IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電装株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コネクタ 図1
  • 特開-コネクタ 図2
  • 特開-コネクタ 図3
  • 特開-コネクタ 図4
  • 特開-コネクタ 図5
  • 特開-コネクタ 図6
  • 特開-コネクタ 図7
  • 特開-コネクタ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117998
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
H01R13/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024136
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 健太郎
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087FF06
5E087FF12
5E087HH04
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR04
5E087RR06
5E087RR26
(57)【要約】
【課題】ランスの端子保持力を維持することができ、小型化に対応可能なコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング20は、キャビティ22の内面から前方に突出し、端子金具60を後方から抜け止め可能に係止するランス25と、ランス25の下側に配置される壁面部41と、を有している。ランス25は、壁面部41に対向する対向面33に、端子金具60を後退させる力が作用した場合に上側への屈曲を誘発する変形誘発部として、例えば、角部37を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有するハウジングと、
前記キャビティの内側に配置される端子金具と、を備え、
前記ハウジングは、前記キャビティの内面から前方に突出し、前記端子金具を後方から抜け止め可能に係止するランスと、を有し、
前記ランスが前記キャビティへの挿入過程の前記端子金具によって押圧されて弾性変形する側を下側とした場合に、前記ハウジングは、前記ランスの下側に壁面部を有しており、
前記ランスは、前記壁面部に対向する対向面に、前記端子金具を後退させる力が作用した場合に上側への屈曲を誘発する変形誘発部を有している、コネクタ。
【請求項2】
前記ランスは、前記対向面に、凹部を有し、
前記変形誘発部は、前記凹部の奥に、前記ランスが弾性変形する方向と直交する幅方向に線状に延びる形状である、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記凹部は、前記対向面に、前記幅方向の全域に亘って設けられ、
前記変形誘発部は、前記対向面に、前記幅方向の全域に亘って線状に延びている、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記凹部の奥に形成された角部の内角は、150度以上170度以下である、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記壁面部は、前記ランスの前端側に対向する先端側壁面部と、前記先端側壁面部よりも前記対向面に近い位置に配置され、前記ランスの後端側に対向する基端側壁面部と、を有し、
前記凹部は、前記凹部の奥に形成された角部と、前記角部の前方に配置される前側辺部と、前記角部の後方に配置される後側辺部と、を有し、
前記基端側壁面部は、前記後側辺部と接触可能に対向している、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、端子収容室(以下、キャビティ)を有するハウジングと、キャビティに収容される接続端子(以下、端子金具)と、を備えている。ハウジングは、キャビティの内面から前方に突出するランスを有している。ランスは、弾性変形可能であって、端子金具を後方から抜け止め可能に係止する。端子金具は、被覆(以下、電線)の端末部に接続されている。電線は、ハウジングから後方に引き出される。この種のランスを有するコネクタは、特許文献2-6にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-155810号公報
【特許文献2】特開2005-216810号公報
【特許文献3】特開2018-206512号公報
【特許文献4】特開2020-102338号公報
【特許文献5】特開2021-18907号公報
【特許文献6】特開2022-7492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハウジングから引き出された電線が後方に引っ張られる等し、図7および図8に示すように、端子金具60Aが矢印方向に後退すると、ランス25Aが後退する端子金具60Aに押圧され、側面視V字形に変形することがあった。なお、図7および図8は、模式図であって、実際の態様を表していない。
【0005】
ここで、ランス25Aは、V字の中心に位置する屈曲部位を、端子金具60A側に近づける第1変形モード(図7を参照)と、端子金具60Aから遠ざける第2変形モード(図8を参照)の、いずれかの態様をとり得た。第1変形モードの場合、ランス25Aは端子金具60Aに強く接触してそれ以上の変形を規制できるため、端子金具60Aの後退を抑えることができた。これに対し、第2変形モードの場合、ランス25Aの変形を規制できないため、端子金具60Aの後退を抑えることができない懸念があった。特に、コネクタが小型になると、ランス25Aも小型になることから、第2変形モードをとったランス25Aが端子金具60Aに対する保持力を得ることが難しいという問題があった。
【0006】
そこで、本開示は、コネクタが小型化しても、端子金具に対するランスの保持力を確保することが可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタは、キャビティを有するハウジングと、前記キャビティの内側に配置される端子金具と、を備え、前記ハウジングは、前記キャビティの内面から前方に突出し、前記端子金具を後方から抜け止め可能に係止するランスと、を有し、前記ランスが前記キャビティへの挿入過程の前記端子金具によって押圧されて弾性変形する側を下側とした場合に、前記ハウジングは、前記ランスの下側に壁面部を有しており、前記ランスは、前記壁面部に対向する対向面に、前記端子金具を後退させる力が作用した場合に上側への屈曲を誘発する変形誘発部を有している、コネクタである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、コネクタが小型化しても、端子金具に対するランスの保持力を確保することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1において、コネクタの側断面図である。
図2図2は、ハウジングのキャビティに突出するランスを拡大して示す側面図である。
図3図3は、ハウジングのキャビティに突出するランスを拡大して示す平断面図である。
図4図4は、ハウジングのキャビティに挿入された端子金具を係止するランスの正断面図である。
図5図5は、ランスを変形させる力が加わり、ランスの後側辺部が基端側壁面部に接触した状態を示す側断面図である。
図6図6は、本実施形態1のランスが第1変形モードで変形した状態を拡大した示す側断面図である。
図7図7は、従来の参考図であって、ランスが第1変形モードで変形した状態を示す模式図である。
図8図8は、従来の参考図であって、ランスが第2変形モードで変形した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)キャビティを有するハウジングと、前記キャビティの内側に配置される端子金具と、を備え、前記ハウジングは、前記キャビティの内面から前方に突出し、前記端子金具を後方から抜け止め可能に係止するランスと、を有し、前記ランスが前記キャビティへの挿入過程の前記端子金具によって押圧されて弾性変形する側を下側とした場合に、前記ハウジングは、前記ランスの下側に壁面部を有しており、前記ランスは、前記壁面部に対向する対向面に、前記端子金具を後退させる力が作用した場合に上側への屈曲を誘発する変形誘発部を有している。
【0011】
上記構成によれば、端子金具を後退させる力が作用した場合に、変形誘発部が上側(端子金具に近づく側)へのランスの変形を誘発し、ランスが端子金具に強く接触してそれ以上の変形を規制できる。このため、端子金具の後退が抑えられる。上記構成は、変形誘発部によって端子金具側へのランスの変形が誘発され、逆に、壁面部側へのランスの変形が規制される。よって、上記構成は、壁面部側へのランスの変形によって端子金具に対するランスの保持力が減退する事態を回避できる。その結果、上記構成は、コネクタが小型になっても、端子金具に対するランスの保持力を確保することができる。
【0012】
(2)上記(1)に記載のコネクタにおいて、前記ランスは、前記対向面に、凹部を有し、前記変形誘発部は、前記凹部の奥に、前記ランスが弾性変形する方向と直交する幅方向に線状に延びる形状であることが好ましい。
上記構成は、ランスの対向面に特別な加工を施すことなく簡単に変形規制部を設けることができる。
【0013】
(3)上記(2)に記載のコネクタにおいて、前記凹部は、前記対向面に、前記幅方向の全域に亘って設けられ、前記変形誘発部は、前記対向面に、前記幅方向の全域に亘って線状に延びていることが好ましい。
上記構成は、変形誘発部が端子金具側へのランスの変形を誘発する信頼性を高めることができる。
【0014】
(4)上記(2)または(3)に記載のコネクタにおいて、前記凹部の奥に形成された角部の内角は、150度以上170度以下であることが好ましい。
仮に、凹部の角部の内角が150度よりも小さいと、ランスの強度を確保するこが困難になる。仮に、凹部の角部の内角が170度よりも大きいと、端子金具側へのランスの変形を誘発できない懸念がある。その点、上記構成は、凹部の角部の内角が150度以上170度以下であるため、ランスの強度を確保した上、端子金具側へのランスの変形を信頼性良く誘発することができる。
【0015】
(5)上記(2)から(4)のいずれかに記載のコネクタにおいて、前記壁面部は、前記ランスの前端側に対向する先端側壁面部と、前記先端側壁面部よりも前記対向面に近い位置に配置され、前記ランスの後端側に対向する基端側壁面部と、を有し、前記凹部は、前記凹部の奥に形成された角部と、前記角部の前方に配置される前側辺部と、前記角部の後方に配置される後側辺部と、を有し、前記基端側壁面部は、前記後側辺部と接触可能に対向していると良い。
【0016】
上記構成は、先端側壁面部よりも対向面に近い位置にある基端側壁面部に、ランスの凹部の後側辺部が接触することで、壁面部側へのランスの過度撓みを規制することができる。ランスの後側辺部が基端側壁面部に接触することにより、ランスが壁面部(基端側壁面部)に接触する位置をランス側に近づけることができ、その分、ハウジングの高さ寸法(幅方向および前後方向と直交する高さ方向の寸法)を小さく抑えることができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態1>
実施形態1に係るコネクタ10は、図1に示すように、ハウジング20と、ハウジング20に収容される端子金具60と、を備えている。ハウジング20は、図示しない相手コネクタに嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については、ハウジング20が相手コネクタと嵌合する側を前側とする。上下方向は、図1の上下方向を基準とする。左右方向は、図4の左右方向を基準とする。本明細書において、上下方向および左右方向は、それぞれ高さ方向および幅方向と同義である。前側、右側および上側は、それぞれ、図1において、矢印X、符号Y、矢印Zで表される。これら方向は、コネクタ10が図示しない車両等に搭載された状態における方向とは必ずしも一致しない。例えば、下側は、必ずしも重力方向下側に限定されない。
【0019】
(端子金具60)
端子金具60は、導電性の金属板を曲げ加工等して一体に形成されている。端子金具60は、図1に示すように、筒状の接続部61と、接続部61の後方に配置されるバレル状のバレル部62と、を有している。接続部61の内部には、図示しない相手端子金具のタブと電気的に接触する弾性接触片65が設けられている。接続部61の後部下端側の縁部には、被係止部64が設けられている。バレル部62は、電線90(被覆電線)の端末部に電気的および機械的に接続されている。接続部61は、右側の側壁部分に、下方に突出する図示しないスタビライザを有している。スタビライザは、ハウジング20に対する端子金具60の挿入動作をガイドし、且つハウジング20に対する端子金具60の誤挿入を規制する機能を有している。
【0020】
(ハウジング20)
ハウジング20は合成樹脂製であって、全体として左右方向に扁平な形状をなしている。ハウジング20は、上面の左右中央部に、弾性変形可能なロックアーム21を突設させている。ロックアーム21は、相手コネクタを係止してハウジング20および相手コネクタを嵌合状態に保持する機能を有している。
【0021】
ハウジング20は、複数のキャビティ22(図1では1つのみ図示)を有している。キャビティ22は、図1に示すように、ハウジング20において、前後方向に延び、ハウジング20の後面に開口している。ハウジング20の前面には、前壁23が設けられている。ハウジング20は、前壁23を前後方向(前壁23の貫通方向)に貫通する複数のタブ挿入口24を有している。タブ挿入口24は、キャビティ22と連通している。相手端子金具のタブは、タブ挿入口24を通してキャビティ22に挿入される。
【0022】
ハウジング20は、それぞれのキャビティ22毎にランス25を有している。ランス25は、ハウジング20におけるキャビティ22の内下面からキャビティ22内に片持ち状に突出している。ランス25は、端子金具60を係止し、キャビティ22から後方への端子金具60の抜け出しを規制する機能を有している。
【0023】
具体的には、ランス25は、図1および図2に示すように、キャビティ22の内下面に突設される基端部26と、基端部26から前方に延びる延出部27と、延出部27の前面下端側から前方に張り出す突出部28と、を有している。ランス25は、基端部26を支点として上下方向に弾性変形可能とされている。
【0024】
延出部27の上面は、前方へ向けて上傾斜して延びるように配置される。延出部27の前面は、上方へ向けて前傾斜する逆テーパ状の係止部29になっている。係止部29は、端子金具60の被係止部64に係止可能とされている。
【0025】
突出部28は、板片状をなし、図4に示すように、延出部27の前面下端側における左側端部から突出している。図1に示すように、突出部28の上面は、前後方向および左右方向に沿って平坦に形成され、端子金具60の接続部61の下面に接触可能に対向して配置される。
【0026】
ランス25は、図3および図4に示すように、延出部27の左側面から側方に張り出す張出部31を有している。張出部31は、前後方向に延び、前端側が突出部28と並んで連設されている。張出部31の前端上角部には、斜めに面取りされた形状の傾斜部46が設けられている。張出部31の傾斜部46が図示しない治具に押圧されることにより、ランス25が押し下げられ、端子金具60に対するランス25の係止を解除することが可能とされている。また、延出部27の右側面には、正面視L字形の逃がし凹部32が設けられている。逃がし凹部32は、正面視でL字形状をなし、キャビティ22に対する端子金具60の挿入過程でスタビライザを逃がす機能を有している。
【0027】
延出部27の下面は、図1および図2に示すように、後述する壁面部41に対向する対向面33になっている。延出部27の対向面33は、基端部26から前方へ緩く上向きに傾斜して延びる後方部34を有している。後方部34は、前後中間部を下向きにやや湾曲または屈曲させている。
【0028】
そして、延出部27の対向面33は、前端側に、壁面部41から離れる上側に凹んだ凹部36を有している。凹部36は、奥側の頂角部分に角部37を有し、さらに、角部37の後方に連なる後側辺部38と、角部37の前方に連なる前側辺部39と、を有している。
【0029】
角部37は、図4に示すように、延出部27の幅方向の全域に亘って左右方向に延びる線状をなし、後述するように、ランス25が端子金具60側に近づくように屈曲するような変形(以下、第1変形モードと言う。図6を参照)を誘発する変形誘発部として機能する。後側辺部38は、図1および図2に示すように、後方部34の前端から角部37にかけて側面視直線状に傾斜して延びている。前側辺部39は、角部37から係止部29の下端にかけて前後方向に対して後側辺部38よりも小さい傾斜角をもって側面視直線状に傾斜して延びている。後側辺部38および前側辺部39は、図4に示すように、延出部27の幅方向の全域に亘って広がる平坦面になっている。前側辺部39の前端は、突出部28に連なる部分を有している。
【0030】
凹部36の角部37の内角(凹部36を側面視した場合に角部37を中心とする凹部36の開き角度、図2のαを参照)は、150度以上170度以下の範囲に設定されていることが好ましく、160度以上170度以下の範囲に設定されていることがより好ましい。凹部36の角部37の内角が150度よりも小さいと、ランス25の強度を確保することが困難になり、凹部36の角部37の内角が170度よりも大きいと、ランス25の第1変形モードへの変形を誘発することが困難になるからである。
【0031】
ハウジング20は、図2に示すように、ランス25の下方(キャビティ22への挿入過程の端子金具60によってランス25が弾性変形する方向)に、壁面部41を有している。壁面部41は、キャビティ22の内下面における基端部26よりも前方の部位に、上下方向に関して、ランス25の対向面33に対向して配置される。
【0032】
壁面部41は、ランス25の後端側である後方部34に対向する基端側壁面部42と、ランス25の前端側である前側辺部39および突出部28に対向する先端側壁面部43と、有している。基端側壁面部42および先端側壁面部43は、いずれも前後方向および左右方向に沿って平坦に配置される。基端側壁面部42は、先端側壁面部43よりも一段高く配置される。言い換えれば、基端側壁面部42は、先端側壁面部43よりもランス25の対向面33に近い位置に配置される。壁面部41は、図3図5に示すように、基端側壁面部42の前端から先端側壁面部43の後端にかけて下向きに傾斜する段差面部44を有している。
【0033】
(コネクタ10の作用)
端子金具60がハウジング20のキャビティ22に挿入される前、ランス25は弾性変形しない自然状態に維持される。自然状態のランス25は、延出部27の上端側をキャビティ22における端子金具60の挿入径路に進入させている。端子金具60がキャビティ22に挿入される過程において、接続部61が延出部27の上端側の上面に接触し、ランス25が壁面部41側に弾性変形させられる。接続部61が前壁23に接触することにより、端子金具60の挿入動作が停止され、端子金具60がキャビティ22に正規深さで挿入される(図1を参照)。同時に、ランス25が弾性復帰し、係止部29が被係止部64に後方から係止可能に対向して配置される。これにより、端子金具60は、ハウジング20に対して後方への抜け出しを規制された状態に保持される。
【0034】
上記の状態で、仮に、ハウジング20から引き出された電線90が後方に引っ張られる等し、端子金具60が後退すると、被係止部64が係止部29を押圧し、ランス25を変形させる力が作用する。本実施形態1の場合、ランス25の凹部36には変形誘発部としての角部37が設けられている。このため、上記力を受けたランス25は、角部37の内角を小さくする屈曲動作、つまり図1に示す変形前の状態から図6に示す第1変形モードに変形する状態への動作が誘発される。第1変形モードに変形したランス25は、突出部28を接続部61の下面に強く接触させ、且つ係止部29と被係止部64との係止代を増加させる方向に変形することができる。その結果、端子金具60に対するランス25の保持力が高められ、端子金具60のそれ以上の後退を規制することができる。
【0035】
ランス25の係止を解除する際には、図示しない治具が張出部31に当てがわれ、ランス25が壁面部41側に押し下げられる。このような場合に、例えば、ランス25は壁面部41に接触することで過度に弾性変形する事態を回避できる。本実施形態1の場合、図5に示すように、外部等から力Fが加わり、ランス25が強く押し下げられると、ランス25の前後方向の途中に設けられた凹部36の後側辺部38が基端側壁面部42に接触し、ランス25の過度な弾性変形が規制される。
従来の場合は、ランスの前端が対向する壁面部分に接触し、ランスの過度な弾性変形を規制していた。ランスの前端と対向する壁面部分は、過度撓み防止のための強度を確保するため、所定の厚み(上下寸法)を必要としていた。
これに対し、本実施形態1の場合、基端側壁面部42が上記所定の厚みを有することで、過度撓み防止のための強度を確保している。このため、ランス25の前端と対向する先端側壁面部43の厚みは、基端側壁面部42の厚みよりも小さくなっている。
その結果、ハウジング20の高さ寸法を小さく抑えることができ、ひいてはコネクタ10の小型化に寄与することができる。なお、凹部36の後側辺部38が基端側壁面部42に接触した状態において、凹部36の前側辺部39の先端および突出部28は、先端側壁面部43に接触または近接して配置される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態1によれば、端子金具60にこの端子金具60を後退させる力が作用したときに、変形誘発部としての角部37が端子金具60側へのランス25の変形を誘発し、ランス25が端子金具60に強く接触してそれ以上の変形を規制することができる。このため、端子金具60の後退が抑えられる。変形誘発部としての角部37は、第1変形モードへのランス25の変形を誘発し、ランス25Aが端子金具60Aから離れる側に屈曲する図8に示す第2変形モードへのランス25の変形を規制する。よって、ランス25が第2変形モードに変形して、ランス25の保持力が減退する事態を回避できる。その結果、本実施形態1によれば、コネクタ10が小型になっても、端子金具60に対するランス25の保持力を確保することができる。
【0037】
変形誘発部として角部37は、ランス25の対向面33に凹部36の一部として特別な加工を施すことなく簡単に形成可能である。特に、角部37は、ランス25の対向面33に幅方向の全域に亘って線状に延びる形状になっている。このため、第1変形モードへのランス25の変形を誘発する信頼性が高められる。
【0038】
本実施形態1の場合、角部37の内角は150度以上170度以下に設定されている。このため、角部37は、ランス25の強度を確保した上、端子金具60側へのランス25の変形を信頼性良く誘発することができる。
【0039】
また、本実施形態1の場合、ランス25の後側辺部38が基端側壁面部42に接触することにより、ランス25の過度な弾性変形を規制する構造になっている。このため、高さ方向に関して、コネクタ10の小型化に寄与することができる。
【0040】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、凹部の角部が変形誘発部を構成していた。これに対し、他の実施形態によれば、変形誘発部は、第1変形モードへのランスの変形を誘発する形状であれば特に限定されず、例えば、ランスの対向面にノッチ等の切り込みを入れて変形誘発部としても良い。
上記実施形態1の場合、端子金具は筒状の接続部を有する雌型の端子金具であった。これに対し、他の実施形態によれば、端子金具は前方にタブを突設させた雄型の端子金具であっても良い。
上記実施形態1の場合、凹部の前側辺部は、対向面において、延出部の前面(係止部)に連なる位置に配置されていた。これに対し、他の実施形態によれば、凹部の前側辺部は、対向面において、延出部の前面から離れた位置に配置されていても良い。
【符号の説明】
【0041】
10…コネクタ
20…ハウジング
21…ロックアーム
22…キャビティ
23…前壁
24…タブ挿入口
25,25A…ランス
26…基端部
27…延出部
28…突出部
29…係止部
31…張出部
32…逃がし凹部
33…対向面
34…後方部
36…凹部
37…角部(変形誘発部)
38…後側辺部
39…前側辺部
41…壁面部
42…基端側壁面部
43…先端側壁面部
44…段差面部
46…傾斜部
60…端子金具(従来の端子金具は60Aで表記)
61…接続部
62…バレル部
64…被係止部
65…弾性接触片
90…電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8