(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117929
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ゲームプログラム、およびゲーム装置
(51)【国際特許分類】
A63F 13/54 20140101AFI20240823BHJP
A63F 13/55 20140101ALI20240823BHJP
H04S 7/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
A63F13/54
A63F13/55
H04S7/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024031
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000129149
【氏名又は名称】株式会社カプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 宏史
(72)【発明者】
【氏名】北川 貴大
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA05
5D162CD01
(57)【要約】
【課題】音声再生による没入感を向上させる。
【解決手段】コンピュータを、ユーザの操作に応じて、仮想空間でキャラクタを動作させるゲーム進行部561と、仮想空間の第1領域に配置された第1音源から発する音声を再生する音響処理部562として機能させ、音響処理部562は、第1領域がアンロードされた場合、第1音源をアンロードせずに第1音源から発する音声を再生する、または、第1音源に対応する第2音源を生成し、第2音源から発する音声を再生する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
ユーザの操作に応じて、仮想空間でキャラクタを動作させるゲーム進行部と、
前記仮想空間の第1領域に配置された第1音源から発する音声を再生する音響処理部、
として機能させ、
前記音響処理部は、前記第1領域がアンロードされた場合、前記第1音源をアンロードせずに前記第1音源から発する前記音声を再生する、または、前記第1音源に対応する第2音源を生成し、前記第2音源から発する前記音声を再生する、
ゲームプログラム。
【請求項2】
請求項1のゲームプログラムにおいて、
前記音響処理部は、前記第1領域がアンロードされた場合、前記第1音源が前記キャラクタから第1距離以内である第2領域に配置されていたとき、前記音声を再生する、
ゲームプログラム。
【請求項3】
請求項1のゲームプログラムにおいて、
前記音響処理部は、前記第1領域がアンロードされた場合、前記第1音源または前記第2音源から第2距離以内にある位置において、前記音声を再生する、
ゲームプログラム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つのゲームプログラムを記憶した記憶部と、
前記ゲームプログラムを実行する制御部と、
を備えたゲーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゲームプログラム、およびゲーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲームプログラムのなかには、臨場感を高めるために、ゲームの場面に対応する環境音が再生されるものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲームでは、臨場感を高めるために、ゲームの場面に対応した音声が再生されることが求められる。
【0005】
本開示の目的は、仮想空間において、音声再生による没入感を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、コンピュータを、
ユーザの操作に応じて、仮想空間でキャラクタを動作させるゲーム進行部と、
前記仮想空間の第1領域に配置された第1音源から発する音声を再生する音響処理部、
として機能させ、
前記音響処理部は、前記第1領域がアンロードされた場合、前記第1音源をアンロードせずに前記第1音源から発する前記音声を再生する、または、前記第1音源に対応する第2音源を生成し、前記第2音源から発する前記音声を再生する、
ゲームプログラムである。
【0007】
第1の態様において、
前記音響処理部は、前記第1領域がアンロードされた場合、前記第1音源が前記キャラクタから第1距離以内である第2領域に配置されていたとき、前記音声を再生する、としてもよい。
【0008】
第1の態様において、
前記音響処理部は、前記第1領域がアンロードされた場合、前記第1音源または前記第2音源から第2距離以内にある位置において、前記音声を再生する、としてもよい。
【0009】
第2の態様は、第1の態様のゲームプログラムを記憶した記憶部と、
前記ゲームプログラムを実行する制御部と、
を備えたゲーム装置である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、仮想空間において、音声再生による没入感を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
以下、ゲームプログラム、ゲーム装置の実施形態について説明する。
【0013】
このゲームプログラムによるゲームは、仮想空間(三次元)で実施される。ゲームの種別等には限定はない。例えば、ゲームは、プレイヤキャラクタが敵キャラクタを攻撃して倒していく対戦型のアクションゲームとすることができる。
【0014】
《ゲーム装置の構成》
〈ハードウェアの構成〉
図1は、ゲーム装置5の構成を示すブロック図である。ゲーム装置5は、ユーザの操作に基づいて所定のゲームを実行する。ゲーム装置5には、ディスプレイ61、スピーカ62およびコントローラ63が外部接続または内蔵される。
【0015】
ゲーム装置5には、例えば、パーソナルコンピュータ、プレイステーション(登録商標)、XBox(登録商標)、PlayStation Vita(登録商標)、Nintendo Switch(登録商標)などの、市販の装置を利用できる。
【0016】
ゲーム装置5では、インストールされたゲームプログラムおよびゲームデータに基づいてゲームが進行する。ゲーム装置5同士も、通信ネットワーク(図示を省略)または近距離無線通信装置(図示せず)を用いて、互いにデータ通信を行うことができる。
【0017】
ゲーム装置5は、ネットワークインターフェース51、グラフィック処理部52、オーディオ処理部53、操作部54、記憶部55および制御部56を有する。ネットワークインターフェース51、グラフィック処理部52、オーディオ処理部53、操作部54および記憶部55は、バス59を介して制御部56と電気的に接続されている。
【0018】
ネットワークインターフェース51は、例えば、他のゲーム装置5や外部のサーバ装置(図示を省略)との間で各種データを送受信するために、前記通信ネットワークに通信可能に接続される。
【0019】
グラフィック処理部52は、制御部56から出力されるゲーム画像情報に従って、プレイヤキャラクタおよび仮想空間における各種オブジェクトを含むゲーム画像を、動画形式で描画する。グラフィック処理部52はディスプレイ61(例えば液晶ディスプレイ)と接続されている。動画形式に描画されたゲーム画像は、ゲーム画面としてディスプレイ61上に表示される。
【0020】
オーディオ処理部53は、スピーカ62と接続されている。オーディオ処理部53は、制御部56の指示に従ってデジタルのゲーム音声を再生する。具体的には、オーディオ処理部53は、制御部56が出力した音声データをアナログ信号に変換し、スピーカ62に出力する。
【0021】
オーディオ処理部53は、3次元的な音の再生を行うために、多チャンネルの音声出力ができるように構成されている。それに合わせて、ゲーム装置5には、複数のスピーカ62が接続されている。これらのスピーカ62は、3次元的な音の再生ができるように、聴取者(例えばゲームのプレイヤ)の左右、前後、上方などに配置される場合がある。
【0022】
操作部54は、コントローラ63と接続されている。操作部54は、信号をコントローラ63との間で送受信する。ゲームのプレイヤは、コントローラ63のボタン等の各種操作子を操作することで、ゲーム装置5に信号(命令やデータなど)を入力する。
【0023】
記憶部55は、HDD、SSD、RAM、ROMなどで構成される。記憶部55には、ゲームデータ、ゲームプログラムを含む各種プログラムなどが格納されている。ゲームデータとしては、ゲーム媒体やユーザのアカウント情報などを例示できる。
【0024】
制御部56は、ゲーム装置5の動作を制御する。制御部56は、CPU(マイクロコンピュータ)、および半導体メモリを備えている。半導体メモリには、CPUを動作させるためのプログラムやデータなどが格納される。
【0025】
〈制御部56の機能的構成〉
制御部56は、ゲームプログラムを実行することによって、ゲーム進行部561、音響処理部562として機能する(
図1参照)。
【0026】
-ゲーム進行部561-
ゲーム進行部561は、ユーザ(ここではゲームのプレイヤ)の操作に応じて、仮想空間内でプレイヤキャラクタを動作させる。ゲーム進行部561は、ノンプレイヤキャラクタや所定のオブジェクト(例えば乗り物など)も仮想空間内で動作させる。
【0027】
ゲーム進行部561は、例えばAI(artificial intelligence)によってノンプレイヤキャラクタや所定のオブジェクトの動作を制御する。ゲーム進行部561は、プレイヤキャラクタやノンプレイヤキャラクタの動作に応じて、ゲームを進行させる。
【0028】
-音響処理部562-
このゲームプログラムでは、種々の音声データが予め用意されている。音響処理部562は、ゲームの進行に応じて、音声データを再生する。具体的に音響処理部562は、ゲームの進行に応じて音声データを選択し、選択した音声データをオーディオ処理部53に出力する。
【0029】
音響処理部562は、音声データを出力する際に、オーディオ処理部53に、その音量を指示する。オーディオ処理部53は、音響処理部562が出力した音声データを、指示された音量のアナログ信号に変換し、スピーカ62に出力する。
【0030】
音響処理部562は、音声の再生において音像定位を行う。音響処理部562は、音像定位を行うため、音声が聴取される仮想の受音点(以下、「仮想マイク」という)を仮想空間に設定する。この例では仮想マイクは、プレイヤキャラクタ(以下、「キャラクタP」という)の近傍に設定されている。仮想マイクは、キャラクタPの移動にともなって移動する。
【0031】
このゲームでは、仮想空間内に存在する仮想音源から音声が発せられたように、音響的な演出が行われる。音響処理部562は、仮想の音源(プレイヤキャラクタが所持する武器など)から発せられた音声を、あたかも仮想マイクで集音したかのような音響表現で、スピーカ62に出力する。仮想マイクは、仮想の聴取者であり、音響処理部562による音像定位の基準点である。
【0032】
ゲーム進行部561が進行するゲームでは、各ユーザの操作を受けて、プレイヤキャラクタを三次元の仮想の空間で活動させたり、プレイヤキャラクタ同士でグループを編成して様々なアクションを行わせたりする。より具体的には、このゲームは、プレイヤキャラクタが敵キャラクタを攻撃して倒していくアクションゲームである。
【0033】
このゲームでは、プレイヤキャラクタの移動過程やアクション等において、所定のトリガ条件を満たすとBGM(Back Ground Music)が流れる。所定のトリガ条件とは、例えば、プレイヤキャラクタの所定場所への移動、敵キャラクタの出現、敵キャラクタを倒したあと、などである。また、このゲームでは、音響的な表現として、いわゆる環境音も付加されている。
【0034】
このような環境音としては、例えば、洞窟内の水たまりに天井から落ちてくる水滴の音、洞窟において入口から出口に向かう風の音、町の雑踏の音(通行人の声や付近を通過する自動車の音等)、森や草原に吹く風の音、鳥や虫など小動物の鳴き声等が挙げられる。
【0035】
このゲームでは、仮想空間は、開口を有した壁で互いに区画された、複数の部分空間(エリア)を有している。部分空間としては、建物の部屋を例示できる。この例では、「壁」は、部屋と部屋を仕切る壁である。「開口」は、部屋と部屋の間に設けられ出入り口(例えば開いたドア)である。
【0036】
また、このゲームでは、各エリアに音源として取り扱われるオブジェクトが配置されている。オブジェクトには、仮想空間内における環境を構成する環境オブジェクトと、仮想空間内において仮想の音源となる音源オブジェクトとが含まれる。環境オブジェクトの例としては、岩盤、洞窟、川などの地形を表現するオブジェクト、建物、樹木などを表現するオブジェクトなどが挙げられる。音源オブジェクトの例としては、仮想空間内において動作するオブジェクト、仮想空間内において音声の出力のみを行うオブジェクトなどが挙げられる。なお、キャラクタPも、仮想空間内において仮想の音源となる。
【0037】
ここで、ゲーム進行部561は、キャラクタP(プレイヤキャラクタ)の動作に応じて、カリング処理を行う。カリング処理とは、処理負荷を抑えるため、例えば、ディスプレイ61に表示されないエリアやオブジェクトの描画等の処理をしないように制御する(アンロードする)ことである。
【0038】
例えば、
図2では、エリアAとエリアBとは、開口Lで接続されている。そして、キャラクタPがエリアAからエリアBに移動したとする。このとき、開口Lがドアなどにより閉塞されると、エリアBからエリアA内の状況を視認できなくなる。そして、処理負荷を抑えるため、エリアAは無効となる(アンロードされる)。これに伴い、エリアAに配置されたオブジェクトF(音源オブジェクト)も無効となる。このため、キャラクタPが開口Lを通過すると、オブジェクトFを音源としていた音声が急に停止することとなるため、プレイヤが違和感を覚える。
【0039】
そこで、本実施形態では、音響処理部562は、エリアA(第1領域)がアンロードされた場合、オブジェクトF(第1音源)に対応するオブジェクトF’(第2音源)を生成し、オブジェクトF’からオブジェクトFの音声を再生する。これにより、違和感のない音響表現を可能としている。
【0040】
《動作例》
ここでは、
図2を参照しつつ、音響処理部562の処理を説明する。
【0041】
例えば、音響処理部562は、エリアAがアンロードされると、エリアA内にあるオブジェクトFを検出する。そして、音響処理部562は、検出したオブジェクトFがキャラクタPから距離D1(第1距離)の領域C(第2領域)内にあると判定すると、オブジェクトFが移動するか否かを判定する。
【0042】
例えば、音響処理部562は、オブジェクトFが敵キャラクタやノンプレイヤキャラクタなどであれば、オブジェクトFが移動するものと判定し、オブジェクトFが植物や定着した設備などであれば、オブジェクトFが移動しないものと判定する。
【0043】
また、音響処理部562は、オブジェクトFが移動しないものと判定した場合には、オブジェクトFの位置に音源オブジェクトであるオブジェクトF’を配置し、オブジェクトFが移動するものと判定した場合には、オブジェクトFから距離D2(第2距離)以内にある位置にオブジェクトF’を配置する。なお、
図2では、オブジェクトFが移動するものと判定した場合の例を示している。また、距離D2は、当該オブジェクトFの移動可能な距離に基づいて設定される。
【0044】
ここで、オブジェクトF’とは、オブジェクトF(キャラクタなど)とは異なり、オブジェクトFの音源としての機能のみを備えるものである。具体的には、オブジェクトF’には、3Dモデルなどのモデルは存在せず(または、モデルが表示されず)、音源として必要なパラメータ以外のパラメータ(体力など)も設定されない。そのため、オブジェクトF’はオブジェクトFよりも処理負荷が低くなる。
【0045】
そして、音響処理部562は、オブジェクトF’の位置からオブジェクトFの音声を再生する。
【0046】
以上をまとめると、コンピュータ(制御部56)を、ユーザの操作に応じて、仮想空間でキャラクタを動作させるゲーム進行部561と、仮想空間のエリアA(第1領域)に配置されたオブジェクトF(第1音源)から発する音声を再生する音響処理部562として機能させ、音響処理部562は、エリアAがアンロードされた場合、オブジェクトFに対応するオブジェクトF’(第2音源)を生成し、オブジェクトF’からオブジェクトFの音声を再生するゲームプログラムである。
【0047】
《本実施形態の効果》
本ゲームでは、エリアAに配置されたオブジェクトFがアンロードされた場合、オブジェクトFに対応するオブジェクトF’を生成し、オブジェクトF’からオブジェクトFの音声を再生する。これにより、エリアAからエリアBの移動に伴い、エリアAに配置されたオブジェクトFがアンロードされたとしても、生成されたオブジェクトF’からオブジェクトFの音声の再生が継続される。これにより、違和感のない音響表現が可能となり、音声再生による没入感を向上させることができる。
【0048】
また、音響処理部562は、エリアAがアンロードされた場合、オブジェクトFがキャラクタPから距離D1(第1距離)以内である領域C(第2領域)に配置されていたとき、オブジェクトF’からオブジェクトFの音声を再生する。これにより、音響表現に不要な音源の生成を抑止できるため、処理負荷を軽減することができる。
【0049】
また、エリアAがアンロードされた場合、オブジェクトF(オブジェクトF’)から距離D2(第2距離)以内にある位置において、オブジェクトFの音声を再生する。これにより、オブジェクトFが移動するものである場合であっても違和感のない音響表現が可能となる。
【0050】
[その他の実施形態]
また、上記実施形態では、オブジェクトFが音源オブジェクトである場合を例にして説明したが、オブジェクトFは、環境オブジェクトなどであってもよいし、音源となるオブジェクトであれば、どのようなものであってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、音響処理部562は、エリアA(第1領域)がアンロードされた場合において、オブジェクトF(第1音源)に対応するオブジェクトF’(第2音源)を生成する場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、音響処理部562は、エリアAがアンロードされた場合、オブジェクトF(第1音源)をアンロードせずにオブジェクトFから発する音声を再生してもよい。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、上記実施形態において、音響処理部562は、エリアAがアンロードされた後、キャラクタPがエリアAに移動するなどして、エリアAがロードされた(読み込まれた)場合、オブジェクトF’をアンロード(削除)してもよい。
【0053】
また、音響処理部562は、キャラクタPがエリアA(またはオブジェクトF’)から所定距離以上離れた場合、オブジェクトF’をアンロード(削除)してもよい。
【0054】
また、本プログラムによる処理は、ユーザ用装置(ゲーム装置5)が接続されたサーバ装置で行ってもよいし、ユーザ用装置とサーバ装置とで分担してもよい。この形態は、オンラインゲーム用のゲームプログラムとして本プログラムを実装する場合に想定される形態である。
【0055】
これらの他の実施形態を採用した場合においても、本態様の作用効果は発揮される。また、本実施形態と他の実施形態、および他の実施形態同士を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
5 ゲーム装置
55 記憶部
56 制御部(コンピュータ)
561 ゲーム進行部
562 音響処理部