(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117935
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体、及びゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20240823BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240823BHJP
A43B 21/06 20060101ALI20240823BHJP
A43B 13/04 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C08L23/26
C08K3/013
A43B21/06
A43B13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024039
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】京 美紀
(72)【発明者】
【氏名】山浦 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 栄治
(72)【発明者】
【氏名】早田 大祐
【テーマコード(参考)】
4F050
4J002
【Fターム(参考)】
4F050HA53
4J002AC081
4J002AC111
4J002DA036
4J002DE076
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE166
4J002DE236
4J002DG046
4J002DG056
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DL006
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD140
4J002FD150
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】グリップ性及び耐摩耗性に優れ、かつこれらの特性バランスに優れたゴム組成物が得られる変性共役ジエン系重合体を提供する。
【解決手段】1,2-ビニル結合量が30mol%以上58mol%であり、
芳香族ビニル単量体単位の含有量が20質量%以上45質量%以下であり、
変性率が30質量%以上であり、
ムーニー粘度が30以上90以下であり、
分子量分布が1.5以上3.5以下であり、
ガラス転移温度が-50℃以上0℃以下である、
変性共役ジエン系重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2-ビニル結合量が30mol%以上58mol%であり、
芳香族ビニル単量体単位の含有量が20質量%以上45質量%以下であり、
変性率が30質量%以上であり、
ムーニー粘度が30以上90以下であり、
分子量分布が1.5以上3.5以下であり、
ガラス転移温度が-50℃以上0℃以下である、
変性共役ジエン系重合体。
【請求項2】
請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部と、、
充填剤20質量部以上と、
を、含有するゴム組成物。
【請求項3】
前記充填剤が無機充填剤である、
請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分が、前記変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体を含み、
前記ゴム成分中の前記変性共役ジエン系重合体の含有量が、5質量%以上である、
請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
靴用ゴム組成物である、
請求項2に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系重合体、及びゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化がまずます加速していく中で、靴に対して安全で長期に使用できることへの要求が高まっている。そのためには、靴底用ゴム組成物には、安全性に対してはグリップ性、長期に使用できることに対しては耐摩耗性が要求されている。
しかしながら、従来のゴム組成物においてグリップ性と耐摩耗性を同時に満足させることは困難である、という問題点を有している。
【0003】
このような問題点を解決するべく、特許文献1には、特定の条件下において、-10℃~-30℃の温度範囲に損失弾性係数(tanδ)ピークを有する溶液重合スチレン-ブタジエンゴムと含水シリカとのゴム組成物が提案されている。
【0004】
一方において、シリカ等の無機充填剤は、カーボンと比較して、ゴム成分との親和性が乏しいため、前記特許文献1に開示されているゴム組成物は、前記ゴム組成物中のシリカの分散性が悪く、十分な耐摩耗性が得られない、という問題点を有している。
これに対し、特許文献2では、特定の官能基を共役ジエン系重合体に導入することで、シリカの分散性を改良し、耐摩耗性を改善したゴム組成物が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記のいずれの文献においても、グリップ性と耐摩耗性の両立の観点からは、未だ満足するレベルではなく、さらなる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-17717号公報
【特許文献2】特開2005-162777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特に靴用ゴム組成物には、高いグリップ性と耐摩耗性が求められるが、従来開示されている技術においては、これらを同時に満足することは困難である、という問題点を有している。
【0008】
そこで本発明においては、上記の従来技術の課題を解決するべく、グリップ性及び耐摩耗性に優れ、かつこれらの特性バランスに優れたゴム組成物が得られる変性共役ジエン系重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した従来技術の問題点を解決するため、鋭意検討した結果、1,2-ビニル結合量、芳香族ビニル単量体単位の含有量、変性率、ムーニー粘度、分子量分布、及びガラス転移温度を特定した変性共役ジエン系重合体により、上述した従来技術の問題点が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
〔1〕
1,2-ビニル結合量が30mol%以上58mol%であり、
芳香族ビニル単量体単位の含有量が20質量%以上45質量%以下であり、
変性率が30質量%以上であり、
ムーニー粘度が30以上90以下であり、
分子量分布が1.5以上3.5以下であり、
ガラス転移温度が-50℃以上0℃以下である、
変性共役ジエン系重合体。
〔2〕
前記〔1〕に記載の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部と、、
充填剤20質量部以上と、
を、含有するゴム組成物。
〔3〕
前記充填剤が無機充填剤である、前記〔2〕に記載のゴム組成物。
〔4〕
前記ゴム成分が、前記変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体を含み、
前記ゴム成分中の前記変性共役ジエン系重合体の含有量が、5質量%以上である、
前記〔2〕又は〔3〕に記載のゴム組成物。
〔5〕
靴用ゴム組成物である、前記〔2〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のゴム組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、グリップ性及び耐摩耗性に優れ、かつこれらの特性バランスに優れたゴム組成物が得られる変性共役ジエン系重合体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変更して実施することができる。
【0013】
〔変性共役ジエン系重合体〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、1,2-ビニル結合量が30mol%以上58mol%であり、芳香族ビニル単量体単位の含有量が20質量%以上45質量%以下であり、変性率が30質量%以上であり、ムーニー粘度が30以上90以下であり、分子量分布が1.5以上3.5以下であり、ガラス転移温度が-50℃以上0℃以下である。かかる変性共役ジエン系重合体を用いることにより、グリップ性及び耐摩耗性に優れたゴム組成物が得られる。
【0014】
(1,2-ビニル結合量)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、1,2-ビニル結合量が、30mol%以上58mol%以下である。本実施形態の変性共役ジエン系重合体の1,2-ビニル結合量は、40mol%以上58mol%以下であることが好ましく、48mol%以上58mol%以下であることがより好ましい。1,2-ビニル結合量が前記範囲であることで、グリップ性と耐摩耗性の特性バランスが良好なゴム組成物が得られる。1,2-ビニル結合量が30mol%以上であることにより、優れたグリップ性が得られる傾向にある。1,2-ビニル結合量が58mol%以下であることにより優れた耐摩耗性が得られる傾向にある。なお、靴用ゴム組成物の構成成分として、本実施形態の変性共役ジエン系重合体以外のその他のゴム状重合体として、シス結合量の高いハイシスブタジエンを使った場合は、本実施形態の変性共役ジエン系重合体の1,2-ビニル結合量を変えることでハイシスブタジエンとの相容性を調整することができ、1,2-ビニル結合量を高くすることでハイシスブタジエンとの相容性が良好なものとなる傾向にある。
【0015】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の1,2-ビニル結合量は、重合工程において重合開始剤に対する極性物質の添加量を調整することで上述した数値範囲に制御することができ、極性物質の添加量を多くすることで、1,2-ビニル結合量は高くなる傾向にある。
【0016】
(芳香族ビニル単量体単位の含有量)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル単量体単位の含有量が、20質量%以上45質量以下である。本実施形態の変性共役ジエン系重合体の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、25質量%以上45質量以下であることが好ましく、35質量%以上45質量以下であることがより好ましい。芳香族ビニル単量体単位の含有量が前記範囲であることにより、優れたグリップ性を有しながら、高い耐摩耗性を示すゴム組成物が得られる。20質量%以上であることにより、優れた引張強度が得られる傾向にある。45質量%以下であると、重合溶媒への溶解性が良好なものとなり、生産性に優れたものとなる傾向にある。
変性共役ジエン系重合体の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、重合工程におけるモノマーの添加量、重合温度、重合時間を調整することにより、上記数値範囲に制御できることができる。
【0017】
(変性率)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の変性率は30質量%以上である。好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは65質量%以上である。
変性率が前記範囲であることで、アウトソールの補強材であるシリカ系無機充填剤との相互作用が強くなり、分散性を高め加工性を向上させながら、優れたグリップ性及び高い耐摩耗性を示すゴム組成物を製造可能な変性共役ジエン系重合体が得られる。
変性率の上限は特に限定されないが例えば100質量%である。
変性共役ジエン系重合体の変性率は、カラム吸着GPC法により測定できる。変性率は、より詳細には実施例に記載の方法により測定できる。
変性率は、重合開始剤の種類、その使用量、変性剤の使用量を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0018】
なお、本明細書中、「変性率」は、変性共役ジエン系重合体の総量に対する窒素原子含有官能基を有する重合体の質量比率を表す。本実施形態の変性共役ジエン系重合体への窒素原子の導入位置は、変性共役ジエン系重合体の重合開始末端、分子鎖中(グラフト含む)及び重合末端のいずれでもよい。重合開始末端へ窒素原子を導入する方法としては、例えば、国際公開第2016/133202号に記載の、窒素原子を含有する有機リチウム化合物を重合開始剤として利用する方法が挙げられる。
【0019】
(ムーニー粘度)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度は、30以上90以下である。好ましくは50以上90以下であり、より好ましくは55以上80以下である。
ムーニー粘度が前記範囲であることにより、優れたグリップ性を有しながら、高い耐摩耗性を示すゴム組成物を製造可能な変性共役ジエン系重合体が得られる。
ムーニー粘度が、30以上であると、十分な引張強度が得られる傾向にあり、90以下であると優れた加工性が得られる傾向にある。
ムーニー粘度は、例えば、ムーニー粘度計(上島製作所社製の商品名「VR1132」)を用い、JIS K6300(ISO 289-1)に準拠し、L形ローターを用いてムーニー粘度を測定できる。具体的には、まず、試料を100℃で1分間予熱した後、ローターを2rpmで回転させ、4分後のトルクを測定して100℃におけるムーニー粘度を測定する。
ムーニー粘度は、変性共役ジエン系重合体を高分子量、高変性率、多分岐構造とすることで高くなる傾向にあり、重合開始剤、共役ジエン系重合体の活性末端に対するカップリング剤の添加量を調整することで上記数値範囲に制御することができる。ムーニー粘度は、そのほか、後述の製造方法で説明する方法により制御することができる。
【0020】
(分子量分布(MWD))
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、分子量分布(MWD)が、1.5以上3.5以下である。好ましくは1.8以上2.8以下であり、より好ましくは1.9以上2.6以下である。
分子量分布(MWD)が前記範囲であることで、加硫物にする際の加工性に優れつつ、優れた耐摩耗性を示すゴム組成物を製造可能な変性共役ジエン系重合体が得られる傾向にある。
分子量分布は、重合時の滞留時間分布やカップリング剤の種類・添加量を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0021】
(ガラス転移温度)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、-50℃以上0℃以下である。好ましくは-40℃以上0℃以下であり、より好ましくは-30℃以上0℃以下℃である。
前記範囲のガラス転移温度を有することで、グリップ性と耐摩耗性の物性バランスが良好なゴム組成物を製造可能な変性共役ジエン系重合体が得られる。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体では、ガラス転移温度(Tg)が-50℃以上であることにより、ゴム組成物のグリップ性が優れたものとなる傾向にあり、0℃以下であることにより、ゴム組成物において優れた耐摩耗性が得られる傾向にある。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、芳香族ビニル/共役ジエン比を小さくすることで、ガラス転移温度(Tg)は低くなる傾向にあり、重合開始剤の添加量に対する極性物質の添加量を少なくすることで、1,2-ビニル結合量が低くなり、ガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向になる。ガラス転移温度は、芳香族ビニル単量体単位の含有量を1質量%低くすることで、ガラス転移温度(Tg)は約1℃低くなり、1,2-ビニル結合量を2mol%低くすることで、ガラス転移温度(Tg)は約1.5℃低くなる傾向にある。
【0022】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の1,2-ビニル結合量は、重合開始剤に対する極性物質の添加量を調整することで制御することができ、極性物質の添加量を多くすることで、1,2-ビニル結合量は高くなる傾向にある。これにより、ガラス転移温度(Tg)を制御できる。
【0023】
〔変性共役ジエン系重合体の製造方法〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、例えば、有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を重合し、共役ジエン系重合体を得る重合工程と、共役ジエン系重合体の活性末端に、変性基を含有するカップリング剤(以下、「変性剤」と記載)を反応させて、変性共役ジエン系重合体を得る変性工程を含む。
変性剤としては、共役ジエン系重合体の活性末端と反応して、4分岐以上の変性共役ジエン系重合体を製造可能なものが、変性共役ジエン系重合体の加工性の観点から好ましい。このような変性剤としては、重合生産性や安定した変性率を得る観点で、例えば、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、イソシアヌル酸誘導体、窒素基含有カルボニル化合物、窒素基含有ビニル化合物、窒素基含有エポキシ化合物、及び窒素基含有アルコキシシラン化合物等が好ましい。
【0024】
なお、本明細書において「化合物」とは、重合前の化合物をいい、「単量体単位」とは重合体を構成する構成単位をいう。
【0025】
重合開始剤としての有機リチウム化合物としては、以下に限定されないが、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムが挙げられる。特に、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムが好ましい。
【0026】
また、重合開始剤としては、活性水素を有しない、又は、活性水素を保護した構造の置換アミノ基を有する有機リチウムを用いてもよい。
活性水素を有しない構造の置換アミノ基を有する有機リチウムとしては、以下に限定されないが、例えば、3-ジメチルアミノプロピルリチウム、3-ジエチルアミノプロピルリチウム、4-(メチルプロピルアミノ)ブチルリチウム、4-ヘキサメチレンイミノブチルリチウムが挙げられる。
活性水素を保護した構造のアミノ基を有するアルキルリチウム化合物としては、以下に限定されないが、例えば、3-ビストリメチルシリルアミノプロピルリチウム、4-トリメチルシリルメチルアミノブチルリチウムが挙げられる。
【0027】
前記置換アミノ基を有する有機リチウム化合物は、重合可能な単量体、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、スチレン等の単量体を少量反応させて、可溶化したオリゴマーの有機リチウム化合物として用いることもできる。
【0028】
これらの有機リチウム化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、他の有機金属化合物と併用してもよい。
【0029】
重合工程において添加する有機リチウム量を調整することで、変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度を制御することができる。すなわち、添加する有機リチウム量を多くすると、ムーニー粘度は小さくなり、添加する有機リチウム量を少なくすると、ムーニー粘度は大きくなる。このことを利用して、所望のムーニー粘度に制御することができる。
【0030】
重合工程で用いる重合モノマーである共役ジエン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、及び1,3-ヘプタジエンが挙げられる。
これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3-ブタジエンやイソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
重合工程で用いる重合モノマーである芳香族ビニル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、 m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、及びジフェニルエチレンが挙げられる。
これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を含むことにより、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を靴のアウトソールに材料に用いた場合の硬度を制御することができる。
【0032】
重合工程においては、上述した重合モノマーの他、その他のモノマーも用いることができる。
その他のモノマーとしては、以下に限定されないが、例えば、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、ジビニルベンゼンなどの非共役ポリエン化合物単量体;ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン等の環状非共役ポリエン化合物単量体が挙げられる。
このようなその他のモノマーを用いることにより、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を靴のアウトソールの材料に用いた場合、破壊強度やグリップ性や耐摩耗性のバランスがより向上する傾向にある。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
共役ジエン系重合体の重合反応は、溶媒中で重合することが好ましい。
溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的な炭化水素系溶媒として、以下に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素が挙げられる。
【0034】
重合工程においては、極性化合物を添加してもよい。これにより、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とをランダムに共重合させることができる。極性化合物は、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる傾向にある。また、重合反応の促進等にも効果がある傾向にある。
【0035】
極性化合物としては、以下に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム-tert-アミラート、カリウム-tert-ブチラート、ナトリウム-tert-ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等が挙げられる。
これらの極性化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができるが、重合開始剤1モルに対して、0.01モル以上100モル以下であることが好ましい。
このような極性化合物(ビニル化剤)は重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。
多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる傾向にある。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、例えば、特開昭59-140211号公報に記載されているように、スチレンの全量と1,3-ブタジエンの一部とで共重合反応を開始させ、共重合反応の途中に残りの1,3-ブタジエンを断続的に添加する方法を用いてもよい。
【0037】
重合工程においては、バッチ式、連続式のどちらの重合方法で重合を行ってもよいが、高分子量成分と低分子量成分、及び分岐を制御した共役ジエン系重合体を安定的に生産する観点から、連続式で重合することが好ましく、1個の反応器、又は2個以上の反応器を連結させた反応器で重合することがより好ましい。滞留時間を長くすると、分子量分布が大きくなる傾向にあるため、滞留時間を調整することで、分子量分布を調整することができる。また、変性率を30質量%以上にするためには、重合温度は50℃以上100℃以下が好ましく、ソリッドコンテントを16.0質量%以下にし、共役ジエン系重合体を重合することが好ましい。また、重合温度によって、分子量分布を調整することも可能であり、重合温度を高くすると、分子量分部は広がる傾向にある。
【0038】
変性工程は、特に限定されず、撹拌機を有し、ジャケットで温度制御が可能な反応器を用いて実施することができ、インラインミキサー、スタティックミキサー等を用いてもよい。
【0039】
変性工程において用いる変性剤としては、重合生産性や高い変性率の観点から、窒素を含有する変性剤が好ましく、例えば、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、イソシアヌル酸誘導体、窒素基含有カルボニル化合物、窒素基含有ビニル化合物、窒素基含有エポキシ化合物、及び窒素基含有アルコキシシラン化合物等が好ましい。
【0040】
また、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を用いたゴム組成物をアウトソールの材料として用いた際の加工性の観点から、変性剤の分岐数は高い方が好ましい。分岐数は特に限定されないが、加工性の観点から3分岐以上が好ましく、4分岐以上がより好ましい。分岐数の上限は特に限定されないが、加工性の観点から30分岐以下が好ましい。
【0041】
窒素を含有する変性剤としては、窒素基含有エポキシ化合物が挙げられる。窒素基含有エポキシ化合物としてが、以下に限定されないが、例えば、N,N-ジグリシジル-4-グリシドキシアニリン、1-N,N-ジグリシジルアミノメチル-4-グリシドキシ-シクロヘキサン、4-(4-グリシドキシフェニル)-(N,N-ジグリシジル)アニリン、4-(4-グリシドキシフェノキシ)-(N,N-ジグリシジル)アニリン、4-(4-グリシドキシベンジル)-(N,N-ジグリシジル)アニリン、4-(N,N’-ジグリシジル-2-ピペラジニル)-グリシドキシベンゼン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、4,4-メチレン-ビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、1,4-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ビス(ジグリシジルアミノ)ベンゾフェノン、4-(4-グリシジルピペラジニル)-(N,N-ジグリシジル)アニリン、2-〔2-(N,N-ジグリシジルアミノ)エチル〕-1-グリシジルピロリジン、N,N-ジグリシジルアニリン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルオルソトルイジン、N,N-ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
これらのうち、N,N-ジグリシジル-4-グリシドキシアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
【0042】
これらの窒素を含有する変性剤としては、本実施形態の変性共役ジエン系重合体の重合生産性や高い変性率や、本実施形態の変性共役ジエン系重合体をアウトソールの材料に用いた際の引張強度の観点で、窒素基含有アルコキシシラン化合物がより好ましい。
【0043】
窒素基含有アルコキシシラン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピルトリエトキシシラン、3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピルトリメトキシシラン、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(5-トリメトキシシリルペンチル)-1-アザ-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-エチル-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-エチル-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2-トリメトキシシリルエチル)アミン、トリス(4-トリメトキシシリルブチル)アミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、及びN1-(3-(ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N1-メチル-N3-(3-(メチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N3-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,3-プロパンジアミンが挙げられる。
【0044】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法において、重合工程の終盤に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。
失活剤としては、以下に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。ここでの重合工程の終盤とは、添加したモノマーが95%以上重合に消費された状態を言う。
中和剤としては、以下に限定されないが、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸(炭素数9~11個で、10個を中心とする、分岐の多いカルボン酸混合物)等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガスが挙げられる。
【0045】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法において、重合工程の終盤に、ゲル生成を防止や加工安定性の観点で、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。
ゴム用安定剤としては、以下に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(以下「BHT」とも記す。)、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェノール)プロピネート、2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が好ましい。
【0046】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法において、重合工程の終盤等に、重合体の生産性や、ゴム組成物を用いてアウトソールを製造する際に充填剤等を配合したときの加工性の改善を図る観点から、必要に応じて、ゴム用軟化剤を添加することが好ましい。
ゴム用軟化剤としては、以下に限定されないが、例えば、伸展油、液状ゴム、樹脂等が挙げられる。加工性や生産性や経済性の観点で、伸展油が好ましい。
ゴム用軟化剤を共役ジエン系重合体に添加する方法としては、以下に限定されないが、ゴム用軟化剤を重合体溶液に加え、混合して、ゴム用軟化剤含有の重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。
【0047】
伸展油としては、例えば、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体を用いたゴム組成物中の伸展油の含有量は、アウトソールの材料に用いた際の経年劣化を抑制する観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下がさらにより好ましい。
【0048】
樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体(桐油樹脂を含む)、トール油、トール油の誘導体、ロジンエステル樹脂、天然及び合成のテルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、混合脂肪族-芳香族炭化水素樹脂、クマリン-インデン樹脂、フェノール樹脂、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、モノオレフィンのオリゴマー、ジオレフィンのオリゴマー、水素化芳香族炭化水素樹脂、環式脂肪族炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、炭化水素樹脂、水素化桐油樹脂、水素化油樹脂、水素化油樹脂と単官能又は多官能アルコールとのエステル等が挙げられる。
これら樹脂は、1種類で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。水素化する場合、不飽和基を全て水添してもよいし、一部残してもよい。
【0049】
樹脂を添加した際の効果として、共役ジエン系重合体と充填剤等とを配合したゴム組成物としたときの加工性を改善することに加え、加硫物としたときにおける破壊強度を改良する傾向にある。
【0050】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、重合体溶液から溶媒を除去して取得できる。取得方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばスチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱気する方法等が挙げられる。
【0051】
〔ゴム組成物〕
本実施形態のゴム組成物は、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部と、充填剤20質量部以上とを含有する。
本実施形態のゴム組成物は、上述した本実施形態の変性共役ジエン系重合体を含むことで、優れたグリップ性、耐摩耗性を有する。
【0052】
本実施形態のゴム組成物において、前記ゴム成分中の本実施形態の変性共役ジエン系重合体の含有量は、100質量%であってもよいが、アウトソールの材料に用いた際の耐摩耗性、破壊強度を向上させる観点から、好ましくは90質量%以下であり、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。
本実施形態のゴム組成物における、前記ゴム成分中の本実施形態の変性共役ジエン系重合体の含有量は、アウトソールの材料に用いた際のグリップ性を向上させる観点から、ゴム成分の総量に対して5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がさらにより好ましい。
【0053】
(ゴム成分中の、変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体)
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分として、本実施形態の変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体を含有してもよい。
前記ゴム状重合体としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル-クロロプレンゴム、アクリロニトリル-イソプレンゴム、スチレン-クロロプレンゴム、スチレン-イソプレンゴムなどのジエン系ゴムが挙げられる。
これらは、1種単独でもよいし複数組み合わせて使用してもよい。好ましくは天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム及びスチレン-ブタジエンゴムから選択されるゴム状重合体であり、より好ましくは、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)である。
【0054】
本実施形態のゴム組成物を構成するゴム成分としては、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を単独で使用することもできるが、本実施形態の変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体を含有する場合、前記ゴム状重合体の含有量は、ゴム成分の総量に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、さらにより好ましくは60質量%以上である。
前記ゴム状重合体の含有量が上記範囲内であることにより、本実施形態のゴム組成物をアウトソールの材料として用いた際に、耐摩耗性、破壊強度がより向上する傾向にある。また、前記ゴム状重合体の含有量は、本実施形態のゴム組成物をアウトソールの材料として用いた際にグリップ性を向上させる観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0055】
(充填剤)
本実施形態のゴム組成物は、充填剤を含む。本実施形態のゴム組成物をアウトソールの材料として用いた際のグリップ性や耐摩耗性を向上させる観点から、充填剤の含有量は、ゴム成分の総量100質量部に対して、20質量部以上であり、30質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましい。
また、本実施形態のゴム組成物をアウトソールの材料として用いた際の軽量化の観点から、充填剤の含有量は、ゴム成分の総量100質量部に対して、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。
【0056】
本実施形態のゴム組成物に用いる充填剤は、無機充填剤であることが好ましい。
無機充填剤としては、公知の無機充填剤を用いることができ、以下に限定されないが、例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等のシリカ系無機充填剤、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、種々の表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナ、カーボン等が挙げられる。
【0057】
無機充填剤としては、シリカが好ましい。例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカが挙げられる。無機充填剤がシリカの場合、ゴム成分とシリカとの相互作用を良好なものとする観点から、変性剤の変性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0058】
(シランカップリング剤)
本実施形態のゴム組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。
シランカップリング剤は、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有しており、それぞれの間の相互作用を緊密にする機能を有している。一般的には、硫黄結合部分とアルコキシシリル基、シラノール基部分を一分子中に有する化合物が好適に用いられる。
【0059】
シランカップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、エトキシ(3-メルカプトプロピル)ビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シラン[エボニック・デグサ社製:Si363]、Momentive社製のNXT-Z30,NXT-Z45,NXTZ60,NXTシランなどのメルカプト基を含有するシランカップリング剤、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-ジスルフィド、ビス-[2-(トリエトキシシリル)-エチル]-テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス-[2-(トリエトキシシリル)-エチル]-テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。
【0060】
前記シランカップリング剤の中でも、補強効果の高さの観点から、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-ジスルフィド、エトキシ(3-メルカプトプロピル)ビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シラン[エボニック・デグサ社製:Si363]、Momentive社製のNXT-Z30,NXT-Z45,NXTZ60,NXTシランなどのメルカプト基を含有するシランカップリング剤、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-テトラスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
シランカップリング剤の配合量は、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれの間の相互作用を緊密にする効果を一層顕著なものにする観点から、ゴム成分の総量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましい。また加工性が良好となる観点から、シランカップリング剤の配合量は、ゴム成分の総量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
【0062】
(ゴム用軟化剤)
本実施形態のゴム組成物は、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を含有してもよい。
ゴム用軟化剤としては、例えば、鉱物油系ゴム用軟化剤、及び、液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。
前記鉱物油系ゴム用軟化剤は、プロセスオイル又はエクステンダーオイルとも呼ばれ、ゴムの軟化、増容、加工性の向上を図るために使用されている。また、前記鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30~45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体とともに用いるゴム用軟化剤としては、適度な芳香族含量を有するものが変性共役ジエン系重合体との親和性がよい傾向にあるため好ましい。
【0063】
(ゴム組成物の製造方法)
本実施形態のゴム組成物は、本実施形態の変性共役ジエン系重合体及びその他のゴム状重合体を含むゴム成分、充填剤、さらには必要に応じてシランカップリング剤、ゴム用軟化剤等の添加剤等を混合することにより製造できる。
混合方法については、以下に限定されないが、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法が挙げられる。
【0064】
これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が、生産性、良混練性の観点から好ましい。また、本実施形態のゴム組成物の構成材料を一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0065】
本実施形態のゴム組成物は、加硫剤により加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。加硫剤としては、以下に限定されないが、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が挙げられる。
【0066】
硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
【0067】
加硫剤の含有量は、補強効果によって破断強度を向上させる観点から、変性共役ジエン系重合体及びゴム状重合体よりなるゴム成分の総量100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましい。また柔軟性を有し破断伸びが向上する観点から、加硫剤の含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
【0068】
加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は特に限定されないが、加硫時間を短縮でき生産効率を高められる観点から120℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。また加硫時の熱劣化を抑制する観点から200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。
【0069】
加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。
加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、以下に限定されないが、例えば、スルフェンアミド系化合物、グアニジン系化合物、チウラム系化合物、アルデヒド-アミン系化合物、アルデヒド-アンモニア系化合物、チアゾール系化合物、チオ尿素系化合物、ジチオカルバメート系化合物などの加硫促進剤が挙げられる。
【0070】
また、加硫助剤としては、以下に限定されないが、例えば、亜鉛華、ステアリン酸が挙げられる。
【0071】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分の総量100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましい。
【0072】
本実施形態のゴム組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外のその他の軟化剤、充填剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、及び滑剤等の各種添加剤を添加してもよい。
前記耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
【0073】
〔靴用ゴム組成物〕
本実施形態のゴム組成物は、靴用ゴム組成物として好適である。
本実施形態の靴用ゴム組成物は、特に、靴底用ゴム組成物として好適に用いられる。すなわち、本実施形態の靴底用ゴム組成物を用いることにより、耐摩耗性、グリップ性に優れたアウトソールが得られる。
本実施形態の靴用ゴム組成物は、以下に限定されないが、例えば、スポーツシューズ、ランニングシューズ、トレキングシューズ、カジュアルシューズ等の履物全般の靴底材料への利用が可能である。
【実施例0074】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
以下「部」は特に断りがない限り「質量部」を意味する。
実施例及び比較例における各種の物性は下記に示す方法により測定した。
【0075】
(分子量分布(MWD))
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」ともいう)測定装置を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、Mw/Mnから、分子量分布(MWD)を算出した。
具体的な測定条件を以下に示す。
下記測定用液20μLをGPC測定装置に注入して測定を行った。
<測定条件>
装置 :東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りテトラヒドロフラン(THF)
ガードカラム:東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperH-H」、
分離カラム :東ソー社製の商品名「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、「TSKgel SuperH7000」をこの順に連結したもの。
オーブン温度:40℃
流量 :0.6mL/分
検出器 :RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)
測定用液 :測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解した測定溶液
【0076】
(ムーニー粘度)
ムーニー粘度計(上島製作所社製の商品名「VR1132」)を用い、JIS K6300(ISO 289-1)に準拠し、L形ローターを用いてムーニー粘度を測定した。
まず、試料を1分間100℃度で予熱した後、ローターを2rpmで回転させ、4分後のトルクを測定して100℃におけるムーニー粘度を測定した。
【0077】
(変性率)
変性率とは、特定のカラムに変性共役ジエン系重合体が吸着する特性を利用して算出されたものである。また、この特性のカラムは、窒素を含有していると吸着される。すなわち、変性率とは、窒素を含有する共役ジエン系重合体の割合である。
変性共役ジエン系重合体の変性率は、変性共役ジエン系重合体がカラムに吸着する特性を利用し、カラム吸着GPC法で以下のとおり測定した。
試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系ゲルを充填したカラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系ゲルを充填したカラムで測定したクロマトグラムと、の差分よりシリカ系カラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。
ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件を以下に示す。下記測定用液20μLをGPC測定装置に注入して測定を行った。
<ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件>
装置 :東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF
ガードカラム:東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperH-H」
カラム :東ソー社製の商品名「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、「TSKgel SuperH7000」をこの順で連結したもの
オーブン温度:40℃
流量 :0.6mL/分
検出器 :RI検出器(東ソー社製 HLC8020)
測定用液 :試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
シリカ系カラムを用いたGPC測定条件を以下に示す。下記測定用液50μLをGPC測定装置に注入して測定を行った。
<シリカ系カラムを用いたGPC測定条件>
装置 :東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :THF
ガードカラム:ジーエルサイエンス社製の商品名「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」
分離カラム :アジレントテクノロジー社製の商品名「Zorbax PSM-1000S」、「PSM-300S」、「PSM-60S」をこの順で連結したもの
オーブン温度:40℃、
流量 :0.5mL/分
検出器 :RI検出器(東ソー社製 HLC8020)
<変性率の計算方法> :
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(質量%)を求めた。
変性率(質量%)=[1-(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
【0078】
(芳香族ビニル単量体単位の含有量)
試料100mgを、クロロホルムで100mLに溶解して測定サンプルとした。
芳香族ビニル単量体単位の芳香族基による紫外線吸収波長(スチレンである場合、254nm付近)の吸収量により、試料である変性共役ジエン系重合体100質量%に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量(質量%)を測定した。
測定装置としては島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」を用いた。
【0079】
(1,2-ビニル結合量)
試料50mgを、二硫化炭素10mLに溶解して測定サンプルとした。溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2-ビニル結合量(mol%)を求めた。測定装置としては、日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT-IR230」を用いた。
【0080】
(ガラス転移温度(Tg))
ISO 22768:2006に準拠して、マックサイエンス社製の示差走査熱量計「DSC3200S」を用い、ヘリウム50mL/分の流通下、-100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0081】
〔変性共役ジエン系重合体の製造〕
(実施例1)試料No.1
内容積が10Lであり、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口を有し、頂部に出口を有し、撹拌機及び温度調整用のジャケットを有するオートクレーブ1基を使用した。さらに反応器の原料入口手前に、スタティックミキサーを1基連結した。予め水分等の不純物を除去した、1,3-ブタジエンを、20.2g/分、スチレンを16.8g/分、n-ヘキサンを137.6g/分で混合し、混合液を得た。この混合液が1基目の反応器に入る直前で、不純物不活性化処理用のn-ブチルリチウムを0.020phmで供給し、スタティックミキサーで混合した後、1基目の反応器の底部に連続的に供給した。さらに、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.320phmと、重合開始剤としてNBL(ノルマルブチルリチウム)を0.102phmとして、反応器の底部へ連続的に供給し、反応器内の温度を82℃に保持し、ゴム溶液を得た。
反応器内で製造されたゴム溶液は、反応器の頂部よりスタティックミキサーへ供給し、スタティックミキサーの手前で、重合開始剤として供給したNBLのリチウムに対して、変性剤としてM1(1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン)を1.0当量(ただし、M1が1molに対し、NBLが4mol反応するものとして添加量を算出した)の比で連続的に供給して反応を行い、試料No.1を得た。試料No.1の物性値を表1に示す。
【0082】
(実施例2~5)試料No.2~5
(比較例1、2)試料No.6、7
試料No.1と同様の手順で、下記表1に示す条件で、試料No.2~5及び6、7の変性共役ジエン系重合体を得た。ただし、実施例4においては、変性剤M2((2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラクシクロペンタン)を用い、この変性剤M2:1molに対して、NBLが4mol反応するものとして添加量を算出した。
【0083】
【0084】
〔ゴム組成物の製造〕
(実施例A1~A5)、(比較例A1、A2)
(実施例B1~B5)、(比較例B1、B2)
(実施例C1~C5)、(比較例C1、C2)
(実施例D1~D5)、(比較例D1、D2)
表2に、上述のようにして作製した変性共役ジエン系重合体(試料Nо.1~7を用いたゴム組成物の配合例として、配合A~配合Eを示す。
変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部と、所定量の無機充填剤等を配合することで、ゴム組成物を得た。
より詳細には、下記表2の材料を次の方法により混練してゴム組成物を得た。
温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.6L)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数30rpmの条件で、原料ゴム(変性共役ジエン系重合体、及び所定のゴム)、無機充填剤(シリカ)、シランカップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤を混練した。このとき、密閉混合器の温度を制御し、排出温度は125~135℃で各ゴム組成物(配合物)を得た。
その後、第二段の混練りとして、73℃に設定したオープンロールにて、一段目で排出されたゴム組成物のロール通しを7回行った。
冷却後、第三段の混練として、73℃に設定したオープンロールにて、二段目配合物に対し、硫黄、加硫促進剤1,2を配合A~Eどの配合も共通で、下記表3に示す質量部数を加えて混練した。
その後、成形し、加硫プレスにて160℃で加硫をし、加硫後のゴム組成物の特性を評価した。
具体的には、後述の方法により評価をした。
加硫時間及び評価結果を表4~表8に示す。
なお、実施例1の変性共役ジエン系重合体を用いて、配合Aによりゴム組成物を作製した場合は実施例A1とし、以下、同様に、実施例及び比較例の番号と配合の記号により、ゴム組成物の実施例及び比較例の記号を(A1~D5)のように付した。すなわち、実施例2の変性共役ジエン系重合体を用いて配合Bによりゴム組成物を得た場合は、下記のゴム組成物において、実施例B2とする。
【0085】
【0086】
【0087】
表2、表3の各成分について、使用した材料は以下のとおりである。
・変性共役ジエン系重合体:表1の実施例1~5、比較例1~2
・BR(宇部興産社製の「UBEPOL U150」)
・IR(日本ゼオン社製、商品名「Nipol IR2200」)
・NBR(日本ゼオン社製、商品名「Nipol DN4050」)
・BIIR(JSR社製、商品名「BROMOBUTYL2244」)
・NR(RSS#1)
・シリカ(エボニック・デグサ社製の商品名「Ultrasil VN3」)
・シランカップリング剤(エボニック・デグサ社製の商品名「Si69」、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
・老化防止剤(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
・加硫促進剤1(2-メルカプトベンゾチアゾール:MBT)
・加硫促進剤2(N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド:TBBS)
【0088】
〔ゴム組成物の評価〕
(評価1)グリップ性:動摩擦係数
新東科学社製の動摩擦試験機(HeidonトライボギアType40)にて動摩擦係数の測定を行った。
滑り面はセラミックタイルで、水で潤滑状態にし、厚み3mm、幅30mm、奥行き30mmの加硫シートをブレードホルダー型の治具に装着し、荷重500gf、滑り速度10mm/分、滑り距離80mmでの動摩擦係数の平均値をグリップ性として評価を行った。
表4~8において、それぞれ比較例A1、比較例B1、比較例C1、比較例D1、比較例E1の評価を100として指数化し、配合A~Eにおける評価結果を指数化した。数値は、大きい方がグリップ性に優れるものとする。
【0089】
(評価2)耐摩耗性
JIS K6264に準拠した、DIN摩耗試験機(上島製作所製)によって比摩耗体積(単位:mm3)を測定した。
表4~8において、それぞれ比較例A1、B1、C1、D1、E1の評価を100として指数化し、配合A~Eにおける評価結果を指数化した。数値は、大きい方が耐摩耗性に優れるものとする。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
表4~8に示すように、いずれの配合においても、実施例は、比較例と比較して、良好なグリップ性と耐摩耗性を有していることが分かった。
本発明の変性共役ジエン系重合体及びゴム組成物は、靴底分野、特にスポーツシューズ、ランニングシューズ、トレキングシューズ、カジュアルシューズ等の履物全般の靴底材料として有用であり、さらには、タイヤ、住宅用ゴム組成物、防振ゴム等を含む工業用品等の各種部材の材料として産業上の利用可能性を有している。