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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117989
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】密封装置および密封構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20240823BHJP
   F16K 5/04 20060101ALI20240823BHJP
   F16K 11/076 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F16J15/18 C
F16K5/04 C
F16K11/076 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024121
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸松 匠
(72)【発明者】
【氏名】柳 得徳
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信二
(72)【発明者】
【氏名】山口 智広
(72)【発明者】
【氏名】木原 正雄
(72)【発明者】
【氏名】大岩 俊之
【テーマコード(参考)】
3H054
3H067
3J043
【Fターム(参考)】
3H054AA02
3H054BB22
3H054CA36
3H054CA37
3H067AA23
3H067CC45
3H067DD03
3H067DD12
3H067EA38
3H067EA39
3H067GG12
3J043AA16
3J043CA02
3J043CB13
3J043CB14
3J043DA01
(57)【要約】
【課題】ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制する。
【解決手段】密封装置30は、回転可能なロータにおいて第1開口が形成された外周面と、ロータを収容するハウジングにおいて第1開口に連通可能な第2開口が形成された内周面との間に設置される。密封装置30は、ロータの外周面に対向する第1面41と、ハウジングの内周面に対向する第2面とを含み、第2開口に対応する開口43が形成された本体部40と、第1面41に形成されて開口43を包囲する封止ビード50と、第1面41において封止ビード50から周方向に突出する1以上の補助ビード70とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なロータの外周面と、前記ロータを収容するハウジングの内周面との間に設置される密封装置であって、
前記ロータの外周面に対向する第1面に設置され、前記ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制する抑制部
を具備する密封装置。
【請求項2】
回転可能なロータにおいて第1開口が形成された外周面と、前記ロータを収容するハウジングにおいて前記第1開口に連通可能な第2開口が形成された内周面との間に設置される密封装置であって、
前記ロータの外周面に対向する第1面と、前記ハウジングの内周面に対向する第2面とを含み、前記第2開口に対応する開口が形成された本体部と、
前記第1面に形成されて前記開口を包囲する封止ビードと、
前記第1面において前記封止ビードから周方向に突出する1以上の補助ビードと
を具備する密封装置。
【請求項3】
前記封止ビードは、軸方向に沿う第1部分を含み、
前記1以上の補助ビードは、前記第1部分から前記周方向に突出する
請求項2の密封装置。
【請求項4】
前記1以上の補助ビードは、
前記第1部分から第1方向に突出する1以上の第1補助ビードと、
前記第1部分から前記第1方向とは反対の第2方向に突出する1以上の第2補助ビードとを含む
請求項3の密封装置。
【請求項5】
軸方向における前記1以上の第1補助ビードの位置と、前記軸方向における前記1以上の第2補助ビードの位置とは相違する
請求項4の密封装置。
【請求項6】
前記1以上の第1補助ビードは、複数の第1補助ビードであり、
前記1以上の第2補助ビードは、複数の第2補助ビードであり、
軸方向において、前記複数の第2補助ビードは、前記複数の第1補助ビードの間に位置する
請求項5の密封装置。
【請求項7】
回転可能なロータと、
前記ロータを収容するハウジングと、
前記ロータの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設置される密封装置とを具備し、
前記密封装置は、
前記ロータの外周面に対向する第1面に設置され、前記ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制する抑制部を含む
密封構造。
【請求項8】
外周面に第1開口が形成された回転可能なロータと、
前記第1開口に連通可能な第2開口が内周面に形成され、前記ロータを収容するハウジングと、
前記ロータの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設置される密封装置とを具備し、
前記密封装置は、
前記ロータの外周面に対向する第1面と、前記ハウジングの内周面に対向する第2面とを含み、前記第2開口に対応する開口が形成された本体部と、
前記第1面に形成されて前記開口を包囲する封止ビードと、
前記第1面において前記封止ビードから周方向に突出する1以上の補助ビードとを含む
密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密封装置および密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の流体の流路を切替える弁装置には、流体を封止するための環状のシールが利用される。例えば特許文献1には、円柱状のロータと、ロータを収容するハウジングと、ロータの外周面とハウジングの内周面との間に設置されたシールリングとを具備する制御弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4649211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弁装置においてはロータの回転に必要なトルクを低減することが要求される。特許文献1の技術においては、摩擦係数が低い材料によりシールリングを形成することが記載されているが、更なるトルクの低減という観点から改善の余地がある。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のひとつの態様に係る密封装置は、回転可能なロータの外周面と、前記ロータを収容するハウジングの内周面との間に設置される密封装置であって、前記ロータの外周面に対向する第1面に設置され、前記ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制する抑制部を具備する。
【0006】
本開示の他の態様に係る密封装置は、回転可能なロータにおいて第1開口が形成された外周面と、前記ロータを収容するハウジングにおいて前記第1開口に連通可能な第2開口が形成された内周面との間に設置される密封装置であって、前記ロータの外周面に対向する第1面と、前記ハウジングの内周面に対向する第2面とを含み、前記第2開口に対応する開口が形成された本体部と、前記第1面に形成されて前記開口を包囲する封止ビードと、前記第1面において前記封止ビードから周方向に突出する1以上の補助ビードとを具備する。
【0007】
本開示のひとつの態様に係る密封構造は、回転可能なロータと、前記ロータを収容するハウジングと、前記ロータの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設置される密封装置とを具備し、前記密封装置は、前記ロータの外周面に対向する第1面に設置され、前記ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制する抑制部を含む。
【0008】
本開示の他の態様に係る密封構造は、外周面に第1開口が形成された回転可能なロータと、前記第1開口に連通可能な第2開口が内周面に形成され、前記ロータを収容するハウジングと、前記ロータの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設置される密封装置とを具備し、前記密封装置は、前記ロータの外周面に対向する第1面と、前記ハウジングの内周面に対向する第2面とを含み、前記第2開口に対応する開口が形成された本体部と、前記第1面に形成されて前記開口を包囲する封止ビードと、前記第1面において前記封止ビードから周方向に突出する1以上の補助ビードとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る弁装置の分解側面図である。
図2】弁装置の説明図である。
図3】密封装置における内周面の平面図である。
図4】密封装置における外周面の平面図である。
図5図3における領域α1の拡大図である。
図6図5におけるVI-VI線の断面図である。
図7図5におけるVII-VII線の断面図である。
図8】ロータの位置とトルクとの関係を表すグラフである。
図9図8における解析対象の説明図である。
図10】第2実施形態の密封装置における内周面の平面図である。
図11図10における領域α2の拡大図である。
図12図11におけるXII-XII線の断面図である。
図13図11におけるXIII-XIII線の断面図である。
図14】第1実施形態に関する補足の説明図である。
図15】変形例における密封装置の断面図である。
図16】変形例の密封装置における内周面の平面図である。
図17】変形例における封止ビードおよび補助ビードの平面図である。
図18】変形例における封止ビードおよび補助ビードの平面図である。
図19】変形例における封止ビードおよび補助ビードの平面図である。
図20】変形例における封止ビードおよび補助ビードの平面図である。
図21】変形例における封止ビードおよび補助ビードの平面図である。
図22】変形例における封止ビードおよび補助ビードの平面図である。
図23】変形例における封止ビードおよび補助ビードの平面図である。
図24】変形例における封止ビードおよび補助ビードの平面図である。
図25】変形例における封止ビードおよび補助ビードの平面図である。
図26】変形例における密封装置の断面図である。
図27】変形例における密封装置の断面図である。
図28】変形例における密封装置の断面図である。
図29】変形例における密封装置の断面図である。
図30】変形例における密封装置の平面図である。
図31】変形例における密封装置の断面図である。
図32】変形例における密封装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る密封構造を採用した弁装置100の分解側面図である。図2は、弁装置100の構造を模式的に表す平面図である。弁装置100は、流体の流路を制御する制御弁である。具体的には、弁装置100は、例えば冷却液の流路を切替えるマルチコントロールバルブとして自動車に搭載される。
【0011】
図1および図2に例示される通り、弁装置100は、ロータ10とハウジング20と密封装置30とを具備する。ロータ10は、回転可能な円柱状の構造体である。ハウジング20は、断面形状が円形状である内部空間にロータ10を収容する中空の構造体である。密封装置30は、ロータ10の外周面11とハウジング20の内周面21との間の環状の隙間に設置される。密封装置30は、ロータ10とハウジング20との隙間を封止する環状の構造体である。なお、ロータ10の形状は円柱状に限定されない。例えばロータ10は、円錐台状または球体状の構造体でもよい。
【0012】
以下の説明においては、密封装置30の中心軸Cを想定する。中心軸Cは、ロータ10の回転軸とも換言される。中心軸Cに沿う一方向をY1方向と表記し、Y1方向とは反対の方向をY2方向と表記する。以下の説明では、Y1方向およびY2方向を「Y方向」と総称する。また、中心軸Cを中心とした任意の直径の仮想円における円周に沿う方向を「周方向」と表記し、当該仮想円の半径の方向を「径方向」と表記する。径方向において中心軸Cに向かう方向を「内側」と表記し、中心軸Cとは反対に向かう方向を「外側」と表記する。
【0013】
図2に例示される通り、第1実施形態のロータ10は、中心軸Cを中心としてA方向およびB方向の双方に回転可能である。A方向およびB方向は相互に反対の方向である。ロータ10の外周面11には複数の開口12が形成される。複数の開口12は、周方向に沿って相互に間隔をあけて配列する。ロータ10の内部には複数の流路13が形成される。各流路13は2個の開口12を相互に連通する通路である。
【0014】
ハウジング20には複数の開口22が形成される。複数の開口22は、周方向に沿って相互に間隔をあけて配列する。各開口12と各開口22とが相互に対向する状態においては、開口12と開口22との間を流体が流通する。相互に対向する開口12と開口22との組合せは、ロータ10の回転角度に応じて変化する。したがって、各流路13と開口12と開口22との組合せがロータ10の回転角度に応じて変化する。すなわち、第1実施形態のロータ10は、流体の流路を切替えるための弁体として機能する。なお、開口12は「第1開口」の一例であり、開口22は「第2開口」の一例である。
【0015】
密封装置30は、開口12と開口22とで形成される流路を密封するための弾性体である。密封装置30は、各種の樹脂材料で一体的に形成される。例えば、密封装置30は、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(SR)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム(U)、ポリウレタンゴム(PUR)、ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)またはフッ素ゴム(FKM)等のゴム材料で形成される。
【0016】
図3および図4は、密封装置30の平面図である。図3および図4においては、密封装置30が平面状に展開された状態が図示されている。図3は、密封装置30のうちロータ10の外周面11に対向する内周面31の平面図であり、図4は、密封装置30のうちハウジング20の内周面21に対向する外周面32の平面図である。図3におけるX1方向およびX2方向は、Y方向に直交する方向である。X1方向およびX2方向は相互に反対の方向である。以下の説明においてはX1方向およびX2方向を「X方向」と総称する。
【0017】
図3および図4に例示される通り、密封装置30は、X方向に長尺な矩形帯状に形成され、両端部を相互に近接させることで円環状または円弧状に巻かれた図1の状態でロータ10とハウジング20との隙間に設置される。したがって、X方向は、中心軸Cを中心とした周方向に相当する。
【0018】
図5は、図3における領域α1の拡大図である。また、図6は、図5におけるVI-VI線の断面図であり、図7は、図5におけるVII-VII線の断面図である。図3から図7に例示される通り、第1実施形態の密封装置30は、本体部40と封止ビード50と背面ビード60と複数の補助ビード70とが一体的に形成された構造体である。
【0019】
本体部40は、X方向に長尺な平板状の部分である。本体部40は、第1面41と第2面42とを有する矩形状に成形される。第1面41および第2面42は相互に反対側の表面である。弁装置100に組込まれた状態において、第1面41はロータ10の外周面11に対向し、第2面42はハウジング20の内周面21に対向する。すなわち、密封装置30が環状に成形された状態において、第1面41は内周面31に相当し、第2面42は外周面32に相当する。なお、以下の説明においては第1面41および第2面42が平面である形態を例示するが、第1面41および第2面42は球面または円弧面等の曲面でもよいし、微細な凹凸が形成された粗面でもよい。
【0020】
図3および図4に例示される通り、本体部40には複数の開口43が形成される。複数の開口43の各々は、第1面41と第2面42とにわたる円形状または長円状の貫通孔である。複数の開口43は、X方向に沿って相互に間隔をあけて配列される。複数の開口43の各々は、ハウジング20の相異なる開口22に対応する。具体的には、ハウジング20の各開口22と、本体部40の複数の開口43のうち当該開口22に対応する開口43とは、径方向において相互に重複する。なお、各開口43の形状は任意であり、図3および図4の例示に限定されない。例えば矩形状の開口43が本体部40に形成されてもよい。
【0021】
封止ビード50は、図3に例示される通り、本体部40の第1面41に形成されて当該第1面41から突出する線状の突起である。具体的には、封止ビード50は、複数の第1部分51と複数の第2部分52とにより構成される。複数の第1部分51の各々は、Y方向に直線状に延在する部分である。複数の第2部分52の各々は、X方向に直線状に延在する部分である。複数の第1部分51と複数の第2部分52とが相互に連結されることで格子状の封止ビード50が構成される。
【0022】
複数の第2部分52は、X方向に沿って2列に配列することで第1シール部L1と第2シール部L2とを構成する。第1シール部L1は、X方向に配列する複数の第2部分52により構成される直線状の部分である。同様に、第2シール部L2は、X方向に配列する複数の第2部分52により構成される直線状の部分である。第1シール部L1は、本体部40の第1面41のうちY1方向に位置する縁辺に沿ってX方向に延在する。第2シール部L2は、本体部40の第1面41のうちY2方向に位置する縁辺に沿ってX方向に延在する。したがって、第1シール部L1と第2シール部L2との間に複数の開口43が配列する。
【0023】
複数の第1部分51は、第1シール部L1と第2シール部L2とにわたりY方向に沿って延在する。すなわち、各第1部分51は、ロータ10の中心軸Cの方向に沿う。具体的には、各第1部分51におけるY1方向の端部は第1シール部L1に連結され、各第1部分51におけるY2方向の端部は第2シール部L2に連結される。複数の第1部分51は、第1シール部L1と第2シール部L2との間においてX方向に相互に間隔をあけて配列される。各開口43は、X方向に相互に隣合う2個の第1部分51の間に位置する。以上の説明から理解される通り、本体部40の第1面41のうち、X方向に隣合う2個の第1部分51とY方向に隣合う2個の第2部分52とにより包囲された矩形状の領域に、1個の開口43が形成される。すなわち、封止ビード50は、本体部40の各縁辺と各開口43の間隔とに沿うように格子状に形成され、各開口43を包囲する。
【0024】
図5および図6に例示される通り、各第1部分51の表面は、円弧面510と傾斜面511と傾斜面512とを含む。円弧面510は、所定の半径の円弧状に形成された曲面である。傾斜面511は、円弧面510のX1方向に位置する平面であり、第1面41に対して所定の角度(具体的には鋭角)で傾斜する。同様に、傾斜面512は、円弧面510のX2方向に位置する平面であり、第1面41に対して所定の角度(具体的には鋭角)で傾斜する。円弧面510と傾斜面511と傾斜面512とが連続的に連結されることで第1部分51の表面が構成される。
【0025】
図3に例示される通り、本体部40の第1面41は、第1部分51のX1方向に位置する領域R1と、第1部分51のX2方向に位置する領域R2とを含む。領域R1は、第1部分51のうちX1方向の縁辺と、当該第1部分51のX1方向に隣合う開口43との間の領域である。領域R2は、第1部分51のうちX2方向の縁辺と、当該第1部分51のX2方向に隣合う開口43との間の領域である。領域R1および領域R2は、第1部分51に沿ってY方向に延在する領域である。
【0026】
背面ビード60は、本体部40の第2面42に形成されて当該第2面42から突出する線状の突起である。背面ビード60は、本体部40の縁辺と各開口43の間隔とに沿うように格子状に形成される。図6および図7に例示される通り、背面ビード60は、相互に間隔をあけて並設された突起部61と突起部62とを含む。第1部分51における円弧面510の稜線は、平面視で突起部61と突起部62との間に位置する。
【0027】
複数の補助ビード70は、本体部40の第1面41に形成されて当該第1面41から突出する突起である。各補助ビード70は、第1面41において封止ビード50からX方向(すなわちロータ10の周方向)に突出する部分である。具体的には、各補助ビード70は、封止ビード50の各第1部分51からX方向に突出する。具体的には、Y方向において開口43が存在する範囲Q内に複数の補助ビード70が形成される。範囲Qは、開口43の内周縁のうちY1方向に位置する部分q1と、当該内周縁のうちY2方向に位置する部分q2との間の範囲である。開口43の寸法および形状はロータ10の開口12と実質的に共通するから、Y方向においてロータ10の開口22が存在する範囲内に複数の補助ビード70が形成される、とも換言される。
【0028】
なお、各補助ビード70は範囲Qの外側に形成されてもよい。また、1個の補助ビード70が範囲Qの内側と外側とにわたり形成されてもよい。複数の補助ビード70のうち一部の補助ビードが範囲Qの内側に形成され、他の一部の補助ビード70が範囲Qの外側に形成されてもよい。
【0029】
図5および図7に例示される通り、各補助ビード70の表面は、頂上面701と傾斜面702とを含む。頂上面701は、第1部分51における円弧面510の頂上からX方向に延在する曲面である。傾斜面702は、第1面41に対して所定の角度(具体的には鋭角)で傾斜する。頂上面701と傾斜面702とが連続的に連結されることで補助ビード70の表面が構成される。
【0030】
第1実施形態の複数の補助ビード70は、複数の第1補助ビード71と複数の第2補助ビード72とを含む。図3に例示される通り、1個の第1部分51に対して2個の第1補助ビード71と2個の第2補助ビード72とが連結される。具体的には、第1部分51に対応する2個の第1補助ビード71は、Y方向に所定の間隔をあけて配列される。同様に、第1部分51に対応する2個の第2補助ビード72は、Y方向に所定の間隔をあけて配列される。第1実施形態において、Y方向における第1補助ビード71の位置とY方向における第2補助ビード72の位置とは同じ位置である。したがって、第1部分51に対応する2個の第1補助ビード71の間隔と、第1部分51に対応する2個の第2補助ビード72の間隔とは共通する。
【0031】
図3および図5に例示される通り、複数の第1補助ビード71の各々は、第1部分51からX1方向に突出する補助ビード70である。具体的には、第1部分51のX1方向に位置する領域R1内に各第1補助ビード71が形成される。各第1補助ビード71の先端と開口43との間には所定の間隔が確保される。
【0032】
図3および図5に例示される通り、複数の第2補助ビード72の各々は、第1部分51からX2方向に突出する補助ビード70である。具体的には、第1部分51のX2方向に位置する領域R2内に各第2補助ビード72が形成される。各第2補助ビード72の先端との開口43との間には所定の間隔が確保される。第1補助ビード71と第2補助ビード72との間で寸法および形状は共通する。
【0033】
以上の構成において、ロータ10がA方向に回転する過程において、ロータ10の外周面11は、密封装置30の内周面31(例えば封止ビード50の表面および補助ビード70の表面)に接触した状態で当該第1面41に対してX2方向に相対的に移動する。すなわち、ロータ10の開口12は第1部分51に対してX2方向に移動する。以上のような回転の過程において、開口12の内周縁は、第1補助ビード71に接触して当該第1補助ビード71に乗上げてから第1部分51上を通過する。したがって、補助ビード70が設置されない形態と比較して、ロータ10のA方向の回転に必要なトルクのピークを抑制できる。
【0034】
また、ロータ10がB方向に回転する過程において、ロータ10の外周面11は、密封装置30の内周面31(例えば封止ビード50の表面および補助ビード70の表面)に接触した状態で当該第1面41に対してX1方向に相対的に移動する。すなわち、ロータ10の開口12は第1面41に対してX1方向に移動する。以上のような回転の過程において、開口12の内周縁は、第2補助ビード72に接触して当該第2補助ビード72に乗上げてから第1部分51上を通過する。したがって、補助ビード70が設置されない形態と比較して、ロータ10のA方向の回転に必要なトルクのピークを抑制できる。
【0035】
第1実施形態においては特に、第1部分51からX1方向に第1補助ビード71が突出し、かつ、第1部分51からX2方向に第2補助ビード72が突出する。したがって、以上の説明の通り、ロータ10が回転する方向(A方向/B方向)に関わらず、当該ロータ10の回転に必要なトルクのピークを抑制できる。
【0036】
図8は、第1面41に対するロータ10の位置(横軸)とロータ10の回転に必要なトルク(縦軸)との関係を表すグラフである。図8においては、図9に例示される通り、第1面41に対してX2方向にロータ10の外周面11が相対的に移動する場合が想定されている。第1部分51からX1方向に2個の第1補助ビード71が突出する構成1と、第1補助ビード71が形成されていない構成2とを解析対象とし、非線形有限要素解析ソフトウェア「Marc」を利用してトルクを解析した。
【0037】
図8に例示される通り、ロータ10の回転に必要なトルクは、当該ロータ10の外周面11が第1面41に対してX2方向に移動する過程において変動する。第1補助ビード71が形成されない構成2におけるトルクのピークは0.108N・mである。他方、構成1においては、ロータ10の開口12の内周縁が第1補助ビード71に接触する段階においてトルクが0.04N・m程度まで上昇する。そして、ロータ10がさらに進行して第1部分51上を通過する段階のトルクは0.85N・m程度に抑制される。以上の説明から理解される通り、補助ビード70が設置された構成においては、ロータ10が回転する過程におけるトルクのピークが複数の時点に分散され、結果的に各ピークにおけるトルクが構成2と比較して抑制される。
【0038】
具体的には、補助ビード70が形成されない構成2においてトルクのピークが0.1N・mを上回るのに対し、補助ビード70が形成された構成2においてはトルクのピークが0.1N・m以下に抑制される。より具体的には、構成2においてはトルクのピークを0.9N・m以下に抑制できる。以上の説明から理解される通り、補助ビード70は、ロータ10の回転に必要なトルクのピークを抑制する抑制部として機能する。
【0039】
ところで、ロータ10が回転する過程においては、開口12の内周縁のうちY方向の両端に位置する部分q1および部分q2が、第1部分51に対して連続的に接触する。部分q1および部分q2の接触により局所的な応力が集中するから、補助ビード70が形成されない構成2においては、部分q1および部分q2の接触痕(微細な損傷)が第1部分51に形成される可能性がある。第1実施形態においては、第1部分51に補助ビード70が形成されるから、部分q1および部分q2の接触痕が第1部分51に形成される可能性を低減できるという利点もある。
【0040】
B:第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0041】
図10は、第2実施形態の密封装置30における内周面31(第1面41)の平面図である。図11は、図10における領域α2のの拡大図である。また、図12は、図11におけるXII-XII線の断面図であり、図13は、図11におけるXIII-XIII線の断面図である。
【0042】
第1実施形態においては、第1補助ビード71と第2補助ビード72との間でY方向における位置が共通する形態を例示した。第2実施形態においては、図10および図11に例示される通り、Y方向における各第1補助ビード71の位置と、Y方向における各第2補助ビード72の位置とが相違する。すなわち、各第1補助ビード71のX2方向に第2補助ビード72は位置しない。また、各第2補助ビード72のX1方向に第1補助ビード71は位置しない。
【0043】
具体的には、図10に例示される通り、Y方向において、1個の第1部分51に対応する2個の第2補助ビード72は、当該第1部分51に対応する複数の第1補助ビード71の間に位置する。すなわち、2個の第2補助ビード72の間隔は2個の第1補助ビード71の間隔を下回る。なお、Y方向において開口43が存在する範囲Q内に複数の補助ビード70が形成される構成は、第1実施形態と同様である。第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0044】
図14は、第1補助ビード71と第2補助ビード72との間でY方向の位置が共通する第1実施形態において、第1補助ビード71および第2補助ビード72にロータ10の外周面11が接触した状態の断面図である。第1実施形態においては、第1部分51の円弧面510の稜線が平面視で突起部61と突起部62との間(領域63)に位置する。したがって、第1補助ビード71および第2補助ビード72の双方がロータ10により押圧されることで、第1部分51のうち第1補助ビード71と第2補助ビード72との間の部分(例えば円弧面510)が降下し、密封装置30の封止性能が低下する可能性がある。
【0045】
第2実施形態においては、第1補助ビード71と第2補助ビード72との間でY方向における位置が相違するから、第1部分51の円弧面510にロータ10の外周面11が接触した状態でも、第1部分51のうち第1補助ビード71と第2補助ビード72との間に位置する部分(例えば円弧面510)の降下が抑制される。したがって、第2実施形態によれば、密封装置30による封止性能の低下を抑制できる。
【0046】
C:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0047】
(1)図15に例示される通り、密封装置30の内周面31に低摩擦層80が形成されてもよい。低摩擦層80は、例えば摩擦係数が小さい樹脂材料により内周面31に形成された被膜である。すなわち、本体部40の第1面41と封止ビード50および補助ビード70とが、低摩擦層80により被覆される。例えばフッ素樹脂等が低摩擦層80の材料として好適である。低摩擦層80が形成された構成によれば、ロータ10の回転に必要なトルクをさらに低減できる。
【0048】
(2)前述の各形態においては、X方向に隣合う2個の開口43の間に1個の第1部分51が位置する形態を例示した。すなわち、2個の開口43により1個の第1部分51が共用される。図16に例示される通り、開口43毎に第1部分51が個別に形成されてもよい。図16の形態においては、X方向に隣合う2個の第1部分51とY方向に隣合う2個の第2部分52とにより構成される矩形状のシール部分が、開口43毎に個別に形成される。各第1部分51に1個以上の補助ビード70が形成される構成は、第1実施形態または第2実施形態と同様である。
【0049】
(3)前述の各形態においては、2個の第1補助ビード71と2個の第2補助ビード72とが第1部分51に連結された形態を例示したが、1個の第1部分51に対応する第1補助ビード71および第2補助ビード72の各々の個数は変更されてよい。例えば、図17に例示される通り、第1部分51に対して1個の第1補助ビード71と1個の第2補助ビード72とが連結された構成も想定される。また、図18に例示される通り、第1部分51に対して3個の第1補助ビード71と3個の第2補助ビード72とが連結された構成も想定される。また、ひとつの第1部分51に連結される補助ビード70の個数と他の第1部分51に連結される補助ビード70の個数とが相違してもよい。第1部分51に連結される第1補助ビード71の個数と当該第1部分51に連結される第2補助ビード72の個数とが相違してもよい。
【0050】
(4)前述の各形態においては、第1部分51に第1補助ビード71および第2補助ビード72の双方が連結された形態を例示したが、第1補助ビード71および第2補助ビード72の一方は省略されてもよい。例えば、ロータ10がA方向のみに回転する構成においては、図19に例示される通り、第1部分51からX1方向に突出する第1補助ビード71のみが第1部分51に連結された形態が想定される。他方、ロータ10がB方向のみに回転する構成においては、図20に例示される通り、第1部分51からX2方向に突出する第2補助ビード72のみが第1部分51に連結された形態が想定される。
【0051】
(5)前述の各形態においては、Y方向において2個の第2補助ビード72が2個の第1補助ビード71の間に位置する形態を例示したが、第1補助ビード71と第2補助ビード72との間でY方向の位置を相違させるための構造は任意であり、以上の例示に限定されない。例えば、図21から図25に例示される通り、第1補助ビード71と第2補助ビード72とがY方向に沿って交互に配置されてもよい。
【0052】
図21の構成においては、2個の第1補助ビード71と3個の第2補助ビード72とがY方向に沿って交互に配置される。具体的には、3個の第2補助ビード72のうち中央の第2補助ビード72とY1方向の第2補助ビード72との間に1個の第1補助ビード71が位置し、中央の第2補助ビード72とY2方向の第2補助ビード72との間に1個の第1補助ビード71が位置する。
【0053】
図22の構成においては、3個の第1補助ビード71と2個の第2補助ビード72とがY方向に沿って交互に配置される。具体的には、3個の第1補助ビード71のうち中央の第1補助ビード71とY1方向の第1補助ビード71との間に1個の第2補助ビード72が位置し、中央の第1補助ビード71とY2方向の第1補助ビード71との間に1個の第2補助ビード72が位置する。
【0054】
図23の構成においては、1個の第1補助ビード71と2個の第2補助ビード72とがY方向に沿って交互に配置される。具体的には、Y方向に隣合う2個の第2補助ビード72の間に1個の第1補助ビード71が位置する。
【0055】
図24の構成においては、2個の第1補助ビード71と1個の第2補助ビード72とがY方向に沿って交互に配置される。具体的には、Y方向に隣合う2個の第1補助ビード71の間に1個の第2補助ビード72が位置する。
【0056】
図25の構成においては、2個の第1補助ビード71と2個の第2補助ビード72とがY方向に沿って交互に配置される。なお、第1補助ビード71の個数および第2補助ビード72の個数は、図21から図25の例示に限定されない。
【0057】
(6)前述の各形態においては、背面ビード60が突起部61と突起部62とを含む形態を例示したが、背面ビード60の形状は任意であり、以上の例示に限定されない。例えば、図26に例示される通り、背面ビード60は1個の突起部61で構成されてもよい。図26の構成においては、第1部分51における円弧面510の稜線が平面視で突起部61の稜線に重複する。
【0058】
図26の構成においては、突起部61と突起部62との間に薄肉の領域63が形成される第1実施形態と比較して、ロータ10からの圧力による第1部分51の変形が抑制される。したがって、第1補助ビード71と第2補助ビード72との間でY方向に位置が共通する構成(第1実施形態)においても、図14を参照して説明した封止性能の低下は発生し難いという利点がある。
【0059】
(7)補助ビード70の形状は任意であり、前述の各形態の例示に限定されない。例えば、前述の各形態においては、補助ビード70の頂上面701が第1部分51の円弧面510の頂上からX方向に延在する形態を例示したが、図27に例示される通り、第1部分51の傾斜面511または傾斜面512から補助ビード70の頂上面701がX方向に延在する形態も想定される。
【0060】
また、前述の各形態においては、補助ビード70の表面が頂上面701と傾斜面702とで構成される形態を例示したが、図28に例示される通り、第1面41に平行な頂上面701は省略されてもよい。すなわち、補助ビード70は傾斜面702のみで構成されてもよい。
【0061】
図29に例示される通り、補助ビード70が開口43の周縁まで到達する形態も想定される。すなわち、図29に図示された断面に第1面41は含まれなくてよい。図30に例示される通り、補助ビード70が開口43の周縁までX軸の方向に延在する形態も想定される。図30において補助ビード70と開口43との間隔はゼロである。
【0062】
(8)前述の各形態においては、第1補助ビード71と第2補助ビード72とが同形状である形態を例示したが、第1補助ビード71と第2補助ビード72とは相異なる形状でもよい。第1補助ビード71と第2補助ビード72とで寸法が相違する形態も想定される。
【0063】
(9)前述の各形態においては、矩形帯状に成形された密封装置30が円環状に変形された状態で使用される形態を例示したが、密封装置30が円環状に成形されてもよい。具体的には、密封装置30は、外形が円柱状または円錐台状である円環状に形成されてもよい。

【0064】
(10)前述の各形態においては、第1部分51の表面が円弧面510と傾斜面511と傾斜面512とを含む形態を例示したが、図31に例示される通り、第1部分51の表面は円弧面510(すなわち曲面)のみで構成されてもよい。すなわち、平面を含む傾斜面511および傾斜面512は省略されてよい。
【0065】
(11)前述の各形態においては、各補助ビード70の表面が曲面と平面とを含む形態を例示したが、図32に例示される通り、各補助ビード70の表面は、例えば円弧面等の曲面のみで構成されてもよい。すなわち、平面を含む傾斜面702は省略されてもよい。
【0066】
(12)前述の各形態においては、密封装置30が一体の弾性体により構成される形態を例示したが、密封装置30は相互に別体で形成された複数の部分により構成されてもよい。例えば、密封装置30は、中心軸Cの周方向に分割された複数の部分により構成されてもよいし、中心軸Cの方向に分割された複数の部分により構成されてもよい。
【0067】
(13)本願における「第n」(nは自然数)という記載は、各要素を表記上において区別するための形式的かつ便宜的な標識(ラベル)としてのみ使用され、如何なる実質的な意味も持たない。したがって、「第n」という表記を根拠として、各要素の位置または製造の順番等が限定的に解釈される余地はない。
【0068】
D:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0069】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る密封装置は、回転可能なロータの外周面と、前記ロータを収容するハウジングの内周面との間に設置される密封装置であって、前記ロータの外周面に対向する第1面に設置され、前記ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制する抑制部を具備する。以上の態様においては、密封装置の第1面に設置された抑制部により、抑制部が設置されない形態と比較して、ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制できる。
【0070】
本開示の他の態様(態様2)に係る密封装置は、回転可能なロータにおいて第1開口が形成された外周面と、前記ロータを収容するハウジングにおいて前記第1開口に連通可能な第2開口が形成された内周面との間に設置される密封装置であって、前記ロータの外周面に対向する第1面と、前記ハウジングの内周面に対向する第2面とを含み、前記第2開口に対応する開口が形成された本体部と、前記第1面に形成されて前記開口を包囲する封止ビードと、前記第1面において前記封止ビードから周方向に突出する1以上の補助ビードとを具備する。以上の態様においては、ロータに形成された第1開口の内周縁が、当該ロータの回転の過程において当該補助ビードに接触してから封止ビード上を通過する。したがって、補助ビードが設置されない形態と比較して、ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制できる。
【0071】
態様2の具体例(態様3)において、前記封止ビードは、軸方向に沿う第1部分を含み、前記1以上の補助ビードは、前記第1部分から前記周方向に突出する。以上の態様においては、ロータに形成された第1開口の内周縁が、補助ビードに接触してから封止ビード上を通過する。したがって、補助ビードが設置されない形態と比較して、ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制できる。
【0072】
態様3の具体例(態様4)において、前記1以上の補助ビードは、前記第1部分から第1方向に突出する1以上の第1補助ビードと、前記第1部分から前記第1方向とは反対の第2方向に突出する1以上の第2補助ビードとを含む。以上の態様においては、封止ビードの第1部分から第1方向に1以上の第1補助ビードが突出し、当該第1部分から第2方向に1以上の第2補助ビードが突出する。第1部分に対してロータが第2方向に移動する過程においては、当該ロータの第1開口の内周縁が1以上の第1補助ビードに接触して乗上げてから封止ビード上を通過する。他方、第1部分に対してロータが第1方向に移動する過程においては、当該ロータの第1開口の内周縁が1以上の第2補助ビードに接触してから封止ビード上を通過する。したがって、ロータが回転する方向に関わらず、必要なトルクのピークを抑制できる。
【0073】
態様4の具体例(態様5)において、軸方向における前記1以上の第1補助ビードの位置と、前記軸方向における前記1以上の第2補助ビードの位置とは相違する。軸方向における位置が第1補助ビードと第2補助ビードとの間で共通する形態では、第1補助ビードおよび第2補助ビードの双方にロータが接触した状態において、第1部分のうち第1補助ビードと第2補助ビードとの間の部位が降下し、密封装置による封止性能が低下する可能性がある。第1補助ビードと第2補助ビードとの間で軸方向における位置が相違する形態によれば、第1部分のうち第1補助ビードと第2補助ビードとの間に位置する部分の降下が抑制される。したがって、密封装置による封止性能の低下を抑制できる。
【0074】
態様5の具体例(態様6)において、前記1以上の第1補助ビードは、複数の第1補助ビードであり、前記1以上の第2補助ビードは、複数の第2補助ビードであり、軸方向において、前記複数の第2補助ビードは、前記複数の第1補助ビードの間に位置する。以上の態様によれば、密封装置による封止性能の低下を抑制できる。
【0075】
本開示のひとつの態様に係る密封構造は、回転可能なロータと、前記ロータを収容するハウジングと、前記ロータの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設置される密封装置とを具備し、前記密封装置は、前記ロータの外周面に対向する第1面に設置され、前記ロータの回転に必要なトルクのピークを抑制する抑制部を含む。
【0076】
本開示の他の態様に係る密封構造は、外周面に第1開口が形成された回転可能なロータと、前記第1開口に連通可能な第2開口が内周面に形成され、前記ロータを収容するハウジングと、前記ロータの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設置される密封装置とを具備し、前記密封装置は、前記ロータの外周面に対向する第1面と、前記ハウジングの内周面に対向する第2面とを含み、前記第2開口に対応する開口が形成された本体部と、前記第1面に形成されて前記開口を包囲する封止ビードと、前記第1面において前記封止ビードから周方向に突出する1以上の補助ビードとを含む。
【符号の説明】
【0077】
100…弁装置、10…ロータ、11…外周面、12…開口、13…流路、20…ハウジング、21…内周面、22…開口、30…密封装置、31…内周面、32…外周面、40…本体部、41…第1面、42…第2面、43…開口、50…封止ビード、51…第1部分、510…円弧面、511…傾斜面、512…傾斜面、52…第2部分、60…背面ビード、61…突起部、62…突起部、70…補助ビード、701…頂上面、702…傾斜面、71…第1補助ビード、72…第2補助ビード、80…低摩擦層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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