(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117963
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】車両用燈体
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20240823BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240823BHJP
【FI】
F21S43/20
F21W103:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024081
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山岡 靖
(57)【要約】
【課題】外部からの視認性や意匠性を向上させつつ、光源から出射される光を効果的に配光させて法規上求められる車幅方向外方への出射光を効率よく得ることができる車両用燈体を提供する。
【解決手段】車両用燈体1は、レンズ4と、レンズ4を介してレンズ本体10の外面10a側に光Bを出射する発光体6と、を備える。レンズ本体10の内面10bは、レンズカット領域ARを有し、レンズカット領域には、発光体6からレンズ4内に入射された光Bが光軸OP方向に沿って外方に出射されるように配光する少なくとも1つのレンズカット部16が形成されており、レンズカット領域の一部に形成された追加反射面18を有する。追加反射面18は、発光体6からレンズ4内に入射された光Bのうち、外面10aで内面反射された光Bを内面反射させ、光Bが光軸OP方向と交差する方向に沿って外方に出射されるように配向する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる車両用燈体において、
レンズと、
前記レンズの内面側に配置され、前記レンズを介して前記レンズの外面側に光を出射する光源と、
を備え、
前記レンズの前記内面は、レンズカット領域を有し、
前記レンズカット領域には、前記光源から前記レンズ内に入射された光が光軸方向に沿って外方に出射されるように配光する少なくとも1つのレンズカット部が形成されており、
前記レンズカット領域の一部に形成された追加反射面を有し、
前記追加反射面は、前記光源から前記レンズ内に入射された光のうち、前記外面で内面反射された光を内面反射させ、光が光軸方向と交差する方向に沿って外方に出射されるように配向する、
ことを特徴とする車両用燈体。
【請求項2】
前記光源を複数備え、
各前記光源に対応する複数の前記レンズカット領域を備え、
前記追加反射面は、車幅方向の最も外側に配置される前記レンズカット領域内において、前記光源に対して車幅方向の外側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用燈体。
【請求項3】
前記レンズカット領域は、
前記光源から前記レンズ内に入射された光が直接前記レンズの前記外面へと導かれる直射カット領域と、
前記光源から前記レンズ内に入射された光が一旦前記レンズカット部内で内面反射した後、前記レンズの前記外面へと導かれる反射カット領域と、
を有し、
少なくとも前記レンズカット部は前記反射カット領域に形成され、
前記反射カット領域に形成された前記レンズカット部のうちの1つは、前記直射カット領域と前記反射カット領域との境界で光軸方向に沿う境界面を有する境界カット部を含み、
前記境界カット部は、
前記光源から前記境界面を介して前記レンズ内に入射された光が直接前記レンズの前記外面へと導かれる直射範囲と、
前記光源から前記境界面を介して前記レンズ内に入射された光が一旦前記境界カット部内で内面反射した後、前記レンズの前記外面へと導かれる反射範囲と、
を有し、
前記境界面上での前記直射範囲をγとし、前記直射範囲γのうちの前記光源から最も離れた点をa1とし、前記直射範囲γのうちの前記光源から最も近い点をb1とし、前記点a1を介して前記レンズ内に入射された光が前記レンズの前記外面で内面反射する点をa2とし、前記点b1を介して前記レンズ内に入射された光が前記レンズの前記外面で内面反射する点をb2とし、前記点a2で内面反射された光が前記レンズの前記内面で再び内面反射する点をa3とし、前記点b2で内面反射された光が前記レンズの前記内面で再び内面反射する点をb3とし、前記点a1と前記点a2との間における光軸方向と平行な前記レンズの肉厚又は前記点b1と前記点b2との間における光軸方向と平行な前記レンズの肉厚をt1とし、前記点a2と前記点a3との間における光軸方向と平行な前記レンズの肉厚又は前記点b2と前記点b3との間における光軸方向と平行な前記レンズの肉厚をt2とし、前記点a1を介して入射された後の前記レンズ内での光の方向と光軸方向との間の角度をα2とし、前記点a2を介して入射された後の前記レンズ内での光の方向と光軸方向との間の角度をα3とし、前記点b1を介して入射された後の前記レンズ内での光の方向と光軸方向との間の角度をβ2とし、前記点b2を介して入射された後の前記レンズ内での光の方向と光軸方向との間の角度をβ3とし、光軸方向に直交する方向において、前記光源と前記点a1との間の距離をLa1とし、光軸方向に直交する方向において、前記光源と前記点a3との間の距離をLa3とし、光軸方向に直交する方向において、前記光源と前記点b1との間の距離をLb1とし、光軸方向に直交する方向において、前記光源と前記点b3との間の距離をLb3とし、光軸方向に直交する方向において、前記追加反射面の前記光源からの距離をLrとしたとき、
前記距離La3,Lb3,Lrは、
La3≒La1+t1×tanα2+t2×tanα3
Lb3≒Lb1+t1×tanβ2+t2×tanβ3
La3≦Lr≦Lb3
を満たす、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用燈体。
【請求項4】
前記レンズは、前記直射範囲γを介して前記レンズ内に入射された光が前記レンズの前記外面で内面反射し、さらに前記追加反射面で内面反射した後、前記レンズの前記外面を介して光軸方向に対して80°以上傾いた方向に光が出射されるように形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用燈体。
【請求項5】
前記点b3で内面反射された光が前記レンズの前記外面を介して出射される点をb4とし、
前記点b4を介して出射された光と光軸との間の角度をβ5とし、光軸方向と直交する方向と前記追加反射面との間の角度をθb3とし、前記点b4における前記外面と前記光軸と直交する方向との間の角度をθb4とし、前記レンズの屈折率をn’としたとき、
角度β5は、
β5≒80°
を満たし、
角度θb3は、
θb3≒[arcsin{sin(β5-θb4)×n’}-β3+θb4]/(-2)
を満たす、
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用燈体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用燈体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等に設けられた車両用燈体は、ハウジングと、ハウジング内に設けられ光源が実装された基板と、ハウジングの前面を覆うレンズと、を備える。光源から出射された光は、レンズを介して外方に出射される。レンズは、光源から入射された光が所定の方向に配向されるように形成されている。これによってレンズを介して出射された光の外部からの視認性や意匠性を向上させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-243734号公報
【特許文献2】特許第6381113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レンズ内に入射される光の角度によってはレンズで内面反射され、車両用燈体の外部からの視認性や意匠性に寄与しない光となってしまう場合があった。
また、法規上求められる車幅方向外方への出射光を効率よく得にくいという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、外部からの視認性や意匠性を向上させつつ、光源から出射される光を効果的に配光させて法規上求められる車幅方向外方への出射光を効率よく得ることができる車両用燈体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様では、車両用燈体は、車両に設けられる車両用燈体において、レンズと、前記レンズの内面側に配置され、前記レンズを介して前記レンズの外面側に光を出射する光源と、を備え、前記レンズの前記内面は、レンズカット領域を有し、前記レンズカット領域には、前記光源から前記レンズ内に入射された光が光軸方向に沿って外方に出射されるように配光する少なくとも1つのレンズカット部が形成されており、前記レンズカット領域の一部に形成された追加反射面を有し、前記追加反射面は、前記光源から前記レンズ内に入射された光のうち、前記外面で内面反射された光を内面反射させ、光が光軸方向と交差する方向に沿って外方に出射されるように配向する。
【0007】
このように構成することで、光源からの光の大部分をレンズの外面を介して光軸方向に沿って出射させることができる。車両用燈体の外部からの視認性や意匠性を向上できる。
また、レンズで内面反射された光を、追加反射面を利用して光軸方向と交差する方向に沿って出射させることができる。このため、車両用燈体は、簡素な構造で法規上求められる車幅方向の外方への出射光を効率よく得ることができる。
【0008】
本発明の第2態様では、第1態様の車両用燈体において、前記光源を複数備え、各前記光源に対応する複数の前記レンズカット領域を備え、前記追加反射面は、車幅方向の最も外側に配置される前記レンズカット領域内において、前記光源に対して車幅方向の外側に配置されている。
【0009】
このように構成することで、車両用燈体は、法規上求められる車幅方向の外方への出射光をより効率よく、かつ確実に得ることができる。
【0010】
本発明の第3態様では、第1態様又は第2態様の車両用燈体において、前記レンズカット領域は、前記光源から前記レンズ内に入射された光が直接前記レンズの前記外面へと導かれる直射カット領域と、前記光源から前記レンズ内に入射された光が一旦前記レンズカット部内で内面反射した後、前記レンズの前記外面へと導かれる反射カット領域と、を有し、少なくとも前記レンズカット部は前記反射カット領域に形成され、前記反射カット領域に形成された前記レンズカット部のうちの1つは、前記直射カット領域と前記反射カット領域との境界で光軸方向に沿う境界面を有する境界カット部を含み、前記境界カット部は、前記光源から前記境界面を介して前記レンズ内に入射された光が直接前記レンズの前記外面へと導かれる直射範囲と、前記光源から前記境界面を介して前記レンズ内に入射された光が一旦前記境界カット部内で内面反射した後、前記レンズの前記外面へと導かれる反射範囲と、を有し、前記境界面上での前記直射範囲をγとし、前記直射範囲γのうちの前記光源から最も離れた点をa1とし、前記直射範囲γのうちの前記光源から最も近い点をb1とし、前記点a1を介して前記レンズ内に入射された光が前記レンズの前記外面で内面反射する点をa2とし、前記点b1を介して前記レンズ内に入射された光が前記レンズの前記外面で内面反射する点をb2とし、前記点a2で内面反射された光が前記レンズの前記内面で再び内面反射する点をa3とし、前記点b2で内面反射された光が前記レンズの前記内面で再び内面反射する点をb3とし、前記点a1と前記点a2との間における光軸方向と平行な前記レンズの肉厚又は前記点b1と前記点b2との間における光軸方向と平行な前記レンズの肉厚をt1とし、前記点a2と前記点a3との間における光軸方向と平行な前記レンズの肉厚又は前記点b2と前記点b3との間における光軸方向と平行な前記レンズの肉厚をt2とし、前記点a1を介して入射された後の前記レンズ内での光の方向と光軸方向との間の角度をα2とし、前記点a2を介して入射された後の前記レンズ内での光の方向と光軸方向との間の角度をα3とし、前記点b1を介して入射された後の前記レンズ内での光の方向と光軸方向との間の角度をβ2とし、前記点b2を介して入射された後の前記レンズ内での光の方向と光軸方向との間の角度をβ3とし、光軸方向に直交する方向において、前記光源と前記点a1との間の距離をLa1とし、光軸方向に直交する方向において、前記光源と前記点a3との間の距離をLa3とし、光軸方向に直交する方向において、前記光源と前記点b1との間の距離をLb1とし、光軸方向に直交する方向において、前記光源と前記点b3との間の距離をLb3とし、光軸方向に直交する方向において、前記追加反射面の前記光源からの距離をLrとしたとき、前記距離La3,Lb3,Lrは、
La3≒La1+t1×tanα2+t2×tanα3
Lb3≒Lb1+t1×tanβ2+t2×tanβ3
La3≦Lr≦Lb3
を満たす。
【0011】
このように構成することで、適正な箇所に追加反射面を配置することができる。このため、車両用燈体は、法規上求められる車幅方向の外方への出射光をより効率よく、かつ確実に得ることができる。
【0012】
本発明の第4態様では、第3態様の車両用燈体において、前記レンズは、前記直射範囲γを介して前記レンズ内に入射された光が前記レンズの前記外面で内面反射し、さらに前記追加反射面で内面反射した後、前記レンズの前記外面を介して光軸方向に対して80°以上傾いた方向に光が出射されるように形成されている。
【0013】
このように構成することで、車両用燈体は、できる限り車幅方向の外方に光を出射させることができる。
【0014】
本発明の第5態様では、第4態様の車両用燈体において、前記点b3で内面反射された光が前記レンズの前記外面を介して出射される点をb4とし、前記点b4を介して出射された光と光軸との間の角度をβ5とし、光軸方向と直交する方向と前記追加反射面との間の角度をθb3とし、前記点b4における前記外面と前記光軸と直交する方向との間の角度をθb4とし、前記レンズの屈折率をn’としたとき、角度β5は、
β5≒80°
を満たし、角度θb3は、
θb3≒[arcsin{sin(β5-θb4)×n’}-β3+θb4]/(-2)
を満たす。
【0015】
このように構成することで、車幅方向の外方に、確実に光を出射させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両用燈体は、外部からの視認性や意匠性を向上させつつ、光源から出射される光を効果的に配光させて法規上求められる車幅方向外方への出射光を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態における車両用燈体の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態における車両用燈体の分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるレンズを後方からみた斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態における追加反射面の形成位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
<車両用燈体>
図1は、車両用燈体1の斜視図である。
図2は、車両用燈体1の分解斜視図である。
車両用燈体1は、例えば図示しない自動二輪車の車体側部のうち、前方や後方に設けられる、いわゆる方向指示器である。
図1、
図2に示すように、車両用燈体1は、ハウジング2と、ハウジング2内に収納された基板3と、ハウジング2に取り付けられたレンズ4と、を備える。
【0020】
車両用燈体1は、図示しない車体の前方に設けられる場合、レンズ4を前方に向けて設けられる。車両用燈体1は、図示しない車体の後方に設けられる場合、レンズ4を後方に向けて設けられる。本実施形態では、車両用燈体1は、車体の左側部のうち、前方に設けられたものとして説明する。図中、矢印FRは車両の前方、矢印UPは車両の上方、矢印LHは車両の左方を示す。車体の車幅方向と左右方向とは一致している。車両用燈体1における車幅方向の外方が、左方となる。
【0021】
<ハウジング>
ハウジング2は、例えば樹脂により形成されている。ハウジング2は、前部に開口部2aを有する箱状で、かつ車幅方向に長く形成されている。ハウジング2の内周面には、突き当て壁8が全周に渡って形成されている。突き当て壁8の前端8aは、開口部2aの近傍に位置している。突き当て壁8の前端8aは、ハウジング2の開口部2aを形成する前端2cよりも後方に位置している。
【0022】
ハウジング2における車幅方向の内側には、挿通孔2bが形成されている。図示しない車体に挿通孔2bを取りつけるようにして、車体にハウジング2が固定される。挿通孔2bには、複数のハーネス5が挿通される。ハウジング2内に収納された基板3は、ハーネス5を介して図示しないバッテリに電気的に接続されている。
【0023】
<基板>
基板3は、ハウジング2の形状に対応するように、車幅方向に長く形成されている。基板3の実装面は、前後方向に向いている。基板3の実装面のうち、前面3a、つまりハウジング2の開口部2a側の面に、複数(例えば、本実施形態では4つ)の発光体6が実装されている。発光体6は、請求項における光源の一例であり、例えばLED(Light Emitting Diode)等である。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな電気機器や素子を光源として利用することが可能である。
【0024】
基板3には、複数(例えば、本実施形態で3つ)のスルーホール7が形成されている。スルーホール7は、短手方向に並んで配置されている。また、スルーホール7は、2つの発光体6の間のうち、車幅方向内側寄りに配置されている。スルーホール7に、基板3の後面3b側からハーネス5が挿入され、基板3に接合されている。
発光体6は、前方に向けて光を出射するが、光そのものは放射状に広がる。以下の説明において、光軸OP(
図2の一点鎖線参照)とは、各発光体6の中心を通り、基板3の前面3aに対する法線方向と平行な方向をいうものとする。
【0025】
<レンズ>
図3は、レンズ4を後方からみた斜視図である。
図4は、
図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図2から
図4に示すように、レンズ4は、ハウジング2の開口部2aを閉塞するように例えば接着剤を用いて取り付けられている。レンズ4は、透過性の高い樹脂材料により形成されている。レンズ4は、例えばアクリル樹脂(PMMA)やポリカーボネート樹脂(PC)等により形成されている。
【0026】
レンズ4は、ハウジング2の開口部2aの形状に対応するように、車幅方向に長く形成されている。レンズ4は、僅かに前方に向かって膨出する板状のレンズ本体10を有している。レンズ本体10は、外面(前面)10aの大部分に形成され車幅方向に長い長方形状の平坦外面11と、平坦外面11の周囲から斜め後方に向かって延びる傾斜外面12と、を有する。平坦外面11と傾斜外面12とは、湾曲外面13を介して滑らかに連なっている。
【0027】
傾斜外面12における外周縁の形状は、ハウジング2の前端2cにおける外周縁の形状と同一である。傾斜外面12の外周縁には、後方に向かって突出する第1突き当て壁14が一体形成されている。第1突き当て壁14の後端14aは、ハウジング2の前端2cに突き当たる。
レンズ本体10の内面(後面)10bには、第1突き当て壁14よりもレンズ本体10の中央部寄りに、後方に向かって突出する第2突き当て壁15が全周に渡って一体成形されている。第2突き当て壁15は、第1突き当て壁14よりも後方に突出している。第2突き当て壁15の後端15aは、ハウジング2の突き当て壁8に突き当たる。このようにして、ハウジング2にレンズ4が例えば接着剤を用いて固定される。
【0028】
レンズ本体10の内面10bは、第2突き当て壁15に囲まれた領域が複数のレンズカット領域ARに振り分けられている。各レンズカット領域ARは、それぞれ発光体6と前後方向で対向する位置に配置されている。すなわち、レンズ本体10の内面10bには、例えば4つのレンズカット領域ARが形成されている。各レンズカット領域ARには、複数のレンズカット部16が形成されている。
【0029】
複数のレンズカット部16は、レンズ4に入射された光を光軸OP方向に沿って前方に出射するように配光するためのものである。
実施形態の説明において、「沿う」とは、必ずしも対象となる方向と平行ではないものも含む。「沿う」とは、対象となる方向にほぼ近い方向の範囲も含むものとする。この「沿う」方向について、以下の説明では必要に応じて対象となる方向に対する角度についても説明する。
【0030】
複数のレンズカット部16は、レンズ本体10の内面10bから後方に突出する凸条に形成されている。複数のレンズカット部16は、各発光体6の光軸OPを中心とする同心円状に形成されている。複数のレンズカット部16は、光軸OP側の内周面16aが光軸OP方向に沿うように形成されている。複数のレンズカット部16は、内周面16aとは反対側の外周面16bが前方に向かうにしたがって対応する光軸OPから離れるように傾斜形成されている。このため、複数のレンズカット部16は、後方(突出方向)に向かうにしたがって先細りに形成されている。複数のレンズカット部16の先端には、丸面取り部17が形成されている。
【0031】
このように形成されたレンズカット部16に、それぞれ対応する発光体6からの光Bが入射され、さらにレンズ4内を通って各外面11,12,13から光Bが出射される。この際、光Bの挙動は、以下の2通りとなる。すなわち、
(X1)レンズ4内に入射された光Bが、直接平坦外面11へと導かれる。
(X2)レンズ4内に入射された光Bが、一旦レンズカット部16内を通って外周面16bで内面反射した後、各外面11,12,13へと導かれる。
【0032】
上記(X1)は、光軸OPに近い領域からレンズ4内に光Bが入射される場合である。以下、このような領域を直射カット領域ADと称する。
上記(X2)は、直射カット領域ADよりも光軸OPから離間した領域からレンズ4内に光Bが入射される場合である。以下、このような領域を反射カット領域AHと称する。
直射カット領域ADに形成されたレンズカット部16の突出高さTDは、反射カット領域AHに形成されたレンズカット部16の突出高さTHよりも低い。
【0033】
ここで、反射カット領域AHに形成されたレンズカット部16のうち、最も直射カット領域AD寄りに形成されたレンズカット部16を境界カット部16Kと称する。境界カット部16Kは、直射カット領域ADと反射カット領域AHとの境界C上に内周面16aが配置されている。以下の説明では、境界カット部16Kの内周面16aを境界面16cと称する。
【0034】
境界面16cを介してレンズ4内に入射された光の挙動は、以下の2通りとなる。すなわち、
(Y1)境界面16cを介してレンズ4内に入射された光Bが、直接平坦外面11へと導かれる。
(Y2)境界面16cを介してレンズ4内に入射された光Bが、一旦レンズカット部16内を通って外周面16bで内面反射した後、平坦外面11へと導かれる。
上記(Y1)の範囲は、境界面16cのうち、境界カット部16Kの根本側である。以下、この範囲を直射範囲γと称する。
上記(Y2)の範囲は、境界面16cのうち、直射範囲γよりも境界カット部16Kの先端側である。
【0035】
直射範囲γを介してレンズ4内に入射された光Bは、平坦外面11に対する入射角度θが小さくなってしまう。このため、このような光Bは、平坦外面11を介して前方に出射されずに平坦外面11で内面反射してしまう(
図4における矢印Z1参照)。そこで、複数のレンズカット領域ARのうち、車幅方向の最も外側に配置されるレンズカット領域AR内に、追加反射面18を形成した。
【0036】
追加反射面18は、直射範囲γを介してレンズ4内に入射された光Bが平坦外面11で内面反射された後、さらに内面反射させて光Bが光軸OP方向と直交する方向に沿って車幅方向外側に出射されるように配光する役割を有する。光軸OP方向と直交する方向とは、完全に光軸OP方向に直交する方向のみだけではなく、この直交する方向に近似する方向も含む。光軸OP方向と直交する方向とは、具体的には、例えば光軸OPに対して約80°となる方向である。以下、追加反射面18の役割を精度よく実現するために、追加反射面18の形成位置について詳細に説明する。
【0037】
<追加反射面の形成位置について>
図5は、追加反射面18の形成位置を説明するための図である。
図5は、前述の
図4に対応している。
図6は、
図5のVI部拡大図である。
図7は、
図5のVII部拡大図である。
図8は、
図5のVIII部拡大図である。
図9は、
図5のIX部拡大図である。
図4から
図9に基づいて、追加反射面18の形成位置について説明する。
ここで、
図4から
図9に示す各記号について、以下のように定義する。
【0038】
n :大気の屈折率(本実施形態ではn≒1と考えている)
n’ :レンズ4の屈折率
Lr :追加反射面18の形成範囲
γ :直射範囲
θ1 :直射範囲γが形成される境界面16cと光軸OPとの間の角度
a1 :直射範囲γのうち、対応する発光体6から最も離れた点
b1 :直射範囲γのうち、対応する発光体6から最も近い点
a2 :点a1を介してレンズ4内に入射された光Bがレンズ本体10の外面10aで内面反射する点
b2 :点b1を介してレンズ4内に入射された光Bがレンズ本体10の外面10aで内面反射する点
a3 :点a2で内面反射された光Bがレンズ本体10の内面10bで再び内面反射する点
b3 :点b2で内面反射された光Bがレンズ本体10の内面10bで再び内面反射する点
a4 :点a3で内面反射された光Bがレンズ本体10の外面10aを介して出射される点
b4 :点b3で内面反射された光Bがレンズ本体10の外面10aを介して出射される点
t1 :点a1と点a2との間における光軸OP方向と平行なレンズ4の肉厚又は点b1と点b2との間における光軸OP方向と平行なレンズ4の肉厚
t2 :点a2と点a3との間における光軸OP方向と平行なレンズ4の肉厚又は点b2と点b3との間における光軸OP方向と平行なレンズ4の肉厚
【0039】
以下、点a1を介してレンズ4内に入射された光Bの挙動(
図5から
図9における光B1参照)に関する記号について定義する。
Fa :光軸OP方向において、発光体6と点a1との間の距離(焦点距離)
La1:光軸OP方向に直交する方向において、発光体6と点a1との間の距離
La2:光軸OP方向に直交する方向において、発光体6と点a2との間の距離
La3:光軸OP方向に直交する方向において、発光体6と点a3との間の距離
La4:光軸OP方向に直交する方向において、発光体6と点a4との間の距離
θa2:点a2におけるレンズ本体10の外面10aと光軸OPに直交する方向との間の角度
θa3:点a3におけるレンズ本体10の外面10aと光軸OPに直交する方向との間の角度
θa4:点a4におけるレンズ本体10の外面10aと光軸OPに直交する方向との間の角度
α1 :点a1に入射する以前の光Bと光軸OPとの間の角度
α2 :点a1を介して入射された以後の光Bと光軸OPとの間の角度
α3 :点a2で内面反射した以後の光Bと光軸OPとの間の角度
α4 :点a3で内面反射した以後の光Bと光軸OPとの間の角度
α5 :点a4を介して出射された光Bと光軸OPとの間の角度
【0040】
ここで、上記α1~α5の関係式は、以下のようになる。
すなわち、
図6に示すように、
α1=arctan(Fa/La)
n×sin(90-α1-θ1)=n’×sin(90-α2-θ1)
90-α2-θ1=arcsin{sin(90-α1-θ1)/n’}
α2=arcsin{sin(90-α1-θ1)/n’}-90+θ1
【0041】
図7に示すように、
α2-θa2=α3+θa2
α3=α2-2×θa2
図8に示すように、
α3-θa3=α4+θa3
α4-α3-2×θa3
図9に示すように、
n’×sin(α4-θa4)=n×sin(α5-θa4)
α5-θa4=arcsin{sin(α4-θa4)×n’}
α5=arcsin{sin(α4-θa4)×n’}+θa4
【0042】
上記より、La1~La4の関係式は、以下のようになる。
La2≒La1+t1×tanα2
La3≒La1+t1×tanα2+t2×tanα3 ・・・(1)
【0043】
続いて、点b1を介してレンズ4内に入射された光Bの挙動(
図5から
図9における光B2参照)に関する記号について定義する。
Fb :光軸OP方向において、発光体6と点b1との間の距離(焦点距離)
Lb1:光軸OP方向に直交する方向において、発光体6と点b1との間の距離
Lb2:光軸OP方向に直交する方向において、発光体6と点b2との間の距離
Lb3:光軸OP方向に直交する方向において、発光体6と点b3との間の距離
Lb4:光軸OP方向に直交する方向において、発光体6と点b4との間の距離
θb2:点b2におけるレンズ本体10の外面10aと光軸OPに直交する方向との間の角度
θb3:点b3におけるレンズ本体10の外面10aと光軸OPに直交する方向との間の角度
θb4:点b4におけるレンズ本体10の外面10aと光軸OPに直交する方向との間の角度
β1 :点b1に入射する以前の光Bと光軸OPとの間の角度
β2 :点b1を介して入射された以後の光Bと光軸OPとの間の角度
β3 :点b2で内面反射した以後の光Bと光軸OPとの間の角度
β4 :点b3で内面反射した以後の光Bと光軸OPとの間の角度
β5 :点b4を介して出射された光Bと光軸OPとの間の角度
【0044】
ここで、上記β1~β5の関係式は、以下のようになる。
すなわち、
図6に示すように、
β1=arctan(Fb/Lb)
n×sin(90-β1-θ1)=n’×sin(90-β2-θ1)
90-β2-θ1=arcsin{sin(90-β1-θ1)/n’}
β2=arcsin{sin(90-β1-θ1)/n’}-90+θ1
【0045】
図7に示すように、
β2-θb2=β3+θb2
β3=β2-2×θb2
図8に示すように、
β3-θb3=β4+θb3
β4-β3-2×θb3
図9に示すように、
n’×sin(β4-θb4)=n×sin(β5-θb4)
β5-θb4=arcsin{sin(β4-θb4)×n’}
β5=arcsin{sin(β4-θb4)×n’}+θb4
【0046】
ここで、追加反射面18の設定角となるθb3は、β5を用いた式で示すと、下記(2)式となる。β5=80°することが望ましい。このように設定することで、法規上求められる車幅方向の外方へ出射する光Bを得ることができるからである。追加反射面18の設定角となるθb3を、β5=80°に設定する角度とする場合、下記(3)式で示される。すなわち、
β5-θb4=arcsin[sin{(β3-2×θb3)-θb4}×n’]×n’
arcsin{sin(β5-θb4)×n’}=(β3-2×θb3)-θb4
θb3=[arcsin{sin(β5-θb4)×n’}-β3+θb4]/(-2) ・・・(2)
θb3=[arcsin{sin(80-θb4)×n’}-β3+θb4]/(-2) ・・・(3)
上記式(3)については、完全に満たす必要はなく、製造誤差による近似範囲も含むものとする。
【0047】
上記より、Lb1~Lb4の関係式は、以下のようになる。
Lb2≒Lb1+t1×tanβ2
Lb3≒Lb1+t1×tanβ2+t2×tanβ3 ・・・(4)
したがって、追加反射面18の形成範囲Lrは、
La3≦Lr≦Lb3 ・・・(5)
を満たす。
【0048】
このように、上述の実施形態では、レンズ本体10(レンズ4)の内面10bは、レンズカット領域ARを有する。レンズカット領域ARには、発光体6からレンズ4内に入射された光Bが光軸OP方向に沿って外方に出射されるように配光する複数のレンズカット部16が形成されている。レンズカット領域ARの一部には、追加反射面18が形成されている。追加反射面18は、発光体6からレンズ4内に入射された光のうち、外面10aで内面反射された光Bを内面反射させ、光Bが光軸方向と直交する方向に沿って外方に出射されるように配光する。
【0049】
このため、発光体6からの光Bの大部分をレンズ本体10(レンズ4)の外面10aを介して光軸OP方向に沿って出射させることができる。車両用燈体1の外部からの視認性や意匠性を向上できる。
また、レンズ4で内面反射された光Bを、追加反射面18を利用して光軸OP方向と直交する方向に沿って出射させることができる。このため、簡素な構造で法規上求められる車幅方向の外方への出射光を効率よく得ることができる。
【0050】
とりわけ、車両用燈体1は、発光体6を複数(本実施形態では4つ)備える。各発光体6に対応する複数のレンズカット領域ARを備える。追加反射面18は、車幅方向の最も外側に配置されるレンズカット領域ARにおいて、発光体6に対して車幅方向の外側に配置されている。このため、車両用燈体1は、法規上求められる車幅方向の外方への出射光をより効率よく、かつ確実に得ることができる。
【0051】
光軸OP方向に直交する方向において、発光体6と点a3との間の距離La3は、上記式(1)を満たす。光軸OP方向に直交する方向において、発光体6と点b3との間の距離Lb3は、上記式(4)を満たす。追加反射面18の形成範囲Lrは、上記式(5)を満たす。このため、適正な箇所に追加反射面18を配置することができる。よって、車両用燈体1は、法規上求められる車幅方向の外方への出射光をより効率よく、かつ確実に得ることができる。
【0052】
レンズ4は、直射範囲γを介してレンズ4内に入射された光Bがレンズ本体10(レンズ4)の外面10aで内面反射し、さらに追加反射面18で内面反射した後、レンズ本体10(レンズ4)の外面10aを介して光軸OP方向に対して80°以上傾いた方向に光Bが出射されるように形成されている。このため、車両用燈体1は、できる限り車幅方向の外方に光Bを出射させることができる。
【0053】
上述した通り、点b4を介して出射された光Bと光軸OPとの間の角度β5は、β5=80°を満たす。点b3におけるレンズ本体10の外面10aと光軸OPに直交する方向との間の角度θb3は、上記式(3)を満たす。このため、車両用燈体1は、車幅方向の外方に、確実に光Bを出射させることができる。
【0054】
車両用燈体1は、外部からの視認性や意匠性を向上できる。また、レンズ4で内面反射された光Bを、追加反射面18を利用して光軸OP方向と直交する方向に沿って出射させることができる。このため、簡素な構造で法規上求められる車幅方向の外方への出射光を効率よく得ることができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする」に貢献することが可能となる。
【0055】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、車両用燈体1は、例えば図示しない自動二輪車の車体側部のうち、前方や後方に設けられる、いわゆる方向指示器である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、四輪車等、さまざまな車両に用いられる燈体として、車両用燈体1の構成を採用することができる。
【0056】
上述の実施形態では、車両用燈体1は、例えば4つの発光体6を有し、発光体6に対応して4つのレンズカット領域ARが形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく発光体6の個数は1つ以上であればよい。レンズカット領域ARの個数も発光体6の個数に応じて変更してよい。
【0057】
上述の実施形態では、各レンズカット領域ARに形成されたレンズカット部16は、各発光体6の光軸OPを中心とする同心円状に形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、レンズカット部16は、光軸OP方向からみて四角形状、三角形状、六角形状、八角形状、楕円形状等、さまざまな形状とすることができる。特に、多角形状の場合は、偶数角形状であると、つまり、四角形状、六角形状、八角形状等であると、レンズカット部16が上下対称、及び左右対称の形状になるので好ましい。このような形状とすることで周囲に満遍なく出射光を拡散することができる。
【0058】
上述の実施形態では、各レンズカット領域ARには、複数のレンズカット部16が形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、各レンズカット領域ARに少なくとも1つのレンズカット部16が形成されていればよい。また、少なくとも反射カット領域AHにレンズカット部16が形成されていればよい。
【0059】
上述の実施形態では、追加反射面18は、直射範囲γを介してレンズ4内に入射された光Bが平坦外面11で内面反射された後、さらに内面反射させて光Bが光軸OP方向と直交する方向に沿って車幅方向外側に出射されるように配光する役割を有する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、追加反射面18は、光軸OP方向と交差する方向に沿って配光するものであればよい。
【符号の説明】
【0060】
1…車両用燈体、2…ハウジング、2a…開口部、2b…挿通孔、2c…前端、3…基板、3a…前面、3b…後面、4…レンズ、5…ハーネス、6…発光体、7…スルーホール、8…突き当て壁、8a…前端、10…レンズ本体、10a…外面、10b…内面、11…平坦外面、12…傾斜外面、13…湾曲外面、14…第1突き当て壁、14a…後端、15…第2突き当て壁、15a…後端、16…レンズカット部、16a…内周面、16b…外周面、16c…境界面、16K…境界カット部、17…丸面取り部、18…追加反射面、AD…直射カット領域、AH…反射カット領域、AR…レンズカット領域、B,B1,B2…光、C…境界、OP…光軸、TD,TH…突出高さ