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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117977
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】中間転写フィルム
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/17 20060101AFI20240823BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20240823BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240823BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20240823BHJP
   B41M 5/382 20060101ALN20240823BHJP
【FI】
B44C1/17 L
B41M5/52 300
B32B27/40
B41M5/52 400
B41M5/50 320
B41M5/50 420
B41M5/382 800
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024104
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笠谷 隆章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正和
(72)【発明者】
【氏名】米田 雄亮
【テーマコード(参考)】
2H111
3B005
4F100
【Fターム(参考)】
2H111AA26
2H111AB05
2H111CA03
2H111CA04
2H111CA05
2H111CA25
2H111CA41
3B005FB13
3B005FB23
3B005FB37
3B005FC01Z
3B005FC09Y
3B005FE04
3B005FE12
3B005FE13
3B005FE15
3B005FE16
3B005FE22
3B005FG01Y
3B005FG02Y
3B005FG04X
3B005FG09Y
4F100AJ11D
4F100AK01D
4F100AK07D
4F100AK42A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK69B
4F100AL07D
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EH46D
4F100JA04A
4F100JK02A
4F100JK08A
4F100JL14B
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】ゴム加硫成形条件下で、ゴム加硫成形品表面へ印刷を転写する中間転写フィルムで、従来よりも深い凹凸面への転写でも、印刷のヒビ割れが発生せず、転写後に保護層で保護された印刷を加硫成形品の凹凸面に確実に転写できる中間転写フィルムの提供。
【解決手段】ゴム加硫成形品表面へ加硫成形と同時に文字又は画像を転写する中間転写フィルムで、基材フィルムの一方の面上の離型層上に中間層を、中間層上に受像層を有し、基材フィルムの引張伸び、引張強さ、融点、及び特定条件で測定した降温結晶化温度が特定の値で、離型層は長鎖アルキルペンダント型樹脂とイソシアヌレート型とビウレット型のポリイソシアネートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであるポリイソシアネートを主成分とし、中間層の引張伸び、引張強さが特定の値であり、受像層は樹脂及び/又はワックスを主成分とする中間転写フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム加硫成形品表面へ加硫成形と同時に文字及び/又は画像を転写する中間転写フィルムであって、少なくとも基材フィルム、前記基材フィルムの一方の面上に設けられた離型層、前記離型層上に設けられた中間層、前記中間層上に設けられた受像層を有し、前記基材フィルムは25℃における長手方向および幅方向の、引張伸びが350~750%、引張強さが40~150MPaであり、示差走査熱量計で測定した融点が200℃以上であり、かつ、降温速度10℃/minにて測定した降温結晶化温度が170℃以上であり、前記離型層は長鎖アルキルペンダント型樹脂とイソシアヌレート型ポリイソシアネートとビウレット型ポリイソシアネートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであるポリイソシアネートを主成分とし、前記中間層の引張伸びが660~900%、引張強さが10~47MPaであり、前記受像層は樹脂及び/又はワックスを主成分とすることを特徴とする中間転写フィルム。
【請求項2】
前記基材フィルムが、膜厚15μm~50μmであるポリブチレンテレフタレートよりなることを特徴とする請求項1に記載の中間転写フィルム。
【請求項3】
前記受像層は、前記樹脂を受像層固形分中の10重量%~90重量%含有し、かつ、前記ワックスを受像層固形分中の10重量%~90重量%含有することを特徴とする請求項1又請求項2のいずれかに記載の中間転写フィルム。
【請求項4】
前記ゴム加硫成形品表面へ加硫成形と同時に転写する文字及び/又は画像が、サーマルプリンターによる出力手段により熱転写インクリボンを使用して形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の中間転写フィルム。
【請求項5】
前記ゴム加硫成形品表面へ加硫成形と同時に転写する文字及び/又は画像が、サーマルプリンターによる出力手段により熱転写インクリボンを使用して形成されることを特徴とする請求項3に記載の中間転写フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム加硫成形品表面へ加硫成形と同時に文字又は画像などの印刷を転写する中間転写フィルムに関する。特に、ゴム加流成形品表面の凹凸面へ、加硫成形と同時に文字又は画像などの印刷を転写する性能に優れる中間転写フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム加硫成形品として、例えば、タイミングベルト、Vベルト、平ベルト等の伝動ベルトが挙げられる。これらの伝動ベルトは、内周側のゴム製又は金属製の成形ドラムと外周側のゴム製又は金属製のジャケット間に、ベルト本体を形成するゴム系材料を含む材料を配置し、これらの材料を成形ドラムとジャケット間で加熱加圧してゴムを加硫することにより、製造されている。
【0003】
このように製造される伝動ベルトには、商品名、ロット番号、製造年月日等の文字や、製造メーカの社章などを背面に印刷した印刷付き伝動ベルトがある。このような印刷付き伝動ベルトに印刷を付与する方法としては、従来から、スクリーン印刷法により印刷を付着させた転写材を、ベルト背面に重ね合わせて加熱加圧した後、転写材の基材フィルムを剥離して印刷をベルト背面部材に転写する方法が用いられてきた。
【0004】
しかしながら、このようなスクリーン印刷では、印刷の内容毎に専用のスクリーンを用意する必要があり、スクリーンの製作までに時間と費用が掛かるという問題がある。また、スクリーン印刷で作成した転写材で、タイミングベルトなどの凹凸面へ印刷を転写するためには、高価なポリメチルペンテンフィルムや、より高価なポリテトラフルオロエチレンフィルムのようなフッ素樹脂フィルム基材使用しなければ、転写材が凹凸面に追従せず、十分な印刷品質を得ることが出来なかった。このような従来の問題点を解決する方法として、特許文献1で、マーク形成用転写シートが提案されている。
【0005】
特許文献1では、サーマルプリンターの出力手段によりマークが形成される熱可塑性基材フィルム上に、剥離可能に設けられたインク受容層を有する一体型マーク形成用転写シートであって、熱可塑性基材フィルムは、示差走査熱量計で測定した融点が200℃以上、降温速度10℃/minにて測定した降温結晶化温度が170℃以上であり、かつ25℃におけるフィルムの長手方向および幅方向の引張伸びが350~750%、引張強さが40~150MPaであるポリブチレンテレフタレートよりなる熱可塑性基材フィルムであるインク受容層一体型マーク形成用転写シート、すなわち熱転写印刷用中間転写フィルムが提案されている。特許文献1の熱転写印刷用中間転写フィルムでは、中間転写フィルムに上記の基材フィルムを使用することにより、ゴム加硫成形品のマーク形成面(印刷面)が平タイプのものだけでなく、凹凸形状であっても、高温・高圧・長時間のゴム加硫成形条件で、基材フィルムが貼りついたり、ちぎれたりすることなくスムーズに剥離でき、安価な基材フィルムを用いて、作業効率よく、表面保護層が付いた良好なマーク付きゴム加硫成形品を作製することができるようになった。
【0006】
しかしながら、特許文献1の中間転写フィルムでも、ゴム加硫成形品の印刷面の凹凸形状がより深い成形品に対応しようとすると、ゴム加硫成形面へ中間転写フィルムから転写された印刷にヒビ割れが生じるという問題があることが判明した。また、印刷のヒビ割れを改善するためには、印刷とともに転写され、印刷を保護する層である保護層を、より柔軟にすることが考えられる。しかしながら、単に保護層を柔軟な層とするだけでは、印刷と保護層間よりも、保護層と中間転写フィルムの基材フィルム間の接着力が大きくなって、中間転写フィルムからゴム加流成形面へ印刷を転写する際に、保護層が転写されずに、印刷の内部で剥離する所謂、凝集剥離が発生した。このような凝集剥離が発生すると、加硫成形品上の印刷は、保護層で覆われていないために堅牢性が非常に低く、印刷の一部が中間転写フィルム側に残っているために、印刷の判読が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-70233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、ゴム加硫成形品の印刷面が平面のものだけでなく、凹凸形状の面にも、高温・高圧・長時間のゴム加硫成形条件で、ゴム加硫成形品表面へ印刷を転写する中間転写フィルムにおいて、従来の加硫成形面よりも深い凹凸を有するゴムの加流成形面へ印刷を転写した場合であっても、印刷のヒビ割れが発生せず、転写後に保護層で保護された印刷を加硫成形品の凹凸面に確実に転写することができる中間転写フィルムの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明は、ゴム加硫成形品表面へ加硫成形と同時に文字及び/又は画像を転写する中間転写フィルムであって、少なくとも基材フィルム、前記基材フィルムの一方の面上に設けられた離型層、前記離型層上に設けられた中間層、前記中間層上に設けられた受像層を有し、前記基材フィルムは25℃における長手方向および幅方向の、引張伸びが350~750%、引張強さが40~150MPaであり、示差走査熱量計で測定した融点が200℃以上であり、かつ、降温速度10℃/minにて測定した降温結晶化温度が170℃以上であり、前記離型層は長鎖アルキルペンダント型樹脂とイソシアヌレート型ポリイソシアネートとビウレット型ポリイソシアネートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであるポリイソシアネートを主成分とし、前記中間層の引張伸びが660~900%、引張強さが10~47MPaであり、前記受像層は樹脂及び/又はワックスを主成分とすることを特徴とする中間転写フィルムである。
【0010】
第2発明は、前記基材フィルムが、膜厚15μm~50μmであるポリブチレンテレフタレートよりなることを特徴とする第1発明に記載の中間転写フィルムである。
【0011】
第3発明は、前記受像層は、前記樹脂を受像層固形分中の10重量%~90重量%含有し、かつ、前記ワックスを受像層固形分中の10重量%~90重量%含有することを特徴とする第1発明又は第2発明に記載の中間転写フィルムである。
【0012】
第4発明は、前記ゴム加硫成形品表面へ加硫成形と同時に転写する文字及び/又は画像が、サーマルプリンターによる出力手段により熱転写インクリボンを使用して形成されることを特徴とする第1発明又は第2発明のいずれかに記載の中間転写フィルムである。
【0013】
第5発明は、前記ゴム加硫成形品表面へ加硫成形と同時に転写する文字及び/又は画像が、サーマルプリンターによる出力手段により熱転写インクリボンを使用して形成されることを特徴とする第3発明に記載の中間転写フィルムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の中間転写フィルムでは、基材フィルムに加えて、印刷を受像した受像層とともに転写される中間層の引張伸びと引張強さも一定の範囲に限定することで、より深いゴム加硫成形品の凹凸面へ印刷を転写する場合であっても、転写後の印刷のヒビ割れが防止できるようになった。また、中間転写フィルムの中間層をアルキルペンダント型樹脂とイソシアヌレート型ポリイソシアネートとビウレット型ポリイソシアネートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであるポリイソシアネートを主成分とする離型層上に設けるとともに、受像層が樹脂及び/又はワックスを主成分とする層とすることにより、受像層上の印刷のみが加硫成形品表面へ転写されることを防いで、転写後に印刷を保護する受像層と中間層で覆われた印刷を確実に中間転写フィルムからゴム加流成形品へ転写できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の中間転写フィルムの層構成の例を示す図である。
図2】本発明の中間転写フィルムが使用される被転写体表面の凹凸形状の例を示す模式図である。
図3】本発明の中間転写フィルムに使用する熱転写インクリボンの層構成の例を示す図である。
図4】成形ドラム金型の凹凸形状の例を示す図である。
図5】一次転写として、熱転写インクリボンの色材転写層である印刷が本発明の中間転写フィルムへ転写された状態を示す模式図である。
図6】二次転写として、本発明の中間転写フィルムの受像層と中間層が印刷とともに、被転写体である加硫成形品に転写された状態を示す模式図である。
図7】中間転写フィルムの剥離評価に使用する伝動ベルト片を示す図である。
図8】中間転写フィルムの剥離評価方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の中間転写フィルムを、さらに詳しく説明する。
【0017】
〔中間転写フィルム〕
ゴム加硫成形品表面へ加硫成形と同時に文字及び/又は画像を転写する用途に使用される本発明の中間転写フィルムは、図1に示すように、少なくとも、熱可塑性フィルムからなる基材フィルム(20)の一方の面上に設けられた離型層(21)、離型層上に設けられた中間層(22)、中間層上に設けられた受像層(23)を有する構成からなる中間転写フィルムである。基材フィルム、離型層、中間層及び受像層は必須の構成要素であり、必要に応じて、前記基材フィルムの離型層を設けた面とは反対側の基材フィルム面上に背面層が設けられた構成よりなる中間転写フィルムである。
【0018】
(基材フィルム)
本発明に用いられる基材フィルムは、本発明の中間転写フィルムの受像層上への印刷(文字及び/又は画像)の形成及び、中間転写フィルムがゴム加硫成形品表面と重ねあわされ、前記印刷を含む転写層が加硫成形品表面に転写されるまでのプロセスにおいて、前記印刷を含む転写層を保持する保持性能が要求される。本発明に用いられる基材フィルムは、前記印刷を含む転写層が加硫成形品の表面に転写される加硫成形条件である高温高圧下でも、基材フィルムが切れたり、貼りついたり、溶融せずに、基材フィルムから印刷を含む転写層がスムーズに剥離されることが要求される。また、本発明の課題である、従来の加硫成形面よりも深い凹凸を有するゴムの加流成形面へ印刷を転写した場合であっても印刷のヒビ割れを発生させないために、本発明に用いられる基材フィルムは、より深い凹凸を有するゴムの加流成形面に追従する凹凸追従性を有する必要があり、この凹凸追従性を達成するための引張伸びと引張強さを有していなければならない。
【0019】
基材フィルムは、示差走査熱量計で融点が200℃以上、降温速度10℃/minにて測定した降温結晶化温度が170℃以上であるフィルムである。これらの条件を満足することにより、高温・高圧・長時間のゴム加硫成形条件においても、基材フィルムが切れることなくスムーズに剥離できる。
【0020】
さらに、本発明の基材フィルムは、25℃におけるフィルムの長手方向および幅方向の、引張伸びが350~750%、引張強さが40~150MPaである。これらの条件を満足することにより、中間転写フィルムから印刷を含む転写層を転写する加硫成形面の凹凸がより深い加硫成形品であるゴム加流成形面へ印刷を転写した場合であっても、後述する中間層に印刷を含む転写層のヒビ割れを防止する性能に優れる材料を使用すれば、ゴムの加流成形面へ転写した印刷にヒビ割れが発生しない。
【0021】
示差走査熱量計で融点が200℃以上、降温速度10℃/minにて測定した降温結晶化温度が170℃以上であり、25℃におけるフィルムの長手方向および幅方向の、引張伸びが350~750%、引張強さが40~150MPaである基材フィルムの材質としては、ポリブチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0022】
本発明の基材フィルムに使用されるポリブチレンテレフタレートフィルムは、ホモタイプポリブチレンテレフタレート樹脂よりなるフィルムのみならず、従来公知の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート共重合体樹脂よりなるフィルムであってもよい。また、前記要件を満たす範囲内で、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリ(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート)などの他のポリエステル類やポリカーボネート等とのブレンドからなるフィルムであってもよい。また、延伸、無延伸どちらのポリブチレンテレフタレートフィルムも使用可能であるが、無延伸のポリブチレンテレフタレートフィルムが好ましい。無延伸フィルムを使用することにより、中間転写フィルムから印刷を含む転写層を転写する加硫成形面の凹凸がより深い加硫成形品であっても、基材フィルムは加硫成形面の凹凸に沿って無理なく伸びて、加硫成形面の凹凸に確実に沿うことができ、基材フィルムに皺やヒビ割れが生じることがないので、後述する中間層に印刷を含む転写層のヒビ割れを防止する性能に優れる材料を使用すれば、ゴムの加流成形面へ転写した印刷にヒビ割れが発生しない。
【0023】
基材フィルムの厚みは、15μm以上50μm以下であることが好ましい。基材フィルムの厚みが15μmを下回ると、加硫時に基材フィルムの皺や破れが発生し易くなって、ゴムの加流成形面へ転写した印刷にヒビ割れが発生し易くなる。一方、基材フィルムの厚みが50μmを超える場合には、加硫時に基材フィルムが伸びにくくなり、基材フィルムの表面にある印刷を含む転写層は、基材フィルムと接触している箇所に比べ、基材フィルムから遠い箇所の方が引き伸ばされ、印刷を含む転写層が厚み方向で不均一に引き伸ばされる。印刷を含む転写層が厚み方向で不均一に引き伸ばされるので、印刷を含む転写層にヒビ割れが発生し易くなる。この結果、基材フィルムの厚みが50μmを超える場合にも、ゴムの加流成形面へ転写した印刷にヒビ割れが発生し易くなる。また、基材フィルムの厚みが50μmを超える場合には、中間転写フィルムが、被転写体の凹凸面に追従することができず、印刷の被転写体への転写が転写不良となるおそれもある。基材フィルムの加硫成形面の凹凸に沿って無理なく伸びて、加硫成形面の凹凸に確実に沿うことができ、基材フィルムに皺やヒビ割れが生じることがない性能を阻害しなければ、基材フィルムには、さらに必要に応じて、滑剤、アンチブロッキング剤、無機増量剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、結晶化抑制剤等の添加剤を加えることができる。
【0024】
前記融点、結晶化温度、引張伸び、引張強さは、下記条件で測定することができる。
【0025】
(1)融点
示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス(株)製TA7000シリーズ;DSC7000X)を用い、試料フィルム約5mgを20℃から270℃まで10℃/minの速度で昇温させた際に得られる融解ピークの頂点温度を融点とする。
【0026】
(2)結晶化温度
示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス(株)製TA7000シリーズ;DSC7000X)を用い、試料フィルム約5mgを20℃から270℃まで10℃/minの速度で昇温させたのち、降温速度10℃/minで20℃まで降温し、発熱ピークの温度を降温結晶化温度とする。
【0027】
(3)引張伸び、引張強さ
試験装置はクロスヘッド速度一定型精密万能試験機(島津製作所(株)製オートグラフAG-IS)を用いて、試験片が破断するまでの引張荷重を加え、その間の最大荷重及び破断時の引張伸びを求めた。尚、最大荷重を試験片の元の断面積で除した値を引張強さ(MPa)とする(試験片形状;短冊形、試験片幅10mm、チャック間距離80mm、標線間距離40mm、引張速度200mm/min)。測定は、いずれも25℃で、5回ずつ測定し、その平均値を用いる。
【0028】
(離型層)
本発明の中間転写フィルムは、基材フィルムと後述する中間層の間に必須の層として、離型層を有する。本発明の中間転写フィルムは、加硫成形と同時に加硫成形品の凹凸面へ、転写後に印刷の保護層となる受像層、中間層とともに印刷を転写することに用いられる。したがって、本発明の中間転写フィルムは、高温下での転写に用いられる。高温下の転写では、基材フィルムが柔らかくなることによって粘着性を帯び、基材フィルムから転写される受像層と中間層が、基材フィルムから剥離し難くなるため、高温下でも受像層と中間層が基材フィルムから確実に転写されるために、本発明の中間転写フィルムでは離型層が設けられる。離型層は、転写される層が基材フィルムから剥離する際に、基材フィルム側に残り、転写される受像層と中間層を剥離する層である。
【0029】
このような離型層に使用される一般的な離型剤には、シリコーン系やワックス系の離型剤等がある。シリコーン系の離型剤としては、付加型シリコーン、縮合型シリコーンなどが用いられる。シリコーン系の離型剤は、離型性、残留接着性、耐熱性などの特性が優れているが、高価であり、特に塗工、積層時に高温での熱処理が必要であるため、本発明に好適な基材フィルムであるポリブチレンテレフタレートフィルムのようなガラス転移点が低い材料に使用すると、離型層の塗工、積層時に基材フィルムが変形することがあるため、使用することができない。
【0030】
ワックス系の離型剤としては、カルナバワックス等の天然ワックスや、炭化水素ワックスなどの合成ワックスなどが用いられる。本発明の中間転写フィルムは加硫時の高温下での転写に使用されるが、このような高温下では、ワックス系の離型剤は完全に溶融して液状となる。液状となったワックスは、後述する中間層に浸透して、中間層と一体となる。離型層は、本来、転写時に中間層を剥離し、離型層自らは基材フィルム側に残る層であるが、ワックスである離型層が中間層に浸透して、離型層と中間層が一体となると、中間層が直接基材フィルムと接触する状態となり、中間層が基材フィルムから剥離することができなくなる。このため、ワックス系の離型剤を使用すると、中間転写フィルムから転写後に印刷を保護する中間層と後述する受像層が転写されず、受像層表面にある印刷だけが被転写体である加硫成形品に転写されることがある。このように、印刷だけが転写されると、印刷に十分な耐擦過性を付与することができず、ゴムベルトのような駆動部品では、他部品との接触などにより、印刷が磨り減って見えなくなるおそれがある。
【0031】
このように、本発明の離型層には、高温での熱処理を要することなく塗工、積層することができ、かつ、加硫時の高温においても、剥離力が上昇しない性質が求められる。
【0032】
本発明では、離型層の離型剤として、長鎖アルキルペンダント型樹脂とイソシアヌレート型ポリイソシアネートとビウレット型ポリイソシアネートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであるポリイソシアネートを使用することで、高温での熱処理を要することなく塗工、積層することができ、かつ、加硫時の高温においても剥離力が上昇しないことを見出した。すなわち、長鎖アルキルペンダント型樹脂とイソシアヌレート型ポリイソシアネートとビウレット型ポリイソシアネートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであるポリイソシアネートを主成分として使用すれば、離型層を基材フィルムに塗工、積層する際に基材フィルムにダメージを与えるおそれがなく、かつ、加硫による高温環境下でも、中間転写フィルムから被転写体への印刷の転写時に中間層と受像層が離型層から確実に剥離でき、被転写体上に中間層と受像層で保護された印刷を転写することができる。
【0033】
本発明の離型層に使用する長鎖アルキルペンダント型樹脂は特に限定されず、エチレン-ビニルアルコール共重合物と長鎖アルキルイソシアネートとの反応生成物である長鎖アルキルペンダント型ポリマー、ポリビニルアルコール共重合物とアルキルイソシアネートとの反応生成物である長鎖アルキルペンダント型ポリマー、長鎖アルキルエステルを有するアクリレートを重合させた長鎖アルキルペンダント型ポリマー、N─長鎖アルキルマレイミドの単独重合体、もしくはN─長鎖アルキルマレイミドと共重合しうる単量体との共重合体を主成分とする長鎖アルキルペンダント型ポリマー等が例示される。これらの中でも、耐熱性、離型性の点で、エチレン-ビニルアルコール共重合物とアルキルイソシアネートとの反応生成物である長鎖アルキルペンダント型ポリマー、又はポリビニルアルコール共重合物とアルキルイソシアネートとの反応生成物である長鎖アルキルペンダント型ポリマーが最も好ましい。本発明の離型層に使用する長鎖アルキルペンダント型ポリマーの重量平均分子量は100,000以上300,000以下が好ましく、120,000以上250,000以下がより好ましい。
【0034】
本発明の離型層に使用するエチレン-ビニルアルコール共重合物と長鎖アルキルイソシアネートとの反応生成物である長鎖アルキルペンダント型ポリマーの反応生成に使用するエチレン/ビニルアルコール共重合体は、従来公知の物質であり、そのエチレン含有率は90モル%以下、好ましくは20~60モル%である。また、その平均重合度は500~3000、好ましくは800~2500である。また、本発明の離型層に使用するポリビニルアルコール共重合物とアルキルイソシアネートとの反応生成物である長鎖アルキルペンダント型ポリマーの反応生成に使用するポリビニルアルコールは、従来公知の物質であり、その平均重合度は100~3000、好ましくは150~2000の範囲である。ポリビニルアルコールは、ポリビニルアセテートをケン化することにより得られるが、この場合、そのケン化度は、50%以上、好ましくは60~100%である。
【0035】
本発明の離型層に使用する長鎖アルキルペンダント型樹脂の反応生成に用いる長鎖アルキルイソシアネートは、一般式R-NCOで表わすことができる。この場合、式中のRは炭素数が12~30の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数が14から18の脂肪族炭化水素基がより好ましい。式中のRが示す脂肪族炭化水素基は必ずしも全てが飽和脂肪族炭化水素基である必要はないが、飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、式中のRが示す脂肪族炭化水素基は、分岐状のものを含んでいてもよいが、直鎖状が好ましい。すなわち、側鎖を構成する脂肪族炭化水素基は、直鎖アルキル基がより好ましい。
【0036】
離型層固形分中の長鎖アルキルペンダント型樹脂の含有量は、25重量%以上、75重量%以下が好ましく、40重量%以上、60重量%以下がより好ましい。離型層固形分中の長鎖アルキルペンダント型樹脂の含有量が25重量%未満になると、離型層の離型性が低下し、被転写体上への中間層と受像層の転写不良が発生し易くなる。一方、離型層固形分中の長鎖アルキルペンダント型樹脂の含有量が75重量%を超えると、離型層中に十分な量のポリイソシアネートを含有させることができず、被転写体上への中間層と受像層の転写時に離型層が柔らかくなって離型層が粘着性を帯び、この場合にも被転写体上への中間層と受像層の転写不良が発生し易くなる。
【0037】
本発明の中間転写フィルムは、加硫成形と同時に加硫成形品の凹凸面へ、受像層、中間層とともに印刷を転写する用途に用いられ、印刷を転写した後には、印刷の転写元である中間転写フィルムの基材フィルムと離型層も加硫成形品に貼り付いた状態となる。加硫成形後に加硫成形品から中間転写フィルムの基材フィルムと離型層を引き剥がす必要があるが、本発明の中間転写フィルムは、より深い凹凸を有するゴムの加流成形面への印刷であっても、印刷のヒビ割れが発生せず、転写後に保護層で保護された印刷を加硫成形品の凹凸面に確実に転写することを目的とするものであるから、中間転写フィルムの基材フィルムには比較的柔軟性がある、伸び易い材料が使用される。このような比較的柔軟性があり、伸びやすい材料の基材フィルムは、張力を加えることによって破断し易いため、加硫後に加硫成形品から中間転写フィルムの離型層と基材フィルムを引き剥がす剥離力が大きくなると、中間転写フィルムの基材フィルムが伸びて、破れるおそれがある。このため、本発明の中間転写フィルムを加硫成形後に加硫成形品から引き剥がす剥離力は、1.50N/20mm未満が好ましく、0.30N/20mm未満がより好ましい。剥離力が1.50N/20mmを超えると、加硫成形後に加硫成形品から本発明の中間転写フィルムを剥がす際に、中間転写フィルムの基材フィルムが破れ易くなり、印刷作業の効率が非常に低下する。
【0038】
ゴムベルト表面の凹部形状が、図2に示す凹部の最大深さが4mm以下であり、凹部の最大深さを図2に示す凹部の最大幅で割った値が0.8以下で、かつ、図2に示す凹形状の底部の角部が、半径0.5mm以上の円弧、又はC0.5mm以上の面取りであれば、本発明の中間転写フィルムを使用して、ゴムベルトの凹凸面に良好な印刷を転写することができる。すなわち、この凹部形状が連続して等ピッチで設けられたゴムベルトであっても、本発明の中間転写フィルムは、被転写体であるゴムベルトの凹部形状に追従することができ、加硫成形と同時に、受像層上に設けた印刷を、ヒビ割れが生じることなく、ゴム成形品(ベルト)表面の凹凸面へ受像層及び中間層とともに転写することができる。このため、本発明の中間転写フィルムは、このような表面に凹部が連続して設けられた凹凸が表面にある被転写体に対する印刷の転写に用いられても、加硫成形後に加硫成形品から中間転写フィルムの基材フィルムと離型層を容易に引き剥がせることが好ましい。
【0039】
本発明の中間転写フィルムでは、離型層固形分中の長鎖アルキルペンダント型樹脂の含有量を、25重量%以上、75重量%以下とするとともに、下記するポリイソシアネートの離型層固形分中の含有量を25重量%以上、75重量%以下とすることにより、このような凹凸が表面にある被転写体である加硫成形品から、加硫成形後に中間転写フィルムの基材フィルムと離型層を引き剥がす場合であっても、剥離力を1.50N/20mm未満とすることができる。
【0040】
(中間転写フィルムの加硫後剥離力評価)
本発明の加硫後の加硫成形品からの中間転写フィルムの離型層と基材フィルムを剥離する剥離力は、次の方法で測定することができる。本発明の中間転写フィルムを用いて印刷を転写した被転写体(伝動ベルト)から、中間転写フィルムが貼りついた状態のままで、図7に示す伝動ベルト片を切り出し、引張試験機を用いて本発明の中間転写フィルムを図8に示すようにして、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minで剥離し、中間転写フィルムの加硫後剥離力(mN/20mm)を測定する。なお、使用する被転写体(伝動ベルト片)は、加硫後24時間以上経過したものを使用し、剥離力測定は、常温常湿環境(23±2℃、50±5%RH)で実施する。
【0041】
本発明の離型層に使用するポリイソシアネートは、イソシアヌレート型ポリイソシアネート又はビウレット型ポリイソシアネートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであるポリイソシアネートである。本発明のポリイソシアネートを構成する構成単位であるポリイソシアネートは特に限定されず、環化三量化反応によってイソシアヌレート型イソシアネートを、水又は三級アルコールとの反応によってビウレット型イソシアネートを誘導することができるポリイソシアネートであれば、任意のポリイソシアネートが使用可能である。このようなポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(MDI)、水素化メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタン-4,4’ジイソシアネート(水添MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、粗ジフェニルメタンジイソシアネート(粗MDI)、液状ジフェニルメタンジイソシアネート(液状MDI)等を例示することができる。離型層固形分中のポリイソシアネート含有量は、25重量%以上、75重量%以下が好ましい。離型層固形分中のポリイソシアネートの含有量が25重量%未満になると、被転写体上への中間層と受像層の転写時に離型層が柔らかくなって離型層が粘着性を帯び、被転写体上への中間層と受像層の転写不良が発生するおそれがある。一方、離型層固形分中のポリイソシアネートの含有量が75重量%を超えると、離型層固形分中の長鎖アルキルペンダント型樹脂の含有量が少なすぎて離型層の離型性が低下し、この場合にも被転写体上への中間層と受像層の転写不良が発生するおそれがある。上記のように、ビウレット型ポリイソシアネート、イソシアヌレート型ポリイソシアネートのどちらを用いても、本発明の離型層に要求される離型性能を発揮することができるが、より好ましくは、イソシアヌレート型ポリイソシアネートである。イソシアヌレート型ポリイソシアネートを使用することにより、離型層の離型性が非常に良好となる。離型層にポリイソシアネートとして、イソシアヌレート型ポリイソシアネートのみを使用すれば、離型層固形分中の長鎖アルキルペンダント型樹脂の含有量を、40重量%以上、60重量%以下とするとともに、ポリイソシアネートの離型層固形分中の含有量を40重量%以上、60重量%以下とすることにより、上記のような凹凸が表面にある被転写体である加硫成形品から、加硫成形後に中間転写フィルムの基材フィルムと離型層を引き剥がす場合であっても、剥離力を、0.30N/20mm未満とすることができる。
【0042】
本発明の離型層の厚みは、0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましい。離型層の厚みが0.05μmを下回ると、離型層の中間層に対する保持力が増加し、転写時に中間層及び受像層が剥離できなくなる。一方、離型層の厚みが1.0μmを超えると、転写時に離型層が部分的に転写されて、被転写体上に転写された印刷の表面が不均一となり、印刷表面の微細な凹凸によって印刷表面の見た目が悪くなる。
【0043】
離型層が、後述する中間層を剥離する性能を阻害しない範囲であれば、離型層に粒子や添加剤を含有してもよい。離型層に添加する添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、粘着付与剤などが挙げられる。
【0044】
離型層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、基材上に塗工して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0045】
(中間層)
本発明の中間転写フィルムは、基材フィルム上に設けられた離型層上に必須の層として、中間層を有する。中間層は、一次転写として後述する受像層上に形成される印刷を、二次転写としてゴムの加硫成形と同時にゴムの加硫成形面に転写するために使用される層であり、自らもゴムの加硫成形面に転写され、転写後の印刷を保護する層である。
【0046】
このように、印刷とともに転写されて、転写後の印刷の保護層となるので、転写後の印刷が外部から目視可能となるように、中間層には、無色であることと透明性が要求される。また、本発明は、従来の加硫成形面よりも深い凹凸を有するゴムの加流成形面へ印刷を転写した場合であっても、印刷のヒビ割れが発生しないことを課題とする中間転写フィルムに関する発明であるから、中間層も転写後にヒビ割れが発生しないことが要求される。転写後の中間層にヒビ割れが発生しないようにするためには、中間層の引張伸びが660~900%、引張強さが、10~47MPaであることが要求される。中間層の引張伸びが660%を下回ると、中間層が伸びにくくなるため、加硫成形品への転写時に中間層にヒビ割れが生じやすくなる。一方、中間層の引張伸びが900%を超えると、柔らかすぎて中間層にキズが入り易くなるとともに、転写時に中間層が粘着性を帯びて、離型層に粘着し、このために離型層の離型性が大幅に低下する。引張強さが10MPaを下回ると、加硫成形面への転写時に中間層が破れ易く、転写後の中間層のヒビ割れが生じ易くなる。一方、47MPaを超えると、中間層が伸びにくくなるために加硫成形品への転写時に中間層にヒビ割れが生じやすくなる。
【0047】
中間層に使用する材料は、上記の引張伸びと引張強さを満足し、無色で透明性を有し、被転写体の加硫成形時に離型層から転写されて、転写後に印刷の保護層として機能するものであれば、任意の材料が使用可能である。このような性質を有する材料としては、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーなどが好ましく、これらの中でも、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーを用いると、中間層が離型層の離型性に影響することがないが、スチレン・ブタジエン熱可塑性エラストマー等を中間層の材料として使用すると、転写時に中間層が粘着性を帯びて離型層に粘着して、離型層の離型性が低下することがある。離型層の離型性が低下すると、中間層の一部が転写されないことがある。中間層の一部が転写されないと、転写された印刷を保護する性能が低下するので、被転写体上に印刷が劣化し易くなるが、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーを用いると、離型層の離型性が低下することがないので、被転写体上の印刷が劣化し易くなることはない。中間層の厚みは、1μm以上5μm以下であることが好ましい。中間層の厚みが1μmを下回ると加硫成形品上に転写後の印刷の保護層としての強度が不足し、ヒビ割れが生じ易くなる。一方、5μmを超える場合にも、加硫成形品への転写時に中間層のヒビ割れが生じ易くなる。中間層は加硫成形時に生じる熱により柔軟となって、加硫成形品の形状に添うように引き伸ばされる。しかしながら、中間層の厚みが5μmを超えると、加硫成形時に生じる熱では中間層が十分に柔軟になることができず、加硫成形品に添うように引き伸ばされる際に、中間層にヒビ割れが生じ易くなる。また、中間層の厚みが、5μmを超えても何らの性能の向上がないため、無駄である。
【0048】
中間層材料の引張伸び、引張強さは、JIS K6251に準拠し、JIS K6250の8に準拠して作製したダンベル状3号形試験片を用いて測定することができる。各種基材シートの製造方法として知られている公知の方法で基材シートを作製し、基材シートから所定のダンベル状試験片打抜き刃により打ち抜いて、ダンベル状3号形試験片を作製する。基材シートの作製方法は、例えば、樹脂材料をペレット化し、電熱プレスを用いて、加熱プレスを行う方法や、原料樹脂の分散液ないし溶液を離型処理した基材上に塗布、乾燥してシートを剥離して作製する方法や、原料樹脂を押出成形、カレンダー成形等によりシート状に成形する方法等が挙げられる。引張試験装置はJIS K6251に準拠した装置を用いて、引張速度200mm/minで、試験片が破断するまでの引張荷重を加え、その間の最大荷重及び破断時の引張伸びを求める。尚、最大荷重を試験片の元の断面積で除した値を引張強さ(MPa)とし、試験片の破断時の長さから元の試験片の長さを引いた値を、もとの試験片の長さで除した値の100倍を引張伸び(%)とする。測定は、いずれも25℃で、5回ずつ測定し、その平均値を用いる。
【0049】
中間層が被転写体である加硫成形品へ転写された印刷を保護する性能を阻害しない範囲、及び中間層が転写後にヒビ割れを生じない性能を阻害しない範囲、その他中間層に要求される性能を阻害しない範囲であれば、中間層に粒子や添加剤を含有してもよい。中間層に添加する添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、粘着付与剤などが挙げられる。
【0050】
中間層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法、リップコート法、ダイヘッドコート法等の公知の手段により、離型層上に塗工して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0051】
(受像層)
受像層は、一次転写として、熱転写プリンター、インクジェットプリンター等によって形成される印刷を受像するとともに、二次転写としてゴムの加硫成形と同時にゴムの加硫成形面に印刷を転写する際には、中間層と印刷を接着した状態のままで、これらの層とともに加硫成形面に転写される層である。図5に示すように、一次転写により、中間転写フィルムの受像層(23)上に熱転写インクリボンの色材転写層(11)である印刷が積層される。色材転写層(11)の受像層(23)への転写性を向上するために熱転写インクリボンの色材転写層(11)上に接着層(13)が設けられている場合には、接着層(13)が色材転写層(11)とともに、一次転写により、中間転写フィルムの受像層(23)上に積層される。また、図6に示すように、二次転写により、中間転写フィルム上の印刷(11)とともに中間転写フィルムの受像層(23)と中間層(22)が被転写体である加硫成形品(3)に転写されて、受像層(23)と中間層(22)が印刷(11)の保護層となる。このように、受像層は、印刷とともに転写されて、転写後の印刷の保護層となるので、転写後の印刷が外部から目視可能となるように、受像層には、無色であることと透明性が要求される。
【0052】
受像層を構成する材料は、加熱時に接着性を有し、熱転写プリンター、インクジェットプリンター等によって形成される印刷を受像する性能を有する材料であれば、特に限定されず、任意の熱可塑性樹脂、熱溶融性ないし熱軟化性のワックス等が使用可能であるが、熱可塑性樹脂とワックスの両方を含有することが好ましい。熱可塑性樹脂とワックスの両方を含有することにより、被転写体への転写後の受像層の透明性が確保できる。また、加硫成形品との接着性の観点から、熱可塑性樹脂は、加硫成形品が含有する熱可塑性樹脂と主鎖が同じ熱可塑性樹脂が好ましい。前記ワックスとしては、天然ワックス、石油系ワックス、合成ワックスなどから任意のものが使用可能である。これらのワックスは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
受像層に含有する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、シンジオタクチック-1、2ポリブタジエン(RB)等の熱可塑性エラストマーが例示され、ワックスとしては、カルナバワックス等の天然ワックス、炭化水素ワックス等の合成ワックスが例示される。受像層固形分中の熱可塑性樹脂の含有量は、10重量%以上90重量%以下が好ましい。受像層固形分中の熱可塑性樹脂の含有量が10重量%を下回ると、転写時の受像層の接着性が十分ではないために、被転写体への転写不良が発生し易くなる。一方、受像層固形分中の熱可塑性樹脂の含有量が、90重量%を超えると、受像層が硬くなって、被転写体表面の凹凸に追従することができずに、被転写体への転写不良が発生し易くなる。
【0054】
また、受像層固形分中のワックスの含有量は、10重量%以上90重量%以下が好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が10重量%を下回ると、受像層が硬くなって、被転写体表面の凹凸に追従することができずに、被転写体への転写不良が発生し易くなる。一方熱可塑性樹脂の含有量が90重量%を超えると、転写時の受像層の接着性が十分ではないために、被転写体への転写不良が発生し易くなる。
【0055】
受像層の厚みは、0.5μm以上4.0μm以下が好ましい。受像層の厚みが0.5μm未満になると、被転写体である加硫成形品に対する十分な接着力が得られない。また、受像層の厚みが4.0μmを超えると、熱可塑性樹脂の絶対量が多くなり過ぎる。加硫時に受像層のワックス成分は被転写体に浸透するが、熱可塑性樹脂成分は被転写体へ浸透せずに、被転写体と中間層間に残る。このため、受像層の熱可塑性樹脂の絶対量が多くなると、加硫後に、熱可塑性樹脂成分の含有割合が加硫前よりも多く、かつ、厚い受像層成分が中間層と被転写体間に残る。このような熱可塑性樹脂成分の含有割合が多く、かつ厚い層は、脆く割れやすいため、受像層の厚みが4.0μmを超えると、転写後の受像層と被転写体が剥離し易くなる。
【0056】
受像層が熱転写プリンター、インクジェットプリンター等によって印刷を受像する性能や、受像層が被転写体である加硫成形品に対して接着する性能を阻害しない範囲であり、かつ、受像層の透明性が低下して、被転写体上に転写せれた印刷が見え難くなることが無ければ、受像層に粒子や添加剤を含有してもよい。受像層に添加する添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、粘着付与剤などが挙げられる。
【0057】
受像層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法、リップコート法、ダイヘッドコート法等の公知の手段により、中間層上に塗工して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0058】
(背面層)
本発明の中間転写フィルムでは、受像層を設けた面とは反対側の基材フィルム面に背面層を設けることが好ましい。中間転写フィルムを取り扱い易くするには、中間転写フィルムをロール状に巻き回したものとすることが好ましいが、中間転写フィルムをロール状に巻き回した状態にすると、前記受像層が中間転写フィルムの反対面と接触した状態となる。前記のように、受像層は転写によって被転写体と接着する層であるため、受像層は接着性を有している。このため、中間転写フィルムを外径が大きなロール状に巻き取ったときのように、重ねられた中間転写フィルム同士が強く圧接される状態では、受像層が中間転写フィルムに反対面に貼りつくことがある。受像層が中間転写フィルムの反対面に貼りつくと、ロールから中間転写フィルムを繰り出した際に、下層から受像層及び中間層が剥がれる所謂裏移りが発生することがある。このように受像層及び中間層が剥がれると、熱転写プリンター、インクジェットプリンター等によって印刷を中間転写フィルム上に印字する時に、受像層及び中間層が無い状態となって、中間転写フィルムに受像層及び中間層を設けた効果が得られなくなり、中間転写フィルムの性能が低下することがある。このため、本発明の中間転写フィルムは、背面層を設けることが好ましいが、上記のように、大外径のロール状に巻き取る等の中間転写フィルム同士が強く圧接される状態で使用することがなければ、必ずしも背面層を設ける必要はない。
【0059】
一方、本発明の中間転写フィルムへ印字する際には、インクジェットプリンターや熱転写プリンター内において、中間転写フィルムはロールなどと接触することによって搬送される。例えば、熱転写プリンターでは、プラテンロールが回転して、プラテンロールと中間転写フィルム背面層の摩擦により、中間転写フィルムがプリンターから排出される。この際、中間転写フィルムの背面層がプリンターのプラテンロールと接触して、プラテンロールが回転することによって、中間転写フィルムが搬送される。このため、中間転写フィルムの背面層は、受像層との貼りつきを防止する性能に加えて、プラテンロールの回転によって滑ることなく排出される性能を合わせ持つ層でなければならない。したがって、背面層は単に滑性面であれば良いのではなく、プラテンロール等のプリンターの排出機構に対しては、その回転により排出されるだけの摩擦力を発生する面でなければならない。
【0060】
背面層が、このような性能を合わせ持つためには、背面層の主成分のバインダーに加えて、滑性を有するバインダー材料と粒子とを含有することが好ましい。滑性を有するバインダー材料としては、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、またはその混合物が好ましい。背面層の主成分のバインダーは、前記滑性を有するバインダー材料との相溶性を有するとともに、背面層の滑性を阻害することのない樹脂であれば、制限なく使用することができる。このように、背面層のバインダーに前記滑性を有するバインダー材料を加えることにより、受像層との貼りつきを防止することができる。また、このバインダーに前記粒子を含有させることにより、背面層表面から突出する粒子がプラテンロール等の排出機構との摩擦力を発生させるので、プラテンロール等の排出機構により中間転写フィルムが確実にプリンターから排出される。背面層に含有させる粒子としては任意の粒子が使用可能である。
【0061】
本発明の背面層の厚み(乾燥後厚み、以下同様)は、0.05~ 2.0μmが好ましい。背面層の厚みが0.05μm未満では、前記粒子を保持できず、粒子が脱落する恐れがある。また、2.0μmを超えても、性能の向上が見込めず、無駄である。
【0062】
中間転写フィルムの背面層には、背面層に要求される各種の機能を阻害しない範囲内であれば、各種の添加剤を含有しても良い。前記添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤などがあげられる。
【0063】
背面層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、基材上に塗工して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0064】
(被転写体)
本発明の被転写体は、ゴム系材料を主成分とする被転写体である。具体的には機械類の動力伝達に使用するゴムベルト、タイヤ、パッキン、Oリング、ゴムホースなど多種、多様なゴム製品が例示される。本発明の中間転写フィルムは、平面だけでなく、凹凸形状の被転写体に対しても、転写可能である。被転写体に凹凸形状がある場合には、図2に示す凸形状の頂部の角部や、凹形状の底部の角部などでは、中間転写フィルムが角部の形状に追従できずに、転写不良や、本来は連続して見えるべき印刷内容がヒビ割れたように、不連続となる現象(以下、印刷のヒビ割れと言う)が発生することがある。しかしながら、例えば、ゴムベルト表面の凹部形状が、図2に示す凹部の最大深さが4mm以下であり、凹部の最大深さを図2に示す凹部の最大幅で割った値が0.8以下で、かつ、図2に示す凹形状の底部の角部が、半径0.5mm以上の円弧、又はC0.5mm以上の面取りであれば、本発明の中間転写フィルムを使用して、ゴムベルトの凹凸面に良好な印刷を転写することができる。すなわち、この凹部形状が連続して等ピッチで設けられたゴムベルトであっても、本発明の中間転写フィルムは、被転写体であるゴムベルトの凹部形状に追従することができ、加硫成形と同時に、ゴム成形品表面の凹凸面へ受像層上に設けた印刷を、ヒビ割れが生じることなく、ゴム成形品(ベルト)表面の凹凸面へ受像層及び中間層とともに転写することができる。
【0065】
被転写体の材料の主成分は、ゴム系の材料であれば、特に限定されるものではなく、任意のゴム系材料を用いた被転写体を使用することができ、被転写体に用いられるゴム系材料としては、アクリルゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が例示される。また、被転写体の材料へは、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、これに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド樹脂等を例示できる。被転写体材料に熱可塑性樹脂を含有する場合には、中間転写フィルムの最上層となる受像層に、被転写体が含有する熱可塑性樹脂と主鎖が同じ熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。中間転写フィルムの最上層となる受像層が、被転写体が含有する熱可塑性樹脂と主鎖が同じ熱可塑性樹脂を含有することにより、受像層と被転写体が強固に接合され、転写後の印刷が受像層と中間層により強固に保護される。
【0066】
(印字媒体)
本発明の中間転写フィルムの受像層上に印刷を設ける手段としては、任意の印字媒体が使用可能であるが、版などを作成することなく、要求に応じて印刷内容を変更でき、少量の印刷であっても経済的である点から、インクジェットプリンター、サーマルプリンター、レーザープリンターなどの種々のプリンターを用いることが好ましい。また、各種プリンターの中でもインクを液滴やトナーにする必要がないために、材料選択の自由度が高く、被転写体の材料に応じて被着体との接着性の良い材料が選択可能であるという点において、サーマルプリンターが好ましい。サーマルプリンターでは、熱転写インクリボン上の色材転写層を加熱し、溶融又は昇華させることによって、色材転写層を本発明の中間転写フィルムのような被転写体へ転写する。以下、本発明の中間転写フィルムに好適に使用される熱転写インクリボンについて説明する。
【0067】
(熱転写インクリボン)
本発明の中間転写フィルムの受像層上へ印刷を設けるために使用するに熱転写インクリボンは、少なくとも1層の色材転写層を基材の一方の面に設けた熱転写インクリボンである。本発明の中間転写フィルムに使用する熱転写インクリボンの例を図3に示す。本発明の中間転写フィルムに使用する熱転写インクリボンは、図3の熱転写インクリボンのように、基材(10)の一方の面に色材転写層(11)が積層された熱転写インクリボンである。また、本発明の中間転写フィルムに使用する熱転写インクリボンは、色材転写層(11)と基材(10)の間に更に離型層を設けても良いし、中間転写フィルムの受像層への色材転写層(11)の転写性を向上するために、図3に示すように色材転写層(11)上に接着層(13)を設けてもよい。また、図3に示すように、基材(10)のもう1方の面に耐熱滑性層(12)を有してもよい。また、図示はしていないが、本発明の熱転写インクリボンは、色材転写層(11)を複数の層としてもよいし、複数の色材転写層間に色材転写層同士の接着性を向上する目的等で、別の層を設けてもよい。
【0068】
(基材)
本発明の中間転写フィルムに使用する熱転写インクリボンの基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルムその他この種の熱転写インクリボンの基材用フィルムとして一般に使用されている各種のプラスチックフィルムが使用できる。また、コンデンサーペーパーのような高密度の薄い紙も使用できる。基材の厚さは通常は2~10μm程度であり、熱伝達を良好にするためには、2~6μmの範囲が好ましい。
【0069】
(色材転写層)
色材転写層は、基材と色材転写層間に離型層等を設けない場合には、色材転写層は基材に直接積層される層である。色材転写層は、バインダーの樹脂成分に加え、ワックス成分を含有することが好ましい。色材転写層のバインダーを樹脂成分のみで構成すると、熱転写時に多くのエネルギーが必要となり、転写性能が低下する。色材転写層には色材として、各種顔料、各種染料を含有する。バインダーである樹脂成分としては、任意のものが使用可能であるが、印字前後を通じて色材転写層に強い膜強度を付与することができる点と、ゴム系材料を主成分とする被転写体への接着性が良好となり、被転写体上の印字(印刷)に強い接着性を付与することができる点で、ゴム系樹脂を含有することが好ましい。なお、本発明において、バインダーとは、塗工により形成された各層の成分であり、各層に含有する着色剤と添加剤等の成分を、各層中に保持するため使用される成分である。
【0070】
(ゴム系樹脂)
色材転写層のバインダーの樹脂成分としては、任意のゴム系樹脂が使用可能であり、アクリルゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等が使用可能である。これらの中でも、被転写体である加硫成形品への接着性が向上し、被転写体である加硫成形品へ転写された印字に加硫成形品に対する強い接着性を付与できるという観点からブタジエンを含むゴム系樹脂が好ましい。また、詳細なメカニズムはわかっていないが、被転写体である加硫成形品が高温環境で使用される場合に、加硫成形品へ印字された文字や記号の変色劣化が少ないという点でも、ブタジエンを含むゴム系樹脂が好ましい。ブタジエンを含むゴム系樹脂としては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SAS)、及び、その水添、又は、部分水添誘導体であるスチレン-ブタジエン-エチレン共重合体(SAES)、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(1,2-PA)、無水マレイン酸-ブタジエン-スチレン共重合体、コアシェル構造を有する変性ブタジエンゴム等が例示される。色材転写層中のゴム系樹脂の含有量としては、色材転写層中の固形分の5重量%以上20重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以上15重量%以下である。色材転写層固形分中のゴム系樹脂の含有量が5重量%を下回ると、ゴム系材料を主成分とする被転写体である加硫成形品への接着性が低下し、被転写体である加硫成形品に対する印刷に強い接着性を付与することができない。一方、色材転写層固形分中のゴム系樹脂の含有量が20重量%を超えると、中間転写フィルムへの熱転写時に多くのエネルギーが必要となり、転写性能が低下する。また、色材転写層には、ゴム系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。含有する樹脂に特に制限はないが、ゴム系樹脂との相溶性や親和性、被転写体へ転写後の膜強度を考慮すると、アクリル樹脂又はポリエステル樹脂が好ましい。
【0071】
(ワックス成分)
色材転写層に含有するワックスとしては、特に制限なく、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化パラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、酸化ポリエチレンワックス、カスターワックス、牛脂硬化油、ラノリン、木ロウ、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテート、ステアリルアルコール、ポリアミドワックス、オレイルアミド、ステアリルアミド、ヒドロキシステアリン酸、合成エステルワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭化水素系合成ワックスであるフィッシャー・トロプシュワックス又はポリエチレンワックスは融点が安定しているため、特に好ましく用いることができる。
【0072】
色材転写層中のワックス成分の含有量としては、色材転写層中の固形分の10重量%以上80重量%以下が好ましい。色材転写層固形分中のワックス成分の含有量が10重量%を下回ると、転写性が低下し、転写不良が発生しやすくなる。一方、色材転写層固形分中のワックス成分の含有量が80重量%を超えると、色材転写層の膜強度が低下し、中間転写フィルムの受像層上に転写された印字(印刷)に堅牢性を付与することができない。
【0073】
色材転写層は、着色剤として各種顔料及び/又は各種染料を含有する。顔料又は染料のみを使用してもよいし、顔料と染料を併用することもできる。
【0074】
顔料は、特に限定されるものではなく、無機顔料であっても、有機顔料であってもよく、これらを併用してもよい。無機顔料としては、例えば、タルク、カオリン(クレー)、合成マイカ、天然マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、チタン白、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、クロムチタンイエロー、カドミウムレッド、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン及び硫化亜鉛等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等)、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、フラバントロン顔料、アントラピリミジン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジブロムアンザントロン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、フタロシアニン顔料及びインダントロン顔料等が挙げられる。黒等濃色のゴム製品に対しては、白色顔料の使用が好ましく、白色顔料のなかでも、屈折率が高く、少量で高い白色度を実現できることから、酸化チタンが好ましい。酸化チタンは、ルチル型であってもよいし、アナターゼ型であってもよい。特に限定されるものではないが、白色顔料の吸油量は、40g/100g未満が好ましく、より好ましくは35g/100g未満である。また、白色顔料の平均粒子径は、0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.1μm以上1μm以下がより好ましい。
【0075】
上記染料としては公知の染料が使用でき、具体的には、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメタン系、キサンチン系、アクリジン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、アゾ系、スピロジピラン系、イソドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンダクタム系、アントラキノン系等の染料が使用できる。
【0076】
色材転写層の厚さは、5μm以上10μm以下が好ましく、6μm以上8μm以下がより好ましい。色材転写層の厚さが5μmを下回ると被転写体である加硫成形品へ転写された印刷に十分な印字濃度が得られない。また色材転写層の厚さが10μmを超えると、印字感度が低下し、中間転写フィルムへの印字時に印字欠け等の印字不良が発生するおそれがある。
【0077】
色材転写層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、基材上に塗工して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0078】
色材転写層には、色材転写層に要求される各種の機能を阻害しない範囲内であれば、各種の添加剤を含有しても良い。前記添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、粘着付与剤などがあげられる。
【0079】
(接着層)
本発明の中間転写フィルムの受像層上に印刷を設けるために使用する熱転写インクリボンは、前記色材転写層上の最上層として、熱溶融性ないし熱軟化性のワックスを主成分として含有する接着層を積層してもよい。接着層は、樹脂、ワックス、又はその混合物を主成分とすることができるが、中間転写フィルムへの転写時の感度調整が容易になることから、ワックスのみ又はワックスを主成分とすることが好ましい。また、種々の目的のために樹脂や、添加剤を適宜使用してもよい。色材転写層上に接着層を積層することにより、色材転写層と中間転写フィルムとの接着性を向上することができる。
【0080】
接着層の主成分である前記ワックスとしては、天然ワックス、石油系ワックス、合成ワックスなどから任意のものが使用可能であり、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
ワックスの接着層の固形分中における含有量は、50重量%以上が好ましい。ワックスの接着層の固形分中における含有量が、50重量%未満になると、前記色材転写層の中間転写フィルムに対する接着性を向上することができない。
【0082】
接着層の厚みは、0.5μm以上1.5μm以下が好ましい。接着層の厚みが0.5μm未満になると、接着層の中間転写フィルムへの接着力が低下して、転写不良(印字不良)が発生し易くなる。また、接着層の厚みが、1.5μmを超えると、熱転写時に接着層中の熱伝達性が悪くなり、接着層が十分に溶融せず、前記色材転写層の中間転写フィルムに対する接着性を向上することができない。
【0083】
中間転写フィルムへの接着性を向上する効果を阻害しない範囲であれば、接着層に粒子や添加剤を含有してもよい。接着層に添加する添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、粘着付与剤などが挙げられる。
【0084】
(耐熱滑性層)
本発明の中間転写フィルムに使用する熱転写インクリボンでは、色材転写層を設けた面とは反対側の基材面に耐熱滑性層を設けることが好ましい。耐熱滑性層を設けることにより、中間転写フィルムへの印字時のプリンターの転写ヘッドによる熱転写インクリボンの基材ダメージを少なくすることができる。基材がダメージを受けると、印字時に転写ヘッドが基材に貼りついてスムーズに移動できなくなる、所謂スティックが発生することがある。耐熱滑性層を設けることにより、このようなスティックを防止することができる。
【0085】
耐熱滑性層の材料としては、熱転写インクリボンで従来から採用されているものが特に制限無く使用できる。サーマルヘッドに対する耐熱性、高温時での動摩擦係数を小さくする点やコストを考慮すると、これらの中でも、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、またはその混合物が、耐熱滑性層の材料として特に好ましい。
【0086】
耐熱滑性層には、粒子、滑剤、帯電防止剤など、その他の添加剤を配合してもよい。
【0087】
耐熱滑性層の厚み(乾燥後厚み、以下同様)は、良好なスティック防止効果を達成しかつ熱伝導性の悪化を防止する点から、0.05~ 0.80μmが好ましい。耐熱滑性層の厚みが0.05μm未満では、耐熱性が不十分で印字時にスティックが発生することや、基材が溶融して印字不能となることがある。0.80μmを超えると、熱伝導性が悪化して印字に支障をきたすことがある。
【0088】
耐熱滑性層の形成方法は、前記色材転写層と同様の方法が使用可能である。
【0089】
(実施例)
本発明を、以下の実施例、比較例を用いて、更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。以下、各材料の配合量について、部と表示するものについては、特に断りがない限り、重量部を示すものとする。
【0090】
(中間転写フィルム)
(基材フィルム)
基材フィルムとして、下記8種類のフィルムを準備した。以下、PBTは、ポリブチレンテレフタレートを、PETは、ポリエチレンテレフタレートを表わすものとする。
<PBTフィルム1>
融点222℃、降温結晶化温度190℃、引張伸び MD410%、TD440%
引張強さMD76(MPa)、TD68(MPa)、厚み25μm
<PBTフィルム2>
融点;222℃、降温結晶化温度188℃、引張伸び MD400%、TD430%
引張強さMD81(MPa)、TD83(MPa)、厚み40μm
<PBTフィルム3>
融点219/226℃、降温結晶化温度190℃、引張伸びMD680%、TD640%引張強さMD85(MPa)、TD80(MPa)、厚み25μm
<PBTフィルム4>
融点215/222℃、降温結晶化温度177℃、引張伸びMD590%、TD730%引張強さMD47(MPa)、TD51(MPa)、厚み25μm
<PBTフィルム5>
融点223℃、降温結晶化温度189℃、引張伸びMD150%、TD150%
引張強さMD210(MPa)、TD220(MPa)、厚み20μm
<PBTフィルム6>
融点;222℃、降温結晶化温度188℃、引張伸び MD560%、TD610%
引張強さMD120(MPa)、TD110(MPa)、厚み10μm
<PBTフィルム7>
融点;222℃、降温結晶化温度188℃、引張伸び MD400%、TD410%
引張強さMD82(MPa)、TD81(MPa)、厚み100μm
<PETフィルム1>
融点260℃、降温結晶化温度136℃、引張伸びMD188%、TD165%
引張強さMD229(MPa)、TD236(MPa)、厚み38μm
【0091】
(各層用塗工液の準備)
(離型層)
<長鎖アルキルペンダント型樹脂1>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1として、エチレン含有率が45モル%であるエチレン-ビニルアルコール共重合物と、炭素数14の直鎖アルキル基を有する長鎖アルキルイソシアネートとの反応生成物である長鎖アルキルペンダント型ポリマー(重量平均分子量が150,000)を準備した。
【0092】
(離型層塗工液)
<離型層塗工液1>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)5重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.1%、数平均分子量504、固形分100%)5重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液2>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)7重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.1%、数平均分子量504、固形分100%)3重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液3>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)3重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.1%、数平均分子量504、固形分100%)7重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液4>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)8重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.1%、数平均分子量504、固形分100%)2重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液5>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)2重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.1%、数平均分子量504、固形分100%)8重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液6>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)5重量部、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(コロネート2030(日本ポリウレタン)
NCO基含有率7.95%、固形分50.5%)10重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液7>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)3重量部、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(コロネート2030(日本ポリウレタン)
NCO基含有率7.95%、固形分50.5%)14重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液8>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)7重量部、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(コロネート2030(日本ポリウレタン)
NCO基含有率7.95%、固形分50.5%)6重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液9>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)3重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.5%、固形分100%)7重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液10>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)7重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.5%、固形分100%)3重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液11>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)5重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.5%、固形分100%)5重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液12>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)3重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.1%、数平均分子量504、固形分100%)4重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.5%、固形分100%)3重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液13>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)7重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.1%、数平均分子量504、固形分100%)1重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.5%、固形分100%)2重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液14>
付加重合型シリコーン(信越化学工業(株)製、KS847H);100重量部、トルエン;200重量部
<離型層塗工液15>
カルナバワックス水性エマルジョン;50重量部(固形分20重量%)、水;50重量部
<離型層塗工液16>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)10重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液17>
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率23.1%、数平均分子量504、固形分100%)10重量部、トルエン;90重量部
<離型層塗工液18>
長鎖アルキルペンダント型樹脂1(固形分100%)5重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンエステルのアダクト型(イソシアネート基を1分子中に3つ含有、NCO基含有率12.5%、固形分75%酢酸エチル溶液)6.7重量部、トルエン;90重量部
【0093】
(中間層塗工液)
<中間層塗工液1>
ポリウレタン樹脂(引張強さ30MPa、引張伸び775%);10重量部、トルエン;90重量部、MEK;10重量部
<中間層塗工液2>
ポリウレタン樹脂(引張強さ28MPa、引張伸び800%);10重量部、トルエン;90重量部、MEK;10重量部
<中間層塗工液3>
ポリウレタン樹脂(引張強さ23MPa、引張伸び900%);10重量部、トルエン;90重量部、MEK;10重量部
<中間層塗工液4>
ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー(引張強さ10.3MPa、引張伸び700%);10重量部、トルエン;90重量部、MEK;10重量部
<中間層塗工液5>
スチレン・ブタジエン熱可塑性エラストマー(引張強さ27.5MPa、引張伸び800%);10重量部、トルエン;90重量部、MEK;10重量部
<中間層塗工液6>
ポリウレタン樹脂(引張強さ10MPa未満、引張伸び1000%);10重量部、トルエン;90重量部、MEK;10重量部
<中間層塗工液7>
ポリオールポリエーテル系ウレタン/芳香族イソシアネート(引張強さ43MPa、引張伸び400%);10重量部、トルエン;90重量部、MEK;10重量部
<中間層塗工液8>
ポリエステルウレタン樹脂(引張強さ80MPa、引張伸び6%);10重量部、トルエン;90重量部、MEK;10重量部
<中間層塗工液9>
セルロースエステルアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル(株)CAP-482-0.5:引張強さ 不明、引張伸び 不明);10重量部、トルエン;90重量部、MEK;10重量部
<中間層塗工液10>
ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー(引張強さ12.7MPa、引張伸び670%);10重量部、トルエン90重量部、MEK10重量部
<中間層塗工液11>
ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー(引張強さ15.3MPa、引張伸び670%);10重量部、トルエン90重量部、MEK10重量部
各樹脂の引張強さと引張伸びは、材料メーカーのカタログ値による。
【0094】
(受像層塗工液)
<受像層塗工液1>
無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂;5重量部、カルナバワックス(カルナバ2号);5重量部、トルエン;70重量部、MEK;20重量部
<受像層塗工液2>
無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂;10重量部、トルエン;70重量部、MEK;20重量部
<受像層塗工液3>
カルナバワックス(カルナバ2号);10重量部、トルエン;70重量部、MEK;20重量部
【0095】
(背面層塗工液)
<背面層塗工液1>
シリコーン変性ウレタン樹脂溶液(固形分25%);48重量部、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子(平均粒子径:0.2μm、固形分100%);4重量部、ポリイソシアネート溶液(固形分50%):8重量部、MEK;72重量部、PGM-AC;8重量部
【0096】
(実施例1)
(背面層)
実施例1の中間転写フィルム1として、PBTフィルム1を基材フィルムとして、基材フィルムの一方の面に背面層塗工液1を乾燥後厚みが0.15μmとなるように塗工、乾燥して、背面層を作製した。
【0097】
(離型層)
次に、PBTフィルム1の背面層を設けた側とは、反対側の表面に離型層塗工液1を乾燥後厚みが0.1μmとなるように、塗工、乾燥して、離型層を作製した。
【0098】
(中間層)
次に、離型層上に中間層塗工液1を乾燥後厚みが2.0μmとなるように塗工、乾燥して、中間層を作製した。
【0099】
次に、中間層上に受像層塗工液1を乾燥後厚みが2.5μmとなるように塗工、乾燥して、受像層を作製し、実施例1の中間転写フィルムを得た。
【0100】
(実施例2)
基材フィルムをPBTフィルム2に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例2の中間転写フィルムを得た。
【0101】
(実施例3)
基材フィルムをPBTフィルム3に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例3の中間転写フィルムを得た。
【0102】
(実施例4)
基材フィルムをPBTフィルム4に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例4の中間転写フィルムを得た。
【0103】
(実施例5)
基材フィルムをPBTフィルム6に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例5の中間転写フィルムを得た。
【0104】
(実施例6)
基材フィルムをPBTフィルム7に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例6の中間転写フィルムを得た。
【0105】
(実施例7)
中間層塗工液を中間層塗工液2に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例7の中間転写フィルムを得た。
【0106】
(実施例8)
中間層塗工液を中間層塗工液3に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例8の中間転写フィルムを得た。
【0107】
(実施例9)
中間層塗工液を中間層塗工液4に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例9の中間転写フィルムを得た。
【0108】
(実施例10)
中間層塗工液を中間層塗工液5に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例10の中間転写フィルムを得た。
【0109】
(実施例11)
受像層塗工液を受像層塗工液2に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例11の中間転写フィルムを得た。
【0110】
(実施例12)
受像層塗工液を受像層塗工液3に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例12の中間転写フィルムを得た。
【0111】
(実施例13)
離型層塗工液を離型層塗工液2に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例13の中間転写フィルムを得た。
【0112】
(実施例14)
離型層塗工液を離型層塗工液3に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例14の中間転写フィルムを得た。
【0113】
(実施例15)
離型層塗工液を離型層塗工液4に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例15の中間転写フィルムを得た。
【0114】
(実施例16)
離型層塗工液を離型層塗工液5に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例16の中間転写フィルムを得た。
【0115】
(実施例17)
離型層塗工液を離型層塗工液6に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例17の中間転写フィルムを得た。
【0116】
(実施例18)
離型層塗工液を離型層塗工液7に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例18の中間転写フィルムを得た。
【0117】
(実施例19)
離型層塗工液を離型層塗工液8に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例19の中間転写フィルムを得た。
【0118】
(実施例20)
離型層塗工液を離型層塗工液9に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例20の中間転写フィルムを得た。
【0119】
(実施例21)
離型層塗工液を離型層塗工液10に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例21の中間転写フィルムを得た。
【0120】
(実施例22)
離型層塗工液を離型層塗工液11に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例22の中間転写フィルムを得た。
【0121】
(実施例23)
離型層塗工液を離型層塗工液12に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例23の中間転写フィルムを得た。
【0122】
(実施例24)
離型層塗工液を離型層塗工液13に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例24の中間転写フィルムを得た。
【0123】
(実施例25)
中間層塗工液を中間層塗工液10に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例25の中間転写フィルムを得た。
【0124】
(実施例26)
中間層塗工液を中間層塗工液11に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、実施例26の中間転写フィルムを得た。
【0125】
(比較例1)
基材フィルムをPBTフィルム5に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、比較例1の中間転写フィルムを得た。
【0126】
(比較例2)
基材フィルムをPETフィルム1に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、比較例2の中間転写フィルムを得た。
【0127】
(比較例3)
離型層塗工液を離型層塗工液14に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、比較例3の中間転写フィルムを得た。
【0128】
(比較例4)
中間層塗工液を中間層塗工液6に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、比較例4の中間転写フィルムを得た。
【0129】
(比較例5)
中間層塗工液を中間層塗工液7に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、比較例5の中間転写フィルムを得た。
【0130】
(比較例6)
中間層塗工液を中間層塗工液8に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、比較例6の中間転写フィルムを得た。
【0131】
(比較例7)
離型層を設けずに、直接基材フィルムに中間層塗工液9を用いて中間層を設けた以外は、実施例1と同様にして、比較例7の中間転写フィルムを得た。
【0132】
(比較例8)
離型層塗工液を離型層塗工液15に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、比較例8の中間転写フィルムを得た。
【0133】
(比較例9)
離型層塗工液を離型層塗工液16に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、比較例9の中間転写フィルムを得た。
【0134】
(比較例10)
離型層塗工液を離型層塗工液17に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、比較例10の中間転写フィルムを得た。
【0135】
(比較例11)
離型層塗工液を離型層塗工液18に変更した以外は、実施例1の中間転写フィルムと同様にして、比較例11の中間転写フィルムを得た。
【0136】
(熱転写インクリボン)
(耐熱滑性層)
(耐熱滑性層用プレミックスインク)
下記処方の材料を混練して耐熱滑性層用プレミックスインクを作製した。
シリコーンウレタン樹脂溶液(固形分25%) 32.33部
メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子
(平均粒子径:0.2μm、固形分100%) 0.30部
メチルエチルケトン 67.37部
【0137】
次に、下記処方の材料を混練して耐熱滑性層用インクを作製し、基材として用いた4.5μmのPETフィルムの上に乾燥後の厚みが0.20μmになるよう調整して前記基材上に塗工、乾燥させて耐熱滑性層を作製した。
耐熱滑性層用プレミックスインク 29.75部
ポリイソシアネート溶液(固形分45%) 4.50部
メチルエチルケトン 55.75部
トルオール 10.00部
【0138】
(色材転写層)
下記処方の材料を混練して色材転写層インクを作製し、前記基材の耐熱滑性層を積層した面とは反対側の基材上に乾燥後の厚みが7.5μmになるよう塗工、乾燥させて色材転写層を作製した。
酸化チタン粒子(平均粒子径:0.23μm、 固形分100%) 14.00部
フィッシャー・トロプシュワックス(融点102℃、固形分100%)4.00部
シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(固形分100%) 2.00部
トルオール 60.00部
メチルエチルケトン 20.00部
【0139】
(接着層)
下記処方の材料を混練して接着層インクを作製し、前記色材転写層上に乾燥後の厚みが1.00μmになるよう塗工、乾燥させて接着層を作製した。
カルナバワックス(融点83℃、エマルション固形分30%) 40.00部
メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子
(平均粒子径:0.2μm、固形分100%) 3.00部
メタノール 57.00部
【0140】
(印字方法)
Zebra 110xi4プリンターを用いて、各実施例、比較例で作製した中間転写フィルムの受像層上に、上記熱転写インクリボンを使用して、印字速度2.4inch/second、エネルギー15にて、所定の印刷(印字パターン)を印字した。
【0141】
(被転写体)
本発明の中間転写フィルムを使用して印刷を転写する被転写体である伝動ベルトを作製する。
【0142】
(ゴム予備積層体の準備)
伝動ベルト材料である伝動ゴム積層体を構成する、接着ゴム層用未加硫ゴムシート、圧縮ゴム層用未加硫ゴムシート、前処理ポリエステル心線を作製する。
【0143】
(接着ゴム層用未加硫ゴムシートの作製)
CRゴム100重量部、カーボンブラック70重量部、パラフィン系プロセスオイル10重量部、ステアリン酸1重量部、酸化亜鉛5重量部、硫黄3重量部、チウラム系加硫促進剤0.5重量部、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤0.5重量部、チアゾール系加硫促進剤1重量部、フェニレンジマレイミド5重量部の配合物をバンバリーミキサーで混練し、この配合物をカレンダーロールにてシート状に圧延し、厚さ5mmの接着ゴム層用未加硫シートを作製する(2枚)。
【0144】
(圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートの作製)
EPDMゴム100重量部、カーボンブラック65重量部、パラフィン系プロセスオイル10重量部、
ステアリン酸1重量部、酸化亜鉛5重量部、硫黄1.5重量部、加硫促進剤1重量部、ナイロン短繊維20重量部の配合物を前記と同様に混練・圧延し、厚さ0.5mmの圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートを作製する。
【0145】
(前処理ポリエステル心線の作製)
心線として直径1mmのポリエステル繊維を用意し、イソシアネートトルエン溶液(固形分20重量%)に浸漬し、240℃で40秒間加熱乾燥後、レゾルシン-ホルマリン初期縮合物系よりなるRFL接着剤水溶液に浸漬した後、60℃で40秒間加熱乾燥して、前処理ポリエステル心線を作製する。
【0146】
(伝動ベルトの作製)
表面が、図4に示すように、深さ3.0mm~4.0mm、幅4.0mm~5.0mmの凹凸形状を有する円筒状の離型処理された成形ドラム金型の周面に、各実施例、各比較例の中間転写フィルム、及び接着ゴム層用未加硫ゴムシートを巻き付けた後、この上に前処理ポリエステル心線を螺旋状にスピニングし、更に、その上にもう1つの接着ゴム層用未加硫ゴムシートを巻き付けた後、圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートを4回巻き付けて予備積層体を作製する。なお、中間転写フィルムの印刷が転写された受像層は接着ゴム層用未加硫ゴムシート面と接するように設ける。
【0147】
(加硫工程)
作製した予備積層体を内圧588kPa、外圧883kPa、温度165℃、時間35分間の条件で加硫缶中にて加熱加圧し、蒸気加硫して環状物となった一次成形体を作製し、 室温まで冷却し、本発明の中間転写フィルムの基材フィルムを剥離する。但し、下記中間転写フィルムの剥離評価に使用する一次成形体に関しては、中間転写フィルムの基材フィルムを貼り付けた状態のままで、中間転写フィルムの剥離評価に使用する。
【0148】
(中間転写フィルムの剥離評価)
本発明の各実施例、各比較例の中間転写フィルムを用いて印刷を転写した各伝動ベルトから、中間転写フィルムが貼りついた状態のままで、図7に示す伝動ベルト片を切り出し、引張試験機を用いて本発明中間転写フィルムを図8に示すようにして、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minで剥離し、中間転写フィルムの加硫後剥離力(mN/20mm)を測定し、以下の評価基準で評価した。なお、使用する伝動ベルト片は、加硫後24時間以上経過したものを使用し、剥離力測定は、常温常湿環境(23±2℃、50±5%RH)で実施した。
評価基準◎:剥離力が、0.30N/20mm未満
○:剥離力が0.30N/20mm以上1.50N/20mm未満
×:剥離力が1.50N/20mm以上
(印刷状態評価1)本発明の各実施例、各比較例の中間転写フィルムを用いて印刷を転写した各伝動ベルトの印刷の状態確認として、図2に示す伝動ベルト凹形状の底部の角部の印刷のヒビ割れの有無と、ヒビ割れの最大幅を、目盛り付ルーペで目視確認し、以下の基準により評価した。この評価結果を、表1と表2に示す。
評価基準◎:印刷にヒビ割れが全くない。
○:ヒビ割れはあるが、最大幅が0.5mm未満である。(目視では、印刷のヒ
ビ割れが判別できない程度である。)
×:最大幅が0.5mm以上のヒビ割れがある。
(印刷状態評価2)本発明の各実施例、各比較例の中間転写フィルムを用いて印刷を転写した各伝動ベルトの印刷の状態確認として、凝集剥離の有無、すなわち中間転写フィルムから各伝動ベルトへ印刷を転写した後に、中間転写フィルム側に印刷が残っているか否かを確認し、以下の基準により評価した。この評価結果を、表1と表2に示す。
評価基準
◎:転写フィルム側に印刷が全く残らない。
○:転写フィルム側に少し印刷が残る。
×:転写フィルム側に印刷が残る。
【0149】
(表1)
【0150】
(表2)
【符号の説明】
【0151】
10…基材(熱転写インクリボン)
11…色材転写層(印刷)(熱転写インクリボン)
12…耐熱滑性層(熱転写インクリボン)
13…接着層(熱転写インクリボン)
20…基材フィルム(中間転写フィルム)
21…離型層(中間転写フィルム)
22…中間層(中間転写フィルム)
23…受像層(中間転写フィルム)
3…被転写体(加硫成形品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8