(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117982
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ガラスヤーン、ガラスクロス及びガラスヤーンの製造方法
(51)【国際特許分類】
D02G 3/18 20060101AFI20240823BHJP
C03B 37/03 20060101ALI20240823BHJP
D03D 15/267 20210101ALI20240823BHJP
【FI】
D02G3/18
C03B37/03
D03D15/267
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024112
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305040569
【氏名又は名称】ユニチカグラスファイバー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 和浩
(72)【発明者】
【氏名】関田 知喜
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 崇治
【テーマコード(参考)】
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
4L036MA33
4L036MA37
4L036PA21
4L048AA03
4L048AA34
4L048AB07
4L048AB12
4L048BA02
4L048DA43
(57)【要約】
【課題】 毛羽の発生を抑制するガラスヤーンの提供を主な課題とする。
【解決手段】 複数のガラスフィラメントが集束されてなるガラスヤーンであって、平均フィラメント直径が4.7μm以下であり、前記ガラスヤーンの糸割れ率が7%以下である、ガラスヤーン。また、スリット構造を有する集束部材によりガラスフィラメントを集束させる工程を含み、前記スリットの幅が下記式を満足する、ガラスヤーンの製造方法。
(D×N)×0.3≦スリットの幅(μm)≦(D×N)×1.5
D:経糸または緯糸の平均フィラメント直径(μm)
N:経糸または緯糸のフィラメント本数(本)
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラスフィラメントが集束されてなるガラスヤーンであって、
平均フィラメント直径が4.7μm以下であり、
前記ガラスヤーンの糸割れ率が7%以下である、ガラスヤーン。
【請求項2】
前記ガラスフィラメントの本数が70本以下である、請求項1に記載のガラスヤーン。
【請求項3】
前記ガラスヤーンの撚り数が0.3~1.2回/25mmである、請求項1に記載のガラスヤーン。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガラスヤーンを経糸及び/又は緯糸として製織されてなるガラスクロス。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガラスヤーンの製造方法であって、
スリット構造を有する集束部材によりガラスフィラメントを集束させる工程を含み、
前記スリットの幅が下記式を満足する、ガラスヤーンの製造方法。
(D×N)×0.3≦スリットの幅(μm)≦(D×N)×1.5
D:経糸または緯糸の平均フィラメント直径(μm)
N:経糸または緯糸のフィラメント本数(本)
【請求項6】
ガラスヤーンの糸割れ検出方法であって、測定対象となるガラスヤーン1本を走行させ、当該ガラスヤーンを長手方向に連続的に撮影するステップと、当該撮影した画像からガラスヤーンの本数を検出するステップと、当該ガラスヤーンが撚りまとまらず、部分的に2本以上に分かれている箇所を糸割れと判断するステップと、を備えるガラスヤーンの糸割れ検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスヤーン、ガラスクロス及びガラスヤーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスヤーンは、複数のガラスフィラメントを撚りまとめて糸状にしたものである。ガラスヤーンは、電気絶縁性、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性及び引張強度等の特性に優れることから、ガラスクロス、ガラステープ、ガラススリーブ、ゴム補強用コード等の原料糸として使用されている。そして、ガラスクロスは、その用途の一つとしてプリント配線板が挙げられ、プリント配線板の品質に大きく影響を与える。プリント配線板用ガラスクロスは薄型化が進み、それに伴い、原料糸であるガラスヤーンも低番手化されている。
【0003】
ガラスヤーンが巻かれたガラスヤーンパッケージは、以下のように、紡糸工程及び撚糸工程を経て製造される。
(1-1)紡糸工程
ガラス原料をガラス溶融炉で溶融してノズルから複数のガラスフィラメントとして引き出し、該複数のガラスフィラメントに集束剤を付与して集束させてガラスストランドとする。そして、円筒状の巻き取りチューブを装着させたコレットを回転させて上記ガラスストランドをチューブ上に巻き取り、ケーキ(紡糸工程で、ブッシングから繊維化された直後のストランドを巻き取った、筒状に巻かれた糸の塊)とする。
(1-2)撚糸工程
ケーキからガラスストランドを引き出し、撚糸機で撚りをかけて、ガラスヤーンとし、 円筒状のボビンに巻き取ってガラスヤーンパッケージとする。
【0004】
ガラス長繊維(ガラスフィラメント)用集束剤として、不揮発性成分に澱粉を含むガラス長繊維用集束剤において、該澱粉はその全量の25質量%以上100質量%以下のアミロースを含むと共に、1~12μmの範囲の平均粒子径を備えることを特徴とするガラス長繊維用集束剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。該ガラス長繊維用集束剤によれば、前記澱粉がその全量の25質量%以上100質量%以下のアミロースを含むので粘度が低くなり、ガラス長繊維フィラメントの間隙に均一に浸透することができ、複数のガラス長繊維フィラメント同士を接着して優れた集束性を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が検討したところ、上記特許文献1のガラス長繊維用集束剤を付与したガラスヤーンは、毛羽の抑制効果になお改善の余地がある。そこで、本発明は、上記問題を解決し、毛羽の発生を抑制するガラスヤーンの提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記課題を解決すべく検討したところ、特許文献1のガラス長繊維用集束剤を、例えば平均フィラメント直径が4.7μmのガラスヤーンに付与して当該ガラスヤーンを観察した際、ガラスヤーン長手方向において局所的に糸割れが発生することを突きとめた。
図1は、糸割れについて説明する、株式会社キーエンス製商品名インライン投影画像測定機(TM-X5006 シリーズセンサヘッド(φ6mmタイプ))で撮影及び測定したガラスヤーンの画像の一例である。
図1に例示するように、具体的には、ガラスヤーンの集束性が不十分であることにより、ガラスヤーンを構成するガラスフィラメントの一部がガラスヤーン長手方向において部分的に他のガラスフィラメントと撚りまとまらず、ガラスヤーンが長手方向において部分的に複数本に分かれている部分が存在することを知得した。そして、本発明者がさらに検討したところ、上記糸割れの指標として、後述するガラスヤーンの糸割れ率が有効であること、当該糸割れ率を特定範囲にすることにより毛羽を抑制できること、そして、当該特定範囲の糸割れ率であるガラスヤーンは、特定の幅を有するスリット構造の集束部材を用いて集束することにより初めて得られることを突きとめた。
【0008】
図2は、従来の紡糸工程集束部材の模式図であり、
図2(A)は正面、背面、平面及び底面から見た図であり、
図2(B)は右側面及び左側面から見た図である。また、
図3は、ガラスストランドを紡糸工程において製造するガラスストランド製造装置の一例を示す模式的正面図である。
図2において、従来の集束部材1は、円柱状部1aと、円柱状部1aから紙面左右方向に(側面方向に向かって)その外径が円柱状部外径から漸増するように延在する2つの円錐台状部1bから構成される。なお、円柱状部1aは長さ1Lを有する。
【0009】
図3において、紡糸装置200は、ノズル40から吐出したガラスフィラメントに集束剤を塗布する集束剤トレイ201と、ガラスフィラメント3を所定数のガラスストランドに束ねる集束機構202と、ガラスストランドを綾振りする綾振り機構206と、ガラスストランドを巻き取る巻取りローラ211とを備えている。集束剤トレイ201には、集束剤トレイ201に供給される集束剤と、該集束剤をピックアップし、該ピックアップされた集束剤にガラスフィラメントが接触することでガラスフィラメント3に集束剤を付与するアプリケーター(図示しない。)が備えられる。なお、集束トレイ201等に代えて、スプレー噴射等により、ガラスフィラメントに集束剤を付与することもできる。集束機構202は、モータ等によって回転駆動される水平な集束軸203と、集束軸203に固定された複数の集束部材1とを有する。よって、ノズル40の貫通孔から吐出された複数のガラスフィラメント3は、集束軸203の回転とともに、2つの集束部材1それぞれによって2つの繊維束4(ガラスストランド)に分けられる。なお、集束部材1で2つの繊維束4となる前に、各ガラスフィラメント3は、集束剤が入った集束剤トレイ201に導入され、集束剤が塗布される。綾振り機構206は、モータ等によって回転駆動される水平な綾振り軸207と、2つの集束部材1それぞれに対応した綾振り部材209とを有する。2つの集束部材1で集束された各繊維束4は、綾振り軸207の回転駆動により綾振り部材209により綾振りされ、巻取りローラ211に均等に巻き取られる。巻取りローラ211は、所定の回転軸を中心として回転しており、回転速さ及び回転駆動力等が調整される。これにより、ノズル40から吐出する溶融ガラスの紡糸張力(引張張力)及び紡糸速度が調整されて繊維束が巻き取られる。そして、得られたガラスストランドを用いて、リング撚糸機等により撚糸し、ガラスヤーンとする。当該ガラスヤーンをボビンに巻き付けガラスヤーンパッケージとする。
【0010】
ここで、本発明者は、
図2に示す従来の集束部材を用いてガラスフィラメント束を製造した場合、当該ガラスフィラメント束の幅が比較的大きいものとなり、また、綾振りされることによりガラスフィラメント束にかかる張力が変動し、ガラスフィラメント束の幅が不均一になりやすくなることを知得した。そして本発明者はガラスフィラメント束の幅の均一性に改善の余地があることを突きとめた。
【0011】
そこで、本発明者が鋭意検討し、糸割れ率が特定範囲であるガラスヤーンは、
図4に例示する、特定の幅を有するスリット構造の集束部材を用いて集束することにより初めて得られ、当該ガラスヤーンとすれば毛羽の発生を抑制できることを突きとめた。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 複数のガラスフィラメントが集束されてなるガラスヤーンであって、平均フィラメント直径が4.7μm以下であり、前記ガラスヤーンの糸割れ率が7%以下である、ガラスヤーン。
項2.前記ガラスフィラメントの本数が70本以下である、項1に記載のガラスヤーン。
項3.前記ガラスヤーンの撚り数が0.3~1.2回/25mmである、項1に記載のガラスヤーン。
項4.項1~3のいずれか1項に記載のガラスヤーンを経糸及び/又は緯糸として製織されてなるガラスクロス。
項5.項1~3のいずれか1項に記載のガラスヤーンの製造方法であって、スリット構造を有する集束部材によりガラスフィラメントを集束させる工程を含み、前記スリットの幅が下記式を満足する、ガラスヤーンの製造方法。
(D×N)×0.3≦スリットの幅(μm)≦(D×N)×1.5
D:経糸または緯糸の平均フィラメント直径(μm)
N:経糸または緯糸のフィラメント本数(本)
項6.ガラスヤーンの糸割れ検出方法であって、測定対象となるガラスヤーン1本を走行させ、当該ガラスヤーンを長手方向に連続的に撮影するステップと、当該撮影した画像からガラスヤーンの本数を検出するステップと、当該ガラスヤーンが撚りまとまらず、部分的に2本以上に分かれている箇所を糸割れと判断するステップと、を備えるガラスヤーンの糸割れ検出方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガラスヤーンによれば、複数のガラスフィラメントが集束されてなるガラスヤーンであって、平均フィラメント直径が4.7μm以下であり、前記ガラスヤーンの糸割れ率が7%以下であることから、毛羽の発生の抑制をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】糸割れについて説明する、株式会社キーエンス製商品名インライン投影画像測定機(TM-X5006 シリーズセンサヘッド(φ6mmタイプ))で撮影及び測定したガラスヤーンの画像の一例である。
【
図2】従来の紡糸工程集束部材の模式図であり、
図2(A)は正面、背面、平面及び底面から見た図であり、
図2(B)は右側面及び左側面から見た図である。
【
図3】ガラス糸とするガラスストランド(ガラスフィラメント束)を紡糸工程において製造するガラスフィラメント束製造装置の一例を示す模式的側面図である。
【
図4】特定の幅を有するスリット構造の集束部材の一例を示す模式図であり、
図4(A)は模式的平面図、
図4(B)は模式的底面図、
図4(C)は模式的正面図(すなわち、
図4(A)においては紙面上側が正面側であり、紙面下側が背面側である。)、
図4(D)は模式的背面図、
図4(E)は模式的右側面図、
図4(F)は模式的左側面図である。
【
図5】
図4(A)の部分拡大図であり、スリット構造の集束部材によってガラスフィラメントが集束される様子を説明する図である。
【
図6】ガラスヤーンとするガラスストランド(ガラスフィラメントの束)を紡糸工程において製造するガラスフィラメント束製造装置の一例を示す模式的正面図である。
【
図7】ガラスヤーンとするガラスストランド(ガラスフィラメントの束)を紡糸工程において製造するガラスフィラメント束製造装置の一例を示す模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のガラスヤーンは、複数のガラスフィラメントが集束されてなるガラスヤーンであって、平均フィラメント直径が4.7μm以下であり、前記ガラスヤーンの糸割れ率が7%以下である。以下詳述する。
【0016】
本発明のガラスヤーンにおいて、ガラスフィラメント及びガラスヤーンを構成するガラス材料としては、特に制限されない。例えば、Eガラス、Tガラス、Sガラス、UTガラス、Dガラス、NEガラス、Lガラス、ユニチカ株式会社製商品名LUガラス、Cガラス、または、ARガラス等が挙げられる。
【0017】
汎用性の観点からは、Eガラス組成を備えるガラスフィラメントを用いることが好ましい。前記Eガラス組成は、ガラスフィラメントの全量に対し、52~56質量%の範囲のSiO2と、5~10質量%の範囲のB2O3と、12~16質量%の範囲のAl2O3と、合計で20~25質量%の範囲のCaO及びMgOと、合計で0~1質量%の範囲のLi2O、K2O及びNa2Oとを含む組成である。
【0018】
また、プリプレグ及びプリント配線板の強度をより高めるという観点からは、前記ガラスフィラメントとしては、ガラスフィラメントの全量に対し60~66質量%の範囲のSiO2と、20~26質量%の範囲のAl2O3と、10~15質量%の範囲のMgOとを含む、ガラス材料からなることが好ましい。
【0019】
また、プリプレグ及びプリント配線板の誘電率及び誘電正接を低減するという観点からは、前記ガラスフィラメントとしては、ガラスフィラメントの全量に対し45~60質量%の範囲のSiO2と、15~35質量%の範囲のB2O3と、10~20質量%の範囲のAl2O3とを含む、ガラス材料からなることが好ましく、ガラスフィラメントの全量に対し45~55質量%の範囲のSiO2と、20~35質量%の範囲のB2O3と、10~20質量%の範囲のAl2O3とを含む、ガラス材料からなることがより好ましい。
【0020】
本発明のガラスヤーンを構成するガラスフィラメントの平均フィラメント直径は4.7μm以下であり、毛羽発生の抑制効果をより有効に発揮させるという観点から、好ましくは3~4.7μm、更に好ましくは3~4.2μmが挙げられる。また、本発明のガラスヤーンを構成するガラスフィラメントの本数としては特に制限されないが、例えば、20~70本が挙げられ、20~55がより好ましく挙げられる。また、平均番手は、3.3~3.8tex及び3.8~4.2texからなる群より選ばれる1つ以上の範囲とすることができる。また、平均フィラメント本数としては、34~38本、39~44本及び45~55本からなる群より選ばれる1つ以上の範囲とすることができる。なお、本発明において、ガラスフィラメントの平均フィラメント直径は、日本工業規格JIS R 3420 :2013の「ガラス繊維一般試験方法」の「7.6 単繊維直径」のB法(横断面法)に規定されている方法に従って、測定、算出する。具体的には、ガラスヤーンをエポキシ系冷間埋設樹脂(ストルアス株式会社製商品名エポキシ樹脂スペシフィックス-40)に包埋して硬化させて硬化物を得る。次いで、エポキシ系冷間埋設樹脂に包埋したガラスヤーンが観察可能な程度に硬化物を研磨し、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製商品名JSM-6390A)を用い、平均直径は倍率2000倍で、本数は倍率500倍で観察、測定をおこなう。無作為にガラスヤーンを30本選び、該ガラスヤーン30本中の全ガラスフィラメントの断面における直径(最も大きい部分)を測定して相加平均値を算出し、ガラスヤーンにおけるガラスフィラメントの平均直径とする。また、ガラスヤーンを構成するガラスフィラメントの本数は、当該ガラスフィラメントの平均直径の測定において測定する。
【0021】
本発明のガラスヤーンの番手について特に制限されないが、例えば0.5~5texが挙げられ、0.5~3texが好ましく挙げられ、0.8~2texがより好ましく挙げられる。また、ガラスヤーンの番手は、例えば、0.8~1.1tex、1.2~1.4tex及び1.5~2texからなる群より選ばれる1つ以上の範囲とすることができる。本発明においてガラスヤーンの番手は、日本工業規格JIS R 3420 :2013(ガラス繊維一般試験方法)の「7.1 番手」に規定されている方法に従い、測定、算出する。具体的には、先ず、ガラスヤーンが捲きつけられたボビンから500mのガラスヤーンを採取し、これを試験片とする。試験片を平らに置いてオーブンに入れて、105℃で60分間乾燥した後に、デシケーター中で放冷して、試験片の質量を測定する。以下の式に従って番手を算出する。
t=(m/500)×1000
t:番手
m:試験片の質量(g)
【0022】
本発明のガラスヤーンは、ガラスフィラメントの表面に皮膜形成性成分を含むことができる。皮膜形成性成分としては、澱粉又は合成樹脂が挙げられる。澱粉としては特に制限されず、コーン澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、豆澱粉等が挙げられる。合成樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0023】
また、本発明のガラスヤーンは、ガラスフィラメントの表面に、皮膜形成性成分以外のその他成分を含むことができる。当該その他成分としては、潤滑剤、柔軟剤、帯電防止剤、乳化剤等が挙げられる。具体的には、例えば、動植物油、ワックス又はこれらが乳化されたもの、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0024】
本発明のガラスヤーンの強熱減量としては、特に制限されないが、例えば、0.7~1.5質量%が挙げられる。本発明においてガラスヤーンの強熱減量は、日本工業規格JIS R 3420 2013の「ガラス繊維一般試験方法」の「7.3.2 強熱減量」に規定されている方法に従って測定される値である。
【0025】
本発明のガラスヤーンは、糸割れ率が7%以下である。前述のように、
図1に例示するように、具体的には、ガラスヤーンの集束性が不十分であることにより、ガラスヤーンを構成するガラスフィラメントの一部がガラスヤーン長手方向において部分的に他のガラスフィラメントと撚りまとまらず、ガラスヤーンが長手方向において部分的に複数本に分かれている部分が存在することを知得した。そして、本発明者がさらに検討したところ、上記糸割れの指標として、ガラスヤーンの糸割れ率が有効であること、当該糸割れ率を特定範囲にすることにより毛羽を抑制できること、そして、当該特定範囲の糸割れ率であるガラスヤーンは、特定の幅を有するスリット構造の集束部材を用いて集束することにより初めて得られることを突きとめたのである。
【0026】
本発明において、ガラスヤーンの糸割れ率は次のように測定する。すなわち、測定器として株式会社キーエンス製商品名インライン投影画像測定機(TM-X5006 シリーズセンサヘッド(φ6mmタイプ))を用い、ガラスヤーンパッケージからガラスヤーン1本を引き出して投受光される光に連続的に通す。ガラスヤーンを投受光される光に通すときの走行条件としては、速度が23m/min、張力が0.001(N)以下、とし、ガラスヤーンが長手方向において部分的に複数本に分かれている箇所(下記測定条件において本数が2本以上となる箇所)を糸割れと位置づける。糸割れ率(%)は糸割れ数/総測定数×100にて算出する。上記測定器の付属の解析ソフト(例えば、株式会社キーエンス製商品名TM-X Navigator)を用い、当該ソフトの設定として、測定ツールを本数として測定をおこなう。測定ツールを本数としたときの詳細条件は以下のようにすることができる。
ツール名:本数
公差設定
・設計値:0001本
・移動平均:1回
処置設定
・アラームホールド回数:000回
・スケーリング:未設定
・オフセット:0000本
・ゼロ基準値:0000本
・ピーク検出フィルター:なし
・ホールドモード:なし
エッジ詳細設定
・セグメントサイズ:0001
・間隔:0001
・感度:30%
・フィルター幅:010
・強度下限:010
・領域外処理(高速化):未チェック
領域指定
・開始点:X=003.000mm Y=002.000mm
・終了点:X=003.000mm Y=005.167mm
・検出幅:0.300mm
・長さ:3.167mm
・位置補正元:No.1
・設定時の領域調整
・・基準:任意直線
・・姿勢:基準に平行
マスク設定
・マスク領域1:なし
・マスク領域2:なし
・マスク領域3:なし
・マスク領域4:なし
【0027】
上記糸割れ率とするには、後述する本発明のガラスヤーンの製造方法が好適に挙げられる。
【0028】
本発明において、ガラスヤーンの糸幅としては、特に制限されないが、例えば、30~100μmが挙げられる。本発明において、ガラスヤーンの糸幅は次のように測定するものである。すなわち、測定器として株式会社キーエンス製商品名インライン投影画像測定機(TM-X5006 シリーズセンサヘッド(φ6mmタイプ))を用い、ガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを引き出して投受光される光に連続的に通す。ガラスヤーンを投受光される光に通すときの走行条件としては、速度が23m/min、張力が0.001(N)以下、とする。上記測定器の付属の解析ソフト(例えば、株式会社キーエンス製商品名TM-X Navigator)を用い、当該ソフトの設定として、測定ツールを平均外径として測定をおこなう。測定ツールを平均外径としたときの詳細条件は以下のようにすることができる。
ツール名:外径平均
測定内容:平均
公差設計
・移動平均:1回
処置設定
・アラームホールド回数:000回
・スケーリング:未チェック
・オフセット:0000本
・ゼロ基準値:0000本
・ピーク検出フィルター:なし
・ホールドモード:なし
・小数点桁数:3桁
・表示単位:mm
・DIA補正を有効にする:チェック
異常点除去:しない
エッジ詳細設定
・セグメントサイズ:0001
・間隔:0001
・感度:10%
・フィルター幅:005
・強度下限:025
・領域外処理(高速化):未チェック
領域指定
・開始点:X=003.000mm Y=002.000mm
・終了点:X=003.000mm Y=005.167mm
・検出幅:0.300mm
・長さ:3.167mm
・位置補正元:No.1
・設定時の領域調整
・・基準:任意直線
・・姿勢:基準に平行
マスク設定
・マスク領域1:なし
・マスク領域2:なし
・マスク領域3:なし
・マスク領域4:なし
【0029】
上記本発明のガラスヤーンの糸割れ率の下限値としては特に制限されないが、例えば、0.5%以上又は1.0%以上が挙げられる。また、下限値として、3%以上、又は5%以上とすることもできる。本発明のガラスヤーンにおいて、番手が0.8~1.1texの場合に特に好適な糸割れ率としては、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。また、本発明のガラスヤーンにおいて、番手が1.2~1.4texの場合に特に好適な糸割れ率としては、5%以下が好ましい。また、本発明のガラスヤーンにおいて、番手が1.5~2texの場合に特に好適な糸割れ率としては7%以下である。本発明のガラスヤーンにおいて、番手が0.8~1.1texの場合に特に好適な糸幅としては、40~60μmが好ましく、45~55μmがより好ましい。また、本発明のガラスヤーンにおいて、番手が1.2~1.4texの場合に特に好適な糸幅としては、50~70μmが好ましく、55~65μmがより好ましい。また、本発明のガラスヤーンにおいて、番手が1.5~2texの場合に特に好適な糸幅としては、60~80μmが好ましく、65~75μmがより好ましい。
【0030】
本発明のガラスヤーンは、撚り数が0.3~1.2回/25mmとすることができる。本発明において、撚り数は、JIS R 3420:2013 7.5に準じて測定するものである。
【0031】
次に本発明のガラスヤーンの製造方法について説明する。本発明のガラスヤーンの製造方法は、スリット構造を有する集束部材によりガラスフィラメントを集束させる工程を含み、前記スリットの幅が下記式を満足する、ものである。
(D×N)×0.3≦スリットの幅(μm)≦(D×N)×1.5
D:経糸または緯糸の平均フィラメント直径(μm)
N:経糸または緯糸のフィラメント本数(本)
【0032】
図2は、従来の紡糸工程における集束部材の模式図であり、
図4は、本発明のガラスクロスを製織する際に緯糸として用いる原料ガラス糸を製造する際に用いる、スリット構造の集束部材の一例について説明する模式図であり、
図4(A)は模式的平面図、
図4(B)は模式的底面図、
図4(C)は模式的正面図(すなわち、
図4(A)においては紙面上側が正面側であり、紙面下側が背面側である。)、
図4(D)は模式的背面図、
図4(E)は模式的右側面図、
図4(F)は模式的左側面図である。また、
図5は、
図4(A)の部分拡大図であり、スリット構造の集束部材2によってガラスフィラメント6が集束される様子を説明する図である。また、
図6は、ガラス糸とするガラスストランド4(ガラスフィラメント3の束)を紡糸工程において製造するガラスフィラメント束製造装置の一例を示す模式的正面図である。
図6においては、前述した
図3の集束部材1が
図4及び
図5に示す集束部材2に置き換えられており、
図6における集束部材2は
図4(C)に示す正面方向と一致した方向として備えられている。
【0033】
前述のように、本発明者は、
図2に示す従来の集束部材を用いてガラスフィラメント束を製造した場合、当該ガラスフィラメント束の幅が比較的大きいものとなり、また、綾振りされることによりガラスフィラメント束にかかる張力が変動し、ガラスフィラメント束の幅が不均一になりやすくなり、糸割れ率が高くなることを知得した。
【0034】
そこで、本発明者は鋭意検討し、
図4及び
図5に示す、スリット構造の集束部材2を用いてガラスフィラメント束を紡糸することにより、前述した本発明のガラスヤーンを製造することができることを見出した。
【0035】
図4及び
図5を参照して、本発明のガラスヤーンを製造可能とするスリット構造の集束部材の一実施態様について説明する。
【0036】
図4及び
図5のスリット構造の集束部材2は、スリットを備えている。
図4及び
図5に示す態様では、スリットは平面方向から見てU字状に設けられており、上面(
図4Aに示す面)から下面(
図4(F)に示す面)に向かって連通している。
図4(A)、(D)及び
図5に示す態様では、スリットの先端は平面方向から見て円形に面取りされている。平面方向から見たスリットの幅(
図4Aにおけるスリットの横方向長さ)としては、下記式(3)を満足するようにすることが好ましい。
(D×N)×0.3≦スリットの幅(μm)≦(D×N)×1.5 ・・・(3)
D:経糸または緯糸の平均フィラメント直径(μm)
N:経糸または緯糸の平均フィラメント本数(本)
【0037】
以上のように、集束部材をスリット構造を有するものとし、当該スリットの幅が上記式(3)を満足するような小さいものとすることにより、前述した本発明のガラスヤーンを製造することができる。
【0038】
図6を参照してより詳細に説明すると、紡糸装置200は、ノズル40から吐出したガラスフィラメント3に集束剤を塗布する集束剤トレイ201と、ガラスフィラメント3を所定数のガラスフィラメント束に束ねる集束部材2と、ガラスフィラメント束を綾振りする綾振り機構206と、ガラスフィラメント束を巻き取る巻取りローラ211とを備えている。集束剤トレイ201には、集束剤トレイ201に供給される集束剤と、該集束剤をピックアップし、該ピックアップされた集束剤にガラスフィラメント3が接触することでガラスフィラメント3に集束剤を付与するアプリケーター(図示しない。)が備えられる。なお、集束トレイ201等に代えて、スプレー噴射等により、ガラスフィラメント3に集束剤を付与することもできる。集束部材2は前述したとおりである。集束部材2で集束されたフィラメント3の繊維束4(ガラスストランド)は、綾振り軸207の回転駆動により綾振り部材209により綾振りされ、巻取りローラ211に均等に巻き取られる。巻取りローラ211は、所定の回転軸を中心として回転しており、回転速さ及び回転駆動力等が調整される。これにより、ノズル40から吐出する溶融ガラスの紡糸張力(引張張力)及び紡糸速度が調整されて繊維束が巻き取られる。そして、得られたガラスフィラメント束を用いて、リング撚糸機等により撚糸し、ガラスヤーンとする。当該ガラスヤーンをボビン等に巻取りガラスヤーンが巻かれたガラスヤーンパッケージとすることができる。
【0039】
スリット構造の集束部材2は、
図7に例示するように、ガラスフィラメントを一旦従来の集束部材1で集束させた後に当該集束させた繊維束4が当該集束部材2を通過するように配置することもできる。
【0040】
本発明のガラスクロスは、上記した本発明のガラスヤーンを経糸及び/又は緯糸として製織されてなる。
【0041】
本発明のガラスクロスの厚さとしては、特に制限されないが、例えば、8~30μmが挙げられる。また、本発明のガラスクロスの質量としては、特に制限されないが、例えば、6~30g/m2が挙げられる。
【0042】
また、本発明のガラスヤーンの糸割れ検出方法は、測定対象となるガラスヤーン1本を走行させ、当該ガラスヤーンを長手方向に連続的に撮影するステップと、当該撮影した画像からガラスヤーンの本数を検出するステップと、当該ガラスヤーンが撚りまとまらず、部分的に2本以上に分かれている箇所を糸割れと判断するステップと、を備えるガラスヤーンの糸割れ検出方法である。
【0043】
本発明のガラスヤーンの糸割れ検出方法の具体的な実施態様としては、株式会社キーエンス製商品名インライン投影画像測定機を用い、測定対象となるガラスヤーンを当該測定器の投受光される光に連続的に通し、当該ガラスヤーンの糸割れを検出するガラスヤーンの糸割れ検出方法が挙げられる。測定条件の詳細は、ガラスヤーンの糸割れ率に記載のとおりである。
【実施例0044】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0045】
<測定方法等>
1.ガラスヤーンの平均フィラメント直径及び本数
ガラスフィラメントの平均フィラメント直径は、日本工業規格JIS R 3420 :2013の「ガラス繊維一般試験方法」の「7.6 単繊維直径」のB法(横断面法)に規定されている方法に従って、測定、算出した。具体的には、ガラスヤーンをエポキシ系冷間埋設樹脂(ストルアス株式会社製商品名エポキシ樹脂スペシフィックス-40)に包埋して硬化させて硬化物を得た。次いで、エポキシ系冷間埋設樹脂に包埋したガラスヤーンを観察可能な程度に硬化させたサンプルを研磨し、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製商品名JSM-6390A)を用い、平均直径は倍率2000倍で、本数は倍率500倍で観察、測定をおこなった。無作為にガラスヤーンを30本選び、該ガラスヤーン30本中の全ガラスフィラメントの断面における直径(最も大きい部分)を測定して相加平均値を算出し、ガラスヤーンにおけるガラスフィラメントの平均直径とした。また、ガラスヤーンを構成するガラスフィラメントの本数は、当該ガラスフィラメントの平均直径の測定において測定した。
【0046】
2.ガラスヤーンの番手
日本工業規格JIS R 3420 :2013(ガラス繊維一般試験方法)の「7.1 番手」に規定されている方法に従い、測定、算出した。具体的には、先ず、ガラスヤーンが捲きつけられたボビンから500mのガラスヤーンを採取し、これを試験片とした。試験片を平らに置いてオーブンに入れて、105℃で60分間乾燥した後に、デシケーター中で放冷して、試験片の質量を測定した。以下の式に従って番手を算出した。
t=(m/500)×1000
t:番手
m:試験片の質量(g)
【0047】
3.ガラスヤーンの強熱減量
日本工業規格JIS R 3420 2013の「ガラス繊維一般試験方法」の「7.3.2 強熱減量」に規定されている方法に従って測定した。
【0048】
4.ガラスヤーンの糸割れ率
測定器として株式会社キーエンス製商品名インライン投影画像測定機(TM-X5006 シリーズセンサヘッド(φ6mmタイプ))を用い、ガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを引き出して投受光される光に連続的に通した。ガラスヤーンを投受光される光に通すときの走行条件としては、速度が23m/min、張力が0.001(N)以下、とし、ガラスヤーンが長手方向において部分的に複数本に分かれている箇所(下記測定条件において本数が2本以上となる箇所)を糸割れと位置づけた。糸割れ率(%)は糸割れ数/総測定数×100にて算出した。上記測定器の付属の解析ソフトを用い、当該ソフトの設定として、測定ツールを本数として測定をおこなった。測定ツールを本数としたときの詳細条件は以下のようにした。
ツール名:本数
公差設定
・設計値:0001本
・移動平均:1回
処置設定
・アラームホールド回数:000回
・スケーリング:未設定
・オフセット:0000本
・ゼロ基準値:0000本
・ピーク検出フィルター:なし
・ホールドモード:なし
エッジ詳細設定
・セグメントサイズ:0001
・間隔:0001
・感度:30%
・フィルター幅:010
・強度下限:010
・領域外処理(高速化):未チェック
領域指定
・開始点:X=003.000mm Y=002.000mm
・終了点:X=003.000mm Y=005.167mm
・検出幅:0.300mm
・長さ:3.167mm
・位置補正元:No.1
・設定時の領域調整
・・基準:任意直線
・・姿勢:基準に平行
マスク設定
・マスク領域1:なし
・マスク領域2:なし
・マスク領域3:なし
・マスク領域4:なし
【0049】
5.ガラスヤーンの糸幅
測定器として株式会社キーエンス製商品名インライン投影画像測定機(TM-X5006 シリーズセンサヘッド(φ6mmタイプ))を用い、ガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを引き出して投受光される光に連続的に通した。ガラスヤーンを投受光される光に通すときの走行条件としては、速度が23m/min、張力が0.001(N)以下、とした。上記測定器の付属の解析ソフトを用い、当該ソフトの設定として、測定ツールを平均外径として測定をおこなった。測定ツールを平均外径としたときの詳細条件は以下のようにした。
ツール名:外径平均
測定内容:平均
公差設計
・移動平均:1回
処置設定
・アラームホールド回数:000回
・スケーリング:未チェック
・オフセット:0000本
・ゼロ基準値:0000本
・ピーク検出フィルター:なし
・ホールドモード:なし
・小数点桁数:3桁
・表示単位:mm
・DIA補正を有効にする:チェック
異常点除去:しない
エッジ詳細設定
・セグメントサイズ:0001
・間隔:0001
・感度:10%
・フィルター幅:005
・強度下限:025
・領域外処理(高速化):未チェック
領域指定
・開始点:X=003.000mm Y=002.000mm
・終了点:X=003.000mm Y=005.167mm
・検出幅:0.300mm
・長さ:3.167mm
・位置補正元:No.1
・設定時の領域調整
・・基準:任意直線
・・姿勢:基準に平行
マスク設定
・マスク領域1:なし
・マスク領域2:なし
・マスク領域3:なし
・マスク領域4:なし
【0050】
6.ガラスヤーンの毛羽
製造例で準備したガラスヤーンについて、100m/minの速度で解舒してテンションバーを通過した後の毛羽の数をセンサーにてカウントした。1km当たりの毛羽数(個/km)を求めた。
【0051】
<実施例1>
図6に例示するガラスストランド製造装置を用いてガラスヤーンを製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4及び
図5に例示するスリット構造の集束部材のスリットを通過させて当該ガラスフィラメントを1本のガラスストランドに集束させた。次いで、このガラスストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ガラスストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。なお、スリット構造の集束部材のスリット幅としては、100μmとした。得られたガラスヤーンにおいて、ガラスフィラメントの平均直径は3.6μm、フィラメント本数は38本、ガラスヤーンの番手は1.0tex、強熱減量は1.2%、撚り数は0.5Zであった。
【0052】
<比較例1>
図3に例示するガラスストランド製造装置を用いてガラスヤーンを製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図2に示す従来の集束部材(円柱状部1aの長さ1Lが500μm)を通過させて当該ガラスフィラメントを1本のガラスストランドに集束させた。次いで、このガラスストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ガラスストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンにおいて、ガラスフィラメントの平均直径は3.6μm、フィラメント本数は38本、ガラスヤーンの番手は1.0tex、強熱減量は1.2%、撚り数は0.5Zであった。
【0053】
実施例1及び比較例1のガラスヤーンの物性等について表1に示す。
【0054】
【0055】
平均フィラメント直径、フィラメント本数、番手及び強熱減量が同一である実施例1と比較例1とを比較して、実施例1は、ガラスヤーンの糸割れ率が7%以下であることから、比較例1に比して毛羽の発生を抑制することができた。
【0056】
<実施例2>
図6に例示するガラスストランド製造装置を用いてガラスヤーンを製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4及び
図5に例示するスリット構造の集束部材のスリットを通過させて当該ガラスフィラメントを1本のガラスストランドに集束させた。次いで、このガラスストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ガラスストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。なお、スリット構造の集束部材のスリット幅としては、100μmとした。得られたガラスヤーンにおいて、ガラスフィラメントの平均直径は4.1μm、フィラメント本数は40本、ガラスヤーンの番手は1.3tex、強熱減量は1.2%、撚り数は0.5Zであった。
【0057】
<比較例2>
図3に例示するガラスストランド製造装置を用いてガラスヤーンを製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図2に示す従来の集束部材(円柱状部1aの長さ1Lが500μm)を通過させて当該ガラスフィラメントを1本のガラスストランドに集束させた。次いで、このガラスストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ガラスストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンにおいて、ガラスフィラメントの平均直径は4.1μm、フィラメント本数は40本、ガラスヤーンの番手は1.3tex、強熱減量は1.2%、撚り数は0.5Zであった。
【0058】
実施例2及び比較例2のガラスヤーンの物性等について表2に示す。
【0059】
【0060】
平均フィラメント直径、フィラメント本数、番手及び強熱減量が同一である実施例2と比較例2とを比較して、実施例2は、ガラスヤーンの糸割れ率が7%以下であることから、比較例2に比して毛羽の発生を抑制することができた。
【0061】
<実施例3>
図6に例示するガラスストランド製造装置を用いてガラスヤーンを製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図4及び
図5に例示するスリット構造の集束部材のスリットを通過させて当該ガラスフィラメントを1本のガラスストランドに集束させた。次いで、このガラスストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ガラスストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。なお、スリット構造の集束部材のスリット幅としては、100μmとした。得られたガラスヤーンにおいて、ガラスフィラメントの平均直径は4.1μm、フィラメント本数は50本、ガラスヤーンの番手は1.65tex、強熱減量は1.2%、撚り数は0.5Zであった。
【0062】
<比較例3>
図3に例示するガラスストランド製造装置を用いてガラスヤーンを製造した。具体的に、集束剤を、紡糸炉から紡出させた複数のガラスフィラメントにアプリケーターを用いて塗布し、
図2に示す従来の集束部材(円柱状部1aの長さ1Lが500μm)を通過させて当該ガラスフィラメントを1本のガラスストランドに集束させた。次いで、このガラスストランドを、撚りをかけずにチューブに巻き取り、ケーキを得た。次いで、得られたケーキを乾燥した。乾燥後のケーキをリング撚糸機にセットし、ガラスストランドを解舒しつつ、撚りをかけながら、ボビンに巻き付け、ガラスヤーンを得た。得られたガラスヤーンにおいて、ガラスフィラメントの平均直径は4.1μm、フィラメント本数は50本、ガラスヤーンの番手は1.65tex、強熱減量は1.2%、撚り数は0.5Zであった。
【0063】
実施例3及び比較例3のガラスヤーンの物性等について表3に示す。
【0064】
【0065】
平均フィラメント直径、フィラメント本数、番手及び強熱減量が同一である実施例3と比較例3とを比較して、実施例3は、ガラスヤーンの糸割れ率が7%以下であることから、比較例3に比して毛羽の発生を抑制することができた。