解析処理を行う場合には、解析処理の出力データを第1の部品2Aと第2の部品2Bの各変形量とせずに、位置決め完了後の第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aにおける第7のプロファイル及び位置決め完了後の第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bにおける第8のプロファイルとしたり、隙間4の大きさとしたりしても良い。
【0044】
次に、ステップS7において、算出した隙間4の大きさに基づいてシム5が製作される。すなわち、算出した隙間4の形状にフィットするようにシム5の形状が設計され、算出した隙間4の形状にフィットする形状を有するシム5が製作される。
【0045】
シム5の材質は、通常構造体1の設計要求として定められており、第1の部品2A及び第2の部品2Bの材質と一致するとは限らない。シム5は、アルミニウム等の金属又はガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics)等の複合材よも呼ばれる繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)で構成される場合が多い。尚、第1の部品2A及び第2の部品2Bの材質も、アルミニウム等の金属又はFRPで構成される場合が多い。
【0046】
シム5は、算出した隙間4の大きさに対応する設計情報に基づいて、機械加工による削り出しや研磨など材質に応じた所望の製作方法で製作することができる。すなわち、位置決め完了後における第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと、位置決め完了後における第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bとの間における距離を必ずしも隙間ゲージで測定せずに、算出した隙間4の大きさのみに基づいてシム5を製作することができる。但し、算出した隙間4の大きさの精度を確認するために位置決め完了後における第1の部品2Aの第1の合わせ面3Aと、位置決め完了後における第2の部品2Bの第2の合わせ面3Bとの間における距離を隙間ゲージで測定し、必要に応じて算出した隙間4の大きさを隙間ゲージで測定した距離に合わせてオフセット補正しても良い。
【0047】
次に、ステップS8において、第1の部品2Aと第2の部品2Bとの間における隙間4にシム5を挿入して位置決めを行った状態で第1の部品2Aと第2の部品2Bが連結される。具体的には、
図2(C)に示すように第1の部品2Aと第2の部品2Bとの間にシム5を挿入できるように、一旦、第1の部品2A及び第2の部品2Bの少なくとも一方が他方から引き離される。その後、シム5を隙間4となる位置に配置した状態で再び第1の部品2Aと第2の部品2Bの位置決めを行うと、
図2(D)に示すように隙間4にシム5を挿入した状態で第1の部品2Aと第2の部品2Bの位置決めを行うことができる。
【0048】
第1の部品2Aと第2の部品2Bの位置決めが完了すると、ハンドドリル等で必要な穿孔を行い、ボルトやリベット等のファスナで第1の部品2Aと第2の部品2Bが連結される。そして、第1の部品2A及び第2の部品2Bが各連結位置においてファスナで連結されると、構造体1の組立作業が完了する。すなわち、構造体1を製作することができる。
【0049】
次に、
図1に示す製造方法で製造することが可能な構造体1の具体例について説明する。
【0050】
図3は、
図1に示す製造方法で製造される構造体1の第1の例を示す斜視図である。
【0051】
図3に例示されるように、ウェブを有する部品又はパネルを第1の部品2Aとし、ストリンガ、スパー、リブ、フレーム又はスティフナ等の長尺構造を有する補強部材からなる第2の部品2Bをウェブ又はパネルにファスナで接合することによって構造体1を組立てる場合に、
図1に示す製造方法を採用することができる。尚、ウェブを有する部品はスパー等の補強部材であっても良い。従って、パネルを補強するための補強部材のウェブに別の補強部材を連結することによって構造体1を組立てる場合においても、
図1に示す製造方法を採用することができる。もちろん、補強部材の横断面の形状は任意である。
【0052】
この場合、パネル又はウェブの表面と補強部材の合わせ面との間に生じる隙間4がサイズの算出対象及びシム5の挿入対象となる。また、
図3中の一点鎖線は、パネル又はウェブと補強部材を、組立治具JA、JBやパネル又はウェブの表面を利用して位置決めすべき直交3軸方向における各面を示している。
【0053】
図4は、
図1に示す製造方法で製造される構造体1の第2の例を示す斜視図である。
【0054】
図4に例示されるようにウェブを有する部品又はパネルからなる第1の部品2Aとし、フィッティング(取付け金具)からなる第2の部品2Bをウェブ又はパネルにファスナで接合することによって構造体1を組立てる場合においても、
図1に示す製造方法を採用することができる。
【0055】
この場合、パネル又はウェブの表面とフィッティングの取付け面との間に生じる隙間4がサイズの算出対象及びシム5の挿入対象となる。また、
図4中の一点鎖線は、パネル又はウェブとフィッティングを、位置決めピンを含む組立治具JA、JBやパネル又はウェブの表面を利用して位置決めすべき直交3軸方向における各面を示している。
【0056】
図5は、
図1に示す製造方法で製造される構造体1の第3の例を示す斜視図である。
【0057】
図5に例示されるようにウェブを有する部品又はパネルを第1の部品2Aとする一方、別のウェブを有する部品又はパネルを第2の部品2Bとし、2枚のウェブ又はパネル間をファスナで接合することによって構造体1を組立てる場合においても、
図1に示す製造方法を採用することができる。
【0058】
この場合、2枚のパネル又はウェブの表面間に生じる隙間4がサイズの算出対象及びシム5の挿入対象となる。また、
図5中の一点鎖線は、2枚のパネル又はウェブを、組立治具JA、JB等を利用して位置決めすべき直交3軸方向における各面を示している。
【0059】
以上の構造体1の製造方法は、構造体1を構成する第1の部品2Aと第2の部品2Bの位置決めに伴う変形前後において測定可能な面のプロファイルを測定し、測定したプロファイルに基づいて位置決め後の第1の部品2Aと第2の部品2Bの間に生じる隙間4のサイズを算出するようにしたものである。
【0060】
(効果)
上述した構造体1の製造方法によれば、隙間ゲージでは従来測定することが困難であった第1の部品2Aと第2の部品2Bの間に生じる隙間4全体のサイズを高精度に取得することができる。このため、隙間4にフィットする適切な形状を有するシム5を製作することが可能となる。その結果、構造体の内部に僅かな空隙が残存することによる構造体の品質低下や、隙間にフィットしないシムを製作した場合におけるシムの作り直しに伴う構造体の製造遅延を回避することができる。
【0061】
加えて、隙間ゲージを用いた第1の部品2Aと第2の部品2Bの縁部分における隙間4の測定を不要にすることができる。このため、隙間ゲージで隙間を測定できるようにするための種々の制約を無くすことができる。具体例として、隙間ゲージで隙間を測定できるようにするための、干渉回避を考慮した組立治具等の設計を不要にすることができる。
【0062】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0063】
1 構造体
2A 第1の部品
2B 第2の部品
3A 第1の合わせ面
3B 第2の合わせ面
4 隙間
5 シム
6A 第3の面
6B 第4の面
JA、JB 組立治具