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特開2024-117921作業機械を含むシステムおよび作業機械の負荷状態推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117921
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】作業機械を含むシステムおよび作業機械の負荷状態推定方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240823BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240823BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
E02F9/26 B
G01M99/00 Z
G01L5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024016
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 祐希
(72)【発明者】
【氏名】中谷 勇起
(72)【発明者】
【氏名】笠岡 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】杉原 伸泰
【テーマコード(参考)】
2D015
2F051
2G024
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2F051AA01
2F051AB09
2F051BA07
2G024AD17
2G024BA12
2G024CA04
2G024CA27
2G024DA28
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】シンプルな装置構成にて作業機全体の変形を把握できる作業機械を含むシステムおよび作業機械の負荷状態推定方法を提供する。
【解決手段】作業機2は、作業機械本体1に取り付けられている。複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、仮想の平面PSと交差する作業機2の部分に沿って配置されている。コントローラ20は、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dによって検出された歪みデータに基づいて作業機2の負荷状態を推定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、
仮想の平面と交差する前記作業機の部分に沿って配置された複数の歪みセンサと、
前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の負荷状態を推定するコントローラと、を備えた、作業機械を含むシステム。
【請求項2】
作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、
前記作業機の少なくとも4箇所に配置された複数の歪みセンサと、
前記複数の歪みセンサによって検出された前記少なくとも4箇所の歪みデータに基づいて前記作業機の負荷状態を推定するコントローラと、を備えた、作業機械を含むシステム。
【請求項3】
前記作業機は、ブームまたはアームであり、
前記作業機の負荷状態は、前記作業機の負荷モードを含み、
前記負荷モードは、少なくとも掘削を含む、請求項1または請求項2に記載の作業機械を含むシステム。
【請求項4】
前記作業機械は、旋回体を含み、
前記作業機の負荷状態は、前記作業機の負荷モードを含み、
前記負荷モードは、少なくとも横押しおよび伸張横押しを含む、請求項1または請求項2に記載の作業機械を含むシステム。
【請求項5】
前記作業機は、ブームまたはアームであり、
前記作業機の負荷状態は、前記作業機の応力を含み、
前記コントローラは、前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の任意の箇所の応力を推定する、請求項1または請求項2に記載の作業機械を含むシステム。
【請求項6】
前記作業機は、ブームまたはアームであり、
前記複数の歪みセンサは、前記作業機の少なくとも3つの角部に配置されている、請求項1に記載の作業機械を含むシステム。
【請求項7】
前記作業機は、ブームまたはアームであり、
前記複数の歪みセンサは、互いに異なる少なくとも2つの面に配置されている、請求項2に記載の作業機械を含むシステム。
【請求項8】
前記作業機は、ブームまたはアームであり、
前記仮想の平面は、前記作業機の長手方向の中心よりも前記作業機械本体の近くに位置する、請求項1に記載の作業機械を含むシステム。
【請求項9】
表示装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の被害量を算出し、前記被害量の累積値から予測される前記作業機の寿命を前記表示装置に表示する、請求項1または請求項2に記載の作業機械を含むシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、推定した前記応力が所定の閾値より大きい場合に警報信号を出力する、請求項5に記載の作業機械を含むシステム。
【請求項11】
作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、
仮想の平面と交差する前記作業機の部分に沿って配置された複数の歪みセンサと、
表示装置と、
前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の負荷モードを判定し、かつ前記作業機の任意の箇所における応力を推定し、推定された前記応力が所定の閾値より大きい場合に、推定された前記応力が前記所定の閾値より大きいときの負荷モードと前記作業機の部位とを前記表示装置に表示するコントローラと、を備えた、作業機械を含むシステム。
【請求項12】
前記複数の歪みセンサの各々は、歪みゲージと、ブリッジ回路とを有し、
前記歪みゲージおよび前記ブリッジ回路は半導体デバイスにより構成されている、請求項1、請求項2および請求項11のいずれか1項に記載の作業機械を含むシステム。
【請求項13】
作業機械本体と、前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、を有する作業機械の負荷状態推定方法であって、
仮想の平面と交差する前記作業機の部分に沿って複数の歪みセンサを配置するステップと、
前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の負荷状態を推定するステップと、を備えた、作業機械の負荷状態推定方法。
【請求項14】
作業機械本体と、前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、を有する作業機械の負荷状態推定方法であって、
前記作業機の少なくとも4箇所に複数の歪みセンサを配置するステップと、
前記複数の歪みセンサによって検出された前記少なくとも4箇所の歪みデータに基づいて前記作業機の負荷状態を推定するステップと、を備えた、作業機械の負荷状態推定方法。
【請求項15】
作業機械本体と、前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、表示装置と、を有する作業機械の負荷状態推定方法であって、
仮想の平面と交差する前記作業機の部分に沿って複数の歪みセンサを配置するステップと、
前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の負荷モードを判定するステップと、
前記作業機の任意の箇所における応力を推定するステップと、
推定された前記応力が所定の閾値より大きい場合に、推定された前記応力が前記所定の閾値より大きいときの負荷モードと前記作業機の部位とを前記表示装置に表示するステップと、を備えた、作業機械の負荷状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械を含むシステムおよび作業機械の負荷状態推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機の寿命予測システムは、たとえば特開2022-124929号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1においては、稼働検出装置が検出した稼働情報に基づいて寿命予測対象部位の歪みが演算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-124929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
稼働中の作業機における多数の部位にて応力を測定するためには、多数の歪みゲージが必要になる。しかしながら多数の歪みゲージを取り付けると配線が煩雑となる。また歪みを長期間モニタリングするには大掛かりな装置が必要になる。
【0005】
本開示の目的は、シンプルな装置構成にて作業機全体の変形を把握できる作業機械を含むシステムおよび作業機械の負荷状態推定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の作業機械を含むシステムは、作業機械本体と、作業機と、複数の歪みセンサと、コントローラとを備える。作業機は、作業機械本体に取り付けられている。複数の歪みセンサは、仮想の平面と交差する作業機の部分に沿って配置されている。コントローラは、複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の負荷状態を推定する。
【0007】
本開示の他の作業機械を含むシステムは、作業機械本体と、作業機と、複数の歪みセンサと、コントローラとを備える。作業機は、作業機械本体に取り付けられている。複数の歪みセンサは、作業機の少なくとも4箇所に配置されている。コントローラは、複数の歪みセンサによって検出された少なくとも4箇所の歪みデータに基づいて作業機の負荷状態を推定する。
【0008】
本開示のさらに他の作業機械を含むシステムは、作業機械本体と、作業機と、複数の歪みセンサと、表示装置と、コントローラとを備える。作業機は、作業機械本体に取り付けられている。複数の歪みセンサは、仮想の平面と交差する作業機の部分に沿って配置されている。コントローラは、複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて作業機の負荷モードを判定し、かつ作業機の任意の箇所における応力を推定し、推定された応力が所定の閾値より大きい場合に、推定された応力が所定の閾値より大きいときの負荷モードと作業機の部位とを表示装置に表示する。
【0009】
本開示の一の作業機械の負荷状態推定方法は、作業機械本体と、作業機械本体に取り付けられた作業機とを有する作業機械の負荷状態推定方法であって、以下のステップを備える。
【0010】
仮想の平面と交差する作業機の部分に沿って複数の歪みセンサが配置される。複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて作業機の負荷状態が推定される。
【0011】
本開示の他の作業機械の負荷状態推定方法は、作業機械本体と、作業機械本体に取り付けられた作業機とを有する作業機械の負荷状態推定方法であって、以下のステップを備える。
【0012】
作業機の少なくとも4箇所に複数の歪みセンサが配置される。複数の歪みセンサによって検出された少なくとも4箇所の歪みデータに基づいて作業機の負荷状態が推定される。
【0013】
本開示のさらに他の作業機械の負荷状態推定方法は、作業機械本体と、作業機械本体に取り付けられた作業機と、表示装置とを有する作業機械の負荷状態推定方法であって、以下のステップを備える。
【0014】
仮想の平面と交差する作業機の部分に沿って複数の歪みセンサが配置される。複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて作業機の負荷モードが判定される。作業機の任意の箇所における応力が推定される。推定された応力が所定の閾値より大きい場合に、推定された応力が所定の閾値より大きいときの負荷モードと作業機の部位とが表示装置に表示される。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、シンプルな装置構成にて作業機全体の変形を把握できる作業機械を含むシステムおよび作業機械の負荷状態推定方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施形態における作業機械の一例として油圧ショベルの構成を示す図である。
図2図1に示す油圧ショベルの作業機の一例としてブームの構成を示す斜視図である。
図3】仮想の平面と交差するブームの断面に歪みセンサが配置された状態を示す断面図である。
図4図1に示される歪みセンサの構成を示す図である。
図5図1に示されるコントローラの機能ブロックを示す図である。
図6】本開示の一実施形態における作業機械の負荷状態推定方法を示すフロー図である。
図7】作業機の負荷モードと作業機に作用する応力とを説明するための図である。
図8図7における負荷モードの判定方法を説明するためのフロー図である。
図9】作業機に交差する仮想平面を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0019】
以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、図1に示す運転室4内の運転席4Sに着座したオペレータを基準とした方向である。
【0020】
<作業機械の構成>
【0021】
作業機械の一例として油圧ショベルの構成について図1を用いて説明する。
【0022】
図1は、本開示の一実施形態における作業機械の一例として油圧ショベルの構成を示す図である。図1に示されるように、油圧ショベル10は、作業機械本体1と、油圧により作動する作業機2とを有している。作業機械本体1は、旋回体3と、走行体5とを有している。
【0023】
走行体5は、一対の履帯5Crと、走行モータ5Mとを有している。油圧ショベル10は、履帯5Crの回転により走行可能である。走行モータ5Mは、走行体5の駆動源として設けられている。
【0024】
旋回体3は、走行体5の上に配置され、かつ走行体5により支持されている。旋回体3は、旋回モータ(図示せず)により旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回可能である。旋回軸RXは、旋回体3の旋回中心となる仮想の直線である。
【0025】
旋回体3は、運転室4(キャブ)を有している。運転室4内には、運転者が着座する運転席4Sが設けられている。運転者(乗員)は、運転室4に搭乗して、作業機2の操作、走行体5に対する旋回体3の旋回操作、および走行体5による油圧ショベル10の走行操作が可能である。
【0026】
作業機2は、作業機械本体1に取り付けられている。作業機2は、旋回体3に支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有している。作業機2は、ブームシリンダ9aと、アームシリンダ9bと、バケットシリンダ9cとをさらに有している。
【0027】
ブーム6は、作業機械本体1に回動可能に接続されている。具体的にはブーム6の基端部は、ブームフートピンBFを支点として旋回体3に回動可能に接続されている。アーム7は、ブーム6に回動可能に接続されている。具体的にはアーム7の基端部は、ブームトップピンBTを支点としてブーム6の先端部に回動可能に接続されている。バケット8は、アーム7に回転可能に接続されている。具体的にはバケット8の基端部は、アームトップピンATを支点としてアーム7の先端部に回動可能に接続されている。
【0028】
ブーム6は、ブームシリンダ9aにより作業機械本体1に対して駆動可能である。この駆動により、ブーム6は、ブームフートピンBFを支点として旋回体3に対して上下方向に回動可能である。
【0029】
アーム7は、アームシリンダ9bによりブーム6に対して駆動可能である。この駆動により、アーム7は、ブームトップピンBTを支点としてブーム6に対して上下方向または前後方向に回動可能である。
【0030】
バケット8は、バケットシリンダ9cによりアーム7に対して駆動可能である。この駆動により、バケット8は、アームトップピンATを支点としてアーム7に対して上下方向に回動可能である。
【0031】
<作業機械の負荷状態推定システム>
【0032】
次に、作業機械の負荷状態推定システムについて図1図5を用いて説明する。
【0033】
図2は、図1に示す油圧ショベルにおける作業機の一例としてブームの構成を示す斜視図である。図3は、仮想の平面と交差するブームの断面に歪みセンサが配置された状態を示す断面図である。図4は、図1に示される歪みセンサの構成を示す図である。図5は、図1に示されたコントローラの機能ブロックを示す図である。
【0034】
図1に示されるように、本実施形態における作業機械10の負荷状態推定システムは、たとえば作業機械10における作業機2の負荷状態を推定する。負荷状態を推定される作業機2は、たとえば油圧ショベル10の作業機2であって、ブーム6またはアーム7である。また作業機2の負荷状態は、作業機2の応力と負荷モードとを含む。
【0035】
なお負荷状態を推定される作業機2は、油圧ショベル10以外のホイールローダなどの他の作業機械の作業機であってもよい。以下においては負荷状態が推定される作業機2の一例としてブーム6について説明する。
【0036】
本実施形態における作業機械10の負荷状態推定システムは、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dと、コントローラ20と、出力装置30とを有している。
【0037】
複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、たとえば4個の歪みセンサである。複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、負荷状態を推定したい作業機2に取り付けられている。複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、たとえばブーム6に取り付けられている。複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、たとえばアーム7に取り付けられていてもよい。
【0038】
図2に示されるように、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、仮想の平面PSに交差するブーム6の部分に沿って配置されている。仮想の平面PSは、ブーム6の長手方向Lの中心よりも作業機械本体1の近くに位置している。仮想の平面PSは、ブームフートピン用孔BFHとブームトップピン用孔BTHとを繋ぐ仮想の直線VL1の中心Cを通り、かつブーム6の側面視において仮想の直線VL1に対して直交する仮想の直線VL2よりもブームフートピン用孔BFHの近くに位置している。また仮想の平面PSは、ブームシリンダ取付孔BCHよりもブームフートピン用孔BFHの近くに位置している。
【0039】
図3に示されるように、ブーム6は、2枚の横板6a、6bと、2枚の縦板6c、6dとを有している。2枚の横板6a、6bは、下板6aと、上板6bとを含んでいる。2枚の縦板6c、6dは、左板6cと、右板6dとを含んでいる。2枚の横板6a、6bは互いに略平行に配置されている。2枚の縦板6c、6dは互いに略平行に配置されている。2枚の縦板6c、6dは、たとえば2枚の横板6a、6bの間に挟まれている。
【0040】
図3には、仮想の平面PSと交差するブーム6の断面が示されている。ブーム6は、断面において、2枚の横板6a、6bと2枚の縦板6c、6dとにより矩形枠状の断面形状を有している。ブーム6の矩形枠状の断面形状は、4つの角部CO1、CO2、CO3、CO4を有している。
【0041】
複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、ブーム6の矩形枠の外周側に取り付けられている。複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、矩形枠の内周側に取り付けられていてもよい。歪みセンサ11a、11bは、たとえば下板6aに取付けられている。歪みセンサ11c、11dは、たとえば上板6bに取付けられている。歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、縦板6c、6dに取付けられていてもよい。複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dの各々は、ブーム6にたとえば接着剤により固定されている。
【0042】
複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、ブーム6の4つの角部CO1、CO2、CO3、CO4のうち少なくとも3つの角部CO1、CO2、CO3に配置されている。角部とは、横板と縦板との接続部から最も近くに位置する角までの領域と、当該接続部の横板または縦板を挟んだ対面領域から最も近くに位置する角までの領域とを含む。
【0043】
このため角部CO1は、下板6aと左板6cの接続部CP1から角C1までの領域R1Aと、接続部CP1の対面領域から角C1までの領域R1Bとを含む。角部CO2は、下板6aと右板6dの接続部CP2から角C2までの領域R2Aと、接続部CP2の対面領域から角C2までの領域R2Bとを含む。角部CO3は、上板6bと左板6cの接続部CP3から角C3までの領域R3Aと、接続部CP3の対面領域から角C3までの領域R3Bとを含む。角部CO4は、上板6bと右板6dの接続部CP4から角C4までの領域R4Aと、接続部CP4の対面領域から角C4までの領域R4Bとを含む。なお図4において角部CO1、CO2、CO3、CO4は太線で表わされている。
【0044】
本実施形態においては、歪みセンサ11aは角部CO1に配置されている。歪みセンサ11bは角部CO2に配置されている。歪みセンサ11cは角部CO3に配置されている。歪みセンサ11dは角部CO3と角部CO4との間に配置されている。歪みセンサ11dは、たとえば上板6bの幅方向の中央部に配置されている。
【0045】
複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、互いに異なる少なくとも2つの面に配置されている。歪みセンサ11a、11bは下板6aの外周側の面に配置され、歪みセンサ11c、11dは上板6bの外周側の面に配置されている。
【0046】
歪みセンサ11a、11bは、たとえば下板6aの内周側の面に配置されていてもよい。歪みセンサ11c、11dは、たとえば上板6bの内周側の面に配置されていてもよい。
【0047】
図4に示されるように、歪みセンサ11a、11b、11c、11dの各々は、歪みゲージ12と、ブリッジ回路13と、歪みアンプ14とを有している。歪みゲージ12は作業機2(たとえばブーム6)に接続され、作業機2とともに伸縮する。歪みゲージ12が伸縮することにより歪みゲージ12の金属線が伸縮し、その金属線の断面積が変化することにより金属線の電気抵抗が変化する。歪みセンサは金属線の電気抵抗の変化を測定することにより歪みを検出する。
【0048】
ブリッジ回路13は、歪みゲージ12の金属線における電気抵抗を正確に測定するために設けられている。ブリッジ回路13は、金属線の電気抵抗の変化を電圧の変化に置き換える。歪みアンプ14は、ブリッジ回路13によって電気抵抗から置き換えられた電圧が小さいため、その電圧を増幅するために設けられている。
【0049】
歪みセンサ11a、11b、11c、11dの各々における少なくとも歪みゲージ12およびブリッジ回路13は、半導体デバイスにより構成されている。歪みゲージ12およびブリッジ回路13は、歪みゲージ12およびブリッジ回路13の双方を含む単一の半導体デバイスにより構成されていてもよく、互いに別々の半導体デバイスにより構成されていてもよい。また歪みアンプ14が半導体デバイスにより構成されていてもよい。また歪みアンプ14は、歪みゲージ12およびブリッジ回路13とともに同じ半導体デバイスに設けられていてもよく、また歪みゲージ12およびブリッジ回路13とは別の半導体デバイスに設けられていてもよい。
【0050】
図5に示されるように、コントローラ20は、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dにより検出された歪みデータに基づいて作業機2の負荷状態を推定する。コントローラ20は、ブーム6の少なくとも4箇所の歪みデータに基づいて作業機2の負荷状態を推定する。
【0051】
コントローラ20は、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dにより検出された歪みデータに基づいて作業機2の任意の箇所の応力を推定する。
【0052】
コントローラ20は、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dによって検出された歪みデータに基づいて作業機2の被害量を算出する。コントローラ20は、その被害量の累積値から予測される作業機2の寿命を表示装置31に表示する。
【0053】
コントローラ20は、推定した応力が所定の閾値より大きい場合に警報信号を報知装置32へ出力する。
【0054】
コントローラ20は、プロセッサと、メインメモリと、ストレージとを含む。プロセッサはたとえばCPU(Central Processing Unit)などである。メインメモリは、たとえばROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。コントローラ20は、ストレージに記憶されているプログラムを読み出してメインメモリに展開し、プログラムに従って所定の処理を実行する。
【0055】
コントローラ20および出力装置30の各々は、油圧ショベル10に搭載されていてもよく、油圧ショベル10の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ20および出力装置30の各々が油圧ショベル10の外部に離れて配置されている場合、コントローラ20および出力装置30の各々は、歪みセンサ11a、11b、11c、11dなどと無線により接続されていてもよい。コントローラ20は、油圧ショベル10から離れたサーバに格納されていてもよい。また出力装置30が油圧ショベル10から離れていることにより、管理者は油圧ショベル10から離れた遠隔地で表示装置31を確認でき、報知装置32による報知情報を認識することができる。出力装置30が油圧ショベル10に搭載されている場合、油圧ショベル10に搭乗したユーザは油圧ショベル10に搭載された表示装置31を確認でき、報知装置32による報知情報を認識することができる。コントローラ20および出力装置30の少なくとも一方は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータなどの携帯情報端末に搭載されていてもよい。
【0056】
コントローラ20は、歪み取得部21と、負荷状態推定部22と、被害量算出部23と、寿命予測部24と、記憶部25と、出力装置制御部26と、応力判定部27とを有している。歪み取得部21は、歪みセンサ11a、11b、11c、11dによって検出された歪みデータを取得する。歪み取得部21は、取得した歪みデータを負荷状態推定部22ヘ出力する。
【0057】
負荷状態推定部22は、応力推定部22aと、負荷モード判定部22bとを有している。応力推定部22aは、取得した歪みデータに基づいて作業機2の任意の箇所の応力を推定する。応力推定部22aは、応力を推定する際に、記憶部25に記憶された、作業機2の各箇所毎の応力分布を示すデータを参照する。応力推定部22aは、この応力分布を示すデータを参照することにより、歪みセンサ11a、11b、11c、11dにより検出された歪みデータに基づいて作業機2全体の応力分布を推定することができる。また応力推定部22aは、作業機2のクリティカル部の応力値を推定することもできる。作業機2のクリティカル部とは、作業機2の部位のうち最も亀裂が発生する部位であり、通常は溶接部が該当する。応力推定部22aは、推定した応力を示す信号を被害量算出部23と応力判定部27とへ出力する。
【0058】
負荷モード判定部22bは、取得した歪みデータに基づいて作業機2の負荷モードを判定する。負荷モード判定部22bは、負荷モードを判定する際に、記憶部25に記憶された所定値を参照する。負荷モード判定部22bは、判定した負荷モードを示す信号を出力装置制御部26へ出力する。
【0059】
被害量算出部23は、取得した応力を示す信号に基づいて作業機の被害量を算出する。被害量の算出は、応力値からレインフロー法を用いて算出される。被害量算出部23は、算出した被害量を示す信号を寿命予測部24へ出力する。
【0060】
寿命予測部24は、取得した被害量に基づいて作業機2の寿命を予測する。寿命予測部24は、被害量の累積値から作業機2の寿命を予測する。寿命予測部24は、予測した寿命を示す信号を出力装置制御部26へ出力する。
【0061】
応力判定部27は、取得した応力が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。応力判定部27は、この判定をする際、記憶部25に記憶された所定の閾値を参照する。応力判定部27は、判定結果を示す信号を出力装置制御部26へ出力する。
【0062】
出力装置制御部26は、取得した信号に基づいて出力装置30に制御指令を出力することにより出力装置30を制御する。出力装置制御部26は、寿命予測部24から取得した寿命を表示装置31にて表示するよう出力装置30を制御する。出力装置制御部26は、応力推定部22aにて推定された応力が所定の閾値よりも大きいとの判定結果を応力判定部27から取得した場合、警報信号を出力装置30へ出力する。この警報信号に基づいて出力装置30の報知装置32は警報を発する。
【0063】
また出力装置制御部26は、応力推定部22aにて推定された応力が所定の閾値よりも大きいとの判定結果を応力判定部27から取得した場合、推定された応力が所定の閾値より大きいときの負荷モードと、推定された応力が所定の閾値より大きくなる作業機2の部位とを表示装置31てに表示するよう制御する。
【0064】
<作業機械の負荷状態推定方法>
【0065】
次に、本実施形態における作業機械の負荷状態推定方法について図5および図6を用いて説明する。
【0066】
図6は、本開示の一実施形態における作業機械の負荷状態推定方法を示すフロー図である。図5および図6に示されるように、本実施形態においては、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dにより作業機2(たとえばブーム6)の歪みが検出される(ステップS1:図6)。コントローラ20の歪み取得部21は、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dにより検出されたブーム6の歪みデータを取得する(ステップS2:図6)。
【0067】
コントローラ20の負荷状態推定部22は、取得した歪みデータに基づいてブーム6の負荷状態を推定する。作業機2の負荷状態は、作業機2の応力と、作業機2の負荷モードとを含む。作業機2の応力はコントローラ20の応力推定部22aにより推定され(ステップS3:図6)、作業機2の負荷モードはコントローラ20の負荷モード判定部22bにより判定される(ステップS10:図6)。
【0068】
コントローラ20の応力推定部22aは、取得した歪みデータに基づいて作業機2の任意の箇所の応力を推定する。応力推定部22aは、応力を推定する際に、記憶部25に記憶された、作業機2の各箇所毎の応力分布を示すデータを参照する。これにより作業機2のクリティカル部の応力値が推定される(ステップS3:図6)。応力推定部22aは、推定した応力を示す信号を被害量算出部23と応力判定部27とへ出力する。
【0069】
コントローラ20の負荷モード判定部22bは、歪み取得部21から取得した歪みデータに基づいて作業機2の負荷モードを判定する(ステップS10:図6)。負荷モード判定部22bは、負荷モードを判定する際に、後述する図8のフローにしたがって判定する。負荷モード判定部22bは、その判定の際に記憶部25に記憶された所定値を参照する。負荷モード判定部22bは、判定した負荷モードを示す信号を出力装置制御部26へ出力する。
【0070】
コントローラ20の被害量算出部23は、取得した応力を示す信号に基づいて作業機2の被害量を算出する(ステップS4:図6)。被害量の算出は、応力値からレインフロー法を用いて算出される。被害量算出部23は、算出した被害量を示す信号を寿命予測部24へ出力する。
【0071】
コントローラ20の寿命予測部24は、取得した被害量に基づいて作業機2の寿命を予測する。寿命予測部24は、被害量の累積値から作業機2の寿命を予測する(ステップS5:図6)。寿命予測部24は、予測した寿命を示す信号を出力装置制御部26へ出力する。
【0072】
出力装置制御部26は、取得した寿命を示す信号に基づいて寿命を表示装置31にて表示する(ステップS6:図6)。
【0073】
コントローラ20の応力判定部27は、応力推定部22aから取得した応力値が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS7:図6)。応力判定部27は、この判定をする際、記憶部25に記憶された所定の閾値を参照する。応力値が所定の閾値以下であると応力判定部27により判定された場合、応力値の推定(ステップS3)と応力値の判定(ステップS7)とが繰り返される。
【0074】
また応力値が所定の閾値より大きいと応力判定部27が判定した場合、作業機2に作用する負荷モードと、応力値が所定の閾値より大きくなった作業機2の部位とが表示装置31に表示される(ステップS8a)。また応力値が所定の閾値より大きいと応力判定部27が判定した場合、報知装置32は警報(アラート)を発する(ステップS8b)。
【0075】
<負荷モード判定方法>
【0076】
次に、本実施形態における負荷モードの判定方法について図7および図8を用いて説明する。
【0077】
図7は、作業機の負荷モードと作業機に作用する応力とを説明するための図である。図8は、図6における負荷モードの判定方法を説明するためのフロー図である。
【0078】
負荷モードのうちの掘削モード(図7(A))は、ブーム6あるいはアーム7を下げる動作が想定される。負荷モードのうちの横押しモード(図7(B))は、旋回体3が右あるいは左に旋回しつつ、バケット8の側面が物体に接触しているような動作が想定される。負荷モードのうちの伸長横押しモード(図7(C))は、ブーム6を下げつつアーム7を前方に伸ばし、さらに旋回体3が右あるいは左に旋回しつつ、バケット8の側面が物体に接触しているような動作が想定される。
【0079】
なお図7(D)、(E)、(F)において「-(マイナス)」の記号は圧縮応力を意味し、「+(プラス)」の記号は引張応力を意味している。また図7(D)、(E)、(F)において白抜きの領域は作業機2に作用する圧縮応力の大きさを示しており、ドットハッチングの領域は作業機2に作用する引張応力の大きさを示している。
【0080】
本発明者は、少ない歪みセンサの個数で作業機2全体の応力を推定する方法を鋭意検討した。本発明者は、作業機2に曲げ、ねじれが作用すると、負荷モード毎に作業機2の断面に異なる特徴が発生することに着目した。ここで負荷モードの例として、掘削モードと、伸張横押しモードと、横押しモードとを挙げる。ただし負荷モードはこれに限定されるものではなく、高所面打ちモード、転圧モードなどを含んでもよい。
【0081】
まず作業機2に上下曲げが作用した場合、図7(D)に示されるように、仮想の平面に交差する作業機2の断面において、角部と板中央との双方に同符号の高応力が作用し、上下の板6a、6bで異符号の応力が発生する。この場合、たとえば下板6aの下面(外周面)には高い引張応力が幅全体に作用し、上板6bの上面(外周面)には高い圧縮応力が幅全体に作用する。上下曲げが作用した場合、たとえば下板6aの下面には高い圧縮応力が幅全体に作用し、上板6bの上面には高い引張応力が幅全体に作用する場合もある。
【0082】
また作業機2にねじりが作用した場合、図7(E)に示されるように、仮想の平面に交差する作業機2の断面において、上下の板6a、6bの左右に異符号の応力が作用し、かつ上下の板の対角に同符号の応力が作用する。この場合、たとえば下板6aの下面には左端から右端に向かって引張応力から圧縮応力に遷移する応力が作用し、上板6bの上面には左端から右端に向かって圧縮応力から引張応力に遷移する応力が作用する。ねじりが作用した場合、たとえば下板6aの下面には左端から右端に向かって圧縮応力から引張応力に遷移する応力が作用し、上板6bの上面には左端から右端に向かって引張応力から圧縮応力に遷移する応力が作用する場合もある。
【0083】
また作業機2に左右曲げが作用した場合、図7(F)に示されるように、仮想の平面に交差する作業機2の断面において、上下の板の左右に異符号の応力が作用し、かつ上下の板の対角に異符号の応力が作用する。この場合、たとえば下板6aの下面および上板6bの上面の各々には左端から右端に向かって引張応力から圧縮応力に遷移する応力が作用する。左右曲げが作用した場合、たとえば下板6aの下面および上板6bの上面の各々には左端から右端に向かって圧縮応力から引張応力に遷移する応力が作用する場合もある。
【0084】
掘削モードでは、図7(A)に示されるように、負荷点Pに上下方向の負荷が強く作用する。これにより掘削モードでは、図7(D)に示されるように上下の板6a、6bにおいて上下曲げの影響が強くなり、作業機2の断面において上下の板6a、6bの角部と中央部との双方に同符号の高応力が作用し、上下の板6a、6bで異符号の応力が発生する。
【0085】
また横押しモードでは、図7(B)に示されるように、負荷点Pに左右方向の負荷が作用するため、上下の板の左右にねじりが作用する。これにより横押しモードでは、図7(E)に示されるように、上下の板6a、6bの各々の左右に異符号の応力が作用し、かつ上下の板6a、6bの対角に同符号の応力が作用する。
【0086】
また伸張横押しモードでは、図7(B)に示されるように、作業機2が伸びきった状態で負荷点Pに左右方向の負荷が作用するため、上下の板の左右に左右曲げとねじりが作用する。これにより伸張横押しモードでは、図7(E)に示されるように、上下の板6a、6bの各々の左右に異符号の応力が作用し、かつ上下の板6a、6bの対角に同符号の応力が作用する。また作業機2の伸張横押しモードでは、左右曲げの影響で、上板6bの上面における応力が横押しモードよりも低くなる。
【0087】
以上より、仮想の平面PSに交差する作業機2の断面において、図3に示される点B2に作用する応力が圧縮応力かつ高応力(絶対値が大きい)であれば、負荷モードが掘削モードであると判定できる。
【0088】
また仮想の平面PSに交差する作業機2の断面において、点B2(図3参照)に作用する応力が圧縮応力ではない、または高応力ではない場合には、負荷モードが横押しモードか伸張横押しモードであると判定できる。
【0089】
また仮想の平面PSに交差する作業機2の断面において、点B1における応力値を、点B3と点B4との応力値の絶対値平均で除した値が所定値以下であれば、負荷モードが伸張横押しモードであると判定できる。
【0090】
また仮想の平面PSに交差する作業機2の断面において、点B1における応力値を、点B3と点B4との応力値の絶対値平均で除した値が所定値より大きい場合、負荷モードが横押しモードであると判定できる。
【0091】
上記より図8に示すフローにより負荷モードを判定することができる。図8に示されるように、負荷モード判定部22bは、点B2の応力値が圧縮値か否かを判定する(ステップS11a)。点B2の応力値が圧縮値である場合、負荷モード判定部22bは、点B2の応力値が所定値以上か否かを判定する(ステップS11b)。点B2の応力値が所定値以上である場合、負荷モード判定部22bは、負荷モードが掘削モードであると判定する(ステップS11c)。
【0092】
一方、点B2の応力値が圧縮値でない場合または点B2の応力値が所定値未満である場合、負荷モード判定部22bは、点B1における応力値を点B3と点B4との応力値の絶対値平均で除した値が所定値以下か否かを判定する(ステップS11d)。点B1における応力値を点B3と点B4との応力値の絶対値平均で除した値が所定値以下である場合、負荷モード判定部22bは、負荷モードが伸張横押しモードであると判定する(ステップS11e)。また点B1における応力値を点B3と点B4との応力値の絶対値平均で除した値が所定値より大きい場合、負荷モード判定部22bは、負荷モードが横押しモードであると判定する(ステップS11f)。
【0093】
<効果>
【0094】
次に、本実施形態における効果について説明する。
【0095】
本実施形態においては図5に示されるように、コントローラ20は、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dによって検出された歪みデータに基づいて作業機2の負荷状態を推定する。これによりユーザまたは管理者は、少ない数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dによって作業機2の負荷状態を知ることができる。このためユーザまたは管理者は、シンプルな装置構成にて作業機2全体の負荷状態を把握することができる。また推定された負荷状態に応じて油圧ショベル10の中古車査定額を算出することもできる。これにより重い負荷がかけられた頻度が高い油圧ショベル10の差定額を下げるといった適切な中古車査定を行うこともできる。また推定された負荷状態に応じて、作業機2そのものの点検、作業機2の各軸への給脂などのサービスプログラムの情報をユーザまたは管理者に自動発信することもできる。また得られたデータをサービス員が活用し、作業機2に限度を超えるような負荷がかかるような運転を回避するように、運転者に対して行う運転指導、亀裂チェックなどのリコメンドでダウンタイム短縮を図ることもできる。
【0096】
本実施形態においては図5に示されるように、コントローラ20は、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dによって検出された少なくとも4箇所の歪みデータに基づいて作業機2の負荷状態を推定する。これにより作業機2の負荷モードを推定することができ、また作業機2に作用する応力を推定することができる。このためシンプルな装置構成にて作業機2全体の変形を把握することができる。また推定された負荷状態に応じて油圧ショベル10の中古車査定額を算出することもできる。これにより重い負荷がかけられた頻度が高い油圧ショベル10の差定額を下げることもできる。また推定された負荷状態に応じて、作業機2そのものの点検、作業機2の各軸への給脂などのサービスプログラムの情報をユーザまたは管理者に自動発信することもできる。また得られたデータをサービス員が活用し、運転指導、亀裂チェックなどのリコメンドでダウンタイム短縮を図ることもできる。
【0097】
本実施形態においては図5に示されるように、負荷モードは、少なくとも掘削を含む。これによりユーザまたは管理者は、作業機2に作用する負荷モードを知ることができる。
【0098】
本実施形態においては図5に示されるように、負荷モードは、少なくとも横押しおよび伸張横押しを含む。これによりユーザまたは管理者は、作業機2に作用する負荷モードを知ることができる。
【0099】
本実施形態においては図5に示されるように、コントローラ20は、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dによって検出された歪みデータに基づいて作業機2の任意の箇所の応力を推定する。これによりユーザまたは管理者は、少ない数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dによって作業機2の全体の応力を知ることができる。またユーザまたは管理者は、作業機2のクリティカル部に作用する応力も知ることができる。クリティカル部の応力を掲載、設計時目標寿命設定または仕向け地別使用設定に用いることもできる。
【0100】
本実施形態においては図3に示されるように、複数の歪みセンサ11a、11b、11cは、作業機2の少なくとも3つの角部CO1、CO2、CO3に配置されている。これにより負荷モードを判定することができる。
【0101】
本実施形態においては図3に示されるように、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dは、互いに異なる少なくとも2つの面に配置されている。これにより負荷モードを判定することができる。
【0102】
本実施形態においては図2に示されるように、仮想の平面PSは、作業機2の長手方向Lの中心(仮想の直線VL2)よりも作業機械本体1の近くに位置する。これにより仮想の平面PS1に沿って複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dが配置されても、配線経路が短くなり、配線の断線を抑制することができる。また複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dが作業時に破損、故障することも抑制される。
【0103】
本実施形態においては図5に示されるように、コントローラ20は、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dによって検出された歪みデータに基づいて作業機2の被害量を算出し、被害量の累積値から予測される作業機2の寿命を表示装置31に表示する。これによりユーザまたは管理者は作業機2の寿命を容易に確認することができる。
【0104】
本実施形態においては図5に示されるように、コントローラ20は、推定した応力が所定の閾値より大きい場合に警報信号を出力する。これによりユーザまたは管理者は、閾値よりも大きな応力が作業機2に作用したことを容易に知ることができる。またユーザまたは管理者は、油圧ショベル10が異常使用または危険運転をされたおそれがあることを警報により知ることができる。また異常使用、危険運転が実施された場合、応力からリアルタイムで警報を発することができる。
【0105】
本実施形態においては図5に示されるように、コントローラ20は、歪みデータに基づいて油圧ショベル10の負荷モードを判定し、かつ作業機2(たとえばブーム6)の任意の箇所における応力を推定する。またコントローラ20は、推定された応力が所定の閾値より大きい場合に、推定された応力が所定の閾値より大きいときの負荷モードと作業機2の部位とを表示装置31に表示する。これによりユーザまたは管理者は負荷モードと閾値よりも大きな応力が作用した箇所とを容易に確認することができる。このためシンプルな装置構成にて作業機全体の変形を把握することができる。また推定された負荷状態に応じて油圧ショベル10の中古車査定額を算出することもできる。これにより重い負荷がかけられた頻度が高い油圧ショベル10の差定額を下げることもできる。また推定された負荷状態に応じて、作業機2そのものの点検、作業機2の各軸への給脂などのサービスプログラムの情報をユーザまたは管理者に自動発信することもできる。また得られたデータをサービス員が活用し、運転指導、亀裂チェックなどのリコメンドでダウンタイム短縮を図ることもできる。
【0106】
本実施形態においては図4に示されるように、複数の歪みセンサ11a、11b、11c、11dの各々は、歪みゲージ12と、ブリッジ回路13とを有し、歪みゲージ12およびブリッジ回路13は半導体デバイスにより構成されている。これにより歪みゲージの小型化が可能である。
【0107】
<その他>
【0108】
図9に示されるように、作業機2に交差する仮想の平面PSは、作業機2の短手方向Wに平行な平面PS1であってもよく、作業機2の短手方向Wに平行ではない平面PS2であってもよい。
【0109】
<付記>
【0110】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0111】
(付記1)
作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、
仮想の平面と交差する前記作業機の部分に沿って配置された複数の歪みセンサと、
前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の負荷状態を推定するコントローラと、を備えた、作業機械を含むシステム。
【0112】
(付記2)
作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、
前記作業機の少なくとも4箇所に配置された複数の歪みセンサと、
前記複数の歪みセンサによって検出された前記少なくとも4箇所の歪みデータに基づいて前記作業機の負荷状態を推定するコントローラと、を備えた、作業機械を含むシステム。
【0113】
(付記3)
前記作業機は、ブームまたはアームであり、
前記作業機の負荷状態は、前記作業機の負荷モードを含み、
前記負荷モードは、少なくとも掘削を含む、付記1または付記2に記載の作業機械を含むシステム。
【0114】
(付記4)
前記作業機械は、旋回体を含み、
前記作業機の負荷状態は、前記作業機の負荷モードを含み、
前記負荷モードは、少なくとも横押しおよび伸張横押しを含む、付記1から付記3のいずれか1つに記載の作業機械を含むシステム。
【0115】
(付記5)
前記作業機は、ブームまたはアームであり、
前記作業機の負荷状態は、前記作業機の応力を含み、
前記コントローラは、前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の任意の箇所の応力を推定する、付記1から付記4のいずれか1つに記載の作業機械を含むシステム。
【0116】
(付記6)
前記作業機は、ブームまたはアームであり、
前記複数の歪みセンサは、前記作業機の少なくとも3つの角部に配置されている、付記1から付記5のいずれか1つに記載の作業機械を含むシステム。
【0117】
(付記7)
前記作業機は、ブームまたはアームであり、
前記複数の歪みセンサは、互いに異なる少なくとも2つの面に配置されている、付記2から付記6のいずれか1つに記載の作業機械を含むシステム。
【0118】
(付記8)
前記作業機は、ブームまたはアームであり、
前記仮想の平面は、前記作業機の長手方向の中心よりも前記作業機械本体の近くに位置する、付記1から付記7のいずれか1つに記載の作業機械を含むシステム。
【0119】
(付記9)
表示装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の被害量を算出し、前記被害量の累積値から予測される前記作業機の寿命を前記表示装置に表示する、付記1から付記8のいずれか1つに記載の作業機械を含むシステム。
【0120】
(付記10)
前記コントローラは、推定した前記応力が所定の閾値より大きい場合に警報信号を出力する、付記5に記載の作業機械を含むシステム。
【0121】
(付記11)
作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、
仮想の平面と交差する前記作業機の部分に沿って配置された複数の歪みセンサと、
表示装置と、
前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の負荷モードを判定し、かつ前記作業機の任意の箇所における応力を推定し、推定された前記応力が所定の閾値より大きい場合に、推定された前記応力が前記所定の閾値より大きいときの負荷モードと前記作業機の部位とを前記表示装置に表示するコントローラと、を備えた、作業機械を含むシステム。
【0122】
(付記12)
前記複数の歪みセンサの各々は、歪みゲージと、ブリッジ回路とを有し、
前記歪みゲージおよび前記ブリッジ回路は半導体デバイスにより構成されている、付記1から付記11のいずれか1つに記載の作業機械を含むシステム。
【0123】
(付記13)
作業機械本体と、前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、を有する作業機械の負荷状態推定方法であって、
仮想の平面と交差する前記作業機の部分に沿って複数の歪みセンサを配置するステップと、
前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の負荷状態を推定するステップと、を備えた、作業機械の負荷状態推定方法。
【0124】
(付記14)
作業機械本体と、前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、を有する作業機械の負荷状態推定方法であって、
前記作業機の少なくとも4箇所に複数の歪みセンサを配置するステップと、
前記複数の歪みセンサによって検出された前記少なくとも4箇所の歪みデータに基づいて前記作業機の負荷状態を推定するステップと、を備えた、作業機械の負荷状態推定方法。
【0125】
(付記15)
作業機械本体と、前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、表示装置と、を有する作業機械の負荷状態推定方法であって、
仮想の平面と交差する前記作業機の部分に沿って複数の歪みセンサを配置するステップと、
前記複数の歪みセンサによって検出された歪みデータに基づいて前記作業機の負荷モードを判定するステップと、
前記作業機の任意の箇所における応力を推定するステップと、
推定された前記応力が所定の閾値より大きい場合に、推定された前記応力が前記所定の閾値より大きいときの負荷モードと前記作業機の部位とを前記表示装置に表示するステップと、を備えた、作業機械の負荷状態推定方法。
【0126】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1 作業機械本体、2 作業機、3 旋回体、4 運転室、4S 運転席、5 走行体、5Cr 履帯、5M 走行モータ、6 ブーム、6a,6b 横板、6c,6d 縦板、7 アーム、8 バケット、9a ブームシリンダ、9b アームシリンダ、9c バケットシリンダ、10 油圧ショベル、11a,11b,11c,11d 歪みセンサ、12 歪みゲージ、13 ブリッジ回路、14 歪みアンプ、20 コントローラ、21 歪み取得部、22 負荷状態推定部、22a 応力推定部、22b 負荷モード判定部、23 被害量算出部、24 寿命予測部、25 記憶部、26 出力装置制御部、27 応力判定部、30 出力装置、31 表示装置、32 報知装置、AT アームトップピン、BCH ブームシリンダ取付孔、BF ブームフートピン、BFH ブームフートピン用孔、BT ブームトップピン、BTH ブームトップピン用孔、C 中心、C1,C2,C3,C4 角、CO1,CO2,CO3,CO4 角部、CP1,CP2,CP3,CP4 接続部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9