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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117997
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】判別装置及び判別方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3563 20140101AFI20240823BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20240823BHJP
【FI】
G01N21/3563
G01N21/359
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024134
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】勝又 政和
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059HH01
2G059HH06
2G059MM01
2G059MM02
2G059MM03
2G059MM04
2G059MM05
2G059MM17
(57)【要約】
【課題】測定時間の短縮化及び判別の高精度化を両立できる判別装置を提供する。
【解決手段】吸光度のピークを有する第1注目波長、第1注目波長とは異なるピークを有する第2注目波長、及び少なくとも一つの補助波長を含む判別用波長を有する測定光を被測定物に照射する照射部と、測定光に基づいて判別用波長のそれぞれにおける被測定物の吸光度を測定する測定部3と、被測定物の吸光度を標準化し、各標準化値を用いた判別式によって判別値を算出する算出部7と、判別値に基づいて被測定物が生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する判別部8と、を備え、補助波長は、生分解性プラスチックに対する吸光度が第1注目波長及び第2注目波長よりも低くなる波長であり、測定部3は、補助波長における被測定物の吸光度をベース値として、第1注目波長及び第2注目波長におけるそれぞれの吸光度の標準化値を検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性プラスチックと非生分解性プラスチックとを判別する判別装置であって、
吸光度のピークを有する第1注目波長、前記第1注目波長とは異なるピークを有する第2注目波長、及び少なくとも一つの補助波長を含む判別用波長を有する測定光を被測定物に照射する照射部と、
前記被測定物を透過又は反射した前記測定光に基づいて前記判別用波長のそれぞれにおける前記被測定物の吸光度を測定する測定部と、
前記判別用波長のそれぞれにおける前記被測定物の吸光度を標準化し、各標準化値を用いた判別式によって判別値を算出する算出部と、
前記判別値に基づいて前記被測定物が生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する判別部と、を備え、
前記補助波長は、前記生分解性プラスチックに対する吸光度が前記第1注目波長及び前記第2注目波長よりも低くなる波長であり、
前記測定部は、前記補助波長における前記被測定物の吸光度をベース値として、前記第1注目波長及び前記第2注目波長におけるそれぞれの吸光度の標準化値を検出する、判別装置。
【請求項2】
前記補助波長の少なくとも一つは、前記第1注目波長と前記第2注目波長との間の波長である、請求項1記載の判別装置。
【請求項3】
前記判別式は、オフセット値と、前記各標準化値に係数を乗算した乗算値とに基づいて構成され、
前記算出部は、前記生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値に収束し、前記非生分解性プラスチックに対する判別値が前記第1の値と異なる第2の値に収束するように、統計処理によって前記係数を決定する、請求項1又は2記載の判別装置。
【請求項4】
前記第1注目波長は、1900±10nmであり、前記第2注目波長は、1720±10nmであり、前記補助波長は、1881±10nmである、請求項1又は2記載の判別装置。
【請求項5】
前記第1注目波長は、1900±10nmであり、前記第2注目波長は、1720±10nmであり、前記補助波長は、1731±10nm及び1881±10nmである、請求項1又は2記載の判別装置。
【請求項6】
前記第2注目波長は、前記補助波長よりも短い、請求項5記載の判別装置。
【請求項7】
前記生分解性プラスチックは、ポリヒドロキシブタン酸(PHBH)、ポリ乳酸(PLA)、及びポリブチレンサクシネート(PBS)からなる群から選択される少なくとも一つのプラスチックを含み、
前記非生分解性プラスチックは、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、及びポリ塩化ビニル(PVC)からなる群から選択される少なくとも一つのプラスチックを含む、請求項1又は2記載の判別装置。
【請求項8】
生分解性プラスチックと非生分解性プラスチックとを判別する判別方法であって、
吸光度のピークを有する第1注目波長、前記第1注目波長とは異なるピークを有する第2注目波長、及び少なくとも一つの補助波長を含む判別用波長を有する測定光を被測定物に照射する照射ステップと、
前記被測定物を透過又は反射した前記測定光に基づいて前記判別用波長のそれぞれにおける前記被測定物の吸光度を測定する測定ステップと、
前記判別用波長のそれぞれにおける前記被測定物の吸光度を標準化し、各標準化値を用いた判別式によって判別値を算出する算出ステップと、
前記判別値に基づいて前記被測定物が生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する判別ステップと、を備え、
前記補助波長は、前記生分解性プラスチックに対する吸光度が前記第1注目波長及び前記第2注目波長よりも低くなる波長であり、
前記測定ステップでは、前記補助波長における前記被測定物の吸光度をベース値として、前記第1注目波長及び前記第2注目波長におけるそれぞれの吸光度の標準化値を検出する、判別方法。
【請求項9】
前記判別式は、オフセット値と、前記各標準化値に係数を乗算した乗算値とに基づいて構成され、
前記算出ステップでは、前記生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値に収束し、前記非生分解性プラスチックに対する判別値が前記第1の値と異なる第2の値に収束するように、統計処理によって前記係数を決定する、請求項8記載の判別方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判別装置及び判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外分光法によりプラスチックの近赤外吸収スペクトル生成し、近赤外吸収スペクトルに基づいて生分解性プラスチックを判別するプラスチック判別方法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のプラスチック判別方法では、吸収スペクトルにおける長波長側のピーク及び短波長側のピークに基づいて生分解性プラスチックであるポリ乳酸(PLLA)と非生分解性プラスチックとを判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-78678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のプラスチック判別方法では、判別対象となる生分解性プラスチックの種類としてポリ乳酸のみに着目している。近年の生分解性プラスチックの生産量の増加に伴い、ポリ乳酸を含めた複数の生分解性プラスチック(例えば、ポリヒドロキシブタン酸(PHBH))を非生分解性プラスチックと判別することが望まれている。
【0005】
複数の生分解性プラスチックを非生分解性プラスチックと高精度に判別する場合、判別に用いる波長の数が多い方が精度の観点から好ましいと考えられる。しかしながら、判別に用いる波長の数を増加させると、判別に要する処理が複雑となり、測定時間が増大してしまうおそれがある。一方で、ピークを有する特定の波長のみに基づいて判別を行う場合、測定の誤差などに起因して計測スペクトルが本来のスペクトルの特徴から乖離すると、判別精度が低下してしまうことが考えられる。
【0006】
本開示では、測定時間の短縮化及び判別の高精度化を両立できる判別装置及び判別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る判別装置は、生分解性プラスチックと非生分解性プラスチックとを判別する判別装置であって、吸光度のピークを有する第1注目波長、第1注目波長とは異なるピークを有する第2注目波長、及び少なくとも一つの補助波長を含む判別用波長を有する測定光を被測定物に照射する照射部と、被測定物を透過又は反射した測定光に基づいて判別用波長のそれぞれにおける被測定物の吸光度を測定する測定部と、判別用波長のそれぞれにおける被測定物の吸光度を標準化し、各標準化値を用いた判別式によって判別値を算出する算出部と、判別値に基づいて被測定物が生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する判別部と、を備え、補助波長は、生分解性プラスチックに対する吸光度が第1注目波長及び第2注目波長よりも低くなる波長であり、測定部は、補助波長における被測定物の吸光度をベース値として、第1注目波長及び第2注目波長におけるそれぞれの吸光度の標準化値を検出する。
【0008】
この判別装置では、第1注目波長及び第2注目波長における被測定物の吸光度を補助波長における吸光度と共に測定し、吸光度の標準化値を用いた判別式によって得られた判別値に基づいて、被測定物が生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する。これにより、多数の波長に対する吸光度から判別を行う場合と比較して、判別に要する処理が簡易なものとなり、測定時間の短縮化が図られる。また、この判別装置では、生分解性プラスチックに対する吸光度が第1注目波長及び第2注目波長における吸光度よりも低い補助波長を判別用波長として導入している。これにより、補助波長における吸光度をベース値として、第1注目波長及び第2注目波長におけるそれぞれの吸光度の標準化値を高精度に検出することが可能となるため、吸光度を用いた判別の精度を向上させることができる。
【0009】
補助波長の少なくとも一つは、第1注目波長と第2注目波長との間の波長でもよい。第1注目波長と第2注目波長との間の波長には、複数の種類の生分解性プラスチックにおいて共通して吸光度が低下する傾向にある波長が存在する。このような波長を補助波長として用いることによって、第1注目波長及び第2注目波長におけるそれぞれの吸光度の標準化値の検出精度が更に高まり、判別の精度を一層向上させることができる。
【0010】
判別式は、オフセット値と、各標準化値に係数を乗算した乗算値とに基づいて構成され、算出部は、生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値に収束し、非生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値と異なる第2の値に収束するように、統計処理によってオフセット値及び係数を決定してもよい。このような構成により、生分解性プラスチックに対する判別値と、非生分解性プラスチックに対する判別値とを乖離させることができるため、判別の精度を更に向上させることができる。
【0011】
第1注目波長は、1900±10nmであり、第2注目波長は、1720±10nmであり、補助波長は、1881±10nmであってもよい。生分解性プラスチックの吸光スペクトルは、1900±10nm及び1720±10nmにそれぞれピークを有する。この場合、複数の種類の生分解性プラスチックに対して判別用波長の最適化が図られる。
【0012】
第1注目波長は、1900±10nmであり、第2注目波長は、1720±10nmであり、補助波長は、1731±10nm及び1881±10nmであってもよい。この場合、複数の種類の生分解性プラスチックに対して判別用波長の最適化が図られる。
【0013】
第2注目波長は、補助波長よりも短くてもよい。この場合、第2注目波長における吸光度の標準化値の検出精度が更に高まり、判別の精度を一層向上させることができる。
【0014】
生分解性プラスチックは、ポリヒドロキシブタン酸(PHBH)、ポリ乳酸(PLA)、及びポリブチレンサクシネート(PBS)からなる群から選択される少なくとも一つのプラスチックを含み、非生分解性プラスチックは、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、及びポリ塩化ビニル(PVC)からなる群から選択される少なくとも一つのプラスチックを含んでもよい。このような構成により、ポリ乳酸を含めた複数の種類の生分解性プラスチックを非生分解性プラスチックに対して精度良く判別することができる。
【0015】
本開示の一側面に係る判別方法は、生分解性プラスチックと非生分解性プラスチックとを判別する判別方法であって、吸光度のピークを有する第1注目波長、第1注目波長とは異なるピークを有する第2注目波長、及び少なくとも一つの補助波長を含む判別用波長を有する測定光を被測定物に照射する照射ステップと、被測定物を透過又は反射した測定光に基づいて判別用波長のそれぞれにおける被測定物の吸光度を測定する測定ステップと、判別用波長のそれぞれにおける被測定物の吸光度を標準化し、各標準化値を用いた判別式によって判別値を算出する算出ステップと、判別値に基づいて被測定物が生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する判別ステップと、を備え、補助波長は、生分解性プラスチックに対する吸光度が第1注目波長及び第2注目波長よりも低くなる波長であり、測定ステップは、補助波長における被測定物の吸光度をベース値として、第1注目波長及び第2注目波長におけるそれぞれの吸光度の標準化値を検出する。
【0016】
この判別方法では、第1注目波長及び第2注目波長における被測定物の吸光度を補助波長における吸光度と共に測定し、吸光度の標準化値を用いた判別式によって得られた判別値に基づいて、被測定物が生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する。これにより、多数の波長に対する吸光度から判別を行う場合と比較して、判別に要する処理が簡易なものとなり、測定時間の短縮化が図られる。また、この判別方法では、生分解性プラスチックに対する吸光度が第1注目波長及び第2注目波長における吸光度よりも低い補助波長を判別用波長として導入している。これにより、補助波長における吸光度をベース値として、第1注目波長及び第2注目波長におけるそれぞれの吸光度の標準化値を高精度に検出することが可能となるため、吸光度を用いた判別の精度を向上させることができる。
【0017】
判別式は、オフセット値と、各標準化値に係数を乗算した乗算値とに基づいて構成され、算出ステップでは、生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値に収束し、非生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値と異なる第2の値に収束するように、統計処理によってオフセット値及び係数を決定してもよい。このような構成により、生分解性プラスチックに対する判別値と、非生分解性プラスチックに対する判別値が第2の値とを乖離させることができるため、判別の精度を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、測定時間の短縮化及び判別の高精度化を両立できる判別装置及び判別方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態に係る判別装置を被測定物と共に示す概略図である。
図2図1に示された照射部を示す概略図である。
図3図1に示された判別装置により実行される処理手順を示すフローチャートである。
図4】生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックの吸光スペクトルの一例を示す図である。
図5】生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックの吸光スペクトルの一例を示す図である。
図6図3に示された標準化ステップにおいて標準化された標準化値の一例を示す図である。
図7図6に示された標準化値に基づいて、統計処理によって決定されたオフセット値及び係数の一例を示す図である。
図8】3回目に測定した吸光度から算出した標準化値及び判別値の一例を示す図である。
図9】3回目に測定した吸光度から算出した標準化値及び判別値の一例を示すグラフである。
図10】判別結果の一例を示すグラフである。
図11】比較例に係る判別結果の一例を示すグラフである。
図12】第1変形例に係る判別値の一例を示すグラフである。
図13】第2変形例に係る判別値の一例を示すグラフである。
図14】第3変形例に係る判別値の一例を示すグラフである。
図15】第4変形例に係る測定部を示す簡略図である。
図16】第5変形例に係る測定部を示す簡略図である。
図17】第6変形例に係る測定部を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示の一実施形態に係る判別装置及び判別方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態に係る判別装置1を被測定物Aと共に示す概略図である。図1に示す判別装置1は、被測定物Aが生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する装置である。判別装置1は、照射部2と、測定部3と、制御部4と、通知部9とを備えている。
【0022】
生分解性プラスチックは、バイオプラスチックの一種であり、微生物の働きにより自然に分解される性質をもつプラスチックである。生分解性プラスチックは、ポリヒドロキシブタン酸(PHBH)、ポリ乳酸(PLA)、及びポリブチレンサクシネート(PBS)からなる群から選択される少なくとも一つのプラスチックを含む。非生分解性プラスチックは、バイオプラスチックのうち生分解性プラスチックに分類されないバイオマスプラスチック、及びバイオプラスチックに分類されない従来のプラスチックを含む。非生分解性プラスチックは、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、及びポリ塩化ビニル(PVC)からなる群から選択される少なくとも一つのプラスチックを含む。
【0023】
照射部2は、被測定物Aの判別に用いる判別用波長を含む測定光Lを被測定物Aに照射する部分である。判別用波長とは、被測定物Aを判別するために予め決定された複数の波長である。詳細については後述する。照射部2は、図2に示すように、例えば複数の光源21と、光ファイバF1と、複数の光源21及び光ファイバF1を格納する光源筐体22と、光ファイバF1とは別の光ファイバF2とを有している。
【0024】
光源筐体22は、前面22aと、前面22aとは反対側の面である背面22bとを含んでいる。前面22aは、被測定物Aと対向している。光ファイバF1の入射端Faは、前面22aと一致している。光ファイバF1は、光源筐体22内を前面22aから背面22bに向かって延在している。光ファイバF2は、光源筐体22の外部において、背面22bから測定部3まで延在している。図2の例では、光ファイバF2は、背面22bにおいて光ファイバF1とコネクタCによって接続されている。光ファイバF2の出射端Fbは、測定部3に接続されている。なお、光ファイバF2及びコネクタCは、必ずしも用いられなくてもよい。その場合、例えば、背面22bには、光源筐体22の内部と外部とを連通する穴が設けられており、光ファイバF1がその穴を通って、測定部3まで延在してもよい。
【0025】
照射部2において、複数の光源21は、前面22aから測定光Lを被測定物Aに向けて照射する。測定光Lは、判別用波長を含む光である。測定光Lは、判別用波長を構成する複数の波長を全て含むブロードな光であってもよいし、複数の波長のそれぞれの光を含むマルチ光であってもよい。照射部2は、被測定物Aから反射した測定光Lを測定部3に伝送する。被測定物Aは、反射板W上に載置されている。反射板Wは、例えばPTFE(ポリテロラフルオロエチレン:テフロン)、アルミナ、セラミック等の素材から構成されている。なお、テフロンは、ケマーズ社の登録商標である。
【0026】
測定部3は、被測定物Aを反射した測定光Lに基づいて判別用波長のそれぞれにおける吸光度を測定する。測定部3には、被測定物Aを反射した測定光Lが光ファイバFを介して入射される。本実施形態では、測定部3は、反射法により近赤外吸収スペクトルを取得し、吸光度を測定する。測定部3は、例えば、拡散反射法(DR法:Diffuse reflection法)により近赤外吸収スペクトルを取得する。測定部3が拡散反射法により近赤外吸収スペクトルを取得する場合、被測定物Aと反射板Wとの間で拡散反射が起こり得る。
【0027】
本実施形態では、測定部3は、フーリエ変換近赤外分光分析法(FT-NIR:Fourier Transform - near Infrared Spectroscopy)によって、近赤外吸収スペクトルを取得する近赤外分光器によって構成されている。測定部3は、測定光Lを干渉させるために、固定鏡、反射鏡、及びビームスプリッタを含む。測定部3は、測定光Lを受光し、電気信号を生成する光検出器を含む。光検出器は、例えば、InGaAsフォトダイオードである。測定部3は、被測定物Aの近赤外吸収スペクトルを生成するために、スペクトル生成部を含む。
【0028】
制御部4は、図1に示すように、動作制御部5と、決定部6と、算出部7と、判別部8とを有している。動作制御部5は、例えば、判別装置1のユーザからの入力指示に基づいて、照射部2及び測定部3の動作を制御する制御情報を照射部2及び測定部3に出力する。動作制御部5による制御には、例えば、測定光Lの照射のオン/オフ、反射板Wの水平方向又は上下方向の位置調整、近赤外分光器内の移動鏡の移動速度及び移動距離などが含まれる。
【0029】
決定部6は、判別用波長を決定する部分である。決定部6は、例えば、判別装置1のユーザから入力される指示に基づいて判別用波長を決定する。判別用波長は、第1注目波長と、第2注目波長と、少なくとも一つの補助波長とを含んでいる。第1注目波長及び第2注目波長は、生分解性プラスチックのピークが出現する波長である。少なくとも一つの補助波長は、生分解性プラスチックに対する吸光度が第1注目波長及び第2注目波長よりも低くなる波長である。本実施形態では、二つの注目波長に対して二つの補助波長を用いる態様を例示する。決定部6は、決定した判別用波長を示す決定情報を測定部3に出力する。
【0030】
算出部7は、決定部6において決定した判別用波長を構成する複数の波長のそれぞれにおける吸光度を標準化し、各標準化値を用いた判別式によって判別値を算出する部分である。算出部7には、測定部3から判別用波長を構成する複数の波長のそれぞれにおける吸光度のデータが入力される。算出部7は、それぞれの波長の吸光度から平均値を減算し、減算した値を標準偏差で除算することによって、それぞれの波長の吸光度に対する標準化値を算出する。算出部7は、生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値に収束し、非生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値と異なる第2の値に収束するように、統計処理によって判別式を決定する。そして、算出部7は、決定した判別式に基づいて判別値を算出する。算出部7は、算出した判別値を判別部8に出力する。
【0031】
判別部8は、算出部7において算出された判別値に基づいて被測定物Aが生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する部分である。判別部8には、算出部7から判別値が入力される。判別部8は、入力された判別値が閾値以上である場合、被測定物Aが生分解性プラスチックであると判断する。一方で、判別部8は、入力された判別値が閾値を下回る場合、被測定物Aが非生分解性プラスチックであると判断する。判別部8は、判別結果を通知部9に出力する。
【0032】
通知部9は、判別結果をユーザに通知する部分である。通知部9には、判別部8から判別結果が入力される。通知部9は、例えば、ユーザとのインタフェース部を含んでおり、インタフェース部に判別結果を表示してもよい。或いは、通知部9は、音声による通知をしてもよいし、ランプの点灯による通知をしてもよい。これにより、ユーザが判別結果を一連の処理ステップの中で確認することができる。
【0033】
測定部3におけるスペクトル生成部、制御部4、及び通知部9は、物理的には、例えばCPU等のプロセッサ、RAM、ROM等の記憶媒体を備えるコンピュータである。コンピュータは、表示部や入力部を一体に備えたスマートフォン或いはタブレット端末であってもよい。コンピュータは、マイコンやFPGA(Field-Programmable Gate Array)で構成されていてもよい。
【0034】
図3は、図1に示された判別装置1により実行される判別方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0035】
図3に示すように、まず、決定部6は、ユーザから入力される指示に基づいて、第1注目波長、第2注目波長、及び少なくとも一つの補助波長を判別用波長として決定する(ステップST1:測定ステップ)。具体的には、ユーザは、第1注目波長、第2注目波長、及び少なくとも一つの補助波長を判別用波長として決定部6に入力する。決定部6は、ユーザからの入力を受けて、判別用波長を決定し、決定された判別用波長を示す決定情報を測定部3に出力する。図4及び図5は、生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックの吸光スペクトルの一例を示す図である。図4及び図5では、横軸に波長(nm)、縦軸に吸光度(SNV)を示している。なお、吸光度(SNV)とは、吸光度を標準化した値を表す。標準化の詳細については、後述する。図4に示された吸光スペクトルは、1700nm~1740nmにおける吸光度を示し、図5に示された吸光スペクトルは、1880nm~1920nmにおける吸光度を示している。
【0036】
図4及び図5では、生分解性プラスチックの吸光度として、PHBH、PLA、Bio-PBS、及び材料不明のプラスチックの吸光度を示している。PHBH(Green Planet)は、カネカ社の登録商標である。Bio-PBSは、三菱ケミカル社の登録商標である。材料不明のプラスチックとは、例えば、プラスチックゴミであり、上記のいずれの生分解性プラスチックにも分別されない生分解性プラスチックである。図4及び図5では、非生分解性プラスチックの吸光度として、PS、PP、PET、PE、PE(厚み有り)、PVC、植物由来PE、及び植物由来25%PP(緑)の吸光度を示している。PEにおいては、厚さ数十μm程度の厚さのPEと、1mmの厚さのPE(厚み有り)との二種類に対してそれぞれ吸光度を例示する。植物由来PEとは、植物由来の割合が所定の値以上(例えば、バイオマス度10%以上)のPEである。植物由来25%PP(緑)とは、植物由来の割合が25%以上(例えば、バイオマス度25%以上)であり、緑色のPPである。
【0037】
決定部6は、ユーザが入力した第1注目波長λ1を、生分解性プラスチックの吸光度がピークを有している波長として決定する。図5の例では、1900nm近傍の波長(1900±10nm)において、PHBH、PLA、Bio-PBS、及び材料不明の吸光度がピークを有している。生分解性プラスチックは、構造中にエステル結合を有するため、1900nm近傍の波長にピークを有する。この場合、決定部6は、1900nmを第1注目波長λ1として決定すればよい。非生分解性プラスチックの吸光度では、PETの吸光度は、1900nm近傍の波長においてピークを有している。PETは、生分解性プラスチックと同様に、構造中にエステル結合を有するため、1900nm近傍の波長にピークを有する。
【0038】
決定部6は、ユーザが入力した第2注目波長を、第1注目波長λ1と同様に、生分解性プラスチックの吸光度がピークを有している波長として決定する。図4の例では、1720nm近傍の波長(1720±10nm)において、PHBH、PLA、Bio-PBS、及び材料不明の吸光度がピークを有している。1720nm近傍の波長における吸光度には、1900nm近傍の波長の吸光度に比べ、比較的ブロードなピークが現れる。この場合、決定部6は、1720nmを第2注目波長λ3として決定すればよい。
【0039】
決定部6は、ユーザが入力した補助波長を、生分解性プラスチックに対する吸光度が第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3よりも低くなる波長として決定する。また、決定部6は、補助波長を第1注目波長λ1と第2注目波長λ3との間の波長から決定する。第1注目波長λ1と第2注目波長λ3との間の波長には、複数の種類の生分解性プラスチックにおいて共通して吸光度が低下する傾向にある波長が存在する。図4の例では、1730nm近傍の波長(1731±10nm)において、PHBH、PLA、Bio-PBS、及び材料不明の吸光度が、第1注目波長λ1(1900nm)及び第2注目波長λ3(1720nm)よりも低く、且つ、共通して吸光度が低下する。また、1730nm近傍の波長では、非生分解性プラスチックにおける吸光度のシャープなピークが現れる。同様に、図5の例では、1880nm近傍の波長(1881±10nm)において、PHBH、PLA、Bio-PBS、及び材料不明の吸光度が、第1注目波長λ1(1900nm)及び第2注目波長λ3(1720nm)よりも低く、且つ、共通して吸光度が低下する。この場合、決定部6は、1881nmを第1補助波長λ2として決定し、1731nmを第2補助波長λ4として決定すればよい。
【0040】
ステップST1において決定部6がユーザから入力される指示に基づいて判別用波長を決定した後、照射部2は、測定光Lを被測定物Aに照射する(ステップST2:照射ステップ)。そして、測定部3は、被測定物Aを反射した測定光Lに基づいて判別用波長のそれぞれ(第1注目波長λ1、第2注目波長λ3、第1補助波長λ2、及び第2補助波長λ4)における被測定物Aの吸光度の吸収スペクトルを取得し、それぞれの吸光度を測定する(ステップST3:測定ステップ)。測定部3は、第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4における吸光度を第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3における吸光度のピークのベース値としている。そのうえで、測定部3は、第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3における被測定物Aの吸光度を第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4における吸光度と共に測定する。そして、測定部3は、第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3におけるそれぞれのピークを検出する。ここで、ベース値とするとは、例えば、第1補助波長λ2と第2補助波長λ4との間をベースラインとして、第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3における吸光度を測定する。
【0041】
続いて、算出部7は、判別用波長のそれぞれにおける被測定物Aの吸光度を標準化する(ステップST4:算出ステップ)。算出部7は、生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチック全12種類のそれぞれに対して、以下の手順で標準化する。算出部7は、第1注目波長λ1、第2注目波長λ3、第1補助波長λ2、及び第2補助波長λ4における吸光度の平均値及び標準偏差を算出する。そして、算出部7は、それぞれの波長の吸光度から平均値を減算し、減算した値を標準偏差で除算することによって、それぞれの波長の吸光度に対する標準化値を算出する。
【0042】
続いて、算出部7は、判別値を算出するための判別式の係数を決定する(ステップST5:算出ステップ)。判別値は、式(1)の判別式によって算出される。
判別値=Z+(S1×K1)+(S2×K2)+(S3×K3)+(S4×K4)…(1)
ここで、S1は、第1注目波長λ1に対する標準化値であり、S2は、第1補助波長λ2に対する標準化値である。S3は、第2注目波長λ3に対する標準化値であり、S4は、第2補助波長λ4に対する標準化値である。Zは、オフセット値である。K1~K4は、係数である。判別式は、オフセット値Zと、各標準化値S1~S4に係数K1~K4を乗算した乗算値とに基づいて構成される。ステップST5では、生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値に収束し、非生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値と異なる第2の値に収束するように、統計処理によってオフセット値Z及び係数K1~K4を決定する。第1の値は、例えば100であり、第2の値は例えば0である。
【0043】
図6は、図3に示された標準化ステップにおいて標準化された標準化値S1~S4の一例を示す図である。図6は、非生分解性プラスチック全8種類及び生分解性プラスチック全4種類のそれぞれについて、繰返し2回測定した吸光度から算出した標準化値S1~S4の一例を示す。第1注目波長が1900nm、第1補助波長が1881nm、第2注目波長が1720nm、第2補助波長が1731nmである。
【0044】
図6に示された値を式(1)にあてはめると、例えば、非生分解性プラスチックPSの1回目の場合は、0=Z+(-0.840)×K1+(-0.871)×K2+(1.044)×K3+(0.667)×K4である。PSの2回目の場合は、0=Z+(-0.841)×K1+(-0.868)×K2+(1.051)×K3+(0.658)×K4である。一方で、例えば、生分解性プラスチックPHBHの1回目の場合は、100=Z+(-0.511)×K1+(-1.155)×K2+(0.931)×K3+(0.735)×K4である。PHBHの2回目の場合は、100=Z+(-0.487)×K1+(-1.169)×K2+(0.936)×K3+(0.721)×K4である。
【0045】
算出部7は、図6に示された24種類の測定データすべてについて、式(1)により得られる判別値が設定値(非生分解性プラスチック=0、生分解性プラスチック=100)に最も近くなるように、オフセット値Z及び係数K1~K4の最適値を探索する。算出部7は、最適値の探索にあたって以下に例示した統計処理を行う。算出部7は、例えば、各係数に任意の値を入力したときの判別値と設定値との誤差(例えば、二乗平均平方根誤差(RMSE))を目的値として、目的値が最小となるように各係数の値を決定するソルバー手法を用いる。ソルバーとは、多変量解析を行うためのツールである。或いは、算出部7は、例えば、判別値を目的変数とした重回帰分析を用いる。具合的には、算出部7は、各係数に任意の値を入力したときの判別値と設定値との誤差の残差平方和を最小にするように各係数の値を決定する。或いは、算出部7は、例えば、部分最小二乗(PLS:Partial Least Squared Regression)回帰分析を用いる。具合的には、算出部7は、24種類の測定データそれぞれの主成分を算出し、主成分と各係数に任意の値を入力ときの判別値との共分散に基づいて、各係数の値を決定する。なお、上述した最適値の探索は、必ずしもステップST5の中で実施される必要はない。例えば、ステップST3における測定とは別に、事前に測定した測定データに基づいて、各係数の値が予め決定されてもよい。そして、各係数の値は、制御部4内に設けられたメモリ、或いは外部のメモリに記憶されてもよい。その場合、算出部7は、各係数の値を上記メモリから読み出して判別値を算出することにより、最適値の探索を省略することができる。
【0046】
図7は、図6に示された標準化値S1~S4に基づいて、統計処理によって決定されたオフセット値Z及び係数K1~K4の一例を示す図である。図7では、ソルバー手法、重回帰分析、及びPLS回帰分析のそれぞれにおいて算出した結果を示す。ソルバー手法の算出結果は、PLS回帰分析の算出結果と全て一致した。重回帰分析では、係数K4が0と決定された。重回帰分析では、係数K4に対応する第2補助波長λ4(1731nm)に対する標準化値を使用せずとも非生分解性プラスチックと生分解性プラスチックとを判別できることを意味する。
【0047】
続いて、算出部7は、判別値を算出する(ステップST6:算出ステップ)。図8は、3回目に測定した吸光度から算出した標準化値及び判別値の一例を示す図である。図8は、非生分解性プラスチック全8種類及び生分解性プラスチック全4種類のそれぞれについて、3回目に測定した吸光度から算出した標準化値S1~S4を示す。更に、図8では、図7に示されたオフセット値Z及び係数K1~K4をあてはめた式(1)に、3回目に測定した吸光度から算出した標準化値S1~S4を代入した判別値を示す。図9は、図8に示された判別値をグラフ化したものである。図8及び図9では、判別値をソルバー手法、重回帰分析、及びPLS回帰分析のそれぞれにおいて算出した結果を示す。図8及び図9から分かるように、ソルバー手法、重回帰分析、及びPLS回帰分析全てにおいて、判別値が一致した。また、図9から分かるように、生分解性プラスチックであるPHBH、PLA、Bio-PBS、及び材料不明のプラスチックのそれぞれの判別値は、50よりも大きくなる。一方で、非生分解性プラスチックであるPS、PP、PET、PE、PE(厚み有り)、PVC、植物由来PE、及び植物由来25%PP(緑)のそれぞれの判別値は、50よりも小さくなる。この傾向を利用して、本実施形態では、判別値の閾値Thを50と設定できる。
【0048】
判別部8には、算出部7から判別値が入力される。判別部8は、判別値に基づいて被測定物Aが生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する(ステップST7:判別ステップ)。図10は、判別結果の一例を示すグラフである。図10において、式(1)における係数K1は、19であり、係数K2は、-226であり、係数K3は、110であり、係数K4は、96であり、オフセット値Zは、-335である。本実施形態では、判別値の閾値Thを50と設定している。図10には、非生分解性プラスチック全8種類及び生分解性プラスチック全4種類のそれぞれについて、繰返し3回測定した吸光度から算出した判別値が表示されている。プロット点の中の「×」は、繰返し1回目及び2回目それぞれにおいて測定した吸光度から算出した判別値を示す。プロット点の中の「×」は、ステップST5において、オフセット値Z及び係数K1~K4の決定に用いた標準化値S1~S4を、決定された判別式にあてはめて算出した判別値である。プロット点の中の「〇」は、繰返し3回目に測定した吸光度から算出した判別値を示す。プロット点の中の「〇」は、繰返し3回目に測定した吸光度から算出した標準化値S1~S4を、決定された判別式にあてはめて算出した判別値である。
【0049】
判別値が、50以上である場合(ステップST7:YES)、判別部8は、被測定物Aが生分解性プラスチックであると判断する(ステップST8:判別ステップ)。図10では、生分解性プラスチックであるPHBH、PLA、Bio-PBS、及び材料不明のプラスチックのそれぞれの判別値が、3回の判別値の全てにおいて50以上である。
【0050】
判別値が、50を下回る場合(ステップST7:NO)、判別部8は、被測定物Aが非生分解性プラスチックであると判断する(ステップST9:判別ステップ)。図10では、非生分解性プラスチックであるPS、PP、PET、PE、PE(厚み有り)、PVC、植物由来PE、及び植物由来25%PP(緑)のそれぞれの判別値が、3回の判別値の全てにおいて50を下回っている。以上より、非生分解性プラスチック全8種類及び生分解性プラスチック全4種類のそれぞれに対して、3回の判別値の全てにおいて生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかの判別に成功していることが分かる。
【0051】
図11は、比較例に係る判別結果の一例を示すグラフである。図11は、第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4における吸光度を使用せずに、第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3における吸光度のみに基づいて算出した判別値の結果を示す。図11において、式(1)における係数K1は、-12であり、係数K3は、14であり、オフセット値Zは、18である。図11では、非生分解性プラスチック全8種類及び生分解性プラスチック全4種類のそれぞれの判別値が、3回の判別値の全てにおいて50を下回っている。つまり、第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4における吸光度を使用しない場合、生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかの判別ができないことが分かる。
【0052】
最後に、通知部9には、判別部8から判別結果が入力され、通知部54は、ユーザに判別結果を通知する(ステップST10)。これにより、判別装置1により実行される一連の処理が終了する。
【0053】
以上説明したように、本開示の一側面に係る判別装置1では、第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3における被測定物Aの吸光度を第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4における吸光度と共に測定し、吸光度の標準化値を用いた判別式によって得られた判別値に基づいて、被測定物Aが生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する。これにより、多数の波長に対する吸光度から判別を行う場合と比較して、判別に要する処理が簡易なものとなり、測定時間の短縮化が図られる。また、この判別装置1では、生分解性プラスチックに対する吸光度が第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3における吸光度よりも低い第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4を判別用波長として導入している。これにより、第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4における吸光度をベース値として、第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3におけるそれぞれの吸光度の標準化値を高精度に検出することが可能となるため、吸光度を用いた判別の精度を向上させることができる。
【0054】
図4及び図5に示すように、非生分解性プラスチックであるPETは、生分解性プラスチックがピークを有する1900nm近傍の波長にピークを有する。一方で、PETは、生分解性プラスチックがピークを有する1720nm近傍の波長においてピークを有していない。そのため、第1注目波長λ1を1900±10nmとし、第2注目波長λ3を1720±10nmとした場合に、第1注目波長λ1における吸光度のみに基づいて判別する場合と比べて、生分解性プラスチックと非生分解性プラスチックとの判別がし易くなる。
【0055】
補助波長の少なくとも一つは、第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4を第1注目波長λ1と第2注目波長λ3との間の波長である。第1注目波長λ1と第2注目波長λ3との間の波長には、複数の種類の生分解性プラスチックにおいて共通して吸光度が低下する傾向にある波長が存在する。このような波長を第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4として用いることによって、第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3におけるそれぞれの吸光度の標準化値の検出精度が更に高まり、判別の精度を一層向上させることができる。
【0056】
判別式は、オフセット値Zと、各標準化値S1~S4に係数K1~K4を乗算した乗算値とに基づいて構成され、算出部7は、生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値に収束し、非生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値と異なる第2の値に収束するように、統計処理によってオフセット値Z及び係数K1~K4を決定する。このような構成により、生分解性プラスチックに対する判別値と、非生分解性プラスチックに対する判別値とを乖離させることができるため、判別の精度を更に向上させることができる。
【0057】
第1注目波長λ1は、1900±10nmであり、第2注目波長λ3は、1720±10nmであり、第1補助波長λ2は、1881±10nmであり、第2補助波長λ4は、1731±10nmである。この場合、複数の種類の生分解性プラスチックに対して判別用波長の最適化が図られる。
【0058】
第2注目波長λ3は、第2補助波長λ4よりも短い。この場合、第2注目波長λ3におけるピークの検出精度が更に高まり、判別の精度を一層向上させることができる。
【0059】
生分解性プラスチックは、ポリヒドロキシブタン酸(PHBH)、ポリ乳酸(PLA)、及びポリブチレンサクシネート(PBS)からなる群から選択される少なくとも一つのプラスチックを含み、非生分解性プラスチックは、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、及びポリ塩化ビニル(PVC)からなる群から選択される少なくとも一つのプラスチックを含む。このような構成により、ポリ乳酸を含めた複数の種類の生分解性プラスチックを非生分解性プラスチックに対して精度良く判別することができる。
【0060】
本開示の一側面に係る判別方法では、第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3における被測定物Aの吸光度を第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4における吸光度と共に測定し、吸光度の標準化値を用いた判別式によって得られた判別値に基づいて、被測定物Aが生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する。これにより、多数の波長に対する吸光度から判別を行う場合と比較して、判別に要する処理が簡易なものとなり、測定時間の短縮化が図られる。また、この判別方法では、生分解性プラスチックに対する吸光度が第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3における吸光度よりも低い第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4を判別用波長として導入している。これにより、第1補助波長λ2及び第2補助波長λ4における吸光度をベース値として、第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3におけるそれぞれの吸光度の標準化値を高精度に検出することが可能となるため、吸光度を用いた判別の精度を向上させることができる。
【0061】
判別式は、オフセット値Zと、各標準化値S1~S4に係数K1~K4を乗算した乗算値とに基づいて構成され、ステップST5(算出ステップ)では、生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値に収束し、非生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値と異なる第2の値に収束するように、統計処理によってオフセット値Z及び係数K1~K4を決定する。このような構成により、生分解性プラスチックに対する判別値と、非生分解性プラスチックに対する判別値とを乖離させることができるため、判別の精度を更に向上させることができる。
【0062】
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0063】
少なくとも一つの補助波長の数は、一つであってもよい。つまり、第1補助波長λ2(1881nm)及び第2補助波長λ4(1731nm)のいずれか一方の波長における吸光度のみに基づいて、判別値が算出されてもよい。図12は、第1変形例に係る判別値の一例を示すグラフである。図12は、第1注目波長λ1(1900nm)、第2注目波長λ3(1720nm)、及び第1補助波長λ2(1881nm)における吸光度に基づいて判別値を算出した結果を示す。第2補助波長λ4(1731nm)における吸光度を使用しない点を除けば、本実施形態と同様の処理手順により判別値が算出される。図12において、式(1)における係数K1は、54であり、係数K2は、-276であり、係数K3は、225であり、オフセット値Zは、-389である。図12では、生分解性プラスチックであるPHBH、PLA、Bio-PBS、及び材料不明のプラスチックのそれぞれの判別値が、3回の判別値の全てにおいて50以上である。一方で、図12では、非生分解性プラスチックであるPS、PP、PET、PE、PE(厚み1mm)、PVC、植物由来PE、及び植物由来25%PP(緑)のそれぞれの判別値が、3回の判別値の全てにおいて50を下回っている。以上より、非生分解性プラスチック全8種類及び生分解性プラスチック全4種類のそれぞれに対して、3回の判別値の全てにおいて生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかの判別に成功していることが分かる。
【0064】
図12の例では、第1注目波長λ1は、1900nmであり、第2注目波長λ3は、1720nmであり、第1補助波長λ2は、1881nmである。生分解性プラスチックの吸光スペクトルは、1900nm及び1720nmにそれぞれピークを有する。この場合、複数の種類の生分解性プラスチックに対して判別用波長の最適化が図られる。
【0065】
図13は、第2変形例に係る判別値の一例を示すグラフである。図13は、第1注目波長λ1(1900nm)、第2注目波長λ3(1720nm)、及び第2補助波長λ4(1731nm)における吸光度に基づいて判別値を算出した結果を示す。第1補助波長λ2(1881nm)における吸光度を使用しない点を除けば、本実施形態と同様の処理手順により判別値が算出される。図13において、式(1)における係数K1は、-13であり、係数K2は、-28であり、係数K4は、44であり、オフセット値Zは、11である。図13では、例えば、非生分解性プラスチックであるPVCの判別値が、3回の判別値の全てにおいて50以上である。以上より、第1注目波長λ1(1900nm)、第2注目波長λ3(1720nm)、及び第2補助波長λ4(1731nm)における吸光度に基づいて判別値を算出した場合、生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかの判別ができないことが分かる。
【0066】
第1注目波長λ1及び第2注目波長λ3は、生分解性プラスチックの吸光度がピークを有している波長でなくてもよい。図14は、第3変形例に係る判別値の一例を示すグラフである。図14は、第1注目波長λ1(1900nm)、第2注目波長λ3(1731nm)、及び第1補助波長λ2(1881nm)における吸光度に基づいて判別値を算出した結果を示す。第2注目波長λ3として、1720nmではなく、1731nmとした点を除けば、第1変形例と同様の処理手順により判別値が算出される。図14において、式(1)における係数K1は、56であり、係数K2は、-228であり、係数K3は、176であり、オフセット値Zは、-304である。図14では、非生分解性プラスチック全8種類及び生分解性プラスチック全4種類のそれぞれに対して、3回の判別値の全てにおいて生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかの判別に成功していることが分かる。
【0067】
測定部3は、フーリエ変換近赤外分光分析法によって、近赤外吸収スペクトルを取得しなくてもよい。言い換えれば、測定部3は、近赤外分光器でなくてもよい。図15図17は、近赤外分光器に代えて、波長選択フィルタ等を使用した多波長選択装置によって測定部3を構成した変形例を示す。
【0068】
図15は、第4変形例に係る測定部3Aを示す簡略図である。測定部3Aは、波長選択フィルタ31と、光検出器32Aとを有している。光検出器32Aは、測定光Lの第1注目波長λ1、第2注目波長λ3、第1補助波長λ2、及び第2補助波長λ4の全ての波長に感度を有している。なお、測定部3A以外の構成については、実施形態と同様である。波長選択フィルタ31は、回転式の基板31aと、4つの波長フィルタ31bとを含んでいる。4つの波長フィルタ31bは、それぞれ異なる波長透過特性を有している。例えば、4つの波長フィルタ31bは、第1注目波長λ1のみを透過させる波長フィルタと、第2注目波長λ3のみを透過させる波長フィルタと、第1補助波長λ2のみを透過させる波長フィルタと、第2補助波長λ4のみを透過させる波長フィルタとから構成されている。制御部4は、測定光Lの第1注目波長λ1、第2注目波長λ3、第1補助波長λ2、及び第2補助波長λ4が順に波長選択フィルタ31を通して光検出器に入射されるように、回転式の基板31aを回転させる。なお、光検出器に入射される波長の順番は、上述の順番に限定されない。
【0069】
図16は、第5変形例に係る測定部3Bを示す簡略図である。測定部3Bは、光検出器32Bを有している。光検出器32Bは、受光面32Baを含んでいる。なお、測定部3B以外の構成は、実施形態と同様である。受光面32Ba上には、第1注目波長λ1、第2注目波長λ3、第1補助波長λ2、及び第2補助波長λ4それぞれに感度を有する領域が二次元上に配列されている。光検出器32は、測定光Lが入射されると、第1注目波長λ1、第2注目波長λ3、第1補助波長λ2、及び第2補助波長λ4それぞれに感度を有する領域において、それぞれの波長の吸光度を検出する。
【0070】
図17は、第6変形例に係る測定部3Cを示す簡略図である。測定部3Cは、光検出器32Cと、ベルトコンベア33とを有している。ベルトコンベア33は、無端ベルト33aを有している。ベルトコンベア33は、無端ベルト33aを方向Bに送ることにより、無端ベルト33a上に載置された被測定物Aを方向Bに沿って搬送する。なお、ベルトコンベア33及び測定部3C以外の構成は、実施形態と同様である。被測定物Aの検査時には、ベルトコンベア33により搬送されている被測定物Aからの測定光Lが光検出器32Cに入射する。光検出器32Cは、マルチスペクトルカメラであってもよい。光検出器32Cは、受光面32Caを含んでいる。受光面32Ca上には、第1注目波長λ1、第2注目波長λ3、第1補助波長λ2、及び第2補助波長λ4それぞれに感度を有する領域が、方向Bを長手方向とした長尺状に配列されている。これにより、方向Bにおける位置を変化させつつ被測定物Aを撮影することができ(スキャン撮影)、被測定物Aの全体を撮影することができる。
【0071】
測定部3は、拡散反射法(DR法:Diffuse reflection法)又は正反射測定法(RF法:Reflection法)により近赤外吸収スペクトルを取得してもよい。或いは、測定部3は、透過法により近赤外吸収スペクトルを取得し、吸光度を測定してもよい。測定部3は、被測定物Aを透過した測定光Lに基づいて判別用波長のそれぞれにおける吸光度を測定してもよい。算出部7は、ステップST5において、生分解性プラスチックに対する判別値が第2の値(0)に収束し、非生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値(100)に収束するように、統計処理によってオフセット値Z及び係数K1~K4を決定してもよい。この場合、判別部8は、入力された判別値が閾値以上である場合、被測定物Aが非生分解性プラスチックであると判断し、入力された判別値が閾値を下回る場合、被測定物Aが生分解性プラスチックであると判断してもよい。
【0072】
以上説明した実施形態、及び第1変形例~第6変形例において、制御部4は、必ずしも決定部6を有していなくてもよい。この場合、ユーザは、第1注目波長、第2注目波長、及び少なくとも一つの補助波長を判別用波長として測定部3に直接入力してもよい。或いは、測定光Lは、判別用波長のみから構成される光であってもよい。その場合、ユーザから測定部3への判別用波長の入力を不要としてもよい。
【0073】
図3に示されたフローチャートにおいて、判別部8が二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」及び「よりも大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」及び「未満」の二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。
【0074】
本開示の要旨は、以下の[1]~[9]のとおりである。
[1]生分解性プラスチックと非生分解性プラスチックとを判別する判別装置であって、吸光度のピークを有する第1注目波長、第1注目波長とは異なるピークを有する第2注目波長、及び少なくとも一つの補助波長を含む判別用波長を有する測定光を被測定物に照射する照射部と、前記被測定物を透過又は反射した前記測定光に基づいて前記判別用波長のそれぞれにおける前記被測定物の吸光度を測定する測定部と、前記判別用波長のそれぞれにおける前記被測定物の吸光度を標準化し、各標準化値を用いた判別式によって判別値を算出する算出部と、前記判別値に基づいて前記被測定物が生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する判別部と、を備え、前記補助波長は、前記生分解性プラスチックに対する吸光度が前記第1注目波長及び前記第2注目波長よりも低くなる波長であり、前記測定部は、前記補助波長における前記被測定物の吸光度をベース値として、前記第1注目波長及び前記第2注目波長におけるそれぞれの吸光度の標準化値を検出する、判別装置。
[2]前記補助波長の少なくとも一つは、前記第1注目波長と前記第2注目波長との間の波長である、[1]記載の判別装置。
[3]前記判別式は、オフセット値と、前記各標準化値に係数を乗算した乗算値とに基づいて構成され、前記算出部は、前記生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値に収束し、前記非生分解性プラスチックに対する判別値が前記第1の値と異なる第2の値に収束するように、統計処理によって前記係数を決定する、[1]又は[2]記載の判別装置。
[4]前記第1注目波長は、1900±10nmであり、前記第2注目波長は、1720±10nmであり、前記補助波長は、1881±10nmである、[1]~[3]のいずれか記載の判別装置。
[5]前記第1注目波長は、1900±10nmであり、前記第2注目波長は、1720±10nmであり、前記補助波長は、1731±10nm及び1881±10nmである、[1]~[4]のいずれか記載の判別装置。
[6]前記第2注目波長は、前記補助波長よりも短い、[5]記載の判別装置。
[7]前記生分解性プラスチックは、ポリヒドロキシブタン酸(PHBH)、ポリ乳酸(PLA)、及びポリブチレンサクシネート(PBS)からなる群から選択される少なくとも一つのプラスチックを含み、前記非生分解性プラスチックは、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、及びポリ塩化ビニル(PVC)からなる群から選択される少なくとも一つのプラスチックを含む、[1]~[6]のいずれか記載の判別装置。
[8]生分解性プラスチックと非生分解性プラスチックとを判別する判別方法であって、吸光度のピークを有する第1注目波長、前記第1注目波長とは異なるピークを有する第2注目波長、及び少なくとも一つの補助波長を含む判別用波長を有する測定光を被測定物に照射する照射ステップと、前記被測定物を透過又は反射した前記測定光に基づいて前記判別用波長のそれぞれにおける前記被測定物の吸光度を測定する測定ステップと、前記判別用波長のそれぞれにおける前記被測定物の吸光度を標準化し、各標準化値を用いた判別式によって判別値を算出する算出ステップと、前記判別値に基づいて前記被測定物が生分解性プラスチック及び非生分解性プラスチックのいずれであるかを判別する判別ステップと、を備え、前記補助波長は、前記生分解性プラスチックに対する吸光度が前記第1注目波長及び前記第2注目波長よりも低くなる波長であり、前記測定ステップでは、前記補助波長における前記被測定物の吸光度をベース値として、前記第1注目波長及び前記第2注目波長におけるそれぞれの吸光度の標準化値を検出する、判別方法。
[9]前記判別式は、オフセット値と、前記各標準化値に係数を乗算した乗算値とに基づいて構成され、前記算出ステップでは、前記生分解性プラスチックに対する判別値が第1の値に収束し、前記非生分解性プラスチックに対する判別値が前記第1の値と異なる第2の値に収束するように、統計処理によって前記係数を決定する、[8]記載の判別方法。
【符号の説明】
【0075】
1…判別装置、2…照射部、3,3A,3B,3C…測定部、7…算出部、8…判別部、A…被測定物、K1,K2,K3,K4…係数、L…測定光、S1,S2,S3,S4…標準化値、Z…オフセット値、λ1…第1注目波長、λ2…第1補助波長、λ3…第2注目波長、λ4…第2補助波長。

図1
図2
図3
図4
図5
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図17