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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117948
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】記録方法及び記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20240823BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240823BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20240823BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240823BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 110
C09D11/30
C09D11/54
B41J2/01 123
B41J2/21
B41J2/01 213
B41J2/01 451
B41J2/01 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024064
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小池 直樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 一平
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB45
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC13
2C056EC29
2C056EC37
2C056EC72
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056FB02
2C056HA42
2C056HA46
2C056HA47
2H186AA04
2H186AB03
2H186AB12
2H186AB55
2H186AB57
2H186AB61
2H186BA08
2H186DA09
2H186DA12
2H186FA07
2H186FA08
2H186FA14
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB56
2H186FB58
4J039BD02
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE28
4J039BE32
4J039CA06
4J039EA36
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インク組成物の付着量が少ない低濃度や中濃度の領域で画質が良好な記録方法を提供する。
【解決手段】凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる工程と、非白色色材を含有する有色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、樹脂を含有するクリアインク組成物又は白色色材を含有する白色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、を備え、前記有色インク組成物が付着する領域であって、前記有色インク組成物の付着量が、記録における前記有色インク組成物の最大の付着量より少ない所定の付着量以下である領域に、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着を行い、前記クリアインク組成物、前記白色インク組成物及び前記有色インク組成物は、インク:処理液=10:1の質量比で混合させた時に、増粘率が5倍以上である、記録方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる工程と、
非白色色材を含有する有色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、
樹脂を含有するクリアインク組成物又は白色色材を含有する白色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、
を備え、
前記有色インク組成物が付着する領域であって、前記有色インク組成物の付着量が、記録における前記有色インク組成物の最大の付着量より少ない所定の付着量以下である領域に、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着を行い、
前記クリアインク組成物、前記白色インク組成物及び前記有色インク組成物は、インク:処理液=10:1の質量比で混合させた時に、増粘率が5倍以上である、記録方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記所定の付着量は、記録における前記着色インクの最大の付着量の75質量%以下である、記録方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記有色インク組成物と、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物と、を付着させる領域の、前記有色インク組成物と、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物と、の合計の付着量が11mg/inch以下である、記録方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
前記有色インク組成物と、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物と、を付着させる領域の、クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着量が、記録における前記有色インク組成物の最大の付着量以下である、記録方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2において、
前記インクジェットヘッドと前記記録媒体の相対位置を移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出し前記記録媒体に付着させる走査を行うことで記録を行い、
前記記録媒体の、1回の前記走査により走査が行なわれる走査領域において、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着の完了から、前記有色インク組成物の付着の開始までの期間が0.1秒以上である、記録方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2において、
前記インクジェットヘッドと前記記録媒体の相対位置を移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出し前記記録媒体に付着させる走査を行うことで記録を行い、かつ前記走査を2回以上行うことで記録を行い、
前記記録媒体の、1回の前記走査により走査が行なわれる走査領域に対し、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物を付着する走査と同じ走査で前記有色インク組成物を付着する、又は、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物を付着する走査より後の走査で前記有色インク組成物を付着する、記録方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2において、
前記記録媒体が、低吸収記録媒体又は非吸収記録媒体である、記録方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2において、
前記有色インク組成物が付着する領域であって、前記有色インク組成物の付着量が、前記所定の付着量超の領域において、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着を行わない、記録方法。
【請求項9】
請求項1又は請求項2において、
前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物に含まれる樹脂の固形分が8質量%以上である、記録方法
【請求項10】
請求項1又は請求項2において、
前記有色インク組成物の付着時の前記記録媒体の表面温度が、40℃以下である、記録方法。
【請求項11】
請求項1又は請求項2において、
前記インクジェットヘッドと前記記録媒体の相対位置を移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出し前記記録媒体に付着させる走査を行うことで記録を行い、
前記記録媒体の、1回の前記走査により走査が行なわれる走査領域に対する、前記有色インク組成物を付着させる走査の回数が4回以下である、記録方法。
【請求項12】
請求項1又は請求項2に記載の記録方法を行う記録装置であって、
前記有色インク組成物、及び、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物を吐出するインクジェットヘッドを備える、記録装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記記録媒体の種類に応じて前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着工程の付着量を変更する、記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
処理液を用いた記録方法により、高精細な画像の記録を行うことが、各方面で検討されている。また、白色画像と非白色画像とを重ねて印刷することにより、画像の視認性を向上させる試みも行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、 水系インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有する反応液を、記録媒体の記録領域へ付着させる反応液付着工程と、表面処理顔料を含む顔料分散体と、水と、を含有する水系インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出させて前記記録媒体の前記記録領域へ付着させるインク組成物付着工程と、を備えたインクジェット記録方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-0165029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反応液を用いればインク組成物により形成される画像において、インク組成物が多く付着された高濃度の領域では発色性の良好な画像が得られる。しかしながら、画像におけるインク組成物の付着量が少ない低濃度や中濃度の領域では、反応液を用いた記録の場合に粒状性が目立つ場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る記録方法の一態様は、
凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる工程と、
非白色色材を含有する有色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、
樹脂を含有するクリアインク組成物又は白色色材を含有する白色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、
を備え、
前記有色インク組成物が付着する領域であって、前記有色インク組成物の付着量が、記録における前記有色インク組成物の最大の付着量より少ない所定の付着量以下である領域に、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着を行い、
前記クリアインク組成物、前記白色インク組成物及び前記有色インク組成物は、インク:処理液=10:1の質量比で混合させた時に、増粘率が5倍以上である。
【0007】
本発明に係る記録装置の一態様は、
上述の記録方法を行う記録装置であって、
前記有色インク組成物、及び、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物を吐出するインクジェットヘッドを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の記録方法に用い得るインクジェット記録装置の一例の概略図。
図2】実施形態の記録方法に用い得るインクジェット記録装置の一例のキャリッジ周辺の概略図。
図3】実施形態の記録方法に用いるインクジェット記録装置の一例のブロック図。
図4】実施形態の記録方法に用い得るインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの一例の概略図。
図5】実施形態の記録方法に用い得るインクジェット記録装置の他の一例の概略図。
図6】実施例及び比較例で用いる処理液、クリアインク、有色インク及び白色インクの組成、配合、評価結果を示す表(表1)。
図7】実施例の条件、評価結果を示す表(表2-1)。
図8】実施例の条件、評価結果を示す表(表2-2)。
図9】比較例の条件、評価結果を示す表(表2-3)。
図10】参考例の条件、評価結果を示す表(表2-4)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0010】
1.記録方法
本実施形態に係る記録方法は、凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる工程と、非白色色材を含有する有色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、樹脂を含有するクリアインク組成物又は白色色材を含有する白色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、
を備える。
【0011】
そして、前記有色インク組成物が付着する領域であって、前記有色インク組成物の付着量が、記録における前記有色インク組成物の最大の付着量より少ない所定の付着量以下である領域に、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着を行い、前記クリアインク組成物、前記白色インク組成物及び前記有色インク組成物は、インク:処理液=10:1の質量比で混合させた時に、増粘率が5倍以上である。
【0012】
1.1.処理液付着工程
処理液付着工程は、凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる工程である。以下、処理液の説明を行う。記録媒体への付着の手法については後述する。
【0013】
1.1.1.処理液
処理液は、凝集剤を含む。
1.1.1.(1)凝集剤
処理液は、インク(有色インク組成物、クリアインク組成物及び白色インク組成物)の成分を凝集させる凝集剤を含有する。凝集剤は、インクに含まれる顔料、インクに含まれ得る樹脂粒子などの成分と反応することで、顔料や樹脂粒子を凝集させる作用を有する。ただし、凝集剤による顔料や樹脂粒子の凝集の程度は凝集剤、顔料、樹脂粒子のそれぞれの種類によって異なり、調節することができる。また、凝集剤は、インクに含まれる顔料及び樹脂粒子と反応することで、顔料及び樹脂粒子を凝集させることができる。このような凝集により、例えば、顔料の発色を高めること、王1樹脂粒子の定着性を高めること、及び/又は、インクの粘度を高めることができる。
【0014】
凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩、無機酸、有機酸、カチオン性化合物等が挙げられ、カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂(カチオン性ポリマー)、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。これらの中でも、金属塩としては多価金属塩が好ましく、カチオン性化合物としてはカチオン性樹脂が好ましい。そのため、凝集剤としては、カチオン性樹脂、有機酸、及び多価金属塩から選ばれることが、得られる画質、耐擦性、光沢等が特に優れる点で好ましい。
【0015】
金属塩としては好ましくは多価金属塩であるが、多価金属塩以外の金属塩も使用可能である。これらの凝集剤の中でも、インクに含まれる成分との反応性に優れるという点から、金属塩、及び有機酸から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、カチオン性化合物の中でも、処理液に対して溶解しやすいという点から、カチオン性樹脂を用いることが好ましい。また、凝集剤は複数種を併用することも可能である。
【0016】
多価金属塩とは、2価以上の金属イオンとアニオンから構成される化合物である。2価以上の金属イオンとしては、例えば、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄等のイオンが挙げられる。これらの多価金属塩を構成する金属イオンの中でも、インクの成分の凝集性に優れているという点から、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。
【0017】
多価金属塩を構成するアニオンとしては、無機イオン又は有機イオンである。すなわち、本発明における多価金属塩とは、無機イオン又は有機イオンと多価金属とからなるものである。このような無機イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられる。有機イオンとしては有機酸イオンが挙げられ、例えばカルボン酸イオンが挙げられる。
【0018】
なお、多価金属化合物はイオン性の多価金属塩であることが好ましく、特に、上記多価金属塩がマグネシウム塩、カルシウム塩である場合、処理液の安定性がより良好となる。また、多価金属の対イオンとしては、無機酸イオン、有機酸イオンのいずれでもよい。
【0019】
上記の多価金属塩の具体例としては、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムといった炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、塩化バリウム、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、硝酸銅、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム等が挙げられる。これらの多価金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、水への十分な溶解性を確保でき、かつ、処理液による跡残りが低減する(跡が目立たなくなる)ため、ギ酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、及び塩化カルシウムのうち少なくともいずれかが好ましく、ギ酸カルシウム、硝酸カルシウムがより好ましい。なお、これらの金属塩は、原料形態において水和水を有していてもよい。
【0020】
多価金属塩以外の金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などの一価の金属塩が挙げられ、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0021】
有機酸としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機酸の塩で金属塩であるものは上記の金属塩に含める。
【0022】
無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。無機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
カチオン性樹脂(カチオンポリマー)としては、例えば、カチオン性のウレタン系樹脂、カチオン性のオレフィン系樹脂、カチオン性のアミン系樹脂等が挙げられる。カチオン性ポリマーは好ましくは水溶性である。
【0024】
カチオン性のウレタン系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP-7010、CP-7020、CP-7030、CP-7040、CP-7050、CP-7060、CP-7610(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR-2120C、WBR-2122C(商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
【0025】
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶媒等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
カチオン性のアミン系樹脂(カチオン性ポリマー)としては、構造中にアミノ基を有するものであればよく、公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ポリアミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂などが挙げられる。ポリアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアミノ基を有する樹脂である。ポリアミド樹脂は樹脂の主骨格中にアミド基を有する樹脂である。ポリアリルアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアリル基に由来する構造を有する樹脂である。
【0027】
また、カチオン性のポリアミン系樹脂としては、センカ株式会社製のユニセンスKHE103L(ヘキサメチレンジアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約5.0、粘度20~50(mPa・s)、固形分濃度50質量%の水溶液)、ユニセンスKHE104L(ジメチルアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約7.0、粘度1~10(mPa・s)、固形分濃度20質量%の水溶液)などを挙げることができる。さらにカチオン性のポリアミン系樹脂の市販品の具体例としては、FL-14(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、DK-6810、6853、6885;WS-4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、パピオゲンP-105(センカ社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX-1(田岡化学工業社製)、カチオマスター(登録商標)PD-1、7、30、A、PDT-2、PE-10、PE-30、DT-EH、EPA-SK01、TMHMDA-E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)が挙げられる。
【0028】
ポリアミン系樹脂としては、ポリアリルアミン樹脂も挙げられる。ポリアリルアミン樹脂は、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。
【0029】
これらの凝集剤は、複数種を使用してもよい。また、これらの凝集剤のうち、多価金属塩、有機酸、カチオン性樹脂の少なくとも一種を選択すれば、凝集作用がより良好であるので、より高画質な(特に発色性の良好な)画像を形成することができる。
【0030】
処理液における、凝集剤の合計の含有量は、例えば、処理液の全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であり、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。なお、凝集剤が溶液や分散体で共有される場合においても、固形分の含有量として上記範囲であることが好ましい。凝集剤の含有量が1質量%以上であれば、凝集剤がインクに含まれる成分を凝集させる能力が十分得られる。また、凝集剤の含有量が30質量%以下であることで、処理液中での凝集剤の溶解性や分散性がより良好になり、処理液の保存安定性等を向上できる。
【0031】
処理液に含まれる有機溶剤の疎水性が高い場合であっても、処理液中における凝集剤の溶解性が良好になるという点から、凝集剤には、25℃の水100gに対する溶解度が、1g以上であるものを使用することが好ましく、3g以上80g以下にあるものを使用することがより好ましい。
【0032】
1.1.1.(2)その他の成分
処理液は、機能を損なわない限り、凝集剤の他に、水、樹脂粒子、有機溶剤、界面活性剤、ワックス、添加剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤等の成分を含有してもよい。以下順次説明する。
【0033】
(水)
本実施形態に係る記録方法で使用する処理液は、水を含有してもよい。処理液は水系処理液であることが好ましい。水系とは主要な溶媒成分の1つとして水を含有する組成物である。このようにすれば、環境負荷を低減した、臭気等の少ない記録を行うことができる。
【0034】
水は、処理液の主となる溶媒成分として含んでもよく、乾燥により蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。水の含有量は処理液の総量に対して好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上98質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以上95質量%以下である。
【0035】
(樹脂粒子)
処理液は、樹脂粒子を含有してもよい。樹脂粒子は、記録媒体に付着させたインクによる画像の密着性などをさらに向上させることができる場合がある。樹脂粒子としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂(スチレンアクリル系樹脂を含む)、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂等からなる樹脂粒子が挙げられる。なかでも、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオフレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。これらの樹脂粒子は、エマルジョン形態で取り扱われることが多いが、粉体の性状であってもよい。また、樹脂粒子は1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂には、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。また、ウレタン系樹脂として、市販品を用いてもよく、例えば、スーパーフレックス 460、460s、840、E-4000(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D-1060、D-2020、D-4080、D-4200、D-6300、D-6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS-6021、W-512-A-6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA-150(商品名、三洋化成工業社製)などの市販品を用いてもよい。
【0037】
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル-ビニル系樹脂などが挙げられる。また例えば、ビニル系単量体としては、スチレンなどが挙げられる。
【0038】
アクリル系単量体としてはアクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK-854(商品名、中央理科工業社製)、モビニール952B、718A(商品名、日本合成化学工業社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0039】
なお、本明細書において、アクリル系樹脂は、後述するスチレン・アクリル系樹脂であってもよい。また、本明細書において、(メタ)アクリルとの表記は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0040】
スチレン・アクリル系樹脂は、スチレン単量体と(メタ)アクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。スチレン・アクリル系樹脂には、市販品を用いても良く、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、日本合成化学工業社製)、ビニブラン2586(日信化学工業社製)等を用いてもよい。
【0041】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。オレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えばアローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等を用いてもよい。
【0042】
また、樹脂粒子は、エマルジョンの形態で供給されてもよく、そのような樹脂エマルジョンの市販品の例としては、マイクロジェルE-1002、E-5002(日本ペイント社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコート4001(DIC社製商品名、アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコート5454(DIC社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAM-710、AM-920、AM-2300、AP-4735、AT-860、PSASE-4210E(アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAP-7020(スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、ポリゾールSH-502(酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールAD-13、AD-2、AD-10、AD-96、AD-17、AD-70(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールPSASE-6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)(昭和電工社製商品名)、ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン社製)、サイビノールSK-200(商品名、アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学社製)、AE-120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルジョン)、AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルジョン)(日信化学工業社製商品名)、エリーテルKA-5071S、KT-8803、KT-9204、KT-8701、KT-8904、KT-0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、ハイテックSN-2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、タケラックW-6020、W-635、W-6061、W-605、W-635、W-6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、パーマリンUA-150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、NeoRez R-9660、R-9637、R-940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、アデカボンタイター HUX-380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、モビニール966A、モビニール7320(日本合成化学株式会社製)、ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(以上、BASF社製)、NKバインダーR-5HN(新中村化学工業株式会社製)、ハイドランWLS-210(非架橋性ポリウレタン:DIC株式会社製)、ジョンクリル7610(BASF社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0043】
樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-50℃以上200℃以下であり、より好ましくは0℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上100℃以下である。また50℃以上80℃以下が特に好ましい。樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、耐久性及び耐目詰まり性により優れる傾向にある。ガラス転移温度の測定は、例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス社製の示差走査熱量計「DSC7000」を用いて、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じて行われる。
【0044】
樹脂粒子の体積平均粒子径は、10nm以上300nm以下が好ましく、30nm以上300nm以下がより好ましく、30nm以上250nm以下がさらに好ましく、40nm以上220nm以下が特に好ましい。体積平均粒子径は、前述の方法で測定することができる。
【0045】
樹脂粒子の樹脂は、酸価が50mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/g以下がより好ましく、20mgKOH/g以下がさらに好ましく、10mgKOH/g以下が特に好ましい。また、酸価の下限は、0mgKOH/g以上であり、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。この場合、画質などが優れ好ましい。酸価は上述の方法で測定することができる。
【0046】
処理液に樹脂粒子を含有させる場合の含有量は、処理液の全質量に対して、固形分として、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上15質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下である。
【0047】
(有機溶剤)
本実施形態に係る記録方法で用いる処理液は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は水溶性を有することが好ましい。有機溶剤の機能の一つは、記録媒体に対する処理液の濡れ性を向上させることや、処理液の保湿性を高めることが挙げられる。また、有機溶剤は、浸透剤としても機能できる。
【0048】
有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、含窒素溶剤、多価アルコール等を挙げることができる。含窒素溶剤としては環状アミド類、非環状アミド類などを挙げることができる。非環状アミド類としてはアルコキシアルキルアミド類などが挙げられる。
【0049】
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコールジエステル類が挙げられる。
【0050】
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0051】
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1~4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
【0052】
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド等を例示することができる。
【0053】
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられ、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。これらは凝集剤の溶解性や、後述する樹脂粒子の皮膜化を促進させる点で好ましく、特に2-ピロリドンがより好ましい。
【0054】
また、アルコキシアルキルアミド類として、下記一般式(1)で表される化合物を用いることも好ましい。
【0055】
-O-CHCH-(C=O)-NR ・・・(1)
【0056】
上記式(1)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す。「炭素数1以上4以下のアルキル基」は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基であることができる。上記式(1)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0057】
含窒素溶剤の機能としては、例えば、低吸収性記録媒体上に付着させた処理液の表面乾燥性及び定着性を高めることが挙げられる。特に、上記式(1)で表される化合物は、塩化ビニル系樹脂を適度に軟化・溶解する作用に優れている。そのため、上記式(1)で表される化合物は、塩化ビニル系樹脂を含有する被記録面を軟化・溶解して、低吸収性記録媒体の内部に処理液を浸透させることができる。このように処理液が低吸収性記録媒体に浸透することで、処理液が強固に定着し、かつ、処理液の表面が乾燥しやすくなる。したがって、得られる画像は、表面乾燥性及び定着性に優れたものとなりやすい。
【0058】
含窒素溶剤の含有量は、処理液の全質量に対して、特に限定されないが、5質量%以上50質量%以下程度であり、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。含有量が上記範囲にあることで、画像の定着性及び表面乾燥性(特に高温多湿環境下で記録された場合の表面乾燥性)を一層向上できる場合がある。
【0059】
多価アルコールとしては、1,2-アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(別名:プロパン-1,2-ジオール)、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール等のアルカンジオール類)、1,2-アルカンジオールを除く多価アルコール(ポリオール類)(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール(別名:1,3-ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等)等が挙げられる。
【0060】
多価アルコール類は、アルカンジオール類とポリオール類を挙げることができる。アルカンジオール類は、炭素数5以上のアルカンのジオールである。アルカンの炭素数は好ましくは5~15であり、より好ましくは6~10であり、更に好ましくは6~8である。好ましくは1,2-アルカンジオールである。
【0061】
ポリオール類は炭素数4以下のアルカンのポリオールか、炭素数4以下のアルカンのポリオールの水酸基同士の分子間縮合物である。アルカンの炭素数は好ましくは2~3である。ポリオール類の分子中の水酸基数は2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。ポリオール類が上記の分子間縮合物である場合、分子間縮合数は2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。多価アルコール類は、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。
【0062】
アルカンジオール類及びポリオール類は、主に浸透溶剤及び/又は保湿溶剤として機能することができる。しかし、アルカンジオール類は浸透溶剤としての性質が強い傾向があり、ポリオール類は保湿溶剤としての性質が強い傾向がある。
【0063】
処理液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤を一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。また、有機溶剤の、処理液全質量に対する合計の含有量は、例えば、5質量%以上50質量%以下であり、10質量%以上45質量%以下が好ましく、15質量%以上40質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲内にあることで、濡れ拡がり性と乾燥性のバランスがさらによく、さらに高画質な画像を形成しやすい。
【0064】
また、処理液は、上記例示した有機溶剤のうち、標準沸点が150.0℃以上280.0℃以下の有機溶剤を含有することがより好ましい。このようにすれば、形成される画像の乾燥、定着がより早い記録を行うことができる。
【0065】
さらに、処理液は、標準沸点が280.0℃超のポリオール類の有機溶剤を1.0質量%を超えて含有しないようにすることがより好ましい。処理液における、標準沸点が280℃を越えるポリオール類の有機溶剤の含有量は、処理液の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下、より特に好ましくは0.1質量%以下である。標準沸点が280℃を越えるポリオール類の有機溶剤の含有量の下限は0質量%でもよい。
【0066】
このようにすれば、形成される画像の乾燥が良好となり、より早い記録を行うことができ、記録媒体との密着性も向上できる。さらには、処理液は、標準沸点が280.0℃超の有機溶剤(ポリオール類に限らず)を上記の範囲とすることも、より好ましい。標準沸点が280℃を越える有機溶剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0067】
(界面活性剤)
処理液は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、処理液の表面張力を調節し、例えば記録媒体との濡れ性等を調整する機能を備える。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0068】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、エア・プロダクツ&ケミカルズ社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0069】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学工業社製)、シルフェイスSAG002、005、503A、008(以上商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0070】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-3440(ビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS-241、S-242、S-243(以上商品名、AGCセイミケミカル社製)、フタージェント215M(ネオス社製)等が挙げられる。
【0071】
処理液に界面活性剤を含有させる場合には、複数種を含有させてもよい。処理液に界面活性剤を含有させる場合の含有量は、処理液の全質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下、好ましくは0.4質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以上1.0質量%以下とすることができる。
【0072】
(ワックス)
処理液は、ワックスを含有してもよい。ワックスは、インクによる画像に滑沢を付与する機能を備えるので、画像の剥がれ等を低減できる場合がある。
【0073】
ワックスを構成する成分としては、例えばカルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物・動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス類、α-オレフィン・無水マレイン酸共重合体等の天然・合成ワックスエマルジョンや配合ワックス等を単独あるいは複数種を混合して用いることができる。これらの中でも、後述する軟包装フィルムに対する定着性を高める効果により優れるという観点から、ポリオレフィンワックス(特に、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)及びパラフィンワックスを用いることが好ましい。
【0074】
ワックスとしては市販品をそのまま利用することもでき、例えば、ノプコートPEM-17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、539、593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0075】
また、記録方法に加熱工程等が含まれる場合に、ワックスが溶融しすぎて、その性能が低下することを抑制するという観点から、ワックスの融点は、好ましくは50℃以上200℃以下、より好ましくは融点が70℃以上180℃以下、さらに好ましくは融点が90℃以上150℃以下のワックスを用いることが好ましい。
【0076】
ワックスは、エマルジョンあるいはサスペンションの形態で供給されてもよい。ワックスの含有量は、処理液の全質量に対して、固形分換算で0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。ワックスの含有量が上記範囲内にあると、上記ワックスの機能を良好に発揮できる。なお、処理液及び後述するクリアインク組成物、有色インク組成物、白色インク組成物の少なくとも1つが、ワックスを含有すれば、画像に滑沢を付与する機能をより十分に得ることができる。
【0077】
(添加剤)
処理液は、添加剤として、尿素類、アミン類、糖類等を含有してもよい。尿素類としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等、及び、ベタイン類(トリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシン、トリイソプロピルグリシン、N,N,N-トリメチルアラニン、N,N,N-トリエチルアラニン、N,N,N-トリイソプロピルアラニン、N,N,N-トリメチルメチルアラニン、カルニチン、アセチルカルニチン等)等が挙げられる。
【0078】
アミン類としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。尿素類やアミン類は、pH調整剤として機能させてもよい。
糖類としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオース等が挙げられる。
【0079】
(その他)
本実施形態に係る記録方法で使用する処理液は、さらに必要に応じて、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤等の成分を含有してもよい。
【0080】
1.1.2.処理液の物性
本実施形態の記録方法で使用する処理液は、記録媒体への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、40mN/m以下、好ましくは38mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、さらに好ましくは30mN/m以下であることが好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0081】
処理液は、インクジェット法によって記録媒体に付着されることがより好ましい。その場合には、20℃における粘度を、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。処理液がインクジェット法によって記録媒体に付着される場合、所定の処理液付着領域を効率的に記録媒体に形成することが容易である。
【0082】
1.1.3.処理液を記録媒体へ付着させる方法
処理液を記録媒体に付着させる方法としては、インクジェット法、ローラーやバーなどによる塗布による方法、処理液を各種のスプレーを用いて記録媒体に塗布する方法、処理液に記録媒体を浸漬させて塗布する方法、処理液を刷毛等により記録媒体に塗布する方法等の非接触式及び接触式のいずれか又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。これらの中でもインクジェット法が好ましい。
【0083】
処理液やインクを記録媒体に付着することに用いる機構を付着機構という。上述の各付着方法を行う機構である。ローラー、インクジェットヘッド、スプレー、刷毛などである。
【0084】
処理液付着工程は、有色インク組成物、クリアインク組成物及び/又は白色インク組成物の付着工程とは別に、あらかじめ記録媒体に対して行われてもよい。一方、処理液付着工程は、有色インク組成物、クリアインク組成物及び/又は白色インク組成物の付着工程に付随して実行されてもよい。ここで、「付随して実行される。」とは、処理液付着工程による処理液の記録媒体への付着が、各インク付着工程によりインク組成物が記録媒体に付着される時点の前又は同時に行われることを指す。すなわち、記録媒体に処理液が付着された後、又は、記録媒体に処理液が付着すると同時に、インク付着工程によるインクの記録媒体への付着が行われる。また、記録媒体に処理液が付着すると同時に、インク付着工程によるインクの記録媒体への付着が行われる態様としては、インク組成物を記録媒体に付着させる走査(パス)と同一の走査にて、処理液を、同一の走査領域に付着させる態様が挙げられる。後述の記録装置における「1パス」で処理液及びインク組成物を記録媒体に付着させる態様も含む概念である。
【0085】
例えば、処理液付着工程がインクジェット法により行われる場合には、処理液付着工程は、所定のインク付着工程と同一の走査で行われてもよい。
【0086】
また、「付随して実行される。」とは、インク付着工程により記録媒体に付着したインク組成物と、処理液付着工程により記録媒体に付着した処理液とが、記録媒体で接触し、反応することができるように行われることをも意味する。
【0087】
本明細書において、インクという場合は、有色インク組成物、クリアインク組成物及び白色インク組成物の少なくとも1つを指し、インク付着工程という場合は、有色インク付着工程、クリアインク付着工程及び白色インク組成物の少なくとも1つを指す。
【0088】
1.2.有色インク付着工程
有色インク付着工程は、有色インク組成物を記録媒体へ付着させる工程である。記録媒体への付着の手法などについては後述する。
【0089】
1.2.1.非白色色材
有色インク組成物は、非白色色材を含有する、いわゆるカラーインクである。有色インク組成物に含有される非白色色材は、後述の白色色材以外の色材のことを指す。非白色色材としては、例えば、染料、顔料等が挙げられる。非白色色材は、例えば、シアン、イエロー、マゼンタ、ブラックなどのカラー色材とすることが好ましい。
【0090】
非白色色材は、染料及び顔料のいずれであってもよいし、混合物であってもよい。しかし染料及び顔料のうち、顔料を含むことが一層好ましい。顔料は、耐光性、耐候性、耐ガス性などの保存安定性に優れ、さらにその観点から有機顔料であることが好ましい。
【0091】
具体的には、顔料は、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料、染料キレート、染色レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料、カーボンブラックなどが用いられる。上記顔料は、1種単独でも、2種以上併用して用いることもできる。さらに、非白色色材として、光輝性顔料を用いてもよい。
【0092】
顔料の具体例としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
【0093】
ブラック顔料としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
【0094】
イエロー顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
【0095】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントバイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
【0096】
シアン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
【0097】
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
【0098】
パール顔料としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
【0099】
メタリック顔料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの単体又は合金からなる粒子が挙げられる。
【0100】
また、染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料等の通常インクジェット記録に使用する各種染料を使用することができる。
【0101】
非白色色材は、分散媒中に安定的に分散又は溶解できることが好適であり、必要に応じて分散剤を使用して分散させてもよい。
【0102】
非白色色材は、分散媒中に安定的に分散できることが好適であり、そのために分散剤を使用して分散させてもよい。分散剤としては、樹脂分散剤等が挙げられ、有色インク組成物中での非白色色材の分散安定性を良好とできるものから選択される。また、非白色色材は、例えば、オゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して顔料粒子の表面を修飾することにより、自己分散型の顔料として使用してもよい。
【0103】
樹脂分散剤(分散剤樹脂)としては、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂及びその塩;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂及びその塩;イソシアネート基とヒドロキシル基とが反応したウレタン結合を含む高分子化合物(樹脂)であって直鎖状及び/又は分岐状であってもよく、架橋構造の有無を問わないウレタン系樹脂及びその塩;ポリビニルアルコール類;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体及びその塩;酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体及びその塩;並びに;酢酸ビニル-クロトン酸共重合体及びその塩等の水溶性樹脂を挙げることができる。これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0104】
スチレン系樹脂分散剤の市販品としては、例えば、X-200、X-1、X-205、X-220、X-228(星光PMC社製)、ノプコスパース(登録商標)6100、6110(サンノプコ株式会社製)、ジョンクリル67、586、611、678、680、682、819(BASF社製)、DISPERBYK-190(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、N-EA137、N-EA157、N-EA167、N-EA177、N-EA197D、N-EA207D、E-EN10(第一工業製薬製)等が挙げられる。
【0105】
また、アクリル系樹脂分散剤の市販品としては、BYK-187、BYK-190、BYK-191、BYK-194N、BYK-199(ビックケミー株式会社製)、アロンA-210、A6114、AS-1100、AS-1800、A-30SL、A-7250、CL-2東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
【0106】
さらに、ウレタン系樹脂分散剤の市販品としては、BYK-182、BYK-183、BYK-184、BYK-185(ビックケミー株式会社製)、TEGO Disperse710(Evonic Tego Chemi社製)、Borchi(登録商標)Gen1350(OMG Borschers社製)等が挙げられる。
【0107】
分散剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。分散剤の合計の含有量は、白色色材50質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上25質量部以下、さらにより好ましくは1質量部以上20質量部以下、よりさらに好ましくは1.5質量部以上15質量部以下である。分散剤の含有量が非白色色材50質量部に対して0.1質量部以上であることにより、非白色色材の分散安定性をさらに高めることができる。また、分散剤の含有量が非白色色材50質量部に対して30質量部以下であれば、得られる分散体の粘度を小さく抑えることができる。
【0108】
上記例示した分散剤のなかでも、アニオン性の分散剤樹脂から選択される少なくとも一種であることがさらに好ましい。またこの場合、分散剤の重量平均分子量は、500以上であることがさらに好ましい。さらには5000以上100000以下が好ましく、10000以上50000以下がより好ましい。
【0109】
分散剤としてこのような樹脂分散剤を用いることにより、顔料の分散及び凝集性がより良好となり、さらに良好な分散安定性及びさらに良好な画質の画像を得ることができる。また、有色インク組成物の後述する増粘率を5倍以上にし易く好ましい。
【0110】
アニオン性の分散剤樹脂は、樹脂がアニオン性官能基を有し、アニオン性を示す樹脂である。アニオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などが挙げられる。これらの基に中でもカルボキシル基がより好ましい。
【0111】
分散剤樹脂は酸価を有することが好ましく、酸価が5mgKOH/g以上が好ましく、10~200mgKOH/gがより好ましく、15~150mgKOH/gがさらに好ましい。さらに20~100mgKOH/gが好ましく、25~70mgKOH/gがさらに好ましい。この場合、有色インク組成物の後述する増粘率を5倍以上にし易く好ましい。
【0112】
酸価は、JIS K0070に従って、中和電位差滴定法で測定することができる。滴定装置として、例えば、京都電子工業社製の「AT610」を用いることができる。
【0113】
非白色色材の含有量は、有色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.3質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下である。さらには、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上7質量%以下がより好ましい。
【0114】
非白色色材に顔料を採用する場合の顔料粒子の体積平均粒子径は、10nm以上300nm以下が好ましく、30nm以上250nm以下がより好ましく、50nm以上250nm以下がさらに好ましく、70nm以上200nm以下が特に好ましい。さらには、80nm以上150nm以下が好ましい。非白色色材の体積平均粒子径は前述の体積平均粒子径の確認方法で初期状態として測定するものである。体積平均粒子径が上記範囲の場合、所望の色材を入手しやすい点や色材の特性などを良好にし易い点で好ましい。
【0115】
1.2.2.その他の成分
有色インク組成物は、非白色色材の他に、水、樹脂粒子、有機溶剤、界面活性剤、ワックス、添加剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤等の成分を含有してもよい。
【0116】
有色インク組成物は、非白色色材以外の成分は、処理液と同様のものであって、処理液とは独立に選択したものにすることができる。これらの成分は、いずれも上述の処理液と同様のものにしても良く、「処理液」を「有色インク組成物」と読み替えることにより、詳細な説明を省略する。
【0117】
有色インク組成物は、水系インクであることがより好ましい。このようにすれば、環境負荷を低減した、臭気等の少ない記録を行うことができる。
【0118】
また、有色インク組成物は、標準沸点が150.0℃以上280.0℃以下の有機溶剤を含有することが好ましい。これにより、画像の定着がより早い記録を行うことができる。
【0119】
さらに、有色インク組成物は、標準沸点が280.0超の有機溶剤を1.0質量%を超えて含有しないことが好ましい。これにより画像の乾燥がより早い記録を行うことができ、画像の密着性の向上も期待できる。
【0120】
1.2.3.有色インク組成物の増粘率
有色インク組成物は、記録に用いる処理液とインクとを、処理液=10:1の質量比で混合させた時に、増粘率が5倍以上である。このような増粘性を有することにより処理液と接触した際に有色インク組成物の成分の凝集性が十分に得られるとともに、有色インク組成物により形成される画像の画質を良好なものとできる。
【0121】
有色インク組成物の増粘率について、記録に用いる処理液と混合した場合のインクの粘度の増大に関して、「増粘率」を次のように定義する。すなわち、増粘率とは、記録方法で使用するインク及び処理液を用い、インク:処理液を10:1の質量比で混合撹拌して、混合前のインクの粘度に対する混合後の混合液の粘度の比(倍率)とする。粘度は、20℃で測定する。したがって、増粘率は、混合前の粘度を基準とした混合後の粘度の倍率である。増粘率は、例えば0.5倍以上10.0倍以下程度となる。なお、インクの組成によっては増粘率が1.0倍未満となり、粘度が低下する場合もあるが、名称としては増粘率と称する。粘度はレオメーターを用いて測定することができる。
【0122】
有色インク組成物の増粘率は、下限値が5倍以上であるが、5倍超であることがより好ましく、5.5倍以上であることがより好ましく、6倍以上であることがさらに好ましく、7倍以上が特に好ましい。さらには10倍以上が好ましい。
【0123】
一方、有色インク組成物の増粘率は、上限値は限るものではないが、20倍以下が好ましく、10倍以下がさらに好ましく、より好ましくは9倍以下、さらに好ましくは8.5倍以下、さらにより好ましくは8倍以下である。有色インク組成物の増粘率が上記範囲の場合、画質や耐ひび割れや耐擦性や吐出安定性などがより優れ好ましい。また、得られる画像の画質も優れ、特に粒状性を低減することができる。
【0124】
有色インク組成物の増粘率は、主として顔料(樹脂分散剤含む)や樹脂粒子の、種類、含有量等を調整することにより調整可能である。特に、顔料(樹脂分散剤含む)の種類、含有量等を調整することにより調整することが、調整し易く好ましい。
【0125】
1.2.4.有色インク組成物を記録媒体へ付着させる方法
白色インク付着工程は、インクジェットヘッドを記録媒体に対して走査しながら白色インク組成物を付着させる態様であれば、どのような方式で行われてもよい。例えば、インクジェットヘッドをインクジェットヘッドとし、インクジェットヘッドから白色インク組成物を吐出することにより行うことができ、好ましい。このようにすれば、小型の装置で少量多種類の印刷を効率よく行うことができる。
【0126】
有色インク付着工程における有色インク組成物の付着量は、5.0mg/inch以上が好ましい。さらには、7.0mg/inch以上が好ましく、9.0mg/inch以上であることが好ましく、10.0mg/inch以上であることがより好ましく、12.0mg/inch以上がさらに好ましく、15.0mg/inch以上であることがさらに好ましい。このようにすれば、さらに良好な埋まり性を有する画像を得ることができる。
【0127】
また、有色インク付着工程における有色インク組成物の付着量の上限は、12.0mg/inch以下、さらには11.0mg/inch以下、10.0mg/inch以下であると、粒状性が生じやすい画像となりやすいが、その場合でも粒状性を抑制できるという本実施形態の記録方法の効果がより顕著に現れる。
【0128】
上記の有色インク組成物の付着量は、本実施形態の記録方法において、クリアインク組成物又は白色インク組成物を重ねて付着させる記録領域におけるものである。また、該領域における有色インク組成物の最大の付着量を上記範囲としても良く好ましい。
【0129】
1.2.5.有色インク組成物の記録媒体へ付着させる方法
有色インク付着工程は、インクジェットヘッドを記録媒体に対して走査しながら有色インク組成物を付着させる態様であれば、どのような方式で行われてもよいが、インクジェットヘッドをインクジェットヘッドとし、インクジェットヘッドから有色インク組成物を吐出することにより行うことがより好ましい。このようにすれば、小型の装置で少量多種類の印刷を効率よく行うことができる。
【0130】
1.3.クリアインク又は白色インク付着工程
本実施形態の記録方法は、樹脂を含有するクリアインク組成物又は白色色材を含有する白色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程を有する。クリアインク組成物及び白色インク組成物について説明した後、記録媒体への付着の手法などについては後述する。
【0131】
1.3.1.クリアインク組成物
クリアインク組成物は、色材を含有しない、いわゆるクリアインクである。また、クリアインク組成物は、樹脂を含有する。
【0132】
1.3.1.(1)樹脂
樹脂としては、樹脂粒子が挙げられる。樹脂粒子は、処理液の項で述べたと同様であるので、説明を省略する。クリアインク組成物に含まれる樹脂の固形分は、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上であることがよりさらに好ましい。一方クリアインク組成物に含まれる樹脂の固形分の上限は、特に限られるものではないが、例えば、30質量%以下、好ましくは15質量%以下である。
【0133】
1.3.1.(2)その他の成分
クリアインク組成物は、樹脂の他に、水、有機溶剤、界面活性剤、ワックス、添加剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤等の成分を含有してもよい。これらの成分についても、処理液と同様のものであって、処理液とは独立に選択したものにすることができる。これらの成分は、いずれも上述の処理液と同様のものにしても良く、「処理液」を「クリアインク組成物」と読み替えることにより、詳細な説明を省略する。
【0134】
1.3.1.(3)クリアインク組成物の物性
クリアインク組成物が、記録媒体にインクジェット法により付着される場合には、クリアインク組成物の粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。クリアインク組成物が、インクジェット法によって記録媒体に付着される場合、所定の画像を効率的に記録媒体に形成することが容易である。
【0135】
クリアインク組成物は、記録媒体への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、40mN/m以下、好ましくは38mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、さらに好ましくは30mN/m以下であることが好ましい。また、表面張力は、20mN/m以上がこのましく、25mN/m以上がより好ましい。
【0136】
なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0137】
1.3.1.(4)クリアインク組成物の増粘率
クリアインク組成物は、クリアインク組成物:用いる処理液=10:1の質量比で混合した時の粘度上昇が5倍以上である。このような増粘率を有することにより処理液と接触した際にクリアインク組成物の成分の凝集性が十分に得られるとともに、有色インク組成物により形成される画像の画質を優れたものとできる。
【0138】
クリアインク組成物の増粘率は、5倍超であることがより好ましく、5.5倍以上であることがより好ましく、6倍以上であることがさらに好ましく、7倍以上が特に好ましい。さらには10倍以上が好ましい。
【0139】
一方、クリアインク組成物の増粘率は、上限値は限るものではないが、20倍以下が好ましく、10倍以下がさらに好ましく、より好ましくは9倍以下、さらに好ましくは8.5倍以下、さらにより好ましくは8倍以下である。クリアインク組成物の増粘率が上記範囲の場合、画質や耐ひび割れや耐擦性や吐出安定性などがより優れ好ましい。また、共に用いる有色インク組成物の画質も優れたものとできる。
【0140】
クリアインク組成物の増粘率は、主として樹脂粒子の、種類、含有量等を調整することにより調整可能である。
【0141】
上記のクリアインク組成物の付着量は、本実施形態の記録方法において、クリアインク組成物と有色インク組成物を重ねて付着させる記録領域におけるものである。また、該領域におけるクリアインク組成物の最大の付着量を上記範囲としても良く好ましい。
【0142】
1.3.2.白色インク組成物
1.3.2.(1)白色色材
白色インク組成物は、白色色材を含有する。白色色材は、例えば、金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属化合物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、白色色材には、中空構造を有する粒子を用いてもよく、中空構造を有する粒子としては、公知のものを用いることができる。
【0143】
白色色材としては、上記例示した中でも、白色度及び耐擦性が良好であるという観点から、二酸化チタンを用いることが好ましい。白色色材は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0144】
白色色材の体積基準の平均粒子径(y)(「体積平均粒子径」ともいう。)は、後述する無機微粒子の体積平均粒子径よりも大きくなるように設定される。白色色材の体積平均粒子径は、好ましくは30.0nm以上600.0nm以下であり、より好ましくは100.0nm以上500.0nm以下、さらに好ましくは150.0nm以上400.0nm以下である。白色色材の体積平均粒子径が上記範囲であれば、粒子が沈降しにくく、分散安定性を良好にすることができ、また、インクジェット記録装置に適用した際にノズルの目詰まり等を生じにくくすることができる。また、白色色材の体積平均粒子径が前記範囲内であれば、画像の視認性の向上に十分に寄与できる。
【0145】
白色色材の体積平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「ナノトラックシリーズ」マイクロトラックベル社製)が挙げられる。体積平均粒子径はD50値とする。
【0146】
なお、本明細書において、白色インク組成物、白色色材等という際の「白色」という語句は、完全な白のみを指すものではなく、白と視認できる範囲であれば、有彩色や無彩色に着色した色や光沢を帯びた色も含む。また、インクや顔料の名称が、白色のインクや白色の顔料であることを窺わせるもので呼称、販売されるものを含む。
【0147】
より定量的には「白色」は、記録物が、例えばCIELABにおいて、Lが100である色のみならず、Lが60以上100以下であり、a及びbがそれぞれ±10以下の色も含まれる。
【0148】
さらに具体的には、例えば、白色インク組成物は、透明フィルム製の記録媒体の記録媒体表面が、該インクにより十分に被覆される量で記録された場合に、記録物の記録部分の明度(L)及び色度(a、b)を、CIELABに準拠した分光測光器を用いて測色した場合に、上記の範囲であるものが好ましい。十分に被覆される量で記録された記録物は、例えば、15mg/inchの付着量である。さらに好ましくは、80≦L≦100、-4.5≦a≦2、-10≦b≦2.5である。透明フィルム製の記録媒体としては、例えばLAGジェットE-1000ZC(リンテック社製)が挙げられる。CIELABに準拠した分光測光器としては、例えばSpectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)があげられ、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測する。
【0149】
白色色材の典型例としては、二酸化チタンが挙げられ、例えば、タイペークCR-50-2、CR-57、CR-58-2、CR-60-2、CR-60-3、CR-Super-70、CR-90-2、CR-95、CR953、PC-3、PF-690、PF-691、PF-699、PF-711、PF-728、PF-736、PF-737、PF-739、PF-740、PF-742、R-980、UT-771(いずれも石原産業株式会社製)等を例示できる。
【0150】
白色インク組成物における白色色材の含有量(固形分)は、白色インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上20.0質量%以下が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下であり、さらにより好ましくは3.0質量%以上15.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは7.0質量%以上12.0質量%以下である。白色色材の含有量が上記範囲内であれば、十分な視認性の画像を得ることができる。
【0151】
本実施形態の記録方法では、白色色材には、画像の背景の隠蔽や得られる画像の視認性を高める機能を持たせてもよい。白色インク組成物における白色色材の含有量は、画像の視認性を高める目的で使用する場合のほうが、背景隠蔽を目的とした場合に比べて、より少なくすることができる。したがって白色インク組成物を画像の視認性を高める目的で使用する場合には画像の十分な視認性が得られるとともに、白色色材の分散安定性を良好にしやすく、沈降させ難くすることができる。このような観点からは、白色インク組成物における白色色材の含有量の上限は、上記範囲が好ましく、10.0質量%以下が好ましい。
【0152】
また、白色色材は、樹脂分散剤により分散されてもよい。樹脂分散剤については、上述の有色インク組成物の項で述べたと同様である。
【0153】
1.3.2.(2)その他の成分
白色インク組成物は、白色色材の他に、水、樹脂粒子、有機溶剤、界面活性剤、ワックス、添加剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤等の成分を含有してもよい。これらの成分は、処理液と同様のものであって、処理液とは独立に選択したものにすることができる。これらの成分は、いずれも上述の処理液と同様のものにしても良く、「処理液」を「白色インク組成物」と読み替えることにより、詳細な説明を省略する。
【0154】
白色インク組成物に含まれる樹脂の固形分は、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上であることがよりさらに好ましい。一方白色インク組成物に含まれる樹脂の固形分の上限は、特に限られるものではないが、例えば、30質量%以下、好ましくは15質量%以下である。
【0155】
1.3.2.(3)白色インク組成物の物性
白色インク組成物が、記録媒体にインクジェット法により付着される場合には、白色インク組成物の粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。白色インク組成物が、インクジェット法によって記録媒体に付着される場合、所定の画像を効率的に記録媒体に形成することが容易である。
【0156】
白色インク組成物は、記録媒体への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、40mN/m以下、好ましくは38mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、さらに好ましくは30mN/m以下であることが好ましい。また、表面張力は、20mN/m以上がこのましく、25mN/m以上がより好ましい。
【0157】
なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0158】
1.3.2.(4)白色インク組成物の増粘率
白色インク組成物は、白色インク組成物:用いる処理液=10:1の質量比で混合した時の粘度上昇が5倍以上である。このような増粘率を有することにより処理液と接触した際に白色インク組成物の成分の凝集性が十分に得られるとともに、有色インク組成物により形成される画像の画質を優れたものとできる。
【0159】
白色インク組成物の増粘率は、5倍超であることがより好ましく、5.5倍以上であることがより好ましく、6倍以上であることがさらに好ましく、7倍以上が特に好ましい。さらには10倍以上が好ましい。
【0160】
一方、白色インク組成物の増粘率は、上限値は限るものではないが、20倍以下が好ましく、10倍以下がさらに好ましく、より好ましくは9倍以下、さらに好ましくは8.5倍以下、さらにより好ましくは8倍以下である。白色インク組成物の増粘率が上記範囲の場合、画質や耐ひび割れや耐擦性や吐出安定性などがより優れ好ましい。また、共に用いる有色インク組成物の画質も優れたものとできる。
【0161】
白色インク組成物の増粘率は、主として白色色材、樹脂粒子の種類、含有量等を調整することにより調整できる。
【0162】
1.3.3.クリアインク組成物又は白色インク組成物を記録媒体へ付着させる方法
クリアインク付着工程又は白色インク付着工程は、インクジェットヘッドを記録媒体に対して走査しながらクリアインク組成物又は白色インク組成物を付着させる態様であれば、どのような方式で行われてもよい。例えば、インクジェットヘッドをインクジェットヘッドとし、インクジェットヘッドからクリアインク組成物又は白色インク組成物を吐出することにより行うことができ、好ましい。このようにすれば、小型の装置で少量多種類の印刷を効率よく行うことができる。
【0163】
クリアインク組成物又は白色インク組成物の付着を行う場合、インクの付着量は、5.0mg/inch以上が好ましい。さらには、7.0mg/inch以上が好ましく、9.0mg/inch以上であることが好ましく、10.0mg/inch以上であることがより好ましく、12.0mg/inch以上がさらに好ましく、15.0mg/inch以上であることがさらに好ましい。このようにすれば、さらに良好な埋まり性、さらに低減された粒状性を有する画像を得ることができる。
【0164】
また、上限は、25.0mg/inch以下が好ましく、20.0mg/inch以下がより好ましく、15.0mg/inch以下がさらに好ましい。
【0165】
上記のクリアインク組成物又は白色インク組成物の付着量は、本実施形態の記録方法において、有色インク組成物を重ねて付着させる記録領域におけるものである。また、該領域におけるクリアインク組成物又は白色インク組成物の最大の付着量を上記範囲としても良く好ましい。
【0166】
1.4.付着量の関係
上述した有色インク付着工程において、有色インク組成物が付着する領域であって、有色インク組成物の付着量が、記録における有色インク組成物の最大の付着量より少ない所定の付着量以下である領域に、上述のクリアインク組成物又は白色インク組成物が付着される。
【0167】
有色インク組成物の付着量が最大でない領域では、有色インク組成物のインク滴により完全には埋め尽くされず、インク滴同士に間に隙間が生じやすい。すなわち有色インク組成物による画像の濃度が最大でない領域における画像では、粒状性が生じやすくなる。そこで、本実施形態の記録方法では、当該領域に、上述のクリアインク組成物又は白色インク組成物を付着させる。
【0168】
前記所定の付着量は、記録における着色インクの最大の付着量を100質量%とした場合に、75質量%以下の付着量であることが好ましい。また、所定の付着量は、記録における着色インクの最大の付着量を100質量%とした場合に、70質量%以下の付着量であることがより好ましく、50質量%以下の付着量であることがさらに好ましい。このようにすれば、より粒状性の生じやすい領域での画像の粒状性をより効率的に抑制することができる。
【0169】
また、上述の通り、有色インク組成物、クリアインク組成物及び白色インク組成物は、いずれもインク:処理液=10:1の質量比で混合させた時に、増粘率が5倍以上である。これらのことにより、画像濃度の低い領域(所定の付着量以下の領域)において、有色インク組成物の非白色色材の凝集性が抑制され、画像の粒状性を低減できる。すなわち、処理液中の凝集剤の作用を、有色インク組成物のみが受けるのではなく、有色インク組成物と、クリアインク組成物又は白色インク組成物とが、処理液中の凝集剤の作用を受けることとなる。これにより、有色インク組成物の非白色色材の凝集性が緩和され、画像の粒状性を低減できる。
【0170】
また、有色インク組成物と、クリアインク組成物又は前記白色インク組成物と、を付着させる領域の、クリアインク組成物又は白色インク組成物の付着量は、記録における有色インク組成物の最大の付着量以下であることが好ましい。このようにすれば、有色インク組成物が消費する凝集剤の量を少なくしすぎることが抑えられ、画像の発色性をさらに良好にできる。
【0171】
さらに、有色インク組成物と、クリアインク組成物又は白色インク組成物と、を付着させる領域の、有色インク組成物と、クリアインク組成物又は白色インク組成物と、の合計の付着量は、11mg/inch以下であることがより好ましい。また当該付着量は、より好ましくは10mg/inch以下、さらに好ましくは9mg/inch以下、よりさらに好ましくは8mg/inch以下である。このようにすれば、より粒状性の生じやすい領域での画像の粒状性をより効率的に抑制することができる。
【0172】
一方、有色インク組成物が付着する領域であって、有色インク組成物の付着量が、前記所定の付着量超の領域においては、クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着を行わなくてもよい。このようにすれば、クリアインク組成物又は白色インク組成物の使用量を節減できる。
【0173】
なお、有色インク組成物を付着させた領域において、記録媒体に対して付着される処理液の付着量は、一定としてもよいし、場所により異ならせても良い。特に、有色インク組成物の付着量に応じて処理液の付着量を場所により異ならせてもよい。
【0174】
有色インク付着工程と、クリアインク付着工程又は白色インク付着工程とが、それぞれ処理液付着工程とともに1回の走査で行われる場合、1回の走査のうち同一の領域の同一の場所に対して有色インク組成物と、クリアインク組成物又は白色インク組成物と、処理液と、が着弾するタイミングは、異なる場合もあるが、非常に微小な時間差である。ただし、1回の走査のうち同一の領域の同一の場所に対してこれらのインク及び処理液が着弾する順序は、特に限定されない。
【0175】
本実施形態の記録方法を行う場合、後述するインクジェット記録装置のように、インクジェットヘッドの走査(主走査)と、当該走査の方向に交差する方向に、インクジェットヘッドと記録媒体の相対的な位置を変える副走査と、を繰り返し行うことにより記録を行ってもよい。交互に繰り返し行うことにより記録を行ってもよい。また、主走査の後の副走査において、インクジェットヘッドのノズル列の長さよりも短い長さを、インクジェットヘッドと記録媒体の間の相対位置を副走査方向に移動させ、次の主走査で前回の主走査で走査した領域を走査してもよい。この場合、1回の走査でインクジェットヘッドのノズル列によりインク又は処理液の付着が行われる領域に対し、別の走査でさらにインク又は処理液の付着が行われる。つまり、1回の走査でインクジェットヘッドのノズル列が対向した記録媒体の領域に対し、別の走査でさらにインクジェットヘッドのノズル列が対向するようにしてもよい。
【0176】
副走査は、記録媒体をインクジェットヘッドに対して移動させて行っても良いし、インクジェットヘッドを記録媒体に対して移動させて行っても良い。
【0177】
このように、記録において、記録媒体の、インクジェットヘッドの1回の走査でインク又は処理液が付着する走査領域に対して、該インク又は処理液をさらに別の走査で付着させるような領域が存在してもよい。つまり同じ領域に対し2回以上の走査が行われる領域が存在してもよい。なお、同じ領域に対し走査が行われる回数を、走査の回数(走査数、パス数)という。走査の回数はインク当たりの数である。
【0178】
走査の回数は1以上であり、2以上が好ましく、4以上がより好ましい。また限るものではないが20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。さらには、4以下が好ましく、2以下がより好ましい。
【0179】
走査の回数が上記範囲以上の場合、濃度ムラ低減や画質差低減がより優れ好ましい。走査の回数が上記範囲以下の場合、印刷速度がより優れ好ましい。
【0180】
走査の回数は、記録装置の構成にもよるが、例えば次の様に計算される。インクジェットヘッドの副走査方向の長さを、記録媒体の副走査方向における1回の副走査の距離で割った数が、走査の回数とする。
【0181】
本実施形態の記録方法は、上記のように走査する場合、インクジェットヘッドの有色インク組成物を吐出するノズルと、クリアインク組成物又は白色インク組成物を吐出するノズルと、処理液を吐出するノズルと、をそれぞれ適切に配置して吐出を制御することにより、1の主走査での記録媒体の記録領域内で、各インク組成物及び処理液を所定の順序で付着させることができる。
【0182】
また、インクジェットヘッドと記録媒体の相対位置を移動させながら、インクジェットヘッドからインク組成物を吐出し記録媒体に付着させる走査を行うことで記録を行う場合、記録媒体の、1回の走査により走査が行なわれる走査領域において、クリアインク組成物又は白色インク組成物の付着の完了から、有色インク組成物の付着の開始までの期間は、0.1秒以上であることがより好ましい。当該期間は、0.2秒以上であることがさらに好ましく、0.3秒以上であることがよりさらに好ましい。このようにすれば、より良好な記録速度で記録を行うことができる。
【0183】
さらに、インクジェットヘッドと記録媒体の相対位置を移動させながら、インクジェットヘッドからインク組成物を吐出し記録媒体に付着させる走査を行うことで記録を行い、かつ走査を2回以上行うことで記録を行う場合、記録媒体の、1回の走査により走査が行なわれる走査領域に対し、クリアインク組成物又は白色インク組成物を付着する走査と同じ走査で有色インク組成物を付着する、又は、クリアインク組成物又は白色インク組成物を付着する走査より後の走査で有色インク組成物を付着させてもよい。
【0184】
1.5.その他の工程
本実施形態の記録方法は、処理液、有色インク組成物、及び、クリアインク組成物又は白色インク組成物をそれぞれ記録媒体へ付着させる工程を有する。しかし、必要に応じさらに処理液、各インク組成物及びその他のインク組成物の1種以上を記録媒体へ付着させる工程を含んでいてもよい。その上、これらの工程の順序及び回数には制限はなく、必要に応じて適宜に行うことができる。また、これらの処理液及びインクは、互いに記録媒体上の同じ領域に付着されることが好ましい。
【0185】
本実施形態の記録方法は、記録媒体に付着した液体を乾燥させる乾燥工程(一次加熱工程)や、記録媒体を加熱する工程(後加熱工程)等を備えてもよい。
【0186】
1.5.1.乾燥工程
本実施形態の記録方法は、乾燥工程(一次加熱工程)を有してもよい。本実施形態に係る記録方法は、処理液やインク組成物の付着工程の前又は付着工程の際に記録媒体を乾燥する工程を備えてもよい。乾燥工程は、記録を停止して放置する手段、の他に、乾燥機構を用いて乾燥させる手段により行うことができる。乾燥機構を用いて乾燥させる手段としては、記録媒体に対して常温の送風や温風の送風を行う手段(送風式)、及び、記録媒体に熱を発生する放射線(赤外線等)を照射する手段(放射式)、記録媒体に接して記録媒体に熱を伝える部材(伝導式)、並びに、これらの手段の2種以上を組み合わせが挙げられる。乾燥工程を有する場合、これらの中でも送風式で行われることがより好ましい。
【0187】
乾燥工程(一次乾燥工程)のうち、乾燥機構として、記録媒体に加熱を行う乾燥機構を用いる場合を、特に、加熱工程(一次加熱工程)という。例えば上記の乾燥機構のうち常温の送風を行う乾燥工程は、加熱工程には該当しない。
【0188】
処理液やインク組成物の付着時の記録媒体の表面温度は45℃以下が好ましく、20℃以上45℃以下がより好ましい。また、27.0℃以上40℃以下が好ましく、28℃以上30℃以下がより好ましい。該温度は付着工程における記録媒体の記録面の液体の付着を受ける部分の表面温度であり、記録領域における付着工程の最高の温度である。表面温度が上記範囲の場合、画質や耐擦性や目詰まり低減の点でより好ましい。
【0189】
乾燥工程は、上述の処理液付着工程、インク付着工程の1つ又は2つ以上と同時に行われることができる。乾燥工程がインク付着工程と同時に行われる場合には、記録媒体の表面温度は30℃以下とすることが好ましく、28℃以下とすることがより好ましい。
【0190】
処理液付着工程の前又は処理液付着工程の際に記録媒体を乾燥する乾燥工程を行う場合、処理液が記録媒体に付着する時点での記録媒体の表面温度は、30.0℃以上、好ましくは35.0℃以上、より好ましくは40.0℃以上であることが好ましい。このようにすれば、処理液に樹脂粒子が含まれる場合などに、処理液による皮膜を形成しやすくなるので、得られる画像の密着性及び耐擦性を更に高めることができる場合がある。
【0191】
また、各付着工程は、一次加熱工程を伴わなくてもよい。このようにすれば、各インク等の吐出安定性をさらに良好にすることができる。さらには、各付着工程は、一次乾燥工程を伴わなくてもよい。
【0192】
1.5.2.後加熱工程
本実施形態に係る記録方法は、上記の各付着工程後に、さらに記録媒体を加熱する後加熱工程を備えてもよい。後加熱工程は、は、例えば、適宜の加熱手段を用いて行うことができる。後加熱工程は、例えば、アフターヒーター(後述のインクジェット記録装置の例では加熱ヒーター5が相当する。)により行われる。また、加熱手段は、インクジェット記録装置に備えられた加熱手段に限らず、他の乾燥手段を用いてもよい。これにより得られる画像を乾燥させ、より十分に定着させることができるので、例えば、記録物を早期に使用できる状態にすることができる。
【0193】
この場合の記録媒体の温度は、特に限定されないが、例えば、記録物に含まれる樹脂粒子を構成する樹脂成分のTg等を鑑みて設定し得る。樹脂粒子やワックスを構成する樹脂成分のTgを考慮する場合には、樹脂粒子を構成する樹脂成分のTgよりも5.0℃以上、好ましくは10.0℃以上に設定するとよい。
【0194】
後加熱工程の加熱によって到達する記録媒体の表面温度は、30.0℃以上120.0℃以下、好ましくは40.0℃以上100.0℃以下、より好ましくは50.0℃以上95℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上90℃以下である。後加熱工程の加熱によって到達する記録媒体の表面温度は、特に好ましくは80℃以上である。記録媒体の温度がこの程度の範囲であれば、記録物中に含まれる樹脂粒子やワックスの皮膜化、平坦化を行うことができるとともに、得られる画像を乾燥させ、より十分に定着させることができる。
【0195】
1.6.作用効果
本実施形態の記録方法によれば、所定の付着量以下の有色インク組成物による画像の粒状性を抑制することができる。これは樹脂を含有するクリアインク組成物又は白色色材を含有する白色インク組成物を用いることで、有色インク組成物と処理液との反応が抑制されること、有色インク組成物の記録媒体上での濡れ広がり性が向上したことなどが要因と考えられる。
【0196】
1.7.記録媒体
本実施形態に係る記録方法で画像を形成する記録媒体は、インクを吸収する記録面を有するものであっても有しないものであってもよい。したがって記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、紙、フィルム、布等の液体吸収性記録媒体、印刷本紙などの液体低吸収性記録媒体、金属、ガラス、高分子等の液体非吸収性記録媒体などが挙げられる。このような画像の粒状性がより生じやすい記録媒体でも、本実施形態の記録方法によれば、画像の粒状性をさらに抑制することができる。
【0197】
液体低吸収性又は液体非吸収性の記録媒体とは、インクを全く吸収しない、又はほとんど吸収しない性質を有する記録媒体を指す。定量的には、液体非吸収性又は液体低吸収性の記録媒体とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を指す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙-液体吸収性試験方法-ブリストー法」に述べられている。これに対して、液体吸収性の記録媒体とは、液体非吸収性及び液体低吸収性に該当しない記録媒体のことを示す。なお、本明細書では、液体低吸収性及び液体非吸収性を、単に低吸収性及び非吸収性と称することがある。
【0198】
液体非吸収性の記録媒体としては、例えば、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているもの、紙等の基材上にプラスチックフィルムが接着されているもの、吸収層(受容層)を有していないプラスチックフィルム等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0199】
また、液体低吸収性の記録媒体としては、例えば、表面に液体低吸収性の塗工層が設けられた記録媒体が挙げられる。例えば塗工紙と呼ばれるものである。例えば、基材が紙であるものとしては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられ、基材がプラスチックフィルムである場合には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の表面に、ポリマー等が塗工されたもの、シリカ、チタン等の粒子がバインダーとともに塗工されたものが挙げられる。
【0200】
記録媒体としては、液体吸収性の記録媒体も用いることができる。液体吸収性の記録媒体は、上述の「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m超である記録媒体」を指す。
【0201】
液体吸収性の記録媒体としては、記録媒体の表面に液体を吸収する受容層が設けられていることによって液体吸収性の記録媒体になっているものが挙げられる。例えば、インクジェット用紙(インクジェット専用紙)などが挙げられる。液体を吸収する受容層としては、液体吸収性の樹脂、液体吸収性の無機微粒子などから構成された層が挙げられる。
【0202】
液体吸収性の記録媒体としては、記録媒体の基材そのものが液体吸収性である記録媒体も挙げられる。例えば、繊維からなる布帛、パルプを成分とする紙などが挙げられる。紙としては、普通紙、厚紙、ライナー紙などが挙げられる。ライナー紙は、クラフトパルプ、古紙などの紙から構成されるものが挙げられる。
【0203】
2.インクジェット記録装置
本実施形態に係る記録装置は、上記処理液付着工程を行う付着機構と、上記有色インク付着工程を行う付着機構と、上記クリアインク組成物又は上記白色インク組成物付着工程を行う付着機構と、を備え、上記いずれかの記録方法を行う。
【0204】
以下、本実施形態に係る記録方法を実施できるインクジェット記録装置の一例をについて図面を参照しながら説明する。
【0205】
図1は、インクジェット記録装置を模式的に示す概略断面図である。図2は、図1のインクジェット記録装置1のキャリッジ周辺の構成の一例を示す斜視図である。図1、2に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2と、IRヒーター3と、プラテンヒーター4と、加熱ヒーター5と、冷却ファン6と、プレヒーター7と、送風ファン8と、キャリッジ9と、プラテン11と、キャリッジ移動機構13と、搬送手段14と、制御部CONTを備える。インクジェット記録装置1は、図2に示す制御部CONTにより、インクジェット記録装置1全体の動作が制御される。
【0206】
図1のインクジェット記録装置1は、主走査と副走査をそれぞれ複数回行うことで記録が行なわれるシリアル式の記録装置である。なお走査を主走査ともいう。シリアル式の記録装置の場合、後述するライン式の記録装置と比べ、記録装置を小型化でき好ましい。
【0207】
インクジェットヘッド2は、インクや処理液をインクジェットヘッド2のノズルから吐出して付着させることにより記録媒体Mに記録を行う構成である。本実施形態において、インクジェットヘッド2は、シリアル式のインクジェットヘッドであり、記録媒体Mに対して相対的に主走査方向に複数回走査してインクや処理液を記録媒体Mに付着させる。インクジェットヘッド2は図2に示すキャリッジ9に搭載される。インクジェットヘッド2は、キャリッジ9を記録媒体Mの媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構13の動作により、記録媒体Mに対して相対的に主走査方向に複数回走査される。媒体幅方向とは、インクジェットヘッド2の主走査方向である。主走査方向への走査を主走査ともいう。
【0208】
またここで、主走査方向は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9の移動する方向である。図1においては、矢印SSで示す記録媒体Mの搬送方向である副走査方向に交差する方向である。図2においては、記録媒体Mの幅方向、つまりS1-S2で表される方向が主走査方向MSであり、T1→T2で表される方向が副走査方向SSである。なお、1回の走査で主走査方向、すなわち、矢印S1又は矢印S2の何れか一方の方向に走査が行われる。そして、インクジェットヘッド2の主走査と、記録媒体Mの搬送である副走査を複数回繰り返し行うことで、記録媒体Mに対して記録する。
【0209】
インクジェットヘッド2にインクや処理液を供給するカートリッジ12は、独立した複数のカートリッジを含む。カートリッジ12は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9に対して着脱可能に装着される。複数のカートリッジのそれぞれにはインクや処理液が充填されており、カートリッジ12から各ノズルに所定のインクや処理液が供給される。なお、本実施形態においては、カートリッジ12はキャリッジ9に装着される例を示しているが、これに限定されず、キャリッジ9以外の場所に設けられ、供給管(図示せず)によって各ノズルに供給される形態でもよい。また、インクが吐出されるノズルや処理液が吐出されるノズルは、カートリッジ12の配置とともに適宜に設計することができる。さらに、カートリッジ12には、複数のインクジェットヘッド2が搭載されてもよい。
【0210】
インクジェットヘッド2の吐出には従来公知の方式を使用することができる。本実施形態では、圧電素子の振動を利用して液滴を吐出する方式、すなわち、電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成する吐出方式を使用する。
【0211】
インクジェットヘッド2から、上述の白色インク組成物、有色インク組成物及び処理液を吐出する場合、インクジェットヘッド2は、白色インク付着工程を行う付着機構及び有色インク付着工程を行う付着機構、並びに、処理液付着工程を行う付着機構及び第2処理液付着工程を行う付着機構の一部を構成する。
【0212】
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2からのインクや処理液の吐出時に記録媒体Mを加熱するためのIRヒーター3及びプラテンヒーター4を備える。本実施形態において、乾燥工程で記録媒体Mを乾燥する際には、IRヒーター3、送風ファン8、プラテンヒーター4、プレヒーター7等の乾燥機構を用いることができる。インク付着時に記録媒体に付着したインクに行う乾燥工程を一次乾燥工程ともいう。
【0213】
なお、IRヒーター3を用いると、インクジェットヘッド2側から赤外線の輻射により放射式で記録媒体Mを加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4等の記録媒体Mの裏面から加熱される場合と比べて、記録媒体Mの厚みの影響を受けずに昇温することができる。また、温風又は環境と同じ温度の風を記録媒体Mにあてて記録媒体M上のインクや有色インクを乾燥させる各種のファン(例えば送風ファン8)を備えてもよい。
【0214】
プラテンヒーター4は、インクジェットヘッド2によって吐出されたインクや処理液が記録媒体Mに付着された時点から早期に乾燥することができるように、インクジェットヘッド2に対向する位置において記録媒体Mを、プラテン11を介して加熱することができる。プラテンヒーター4は、記録媒体Mを伝導式で加熱可能なものであり、上述した通り本実施形態の記録方法では、必要に応じて用いられ、用いる場合には、記録媒体Mの表面温度が40.0℃以下となるように制御することが好ましい。
【0215】
インク付着工程において、乾燥機構により記録媒体に付着したインクを乾燥する乾燥工程を備えない、又は比較的低温で乾燥工程を行うこととしてもよい。この場合、記録媒体に付着したインクの乾燥の迅速さが抑えられることにより、埋まりなどがより優れ好ましい。
【0216】
インク付着工程時に、乾燥機構により記録媒体Mを乾燥する、又は乾燥しない場合において、記録媒体Mの表面温度の上限は45.0℃以下であることが好ましく、40.0℃以下であることがより好ましく、38.0℃以下であることがさらにより好ましく、35.0℃以下であることが特に好ましい。さらには30℃以下が好ましく、28℃以下が好ましく、25℃以下が好ましい。また、記録媒体Mの表面温度の下限は20℃以上が好ましく、25.0℃以上であることが好ましく、28.0℃以上であることがより好ましく、30.0℃以上であることがさらに好ましく、32.0℃以上であることが特により好ましい。また、前述するような乾燥機構で記録媒体を加熱しない温度としてもよく、好ましい。
【0217】
温度が上記範囲以下の場合、インクジェットヘッド2内のインクや処理液の乾燥及び組成変動を抑制でき、インクジェットヘッド2の内壁に対する樹脂粒子等の溶着が抑制される。また、埋まりや、発色や、画質差などがより優れ好ましい。また、温度が上記範囲以上の場合、記録媒体M上でインクや処理液を早期に固定することができ、画質を向上させることができる。なお、上記温度は、インク又は処理液の付着工程時の、記録媒体表面のインクジェットヘッドと対向する場所における最高温度である。
【0218】
加熱ヒーター5は、記録媒体Mに付着されたインクを乾燥及び固化させる、つまり、二次加熱又は二次乾燥用のヒーターである。加熱ヒーター5は、後加熱工程に用いることができる。加熱ヒーター5が、画像が記録された記録媒体Mを加熱することにより、液体中に含まれる水分等がより速やかに蒸発飛散して、液体に含まれる樹脂によってインク膜が形成される。このようにして、記録媒体M上においてインク膜が強固に定着又は接着して造膜性が優れたものとなり、優れた高画質な画像が短時間で得られる。加熱ヒーター5による記録媒体Mの表面温度の上限は120.0℃以下であることが好ましく、100.0℃以下であることがより好ましく、90.0℃以下であることがさらに好ましい。また、記録媒体Mの表面温度の下限は60.0℃以上であることが好ましく、70.0℃以上であることがより好ましく、80.0℃以上であることがさらに好ましい。温度が前記範囲にあることにより、高画質な画像が短時間で得られる。なお、上記温度は、記録中の、記録媒体の二次加熱を受ける部分の最高温度である。
【0219】
インクジェット記録装置1は、冷却ファン6を有していてもよい。記録媒体Mに記録されたインクを乾燥後、冷却ファン6により記録媒体M上のインクを冷却することにより、記録媒体M上に密着性よくインク塗膜を形成することができる。
【0220】
また、インクジェット記録装置1は、記録媒体Mに対してインクが付着される前に、記録媒体Mを予め加熱するプレヒーター7を備えていてもよい。
【0221】
キャリッジ9の下方には、記録媒体Mを支持するプラテン11と、キャリッジ9を記録媒体Mに対して相対的に移動させるキャリッジ移動機構13と、記録媒体Mを副走査方向に搬送するローラーである搬送手段14を備える。キャリッジ移動機構13と搬送手段14の動作は、制御部CONTにより制御される。
【0222】
図3は、インクジェット記録装置1の機能ブロック図である。制御部CONTは、インクジェット記録装置1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部101(I/F)は、コンピューター130(COMP)とインクジェット記録装置1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU102は、インクジェット記録装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー103(MEM)は、CPU102のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU102は、ユニット制御回路104(UCTRL)により各ユニットを制御する。なお、インクジェット記録装置1内の状況を検出器群121(DS)が監視し、その検出結果に基づいて、制御部CONTは各ユニットを制御する。
【0223】
搬送ユニット111(CONVU)は、インクジェット記録の副走査(搬送手段)を制御するものであり、具体的には、記録媒体Mの搬送方向及び搬送速度を制御する。具体的には、モーターによって駆動される搬送ローラーの回転方向及び回転速度を制御することによって記録媒体Mの搬送方向及び搬送速度を制御する。
【0224】
キャリッジユニット112(CARU)は、インクジェット記録の主走査(パス)(走査手段)を制御するものであり、具体的には、インクジェットヘッド2を主走査方向に往復移動させるものである。キャリッジユニット112は、インクジェットヘッド2を搭載するキャリッジ9と、キャリッジ9を往復移動させるためのキャリッジ移動機構13とを備える。
【0225】
ヘッドユニット113(HU)は、インクジェットヘッド2のノズルからのインク又は処理液の吐出量を制御するものである。例えば、インクジェットヘッド2のノズルが圧電素子により駆動されるものである場合、各ノズルにおける圧電素子の動作を制御する。ヘッドユニット113により各液体の付着のタイミング、インクや処理液のドットサイズ、質量等が制御される。また、キャリッジユニット112及びヘッドユニット113の制御の組合せにより、1走査あたりのインクや処理液の付着量が制御される。
【0226】
乾燥ユニット114(DU)は、IRヒーター3、プレヒーター7、プラテンヒーター4、加熱ヒーター5等の各種ヒーターの温度を制御する。
【0227】
上記のインクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2を搭載するキャリッジ9を主走査方向に移動させる動作(主走査)と、搬送動作(副走査)とを交互に繰り返す。このとき、制御部CONTは、各パスを行う際に、キャリッジユニット112を制御して、インクジェットヘッド2を主走査方向に移動させるとともに、ヘッドユニット113を制御して、インクジェットヘッド2の所定のノズル孔からインクや処理液の液滴を吐出させ、記録媒体Mにインクや処理液の液滴を付着させる。また、制御部CONTは、搬送ユニット111を制御して、搬送動作の際に所定の搬送量(送り量)にて記録媒体Mを搬送方向に搬送させる。
【0228】
インクジェット記録装置1では、インクジェットヘッド2のノズルは、例えば、列をなして配置され、各列それぞれ所定のインクや処理液を割り当てることができる。また、ノズルの列内において、吐出の有無や吐出のタイミングを制御してもよい。さらに、キャリッジ9に複数のインクジェットヘッド2を搭載してもよく、この場合でも各インクジェットヘッド2の吐出の有無や吐出のタイミングを制御することができる。
【0229】
図4は本実施形態の記録方法を行う記録装置のインクジェットヘッドの構成を示す例である。図4(1)は、その1例であり、図1のインクジェットヘッドの全体を下方向から見た図である。インクジェットヘッド全体(四角い枠)には、処理液用インクジェットヘッドR、白色インク組成物用インクジェットヘッドW、有色インク組成物用インクジェットヘッドCが、主走査方向(図の横方向)に並んで配置されている。各インクジェットヘッドは、副走査方向SSに複数のノズルが配列したノズル列を有している。インクジェットヘッド当たりのノズル列の数は図の様な2列に限らず1列以上であればよい。各インクジェットヘッドのノズル列のうち、記録に使用する部分を点線で囲い示している。主走査と副走査を順番に行うことで、記録が進むにつれ、処理液用インクジェットヘッドRの副走査方向の上流側の点線で囲まれた部分、クリアインク組成物用又は白色インク組成物用インクジェットヘッドWの点線で囲まれた部分、処理液用インクジェットヘッドRの副走査方向の下流側の点線で囲まれた部分、有色インク組成物用インクジェットヘッドCの点線で囲まれた部分、の順で、記録媒体の同一の走査領域に、各処理液やインク組成物の付着が行なわれる。処理液用インクジェットヘッドRの点線で囲まれた部分で行われるのが処理液付着工程である。
【0230】
図4(2)は、図4(1)とは別の、インクジェットヘッドの構成を示す1例である。図4(1)と同様にして、白色インク組成物用インクジェットヘッドWの点線で囲まれた部分により、クリアインク付着工程又は白色インク付着工程が行なわれる。また、処理液用インクジェットヘッドRのうち、主走査方向に投影した時に、クリアインク組成物用又は白色インク組成物用インクジェットヘッドWの点線で囲まれた部分と、副走査方向において位置が重なる部分により、クリアインク付着工程又は白色インク付着工程と同一の主走査で、処理液付着工程が行なわれる。主走査と副走査を順番に行うことで、記録が進むにつれ、有色インク組成物用インクジェットヘッドCの点線で囲まれた部分により、有色インク付着工程が行なわれる。
【0231】
図4(3)は、また別の、インクジェットヘッドの構成を示す1例である。クリアインク組成物用又は白色インク組成物用インクジェットヘッド全体により、クリアインク付着工程又は白色インク付着工程が行なわれる。また、処理液用インクジェットヘッドRの全体により、クリアインク付着工程又は白色インク付着工程と同一の主走査で、処理液付着工程が行なわれる。その後、有色インク組成物用インクジェットヘッドCの全体により、有色インク付着工程が行なわれる。クリアインク付着工程又は白色インク付着工程と、有色インク付着工程と、の間には、副走査は行われない様にしても良く、画像の位置合わせのために副走査を行ってもよい。有色インク付着工程の後に、副走査が行なわれてもよい。
【0232】
図4の例では、各インクジェットヘッドのうち記録に使用する部分を限定することで記録を行っていたが、インクジェットヘッドが図4の点線で囲まれた部分のみに存在するようにしてもよい。つまり、各インクジェットヘッドのうち記録に使用する部分をインクジェットヘッドと見たててもよい。
【0233】
また、ある付着領域において処理液付着工程を先に行う場合、有色インク付着工程と、クリアインク付着工程又は白色インク付着工程は、いずれが先に行われてもよい。
【0234】
本実施形態の記録方法は、上述の例の様なシリアル式の記録装置で行う記録方法の他に、ライン式の記録装置で行う記録方法としてもよい。
【0235】
図5はライン式の記録装置の例である。図5に示すインクジェット記録装置1において、記録媒体10は、記録媒体支持手段15、搬送ローラー16、17によって搬送方向に搬送される。例えば、搬送される記録媒体に対して、記録が進むにつれて、インクジェットヘッド2aによる処理液付着工程、インクジェットヘッド2bによる有色インク付着工程、インクジェットヘッド2cによる有色インク付着工程、インクジェットヘッド2dによるクリアインク付着工程又は白色インク付着工程、の順で付着が行なわれてもよい。ライン式の記録装置の場合、前述のシリアル式の記録装置と比べ、記録速度を高速化でき好ましい。
【0236】
本実施形態の記録方法を実行するためのインクジェットヘッドの配置、設定等については、例えば、上記記録方法において、処理液付着工程は、1回の走査で処理液の付着が可能な領域に1回の走査で行われ、有色インク付着工程は、1回の走査でインクの付着が可能な領域に1回の走査で行われ、クリアインク付着工程又は白色インク付着工程は、1回の走査でインクの付着が可能な領域に1回の走査で行われるように設定できる。このようにすれば、より良好な記録速度で記録を行うことができる。
【0237】
3.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、「部」「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。なお評価は、特に断りが無い場合は、温度25.0℃、相対湿度40.0%の環境下で行った。
【0238】
3.1.インク及び処理液の調製
表1(図6)の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、さらに、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルにて分散処理を行うことにより十分に混合した。1時間攪拌してから、5.0μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、処理液(R1)、クリアインク組成物(CL1-CL4)、有色インク組成物(Col1-Col3)、及び白色インク組成物(W1、W2)を得た。表1(図6)中の数値は、質量%を示す。水は純水を用い、各インクの質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。顔料、分散剤樹脂は、後述の分散液を調製して、これを用いた。
【0239】
表1(図6)に示す成分のうち化合物名以外の成分は以下の通りである。
・カチオンポリマー:「カチオマスターPD-7、ポリアミン樹脂(エピクロルヒドリン-アミン誘導体樹脂)」四日市合成株式会社製
・カーボンブラック:No.33(三菱化学社製)
・分散剤樹脂、樹脂C(アニオン系):アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:35)
・分散剤樹脂、樹脂A(アニオン系):アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:25)
・分散剤樹脂、樹脂B(ノニオン系):アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:0)
・樹脂粒子、スチレンアクリル系A:下記参照(凝集性高)
・樹脂粒子、スチレンアクリル系B:下記参照(凝集性低)
・ワックス、ポリエチレン系:「ノプコートPEM-17」(商品名、サンノプコ株式会社製)
・界面活性剤:シリコーン系界面活性剤「BYK348」BYK社製
【0240】
(樹脂粒子:スチレンアクリル系Bの調製)
スチレン75質量部、アクリル酸0.8質量部、メチルメタクリレート14.2質量部、及びシクロヘキシルメタクリレート10質量部を乳化共重合させることにより、樹脂エマルジョンB(酸価7mgKOH/g)を得た。なお、乳化重合用界面活性剤としては、ニューコールNT-30(日本乳化剤(株)製)を用い、その使用量は、モノマー全量を100質量部として、2質量部とした。
【0241】
(樹脂粒子:スチレンアクリル系Aの調製)
モノマー組成を変更した以外は上記と同様にして樹脂エマルジョンA(酸価30mgKOH/g)を得た。乳化重合用界面活性剤は、モノマー全量100質量部に対し1質量部とした。
【0242】
(顔料分散液の調製)
<樹脂Aによる白色顔料分散液>
まず、30%アンモニア水溶液(中和剤)0.1質量部を溶解させたイオン交換水155質量部に、樹脂分散剤としてアニオン性のアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:25)12質量部を加えて溶解させた。そこに、白色系顔料である二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)を40質量部加えてジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行なった。その後、遠心分離機による遠心濾過を行なって粗大粒子やゴミ等の不純物を除去して、白色系顔料の濃度が20質量%となるように調整し、白色色材分散液を得た。白色系顔料の粒子径は、平均粒子径で350nmであった。
【0243】
<樹脂Bによる白色顔料分散液>
樹脂分散剤としてアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:0)を用いたこと以外は同様にして白色色材分散液を得た。白色系顔料の粒子径は、平均粒子径で350nmであった。
【0244】
<樹脂Cによる非白色顔料分散液>
樹脂分散剤としてアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:35)を用い、色材としてカーボンブラックを用い、樹脂分散剤の加えた量が、顔料に対する樹脂分散剤の質量比が表1(図6)の質量比になる様にしたこと以外は同様にして非白色色材分散液(ブラック)を得た。顔料の粒子径は、平均粒子径で60nmであった。
【0245】
3.2.評価方法
3.2.1.増粘率
表1(図6)中に記載の「R1と同条件の試験液と混合時の増粘率[倍]」は、各インクと用いた処理液(R1)とを10:1の質量比で混合し1分撹拌後、粘度をレオメーター MCR302/アントンパール社製)で25℃、せん断速度200s-1の条件で測定した場合における、混合前のインクの粘度に対する混合後の混合液の粘度の倍率である。
【0246】
3.2.2.記録試験
SC-R5050インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製)の改造機に各インク組成物及び各処理液を充填した。記録解像度1200×1200dpiを基本とし、付着量が表2-1~表2-4(図7図10)中の値になるよう、画素ごとの液滴数を調整した。二次加熱は下流の二次ヒーターにて70℃に加熱した。
【0247】
各試験は表2-1~表2-4(図7図10)に示した条件で行った。記録媒体は、紙は、Nミラー73/P22/U8C(王子タック株式会社製)を用い、フィルムは、PET 50A(リンテック社製)を用いた。
【0248】
3.2.3.高Duty部の凝集
凝集の評価は、インク滴が寄り集まる(凝集した)程度をブリ―ドムラにより評価した。記録物のベタ画像領域を蛍光灯下で目視観察し、以下の基準で評価して、表2-1~表2-4(図7図10)に結果を記載した。
A:濃淡のムラがない
B:濃淡のムラが若干見える。
C:濃淡のムラが顕著に見える。
【0249】
3.2.4.中間Duty部の粒状性
粒状性は、中濃度の画像のドットの粒状感にて評価した。記録物の画像領域を蛍光灯下で目視観察し、以下の基準で評価して、表2-1~表2-4(図7図10)に結果を記載した。
A:ドットの粒状感がない。
B:ドットの粒状感が若干見える。
C:ドットの粒状感が顕著に見える。
【0250】
3.2.5.高Duty部の3pt文字
画像の埋まり性と関係する高Duty部3pt文字を、以下の基準で評価して、表2-1~表2-4(図7図10)に結果を記載した。
A:文字がきれいに読める。
B:文字の途切れつぶれが若干存在する。
C:文字の途切れつぶれが存在する。
【0251】
3.2.6.印字安定性
有色インク組成物の印字安定性を評価した。画像形成の条件で画像記録を1時間連続して行い、記録後の吐出ノズル群のノズルを検査した。合計不吐出ノズル数を全ノズル数で除し、以下の基準で評価して、表2-1~表2-4(図7図10)に結果を記載した。
A:不吐出ノズル1.0%以内。
B:不吐出ノズルが1.0%超2.0%以下。
C:不吐出ノズルが2.0%超5.0%以下。
【0252】
3.3.評価結果
有色インク組成物が付着する領域であって、有色インク組成物の付着量が、記録における有色インク組成物の最大の付着量より少ない所定の付着量以下である領域に、クリアインク組成物又は白色インク組成物の付着を行い、クリアインク組成物、白色インク組成物及び有色インク組成物の増粘率が5倍以上である、各実施例の記録方法によれば、形成される画像の画質を向上できるとともに、有色インク組成物により形成される画像の粒状性を抑制できることが判明した。
【0253】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0254】
上述した実施形態及び変形例から以下の内容が導き出される。
【0255】
記録方法は、
凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる工程と、
非白色色材を含有する有色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、
樹脂を含有するクリアインク組成物又は白色色材を含有する白色インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、
を備え、
前記有色インク組成物が付着する領域であって、前記有色インク組成物の付着量が、記録における前記有色インク組成物の最大の付着量より少ない所定の付着量以下である領域に、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着を行い、
前記クリアインク組成物、前記白色インク組成物及び前記有色インク組成物は、インク:処理液=10:1の質量比で混合させた時に、増粘率が5倍以上である。
【0256】
この記録方法によれば、所定の付着量以下の有色インク組成物による画像の粒状性を抑制することができる。これは樹脂を含有するクリアインク組成物又は白色色材を含有する白色インク組成物を用いることで、有色インク組成物と処理液との反応が抑制されること、有色インク組成物の記録媒体上での濡れ広がり性が向上したことなどが要因と考えられる。
【0257】
上記記録方法において、
前記所定の付着量は、記録における前記着色インクの最大の付着量の75質量%以下であってもよい。
【0258】
この記録方法によれば、より粒状性の生じやすい領域での画像の粒状性をより効率的に抑制することができる。
【0259】
上記記録方法において、
前記有色インク組成物と、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物と、を付着させる領域の、前記有色インク組成物と、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物と、の合計の付着量が11mg/inch以下であってもよい。
【0260】
この記録方法によれば、画像の粒状性をさらに抑制することができる。
【0261】
上記記録方法において、
前記有色インク組成物と、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物と、を付着させる領域の、クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着量が、記録における前記有色インク組成物の最大の付着量以下であってもよい。
【0262】
この記録方法によれば、画像の発色性をさらに抑制することができる。
【0263】
上記記録方法において、
前記インクジェットヘッドと前記記録媒体の相対位置を移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出し前記記録媒体に付着させる走査を行うことで記録を行い、
前記記録媒体の、1回の前記走査により走査が行なわれる走査領域において、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着の完了から、前記有色インク組成物の付着の開始までの期間が0.1秒以上であってもよい。
【0264】
この記録方法によれば、より良好な記録速度で記録を行うことができる。
【0265】
上記記録方法において、
前記インクジェットヘッドと前記記録媒体の相対位置を移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出し前記記録媒体に付着させる走査を行うことで記録を行い、かつ前記走査を2回以上行うことで記録を行い、
前記記録媒体の、1回の前記走査により走査が行なわれる走査領域に対し、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物を付着する走査と同じ走査で前記有色インク組成物を付着する、又は、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物を付着する走査より後の走査で前記有色インク組成物を付着してもよい。
【0266】
この記録方法によれば、画像の粒状性をさらに抑制することができる。
【0267】
上記記録方法において、
前記記録媒体が、低吸収記録媒体又は非吸収記録媒体であってもよい。
【0268】
この記録方法によれば、画像の粒状性がより生じやすい場合でも、画像の粒状性をさらに抑制することができる。
【0269】
上記記録方法において、
前記有色インク組成物が付着する領域であって、前記有色インク組成物の付着量が、前記所定の付着量超の領域において、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着を行わなくてもよい。
【0270】
この記録方法によれば、クリアインク組成物又は白色インク組成物の使用量を節減できる。
【0271】
上記記録方法において、
前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物に含まれる樹脂の固形分が8質量%以上であってもよい。
【0272】
この記録方法によれば、クリアインク組成物又は白色インク組成物の樹脂の使用量を節減できる。
【0273】
上記記録方法において、
前記有色インク組成物の付着時の前記記録媒体の表面温度が、40℃以下であってもよい。
【0274】
この記録方法によれば、有色インク組成物の濡れ広がりをさらに良好にでき、画像の粒状性をさらに低減できる。
【0275】
上記記録方法において、
前記インクジェットヘッドと前記記録媒体の相対位置を移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出し前記記録媒体に付着させる走査を行うことで記録を行い、
前記記録媒体の、1回の前記走査により走査が行なわれる走査領域に対する、前記有色インク組成物を付着させる走査の回数が4回以下であってもよい。
【0276】
この記録方法によれば、画像の粒状性をさらに抑制することができる。
【0277】
記録装置は、
上述の記録方法を行う記録装置であって、
前記有色インク組成物、及び、前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物を吐出するインクジェットヘッドを備える。
【0278】
この記録装置によれば、所定の濃度以下の画像の粒状性が抑制された記録物を得ることができる。
【0279】
上記記録装置において、
前記記録媒体の種類に応じて前記クリアインク組成物又は前記白色インク組成物の付着工程の付着量を変更してもよい。
【0280】
この記録装置によれば、クリアインク組成物又は白色インク組成物の使用量を節減できる。
【符号の説明】
【0281】
1…インクジェット記録装置、2…インクジェットヘッド、2a,2b,2c,2d…インクジェットヘッド、3…IRヒーター、4…プラテンヒーター、5…加熱ヒーター、6…冷却ファン、7…プレヒーター、8…送風ファン、9…キャリッジ、10…記録媒体、11…プラテン、12…カートリッジ、13…キャリッジ移動機構、14…搬送手段、101…インターフェース部、102…CPU、103…メモリー、104…ユニット制御回路、111…搬送ユニット、112…キャリッジユニット、113…ヘッドユニット、114…乾燥ユニット、121…検出器群、130…コンピューター、CONT…制御部、MS…主走査方向、SS…副走査方向、M…記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10