(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117927
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電力融通システム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
H02J1/00 306K
H02J1/00 304E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024028
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一穂
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165CA01
5G165CA04
5G165DA01
5G165DA06
5G165DA07
5G165EA03
5G165EA04
5G165GA09
5G165HA01
5G165HA07
5G165HA09
5G165HA17
5G165HA20
5G165JA04
5G165JA07
5G165JA09
5G165KA02
5G165KA05
5G165LA01
5G165LA02
5G165LA03
5G165MA01
5G165MA02
5G165MA10
5G165PA01
(57)【要約】
【課題】複数台の子機間で電力の授受のバランスがとれている状態で親機がダウンした場合に、子機の動作を停止できる電力融通システムを提供する。
【解決手段】電力融通システムSは、直流バスBに接続され、直流バスBのバス電圧を制御する親機1と、直流バスBに接続され、直流バスBに電力を供給する子機2Aと、直流バスBに接続され、直流バスBから電力の供給を受ける子機2Bとを備える。親機1は、直流バスBとの間での電流または電力の授受量A1を計測し、その授受量A1の計測結果が予め設定された閾値未満である場合は、バス電圧が所定の第1設定電圧となるように制御し、その授受量A1の計測結果が閾値以上である場合は、バス電圧が所定の第2設定電圧となるように制御する。子機2Aは、バス電圧を計測し、バス電圧の計測結果が第1設定電圧である場合は、子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減する動作を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流バスに接続され、当該直流バスのバス電圧を制御する親機と、
前記直流バスに接続され、当該直流バスに電力を供給する第1子機と、
前記直流バスに接続され、当該直流バスから電力の供給を受ける第2子機とを備え、
前記親機は、前記直流バスとの間での電流または電力の授受量を計測し、
当該授受量の計測結果が予め設定された閾値未満である場合は、前記バス電圧が所定の第1設定電圧となるように制御し、
当該授受量の計測結果が前記閾値以上である場合は、前記バス電圧が所定の第2設定電圧となるように制御し、
前記第1子機および前記第2子機の少なくとも一方は、前記バス電圧を計測し、
前記バス電圧の計測結果が前記第1設定電圧である場合は、前記直流バスとの間での電力の授受量を一時的に増減する動作を行う
ことを特徴とする電力融通システム。
【請求項2】
前記第1子機は、前記バス電圧の計測結果が前記第1設定電圧である場合は、前記直流バスに供給する電力の量を一時的に減らすことで、前記直流バスとの間での電力の授受量を一時的に増減する動作を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電力融通システム。
【請求項3】
前記第2子機は、前記バス電圧の計測結果が前記第1設定電圧である場合は、前記直流バスから供給を受ける電力の量を一時的に増やすことで、前記直流バスとの間での電力の授受量を一時的に増減する動作を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電力融通システム。
【請求項4】
前記第1子機および前記第2子機の少なくとも一方は、前記直流バスとの間での電力の授受量を一時的に増減する動作を所定時間間隔で繰り返し行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電力融通システム。
【請求項5】
前記親機は、前記直流バスとの間での電流または電力の授受量の計測結果が、前記第1子機および前記第2子機の少なくとも一方と前記直流バスとの間での電力の授受量が一時的に増減する時間よりも長時間にわたって前記閾値以上である場合に限って、前記バス電圧が前記第2設定電圧となるように制御する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電力融通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流バスを備えた電力融通システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流バスに接続されて直流バスの電圧(以下「バス電圧」という)を制御する親機と、直流バスに接続された複数台の子機とを備えた電力融通システムが知られている(例えば特許文献1参照)。親機は、例えば、商用交流電源に接続されたAC-DC変換装置により構成され、子機は、例えば、太陽光発電装置、電気自動車、または定置型蓄電装置等の分散型電源に接続されたDC-DC変換装置により構成される。一般的に、親機がダウンしたとき(すなわち動作不能になったとき)、子機の動作を継続させないために、子機は、バス電圧が定格電圧範囲外の電圧になると自動的に停止するように構成されている。
【0003】
図6を参照して、従来の電力融通システムについて説明する。
図6(A)に示す電力融通システムは、親機101と2台の子機102とを備えている。2台の子機102のうち、一方は直流バスBに電力を供給する第1子機(以下「子機102A」という)として動作し、他方は直流バスBから電力の供給を受ける第2子機(以下「子機102B」という)として動作する。親機101は、子機102Bの電力需要量が子機102Aの電力供給量よりも大きい場合は、直流バスBに電力を供給することでバス電圧を維持する。
【0004】
図6(B)は、親機101と直流バスBとの間での電流の授受量A1、バス電圧、および子機102A,102Bと直流バスBとの間での電力の授受量A2の変化を示している。授受量A1は、親機101から直流バスBに流れる電流の量を正とし、直流バスBから親機101に流れる電流の量を負とする。また、授受量A2は、子機102が直流バスBに供給する電力の量を正とし、子機102が直流バスBから供給を受ける電力の量を負とする。
【0005】
図6(B)に示すように、親機101が直流バスBに電力を供給している時刻Ta1では、親機101と直流バスBとの間での電流の授受量A1は正であり、バス電圧は定格電圧範囲内(すなわち所定の下限電圧Vmin以上かつ所定の上限電圧Vmax未満)に維持されるように構成されている。時刻Ta2で親機101がダウンすると、親機101から直流バスBに電力が供給されなくなるためバス電圧が低下する。そして、子機102A,102Bは、バス電圧が所定の下限電圧Vmin未満となった時刻Ta3で動作を停止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数台の子機102A,102B間で電力の授受のバランスがとれている状態では、親機101と直流バスBとの間での電流の授受量A1は0であり、
図6(C)に示すように、親機101が時刻Ta4でダウンしてもバス電圧が変動しない。このため、子機102A,102Bは停止することなく動作を継続するという問題があった。子機102A,102Bが動作を継続することで、子機102A,102Bのユーザが親機101の異常(ダウン)を察知できない等の不都合がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、複数台の子機間で電力の授受のバランスがとれている状態で親機がダウンした場合に、子機の動作を停止できる電力融通システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る電力融通システムは、直流バスに接続され、当該直流バスのバス電圧を制御する親機と、前記直流バスに接続され、当該直流バスに電力を供給する第1子機と、前記直流バスに接続され、当該直流バスから電力の供給を受ける第2子機とを備え、前記親機は、前記直流バスとの間での電流または電力の授受量を計測し、当該授受量の計測結果が予め設定された閾値未満である場合は、前記バス電圧が所定の第1設定電圧となるように制御し、当該授受量の計測結果が前記閾値以上である場合は、前記バス電圧が所定の第2設定電圧となるように制御し、前記第1子機および前記第2子機の少なくとも一方は、前記バス電圧を計測し、前記バス電圧の計測結果が前記第1設定電圧である場合は、前記直流バスとの間での電力の授受量を一時的に増減する動作を行うことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、親機がダウンしている場合は、親機がバス電圧を制御することができないため、第1子機および第2子機の少なくとも一方が、直流バスとの間での電力の授受量を一時的に増減することで、子機が動作を停止するようにバス電圧を変動させることができる。したがって、複数台の子機間で電力の授受のバランスがとれている状態で親機がダウンした場合でも、子機の動作を停止できる。
【0011】
上記電力融通システムにおいて、前記第1子機は、前記バス電圧の計測結果が前記第1設定電圧である場合は、前記直流バスに供給する電力の量を一時的に減らすことで、前記直流バスとの間での電力の授受量を一時的に増減する動作を行うことが好ましい。
【0012】
上記電力融通システムにおいて、前記第2子機は、前記バス電圧の計測結果が前記第1設定電圧である場合は、前記直流バスから供給を受ける電力の量を一時的に増やすことで、前記直流バスとの間での電力の授受量を一時的に増減する動作を行うことが好ましい。
【0013】
上記電力融通システムにおいて、前記第1子機および前記第2子機の少なくとも一方は、前記直流バスとの間での電力の授受量を一時的に増減する動作を所定時間間隔で繰り返し行うことが好ましい。
【0014】
上記電力融通システムにおいて、前記親機は、前記直流バスとの間での電流または電力の授受量の計測結果が、前記第1子機および前記第2子機の少なくとも一方と前記直流バスとの間での電力の授受量が一時的に増減する時間よりも長時間にわたって前記閾値以上である場合に限って、前記バス電圧が前記第2設定電圧となるように制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数台の子機間で電力の授受のバランスがとれている状態で親機がダウンした場合に、子機の動作を停止できる電力融通システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力融通システムの概略構成図である。
【
図2】同実施形態に係る親機の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】(A)および(B)は、同実施形態に係る子機の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4】(A)および(B)は、同実施形態に係る電力融通システムにおいて、親機と直流バスとの電流の授受量、バス電圧、および子機と直流バスとの電力の授受量の変化を示すタイミングチャートである。
【
図5】(A)および(B)は、変形例に係る電力融通システムにおいて、親機と直流バスとの電流の授受量、バス電圧、および子機と直流バスとの電力の授受量の変化を示すタイミングチャートである。
【
図6】(A)は、従来の電力融通システムの概略構成図であり、(B)および(C)は、従来の電力融通システムにおいて、親機と直流バスとの電流の授受量、バス電圧、および子機と直流バスとの電力の授受量の変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る電力融通システムSを説明する。
図1に示すように、電力融通システムSは、交流ラインLと、直流バスBと、親機1と、複数台の子機2とを備えている。電力融通システムSは、直流バスBを介して、親機1と子機2との間、および複数台の子機2間で電力を融通する。
【0018】
交流ラインLは、商用交流電源Pから供給された交流電力を分配するための配線である。交流ラインLは、親機1に接続されている。
【0019】
直流バスBは、直流電力を融通するための配線であって、親機1と複数台の子機2が接続された共通線である。直流バスBには、子機2を介して分散型電源Dが接続されている。直流バスBの電圧(以下「バス電圧Vb」という)は、親機1および子機2の動作時には定格電圧範囲内に維持されることが好ましい。
【0020】
親機1は、交流電力と直流電力とを相互に変換するAC-DC変換装置により構成されている。親機1は、後述する第2子機の電力需要量が、後述する第1子機の電力供給量よりも大きい場合は、交流ラインLから供給を受けた交流電力を直流電力に変換して、直流バスBに電力を供給する。また、親機1は、後述する第1子機の電力供給量が、後述する第2子機の電力需要量よりも大きい場合は、直流バスBから供給を受けた直流電力を交流電力に変換して、交流ラインLに電力を供給する。親機1は、電流計測部11と、電圧制御部12とを備えている。
【0021】
親機1と直流バスBとの間での電流の授受量(以下「授受量A1」という)は、子機2間での電力の授受のバランス(すなわち後述する第1子機および第2子機の電力供給量と電力需要量とのバランス)に応じて変化する。授受量A1は、親機1が直流バスBに電力を供給している場合は、親機1から直流バスBに流れる電流の量であり、親機1が直流バスBから電力の供給を受けている場合は、直流バスBから親機1に流れる電流の量である。本実施形態に係る授受量A1は、親機1から直流バスBに流れる電流の量を正とし、直流バスBから親機1に流れる電流の量を負とする。
【0022】
電流計測部11は、授受量A1を定期的に計測する。電流計測部11は、後述する第1子機および第2子機の電力供給量と電力需要量のバランスがとれていない状態では0よりも十分大きい授受量A1を計測し、後述する第1子機および第2子機の電力供給量と電力需要量のバランスがとれていると0に近い授受量A1を計測する。
【0023】
電圧制御部12は、電流計測部11による授受量A1の計測結果に応じて、バス電圧Vbを制御する。具体的には、電圧制御部12は、授受量A1の計測結果が予め設定されている閾値Th未満である場合は、バス電圧Vbが所定の第1設定電圧(以下「設定電圧V1」という)となるようにバス電圧Vbを制御し、授受量A1の計測結果が閾値Th以上である場合は、バス電圧Vbが設定電圧V1と異なる所定の第2設定電圧(以下「設定電圧V2」という)となるようにバス電圧Vbを制御する。設定電圧V1,V2は、それぞれ、定格電圧範囲内(すなわち所定の下限電圧Vmin以上かつ所定の上限電圧Vmax未満)の電圧である。なお、本実施形態では、電圧制御部12は、授受量A1の計測結果が、子機2と直流バスBとの間での電力の授受量が一時的に増減する時間(後述する所定時間T)よりも長時間にわたって閾値Th以上である場合に限って、バス電圧Vbが設定電圧V2となるようにバス電圧Vbを制御する。閾値Thは0に近い値である。
【0024】
子機2は、それぞれ、直流電力を所望の直流電力に変換するDC-DC変換装置により構成されている。子機2は、例えば、太陽光発電装置、電気自動車、または定置型蓄電装置等の分散型電源Dに接続されている。子機2は、それぞれ、電圧計測部21と、電力制御部22とを備えている。
【0025】
複数台の子機2は、それぞれ独立して充放電動作をすることができる。例えば、少なくとも1台は直流バスBに電力を供給する第1子機(以下「子機2A」という)として動作し、少なくとも1台は直流バスBから電力の供給を受ける第2子機(以下「子機2B」という)として動作することができる。本実施形態では、2台の子機2のうち、一方が直流バスBに電力を供給する第1子機として動作し、他方が直流バスBから電力の供給を受ける第2子機として動作する。子機2は、バス電圧Vbが定格電圧範囲内に維持されなくなったとき、すなわちバス電圧Vbが下限電圧Vmin未満または上限電圧Vmax以上となったとき、動作を停止する。
【0026】
子機2Aは、発電可能または放電可能な分散型電源Dに接続され、分散型電源Dが発電または放電する直流電力を所望の直流電力に変換して、直流バスBに電力を供給する。発電可能な分散型電源Dとしては、例えば太陽光発電装置を採用でき、放電可能な分散型電源Dとしては、例えば電気自動車または定置型蓄電装置を採用できる。なお、子機2Aに接続された分散型電源Dが充電可能な場合は、子機2Aは、直流バスBに電力を供給する動作を行うだけではなく、直流バスBから電力の供給を受け、直流バスBから供給を受けた直流電力を所望の直流電力に変換して、分散型電源Dを充電する動作を行うこともできる。
【0027】
子機2Bは、充電可能な分散型電源Dに接続されており、直流バスBから電力の供給を受け、直流バスBから供給を受けた直流電力を所望の直流電力に変換して、分散型電源Dを充電する。充電可能な分散型電源Dとしては、例えば電気自動車または定置型蓄電装置を採用できる。なお、子機2Bに接続された分散型電源Dが放電可能な場合は、子機2Bは、分散型電源Dを充電する動作を行うだけではなく、分散型電源Dが放電する直流電力を所望の直流電力に変換して、直流バスBに電力を供給する動作を行うこともできる。
【0028】
子機2と直流バスBとの間での電力の授受量(以下「授受量A2」という)は、その子機2に接続された分散型電源Dの動作態様に応じて変化する。子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2は、子機2Aの電力供給量であり、その子機2Aに接続された分散型電源Dが発電可能な電力もしくは放電可能な電力に応じて変化する。また、子機2Bと直流バスBとの間での電力の授受量A2は、子機2Bの電力需要量であり、その子機2Bに接続された分散型電源Dへの充電に要求される電力に応じて変化する。すなわち、授受量A2は、子機2が直流バスBに電力を供給している場合は、子機2が直流バスBに供給する電力の量であり、子機2が直流バスBから電力の供給を受けている場合は、子機2が直流バスBから供給を受ける電力の量である。本実施形態に係る授受量A2は、子機2が直流バスBに供給する電力の量を正とし、子機2が直流バスBから供給を受ける電力の量を負とする。
【0029】
電圧計測部21は、バス電圧Vbを定期的に計測する。電圧計測部21は、子機2が動作している状態では設定電圧V1,V2をバス電圧Vbとして計測し、親機1がダウンしてバス電圧Vbが維持されなくなると下限電圧Vmin未満または上限電圧Vmax以上のバス電圧Vbを計測する。
【0030】
電力制御部22は、電圧計測部21によるバス電圧Vbの計測結果に応じて、授受量A2を制御する。具体的には、電力制御部22は、バス電圧Vbの計測結果が設定電圧V1である場合、すなわちバス電圧Vbの計測結果が設定電圧V2でない場合は、授受量A2を一時的に増減させるように授受量A2を制御する。この制御は、複数台の子機2のうち、少なくとも1台の子機2の電力制御部22が行えばよく、本実施形態では、直流バスBに電力を供給する子機2Aの電力制御部22が、直流バスBに供給する電力の量を所定時間Tだけ減らすことで、子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減させるように授受量A2を制御する。また、電力制御部22は、バス電圧Vbの計測結果が設定電圧V1である間は、授受量A2を一時的に増減する動作を所定時間間隔で繰り返し行う。
【0031】
次に、
図2を参照して、親機1の動作を説明する。
図2に示すように、親機1の電流計測部11が、授受量A1を計測し(ステップS1)、次いで、親機1の電圧制御部12が、ステップS1での授受量A1の計測結果が、閾値Th未満であるか否かを判定する(ステップS2)。さらに、親機1の電圧制御部12は、授受量A1が閾値Th以上である場合(ステップS2:NO)は、授受量A1が閾値Th以上になってから所定時間Tが経過したか否かを判定する(ステップS3)。
【0032】
親機1の電圧制御部12は、授受量A1が閾値Th未満である場合(ステップS2:YES)、および、授受量A1が閾値Th以上であっても閾値Th以上になってから所定時間Tが経過していない場合、すなわち授受量A1が所定時間Tよりも長時間にわたって閾値Th以上でない場合(ステップS3:NO)は、バス電圧Vbが設定電圧V1となるように制御する(ステップS4)。こうしてバス電圧Vbが制御されることで、授受量A1が0に近い場合は、バス電圧Vbが設定電圧V1となる。このように授受量A1が0に近い状態は、子機2A,2B間で電力の授受のバランスがとれている状態である。
【0033】
一方、親機1の電圧制御部12は、授受量A1が閾値Th以上になってから所定時間Tが経過している場合、すなわち授受量A1が所定時間Tよりも長時間にわたって閾値Th以上である場合(ステップS3:YES)は、バス電圧Vbが設定電圧V2となるように制御する(ステップS5)。こうしてバス電圧Vbが制御されることで、授受量A1が0よりも十分大きい場合は、バス電圧Vbが設定電圧V2となる。このように授受量A1が0よりも十分大きい状態は、親機1が直流バスBに電力を供給している状態、または親機1が直流バスBから電力の供給を受けている状態である。
【0034】
次に、
図3(A)を参照して、子機2Aの動作を説明する。
図3(A)に示すように、子機2Aの電圧計測部21が、バス電圧Vbを計測し(ステップS11)、次いで、子機2Aの電力制御部22が、ステップS11でのバス電圧Vbの計測結果が、設定電圧V1であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0035】
子機2Aの電力制御部22は、バス電圧Vbが設定電圧V1でない場合(ステップS12:NO)は、バス電圧Vbが設定電圧V2であると判定し、子機2Aは、後述するステップS14~S17の動作を行わずに、直流バスBへの電力供給を継続する(ステップS13)。すなわち、子機2Aは、子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減することなく、直流バスBへの電力の供給を続ける。
【0036】
一方、子機2Aの電力制御部22は、バス電圧Vbが設定電圧V1である場合(ステップS12:YES)は、子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減する動作を行う(ステップS14)。そして、子機2Aの電圧計測部21が、バス電圧Vbを再び計測し(ステップS15)、子機2Aの電力制御部22が、ステップS15でのバス電圧Vbの計測結果が、定格電圧範囲内(下限電圧Vmin以上かつ所定の上限電圧Vmax未満)であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0037】
子機2Aは、バス電圧Vbが定格電圧範囲内である場合(ステップS16:YES)は、直流バスBへの電力供給を継続し(ステップS13)、バス電圧Vbが定格電圧範囲内でない場合(ステップS16:NO)は、直流バスBへの電力供給を停止する(ステップS17)。すなわち、子機2Aの電力制御部22が授受量A2を一時的に増減させた結果、バス電圧Vbが定格電圧範囲内に維持されない場合は、子機2Aは電力供給動作を停止し、バス電圧Vbが定格電圧範囲内に維持される場合は、子機2Aは直流バスBへの電力の供給を続ける。
【0038】
次に、
図3(B)を参照して、子機2Bの動作を説明する。
図3(B)に示すように、子機2Bの電圧計測部21が、バス電圧Vbを計測し(ステップS21)、次いで、子機2Bの電力制御部22が、ステップS21でのバス電圧Vbの計測結果が、定格電圧範囲内(下限電圧Vmin以上かつ上限電圧Vmax未満)であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0039】
子機2Bは、バス電圧Vbが定格電圧範囲内である場合(ステップS22:YES)は、分散型電源Dへの充電を継続し(ステップS23)、バス電圧Vbが定格電圧範囲内でない場合(ステップS22:NO)は、分散型電源Dへの充電を停止する(ステップS24)。すなわち、子機2Aと同様に、バス電圧Vbが定格電圧範囲内に維持されない場合は、子機2Bは充電動作を停止し、バス電圧Vbが定格電圧範囲内に維持される場合は、子機2Bは分散型電源Dへの充電を続ける。
【0040】
次に、
図4(A)および(B)を参照して、親機1がダウンしたときの子機2A,2Bの動作の一例を説明する。
図4(A)および(B)は、授受量A1、バス電圧、および子機2A,2Bに係る授受量A2の変化を示している。
【0041】
図4(A)は、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1が0の状態(すなわち、子機2A,2B間で電力の授受のバランスがとれている状態)で、親機1がダウンしたときの子機2A,2Bに係る授受量A2の変化を示している。
【0042】
図4(A)に示すように、時刻T1では、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1が0であり、バス電圧Vbは設定電圧V1になるように制御されている。子機2Aは、時刻T2でバス電圧Vbとして設定電圧V1を計測したことに基づいて、時刻T2から時刻T3までの所定時間T、子機2Aと直流バスBとの間での電流の授受量A2を減らし、授受量A2を増減させる。このとき、ダウンしていない親機1は、子機2Bの電力需要量が子機2Aの電力供給量よりも大きいため、直流バスBに電力を供給し、授受量A1が閾値Th以上になるが所定時間Tが経過するまでの間は設定電圧V1として、バス電圧Vbを維持する。
【0043】
時刻T4で親機1がダウンすると、子機2Aは、親機1のダウン後の時刻T5でバス電圧Vbとして設定電圧V1を計測したことに基づいて、子機2Aと直流バスBとの間での電流の授受量A2を減らす。このとき、ダウンしている親機1は、直流バスBに電力を供給してバス電圧Vbを維持できないため、バス電圧Vbが低下し、子機2A,2Bは、バス電圧Vbが下限電圧Vmin未満となった時刻T6で動作を停止する。
【0044】
図4(B)は、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1が0よりも十分大きい状態(具体的には、親機1が直流バスBに電力を供給している状態)で、親機1がダウンしたときの子機2A,2Bに係る授受量A2の変化を示している。
【0045】
図4(B)に示すように、時刻T7では、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1が0よりも十分大きく、バス電圧Vbは設定電圧V2になるように制御されている。子機2Aは、バス電圧Vbとして設定電圧V2を計測しても、子機2Aと直流バスBとの電力の授受量A2を増減させない。
【0046】
時刻T8で親機1がダウンすると、親機1から直流バスBに電力が供給されなくなるためバス電圧Vbが低下し、子機2A,2Bは、バス電圧Vbが下限電圧Vmin未満となった時刻T9で動作を停止する。
【0047】
本実施形態では次の効果が得られる。
(1)子機2Aは、バス電圧Vbを計測し、バス電圧Vbの計測結果が設定電圧V1である場合(すなわち、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1の計測結果が閾値Th未満である場合)は、子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減する動作を行う。この構成によれば、親機1がダウンしている場合は、親機1がバス電圧Vbを制御することができないため、子機2Aが、子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減することで、子機2A,2Bが動作を停止するようにバス電圧Vbを変動させることができる。したがって、複数台の子機2A,2B間で電力の授受のバランスがとれている状態で親機1がダウンした場合でも、子機2A,2Bの動作を停止できる。
【0048】
なお、親機1がダウンしていない場合は、子機2Aが、直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減しても、親機1がバス電圧Vbを維持することによって、子機2A,2Bは動作を継続できる。また、バス電圧Vbの計測結果が設定電圧V2である場合(すなわち、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1の計測結果が閾値Th以上である場合)は、子機2Aが、直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減する動作を行わないことで、バス電圧Vbを安定させることができる。
【0049】
(2)子機2Aは、バス電圧Vbの計測結果が設定電圧V1である場合は、直流バスBに供給する電力の量を一時的に(すなわち所定時間Tだけ)減らすことで、子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減する動作を行う。この構成によれば、子機2Aが直流バスBに供給する電力の量を増やす構成に比べて、バス電圧Vbが過電圧になることを防ぐことができる。
【0050】
(3)子機2Aは、子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減する動作を所定時間間隔で繰り返し行う。この構成によれば、授受量A2の一時的な増減が繰り返されることで、親機1がダウンした場合に子機2A,2Bの動作を確実に停止できる。
【0051】
(4)親機1は、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1の計測結果が、子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2が一時的に増減する時間(すなわち所定時間T)よりも長時間にわたって閾値Th以上である場合は、バス電圧Vbが設定電圧V2となるように制御する。この構成によれば、子機2Aの動作に起因する一時的な授受量A1の変化に基づいてバス電圧Vbが制御されることを防ぐことができる。
【0052】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記構成を変更することもできる。例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0053】
親機1が、直流バスBとの間での電力の授受量を計測する電力計測部を備えるように構成し、親機1と直流バスBとの間での電力の授受量の計測結果が、予め設定された閾値未満である場合は、バス電圧Vbが設定電圧V1となるように制御し、閾値以上である場合は、バス電圧Vbが設定電圧V2となるように制御してもよい。すなわち、親機1が、直流バスBとの間での電流または電力の授受量を計測でき、その授受量の計測結果に基づいてバス電圧Vbを制御できるのであれば、親機1の構成を適宜変更してもよい。
【0054】
子機2Aは、バス電圧Vbの計測結果が設定電圧V1である場合は、直流バスBに供給する電力の量を一時的に増やすことで、子機2Aと直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減する動作を行うこともできる。
【0055】
子機2Bが、バス電圧Vbを計測し、バス電圧Vbの計測結果が設定電圧V1である場合は、直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減する動作を行ってもよい。すなわち、子機2A,2Bの少なくとも一方が、授受量A2を一時的に増減する動作を行えばよい。
【0056】
なお、子機2Bは、直流バスBから供給を受ける電力の量を一時的に増やすことで、直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減する動作を行うことが好ましい。この構成によれば、子機2Bが直流バスBから供給を受ける電力の量を減らす構成に比べて、バス電圧Vbが過電圧になることを防ぐことができる。
【0057】
また、子機2Bは、直流バスBから供給を受ける電力の量を一時的に減らすことで、直流バスBとの間での電力の授受量A2を一時的に増減する動作を行うこともできる。
図5を参照して、本変形例に係る子機2A,2Bの動作の一例を説明する。
【0058】
図5(A)は、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1が0の状態(すなわち、子機2A,2B間で電力の授受のバランスがとれている状態)で、親機1がダウンしたときの子機2A,2Bに係る授受量A2の変化を示している。
【0059】
図5(A)に示すように、時刻T11では、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1が0であり、バス電圧Vbは設定電圧V1になるように制御されている。子機2Bは、時刻T12でバス電圧Vbとして設定電圧V1を計測したことに基づいて、時刻T12から時刻T13までの所定時間T、子機2Bと直流バスBとの電流の授受量A2を減らし、授受量A2を増減させる。このとき、ダウンしていない親機1は、子機2Aの電力供給量が子機2Bの電力需要量よりも大きいため、直流バスBから電力の供給を受け、授受量A1が閾値Th以上になるが所定時間Tが経過するまでの間は設定電圧V1として、バス電圧Vbを維持する。
【0060】
時刻T14で親機1がダウンすると、子機2Bは、親機1のダウン後の時刻T15でバス電圧Vbとして設定電圧V1を計測したことに基づいて、子機2Bと直流バスBとの電流の授受量A2を減らす。このとき、ダウンしている親機1は、直流バスBから電力の供給を受けてバス電圧Vbを維持できないため、バス電圧Vbが上昇し、子機2A,2Bは、バス電圧Vbが上限電圧Vmax以上となった時刻T16で動作を停止する。
【0061】
図5(B)は、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1が0よりも十分大きい状態(具体的には、親機1が直流バスBから電力の供給を受けている状態)で、親機1がダウンしたときの子機2A,2Bに係る授受量A2の変化を示している。
【0062】
図5(B)に示すように、時刻T17では、親機1と直流バスBとの間での電流の授受量A1が0よりも十分大きく、バス電圧Vbは設定電圧V2になるように制御されている。子機2Bは、バス電圧Vbとして設定電圧V2を計測しても、子機2Bと直流バスBとの電力の授受量A2を増減させない。
【0063】
時刻T18で親機1がダウンすると、直流バスBから親機1に電力が供給されなくなるためバス電圧Vbが上昇し、子機2A,2Bは、バス電圧Vbが上限電圧Vmax以上となった時刻T19で動作を停止する。
【0064】
電力融通システムSは、3台以上の子機2を備えていてもよく、複数台の子機2のうち、2台以上の子機2が、直流バスBに電力を供給する第1子機として動作し、第1子機と異なる2台以上の子機2が、直流バスBから電力の供給を受ける第2子機として動作してもよい。すなわち、子機2Aおよび子機2Bは、それぞれ、少なくとも1台の子機2により構成されていればよい。
【符号の説明】
【0065】
1 親機
2 子機
2A 第1子機
2B 第2子機
B 直流バス
D 分散型電源
L 交流ライン
P 商用交流電源
S 電力融通システム