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  • 特開-積層フィルム 図1
  • 特開-積層フィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117973
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20240823BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024096
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】松田 大樹
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AJ02A
4F100AK06B
4F100AK06C
4F100AK63A
4F100AK63B
4F100AK63C
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100DE01A
4F100JC00
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】ピーナッツ由来のバイオマス材料を用いつつ、一定の品質が保持された積層フィルムを提供する。
【解決手段】積層フィルム1は、ピーナッツの薄皮を粉砕した粉砕薄皮を含むコア層10と、コア層を挟むように配置された、粉砕薄皮を含有しない表層20とを備え、全体に占める粉砕薄皮の質量比が7.5%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピーナッツの薄皮を粉砕した粉砕薄皮を含むコア層と、
前記コア層を挟むように配置された、前記粉砕薄皮を含有しない2つの表層と、
を備え、
全体に占める前記粉砕薄皮の質量比が7.5%以下である、
積層フィルム。
【請求項2】
前記2つの表層の少なくとも一方の主要な樹脂成分が、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンである、
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記2つの表層が同一の樹脂からなる、
請求項1または2に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、より詳しくは、バイオマスを用いた積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食用に適さない古米等の廃棄物を利用したバイオマスプラスチックがある。例えば、ゴミ袋や食品包材等のフィルムに用いる樹脂材料としてバイオマスプラスチックを用いることで、廃棄物の再利用による環境負荷の低減、廃棄費用の低減が期待できる。
【0003】
特許文献1に記載の木材パルプを含むセルロース複合材料は、セルロース複合材料またはそれから製造された物品の機械的特性を調整するために、ピーナッツ殻を充填材として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-512591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のセルロース複合材料は、木材パルプに基づくセルロース複合材料であり、ピーナッツの殻は充填材として用いられているだけである。
ピーナッツの殻は硬く、粉砕に手間がかかるため、用途に限りがある。例えば、樹脂フィルムの多くは、厚さが100μm未満であり、粉砕したピーナッツの殻をバイオマスとして混合する場合、混合された殻の細片によりフィルムの厚さの均一性が損なわれる。これを避けるには、ピーナッツの殻を十分小さいサイズに粉砕する必要があり、手間がかかりすぎる。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、ピーナッツ由来のバイオマス材料を用いつつ、一定の品質が保持された積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ピーナッツの薄皮を粉砕した粉砕薄皮を含むコア層と、コア層を挟むように配置された、粉砕薄皮を含有しない表層とを備える積層フィルムである。
積層フィルム全体に占める粉砕薄皮の質量比は、7.5%以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ピーナッツ由来のバイオマス材料を用いつつ、一定の品質が保持された積層フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る積層フィルムの層構成を示す模式断面図である。
図2】同積層フィルムに用いるピーナッツ薄皮配合樹脂の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図1および図2を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る積層フィルム1の層構成を示す模式図である。
積層フィルム1は、コア層10と、コア層10を挟む二つの表層20とを備えている。
【0011】
コア層10は、ピーナッツ薄皮配合樹脂を含む。図2は、ピーナッツ薄皮配合樹脂100の模式断面図である。本実施形態に係るピーナッツ薄皮配合樹脂100は、ピーナッツの薄皮を粉砕した粉砕薄皮101と、ベースとなる熱可塑性樹脂102とを含む。熱可塑性樹脂102に用いる樹脂に特に制限は無くフィルム等に用いられる樹脂であればいずれの樹脂でもよい。例えば、熱可塑性樹脂102の好適な例として、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)並びにこれらの混合物等の各種ポリエチレン樹脂を挙げることができる。
粉砕薄皮101と熱可塑性樹脂102とを混練器に投入して混練することにより、ピーナッツ薄皮配合樹脂100のペレットを製造できる。
【0012】
本明細書において「ピーナッツ」とは、マメ科植物である落花生の種子を意味する。本実施形態に係る粉砕薄皮101は、ピーナッツ以外の薄皮を含んでもよい。例えば、大豆、インゲン豆又は小豆等の落花生以外のマメ科の各種種子の薄皮や、アーモンド、クルミ又はピスタチオ等の種実類の薄皮を粉砕したものが含まれてもよい。
【0013】
粉砕薄皮101は、配合する前処理として乾燥させるのが望ましい。粉砕薄皮101を乾燥させることで、粉砕薄皮101の含油率を減らすことができる。粉砕薄皮101の含油率を減らすことで、ピーナッツ薄皮配合樹脂100をフィルム等の製品に成形した際、粉砕薄皮101の油分が製品の表面から滲み出してくる現象(ブリード)を抑制できる。そのため、前処理として粉砕薄皮101を乾燥させることで、ブリードによる製品の外観又は触感の悪化を抑制できる。
粉砕薄皮101に係る前処理においては、ピーナッツの薄皮を粉砕した後に乾燥させてもよいし、ピーナッツの薄皮を乾燥させた後に粉砕してもよい。
【0014】
粉砕薄皮101の含油率は5%以下が望ましい。粉砕薄皮101の含油率を5%以下とすることで、ピーナッツ薄皮配合樹脂100において、ピーナッツ薄皮配合樹脂100に対する粉砕薄皮101の混練率を、例えば50%程度に高くできる。粉砕薄皮101の混練率を50%とすることで、より多くの粉砕薄皮101を配合でき、環境負荷およびピーナッツの薄皮の廃棄費用をより低減できるピーナッツ薄皮配合樹脂100を提供できる。粉砕薄皮101の混練率は20%以上50%以下が望ましく、40%以上50%以下がより望ましい。
【0015】
また、粉砕薄皮101は、平均粒径10μm以下が望ましい。ピーナッツの薄皮は、繊維が柔らかくかつ薄いため粉砕しやすく、樹脂に混練するバイオマス材料として優れている。粉砕薄皮101の平均粒径を10μm以下とすることで、ピーナッツ薄皮配合樹脂100を用いた樹脂層の厚さをさらに均一にしやすくなる。
【0016】
コア層10は、ピーナッツ薄皮配合樹脂100以外の樹脂を含んでもよい。石油から製造されたバージン樹脂をピーナッツ薄皮配合樹脂100に加えることにより、コア層における粉砕薄皮101の割合、ひいては積層フィルム1全体に占める粉砕薄皮101の質量比(以下、「バイオマス度」と称する。)を所望の値に調節できる。加える樹脂としては、上記熱可塑性樹脂102として例示したものに加え、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等も使用できる。すなわち、加える樹脂は、ピーナッツ薄皮配合樹脂100に含まれる熱可塑性樹脂102と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
表層20は、いずれも石油から製造されたバージン樹脂で形成されている。2つの表層20がコア層10の厚さ方向両側に位置してコア層10を挟んでいることにより、積層フィルム1においては、コア層10の大部分が表層20によって覆われている。これにより、積層フィルム1で形成された包装袋等の各種包装容器において、粉砕薄皮101を含むコア層10が内容物に触れることや、使用者がコア層10に直接触れる等の現象が抑制される。その結果、積層フィルム1を用いて安全性や衛生面で優れた包装容器を形成できる。
【0018】
表層20を形成するバージン樹脂として、コア層10に含まれる熱可塑性樹脂102と同様のものが使用できる。表層20を形成するバージン樹脂と熱可塑性樹脂102が同一であると、表層20とコア層10との密着性が高まり、積層フィルム1における層間剥離(デラミネーション)を抑制できる。
【0019】
積層フィルム1において、表層20にLDPEやLLDPEを用いると、熱融着層を設けるためのシーラントフィルムとして好適に積層フィルム1を使用できる。このとき、他の層と融着されるのは表層20であるため、コア層10は、必ずしもLDPEやLLDPEを含まなくてもよい。
【0020】
シーラントフィルムとして利用するためには、表層20の少なくとも一方がLDPEやLLDPEで形成されていればよい。表層20の両方をLDPEやLLDPEで形成することで、両面を熱融着可能なシーラントフィルムとすることができる。
【0021】
表層20に熱融着性を持たせない場合は、バージン樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアミドなども使用できる。熱融着性のない表層においては、接着剤等を用いた接合性を向上させるために、コロナ処理やプラズマ処理等の各種表面処理を施してもよい。
【0022】
コア層10と2つの表層20を備える本実施形態の積層フィルム1は、インフレーション法やキャスト法(Tダイ法)等により製造できる。これらの方法に共押出法を組み合わせることにより、積層フィルム1を構成する3つの層を同時に形成することができ、製造効率を向上できる。
【0023】
コア層10における粉砕薄皮101の比率を調節する場合は、ピーナッツ薄皮配合樹脂100のペレットに加えてバージン樹脂のペレットをコア層の押出し機に投入すればよい。
2つの表層20が同一の樹脂からなる構成の場合は、押出し機を2つのみ備える成膜装置に必要な材料を投入するだけで作製できる。このため、製造可能な成膜装置の範囲が広くなり、製造上の汎用性を高めやすい。
【0024】
本実施形態に係る積層フィルムについて、実験例を示しつつさらに説明する。
【0025】
乾燥および粉砕の前処理を施して含油率を0.06%、平均粒径を10μmとした粉砕薄皮(ピーナッツ薄皮のみ使用)と、LLDPEとを混練してバイオマス度20%のピーナッツ薄皮配合樹脂を得た。粉砕薄皮の平均粒径は、セイシン企業社製 LMS-2000e(メディアン径(d50))にて管理した。
このピーナッツ薄皮配合樹脂の比重を、JIS K7112に則って測定したところ、1.02であった。また、JIS K7210に則って測定したMFRは、27.6g/10分であった。
【0026】
上記ピーナッツ薄皮配合樹脂を用いて積層フィルムを作製した。表層はいずれもLDPEのバージン樹脂で形成し、各表層の厚さ15μm、コア層の厚さ30μmに設定した。インフレーション式の成膜装置で共押出にて、幅800mm、長さ1000mのフィルムを2巻き作製した。
【0027】
(実験例1)
上記ピーナッツ薄皮配合樹脂とバージンLLDPEとを質量比1:1で用いてコア層を作製した。実験例1に係る積層フィルムのバイオマス度は5%である。
(実験例2)
上記ピーナッツ薄皮配合樹脂のみを用いてコア層を作製した。実験例2に係る積層フィルムのバイオマス度は10%である。
【0028】
各実験例の積層フィルムについて、以下の項目を評価した。
・色
・ピーナッツ臭(あり、なし)
・ブリード(あり、なし)
・ピンホール(あり、なし)
・焦げ(あり、なし)
・シワ(あり、なし)
結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
色、ピーナッツ臭、およびブリードにおいて、実験例1と2との間に大きな差は認められなかった。いずれの例においても表層上にわずかなブリードを認めたが、使用には支障ないと考えられた。また、いずれの例においてもピンホールや焦げは認められず、良好な成膜性が確認できた。
しかし、実験例2では、コア層において、MD方向(成膜方向)に延びるシワが多く発生し、表層を通してはっきりと視認可能であった。さらに、実験例2では、コア層に気泡も多く発生しており、シワと合わせて実験例1に比して著しく外観が悪くなっていた。
【0031】
また、作製された積層フィルムの厚さは、いずれの例でも設定値(総厚60μm)を超えており、実験例2で特に顕著であった。厚くなっている部位において、粉砕薄皮の凝集が認められたが、包装容器の作製工程には支障はないと考えられた。
【0032】
実験例1および2の結果より、バイオマス度を5%以下とすることにより、ピーナッツ薄皮を含有する積層フィルムを、優れた外観で効率よく製造し、包装用途に供することができることが示された。発明者による他の検討を総合すると、積層フィルムのバイオマス度が7.5%以下であれば、包装用途に問題なく供することができると考えられる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態および実験例について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0034】
例えば、2つの表層の厚さは必ずしも同一である必要はなく、異なっていてもよい。
また、コア層に混合する樹脂や、表層を形成する樹脂は、上述したバージン樹脂には限られない。例えば、ピーナッツ薄皮以外のバイオマス由来の原料から製造されるバイオマスポリエチレン等であってもよい。これにより、積層フィルム全体に占めるバイオマス材料の比率をさらに高めることができる。
また、表層のコア層と接しない面に更に他の層を積層して多層化した積層フィルムとしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 積層フィルム
10 コア層
20 表層
100 ピーナッツ薄皮配合樹脂
101 粉砕薄皮
102 熱可塑性樹脂
図1
図2