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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117959
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】脱窒処理装置および注水装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20240823BHJP
   C02F 3/06 20230101ALI20240823BHJP
【FI】
C02F3/34 101B
C02F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024076
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】501438773
【氏名又は名称】一般財団法人畜産環境整備機構
(71)【出願人】
【識別番号】506370331
【氏名又は名称】群立機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 康男
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 是文
【テーマコード(参考)】
4D003
4D040
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003BA02
4D003CA07
4D003DA01
4D003DA04
4D003DA07
4D003EA01
4D003EA23
4D003EA30
4D003FA10
4D040AA04
4D040AA12
4D040AA13
4D040AA34
(57)【要約】
【課題】脱窒用硫黄資材を使用して硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理水を脱窒する場合に装置構成の簡略化が可能な脱窒処理装置および注水装置を提供する。
【解決手段】脱窒処理装置は、脱窒用硫黄資材によって形成される資材層の内部に硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理水を注入する注水装置を備える。注水装置は、少なくとも一部が資材層に埋設される可撓性チューブ111を備える。可撓性チューブ111は、その可撓性チューブ111の内部への被処理水PWの圧送時に拡張されて被処理水PWを資材層へ放出する放水スリット111sを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄酸化脱窒細菌を表面に増殖させかつ脱窒用電子供与体としての硫黄を供給する脱窒用硫黄資材と、該脱窒用硫黄資材を堆積させる処理槽と、該処理槽に堆積した前記脱窒用硫黄資材によって形成される資材層の内部に硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理水を注入する注水装置と、を備え、
前記注水装置は、少なくとも一部が前記資材層に埋設される可撓性チューブと、該可撓性チューブの内部へ前記被処理水を圧送するポンプとを備え、
前記可撓性チューブは、該可撓性チューブの内部への前記被処理水の圧送時に拡張されて前記被処理水を前記資材層へ放出する放水スリットを有することを特徴とする、脱窒処理装置。
【請求項2】
前記可撓性チューブは、該可撓性チューブの先端部の周方向に延びる複数の前記放水スリットを有することを特徴とする、請求項1に記載の脱窒処理装置。
【請求項3】
前記注水装置は、前記可撓性チューブの先端に取り付けられる先鋭形状のプラグをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の脱窒処理装置。
【請求項4】
前記注水装置は、前記可撓性チューブの内部に収容されて前記可撓性チューブの前記資材層への差し込みを可能にする棒状の剛性部材をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の脱窒処理装置。
【請求項5】
前記ポンプは、カスケードポンプであることを特徴とする、請求項1に記載の脱窒処理装置。
【請求項6】
前記被処理水が前記処理槽に堆積した前記資材層を通過することで脱窒されて前記処理槽の上部に貯留される処理水を前記処理槽の外部へ流出させる処理水流出部をさらに備え、
前記処理水流出部は、上下に延びて下端に前記処理水の入口を有する導入管と、前記導入管の周壁に連結されて前記導入管から前記処理槽の外部へ前記処理水を流出させる導出管と、前記導入管の前記入口に対向して前記入口の下方に間隙をあけて配置されるとともに前記入口の外縁よりも外側に外縁を有する遮蔽部材と、を備えることを特徴とする、請求項1に記載の脱窒処理装置。
【請求項7】
前記遮蔽部材の上面は、前記導入管の前記入口と同心で上向きに凸の円錐状の傾斜面であることを特徴とする、請求項6に記載の脱窒処理装置。
【請求項8】
硫黄酸化脱窒細菌を表面に増殖させかつ脱窒用電子供与体としての硫黄を供給する脱窒用硫黄資材によって形成される資材層の内部に硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理水を注入する注水装置であって、
少なくとも一部が前記資材層に埋設される可撓性チューブを備え、
前記可撓性チューブは、該可撓性チューブの内部への前記被処理水の圧送時に拡張されて前記被処理水を前記資材層へ放出する放水スリットを有することを特徴とする、注水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱窒処理装置および注水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から養豚排水等に含まれる硝酸性窒素および亜硝酸性窒素(以下、「NOx-N」と表記する。)を除去するための脱窒用硫黄資材が知られている(下記特許文献1を参照)。この脱窒用硫黄資材は、粉末硫黄、マグネサイトを含むアルカリ剤、および界面活性剤を含む(ただし、水不溶性または難溶性のバインダーで一体化された脱窒用硫黄資材を除く)。この脱窒用硫黄資材は、養豚排水処理施設等における硫黄脱窒法において、簡便に使用でき、脱窒性能が高く、かつ製造方法が容易である。
【0003】
特許文献1に記載された硫黄脱窒用資材は、形状が砂に類似する顆粒である。この資材を脱窒処理に用いる場合、この資材を槽に充填して形成した資材層に被処理水を下向流または上向流で均一に浸透させ、被処理水と資材層中の資材とを偏りなく接触させることが不可欠である。被処理水と資材との十分な接触を確保するための装置として、公知の下向流式または上向流式の砂ろ過装置が候補になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6935653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような砂ろ過装置では、微細な砂が槽底に脱落して処理対象液の円滑な流入または流出を阻害することを防ぐために、支持砂利層と集散水装置の設置が不可欠である。このため、砂ろ過装置を硫黄脱窒装置に転用すると、装置の構造が複雑になり、装置製作の初期費用が高くなるという課題がある。できるだけ安価に硫黄脱窒装置を導入するためには、装置構造を単純化し制作費を下げることが重要である。
【0006】
本発明は、脱窒用硫黄資材を使用してNOx-Nを含む被処理水を脱窒する場合に、上記の課題を解決して、装置構成が簡略化された脱窒処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る脱窒処理装置は、硫黄酸化脱窒細菌を表面に増殖させかつ脱窒用電子供与体としての硫黄を供給する脱窒用硫黄資材と、該脱窒用硫黄資材を堆積させる処理槽と、該処理槽に堆積した前記脱窒用硫黄資材によって形成される資材層の内部にNOx-Nすなわち硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理水を注入する注水装置と、を備え、前記注水装置は、少なくとも一部が前記資材層に埋設される可撓性チューブと、該可撓性チューブの内部へ前記被処理水を圧送するポンプとを備え、前記可撓性チューブは、該可撓性チューブの内部への前記被処理水の圧送時に拡張されて前記被処理水を前記資材層へ放出する放水スリットを有する。
【0008】
前記脱窒処理装置において、前記可撓性チューブは、該可撓性チューブの先端部の周方向に延びる複数の前記放水スリットを有してもよい。
【0009】
前記脱窒処理装置において、前記注水装置は、前記可撓性チューブの先端に取り付けられる先鋭形状のプラグをさらに備えてもよい。
【0010】
前記脱窒処理装置において、前記注水装置は、前記可撓性チューブの内部に収容されて前記可撓性チューブの前記資材層への差し込みを可能にする棒状の剛性部材をさらに備えてもよい。
【0011】
前記脱窒処理装置において、前記ポンプは、カスケードポンプであってもよい。
【0012】
前記脱窒処理装置は、前記被処理水が前記処理槽に堆積した前記資材層を通過することで脱窒されて前記処理槽の上部に貯留される処理水を前記処理槽の外部へ流出させる処理水流出部をさらに備え、前記処理水流出部は、上下に延びて下端に前記処理水の入口を有する導入管と、前記導入管の周壁に連結されて前記導入管から前記処理槽の外部へ前記処理水を流出させる導出管と、前記導入管の前記入口に対向して前記入口の下方に間隙をあけて配置されるとともに前記入口の外縁よりも外側に外縁を有する遮蔽部材と、を備えてもよい。
【0013】
前記脱窒処理装置において、前記遮蔽部材の上面は、前記導入管の前記入口と同心で上向きに凸の円錐状の傾斜面であってもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る注水装置は、硫黄酸化脱窒細菌を表面に増殖させかつ脱窒用電子供与体としての硫黄を供給する脱窒用硫黄資材によって形成される資材層の内部にNOx-Nすなわち硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理水を注入する注水装置であって、少なくとも一部が前記資材層に埋設される可撓性チューブを備え、前記可撓性チューブは、該可撓性チューブの内部への前記被処理水の圧送時に拡張されて前記被処理水を前記資材層へ放出する放水スリットを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記各態様によれば、脱窒用硫黄資材を使用してNOx-Nを含む被処理水を脱窒する場合に、上記従来の上向流式または下向流式の砂ろ過装置よりも装置構成が簡略化された脱窒処理装置および注水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る脱窒処理装置および注水装置の実施形態を示す断面図。
図2図1の注水装置の可撓性チューブ、プラグ、および剛性部材の断面図。
図3図1の注水装置のポンプとその周辺の構成の一例を示す概略図。
図4図1の脱窒処理装置の処理水流出部の構成の一例を示す斜視図。
図5図4の処理水流出部の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る脱窒処理装置および注水装置の実施形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る脱窒処理装置および注水装置の実施形態を示す概略的な断面図である。本実施形態の脱窒処理装置100は、たとえば、養豚排水などの排水DWを前処理施設10に流入させて膜分離活性汚泥法(MBR)により生物処理と膜分離を行ったろ過水を被処理水PWとし、その被処理水PWに残留するNOx-Nを除去する脱窒処理を行う装置である。
【0019】
NOx-Nは、たとえば、家畜の糞尿に含まれるアンモニウムが酸化されて酸化窒素の形で存在する窒素のことであり、被処理水PW中ではそれぞれ硝酸イオンおよび亜硝酸イオンとして存在する。水質汚濁防止法では、「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物、及び硝酸化合物」が有害物質の一項目として規制されている。この規制項目を以下「硝酸性窒素等」と略称する。
【0020】
図1に示す例において、脱窒処理装置100の前段に設置される前処理施設10は、たとえば、活性汚泥曝気槽11と、膜分離槽12と、膜ユニット13と、を備えるMBR処理施設である。養豚排水などの排水DWは、たとえば、活性汚泥曝気槽11へ流入して撹拌され、活性汚泥曝気槽11から隔壁を越えて膜分離槽12へ流入する。膜ユニット13は、たとえば、膜分離槽12内に配置され、排水DW中の活性汚泥等をろ過し、NOx-Nを含むろ過水を通過させる。
【0021】
本実施形態の脱窒処理装置100は、処理槽101と、脱窒用硫黄資材102と、注水装置110と、を備えている。また、図1に示す例において、脱窒処理装置100は、たとえば、処理水流出部120と、エアブロー装置130と、を備えている。処理槽101は、たとえば、金属製、コンクリート製、または樹脂製のタンクであり、覆蓋を設けてもよい。
【0022】
脱窒用硫黄資材102は、たとえば、粉末硫黄、マグネサイトを含むアルカリ剤、および界面活性剤を含み、資材表面で硫黄酸化脱窒細菌を増殖させる微生物担体として機能する。硫黄酸化脱窒細菌は、硫黄を利用してNOx-Nを窒素ガスに還元すると同時に硫酸イオンを生成する硫黄脱窒反応を行う。すなわち、脱窒用硫黄資材102は、硫黄酸化脱窒細菌を表面に馴養しかつ脱窒の電子供与体としての硫黄を供給する。脱窒用硫黄資材102は、処理槽101に収容され、その処理槽101の底部から所定の高さまで堆積して資材層103を形成する。
【0023】
注水装置110は、たとえば、少なくとも一部が資材層103に埋設される一本以上の可撓性チューブ111を備えている。可撓性チューブ111の本数は、たとえば、被処理水PWの流量に応じて増減させることができる。可撓性チューブ111の素材としては、たとえば、ポリウレタンなど、弾性を有する樹脂材料を用いることができる。
【0024】
また、注水装置110は、たとえば、可撓性チューブ111の内部へ被処理水PWを圧送するポンプ112を備えていてもよい。ポンプ112は、たとえば、カスケードポンプが好適である。カスケードポンプは、たとえば、200[l/m]以下の小流量において他のポンプと比較して高い圧力を出力することができ、他のポンプと比べて小型で、メンテナンスが容易である。ポンプ112の出口には、たとえば、逆止弁113が設けられている。
【0025】
図2は、図1の注水装置110の可撓性チューブ111、プラグ114、および剛性部材115の断面図である。注水装置110は、たとえば、可撓性チューブ111に加え、プラグ114を備えていてもよく、剛性部材115を備えていてもよい。なお、処理槽101内に可撓性チューブ111を配置した状態で脱窒用硫黄資材102を投入して、資材層103に可撓性チューブ111を埋設する場合、注水装置110は、プラグ114および剛性部材115を有しなくてもよい。
【0026】
図2に示すように、可撓性チューブ111は、たとえば、一つ以上の放水スリット111sを有している。放水スリット111sは、たとえば、ニッパーやカッターなどの工具によって可撓性チューブ111に切れ目を入れることによって形成することができる。図2の拡大図Aに示すように、可撓性チューブ111内へ被処理水PWが圧送されておらず、可撓性チューブ111の内側と外側の圧力差がない状態において、放水スリット111sは可撓性チューブ111の弾性によって閉じている。
【0027】
また、図2の拡大図Bに示すように、可撓性チューブ111内へ被処理水PWが圧送されて、可撓性チューブ111の内側の圧力が外側の圧力よりも高くなると、放水スリット111sが拡張され、放水スリット111sから資材層103へ被処理水PWが放出される。しかし、被処理水PWの圧送が停止されて、可撓性チューブ111の内側と外側の圧力差が低くなると、図2の拡大図Aに示すように、可撓性チューブ111の弾性によって放水スリット111sが閉じる。
【0028】
図2に示す例において、可撓性チューブ111は、たとえば、可撓性チューブ111の先端部の周方向に延びる複数の放水スリット111sを有している。たとえば、可撓性チューブ111の外径が12[mm]、内径が10[mm]である場合、可撓性チューブ111の周方向における各々の放水スリット111sの長さは、可撓性チューブ111の外周面の周長の1/3以下にすることができる。
【0029】
また、複数の放水スリット111sは、可撓性チューブ111の長さ方向に間隔をあけて形成することができる。この場合、可撓性チューブ111の長さ方向に隣り合う放水スリット111sは、可撓性チューブ111の周方向に位置をずらして形成することができる。たとえば、可撓性チューブ111の長さ方向に隣り合う放水スリット111sを、可撓性チューブ111の周方向に180度ずらして形成することができる。
【0030】
これにより、可撓性チューブ111の周方向に延びる複数の放水スリット111sを、可撓性チューブ111の外周面の両側に交互に形成することができる。また、可撓性チューブ111の長手方向に隣り合う放水スリット111sを、所定の角度ずつ周方向にずらして形成してもよい。これにより、可撓性チューブ111の周方向に延びる複数の放水スリット111sを、可撓性チューブ111の外周面に間隔をあけて螺旋状に形成することができる。
【0031】
なお、放水スリット111sは、可撓性チューブ111の内側と外側の圧力差が小さいときに可撓性チューブ111の弾性によって閉じるものであれば、可撓性チューブ111の周方向に延びる構成に限定されない。たとえば、放水スリット111sは、可撓性チューブ111の長手方向に延びていてもよく、十字型、アスタリスク型、または放射状に形成されていてもよい。
【0032】
プラグ114は、たとえば、円錐形や角錐形など、先端が尖った先鋭形状を有する金属製の部材である。プラグ114は、たとえば、可撓性チューブ111の先端の開口部から可撓性チューブ111の内側に挿入され、図示を省略するホースバンドなどの締結具によって可撓性チューブ111の先端に取り付けられる。可撓性チューブ111の先端部の内側に挿入されるプラグ114の基端部は、たとえば、可撓性チューブ111の内径と等しいか、それよりも僅かに大きい外径を有する円筒状または円柱状の形状を有している。
【0033】
剛性部材115は、可撓性チューブ111の内部に収容される棒状の部材である。剛性部材115は、たとえば、図1に示す資材層103に可撓性チューブ111を埋設する際に、可撓性チューブ111を資材層103へ差し込むことを可能にする剛性を有している。剛性部材115としては、たとえば、農業用資材として流通しているグラスファイバーポールなどを使用することが可能である。
【0034】
剛性部材115の長さは、たとえば、可撓性チューブ111の長さよりも短くされる。これにより、可撓性チューブ111の基端部の可撓性を確保することができる。また、剛性部材115は、プラグ114に固定されていてもよく、プラグ114に固定されていなくてもよい。なお、プラグ114を使用せず、たとえば、剛性部材115の先端を可撓性チューブ111の先端から突出させ、可撓性チューブ111を剛性部材115の外周にホースバンドなどの締結部材によって固定することも可能である。
【0035】
図3は、図1の注水装置110のポンプ112とその周辺の構成の一例を示す概略図である。ポンプ112の入口と前処理施設10の膜ユニット13とを接続する配管には、たとえば、逆止弁116が設けられている。また、ポンプ112の出口に接続された配管には、たとえば、アキュムレータ117が設けられている。
【0036】
また、ポンプ112は、たとえば、制御回路112cと、圧力センサ112sと、フロースイッチ112fとを備えている。制御回路112cは、たとえば、圧力センサ112sとフロースイッチ112fとを併用してポンプ112を制御する。これにより、ポンプ112は、前処理施設10から可撓性チューブ111へ被処理水PWを一定の圧力で圧送することができる。
【0037】
図4は、図1の脱窒処理装置100の処理水流出部120の構成の一例を示す斜視図である。図1に示すように、可撓性チューブ111へ圧送された被処理水PWは、放水スリット111sから放出されて処理槽101に堆積した資材層103を通過する。これにより、被処理水PWに含まれるNOx-Nが除去され、被処理水PWは、脱窒されて硝酸性窒素等が低減された処理水TWとなって、処理槽101の上部に貯留される。
【0038】
処理水流出部120は、処理槽101の上部に貯留された処理水TWを処理槽101の外部へ流出させる。処理水流出部120は、たとえば、図4に示すように、導入管121と、導出管122と、遮蔽部材123と、を備えている。
【0039】
導入管121は、たとえば、鉛直方向の上下に延び、下端に処理水TWの入口121iを有し、上端は開放されている。導入管121の上端は、処理水TWの液面よりも上方に位置し、導入管121の下端は、処理水TWの液面下に位置している。これにより、導入管121は、サイホンブレーカとして機能し、導入管121と導出管122によってサイホンが形成されて処理槽101内の処理水TWの水位が所定の水位よりも低下するのを防止する。また、導入管121は、たとえば、処理水TWの入口121iの周囲に、導入管121の径方向に突出するフランジ121fを有している。
【0040】
導出管122は、たとえば、処理水TWの液面下で導入管121の周壁に連結され、導入管121から処理槽101の外部へ処理水TWを流出させる。遮蔽部材123は、導入管121の入口121iに対向して、入口121iの下方に間隙をあけて配置される。遮蔽部材123は、たとえば、導入管121の入口121iの外縁よりも外側に外縁を有する円板状の形状を有し、ボルトなどの締結部材によって導入管121のフランジ121fに固定されている。
【0041】
図5は、図4に示す処理水流出部120の変形例を示す斜視図である。この変形例において、処理水流出部120の導入管121は、フランジ121fを有しない。また、処理水流出部120は、たとえば、導入管121の下端部を包囲する円筒状の包囲部124を有している。包囲部124の上端は、たとえば、導入管121の下端よりも上方に位置し、包囲部124の下端は、導入管121の下端よりも下方に位置している。
【0042】
また、包囲部124は、たとえば、複数の支持部材124sを介して導入管121に固定されている。さらに、処理水流出部120の遮蔽部材123の上面は、たとえば、導入管121の入口121iと同心で、上向きに凸の円錐状の傾斜面123aである。遮蔽部材123は、たとえば、ボルトなどの締結部材によって包囲部124に固定されている。遮蔽部材123の底面は、たとえば、平坦な面である。
【0043】
エアブロー装置130は、たとえば、エアコンプレッサ131と、逆止弁132とを備え、注水装置110のメンテンナンス時に、圧縮された高圧の空気を可撓性チューブ111の内部へ供給する。より具体的には、エアコンプレッサ131と逆止弁132は、たとえば、複数の可撓性チューブ111へ被処理水PWを供給する給水マニホールドに接続された給気ラインに設けられている。
【0044】
たとえば、可撓性チューブ111の内部へ被処理水PWとともに懸濁物質が侵入し、放水スリット111sから資材層103への被処理水PWの放出性能が低下した場合には、ポンプ112による被処理水PWの圧送を一時的に停止する。その後、エアブロー装置130のエアコンプレッサ131を作動させ、エアコンプレッサ131から、逆止弁132、吸気ラインおよび給水マニホールドを介して、圧縮空気を可撓性チューブ111の内部へ供給する。これにより、可撓性チューブ111の内部の懸濁物質を、圧縮空気とともに放水スリット111sから放出させ、放水スリット111sから資材層103への被処理水PWの放出性能を回復させることができる。
【0045】
以下、本実施形態の脱窒処理装置100および注水装置110の作用について、前述の従来技術との対比に基づいて説明する。たとえば、養豚排水などの排水DWに対しては、硝酸性窒素等の排水基準が定められており、排水DWに含まれるNOx-Nを除去することで、硝酸性窒素等を基準値以下に低減する必要がある。前述の特許文献1に記載された脱窒用硫黄資材を使用することで、排水DWに含まれるNOx-Nを除去して硝酸性窒素等を規制値以下に低減することができる。しかし、前述の下向流式または上向流式の砂ろ過装置の構造を転用すると、装置構成が複雑化して初期費用が増加するおそれがある。
【0046】
この課題を解決するために、支持砂利層および集散水装置の無い単純な槽に脱窒用硫黄資材102を投入し、資材層103の上部から被処理水PWを注入するための複数本の筒状物を、先端が槽の底部に達するように挿入し、筒状物の先端から処理対象液を流出させる手法も考えられる。この場合、筒状物の先端にストレナー状部材やメッシュ状部材を装着しても、脱窒用硫黄資材102の貫入を完全には防ぐことができず、筒状物の閉塞が発生する。
【0047】
これに対し、本実施形態の脱窒処理装置100は、前述のように、硫黄酸化脱窒細菌を表面に増殖させかつ脱窒用電子供与体としての硫黄を供給する脱窒用硫黄資材102と、その脱窒用硫黄資材102を堆積させる処理槽101と、を備えている。また、脱窒処理装置100は、処理槽101に堆積した脱窒用硫黄資材102によって形成される資材層103の内部にNOx-Nすなわち硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理水を注入する注水装置110を備えている。この注水装置110は、少なくとも一部が資材層103に埋設される可撓性チューブ111と、その可撓性チューブ111の内部へ被処理水PWを圧送するポンプ112とを備えている。そして、可撓性チューブ111は、その可撓性チューブ111の内部への被処理水PWの圧送時に拡張されて被処理水PWを資材層103へ放出する放水スリット111sを有している。
【0048】
このような構成により、本実施形態の脱窒処理装置100によれば、NOx-Nを含む被処理水PWをポンプ112によって可撓性チューブ111へ圧送することができる。その結果、可撓性チューブ111の内圧が上昇して放水スリット111sが拡張され、放水スリット111sから資材層103の内部へ被処理水PWが放出され、被処理水PWと粉末または顆粒状の脱窒用硫黄資材102とを十分に接触させることができる。このように、被処理水PWが脱窒用硫黄資材102と十分に接触することで、被処理水PWに含まれるNOx-Nが効率よく除去され、硝酸性窒素等が十分に低減された処理水TWとなって、処理槽101の上部に貯留される。
【0049】
また、資材層103が閉塞した場合には、たとえば、資材層103から可撓性チューブ111を抜き取り、資材層103を構成する脱窒用硫黄資材102を洗浄した後に、可撓性チューブ111を資材層103に埋設することができる。この際、たとえば、高圧洗浄ノズルを使用することで、資材層103に可撓性チューブ111を容易に埋設することができる。したがって、本実施形態の脱窒処理装置100によれば、上記従来の砂ろ過装置のような装置底部の集散水装置や支持砂利層などを設ける必要がなく、装置構成を簡略化することができる。
【0050】
また、可撓性チューブ111の放水スリット111sは、可撓性チューブ111の内部へ被処理水PWが圧送されて可撓性チューブ111の内圧が上昇することで、拡張されて被処理水PWを放出する。しかし、被処理水PWの圧送が停止されて可撓性チューブ111の内圧が低下すると、可撓性チューブ111の弾性によって放水スリット111sが閉じるように復元する。
【0051】
これにより、可撓性チューブ111の放水スリット111sに顆粒状または粉末状の脱窒用硫黄資材102が侵入することが防止され、放水スリット111sの閉塞が防止される。なお、可撓性チューブ111に放水スリット111sを設ける代わりに、可撓性チューブ111の先端にストレナーを取り付けたり、SUSメッシュで覆ったT字型の配管部材を取り付けたりすることが考えられる。しかし、このような構成では、ストレナーやSUSメッシュが脱窒用硫黄資材102によって目詰まりを生じて閉塞されたり、資材層103からの抜き取りや資材層103への再挿入時に破損したりする場合がある。
【0052】
また、本実施形態の脱窒処理装置100において、可撓性チューブ111は、その可撓性チューブ111の先端部の周方向に延びる複数の放水スリット111sを有している。
【0053】
この構成により、可撓性チューブ111の内部への被処理水PWの圧送時に、放水スリット111sから資材層103の内部へ被処理水PWを放射状に放出させ、脱窒用硫黄資材102による被処理水PWの処理効率を向上させることができる。また、可撓性チューブ111の内部への被処理水PWの圧送が停止されて可撓性チューブ111の内圧が低下したときに、可撓性チューブ111の弾性によって放水スリット111sを閉じやすくすることができる。
【0054】
また、本実施形態の脱窒処理装置100において、注水装置110は、可撓性チューブ111の先端に取り付けられる先鋭形状のプラグ114をさらに備えている。
【0055】
この構成により、たとえば、資材層103から可撓性チューブ111を抜き取って資材層103を洗浄した後に、資材層103に可撓性チューブ111を容易に挿入することが可能になる。より具体的には、可撓性チューブ111を介して先鋭形状のプラグ114に力を加えると、プラグ114の先端が資材層103に差し込まれ、プラグ114に続く可撓性チューブ111を資材層103に差し込むことができる。
【0056】
また、本実施形態の脱窒処理装置100において、注水装置110は、可撓性チューブ111の内部に収容されて可撓性チューブ111の資材層103への差し込みを可能にする棒状の剛性部材115をさらに備えている。
【0057】
この構成により、たとえば、資材層103から可撓性チューブ111を抜き取って資材層103を洗浄した後に、資材層103に可撓性チューブ111を容易に挿入することが可能になる。より具体的には、可撓性チューブ111の外部から可撓性チューブ111を介して可撓性チューブ111の内部の剛性部材115に力を加え、可撓性チューブ111を資材層103に差し込むことができる。
【0058】
また、本実施形態の脱窒処理装置100において、ポンプ112は、カスケードポンプである。
【0059】
この構成により、他の種類のポンプと比較して、ポンプ112を小型化しつつ、高い圧力を出力することができる。したがって、前処理施設10の膜ユニットから被処理水PWを吸引するポンプと、可撓性チューブ111へ被処理水PWを圧送するポンプを、一台のポンプ112で賄うことが可能になる。また、前処理施設10と脱窒処理装置100との間に被処理水PWを一時的に貯留する槽を設ける必要がなくなる。
【0060】
また、本実施形態の脱窒処理装置100は、被処理水PWが処理槽101に堆積した資材層103を通過することで脱窒されて処理槽101の上部に貯留される処理水TWを処理槽101の外部へ流出させる処理水流出部120をさらに備えている。この処理水流出部120は、導入管121と、導出管122と、遮蔽部材123とを備える。導入管121は、上下に延びて下端に処理水TWの入口121iを有する。導出管122は、導入管121の周壁に連結されて導入管121から処理槽101の外部へ処理水TWを流出させる。遮蔽部材123は、導入管121の入口121iに対向して入口121iの下方に間隙をあけて配置されるとともに、入口121iの外縁よりも外側に外縁を有する。
【0061】
このような構成により、脱窒用硫黄資材102が脱窒によって発生する窒素ガスによって舞い上がり処理水TWとともに処理槽101から流出するのを防止できる。より詳細には、可撓性チューブ111の放水スリット111sから処理槽101に堆積した資材層103の内部へ放出された被処理水PWは、資材層103を通過して処理水TWとなる。このとき、上方へ向かう処理水TWの流れや、資材層103を構成する脱窒用硫黄資材102の表面でNOx-Nが還元されて発生する窒素ガスの気泡とともに、脱窒用硫黄資材102が浮上して処理槽101から流出しやすくなる。
【0062】
しかし、処理槽101から処理水TWを流出させる処理水流出部120の導入管121の入口121iの下方には、入口121iに間隙をあけて対向して配置されるとともに、入口121iの外縁よりも外側に外縁を有する遮蔽部材123が配置されている。そのため、導入管121の入口121iへ向けて浮上する脱窒用硫黄資材102は、遮蔽部材123によって遮られて沈降するか、または、遮蔽部材123の底面に沿って導入管121の入口121iの外縁よりも外側へ移動してから浮上する。したがって、脱窒用硫黄資材102が処理水TWとともに導入管121の入口121iに侵入することが防止され、脱窒用硫黄資材102が処理槽101から流出するのを防止できる。
【0063】
また、図5に示す本実施形態の脱窒処理装置100の処理水流出部120の変形例において、遮蔽部材123の上面は、導入管121の入口121iと同心で上向きに凸の円錐状の傾斜面123aである。
【0064】
このような構成により、仮に処理水TWとともに脱窒用硫黄資材102が遮蔽部材123と包囲部124との間の隙間に入り込んだとしても、遮蔽部材123の上面に脱窒用硫黄資材102が堆積するのを防止できる。より具体的には、処理水TWとともに遮蔽部材123と包囲部124との間の隙間に入り込んだ脱窒用硫黄資材102が沈降して遮蔽部材123の上面に到達すると、堆積することなく傾斜面123aに沿って滑り落ちる。これにより、遮蔽部材123の上面に脱窒用硫黄資材102が堆積するのを防止できる。
【0065】
また、本実施形態の注水装置110は、硫黄酸化脱窒細菌を表面に増殖させかつ脱窒用電子供与体としての硫黄を供給する脱窒用硫黄資材102によって形成される資材層103の内部にNOx-Nすなわち硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理水PWを注入する装置である。注水装置110は、少なくとも一部が資材層103に埋設される可撓性チューブ111を備えている。可撓性チューブ111は、その可撓性チューブ111の内部への被処理水PWの圧送時に拡張されて被処理水PWを資材層103へ放出する放水スリット111sを有している。
【0066】
このような構成により、NOx-Nを含む被処理水PWが可撓性チューブ111へ圧送されて、可撓性チューブ111の内圧が上昇すると、放水スリット111sが拡張され、放水スリット111sから資材層103の内部へ被処理水PWが放出される。これにより、被処理水PWと粉末または顆粒状の脱窒用硫黄資材102とを十分に接触させ、被処理水PWに含まれるNOx-Nを効率よく除去することができ、排水規制項目である硝酸性窒素等が十分に低減された処理水TWが得られる。
【0067】
また、資材層103が閉塞した場合には、たとえば、資材層103から可撓性チューブ111を抜き取り、資材層103を構成する脱窒用硫黄資材102を洗浄した後に、可撓性チューブ111を資材層103に埋設することができる。この際、高圧洗浄ノズル使用することで、資材層103に可撓性チューブ111を容易に埋設することができる。したがって、本実施形態の注水装置110を用いることで、脱窒処理装置100に装置底部の集散水装置や支持砂利層などを設ける必要がなく、脱窒処理装置100の装置構成を簡略化することができる。
【0068】
また、可撓性チューブ111の放水スリット111sは、被処理水PWの圧送が停止されて可撓性チューブ111の内圧が低下すると、可撓性チューブ111の弾性によって放水スリット111sが閉じるように復元する。これにより、可撓性チューブ111の放水スリット111sに顆粒状または粉末状の脱窒用硫黄資材102が侵入することが防止され、放水スリット111sの閉塞が防止される。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、脱窒用硫黄資材102を使用してNOx-Nを含む被処理水PWを脱窒する場合に、上記従来の砂ろ過装置よりも装置構成の簡略化が可能な脱窒処理装置100および注水装置110を提供することができる。
【0070】
以上、図面を用いて本発明に係る脱窒処理装置および注水装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
101 処理槽
102 脱窒用硫黄資材
103 資材層
110 注水装置
111 可撓性チューブ
111s 放水スリット
112 ポンプ
114 プラグ
115 剛性部材
120 処理水流出部
121 導入管
121i 入口
122 導出管
123 遮蔽部材
123a 傾斜面
PW 被処理水
TW 処理水
図1
図2
図3
図4
図5