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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117955
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】病床局所排気システム
(51)【国際特許分類】
   A61G 10/00 20060101AFI20240823BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20240823BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240823BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
A61G10/00 Z
A61G12/00 C
F24F7/007 D
F24F7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024071
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(71)【出願人】
【識別番号】518340544
【氏名又は名称】ゼク・テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】篠田 晃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲弘
【テーマコード(参考)】
3L058
4C341
【Fターム(参考)】
3L058BE08
3L058BG01
4C341KK10
4C341KL05
4C341LL06
(57)【要約】
【課題】病床の患者から発生する飛散物や臭気を除去して院内感染のリスクを低下させることができ、しかも、病床の患者が病室内にて騒音による不快を感じること無く過ごすことができる病床局所排気システムを提供する。
【解決手段】病床局所排気システム1は、一端側にベッド10の患者Hに接近配置可能な吸込ツール2が接続される一方、他端側に病室Rの外側に位置する第2蛇腹管4bを有する配管ユニット4と、配管ユニット4に接続され、患者Hから飛散する飛散物や臭気を吸込ツール2の吸込口5aから第1蛇腹管4a内に吸い込むとともに当該第1蛇腹管4a内を移送させて第2蛇腹管4bから排出させる送風ファン3とを備える。送風ファン3は、病室Rの外側に配置される。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
病床の患者から空気中に飛散する飛散物か、或いは、前記患者から発生する臭気を病室から排気する病床局所排気システムであって、
一端側に前記病床の患者に接近配置可能な吸込部が少なくとも1つ接続される一方、他端側に前記病室の外側に位置する排出部を有する配管部と、
前記配管部に接続され、前記飛散物や前記臭気を前記吸込部の吸込口から前記配管部内に吸い込むとともに当該配管部内を移送させて前記排出部から排出させる送風機と、を備え、
前記送風機は、前記病室の室内の壁際か、或いは、当該病室の外側に配置されていることを特徴とする病床局所排気システム。
【請求項2】
請求項1に記載の病床局所排気システムにおいて、
前記吸込部は、外周壁が前記吸込口から吸込方向に進むにつれて次第に縮径する漏斗形状部を有しており、
前記吸込口には、流体以外の通過を阻止するフィルタ部材が取り付けられていることを特徴とする病床局所排気システム。
【請求項3】
請求項2に記載の病床局所排気システムにおいて、
前記漏斗形状部の内面には、1つか、或いは、前記漏斗形状部の中心線を中心とした周方向に等間隔に位置し、且つ、前記吸込口の周縁部分から吸込方向に進むにつれて次第に前記中心線を中心とした周方向一側に移動するように延びる形状をなし、吸い込む前記飛散物や前記臭気を案内する1つ以上の吸込ガイド部が設けられていることを特徴とする病床局所排気システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の病床局所排気システムにおいて、
前記吸込部は、前記漏斗形状部に接続され、使用者が把持して操作可能な把持操作部と、該把持操作部の下端に取り付けられた複数のキャスターと、を備えていることを特徴とする病床局所排気システム。
【請求項5】
請求項1に記載の病床局所排気システムにおいて、
前記吸込部は、前記吸込口が前記病床の患者に接近配置されるように前記病床のフレーム部分に着脱可能になっていることを特徴とする病床局所排気システム。
【請求項6】
請求項1に記載の病床局所排気システムにおいて、
前記吸込部は、前記病床の周囲に位置する支持体と、上下にスライド可能に、或いは、上下に回動可能に前記支持体に支持された可動体と、を備え、
前記吸込口は、上方にスライド、又は、回動した状態の前記可動体における前記病床の患者に対応する位置に設けられ、
前記可動体及び前記支持体の内部には、前記吸込口と前記配管部の内部とを繋ぐ排出通路が設けられていることを特徴とする病床局所排気システム。
【請求項7】
請求項6に記載の病床局所排気システムにおいて、
前記可動体は、下方にスライド、又は、回動した際、前記支持体内部に収容されるように構成されていることを特徴とする病床局所排気システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の病床局所排気システムにおいて、
前記支持体は、前記病床の側部フレーム部分に一体に固定されていることを特徴とする病床局所排気システム。
【請求項9】
請求項1に記載の病床局所排気システムにおいて、
前記配管部の少なくとも中途部は、前記病室の床下空間か、或いは、天井裏空間に配索されていることを特徴とする病床局所排気システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病床の周囲の空気を局所的に吸い込んで患者から飛散するウイルスや臭気等を排気する病床局所排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院では、感染症に罹患した病床の患者から飛散する微細な飛沫によって院内感染のリスクが高まるのを防ぐために、或いは、病床の患者から発せられる臭気を抑えるために、病床における患者の周囲の空気を局所的に吸い込んで排気することが行われている。
例えば、特許文献1に開示されている病床局所排気システムは、一端側に病床の患者に接近配置可能な吸込部が接続される一方、他端に排出部を有する配管部と、当該配管部の中途部に介設されたシステム本体と、を備えている。このシステム本体は、その内部に、送風機と、脱臭及び除塵用の2種類のフィルタと、を収容していて、送風機は、患者周辺の空気を吸込部から吸い込むとともに配管部の内側を移送させて両フィルタを通過させた後、排出部から排出させるようになっている。
【0003】
また、特許文献2に開示されている病床局所排気システムは、ベッドの左右両側のフレーム部分に固定された一対の空気洗浄ユニットと、病室の天井に設けられた当該病室内の空気を病室の外側へと排気する換気ユニットと、を備えている。空気洗浄ユニットは、厚みを有する矩形板状をなす本体ケースを備え、この本体ケースにおける病床の患者側の側面には、当該本体ケースの内部に連通する吸込口が設けられる一方、本体ケースの上面には、当該本体ケースの内部に連通する排出口が設けられている。本体ケースの内部には、送風機、フィルタ、及び、紫外線光発生部が収容されていて、送風機は、患者の周囲の空気を吸込口から本体ケースの内部に吸い込むとともに本体ケースの内部を移送させてフィルタと紫外線光発生部とを順に通過させた後、排出口から上方に向かって排出させるようになっている。その後、空気洗浄ユニットの排出口から排出された空気は、病室の天井まで上昇した後、換気ユニットにより病室の外側へと排気されるようになっている。
【0004】
さらに、特許文献3に開示されている病床局所排気システムは、病床の側方に配置可能な空気洗浄ユニットを備えている。この空気洗浄ユニットは、厚みを有する矩形板状をなす本体ケースを備え、本体ケースにおける水平方向一側面には、当該本体ケースの内部に連通する吸込口が形成されている。本体ケースの水平方向他側には、一端が当該本体ケースに接続される配管部が配設され、該配管部の他端には、病室の外側に臨む排出口が設けられている。本体ケースの下方には、上下に延びる棒状をなす把持操作部が設けられ、この把持操作部の下端には、複数のキャスターが取り付けられている。そして、使用者は、把持操作部を操作して各キャスターを転動させることにより、本体ケースを病床に接近させて患者の傍に本体ケースの吸込口を配置できるようになっている。この本体ケースの内部には、送風機とフィルタとが収容されていて、送風機は、患者の周囲の空気を吸込口から本体ケースの内部に吸い込むとともに本体ケースの内部を移送させてフィルタを通過させた後、配管部を介して排出口から病室の外側へと排出させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-204901号公報(段落0016~0026欄、図1
【特許文献2】特表2012-533720号公報(段落0154~0157、図17~20)
【特許文献3】特開2021-191984号公報(段落0020~0024、0044欄、図8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の場合、配管部の排出部が病室内に位置するので、例えば、システム本体の内部に収容されているフィルタが使用期限を大きく超過して機能が低下していた等の理由によりウイルスや臭気を除去できていなかったとすると、システム本体を通過したがウイルスや臭気を除去しきれなかった空気が病室内に留まってしまい、医者や看護師等の感染のリスクを高めたり、臭気により病室内に居る人の不快感を高めてしまうという課題がある。
また、特許文献2のように、空気洗浄ユニットの本体ケース上面の排出口から排出される空気に関しても、特許文献1と同様に、フィルタ機能が低下していた等の理由により洗浄しきれなかったとすると、その空気が上昇して換気ユニットに届くまでの間に医者や看護師等に触れてしまうおそれがある。
さらに、特許文献3では、患者の周囲の空気を病室の外側に配管部を介して排出しているので、医者や看護師等の感染のリスクや臭気による不快感を低下させることが可能である一方、送風機を収容する本体ケースが病床の傍に位置するので、病床の患者に送風機の動作音が大きく聞こえて患者が大きな不快を感じてしまうおそれがある。
それに加えて、近年、病院等において空気を介したウイルス等の感染が急拡大するような不測の事態が発生した場合、これらの感染が施設内で拡大するのを防止または阻止のために、病棟のベッドを他の部屋に移動させたり、或いは、これらのベッドを隔離するといった作業負荷が増えたり、状況によっては、隔離用の病室を新設するといった緊急の対応を迫られる場合がある。これに対応するために、上述の如き病棟のベッド周りにおいて空気を局所的に排気する局所排気システムについて、安全面だけでなく、効率面やコスト面をも考慮した将来を見据えたシステム開発を一刻の猶予もなく緊急に行っていかなければならない。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、病床の患者から発生する飛散物や臭気を効率良く除去して院内感染のリスクや臭気による不快感を低下させることができ、しかも、病床の患者が病室内にて騒音による不快を感じること無く過ごすことができる低コストな病床局所排気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、送風機の配置とウイルスや臭気を含んだ空気の排出位置とにそれぞれ工夫を凝らしたことを特徴とする。
具体的には、病床の患者から空気中に飛散する飛散物か、或いは、前記患者から発生する臭気を病室から排気する病床局所排気システムを対象とし、次のような対策を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明に係る病床局所排気システムは、一端側に前記病床の患者に接近配置可能な吸込部が少なくとも1つ接続される一方、他端側に前記病室の外側に位置する排出部を有する配管部と、前記配管部に接続され、前記飛散物や前記臭気を前記吸込部の吸込口から前記配管部内に吸い込むとともに当該配管部内を移送させて前記排出部から排出させる送風機と、を備え、前記送風機は、前記病室の室内の壁際か、或いは、当該病室の外側に配置されていることを特徴とする。
このように構成される病床局所排気システムでは、病床の周囲の空気を効率良く吸い込んで病室の外側へと排気されるように作用する。また、送風機が病床から遠く離れた位置となるように作用する。
【0009】
第2の発明に係る病床局所排気システムは、第1の発明において、前記吸込部は、外周壁が前記吸込口から吸込方向に進むにつれて次第に縮径する漏斗形状部を有しており、前記吸込口には、流体以外の通過を阻止するフィルタ部材が取り付けられていることを特徴とする。
このように構成される病床局所排気システムでは、吸込口に対応する領域の空気が当該吸込口から吸い込まれて配管部まで流れる際にスムーズに流れるように作用する。また、吸込部を患者の周辺に接近させて吸込動作を行ったとしても、患者の服や髪の毛が配管部へと流れ込むのをフィルタ部材が防ぐように作用する。
【0010】
第3の発明に係る病床局所排気システムは、第2の発明において、前記漏斗形状部の内面には、1つか、或いは、前記漏斗形状部の中心線を中心とした周方向に等間隔に位置し、且つ、前記吸込口の周縁部分から吸込方向に進むにつれて次第に前記中心線を中心とした周方向一側に移動するように延びる形状をなし、吸い込む前記飛散物や前記臭気を案内する1つ以上の吸込ガイド部が設けられていることを特徴とする。
このように構成される病床局所排気システムでは、吸込部の内側において吸込口から配管部まで流れる空気の流れがスムーズになるように作用する。
【0011】
第4の発明に係る病床局所排気システムは、第2又は第3の発明において、前記吸込部は、前記漏斗形状部に接続され、使用者が把持して操作可能な把持操作部と、該把持操作部の下端に取り付けられた複数のキャスターと、を備えていることを特徴とする。
このように構成される病床局所排気システムでは、使用者が把持操作部を把持して当該把持操作部を水平方向に動かすと、各キャスターが転動して漏斗形状部が所望の位置へと移動するように作用する。
【0012】
第5の発明に係る病床局所排気システムは、第1の発明について、前記吸込部は、前記吸込口が前記病床の患者に接近配置されるように前記病床のフレーム部分に着脱可能になっていることを特徴とする。
このように構成される病床局所排気システムでは、吸込部を病床周りに配置する際に支持するものを別途設ける必要が無くなるように作用する。
【0013】
第6の発明に係る病床局所排気システムは、第1の発明において、前記吸込部は、前記病床の周囲に位置する支持体と、上下にスライド可能に、或いは、上下に回動可能に前記支持体に支持された可動体と、を備え、前記吸込口は、上方にスライド、又は、回動した状態の前記可動体における前記病床の患者に対応する位置に設けられ、前記可動体及び前記支持体の内部には、前記吸込口と前記配管部の内部とを繋ぐ排出通路が設けられていることを特徴とする。
このように構成される病床局所排気システムでは、吸込部を病床の患者の周囲において換気したい領域へと簡単に移動可能になるように作用する。また、換気をする時には、可動体が支持体の上方に移動した状態になり、換気をしない時には、可動体が下方に移動した状態となるように作用する。
【0014】
第7の発明に係る病床局所排気システムは、第6の発明において、前記可動体は、下方にスライド、又は、回動した際、前記支持体内部に収容されるように構成されていることを特徴とする。
このように構成される病床局所排気システムでは、換気をしない時に支持体の上方領域だけでなく、支持体の側方にもスペースができるように作用する。
【0015】
第8の発明に係る病床局所排気システムは、第6又は第7の発明において、前記支持体は、前記病床の側部フレーム部分に一体に固定されていることを特徴とする。
このように構成される病床局所排気システムでは、換気をする際に使用者が吸込部を病床周りへと持ち込んで設置するという作業が無くなるように作用する。
【0016】
第9の発明に係る病床局所排気システムは、第1の発明において、前記配管部の少なくとも中途部は、前記病室の床下空間か、或いは、天井裏空間に配索されていることを特徴とする。
このように構成される病床局所排気システムでは、病室内において配管部が医者や看護師の邪魔になることがなくなるように作用する。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明の病床局所排気システムでは、病床の周囲の空気を効率良く吸い込んで病室の外側へと排気できるようになるので、病床の患者から飛散する飛散物を病室内に滞留させるのを防いで病室内における感染リスクを大きく低減させたり、或いは、患者から発せられる臭気を素早く病室から無くすことができる。また、送風機が病床から遠く離れた位置になるので、病床に届く送風機の動作音が小さくなり、患者が病室内において騒音により不快を感じることが無いようにできる。
【0018】
第2の発明の病床局所排気システムでは、吸込口に対応する領域の空気が当該吸込口から吸い込まれて配管部まで流れる際にスムーズな動きになる。したがって、患者の周囲の空気を短期間で効率良く換気することができる。また、吸込部を患者に接近させて吸込動作を行ったとしても、患者の服や髪の毛が配管部へと流れ込むのをフィルタ部材が防ぐようになる。したがって、病床の患者は、服や髪の毛が吸込部に引っ張られることによる痛みや不快感が生じるのを回避することができる。
【0019】
第3の発明の病床局所排気システムでは、吸込部の内側において吸込口から配管部まで流れる空気の流れがさらにスムーズになる。したがって、患者の周囲の換気をさらに効率良く行うことができる。
【0020】
第4の発明の病床局所排気システムでは、使用者が把持操作部を把持して当該把持操作部を水平方向に動かすと、各キャスターが転動して漏斗形状部を所望の位置へと移動させることができるようになる。したがって、吸込部を病床の患者の周囲において換気したい領域へと素早く移動させることができる。
【0021】
第5の発明の病床局所排気システムでは、病床のフレーム部分を利用して吸込部を患者の周囲に配置できるので、吸込部を病床周りに配置する際の支持するものを別途用意する必要が無くなる。したがって、システム全体に掛かるコストが上昇するのを防止することができる。
【0022】
第6の発明の病床局所排気システムでは、支持体の位置を病床周りの床面の所望の位置に移動させることができるので、吸込部を病床の患者の周囲において換気したい領域へと簡単に移動させることができる。また、換気をしない時には、可動体を下方に移動させることにより、支持体の上方領域にスペースができるようになるので、吸込部が医者や看護師による患者への医療行為の邪魔にならないようにすることができる。
【0023】
第7の発明の病床局所排気システムでは、換気をしない時に可動体を下方に移動させると、可動体が支持体の内部に位置するようになるので、支持体の上方領域だけでなく、支持体の周囲の領域も有効利用できるようになる。したがって、病床周りに吸込部を配置したとしても医者や看護師における病室内の移動をし易くすることができる。
【0024】
第8の発明では、吸込部が常に病床の周囲に位置するようになるので、換気をする際に使用者が吸込部を病床周りへと持ち込んで設置するという作業の必要が無くなり、取り扱い易いシステムにすることができる。
【0025】
第9の発明では、配管部の多くの領域が病室内に位置しなくなる。したがって、病室内において配管部が医者や看護師の邪魔になることがなくなり、医者や看護師による医療行為を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例1に係る病床局所排気システムが適用された病室の斜視図である。
図2】吸込ツールの分解斜視図である。
図3図2のIII矢視図である。
図4】本発明の実施例1の変形例に係る図1相当図である。
図5】本発明の実施例2における図1相当図である。
図6】本発明の実施例3における図5相当図である。
図7】本発明の実施例4における図5相当図である。
図8】本発明の実施例5における図5相当図である。
図9】一方のスライドボックスを支持ボックスに収納した状態を示す図8相当図である。
図10】本発明の実施例6における図8相当図である。
図11】本発明の実施例7における図8相当図である。
図12】本発明の実施例7における図9相当図である。
図13】本発明の実施例8における図10相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施例の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【実施例0028】
図1は、本発明の実施例1の病床局所排気システム1が適用された病室Rを示す。この病室Rには、入院者用ベッド10(病床)が配置され、該ベッド10には、患者Hが仰向けに横たわっている。
ベッド10は、水平方向に延びる平面視で長方形状をなす床板11と、該床板11に載置されるマットレス12と、を備え、床板11の長手方向一端と他端とには、当該床板11の幅方向の全域に亘って延びる長方形板状をなすヘッドボード13とフットボード14とがそれぞれ立設されている。
ベッド10の幅方向一端と他端とには、パイプフレームで形成された側面視で水平方向に梯子状に延びる形状をなすベッドガード15がそれぞれ2つずつベッド10の長手方向に並設されている。各ベッドガード15の下端には、下方に突出する嵌合棒15aがベッドガード15の長手方向に所定の間隔をあけて一対設けられている。床板11の幅方向両側の各フレーム部分には、上方に開口する嵌合穴11aが床板11の長手方向に所定の間隔をあけて4つ形成されていて、各嵌合穴11aにベッドガード15の各嵌合棒15aを抜き差しすることにより、ベッドガード15を床板11に着脱できるようになっている。
【0029】
病床局所排気システム1は、病室R内に配置された4つの吸込ツール2(吸込部)と、病室Rの壁R1の外側面に接近配置された送風ファン3(送風機)と、各吸込ツール2と送風ファン3とを接続する配管ユニット4(配管部)と、を備えている。
吸込ツール2は、外周壁が吸込口5aから吸込方向に進むにつれて次第に縮径する漏斗形状部5と、上下に延びる形状をなし、使用者が把持して操作可能な把持操作部6と、を備えている。
漏斗形状部5の吸込口5aには、図2に示すように、略円板形状をなすフィルタ部材7が着脱可能に取り付けられ、該フィルタ部材7は、流体以外の通過を阻止するようになっている。
また、漏斗形状部5の内面には、図2及び図3に示すように、当該漏斗形状部5の中心線C1を中心とした周方向に等間隔に位置する複数の吸込ガイド部5bが設けられている。該吸込ガイド部5bは、漏斗形状部5の内側に突出するとともに吸込口5aの周縁部分から吸込方向に進むにつれて次第に中心線C1を中心とした周方向一側に移動するように延びる突条形状をなしている。
【0030】
把持操作部6は、上下に直線状に延びる細長い棒状をなし、上端が漏斗形状部5に接続された支柱フレーム6aと、該支柱フレーム6aの下端から平面視で放射状に延びる細長い棒状をなす4つの脚フレーム6bと、を備え、当該各脚フレーム6bの延出端には、それぞれキャスター8が取り付けられている。
すなわち、把持操作部6の下端には、4つのキャスター8が取り付けられていて、使用者が支柱フレーム6aを把持して水平方向に動かすと、各キャスター8が転動して漏斗形状部5を所望の位置へと移動させることができるようになっている。
【0031】
配管ユニット4は、一端から中途部に亘る部分が4つに枝分かれしてその枝分かれした各端部が各漏斗形状部5にそれぞれ接続される一方、他端が送風ファン3に接続された第1蛇腹管4aと、病室Rの外側に位置し、一端が送風ファン3に接続される一方、他端が排出口4cを構成する第2蛇腹管4b(排出部)と、を備え、第1蛇腹管4aの中途部から他端に亘る部分は、病室Rの床下空間U1に配索されている。
送風ファン3は、第1蛇腹管4aと第2蛇腹管4bとの間に介設されていて、起動させると、病室R内の空気を吸込ツール2の吸込口5aから各吸込ガイド部5bにより案内しながら第1蛇腹管4a内に吸い込むとともに当該第1蛇腹管4a内を移送させて第2蛇腹管4bから排出させるようになっている。
すなわち、病床局所排気システム1は、吸込ツール2の吸込口5aをベッド10に横たわる患者Hに接近させることにより、当該患者Hから空気中に飛散する飛散物や、或いは、患者Hから発生する臭気を病室Rから排気できるようになっている。
【0032】
このように、本発明の実施例1によると、ベッド10の周囲の空気を効率良く吸い込んで病室Rの外側へと排気できるようになるので、ベッド10の患者Hから飛散する飛散物を病室R内に滞留させるのを防いで病室R内における感染リスクを大きく低減させたり、或いは、患者Hから発せられる臭気を素早く病室Rから無くすことができる。また、送風ファン3がベッド10から遠く離れた位置になるので、ベッド10に届く送風ファン3の動作音が小さくなり、患者Hが病室R内において騒音により不快に感じることを無くすことができる。
【0033】
また、使用者が把持操作部6の支柱フレーム6aを把持して当該把持操作部6を水平方向に動かすと、各キャスター8が転動して漏斗形状部5を所望の位置へと移動させることができるようになる。したがって、吸込ツール2をベッド10の患者Hの周囲において換気したい領域へと素早く移動させることができる。
また、空気を吸い込む部分である吸込ツール2は、漏斗形状部5を有しているので、吸込口5aに対応する領域の空気が当該吸込口5aから吸い込まれて第1蛇腹管4aまで流れる際にスムーズな動きになる。したがって、患者Hの周囲の空気を短期間で効率良く換気することができる。また、吸込口5aがフィルタ部材7で覆われているので、吸込ツール2を患者Hに接近させて吸込動作を行ったとしても、患者Hの服や髪の毛が第1蛇腹管4aへと流れ込むのをフィルタ部材7が防ぐようになる。したがって、ベッド10の患者Hは、服や髪の毛が吸込ツール2に引っ張られることによる痛みや不快感が生じるのを回避することができる。
【0034】
また、漏斗形状部5の内面には、空気を案内する複数の吸込ガイド部5bが設けられているので、吸込ツール2の内側において吸込口5aから第1蛇腹管4aまで流れる空気の流れがさらにスムーズになる。したがって、患者Hの周囲の換気をさらに効率良く行うことができる。
また、第1蛇腹管4aの中途部から他端に亘る部分を床下空間U1に配索しているので、配管ユニット4の多くの領域が病室R内に位置しなくなる。したがって、病室R内において配管ユニット4が医者や看護師の邪魔になることがなくなり、医者や看護師による医療行為を行い易くすることができる。
【0035】
尚、図4に示す実施例1の変形例のように、第1蛇腹管4aの中途部から他端に亘る部分を天井裏空間U2に配索するようにしてもよい。すなわち、第1蛇腹管4aの一端側部分を病室Rの天井から吊り下げて吸込ツール2に接続することにより、配管ユニット4が医師や看護師の邪魔になるのを回避させることができる。
また、本発明の実施例1では、第1蛇腹管4aの中途部から他端に亘る部分が床下空間U1に配索されているが、第1蛇腹管4aのうちの少なくとも中途部の領域を床下空間U1に配索すれば、病室R内に居る人の邪魔にならないようにできる。
また、本発明の実施例1では、漏斗形状部5の内側において突条をなす吸込ガイド部5bを複数設ける構造にしたが、これに限らず、例えば、漏斗形状部5の内側において中心線C1周りに渦巻状に延びる突条の吸込ガイド部5bを1本設ける構造にしてもよい。
さらに、本発明の実施例1では、漏斗形状部5の内側に突条形状をなす吸込ガイド部5bを複数設ける構造にしたが、これに限らず、吸込ガイド部5bが空気をスムーズに第1蛇腹管4aにまで移送させることができるのであれば、その他の形状であってもよく、例えば、凹条形状であってもよい。
【実施例0036】
図5は、本発明の実施例2の病床局所排気システム1を示す。この実施例2では、吸込ツール2の構造と、配管ユニット4の第1蛇腹管4aが床下空間U1に配索されていない点と、送風ファン3の位置が地面から離れた位置になっている点とがそれぞれ実施例1とは異なっているので、実施例1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0037】
実施例2の吸込ツール2は、ベッド10において横たわる患者Hの上半身側の両側方に位置するように一対配設されている。各吸込ツール2は、厚みを有する長方形板状をなす吸込ボックス9を備え、各吸込ボックス9は、ベッド10の長手方向に沿って延びるとともに、その厚み方向がベッド10の幅方向に沿う姿勢となっている。
各吸込ボックス9の互いに対向する側の側面中央には、当該吸込ボックス9内に連通する円形状の吸込口9aが形成され、各吸込ボックス9の長手方向一端中央には、第1蛇腹管4aの一端が接続されている。
吸込ボックス9の下面には、下方に突出する棒状の取付用ピン9bが吸込ボックス9の長手方向に所定の間隔をあけて一対設けられている。各取付用ピン9bは、その突出方向の長さを調整可能であるとともに、互いの間隔も調整可能になっている。尚、各取付用ピン9bは、吸込ボックス9の本体部分から取外可能にもなっている。
そして、各取付用ピン9bは、床板11の各嵌合穴11aに嵌合可能になっていて、ベッドガード15の各嵌合棒15aを各嵌合穴11aから抜いて床板11からベッドガード15を取り外し、その後、両取付用ピン9bの間隔を隣り合う2つの嵌合穴11aの間隔となるように調整するとともに各取付用ピン9bの突出方向の長さも調整して各取付用ピン9bを各嵌合穴11aに嵌合させることにより、吸込ボックス9をベッド10に取り付けることができるようになっている。
すなわち、吸込ボックス9は、吸込口9aがベッド10の患者Hに接近配置されるようにベッド10のフレーム部分に着脱可能になっている。
【0038】
このように、本発明の実施例2によると、ベッド10のフレーム部分を利用して吸込ツール2を患者Hの周囲に配置できるので、吸込ツール2をベッド10周りに配置する際に支持するものを別途用意する必要が無くなる。したがって、システム全体に掛かるコストが上昇するのを防止することができる。また、取付用ピン9bの突出方向の長さを調整することにより、吸込ツール2を患者Hに対して最適な位置に配置することができる。
尚、各取付用ピン9bを吸込ボックス9の本体部分から取り外すことにより、吸込ボックス9を使用しないときに当該吸込ボックス9をベッド10から取り外して床面に置いて保管しておくことができる。
また、各取付用ピン9bは、互いの間隔を調整可能であるので、隣り合う2つの嵌合穴11aの間隔が異なるベッド10であっても吸込ボックス9を取り付けることができる。
【実施例0039】
図6は、本発明の実施例3の病床局所排気システム1を示す。この実施例3では、吸込ボックス9の数が1つである点と、吸込ボックス9のベッド10への取付構造と、送風ファン3の配置とがそれぞれ実施例2とは異なっているので、実施例2と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0040】
実施例3の吸込ボックス9の下面には、ベッド10のヘッドボード13やフットボード14を上方から挟持可能な取付ブラケット9cが吸込ボックス9の長手方向に所定の間隔をあけて一対設けられていて、例えば、図6に示すように、各取付ブラケット9cでヘッドボード13の上縁部分を挟持することにより、ヘッドボード13の上側に吸込ボックス9を取り付けることができるようになっている。
また、実施例3の送風ファン3は、病室Rの室内側の壁R1に固定されている。すなわち、送風ファン3が病室R内の壁際に配置されている。
このように、実施例3の病床局所排気システム1では、ベッド10に対する吸込ボックス9の取付位置を使用者の所望の位置にできるようになるので、使い勝手の良いシステムにすることができる。
尚、本発明の実施例3では、吸込ボックス9を各取付ブラケット9cによりベッド10に取り付けているが、これに限らず、例えば、係合爪のようなもので、ヘッドボード13やフットボード14の上縁部分に引っ掛けることにより吸込ボックス9をベッド10に取り付けるようにしてもよい。また、吸込ボックス9をベッド10のヘッドボード13やベッドガード15の内側に立て掛けて使用することも可能である。
また、本発明の実施例3では、送風ファン3を病室Rの室内側の壁R1に固定しているが、勿論、送風ファン3を病室Rの外側の壁R1に固定しても良い。
【実施例0041】
図7は、本発明の実施例4の病床局所排気システム1を示す。この実施例4では、病室R内にベッドがなくマットレス12(病床)のみである点と、吸込ボックス9の数が1つである点と、吸込ボックス9の一部構造とがそれぞれ実施例2とは異なっているので、実施例2と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0042】
実施例4の吸込ボックス9の下面は平坦であり、吸込口9a側の下端縁部には、吸込ボックス9の厚み方向に突出する平面視で長方形状をなす倒れ防止板9dが一体に設けられている。そして、倒れ防止板9dをマットレス12の下側に潜り込ませながらマットレス12の周囲における所望の位置に吸込ボックス9を載置して局所換気を行うようになっている。
このように、実施例4の病床局所排気システム1では、ベッドが無い環境下であっても患者Hの周囲の所望の位置に吸込ボックス9を倒れないように安定した状態で設置して局所換気を行うことができる。
【実施例0043】
図8は、本発明の実施例5の病床局所排気システム1を示す。この実施例5では、吸込ボックス9の構造と、吸込ボックス9の配置とがそれぞれ実施例2とは異なっているので、実施例2と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0044】
実施例5の吸込ボックス9は、ベッド10の幅方向一側の床面において当該ベッド10の長手方向に沿って2つ並んで載置されている。
吸込ボックス9は、厚みを有する長方形板状をなす支持ボックス91(支持体)と、外形が支持ボックス91よりも一回り小さい長方形板状をなすスライドボックス92(可動体)と、を備えている。支持ボックス91の内部には、上方に開口する収容凹部91aが形成され、該収容凹部91aは、その内面がスライドボックス92の外形に対応する形状をなすとともに、第1蛇腹管4aの一端に連通している。
【0045】
スライドボックス92の内部には、下方に開口する空気導入空間92aが形成されている。また、スライドボックス92の上面には、一対の操作把手92bがスライドボックス92の長手方向に所定の間隔をあけて取り付けられ、スライドボックス92のベッド10側の側面中央には、空気導入空間92aに連通する吸込口92cが形成されている。
スライドボックス92は、支持ボックス91の収容凹部91aに上下にスライド可能に嵌合しており、操作把手92bを把持して上方にスライドさせると、支持ボックス91に支持されて吸込口92cがベッド10に横たわる患者Hに対応する位置となるようになっている。一方、スライドボックス92は、操作把手92bを把持して下方にスライドさせると、図9に示すように、支持ボックス91の内部に収容されるようになっている。
【0046】
そして、支持ボックス91の収容凹部91aとスライドボックス92の空気導入空間92aとは、吸込口92cと第1蛇腹管4aとを繋ぐ本発明の排出通路P1を構成しており、送風ファン3を起動させると、ベッド10に横たわる患者Hの周囲の空気が吸込口92cを介して排出通路P1に導入されるとともに、第1蛇腹管4aを介して第2蛇腹管4bから病室Rの外側に排出されるようになっている。
【0047】
このように、実施例5の病床局所排気システム1では、支持ボックス91の位置をベッド10周りの床面の所望の位置に移動させることができるので、吸込ツール2を病床の患者Hの周囲において換気したい領域へと簡単に移動させることができる。また、換気をしない時には、スライドボックス92を下方にスライドさせることにより、支持ボックス91の上方領域にスペースができるようになるので、医者や看護師による患者Hへの医療行為の邪魔にならないようにすることができる。さらに、スライドボックス92を下方に移動させると、スライドボックス92が支持ボックス91の内部に位置するようになるので、支持ボックス91の上方領域だけでなく、支持ボックス91の周囲の領域も有効利用できるようになる。したがって、ベッド10周りに吸込ツール2を配置したとしても医者や看護師における病室R内の移動をし易くすることができる。
【実施例0048】
図10は、本発明の実施例6の病床局所排気システム1を示す。この実施例6では、支持ボックス91の構造が実施例5と異なっているので、実施例5と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0049】
実施例6の支持ボックス91は、ベッド10の長手方向一端から他端の全域に亘って延びる厚みを有する帯板形状をなしていて、ベッド10の側部フレーム部分に一体に固定されている。支持ボックス91の内部には、収容空間91bが支持ボックス91の長手方向一端寄りの位置から他端寄りの位置に亘って形成され、収容空間91bは、第1蛇腹管4aの一端に連通している。
支持ボックス91の上面には、収容空間91bに連通する開口部91cが支持ボックス91の長手方向に所定の間隔をあけて一対形成されている。各開口部91cは、スライドボックス92の下面の形状に対応する長方形状をなしている。
一対のスライドボックス92は、支持ボックス91の各開口部91cに上下にスライド可能に嵌合しており、操作把手92bを把持して上方にスライドさせると、支持ボックス91に支持されて吸込口92cがベッド10に横たわる患者Hに対応する位置となるようになっている。一方、スライドボックス92は、操作把手92bを把持して下方にスライドさせると、支持ボックス91の内部に収容されるようになっている。
【0050】
そして、支持ボックス91の収容空間91bと各スライドボックス92の空気導入空間92aとは、各吸込口92cと第1蛇腹管4aとを繋ぐ本発明の排出通路P2を構成しており、送風ファン3を起動させると、ベッド10に横たわる患者Hの周囲の空気が各吸込口92cを介して排出通路P2に導入されるとともに、第1蛇腹管4aを介して第2蛇腹管4bから病室Rの外側に排出されるようになっている。
【0051】
このように、実施例6の病床局所排気システム1では、吸込ツール2が常にベッド10の周囲に位置するようになるので、換気をする際に使用者が吸込ツール2をベッド10周りへと持ち込んで設置するという作業の必要が無くなり、取扱い易いシステムにすることができる。また、実施例6の如きベッド10に備え付けの病床局所排気システム1は、都度、ベッド10の周りに持ち込んで設置するという手間がないため、ベッド10が病院等において多数設置される場合であってもウイルス等の感染が急拡大するような不測の事態に迅速に対応できるようになり、将来を見据えた局所排気式の病棟ベッドの開発、設置、運用にも適用・応用することができる。
【実施例0052】
図11は、本発明の実施例7の病床局所排気システム1を示す。この実施例7では、吸込ボックス9の構造が実施例5とは異なっているので、実施例5と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0053】
実施例7の吸込ボックス9は、断面扇形状をなすとともに当該吸込ボックス9の長手方向に細長く延びる形状をなす回動ボックス93(可動体)を備え、該回動ボックス93は、湾曲面93aがベッド10側に向くように収容凹部91aの開口部分に位置している。回動ボックス93は、収容凹部91aの開口部分におけるベッド10から遠い側の縁部において上下に回動可能に支持ボックス91に支持されていて、図12に示すように、下方に回動した際、支持ボックス91の内部に収容されるようになっている。
また、湾曲面93aには、回動ボックス93の長手方向に沿って延びるスリット状の吸込口93b(図12参照)が形成されていて、該吸込口93bは、回動ボックス93を上方に回動させた状態でベッド10の患者Hに対応する位置となるようになっている。
【0054】
このように、実施例7の病床局所排気システム1では、換気をしない時には、回動ボックス93を下方に回動させて支持ボックス91の上方領域にスペースができるようになるので、医者や看護師による患者Hへの医療行為の邪魔にならないようにすることができる。また、回動ボックス93を下方に回動させると、当該回動ボックス93が支持ボックス91の内部に位置するようになるので、支持ボックス91の上方領域だけでなく、支持ボックス91の周囲の領域も有効利用できるようになる。したがって、ベッド10周りに吸込ツール2を配置したとしても医者や看護師における病室R内の移動をし易くすることができる。
【実施例0055】
図13は、本発明の実施例8の病床局所排気システム1を示す。この実施例8では、支持ボックス91の構造が実施例7とは異なっているので、実施例7と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0056】
実施例8の支持ボックス91は、ベッド10の長手方向一端から他端の全域に亘って延びる厚みを有する帯板形状をなしていて、ベッド10の側部フレーム部分に一体に固定されている。支持ボックス91の内部には、収容空間91bが支持ボックス91の長手方向一端寄りの位置から他端寄りの位置に亘って形成され、収容空間91bは、第1蛇腹管4aの一端に連通している。
支持ボックス91の上面には、収容空間91bに連通する開口部91cが支持ボックス91の長手方向に所定の間隔をあけて一対形成されている。各開口部91cは、回動ボックス93の下面の形状に対応する長方形状をなしている。
一対の回動ボックス93は、各開口部91cのベッド10から遠い側の縁部においてそれぞれ上下に回動可能に支持ボックス91に支持されていて、操作把手92bを把持して下方に回動した際、開口部91cを介して支持ボックス91の内部に収容されるようになっている。一方、操作把手92bを把持して各回動ボックス93上方に回動させると、吸込口93bがベッド10に横たわる患者Hに対応する位置となるようになっている。
【0057】
このように、実施例8の病床局所排気システム1では、実施例6の病床局所排気システム1と同様に、吸込ツール2が常にベッド10の周囲に位置するようになるので、換気をする際に使用者が吸込ツール2をベッド10周りへと持ち込んで設置するという作業の必要が無くなり、取扱い易いシステムにすることができる。また、実施例8の如きベッド10に備え付けの病床局所排気システム1は、都度、ベッド10の周りに持ち込んで設置するという手間がないため、ベッド10が病院等において多数設置される場合であってもウイルス等の感染が急拡大するような不測の事態に迅速に対応できるようになり、将来を見据えた局所排気式の病棟ベッドの開発、設置、運用にも適用・応用することができる。
【0058】
尚、本発明の実施例1~8では、送風ファン3を用いて患者H周りの空気を吸い込むようにしているが、その他の送風機を用いて空気を吸い込むようにしてもよく、例えば、ブロワで吸い込むようにしてもよい。
また、本発明の実施例1~8では、配管ユニット4において蛇腹管を用いているが、その他の種類の配管を用いて空気を移送するようにしてもよい。
また、本発明の実施例1~8では、送風ファン3をベッド10から遠く離れた位置に配置しているが、静音タイプのものであれば、送風ファン3の吸引力を補助する送風機を送風ファン3よりも吸込ツール2側に配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、病床の周囲の空気を局所的に吸い込んで患者から飛散するウイルスや臭気等を排気する病床局所排気システムに適している。
【符号の説明】
【0060】
1…病床局所排気システム 2…吸込ツール 3…送風ファン(送風機) 4…配管ユニット(配管部)4a…第1蛇腹管 4b…第2蛇腹管(排出部)4c…排出口 5…漏斗形状部 5a…吸込口 5b…吸込ガイド部 6…把持操作部 6a…支柱フレーム 6b…脚フレーム 7…フィルタ部材 8…キャスター 9…吸込ボックス 9a…吸込口 9b…取付用ピン 9c…取付ブラケット 9d…倒れ防止板 10…ベッド(病床) 11…床板 11a…嵌合穴 12…マットレス(病床) 13…ヘッドボード 14…フットボード 15…ベッドガード 15a…嵌合棒 91…支持ボックス(支持体) 91a…収容凹部 91b…収容空間 91c…開口部 92…スライドボックス(可動体) 92a…空気導入空間 92b…操作把手 92c…吸込口 93…回動ボックス(可動体) 93a…湾曲面 93b…吸込口 C1…中心線 H…患者 P1…排出通路 P2…排出通路 R…病室 R1…病室の壁 U1…床下空間 U2…天井裏空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13