(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117937
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】グラビアオフセット印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 3/20 20060101AFI20240823BHJP
B41F 13/22 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B41F3/20 D
B41F13/22
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024047
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】臼田 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 範幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】原口 峻一
(72)【発明者】
【氏名】上野 武志
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 正人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝博
(57)【要約】
【課題】ブランケットの冷却効率が高く、しかも、コンパクトなブランケット乾燥ユニットを備えたグラビアオフセット印刷機を提供する。
【解決手段】グラビア版を固定するグラビア版固定台と、ブランケット51を有するブランケット胴8と、基材(被印刷物)が固定された被印刷物搬送装置と、ブランケット51の周面にブランケット表面調整空間52を隔てて対向するブランケット乾燥ユニット35とを備える。ブランケット乾燥ユニット35は、加熱エアー(加熱用の気体)がブランケット51に向けて噴出する加熱機構53と、冷却エアー(冷却用の気体)がブランケット51に向けて噴出する冷却機構55とを備える。加熱エアーと冷却エアーとが共にブランケット表面調整空間52を通る。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア版を固定するグラビア版固定台と、
前記グラビア版の凹部からインキを受け取るブランケットを有するブランケット胴と、
被印刷物が固定された被印刷物搬送装置と、
前記ブランケットの周面にブランケット表面調整空間を隔てて対向する乾燥ユニットとを備え、
前記乾燥ユニットは、
加熱された気体が前記ブランケットに向けて噴出する加熱機構と、
冷却用の気体が前記ブランケットに向けて噴出する冷却機構とを備え、
前記加熱機構が発する前記加熱された気体と、前記冷却機構が発する前記冷却用の気体とが共に前記ブランケット表面調整空間を通ることを特徴とするグラビアオフセット印刷機。
【請求項2】
請求項1に記載のグラビアオフセット印刷機において、
さらに、
前記加熱機構を前記ブランケットに対して進退させる加熱機構着脱手段と、
前記加熱機構による加熱動作が終了したことを検知する加熱動作終了検知手段と、
前記加熱機構着脱手段の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記加熱機構が加熱動作を行う場合は前記加熱機構が前記ブランケットに近接するように前記加熱機構着脱手段の動作を制御し、
前記加熱動作終了検知手段が加熱動作の終了を検知した場合には、前記加熱機構が前記ブランケットから離反するように前記加熱機構着脱手段の動作を制御することを特徴とするグラビアオフセット印刷機。
【請求項3】
請求項2に記載のグラビアオフセット印刷機において、
さらに、前記ブランケット胴を予め定めた複数の駆動パターンによって駆動可能なブランケット胴駆動手段を備え、
前記制御装置は、前記加熱動作終了検知手段の検知結果に基づいて前記ブランケット胴駆動手段の前記駆動パターンを切替える構成が採られていることを特徴するグラビアオフセット印刷機。
【請求項4】
請求項3に記載のグラビアオフセット印刷機において、
前記加熱機構が加熱動作を行う場合の前記駆動パターンは、前記ブランケット胴の有効面のみが前記加熱機構と対向するようにブランケット胴が回動するパターンであり、
前記冷却機構が冷却動作を行う場合の前記駆動パターンは、前記ブランケット胴の全周が前記冷却機構と対向するように前記ブランケット胴が一方向に回転するパターンであることを特徴とするグラビアオフセット印刷機。
【請求項5】
請求項1に記載のグラビアオフセット印刷機において、
さらに、前記ブランケット表面調整空間を通過して前記ブランケットに沿って流れた加熱用の気体を吸引して排出する排出ダクトを備えたことを特徴とするグラビアオフセット印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランケットを乾燥させるブランケット乾燥ユニットを備えたグラビアオフセット印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンテッドエレクトロニクス(PE)分野においては、特許文献1に記載されているようにグラビアオフセット印刷機を利用することがある。プリント基板に配線を印刷するにあたって、微細な配線の精度を重視する場合に採用されるのがグラビアオフセット印刷である。
【0003】
従来のグラビアオフセット印刷機おいては、例えば特許文献2に記載されているようにブランケットを乾燥させる乾燥機を備えることがある。
特許文献2に開示されているブランケット乾燥機は、加熱気体をブランケットの表面に吹き付ける加熱部と、冷却気体をブランケットの表面に吹き付ける冷却部とを有している。加熱部と冷却部は、ブランケット胴の周方向に並ぶ状態でブランケットと対向する位置に配置されている。また、加熱部は、ブランケットに吹き付けられた後の加熱気体を強制的に排出する排気口を備えている。冷却部は、ブランケットに吹き付けられた後の冷却気体を強制的に排出する排気口を備えている。
【0004】
特許文献2に示すブランケット乾燥機の加熱部において加熱気体がブランケットに吹き付けられるとともに、冷却部において冷却気体がブランケットに吹き付けられる状態でブランケット胴を回転させることにより、ブランケットに対して加熱と冷却とが行われてブラケットが乾燥する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-59077号公報
【特許文献2】特開平4-59253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のグラビアオフセット印刷機においては、印刷工程を繰り返すうちに、ブランケットがインキを吸収して膨潤状態になることがある。ブランケットが膨潤状態になった場合、ブランケット表面でのインキの受理が妨げられることが原因で微細な配線パターンの形成が困難になり、製品の品質が損なわれる場合がある。
【0007】
膨潤状態になったブランケットは、例えば特許文献2に記載されているように、温度を上昇させて乾燥させることで再びインキを受理できるようになる。
しかし、特許文献2に記載されているブランケット乾燥機では、下記のように2つの問題があった。
第1の問題は、ブランケットを乾燥させた後にブランケットを冷却する際の効率が悪いという問題である。
【0008】
特許文献2に示すブランケット乾燥機は、乾燥終了後に加熱部で加熱気体の供給が停止した後、加熱気体が加熱部内に残存する。加熱部は強制排気口からブランケット近傍の気体を吸い出す構成が採られているが、気圧を低下させて溶媒の揮発を促進しているだけであるから、加熱気体をブランケットに導く流路の上流側の熱を取り除くことは難しい。このため、加熱部に残存する熱がブランケットに伝わるために、その分だけ冷却を行わなければならないから、冷却効率が悪い。
【0009】
第2の問題は、加熱部と冷却部とがブランケット胴の周方向に並べられているから、ブランケット乾燥機が大型化するという問題である。
【0010】
本発明の目的は、ブランケットの冷却効率が高く、しかも、コンパクトなブランケット乾燥ユニットを備えたグラビアオフセット印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明に係るグラビアオフセット印刷機は、グラビア版を固定するグラビア版固定台と、前記グラビア版の凹部からインキを受け取るブランケットを有するブランケット胴と、被印刷物が固定された被印刷物搬送装置と、前記ブランケットの周面にブランケット表面調整空間を隔てて対向する乾燥ユニットとを備え、前記乾燥ユニットは、加熱された気体が前記ブランケットに向けて噴出する加熱機構と、冷却用の気体が前記ブランケットに向けて噴出する冷却機構とを備え、前記加熱機構が発する前記加熱された気体と、前記冷却機構が発する前記冷却用の気体とが共に前記ブランケット表面調整空間を通るものである。
【0012】
本発明は、前記グラビアオフセット印刷機において、さらに、前記加熱機構を前記ブランケットに対して進退させる加熱機構着脱手段と、前記加熱機構による加熱動作が終了したことを検知する加熱動作終了検知手段と、前記加熱機構着脱手段の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記加熱機構が加熱動作を行う場合は前記加熱機構が前記ブランケットに近接するように前記加熱機構着脱手段の動作を制御し、前記加熱動作終了検知手段が加熱動作の終了を検知した場合には、前記加熱機構が前記ブランケットから離反するように前記加熱機構着脱手段の動作を制御してもよい。
【0013】
本発明は、前記グラビアオフセット印刷機において、さらに、前記ブランケット胴を予め定めた複数の駆動パターンによって駆動可能なブランケット胴駆動手段を備え、前記制御装置は、前記加熱動作終了検知手段の検知結果に基づいて前記ブランケット胴駆動手段の前記駆動パターンを切替える構成が採られていてもよい。
【0014】
本発明は、前記グラビアオフセット印刷機において、前記加熱機構が加熱動作を行う場合の前記駆動パターンは、前記ブランケット胴の有効面のみが前記加熱機構と対向する回動範囲でブランケット胴が回動するパターンであり、
前記冷却機構が冷却動作を行う場合の前記駆動パターンは、前記ブランケット胴の全周が前記冷却機構と対向するように前記ブランケット胴が一方向に回転するパターンであってもよい。
【0015】
本発明は、前記グラビアオフセット印刷機において、さらに、前記ブランケット表面調整空間を通過して前記ブランケットに沿って流れた加熱用の気体を吸引して排出する排出ダクトを備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、冷却時に冷却用の気体がブランケット表面調整空間を通るから、加熱機構の熱がブランケットに伝達される際の経路が冷却用の気体によって遮断される。このため、ブランケットの冷却を行う際に加熱機構の熱がブランケットに伝達されることがなく、冷却効果の低下を防ぐことができる。
また、ブランケット胴の周方向において同一の位置に加熱機構と冷却機構とをコンパクトに配置できる。
したがって、本発明によれば、ブランケットの冷却効率が高く、しかも、コンパクトなブランケット乾燥ユニットを備えたグラビアオフセット印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明に係るグラビアオフセット印刷装置の構成を示す側面図である。
【
図2】
図2は、グラビアオフセット印刷機の平面図である。グラビアオフセット印刷装置の構成を示す側面図である。
【
図5】
図5は、インキを供給する工程を説明するための側面図である。
【
図6】
図6は、インキの受理と転写を行う工程を説明するための側面図である。
【
図7】
図7は、加熱動作を説明するための要部の断面図である。
【
図8】
図8は、冷却動作を説明するための要部の断面図である。
【
図9】
図9は、制御系の構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、グラビアオフセット印刷装置の構成を示す側面図である。
【
図11】
図11は、グラビアオフセット印刷装置の構成を示す側面図である。
【
図12】
図12は、グラビアオフセット印刷装置の変形例の構成を示す断面図である。
【
図13】
図13は、グラビアオフセット印刷装置の動作説明を行うための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るグラビアオフセット印刷機の一実施の形態を
図1~
図9を参照して詳細に説明する。
図1に示すグラビアオフセット印刷機1は、
図1において最も下に描かれている基台2の中央部に設けられた印刷部3と、
図1において印刷部3より左側に位置するインキ供給部4と、印刷部3を挟んでインキ供給部4とは反対側に位置する基材保持部5とを備えている。このグラビアオフセット印刷機1においては、インキ供給部4の後述するグラビア版6に供給されたインキ7(
図5参照)が印刷部3の後述するブランケット胴8に移動し、さらに、ブランケット胴8から基材保持部5の被印刷物としての基材9に移動する。以下においては、インキ7のインキ供給部4からブランケット胴8への移動を「受理」といい、インキ7のブランケット胴8から基材9への移動を「転写」という。
【0019】
(インキ供給部の説明)
インキ7は、金属物質を含む導電性ペースト、フラックスペースト、レジストなどで、インキ供給部4の上方に設けられたインキ供給手段としてのインキ供給装置11(
図5参照)からグラビア版6に塗布される。
グラビア版6は、凹部6aからなる印刷パターン部12を有する凹版で、グラビア版定台13に着脱可能に固定されている。グラビア版固定台13は、基台2の上面からなる装置設置面2aに設けられたレール14に移動自在に支持されている。レール14は、基台2上で基台2の一端部から他端部まで水平方向に延びている。レール14が延びる方向は、後述するブランケット胴8の軸線とは直交する水平方向である。
【0020】
グラビア版固定台13は、グラビア版用固定台駆動装置15(
図9参照)に接続されており、グラビア版用固定台駆動装置15によって駆動されてレール14に沿って平行移動する。グラビア版用固定台駆動装置15の動作は、後述する制御装置16によって制御される。
インキ供給装置11は、インキ7を下方に吐出する構成のもので、レール14の上方に設置されている。このインキ供給装置11は、詳細には図示してはいないが、例えば、インキ塗布用のノズルやインクジェットヘッドなどを使用して実現することができる。
【0021】
インキ供給装置11の動作は後述する制御装置16によって制御される。インキ供給装置11の近傍には、インキ押し込み手段としてのブレード17とドクター18とが設けられている。ブレード17は、インキ供給装置11よりブランケット胴8に近接する位置に配置され、ドクター18は、インキ供給装置11よりブランケット胴8から離れる位置に配置されている。これらのブレード17とドクター18は、それぞれ昇降装置19,20(
図9参照)に支持されており、これらの昇降装置19,20によって駆動されて個別に昇降する。ブレード用昇降装置19の動作と、ドクター用昇降装置20の動作は、制御装置16によって制御される。
【0022】
(基材保持部の説明)
基材保持部5は、基材9を着脱可能に支持する被印刷物固定台21を備えている。被印刷物固定台21は、レール14に移動自在に支持されている。また、被印刷物固定台21は、基材用固定台駆動装置22(
図9参照)に接続されており、基材用固定台駆動装置22によって駆動されることによりレール14に沿って平行移動する。基材用固定台駆動装置22の動作は、後述する制御装置16によって制御される。この実施の形態においては、被印刷物固定台21と基材用固定台駆動装置22とが本発明でいう「被印刷物搬送装置」に相当する。
【0023】
(印刷部の説明)
印刷部3は、基台2の装置設置面2aに固定された第1のフレーム31と、第1のフレーム31にフレーム用昇降装置32(
図3、
図9参照)を介して支持された第2のフレーム33と、第2のフレーム33に回転可能に支持されたブランケット胴8と、ブランケット胴8を駆動するブランケット胴駆動手段としてのブランケット胴駆動装置34(
図9参照)と、第2のフレーム33にブランケット胴8と隣り合うように設けられたブランケット乾燥ユニット35などを備えている。
【0024】
第1のフレーム31は、
図2に示すように、基台2の一側部と他側部とにそれぞれ設けられており、基台2に対して移動することができないように固定されている。
フレーム用昇降装置32は、二つある第1のフレーム31にそれぞれ設けられた第1のガイドレール36と、第2のフレーム33を第1のガイドレール36に沿って昇降させる第1のアクチュエータ37(
図9参照)とを備えている。
第1のガイドレール36は、上下方向に延びるように形成されており、第2のフレーム33を移動方向が上下方向のみとなるように移動自在に支持している。
第1のアクチュエータ37は、第1のフレーム31毎に設けられている。この第1のアクチュエータ37の動作は、制御装置16によって制御される。
【0025】
第2のフレーム33は、
図2に示すように、二つある第1のフレーム31にそれぞれ設けられており、後述するブランケット乾燥ユニット35のハウジング41(
図3参照)を駆動する加熱機構着脱手段としての加熱機構着脱装置42(
図9参照)を備えている。加熱機構着脱装置42は、二つある第2のフレーム33にそれぞれ設けられた第2のガイドレール43(
図3参照)と、ブランケット乾燥ユニット35のハウジング41を第2のガイドレール43に沿って平行移動させる第2のアクチュエータ44(
図9参照)とを備えている。
【0026】
第2のガイドレール43は、
図3に示すように、ブランケット胴8の径方向であって、ブランケット胴8の軸線方向から見て斜め上方に向けて延びるように形成されており、後述するブランケット乾燥ユニット35のハウジング41を平行移動可能に支持している。第2のアクチュエータ44は、第2のガイドレール43毎に設けられている。第2のアクチュエータ44がハウジング41を第2のガイドレール43に沿って平行移動させることにより、ハウジング41がブランケット胴8に対して進退する。
【0027】
ブランケット胴8は、
図2に示すように、上方から見てレール14と直交する方向に延びる状態で設置されており、軸線方向の一端部が一方の第2のフレーム33に回転可能に支持されているとともに、軸線方向の他端部が他方の第2のフレーム33に回転可能に支持されている。
この実施の形態によるブランケット胴8は、
図3に示すように、外周部の一部が部分的に凹む構造の切欠部45と、外周部の残りの部分に形成された周面からなる有効面46とを有している。切欠部45は、ブランケット胴8の軸線方向の一端から他端まで延びるように形成されている。この切欠部45には、一対のクランプ機構47が設けられている。これらのクランプ機構47は、ブランケット胴8の有効面46に巻き付けられたブランケット51の一端と他端とを引っ張る状態で保持している。
【0028】
ブランケット51は、グラビア版6の凹部6aからインキ7を受理して基材9に転写するもので、例えばシリコンゴムによってシート状に形成されてブランケット胴8の有効面46に巻き付けられている。なお、図示してはいないが、ブランケット胴8としては、切欠部45を有していない円柱状に形成されたものを使用することができる。この場合は、ブランケット51の一端部と他端部とをそれぞれ粘着テープによってブランケット胴8の周面に貼り付ける。
【0029】
ブランケット胴駆動装置34は、一方の第2のフレーム33に支持されてブランケット胴8の軸線方向の一端部を駆動する構造が採られている。ブランケット胴駆動装置34の動作は制御装置16によって制御される。この実施の形態によるブランケット胴駆動装置34は、制御装置16によって制御されることによりブランケット胴8を所定の回転角度で回動させたり、一方向に回転させる。すなわち、ブランケット胴駆動装置34は、ブランケット胴8を予め定めた複数の駆動パターンによって駆動可能なものである。
【0030】
(乾燥ユニットの説明)
ブランケット乾燥ユニット35は、ブランケット胴8の近傍であって、ブランケット胴8から基材保持部5に向かう水平方向に対して斜め上側に配置されている。また、ブランケット乾燥ユニット35は、ブランケット胴8の軸線方向の一端部から他端部まで延びるように形成されており、ブランケット胴8に巻き付けられたブランケット51の周面にブランケット表面調整空間52を隔てて対向している。ブランケット表面調整空間52とは、ブランケット51とブランケット乾燥ユニット35との間に形成されている空間で、ブランケット乾燥ユニット35とブランケット胴8に挟まれている部分を除いて大気中に開放されている。
【0031】
ブランケット乾燥ユニット35は、上述したハウジング41を含む加熱機構53と、ハウジング41の近傍に設けられた冷却ノズル54を有する冷却機構55とを備えている。
加熱機構53は、ブランケット51を加熱して乾燥させるためのもので、ハウジング41に構成部品を組み付けて構成されている。
ハウジング41は、ブランケット胴8に向けて開口する箱状に形成されており、第2のアクチュエータ44によって駆動されることにより、
図3に示す加熱位置と、
図4に示す冷却位置との間で往復する。
【0032】
この実施の形態によるハウジング41は、
図3に示す加熱位置に位置している状態において、ブランケット51との間に予め定めた隙間が生じるようにブランケット胴8に接近する。この実施の形態においては、ハウジング41が加熱位置に移動することによって、ハウジング41の上端部と下端部との間にブランケット胴8の一部が入り込む。
この実施の形態による加熱機構53の構成部品は、ハウジング41の内部に設けられたヒーター56と、加熱ノズル57およびエアー通路58などである。ハウジング41の加熱位置と冷却位置との距離は、20mm~40mm程度に設定することができる。
【0033】
ヒーター56は、通電されることにより発熱するものである。この実施の形態によるヒーター56は、サーモスタッド59(
図9参照)を介して制御装置16から通電される構成が採られている。サーモスタッド59は、ヒーター56の温度が予め定めた最低温度より低い場合はヒーター56に通電して温度を上昇させ、ヒーター56の温度が予め定めた最高温度に達したときにヒーター56への通電を絶つように構成されている。最高温度は、後述する加熱を行うときに必要な熱量が得られる温度である。このため、ヒーター56は、最低温度と最高温度との間の温度に保たれるようになり、ヒーター56が所定の温度に昇温している状態で加熱機構53が後述する加熱動作を開始することができる。
【0034】
(加熱機構の説明)
加熱機構53による加熱動作を停止する時期は、制御装置16に接続された加熱動作終了検知手段61によって検知している。加熱動作終了検知手段61としては、加熱開始からの経過時間が予め定めた加熱時間に達したときを検知してそのときを加熱動作終了時期とするタイマーや、ブランケット51やブランケット51の近傍の温度が予め定めた加熱終了温度に達したことを検知してそのときを加熱動作終了時期とする温度センサなどによって構成することができる。
【0035】
加熱ノズル57は、図示していないエアー供給管から供給されたエアーが吹き出すもので、ハウジング41内のエアー通路58に向けてエアーが吹き出すように配置されている。エアー供給管を含むエアー供給用の通路には、加熱用エアー供給弁62(
図9参照)が設けられている。加熱用エアー供給弁62は、制御装置16によって動作が制御されて開閉する。加熱用エアー供給弁62が閉じることにより加熱ノズル57へのエアーの供給が遮断され、加熱用エアー供給弁62が開くことによりエアーが加熱ノズル57に供給される。加熱ノズル57に供給されるエアーの供給量は、増減が可能で、ブランケット51の状態やインキ受理領域の広さなどに応じて設定される。
【0036】
また、加熱ノズル57は、図示してはいないが、ハウジング41の長手方向(ブランケット胴8の軸線方向)に所定の間隔をおいて離間する複数の位置にそれぞれ設けられており、ハウジング41内のエアー通路58の一端部(上流側端部)であって、ハウジング41の長手方向の全域にエアーを吹き出すように構成されている。
エアー通路58は、この実施の形態においてはハウジング41を構成する部材によってハウジング41と一体的に形成されており、加熱ノズル57からヒーター56の近傍を経てハウジング41の開口部まで延びている。加熱ノズル57から吹き出したエアーがヒーター56に接触することにより加熱され、本発明でいう加熱された気体としての加熱エアーとなってエアー通路58の下流端58aから噴出する。
図3中においては、エアー通路58内でエアーが流れる方向を矢印によって示している。
【0037】
エアー通路58もハウジング41の長手方向の全域において加熱ノズル57からハウジング41の開口部まで延びるように形成されている。エアー通路58の下流端58aは、
図3に示すように、ブランケット胴8に対して斜め上側に位置するハウジング41の下端部に形成されている。このため、加熱エアーがハウジング41の下端部であってハウジング41の長手方向の全域から噴出し、ブランケット表面調整空間52を通ってブランケット51に吹き付けられる。
【0038】
ハウジング41の上端部には排出ダクト63が接続されている。排出ダクト63は、ハウジング41の上端部内に開口しており、図示していない排気装置から負圧が伝播され、ブランケット51を加熱した後の加熱エアーを吸引して排出する。排出ダクト63は、
図2に示すように、ハウジング41の長手方向(ブランケット胴8の軸線方向)に所定の間隔をおいて離間する複数の位置にそれぞれ設けられている。
【0039】
排出ダクト63に通じる排出通路には排気弁64(
図9参照)が設けられている。排気弁64は、制御装置16によって動作が制御されて開閉する。排気弁64が開くことによりハウジング41内の加熱エアーが排出ダクト63に吸引され、排気弁64が閉じることにより加熱エアーの吸引が停止する。この実施の形態においては、排出ダクト63から排出されるエアーの排気量は、加熱ノズル57から噴出するエアーの供給量と等しくなるように設定されている。
【0040】
排気弁64は、このグラビアオフセット印刷機1が印刷動作を行うときは閉じ、ブランケット乾燥ユニット35が動作しているとき(加熱機構53が動作しているときと、冷却機構55が動作しているとき)には開く。このため、印刷動作を行うとき以外は常に排出ダクト63からエアーが吸引されていることになる。
排出ダクト63と上述したエアー供給管は、加熱機構53が第2のガイドレール43に沿って移動することを許容するために、フレキシブルな管構造(図示せず)を有している。
【0041】
(冷却機構の説明)
冷却機構55は、加熱機構53が動作することにより温度が上昇したブランケット51を空冷により冷却するものである。冷却機構55は、ブランケット51を空冷するために冷却ノズル54を備えている。冷却ノズル54は、図示していない冷却用エアー供給管から供給されたエアーが噴出するもので、ハウジング41の開口部の近傍であって、加熱位置にあるハウジング41の下方近傍と上方近傍とに配置されている。以下においては、冷却ノズル54から噴出したエアーを「冷却エアー」という。この実施の形態においては、冷却エアーが本発明でいう「冷却用の気体」に相当する。また、冷却ノズル54は、冷却エアーの噴出する方向がブランケット胴8を指向する方向となるように、図示していないブラケットによって第2のフレーム33に支持されている。
【0042】
さらに、冷却ノズル54は、ハウジング41の長手方向に所定の間隔をおいて離間する複数の位置にそれぞれ設けられている。冷却エアーは、常温のエアーや、窒素ガスなどのガスを用いることができる。
冷却ノズル54にエアーを供給する通路には冷却用エアー供給弁65(
図9参照)が設けられている。冷却用エアー供給弁65は、制御装置16によって動作が制御されて開閉する。冷却用エアー供給弁65が閉じることにより冷却ノズル54へのエアーの供給が遮断され、冷却用エアー供給弁65が開くことにより冷却ノズル54から冷却エアーが噴出する。冷却エアーの量は増減が可能である。冷却効率を高くするために冷却エアーの量を増やすことは効果的である。なお、冷却エアーの量は、加熱エアーの量より多くすることができる。
【0043】
図3に示すように、ハウジング41が加熱位置に位置している状態では、冷却ノズル54から冷却エアーが噴出したとしてもハウジング41によって遮られる。しかし、
図4に示すように、ハウジング41が冷却位置に移動することによって、冷却ノズル54から噴出した冷却エアーがブランケット表面調整空間52を通ってブランケット胴8に吹き付けられるようになる。
図4においては、冷却エアーが流れる方向を矢印によって示す。
このブランケット乾燥ユニット35においては、加熱機構53が動作する加熱時に加熱エアーがブランケット表面調整空間52を通り、冷却機構55が動作する冷却時に冷却エアーがブランケット表面調整空間52を通ることになる。すなわち、加熱機構53が発する加熱エアー(加熱された気体)と、冷却機構55が発する冷却エアー(冷却用の気体)とが共にブランケット表面調整空間52を通ることになる。
【0044】
冷却機構55による冷却動作を停止する時期は、制御装置16に接続された冷却動作終了検知手段66によって検知している。冷却動作終了検知手段66としては、冷却開始からの経過時間が予め定めた冷却時間に達したときを検知してそのときを冷却動作終了時期とするタイマーや、ブランケット51やブランケット51の近傍の温度が予め定めた冷却終了温度に達したことを検知してそのときを冷却動作終了時期とする温度センサなどによって構成することができる。
【0045】
(制御装置の説明)
制御装置16は、
図9に示すように、印刷動作制御部71と乾燥ユニット制御部72とを有し、入力側に印刷開始スイッチ73、乾燥開始時期設定手段74、加熱動作終了検知手段61、冷却動作終了検知手段66が接続されているとともに、出力側に各種の駆動装置等が接続されており、グラビアオフセット印刷機1の全ての動作を制御する。
印刷動作制御部71は、グラビアオフセット印刷機1で印刷が行われるようにインキ供給部4、基材保持部5および印刷部3の動作を制御する。
【0046】
乾燥ユニット制御部72は、ブランケット乾燥ユニット35でブランケット51の乾燥が行われるように、加熱機構着脱装置42、加熱機構53および冷却機構55の動作を制御する。
印刷開始スイッチ73は、例えば人為的に操作されるスイッチによって構成することができる。制御装置16は、印刷開始スイッチ73がオン操作されることにより印刷動作を開始する。
乾燥開始時期設定手段74は、ブランケット乾燥ユニット35が乾燥動作を開始する時期を設定するためのものである。乾燥動作を開始する時期は、一回の印刷動作が終了する毎に乾燥動作が行われるように設定したり、予め定めた回数だけ印刷動作が行われた後や、任意の時期に乾燥動作が開始されるように設定することができる。また、乾燥開始時期設定手段74は、ブランケット乾燥ユニット35が乾燥動作を開始する時期に先ず加熱機構53に加熱動作を開始させ、加熱機構53による加熱動作が終了した後に冷却機構55に冷却動作を開始させる。
【0047】
(グラビアオフセット印刷機の動作の説明)
次に、この実施の形態によるグラビアオフセット印刷機1の印刷動作と乾燥動作とを
図5~
図8を参照して説明する。
この実施の形態によるグラビアオフセット印刷機1においては、印刷開始スイッチ73がオン操作されることにより印刷動作を開始する。印刷動作が開始されると、先ず、インキ供給部4においてグラビア版6に形成された印刷パターン部12にインキ7を充填する。インキ7の充填方法は、先ず、
図5(A)に示すように、インキ供給装置11(ノズル、インクジェットヘッドなど)によってグラビア版6上にインキ7を供給する。
【0048】
次に、
図5(B)~(C)に示すように、ブレード17を下降させ、この状態でグラビア版用固定台駆動装置15によりグラビア版固定台13をブランケット胴8に近接する方向に移動させることによって、グラビア版6の凹部6a(印刷パターン部12)にインキ7を押し込む。最後に、ブレード17を上昇させるとともにドクター18を下降させ、
図5(D)に示すように、この状態でグラビア版用固定台駆動装置15によりグラビア版固定台13をブランケット胴8から離反する方向に移動させることによって、凹部6aからはみ出た余分なインキ7を掻きとる。
【0049】
このように印刷パターン部12にインキ7が充填された後、ドクター18を上昇させ、グラビア版用固定台駆動装置15によってグラビア版固定台13をブランケット胴8に近接する方向に移動させる。このときには、印刷部3においてフレーム用昇降装置32によって第2のフレーム33を下降させておく。そして、
図6(A)に示すように、この状態でグラビア版固定台13をブランケット胴8に向けて移動させ、グラビア版6の印刷パターン部12にブランケット51を接触させてブランケット胴8をグラビア版6の移動に追従するように回転させる。
【0050】
グラビア版6がブランケット胴8の下方を通過することにより、ブランケット51の表面にインキ7が受理される。その後、第2のフレーム33を上昇させてブランケット胴8が上方に移動した状態でグラビア版固定台13を初期の位置に戻るように移動させ、グラビア版固定台13が通過した後に第2のフレーム33を下降させる。そして、
図6(B)に示すように、被印刷物固定台21をブランケット胴8に接近する方向に移動させ、基材9にブランケット51を接触させてブランケット胴8を基材9の移動に追従するように回転させる。基材9がブランケット胴8の下方を通過することにより、ブランケット51のインキ7が基材9に転写される。
【0051】
基材9にインキ7が転写された後、第2のフレーム33を上昇させてブランケット胴8を上方に移動させるとともに、被印刷物固定台21を初期の位置に戻すことにより、印刷動作が終了する。
制御装置16は、このように印刷動作が終了した後、乾燥開始時期設定手段74に設定されている時期に乾燥動作を実施する。なお、制御装置16は、乾燥動作を実施する以前に予めサーモスタッド59に通電する。
【0052】
乾燥動作を行うにあたっては、先ず、制御装置16がブランケット胴駆動装置34を制御してブランケット胴8を乾燥開始位置に位置付ける。乾燥開始位置とは、
図3および
図7(A)に示すように、ブランケット胴8の切欠部45が加熱機構53とは対面することがない位置であって、ブランケット胴8の有効面46の一端部(切欠部45と隣り合う端部)がエアー通路58の下流端58aと対向する位置である。
【0053】
次に、制御装置16は、加熱機構53(ハウジング41)を加熱位置に移動させるとともに、加熱用エアー供給弁62と排気弁64とを開く。このとき、加熱ノズル57から出たエアーがヒーター56に接触して流れることで加熱エアーとなり、エアー通路58の下流端58aからブランケット表面調整空間52を介してブランケット51に吹き付けられる。加熱エアーがブランケット51に吹き付けられることにより、ブランケット51が加熱され、ブランケット51に付着、あるいは吸収されていたインキあるいはインキに含まれる液体成分が蒸発する。また、ブランケット51に吹き付けられた加熱エアーは、排出ダクト63に吸い込まれてハウジング41内から排出される。
【0054】
制御装置16は、このように加熱エアーがブランケット51に吹き付けられている状態でブランケット胴駆動装置34を制御してブランケット胴8を所定の方向に回転させる。このときの回転方向は、
図7(B)~(C)に示すように、ブランケット51がエアー通路58の下流端58aと対向する状態を維持しながら有効面46の他端部がエアー通路58の下流端58aに接近する方向である。有効面46の他端部がエアー通路58の下流端58aと対向した後、制御装置16は、ブランケット胴8を逆転させ、有効面46の一端部をエアー通路58の下流端58aに対向させる。すなわち、制御装置16は、ブランケット胴8の切欠部45に加熱エアーが吹き付けられることがなく、ブランケット胴8の有効面46のみがエアー通路58の下流端58aと対向するようにブランケット胴8を回動させる。
【0055】
このようにブランケット胴8を回動させて行われる加熱動作は、加熱動作終了検知手段61が加熱終了時期を検知するまで行われる。なお、ブランケット51の一部にインキ7が集中して受理されているような場合は、ブランケット表面のインキ受理エリアのみが加熱されるようにブランケット胴8の回動角を変更することができる。
加熱終了時期に達した後、制御装置16は、
図8(A)に示すように、加熱機構53(ハウジング41)を冷却位置に移動させるとともに、加熱用エアー供給弁62を閉じる。そして、制御装置16は、
図8(B)~(C)に示すように、冷却用エアー供給弁65を開いて冷却ノズル54から冷却エアーを噴出させ、ブランケット胴駆動装置34を制御してブランケット胴8を回転させる。
【0056】
このとき、制御装置16は、ブランケット胴8を一方向のみに回転させる。このため、冷却ノズル54から噴出した冷却エアーがブランケット51の他にブランケット胴8の切欠部45およびクランプ機構47にも吹き付けられることになり、冷却効率が高くなる。冷却ノズル54から冷却エアーが噴出することにより、加熱機構53とブランケット51との間の熱伝達経路が冷却エアーによって遮断されるから、加熱機構53のヒーター56が熱を発しているにもかかわらず、この熱の影響を受けることなくブランケット51を空冷によって冷却することができる。
【0057】
冷却ノズル54から冷却エアーを噴出させて行う冷却動作は、冷却動作終了検知手段66が冷却終了時期を検知するまで行われる。制御装置16は、冷却終了時期に達したときに冷却用エアー供給弁65を閉じるとともに排気弁64を閉じる。このとき、制御装置16は、第2のアクチュエータ44の制御内容を変更することはせず、加熱機構53のハウジング41を冷却位置に保持する。このため、ハウジング41が冷却位置に位置しているとともに、加熱エアーと冷却エアーの噴出が停止した状態でブランケット乾燥ユニット35によるブランケット51の乾燥動作が終了する。なお、ヒーター56は、乾燥動作が終了した後もサーモスタッド59により所定の温度に保たれる。
【0058】
このように構成されたグラビアオフセット印刷機1においては、ブランケット51の冷却時に冷却エアー(冷却用の気体)がブランケット表面調整空間52を通るから、冷却時に加熱機構53の熱がブランケット51に伝達される際の経路が冷却エアーによって遮断される。このため、ブランケット51の冷却を行う際に加熱機構53の熱がブランケット51に伝達されることがなく、冷却効果の低下を防ぐことができる。
また、この実施の形態によれば、ブランケット胴8の周方向において同一の位置に加熱機構53と冷却機構55とをコンパクトに配置できる。
したがって、この実施の形態によれば、ブランケットの冷却効率が高く、しかも、コンパクトなブランケット乾燥ユニットを備えたグラビアオフセット印刷機を提供することができる。
【0059】
ブランケット乾燥ユニット35の小型化が図られることにより、ブランケット胴8の周囲の空きスペースが広くなる。この結果、ブランケット51の交換作業の作業性が向上する。また、ブランケット胴8の周辺近傍に他の装置、例えば、図示してはいないが、ブラケットクリーナー、除電装置、カメラ、センサー等を設置するスペースを確保することが容易になる。
【0060】
この実施の形態によるグラビアオフセット印刷機1においては、加熱機構53をブランケット51に対して進退させる加熱機構着脱装置42と、加熱機構53による加熱動作が終了したことを検知する加熱動作終了検知手段61と、加熱機構着脱装置42の動作を制御する制御装置16とを備えている。制御装置16は、加熱機構53が加熱動作を行う場合は加熱機構53がブランケット51に接近するように加熱機構着脱装置42の動作を制御し、加熱動作終了検知手段61が加熱動作の終了を検知した場合には、加熱機構53がブランケット51から離反するように加熱機構着脱装置42の動作を制御する。
【0061】
このため、加熱動作時にはブランケット51に加熱エアーを直接吹き付けることが可能になる。また、加熱動作が終了した後には加熱機構53がブランケット51から離れるから、冷却時にヒーター56の熱や加熱機構53の余熱がブランケット51に伝わり難くなる。したがって、ブランケット51の加熱と冷却をより一層効率よく行うことができる。
【0062】
この実施の形態によるグラビアオフセット印刷機1においては、ブランケット胴8を予め定めた複数の駆動パターンによって駆動可能なブランケット胴駆動装置34を備えている。制御装置16は、加熱動作終了検知手段61の検知結果に基づいてブランケット胴駆動装置34の駆動パターンを切替える構成が採られている。このため、ブランケット51の加熱を行うときと冷却を行うときとでそれぞれ最適となるようにブランケット胴8を動作させることが可能になるから、加熱効率と冷却効率との両方を高くすることができる。
【0063】
この実施の形態において加熱機構53が加熱動作を行う場合のブランケット胴駆動装置34の駆動パターンは、ブランケット胴8の有効面46のみが加熱機構53と対向するようにブランケット胴8が回動するパターンである。冷却機構55が冷却動作を行う場合のブランケット胴駆動装置34の駆動パターンは、ブランケット胴8の全周が冷却機構55と対向するようにブランケット胴8が一方向に回転するパターンである。
このため、加熱時にブランケット51のみに加熱エアーが吹き付けられ、ブランケット胴8の切欠部45やクランプ機構47には加熱エアーが吹き付けられ難くなる。また、冷却時にはブランケット51を含めてブランケット胴8の全体に冷却エアーが吹き付けられてブランケット胴8の全体が冷却される。したがって、加熱効率と冷却効率とをさらに高くすることができる。
【0064】
この実施の形態によるグラビアオフセット印刷機1においては、ブランケット表面調整空間52を通過してブランケット51に沿って流れた加熱エアー(加熱用の気体)を吸引して排出する排出ダクト63を備えている。このため、加熱エアーがブランケット乾燥ユニット35の周辺の部材に接触してブランケット胴8の周囲の温度が上昇することを防ぐことができる。
【0065】
上述した実施の形態においては、加熱機構53のヒーター56を有するエアー通路58がハウジング41を構成する部材によって形成されている例を示した。しかし、加熱機構53には、ヒーター56の熱がブランケット51側に伝達されることを防ぐために、ヒーター56の周りに断熱材(図示せず)を設けることができる。
【0066】
また、上述した実施の形態においては、加熱ノズル57がハウジング41の内部に設けられている例を示した。しかし、加熱ノズル57は、図示してはいないが、ハウジング41の外に配置することができる。この場合、ハウジング41の加熱ノズル57と対向する位置に通気口を形成し、加熱ノズル57から吹き出したエアーが通気口とエアー通路58の下流端58aとを通ってブランケット51に向かうように構成する。この構成を採ることにより、ハウジング41内の熱気が通気口から供給されたエアーによって吸い出されるようにしてブランケット表面調整空間52を通り、ブランケット51に吹き付けられる。
【0067】
さらに、上述した加熱機構53は、内蔵したヒーター56でエアーを加熱して加熱エアーを生成する構成が採られている。しかし、加熱エアーは、ブランケット乾燥ユニット35の外で生成して加熱ノズル57に供給することができる。この場合は、加熱ノズル57をブランケット51と対向するように配置し、加熱エアーを加熱ノズル57からブランケット51に直接吹き付けてもよい。
【0068】
上述した実施の形態に示すグラビア版固定台13は、平板状のグラビア版6を支持するために平板状に形成されている。しかし、グラビア版固定台は、例えば
図10および
図11に示すように構成することができる。
図10および
図11において、
図1~
図9によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0069】
図10および
図11に示すグラビア版固定台81は、シリンダー形状のグラビア版82を回転可能に支持するものである。グラビア版82は、凹部82aからなる印刷パターン部83を有する凹版で、軸線がブランケット胴8の軸線と平行になる状態でグラビア版固定台81に回転可能に支持されている。グラビア版82は、図示していない回転駆動装置に接続されて回転する。グラビア版82がブランケット胴8に対接しながら回転することにより、インキがブランケット胴8に受理される。
グラビア版固定台81をこのように構成する場合であっても、ブランケットの冷却効率が高く、しかも、コンパクトなブランケット乾燥ユニットを備えたグラビアオフセット印刷機を提供することができる。
【0070】
上述した実施の形態によるグラビアオフセット印刷機1は、グラビア版固定台13,81と被印刷物固定台21とがブランケット胴8に対して移動してインキ7の受理、転写が行われる印刷方法を採るものである。しかし、グラビア版6,82に印刷パターンとなるように塗布されたインキ7をブランケット51が受理して基材9に転写することが可能であれば、印刷方法はこの実施の形態による印刷方法に限定されることはなく、適宜変更することができる。例えば、
図12および
図13(A),(B)に示すように、移動式のブランケット胴からロール状の基材にインキが転写される印刷構成を採ることができる。
図12および
図13(A),(B)において、
図1~
図9によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0071】
図12に示すグラビアオフセット印刷機91は、ロール状に巻かれたウエブ状の基材92を被印刷物とする被印刷物搬送装置93を備えている。被印刷物搬送装置93は、基材92が巻き付けられた送給軸94と、基材92の先端側が巻き付けられた回収軸95と、基材92の移動経路を規定する複数のローラ96~99とを備えている。基材92の移動経路は、基台2のステージ101の上を基材92が通過するように設定されている。この被印刷物搬送装置93においては、回収軸95が回転することにより、基材92が送給軸94から引き出され、ステージ101の上を通って移動して回収軸95に巻き取られる。
【0072】
このグラビアオフセット印刷機91のブランケット胴8は、基台2の上に設けられたレール102に移動自在に支持されており、図示していない駆動装置によって駆動されることによりグラビア版固定台13とステージ101との間で移動する。この実施の形態によるグラビア版固定台13は、基台2に固定されている。
【0073】
この実施の形態によるグラビアオフセット印刷機91において、インキをグラビア版6からブランケット胴8に受理させるためには、
図13(A)に示すように、ブランケット胴8をグラビア版6に上方から接触する状態で水平方向に移動させるとともに回転させて行う。また、インキをブランケット胴8から基材92に転写するためには、
図13(B)に示すように、ステージ101に対して固定された基材92の上方にブランケット胴8を移動し、この状態で、ブランケット胴8を基材92に上方から接触する状態で水平方向に移動させるとともに回転させて行う。
図12および
図13(A),(B)に示す構成を採る場合であってもブランケットの冷却効率が高く、しかも、コンパクトなブランケット乾燥ユニットを備えたグラビアオフセット印刷機を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,91…グラビアオフセット印刷機、6…グラビア版、7…インキ、8…ブランケット胴、13…グラビア版固定台、16…制御装置、21…被印刷物固定台、22…基材用固定台駆動装置、34…ブランケット胴駆動装置、35…ブランケット乾燥ユニット、42…加熱機構着脱装置、46…有効面、51…ブランケット、52…ブランケット表面調整空間、53…加熱機構、55…冷却機構、61…加熱動作終了検知手段、63…排出ダクト、93…被印刷物搬送装置。