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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117945
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3233 20160101AFI20240823BHJP
   G09G 3/30 20060101ALI20240823BHJP
   G09G 3/3291 20160101ALI20240823BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240823BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20240823BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/30 J
G09G3/3291
G09G3/20 612U
G09G3/20 623C
G09G3/20 623D
G09G3/20 623R
G09G3/20 611A
H10K59/12
G09G3/20 624B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024061
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 岳彦
【テーマコード(参考)】
3K107
5C080
5C380
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC14
3K107DD39
3K107EE57
3K107HH05
5C080AA06
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD26
5C080HH09
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ06
5C080KK01
5C080KK25
5C080KK43
5C080KK49
5C380AA01
5C380AB06
5C380AB34
5C380AC02
5C380AC10
5C380AC12
5C380AC20
5C380BA01
5C380BA39
5C380BA46
5C380CA04
5C380CA12
5C380CA22
5C380CA32
5C380CA53
5C380CA54
5C380CA57
5C380CB01
5C380CC04
5C380CC07
5C380CC26
5C380CC33
5C380CC39
5C380CC63
5C380CD014
5C380CF09
5C380CF48
5C380CF51
5C380DA32
(57)【要約】
【課題】電気光学装置においてデータ線の寄生容量で消費される電力を低減する。
【解決手段】画素回路110は、アノードからカソードに流れる電流に応じた輝度で発光するOLEDと、ゲートノードおよびソースノードの間の電圧に応じた電流をOLEDに流すトランジスターと、を含み、制御回路30は、書込期間において、ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、データ線14を介して供給し、書込期間よりも前の第1初期化期間において、第1動作または第2動作を階調レベルに応じて実行する。第1動作は、電位Vorstを、データ線14を介して供給する動作であり、第2動作は、データ線14の電位とアノードの電位とを、電位Velと電位Vorstとの間の第2電位にさせる動作である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ線と走査線とに対応して設けられる画素回路と、
前記画素回路を制御する制御回路と、
を含み、
前記画素回路は、
二つの電極を有し、前記二つの電極の間に流れる電流に応じた輝度で発光する発光素子と、
ゲートノードの電位およびソースノードの電位の間の電圧に応じた電流を前記発光素子に流す駆動トランジスターと、
を含み、
前記制御回路は、
書込期間において、
前記ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、前記データ線を介して供給し、
前記書込期間よりも前の第1初期化期間において、
第1動作または第2動作を前記階調レベルに応じて実行し、
前記第1動作は、
前記二つの電極の一方の電極に、前記階調レベルに応じた電位とは異なる第1電位を、前記データ線を介して供給する動作であり、
前記第2動作は、
前記データ線の電位と前記一方の電極における電位とを、前記第1電位と前記駆動トランジスターをオフ状態にさせるオフ電位との間の第2電位にさせる動作である
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
一端および他端を有し、一端が前記データ線に電気的に接続され、他端が前記第1電位の給電線に電気的に接続された第1スイッチング素子を有し、
前記制御回路は、
前記第1初期化期間において、
前記階調レベルに応じて前記第1スイッチング素子をオン状態またはオフ状態に制御する
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記第1初期化期間において、前記階調レベルが閾値以上であれば、前記第1スイッチング素子をオフ状態に制御する
請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
一端および他端を有し、一端が前記データ線に電気的に接続され、他端が前記第2電位を給電する給電線に電気的に接続された第2スイッチング素子を有し、
前記制御回路は、
前記第1初期化期間において、
前記第1スイッチング素子をオフ状態に制御する場合に、前記第2スイッチング素子をオン状態に制御する
請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第2電位は、
前記ゲートノードに供給されれば、前記駆動トランジスターをオン状態にさせるオン電位である
請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記第1初期化期間よりも後であって、前記書込期間よりも前の第2初期化期間において、
前記ゲートノードに前記第2電位を、前記データ線を介して供給し、
前記第2初期化期間よりも後であって、前記書込期間よりも前の補償期間において、
前記ゲートノードを前記駆動トランジスターの閾値に相当する電位に収束させる
請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記書込期間において、
前記ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、カップリング容量および前記データ線を介して供給する
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第1初期化期間よりも前の第3初期化期間において、
前記ゲートノードに前記駆動トランジスターをオフ状態にさせるオフ電位を、前記データ線を介して供給する、
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電気光学装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下「OLED」という)素子などの発光素子を用いた電気光学装置(表示装置)が各種提案されている。電気光学装置では、走査線とデータ線との交差に対応して、上記発光素子や駆動トランジスターなどを含む画素回路が、表示すべき画像の画素に対応して設けられる構成が一般的である。
【0003】
このような構成において、画素の階調レベルに応じた電位のデータ信号が駆動トランジスターのゲートノードに供給されると、当該駆動トランジスターは、ゲートノードおよびソースノードの間の電圧に応じた電流を発光素子に供給する。これにより、当該発光素子は、階調レベルに応じた輝度で発光する。
画素回路としては、駆動トランジスターを含めて4つのトランジスターを有する構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-179628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気光学装置では、小型化されて携帯機器に適用求される場合、電池等の関係で低消費電力化が強く要求される。しかしながら、上記構成では、低消費電力化が十分でない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る電気光学装置は、データ線と走査線とに対応して設けられる画素回路と、前記画素回路を制御する制御回路と、を含み、前記画素回路は、二つの電極を有し、前記二つの電極の間に流れる電流に応じた輝度で発光する発光素子と、ゲートノードの電位およびソースノードの電位の間の電圧に応じた電流を前記発光素子に流す駆動トランジスターと、を含み、前記制御回路は、書込期間において、前記ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、前記データ線を介して供給し、前記書込期間よりも前の第1初期化期間において、第1動作または第2動作を前記階調レベルに応じて実行し、前記第1動作は、前記二つの電極の一方の電極に、前記階調レベルに応じた電位とは異なる第1電位を、前記データ線を介して供給する動作であり、前記第2動作は、前記データ線の電位と前記一方の電極における電位とを、前記第1電位と前記駆動トランジスターをオフ状態にさせるオフ電位との間の第2電位にさせる動作である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る電気光学装置の斜視図である。
図2】電気光学装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図3】電気光学装置の画素回路を示す図である。
図4】電気光学装置の動作を示すタイミングチャートである。
図5】電気光学装置の動作を示す図である。
図6】電気光学装置の動作を示す図である。
図7】電気光学装置の動作を示す図である。
図8】電気光学装置の動作を示す図である。
図9】電気光学装置の動作を示す図である。
図10】電気光学装置の動作を示す図である。
図11】電気光学装置の動作を示す図である。
図12】電気光学装置の優位性を示すための表示画面の一例である。
図13】第2実施形態に係る電気光学装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図14】電気光学装置の動作を示すタイミングチャートである。
図15】電気光学装置の動作を示す図である。
図16】電気光学装置を用いたヘッドマウントディスプレイを示す斜視図である。
図17】ヘッドマウントディスプレイの光学構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る電気光学装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、第1実施形態に係る電気光学装置10を示す斜視図である。電気光学装置10は、例えばヘッドマウントディスプレイなどにおいて画像を表示するマイクロ・ディスプレイ・パネルである。電気光学装置10は、OLEDを含む画素回路や、当該画素回路を駆動する駆動回路などを含む。画素回路や駆動回路等は半導体基板に集積化される。半導体基板は、典型的にはシリコン基板であるが、他の半導体基板であってもよい。
【0010】
電気光学装置10は、表示領域100で開口する枠状のケース192に収納される。電気光学装置10は、FPC基板194の一端に接続される。なお、FPCとは、Flexible Printed Circuitsの略称である。FPC基板194の他端には、図示省略されたホスト装置に接続される複数の端子196が設けられる。複数の端子196がホスト装置に接続されると、電気光学装置10には、当該ホスト装置からFPC基板194を介して映像データや同期信号などが供給される。
【0011】
なお、図において、X方向は、電気光学装置10における走査線の延在方向を示し、Y方向は、データ線の延在方向を示す。X方向およびY方向で定まる二次元平面が半導体基板の基板面である。Z方向は、X方向およびY方向に垂直であって、OLEDから発せられる光の出射方向である。
【0012】
図2は、電気光学装置10の電気的な構成を示すブロック図である。図に示されるように、電気光学装置10は、制御回路30、データ信号出力回路50、補助回路60、n個の容量素子70、初期化回路80、表示領域100および走査線駆動回路120を含む。
表示領域100では、m行の走査線12が図においてX方向に沿って設けられ、n列のデータ線14が、Y方向に沿って、かつ、各走査線12と互いに電気的に絶縁を保つように設けられる。なお、m、nは、2以上の整数である。
【0013】
表示領域100には、画素回路110が、m行の走査線12とn列のデータ線14との交差に対応して設けられる。このため、画素回路110は、縦m行×横n列でマトリクス状に配列する。マトリクス配列のうち、行(ロウ)を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m-1)、m行目と呼ぶことがある。同様にマトリクスの列(カラム)を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(n-1)、n列目と呼ぶことがある。
走査線12を一般化して説明するために、1以上m以下の整数iが用いられる。同様に、データ線14を一般化して説明するために、1以上n以下の整数jが用いられる。
【0014】
制御回路30は、上位のホスト装置から供給される映像データVidや同期信号Syncに基づいて各部を制御する。映像データVidは、表示すべき画像における画素の階調レベルを例えば8ビットで指定する。
同期信号Syncには、映像データVidの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、映像データの1画素分のタイミングを示すドットクロック信号が含まれる。
【0015】
本実施形態において表示すべき画像の画素と表示領域100における画素回路110とは一対一に対応する。
ホスト装置から供給される映像データVidにおいて階調レベルで示される明るさの特性と、画素回路110に含まれるOLEDの輝度の特性とは、必ずしも一致しない。そこで、制御回路30は、映像データVidで指定される階調レベルに対応した輝度でOLEDを発光させるために、映像データVidの8ビットを、本実施形態では例えば10ビットにアップコンバージョンして、映像データVdataとして出力する。このため、10ビットの映像データVdataについても、階調レベルを指定することになる。すなわち、映像データVdataは、映像データVidで指定される階調レベルを変換した階調レベルを指定することになる。
【0016】
なお、アップコンバージョンには、入力である映像データVidの8ビットと、出力である映像データVdataの10ビットとの対応関係を予め記憶したルックアップテーブルが用いられる。また、制御回路30は、各部を制御するために各種の制御信号を生成するが、詳細については後述する。
【0017】
走査線駆動回路120は、各種の信号を出力して、制御回路30による制御にしたがって、m行n列で配列する画素回路110を1行毎に駆動するための回路である。例えば、走査線駆動回路120は、1、2、3、…、(m-1)、m行目の走査線12に、順に走査信号/Gwr(1)、/Gwr(2)、…、/Gwr(m-1)、/Gwr(m)を供給する。一般的には、i行目の走査線12に供給される走査信号が/Gwr(i)と表記される。走査線駆動回路120は、走査信号/Gwr(1)~/Gwr(m)の他にも各種の制御信号を出力するが、詳細については後述する。
【0018】
データ信号出力回路50は、走査線駆動回路120によって選択された行に位置する画素回路110に向けて、輝度に応じた電圧信号を出力する回路である。詳細には、データ信号出力回路50は、選択回路群52、第1ラッチ回路群54、第2ラッチ回路群56、n個のDA変換回路500およびn個の判定回路510を含む。
選択回路群52は、n列と一対一に対応した選択回路520を含み、第1ラッチ回路群54は、n列と一対一に対応した第1ラッチ回路L1を含み、第2ラッチ回路群56は、n列と一対一に対応した第2ラッチ回路L2を含む。また、n個のDA変換回路500およびn個の判定回路510は、n列に一対一に対応する。
【0019】
すなわち、各例に対応して、選択回路520、第1ラッチ回路L1、第2ラッチ回路L2、DA変換回路500および判定回路510の組が設けられる。ここで、j列目の選択回路520は、制御回路30から出力される映像データVdataのうち、j列目の映像データの選択をj列目の第1ラッチ回路L1に指示し、j列目の第1ラッチ回路L1は、当該指示にしたがって映像データVdataをラッチする。j列目の第2ラッチ回路L2は、j列目の第1ラッチ回路L1によりラッチされた映像データVdataを、制御回路30による制御にしたがって、後述する書込期間(C)においてj列目のDA変換回路500に出力し、初期化期間(A2)においてj列目の判定回路510に出力する。
【0020】
j列目のDA変換回路500は、j列目の第2ラッチ回路L2から出力された10ビットの映像データVdataをアナログの信号に変換し、j列目のデータ信号出力線14cに出力する。換言すれば、データ信号出力線14cはデータ線14と一対一に対応して設けられ、j列目のDA変換回路500における出力端は、j列目のデータ信号出力線14cに接続される。
【0021】
j列目の判定回路510は、j列目の第2ラッチ回路L2から出力された映像データVdataで指定される階調レベルを判定して、当該判定結果に応じた制御信号/Yr(j)を出力する。なお、制御信号/Yr(j)とは、1、2、…、(n-1)、n列目に対応して順に供給される制御信号/Yr(1)、/Yr(2)、…、/Yr(n-1)、/Yr(n)を一般化して表記したものである。
j列目の判定回路510は、階調レベルが最高階調の白レベル(最も明るいレベル)であれば、制御信号/Yr(j)を、後述する水平走査期間(H)の全域においてHレベルで出力する。また、j列目の判定回路510は、階調レベルが白レベル以外であれば、制御信号/Yr(j)を、水平走査期間(H)のうち、初期化期間(A2)においてLレベルで出力し、他の期間においてHレベルで出力する。
【0022】
補助回路60は、データ信号出力線14cと一対一に対応して設けられたトランジスター62の集合体である。j列目に対応するトランジスター62のソースノードは電位Vrefの給電線に接続され、トランジスター62のドレインノードは当該j列目のデータ信号出力線14cに接続される。また、各列におけるトランジスター62のゲートノードには、制御回路30から出力される制御信号/Grefが共通に供給される。
【0023】
n個の容量素子70は、データ信号出力線14cおよびデータ線14の組と一対一に対応して設けられる。詳細には、j列目の容量素子70の一端はj列目のデータ信号出力線14cに接続され、j列目の容量素子70の他端はj列目のデータ線14に接続される。
なお、映像データVdataは、映像データVidで指定される階調レベルに対応し、DA変換回路500は、当該映像データVdataをアナログ信号に変換し、当該アナログ信号が容量素子70を介してデータ信号としてデータ線14に供給される。このため、データ線14に供給されるデータ信号の電位は、映像データVidおよび映像データVdataで指定される階調レベルに対応することになる。
【0024】
初期化回路80は、データ線14に一対一に対応して設けられた、トランジスター82、84および86の組の集合体である。
j列目に対応するトランジスター82のソースノードは電位Velの給電線に接続され、トランジスター82のドレインノードは当該j列目のデータ線14に接続される。また、各列におけるトランジスター82のゲートノードには、制御回路30から出力される制御信号/Drstが共通に供給される。電位Velは、電源電圧の高位電位として用いられる。
【0025】
j列目に対応するトランジスター84のソースノードは電位Viniの給電線に接続され、トランジスター84のドレインノードは当該j列目のデータ線14に接続される。また、各列におけるトランジスター84のゲートノードには、制御回路30から出力される制御信号/Giniが共通に供給される。
【0026】
j列目に対応するトランジスター86のソースノードは電位Vorstの給電線に接続され、トランジスター86のドレインノードは当該j列目のデータ線14に接続される。また、j列目におけるトランジスター86のゲートノードには、j列目の判定回路510からの制御信号/Yr(j)が供給される。電位Vorstは、例えば電位Gnd、または、当該電位Gndに近い低位の電位である。具体的には、電位Vorstは、仮にOLEDのアノードに給電された場合に、当該OLEDに電流が流れない程度の電位である。
【0027】
各列のデータ線14にはそれぞれ容量成分が寄生する。図では、当該容量成分が寄生容量72として表記されている。すなわち、当該寄生容量72は、電気的にみれば一端がデータ線14に接続され、他端が電位一定の給電線に接続された容量素子として表されている。
また、図において1、2、…、(n-1)、n列目におけるデータ線14の電位が、順にVd(1)、Vd(2)、…、Vd(n-1)、Vd(n)と表記される。一般的には、j列目におけるデータ線14の電位はVd(j)と表記される。
【0028】
図3は、画素回路110を示す回路図である。m行n列で配列する画素回路110は電気的にみれば互いに同一である。このため、画素回路110については、i行j列に位置する画素回路110で代表させて説明する。
【0029】
図に示されるように、画素回路110は、OLED130と、p型のトランジスター121~124と、容量素子140とを含む。トランジスター121~124は、例えばMOS型である。なお、MOSとは、Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistorの略称である。
また、i行目の画素回路110には、走査信号/Gwr(i)のほか、制御信号/Gel(i)、/Gcmp(i)が、走査線駆動回路120から供給される。
【0030】
制御信号/Gel(i)とは、1、2、…、(m-1)、m行目に対応して順に供給される制御信号/Gel(1)、/Gel(2)、…、/Gel(m-1)、/Gel(m)を一般化して表記したものである。同様に、制御信号/Gcmp(i)は、1、2、…、(m-1)、m行目に対応して順に供給される制御信号/Gcmp(1)、/Gcmp(2)、…、/Gcmp(m-1)、/Gcmp(m)を一般化して表記したものである。
【0031】
OLED130は、画素電極131と共通電極133とで発光機能層132を挟持した発光素子である。画素電極131はアノードとして機能し、共通電極133はカソードとして機能する。共通電極133は光透過性を有する。
OLED130において、アノードからカソードに向かって電流が流れると、アノードから注入された正孔とカソードから注入された電子とが発光機能層132で再結合して励起子が生成され、白色光が発生する。
【0032】
カラー表示とする場合、発生した白色光が、例えば図示省略された反射層と半反射半透過層とで構成された光共振器にて共振し、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかの色に対応して設定された共振波長で出射する。光共振器から光の出射側には当該色に対応したカラーフィルターが設けられる。したがって、OLED130からの出射光は、光共振器およびカラーフィルターによる着色を順に経て、観察者に視認される。なお、光共振器は図示省略されている。また、電気光学装置10が単に明暗のみの単色画像を表示する場合には、上記カラーフィルターが省略される。
【0033】
i行j列における画素回路110のトランジスター121にあっては、ゲートノードgがトランジスター122のドレインノードに接続され、ソースノードsが、電位Velが供給される給電線116に接続され、ドレインノードdがトランジスター123のソースノードおよびトランジスター124のソースノードに接続される。容量素子140にあっては、一端がトランジスター121のゲートノードgに接続され、他端が給電線116に接続される。このため、容量素子140は、トランジスター121におけるゲートノードgおよびソースノードsの間の電圧を保持する。
なお、容量素子140の他端は、電位がほぼ一定に保たれていればよいので、電位Velの給電線以外の、他の電位の給電線に接続されてもよい。
【0034】
本実施形態において、容量素子140として、例えば、トランジスターの半導体層(下部電極)とゲート電極層(上部電極)とでトランジスターのゲート絶縁層を挟持することによって形成される、いわゆるMOS容量が用いられる。なお、容量素子140としては、トランジスター121のゲートノードgの寄生容量を用いてもよいし、半導体基板において互いに異なる導電層で絶縁層を挟持することによって形成される、いわゆるメタル容量を用いてもよい。
【0035】
i行j列における画素回路110のトランジスター122にあっては、ゲートノードがi行目の走査線12に接続され、ソースノードが当該j列目のデータ線14に接続される。i行j列における画素回路110のトランジスター123にあっては、ゲートノードに制御信号/Gcmp(i)が供給され、ドレインノードが当該j列目のデータ線14に接続される。i行j列における画素回路110のトランジスター124にあっては、ゲートノードに制御信号/Gel(i)が供給され、ドレインノードがOLED130のアノードである画素電極131に接続される。
OLED130のカソードとして機能する共通電極133には、電位Vctが給電される。なお、電位Vctは、例えば電位Gnd、または、当該電位Gndに近い低位の電位である。
【0036】
本説明において「電気的に接続され」または単に「接続され」とは、2以上の要素間の直接的または間接的な接続または結合を意味し、例えば半導体基板において2以上の要素間が直接的ではなくても、異なる配線層およびコンタクトホールを介して結合されることも含む。
【0037】
また、制御回路30は、データ信号出力回路50、補助回路60、初期化回路80および走査線駆動回路120を介して画素回路110の駆動を制御する。このため、制御回路30、データ信号出力回路50、補助回路60、初期化回路80および走査線駆動回路120を含めて広義の制御回路と呼ぶことがある。
【0038】
次に、電気光学装置10における動作について説明する。
【0039】
図4は、電気光学装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。電気光学装置10では、m行の走査線12がフレーム(V)の期間に1、2、3、…、m行目という順番で1行ずつ水平走査される。
なお、本説明において1フレーム(V)の期間とは、映像データVidで指定される画像の1コマを表示するのに要する期間をいう。1フレームの期間の長さは、垂直同期期間と同じ場合、例えば同期信号Syncに含まれる垂直同期信号の周波数が60Hzであれば、当該垂直同期信号の1周期分に相当する16.7ミリ秒である。また、1行分の水平走査に要する期間が水平走査期間(H)である。
【0040】
各行における水平走査期間(H)の動作は、画素回路110において共通である。また、ある水平走査期間(H)において走査される行の1~n列目の画素回路110の動作についても、ほぼ共通である。そこで以下については、i行j列における画素回路110について着目して説明する。
【0041】
電気光学装置10において、水平走査期間(H)は、時間の順で、初期化期間(A)、補償期間(B)および書込期間(C)に分けられる。このうち、初期化期間(A)は、さらに3つの初期化期間(A1)、(A2)および(A3)に分けられる。また、画素回路110の動作としては、初期化期間(A)、補償期間(B)および書込期間(C)とは別に、さらに発光期間(D)が加わる。
【0042】
初期化期間(A1)は、トランジスター121をオフ状態に設定するための期間である。初期化期間(A2)は、特定OLED130以外のOLED130におけるアノード電位をリセットするための期間である。なお、特定OLED130とは、階調レベルが最高の白レベルに相当する輝度で発光させるOLEDをいう。初期化期間(A3)は、トランジスター121をオン状態にさせるための電位Viniを、ゲートノードgに供給するための期間である。
補償期間(B)は、トランジスター121のゲートノードgを、当該トランジスター121の閾値電圧に応じた電位に収束させるための期間である。
書込期間(C)は、トランジスター121のゲートノードgに、階調レベルに応じた電位を保持させる(書き込む)期間であり、詳細には、当該トランジスター121のゲートノードgを、閾値電圧に対応した電位からOLED130に流す電流に応じた電圧分だけ変化させるための期間である。
発光期間(D)は、書込期間(C)に保持されたゲートノードgの電位に応じた電流をOLED130に流して発光させるための期間である。
【0043】
各水平走査期間(H)の初期化期間(A1)では、制御信号/DrstがLレベルであり、制御信号/GiniがHレベルであり、制御信号/GrefがLレベルである。このため、各列のトランジスター82がオン状態になり、各列のトランジスター84がオフ状態になり、各列のトランジスター62がオン状態になる。
初期化期間(A1)では、制御信号Yr(j)がHレベルである。図4では、j列目の制御信号Yr(j)が示されているが、初期化期間(A1)では、階調レベルに関係なく、制御信号Yr(1)~Yr(j)がHレベルになる。このため、各列のトランジスター86がオフ状態になる。
【0044】
また、i行目における水平走査期間(H)の初期化期間(A1)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルであり、制御信号/Gcmp(i)がHレベルであり、制御信号/Gel(i)がHレベルである。このため、初期化期間(A1)では、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオン状態であり、トランジスター123がオフ状態であり、トランジスター124がオフ状態である。
【0045】
したがって、初期化期間(A1)では、図5に示されるように、i行j列の画素回路110では、電位Velが、トランジスター82、j列目のデータ線14およびトランジスター122を順に介して、容量素子140の一端、および、トランジスター121のゲートノードgに供給される。ゲートノードgが電位Velになると、ゲートノードgおよびソースノードsの間の電圧がゼロになるので、トランジスター121は強制的にオフ状態になる。
【0046】
なお、初期化期間(A1)において、j列目のデータ信号出力線14cは、トランジスター62のオン状態によって電位Vrefになる。
また、j列目のデータ線14が電位Velになるので、容量素子70の両端電圧は|Vel-Vref|になり、寄生容量72の一端は電位Velに保持される。電位Velは電源電圧の高位であるので、j列目における容量素子70および寄生容量72は、充電されることになる。
【0047】
各水平走査期間(H)において初期化期間(A2)では、制御信号/DrstがHレベルに変化し、制御信号/GiniがHレベルを維持し、制御信号/GrefがLレベルを維持する。このため、各列のトランジスター82がオフ状態に変化し、各列のトランジスター84がオフ状態を維持し、各列のトランジスター62がオン状態を維持する。
初期化期間(A2)において、制御信号Yr(j)のレベルはj列目の判定回路510の判定結果によって変化する。詳細には、i行目の初期化期間(A2)において、j列目の判定回路510は、i行j列の階調レベルが白レベル以外であれば、図4において(Nw)で示されるように、制御信号/Yr(j)をLレベルとし、当該階調レベルが白レベルであれば、図4において(W)で示されるように、制御信号/Yr(j)をHレベルとする。
【0048】
また、i行目における水平走査期間(H)の初期化期間(A2)では、走査信号/Gwr(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gcmp(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がLレベルに変化する。このため、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオフ状態に変化し、トランジスター123がオン状態に変化し、トランジスター124がオン状態に変化する。
【0049】
初期化期間(A2)において制御信号/Yr(j)がLレベルであれば、トランジスター86がオン状態に変化するので、j列目のデータ線14が電位Vorstになる。したがって、i行j列の階調レベルが白レベル以外であれば、図6に示されるように、当該i行j列の画素回路110におけるOLED130のアノードが、トランジスター124、123、j列目のデータ線14およびトランジスター86を順に介して第1電位である電位Vorstにリセットされる動作、すなわちリセット動作が行われる。
【0050】
なお、初期化期間(A2)において、j列目のデータ信号出力線14cは、トランジスター62のオン状態が維持されることによって初期化期間(A1)から引き続いて電位Vrefである。
また、j列目のデータ線14が電位Vorstになるので、容量素子70の両端電圧は|Vorst-Vref|になり、寄生容量72の一端は電位Vorstに保持される。電位VelおよびVorstは、
Vel>Vorst
という関係にあるので、j列目における容量素子70および寄生容量72は放電されることになる。
【0051】
一方、初期化期間(A2)において制御信号/Yr(j)がHレベルであれば、トランジスター86がオフ状態を維持する。直前の初期化期間(A1)では、データ線14が電位Velであり、当該電位Velは容量素子70の他端および寄生容量72の一端に保持されている。このため、i行j列の階調レベルが白レベルであれば、i行j列の画素回路110におけるOLED130には、図7に示されるように、容量素子70および寄生容量72から電荷が流出して、データ線14、トランジスター123、124を順に介してOLED130に向かう非リセット動作が行われる。
【0052】
容量素子70および寄生容量72から流出した電荷によって、OLED130の寄生容量が満充電になると、電荷が溢れてOLED130(の発光機能層132)に流れるので、当該OLED130が発光することがある。ただし、i行j列の階調レベルは最高階調の白レベルが指定されているので、想定期間外、すなわち発光期間(D)以外の初期化期間(A2)における発光の影響は無視することができる。
【0053】
なお、電荷の流出によってj列目における容量素子70および寄生容量72は放電になるので、データ線14は電位Velから低下する。なお、この放電は、j列目のデータ線14を介してOLED130の寄生容量に電荷を分配する程度であり、微量である。
このため、i行目の水平走査期間のうち、初期化期間(A2)においてi行j列の階調レベルが白レベルであれば、j列目のデータ線14およびi行j列におけるアノードは、電位Vorstおよび電位Velの間の電位、すなわち第2電位になるが、ほぼ電位Velであるといって差し支えない。
すなわち、階調レベルが白レベルである場合に行われる非リセット動作において、j列目の容量素子70および寄生容量72の放電による影響は、階調レベルが白レベル以外である場合のリセット動作と比較して無視することができる。なお、本実施形態では、初期化期間(A1)においてトランジスター121をオフ状態に設定するが、これに限らず、初期化期間(A1)がなくてもよい。すなわち、初期化期間(A1)においてトランジスター121をオフ状態に設定せずに、初期化期間(A2)において、OLED130におけるアノード電位をリセットしてもよい。この場合、トランジスター122をオフ状態としてOLED130におけるアノード電位をリセットしてもよい。
【0054】
各水平走査期間(H)において初期化期間(A3)では、制御信号/DrstがHレベルを維持し、制御信号/GiniがLレベルに変化し、制御信号/GrefがLレベルを維持する。このため、各列のトランジスター82がオフ状態を維持し、各列のトランジスター84がオン状態に変化し、各列のトランジスター62がオン状態を維持する。
初期化期間(A3)では、制御信号Yr(j)がHレベルである。なお、ここではj列目の制御信号Yr(j)で説明しているが、初期化期間(A3)以降では、階調レベルに関係なく、制御信号Yr(1)~Yr(j)がHレベルである。このため、各列のトランジスター86がオフ状態になる。
【0055】
また、i行目における水平走査期間(H)の初期化期間(A3)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gcmp(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルに変化する。このため、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオン状態に変化し、トランジスター123がオフ状態に変化し、トランジスター124がオフ状態に変化する。
【0056】
したがって、初期化期間(A3)では、図8に示されるように、i行j列の画素回路110において、電位Viniが、トランジスター84、j列目のデータ線14およびトランジスター122を順に介して、容量素子140の一端、および、トランジスター121のゲートノードgに供給される。
【0057】
なお、初期化期間(A3)において、j列目のデータ信号出力線14cは、トランジスター62のオン状態が維持されることによって初期化期間(A1)から引き続いて電位Vrefである。
また、j列目のデータ線14が電位Viniになるので、容量素子70の両端電圧は|Vini-Vref|になり、寄生容量72の一端は電位Viniに保持される。電位ViniおよびVorstは、
(Vel>)Vini>Vorst
という関係にある。
このため、容量素子70および寄生容量72は、初期化期間(A2)においてデータ線14が電位Vorstであったならば、充電されることになる。また、初期化期間(A2)において、データ線14が電位Velからほとんど変化しなかったのであれば、放電されることになる。
なお、図8では、容量素子70および寄生容量72が充電される場合を示している。
【0058】
初期化期間(A3)が終了すると補償期間(B)になる。各水平走査期間(H)において補償期間(B)では、制御信号/DrstがHレベルを維持し、制御信号/GiniがHレベルに変化し、制御信号/GrefがLレベルを維持する。このため、各列のトランジスター82がオフ状態を維持し、各列のトランジスター84がオフ状態に変化し、各列のトランジスター62がオン状態を維持する。
図4では、制御信号/Yr(j)のみが示されているが、補償期間(B)では上述したように、制御信号/Yr(1)~/Yr(j)がHレベルである。このため、各列のトランジスター86がオフ状態を維持する。
【0059】
また、i行目の水平走査期間(H)の補償期間(B)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルを維持し、制御信号/Gcmp(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルを維持する。このため、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオン状態を維持し、トランジスター123がオン状態に変化し、トランジスター124がオフ状態を維持する。
【0060】
補償期間(B)の始期においてi行目の画素回路110では、容量素子140によってトランジスター121のゲートノードgが電位Viniに保持されている。ゲートノードgが電位Viniになっているときに、トランジスター123がオン状態になると、トランジスター121がダイオード接続になる。
【0061】
したがって、補償期間(B)では、図9に示されるように、当該トランジスター121におけるゲートノードgおよびソースノードsの間の電圧は、当該トランジスター121の閾値電圧Vth(に近い電圧)に収束する。すなわち、トランジスター121におけるゲートノードgおよびデータ線14の電位は閾値相当電位(Vel-Vth)に収束する。
【0062】
i行目の補償期間(B)では、各列のトランジスター62がオン状態を維持するので、各列のデータ信号出力線14cが電位Vrefに保たれる。
また、データ線14が閾値相当電位(Vel-Vth)に収束するので、容量素子70の両端電圧は|Vel-Vth-Vref|になり、寄生容量72の一端は閾値相当電位(Vel-Vth)に保持される。
【0063】
補償期間(B)が終了すると書込期間(C)になる。各水平走査期間(H)において書込期間(C)では、制御信号/DrstがHレベルを維持し、制御信号/GiniがHレベルを維持し、制御信号/GrefがHレベルに変化する。このため、各列のトランジスター82がオフ状態を維持し、各列のトランジスター84がオフ状態を維持し、各列のトランジスター62がオフ状態に変化する。
図4では、制御信号/Yr(j)が示されているが、書込期間(C)では上述したように、制御信号/Yr(1)~/Yr(j)がHレベルである。このため、各列のトランジスター86がオフ状態になる。
【0064】
また、i行目の水平走査期間(H)の書込期間(C)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルを維持し、制御信号/Gcmp(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルを維持する。このため、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオン状態を維持し、トランジスター123がオフ状態に変化し、トランジスター124がオフ状態を維持する。
【0065】
書込期間(C)において、各列のトランジスター62がオフ状態に変化する。また、各列のDA変換回路500には、i行目であって、列に対応する10ビットの映像データVdataが供給される。このため、j列目のDA変換回路500は、i行j列の階調レベルに応じた電位のデータ信号をデータ信号出力線14cに出力する。
【0066】
したがって、書込期間(C)では、図10に示されるように、j列目の容量素子70の一端は、電位Vrefから、i行j列に対応した階調レベルの電位に上昇する。この電位上昇は、当該容量素子70、データ線14およびトランジスター122を順に介してトランジスター121のゲートノードgに到達する。
【0067】
書込期間(C)におけるゲートノードgの電位変化分は、容量素子70の一端における電位上昇分に、「合成容量値」に対する容量素子70の容量値の比を、乗じた値である。ここでいう「合成容量値」とは、容量素子70、寄生容量72および容量素子140による合成容量の容量値である。なお、容量素子140の容量値は、他の容量値と比較して十分に小さい場合には、無視することができる。
【0068】
走査信号/Gwr(i)がHレベルに変化したときに、i行目の書込期間(D)が終了する。走査信号/Gwr(i)がHレベルになると、i行j列の画素回路110ではトランジスター122がオフ状態になるが、ゲートノードgの電位と電位Velとの差の電圧は、容量素子140に保持される。
【0069】
書込期間(C)の終了後、発光期間(D)になる。
i行目の発光期間(E)に至ると、制御信号/Gel(i)がLレベルに反転するので、トランジスター124がオン状態になる。
したがって、発光期間(D)では、図11に示されるように、OLED130には、容量素子140による保持されたゲートノードgの電位に応じた電流Ielがトランジスター121によって流れる。このため、当該OLED130が、当該電流Ielに応じた輝度で発光する。
【0070】
なお、図4は、i行目の書込期間(C)の終了後、直ちにi行目の発光期間(D)が開始する例であるが、i行目の書込期間(C)の終了後、例えば1水平走査期間(H)後に、i行目の発光期間(D)が開始してもよい。
また、図4は、発光期間(D)が連続した例であるが、制御信号/Gel(i)がLレベルになる期間は、間欠的であってもよいし、輝度の調整に応じて変化させてもよいし、環境光の輝度に応じて調整されてもよい。また、発光期間(D)における制御信号/Gel(i)のレベルについては、HレベルとLレベルとの中間的なレベルを用いてもよい。
【0071】
i行目の水平走査期間(H)において、1~n列の画素回路110について同様な動作が実行される。また、図4では、i行目の水平走査期間(H)について着目し、当該水平走査期間(H)の動作について説明したが、同様な動作は、1、2、3、…、m行目の水平走査期間(H)について順次実行される。
【0072】
i行j列の画素回路110にけるゲートノードgの電位は、補償期間(B)における閾値相当電位から、i行j列の階調レベルに応じて変化させた電位である。同様な動作が他の画素回路110でも実行されるので、実施形態では、m行n列のすべての画素回路110にわたってトランジスター121の閾値が補償された状態で、OLED130に階調レベルに応じた電流が流れることになる。したがって、本実施形態では、輝度のばらつきが小さくなる結果、高品位な表示が可能になる。
【0073】
OLED130のアノードを放電させるリセット動作が行われる理由は主に次の通りである。OLED130では、アノードである画素電極131とカソードである共通電極133とで発光機能層132が挟持されるので、当該OLED130には容量が寄生する。上述したように補償期間(B)においてトランジスター121のゲートノードgおよびドレインノードd(トランジスター124のソースノード)は、閾値相当電位になる。次に、書込期間(C)において、トランジスター121のゲートノードgに、階調レベルに応じた電位が供給される。
【0074】
仮に、最低階調の黒レベル(最も暗いレベル)がゲートノードgに供給された場合、当該ゲートノードgは、電位Velであることが理想であるが、実際には、電位Velよりも低い電位になる。このため、発光期間(D)においてトランジスター124がオン状態になると、トランジスター121ではソースノードsからドレインノードdに向かってリーク電流が流れる。OLED130の寄生容量に蓄積された電荷を予めリセットしておかないと、リーク電流によって、やがて当該寄生容量が満充電になり、OLED130に電流が流れ始めて、発光してしまう現象が発生する。この現象は、黒レベルが、すなわち発光しない輝度が指定されているにもかかわらず、わずかに発光して、あたかも黒が浮いたように視認されることから、黒浮きと呼ばれる。
【0075】
そこで、発光期間(D)よりも前の初期化期間(A2)において、OLED130のアノードを電位Vorstにして、予めアノードを放電させ、当該OLED130の寄生容量に蓄積された電荷をリセットしている。これにより、発光期間(D)においてトランジスター121にリーク電流が流れても、当該リーク電流によってOLED130の寄生容量が満充電にならず、発光しないので、いわゆる黒浮きを抑えることできる。
【0076】
しかしながら、リセット動作が行われる構成は、低消費電力化を阻害する要因になり得る。これを説明するために、比較例について説明する。比較例は、構成でいえば、実施形態において、各列の判定回路510を有しない構成であり、初期化期間(A2)において階調レベルにかかわらず、OLED130のアノードが電位Vorstにリセットされて、リセット動作が行われる構成である。
この構成では、全列において容量素子70の他端および寄生容量72の一端が、初期化期間(A1)において電位Velになり、初期化期間(A2)において電位Vorstになり、初期化期間(A3)において電位Viniになる。
【0077】
上述したように、電位Vel、Vorst、Viniは、
Vel>Vini>Vorst(≒Vct)
という関係にある。
このうち、電位Velは電源電圧の高位であり、電位Vorstは電源電圧の低位の電位Gndまたは電位Gndに近い電位である。このため、上記比較例では、容量素子70および寄生容量72が、初期化期間(A1)において充電され、初期化期間(A2)において放電され、初期化期間(A3)において充電される。このような容量素子70および寄生容量72における充電→放電→充電が、比較例では、一水平走査期間(H)毎に各列で行われるので、消費される電力が大きくなる。
【0078】
本実施形態では、容量素子70の他端および寄生容量72の一端が、初期化期間(A1)において電位Velに充電される点において比較例と共通である。しかしながら、本実施形態では、階調レベルが白レベルである列では、初期化期間(A2)においてリセット動作ではなく、電荷を分配する非リセット動作が行われるので、当該列の容量素子70および寄生容量72の放電は、階調レベルが白レベル以外である場合と比較して無視することができる。さらに、本実施形態では、初期化期間(A3)において、容量素子70の他端および寄生容量72の一端が電位Viniになるが、階調レベルが白レベルである列では、電位Velからの放電になる。
【0079】
すなわち、容量素子70および寄生容量72が、比較例では、初期化期間(A1)→(A2)→(A3)において、全列において充電→放電→充電になるのに対し、本実施形態では、階調レベルが白レベル以外の列においては比較例と同様であるが、階調レベルが白レベルの列において充電→ほぼ変化なし→放電となる。
【0080】
したがって、第1実施形態では、容量素子70および寄生容量72の充放電によって消費される電力を、階調レベルが白レベルである列が存在すれば、比較例と比べて低減することができる。
【0081】
なお、階調レベルが最高階調の白レベルである列が存在する場合とは、具体的には、例えば図12に示されるような画面を表示する場合である。
この場合、データ線14Nwは、階調レベルが白レベル以外の列であるので、容量素子70および寄生容量72が、初期化期間(A1)において電位Velによって充電され、初期化期間(A2)において電位Vorstによって放電され、初期化期間(A3)において電位Viniによって再充電される。
一方、データ線14Wは、階調レベルが白レベルの列であるので、容量素子70および寄生容量72が、初期化期間(A1)において電位Velによって充電され、初期化期間(A2)においてほとんど放電されず、初期化期間(A3)において電位Viniによって放電される。
【0082】
第1実施形態では、初期化期間(A2)において階調レベルが白レベルである列のトランジスター86をオフ状態として、リセット動作ではなく、非リセット動作を行う構成としたが、これ以外の構成でもよい。そこで、階調レベルが白レベルである列の非リセット動作を第1実施形態とは別の動作で行う第2実施形態について説明する。
【0083】
図13は、第2実施形態に係る電気光学装置10の電気的な構成を示すブロック図であり、図14は、当該電気光学装置10の動作を示すタイミングチャートである。
【0084】
図13で示される第2実施形態が、図2で示される第1実施形態と相違する点は、判定回路510が制御信号/Yr(1)~/Yr(n)に加えて、制御信号/Yini(1)~/Yini(n)を順に1~n列に対応して出力する点、および、1~n列のトランジスター84のゲートノードに、順に制御信号/Yini(1)~/Yini(n)が供給される点である。なお、図13では、紙面の関係上、制御信号/Yini(3)および/Yini(n)のみが表記されている。
【0085】
第2実施形態では、初期化期間(A2)において、制御信号Yini(j)のレベルはj列目の判定回路510の判定結果によって変化する。詳細には、j列目の判定回路510は、i行目の初期化期間(A2)において、i行j列の階調レベルが最高の白レベルでなければ、図14で(Nw)で示されるように制御信号/Yini(j)をHレベルとし、当該階調レベルが白レベルであれば、(W)で示されるように制御信号/Yini(j)をLレベルとする。
【0086】
また、j列目の判定回路510は、i行目の初期化期間(A3)において、i行j列の階調レベルとは関係なく、制御信号/Yini(j)をLレベルとする。
なお、j列目の判定回路510は、初期化期間(A2)および(A3)以外の期間において、制御信号/Yini(j)をHレベルとする。また、j列目の判定回路510は、第1実施形態と同様な制御信号/Yr(j)を出力する。
【0087】
第2実施形態に係る電気光学装置10では、i行目の水平走査期間(H)のうち、初期化期間(A2)においてi行j列の階調レベルが白レベルである場合の動作のみが、第1実施形態と異なる。
換言すれば、第2実施形態に係る電気光学装置10では、i行目の水平走査期間(H)のうち、初期化期間(A1)、i行j列の階調レベルが白レベルでない場合における初期化期間(A2)、初期化期間(A3)、補償期間(B)および書込期間(C)が第1実施形態と共通である。また、第2実施形態に係る電気光学装置10では、i行目の水平走査期間(H)以外の期間における発光期間(D)の動作についても、第1実施形態と共通である。
【0088】
図15は、i行目の水平走査期間(H)のうち、初期化期間(A2)においてi行j列の階調レベルが白レベルである場合の動作を示す図である。
各水平走査期間(H)において初期化期間(A2)では、制御信号/DrstがHレベルに変化し、制御信号/GrefがLレベルを維持する。このため、各列のトランジスター82がオフ状態に変化し、各列のトランジスター62がオン状態を維持する。
また、i行目における水平走査期間(H)の初期化期間(A2)では、走査信号/Gwr(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gcmp(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がLレベルに変化する。このため、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオフ状態に変化し、トランジスター123がオン状態に変化し、トランジスター124がオン状態に変化する。
【0089】
i行目の水平走査期間(H)において初期化期間(A2)では、i行j列の階調レベルが白レベルであれば、制御信号/Yini(j)がLレベルになり、制御信号/Yr(j)がHレベルになる。このため、j列目のトランジスター84がオン状態に変化し、j列目のトランジスター86がオン状態を維持するので、j列目のデータ線14は電位Viniにする非リセット動作が行われる。
したがって、電流が、図15に示されるように、当該j列目のデータ線14、トランジスター123、124を順に介してOLED130に向かうので、当該OLED130は、初期化期間(A2)において発光する。
ただし、電位VelおよびViniは、
Vel>Vini
という関係にあるので、OLED130が発光する輝度は、第1実施形態と比較して、低くなる。
【0090】
なお、第2実施形態では、i行目の水平走査期間(H)のうち、初期化期間(A3)において、i行j列の階調レベルが白レベルであれば、トランジスター82がオフ状態を維持し、トランジスター84がオン状態であり、トランジスター86がオフ状態を維持し、トランジスター62がオン状態を維持する。また、画素回路110では、トランジスター122がオン状態になり、トランジスター123がオフ状態に変化し、トランジスター124がオフ状態に変化する。このため、容量素子140の他端およびトランジスター121のゲートノードgには、第1実施形態と同様に、j列目のデータ線14、トランジスター122を順に介して電位Viniが供給される。
【0091】
ただし、j列目の階調レベルが白レベルであれば、j列目のデータ線14は初期化期間(A2)における電位Viniから変化しない。このため、容量素子70および寄生容量72が、第2実施形態では、初期化期間(A1)→(A2)→(A3)において、階調レベルが白レベルの列では、充電→放電→変化なしになる。
【0092】
したがって、第2実施形態では、容量素子70および寄生容量72の充放電によって消費される電力を、階調レベルが白レベルである列が存在すれば、上述した比較例と比べて、第1実施形態と同様に低減することができる。
また、第2実施形態では、階調レベルが白レベルである場合に、初期化期間(A2)におけるデータ線14が、電位Velよりも低い電位Viniであるので、想定期間外で発光する輝度を低く抑えることも期待できる。
【0093】
上述した第1実施形態および第2実施形態(以下、実施形態等と呼ぶ)では、以下のように種々の変形または応用が可能である。
【0094】
実施形態等では、初期化期間(A2)において、階調レベルが白レベル以外であればリセット動作を行い、階調レベルが白レベルであれば非リセット動作を行う構成とした。
上述したように、リセット動作によってOLED130に蓄積された電荷をリセットする理由は、いわゆる黒浮きの発生を抑えるためである。黒浮きは、階調レベルが最低の黒レベルだけでなく、黒レベル近辺である場合、すなわち、階調レベルが閾値未満である場合に発生する。
そこで、階調レベルが閾値未満であれば、初期化期間(A2)においてOLED130のアノードを、図6に示されるように放電させるリセット動作を行い、階調レベルが閾値以上であれば、初期化期間(A2)においてアノードを、図7または図15に示されるように放電させない非リセット動作を行う構成としてもよい。
なお、実施形態等では、判定回路510が10ビットの映像データVdataで階調レベルを判定する。すなわち、階調レベルが閾値未満であるか、閾値以上であるかについては、映像データVidの8ビットを10ビットに変換した後の映像データVdataで判定される。
【0095】
実施形態等において、発光素子の一例としてOLED130を例示して説明したが、他の発光素子を用いてもよい。例えば発光素子としてLEDを用いてもよいし、照明機構を併用した液晶素子であってもよい。すなわち、発光素子としては、データ線14の電圧に応じた光学状態になる電気光学素子であればよい。
実施形態等では、DA変換回路500として10ビットの変換例を示したが、これに限られない。
【0096】
トランジスター64、82、84、86、121~124等のチャネル型は、実施形態等に限定されない。また、これらのトランジスター等は、適宜トランスミッションゲートに置き換えてもよい。
【0097】
次に、実施形態等に係る電気光学装置10を適用した電子機器について説明する。電気光学装置10は、画素が小サイズで高精細な表示な用途に向いている。そこで、電子機器として、ヘッドマウントディスプレイを例に挙げて説明する。
【0098】
図16は、ヘッドマウントディスプレイの外観を示す図であり、図17は、その光学的な構成を示す図である。
まず、図16に示されるように、ヘッドマウントディスプレイ300は、外観的には、一般的な眼鏡と同様にテンプル310や、ブリッジ320、レンズ301L、301Rを有する。また、ヘッドマウントディスプレイ300は、図17に示されるように、ブリッジ320近傍であってレンズ301L、301Rの奥側(図において下側)には、左眼用の電気光学装置10Lと右眼用の電気光学装置10Rとが設けられる。
電気光学装置10Lの画像表示面は、図17において左になるように配置している。これによって電気光学装置10Lによる表示画像は、光学レンズ302Lを介して図において9時の方向に出射する。ハーフミラー303Lは、電気光学装置10Lによる表示画像を6時の方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。電気光学装置10Rの画像表示面は、電気光学装置10Lとは反対の右になるように配置している。これによって電気光学装置10Rによる表示画像は、光学レンズ302Rを介して図において3時の方向に出射する。ハーフミラー303Rは、電気光学装置10Rによる表示画像を6時方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。
【0099】
この構成において、ヘッドマウントディスプレイ300の装着者は、電気光学装置10L、10Rによる表示画像を、外の様子と重ね合わせたシースルー状態で観察することができる。
また、このヘッドマウントディスプレイ300において、視差を伴う両眼画像のうち、左眼用画像を電気光学装置10Lが表示し、右眼用画像を電気光学装置10Rが表示すると、装着者に、表示された画像があたかも奥行きや立体感を持つかのように知覚させることができる。
【0100】
なお、電気光学装置10を含む電子機器については、ヘッドマウントディスプレイ300のほかにも、ビデオカメラやレンズ交換式のデジタルカメラなどにおける電子式ビューファインダー、携帯情報端末、腕時計の表示部、投写式プロジェクターのライトバルブなどにも適用可能である。
【0101】
以上に例示した形態から、例えば以下の態様が把握される。
【0102】
ひとつの態様(態様1)に係る電気光学装置は、データ線と走査線とに対応して設けられる画素回路と、前記画素回路を制御する制御回路と、を含み、前記画素回路は、二つの電極を有し、前記二つの電極の間に流れる電流に応じた輝度で発光する発光素子と、ゲートノードの電位およびソースノードの電位の間の電圧に応じた電流を前記発光素子に流す駆動トランジスターと、を含み、前記制御回路は、書込期間において、前記ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、前記データ線を介して供給し、前記書込期間よりも前の第1初期化期間において、第1動作または第2動作を前記階調レベルに応じて実行し、前記第1動作は、前記二つの電極の一方の電極に、前記階調レベルに応じた電位とは異なる第1電位を、前記データ線を介して供給する動作であり、前記第2動作は、前記データ線の電位と前記一方の電極における電位とを、前記第1電位と前記駆動トランジスターをオフ状態にさせるオフ電位との間の第2電位にさせる動作である。
【0103】
態様1によれば、第1初期化期間では、階調レベルに応じて第1動作または第2動作が実行される。第1動作では、データ線が直前電位から第1電位になるので、放電量が多くなるのに対し、第2動作では、データ線が直前電位からオフ電位から第1電位とオフ電位との間の第2電位になるので、データ線の寄生容量における放電量が第1動作と比較して抑えられる。
なお、LED130が発光素子の一例であり、画素電極131が二つの電極のうちの一方の電極の一例であり、トランジスター121が駆動トランジスターの一例であり、電位Velがオフ電位の一例であり、電位Vorstが第1電位の一例である。また、電位Velよりも若干低位の電位が第2電位の一例である。具体的には、オフ電位に保持したデータ線の寄生容量に蓄積された電荷が発光素子における一方の電極に分配された後の電位も第2電位の一例である。初期化期間(A2)が第1初期化期間の一例である。
【0104】
態様1の具体的な態様2に係る電気光学装置は、一端および他端を有し、一端が前記データ線に電気的に接続され、他端が前記第1電位の給電線に電気的に接続された第1スイッチング素子を有し、前記制御回路は、前記第1初期化期間において、前記階調レベルに応じて前記第1スイッチング素子をオン状態またはオフ状態に制御する。
態様2によれば、第1初期化期間の第1動作において第1スイッチング素子がオン状態になることによってデータ線が第1電位になる。なお、トランジスター86が第1スイッチング素子の一例である。
【0105】
態様2の具体的な態様3に係る電気光学装置は、前記制御回路は、前記第1初期化期間において、前記階調レベルが閾値以上であれば、前記第1スイッチング素子をオフ状態に制御する。
態様3によれば、階調レベルが閾値以上であれば、第1初期化期間において第1スイッチング素子がオフ状態に制御されて、第2動作が実行される。
【0106】
態様2の具体的な態様4に係る電気光学装置は、一端および他端を有し、一端が前記データ線に電気的に接続され、他端が前記第2電位を給電する給電線に電気的に接続された第2スイッチング素子を有し、前記制御回路は、前記第1初期化期間において、前記第1スイッチング素子をオフ状態に制御する場合に、前記第2スイッチング素子をオン状態に制御する。
態様4によれば、第1初期化期間の第2動作において、第1スイッチング素子がオフ状態および第2スイッチング素子のオン状態になることによって、データ線の電位と一方の電極における電位が、第2電位になる。
なお、トランジスター84が第2スイッチング素子の一例であり、電位Viniが第2電位の一例である。
【0107】
態様4の具体的な態様5に係る電気光学装置において、前記第2電位は、前記ゲートノードに供給されれば、前記駆動トランジスターをオン状態にさせるオン電位である。
態様5によれば、駆動トランジスターをオン状態にさせるオン電位を第2電位として用いることができる。また、オン電位を第2電位として用いる構成では、第2初期化期間においてオフ電位に保持したデータ線の寄生容量に蓄積された電荷が発光素子における一方の電極に分配された後の電位を第2電位として用いる構成と比較して、発光素子の輝度を低く抑えることができる。
【0108】
態様5の具体的な態様6に係る電気光学装置において、前記制御回路は、前記第1初期化期間よりも後であって、前記書込期間よりも前の第2初期化期間において、前記ゲートノードに前記第2電位を、前記データ線を介して供給し、前記第2初期化期間よりも後であって、前記書込期間よりも前の補償期間において、前記ゲートノードを前記駆動トランジスターの閾値に相当する電位に収束させる。
補償期間においてゲートノードを駆動トランジスターの閾値に相当する電位に収束させるためには、補償期間の前に、駆動トランジスターをオン状態とさせる必要がある。態様6によれば、オン状態にさせるためのオン電位を、第2電位として用いるので、構成の複雑化を抑えることができる。
なお、初期化期間(A2)が第1初期化期間の一例である。
【0109】
態様1の別の具体的な態様7では、前記制御回路は、前記書込期間において、前記ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、カップリング容量および前記データ線を介して供給する。
態様7によれば、データ線の寄生容量のみならず、カップリング容量の放電量についても抑えることができる。なお、容量素子70がカップリング容量の一例である。
態様1の別の具体的な態様8では、前記第1初期化期間よりも前の第3初期化期間において、前記ゲートノードに前記駆動トランジスターをオフ状態にさせるオフ電位を、前記データ線を介して供給する。なお、初期化期間(A1)が第3初期化期間の一例である。
【0110】
態様9に係る電子機器では、態様1乃至8のいずれかに係る電気光学装置を含む。
【符号の説明】
【0111】
10…電気光学装置、12…走査線、14…データ線、14c…データ信号出力線、30…制御回路、50…データ信号出力回路、60…補助回路、62…トランジスター、70…容量素子、72…寄生容量、80…初期化回路、82、84、86…トランジスター、110…画素回路、120…走査線駆動回路、121~124…トランジスター、130…OLED。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17