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  • 特開-粉末成形装置 図1
  • 特開-粉末成形装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118002
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】粉末成形装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/00 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B30B11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024140
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮島 敏朗
(57)【要約】
【課題】 フィーダカップによる原料粉末の供給を安定化できる粉末成形装置を提供する。
【解決手段】 ダイ21に形成された充填部(凹部24)に粉末30を供給するフィーダカップ10と、フィーダカップ10と接続されフィーダカップ10をダイ21上に摺動させる駆動部とを備えた粉末供給装置において、フィーダカップ10は、ダイ21との摺動面側に粉末30を貯留するとともに粉末30を充填部24に放出する粉末収容部21aと、ダイ21の上方に向かって延出し、粉末収容部21aと外部とを挿通して粉末30が通過することができる貫通孔11bを備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイに形成された充填部に粉末を供給するフィーダカップと、前記フィーダカップと接続され前記フィーダカップを前記ダイ上に摺動させる駆動部とを備えた粉末供給装置において、
前記フィーダカップは、前記粉末を貯留するとともに前記粉末を前記充填部に放出する粉末収容部と、前記ダイの上方に向かって延出し、前記粉末収容部と外部とを挿通して前記粉末が通過することができる貫通孔とを備えることを特徴とする粉末供給装置。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記粉末収容部に露出した開口より、前記外部に露出した開口の方が大きいことを特徴とする請求項1に記載の粉末供給装置。
【請求項3】
前記貫通孔は、中間部に段差部を備えることを特徴とする請求項2に記載の粉末供給装置。
【請求項4】
前記段差部の外形は長孔形であり、前記段差部より前記摺動面側における前記貫通孔の断面は円形であることを特徴とする請求項3に記載の粉末装置。
【請求項5】
前記貫通孔を複数備え、複数の前記貫通孔のそれぞれの前記段差部が接続されることで、前記フィーダカップの表面から前記段差部に向かい窪んだザグリ部を備えることを特徴とする請求項3に記載の粉末装置。
【請求項6】
前記フィーダカップは、前記粉末を前記粉末収容部に供給する粉末供給口を備え、
前記粉末供給口と前記貫通孔とは前記フィーダカップの摺動方向に対向配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の粉末供給装置。
【請求項7】
前記粉末収容部は、前記粉末供給口から前記貫通孔に向かうにしたがって前記下面側に傾斜した傾斜面を有する、ことを特徴とする請求項6に記載の粉末供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末成形装置に係るものであり、特に粉末成形装置のフィーダカップの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉末成形装置において、成形金型(ダイ)に原料粉末を供給するため、フィーダカップが利用されている。フィーダカップは、フィーダカップへ原料粉末を供給するための粉末供給口と、粉末供給口から供給された原料粉末を内部に収容する粉末収容部と、粉末収容部に収容された原料粉末をダイに投入するための粉末投入口とを有している。フィーダカップを用いたダイへの原料粉末の充填は、ダイに形成された粉末充填部の上にフィーダカップを移動させることで行われる。具体的には、ダイの上部に沿い、フィーダカップを待機位置からダイの粉末充填部に向かい前進させ、さらに前進した位置から元の待機位置へと後退させる。このフィーダカップの前進、後退の動作は、フィーダカップの粉末投入口がダイに形成された粉末充填部の上を通過するように行われ、フィーダカップの粉末投入口がダイの粉末充填部上を通過した際にフィーダカップの粉末投入口からダイの粉末充填部へ原料粉末が落下することで、ダイへの原料粉末の充填が行われる。
【0003】
特許文献1には、フィーダカップの内部とフィーダカップの外部とを挿通するエア排出用パイプをフィーダカップの上蓋に垂直状に設置することが記載されている。フィーダカップにエア排出用パイプを設置することで、フィーダカップ内とダイとの間の空気を逃がし、ダイに形成された充填部に充填される原料粉末の供給量ばらつきを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3-47690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイの粉末充填部への原料粉末の充填では、フィーダカップの前進、後退の動作は成形体の高い生産効率を実現するため高速で行われる。そのため、フィーダカップの待機位置から前進する動作移行、前進から停止への動作移行、停止から後退への動作移行、後退から停止への動作移行の際には、フィーダカップの粉末収容部内に収容された原料粉末に急激な加速度の変化が起こり、原料粉末に所定の慣性力が働く。この慣性力により、粉末収容部内の原料粉末は、粉末収容部の外形を構成する内壁に押し付けられ、換言すれば原料粉末は粉末収容部の内壁に向かって圧縮され、原料粉末は徐々に押し固められていく。その結果、原料粉末の滑動が阻害され、ダイの粉末充填部に落下する原料粉末の量が安定しないといった課題が生じる。発明者等の実験によれば、この課題をフィーダカップ内とダイとの間の空気を逃がすことのみによって解決することは困難であることがわかっている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決しようとするもので、フィーダカップによる原料粉末の供給を安定化できる粉末成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ダイに形成された充填部に粉末を供給するフィーダカップと、前記フィーダカップと接続され前記フィーダカップを前記ダイ上に摺動させる駆動部とを備えた粉末供給装置において、前記フィーダカップは、前記粉末を貯留するとともに前記粉末を前記充填部に放出する粉末収容部と、前記ダイの上方に向かって延出し、前記粉末収容部と外部とを挿通して前記粉末が通過することができる貫通孔とを備える。
前記貫通孔は、前記粉末収容部に露出した開口より、前記外部に露出した開口の方が大きくしてもよい。
また、前記貫通孔は、中間部に段差部を備えていてもよい。
また、前記段差部の外形は長孔形であり、前記段差部より前記摺動面側における前記貫通孔の断面は円形としてもよい。
さらにまた、前記貫通孔を複数備え、複数の前記貫通孔のそれぞれの前記段差部が接続されることで、前記フィーダカップの表面から前記段差部に向かい窪んだザグリ部を備えていてもよい。
また、前記フィーダカップは、前記粉末を前記粉末収容部に供給する粉末供給口を備え、前記粉末供給口と前記貫通孔とは前記フィーダカップの摺動方向に対向配置されていてもよい。
また、前記粉末収容部は、前記粉末供給口から前記貫通孔に向かうにしたがって前記下面側に傾斜した傾斜面を有していてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粉末成形装置によれば、フィーダカップによる原料粉末の供給を安定化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る粉末成形装置の側面断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るフィーダカップを詳細に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の粉末成形装置について図面を用いて説明する。図面においては各構成をわかりやすくするために実際の形状や実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る粉末成形装置を説明するための側面断面図である。本実施形態の粉末成形装置100は、フィーダカップ10とダイ21と上パンチ22と下パンチ23とを備える。フィーダカップ10、ダイ21、上パンチ22および下パンチ23は、例えば、合金工具鋼鋼材SKD-11で構成することができる。ダイ21には貫通孔21aが設けられており、この貫通孔21aの下方より下パンチ23が挿入され、貫通孔21aの内壁面と貫通孔21aに挿入された下パンチ23との間で成形体の原料となる粉末30を収容するための凹部24が形成される。また、上パンチ22は、ダイ21の貫通孔21aに挿入可能に設けられ、凹部24に粉末30が収容された状態で、上パンチ22を貫通孔21aの上方より挿入し、上パンチ22と下パンチ23との間で粉末30を圧縮することで成形体を製造する。
【0012】
ダイ21上にはフィーダカップ10が載置されている。フィーダカップ10は、フィーダカップ10内に粉末30を貯留するとともに凹部24に粉末30を放出する粉末収容部11aを備える。また、フィーダカップ10は図示しない駆動部に接続され、ダイ21の表面に沿って摺動可能に設けられる。
【0013】
図2は、本発明の一実施形態に係るフィーダカップ10を詳細に説明するための図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。本実施形態のフィーダカップ10は、台座11、パイプ取付板12および粉末供給パイプ13から構成される。台座11は、略直方体の部材であり、台座11の上面から下面を挿通する貫通孔からなる粉末収容部11aを備える。粉末収容部11aは、台座11の下面(ダイ21に載置される面)と直交する軸に対し傾斜した断面四角形の貫通孔であり、台座11を下面より上面視したとき、台座11の上面における粉末収容部11aの開口と、下面における粉末収容部11aの開口との位置は重ならない。この粉末収容部11aは、その内部に成形体の原料となる粉末30が貯留するとともに、台座11の下面における粉末供給部11aの開口がフィーダカップ10から凹部24へ粉末30を放出する際の粉末投入口として機能する。
【0014】
また、台座11には、粉末収容部11aから台座11の上方(上面側)へ向かって
延出した断面円形の貫通孔11bを備える。貫通孔11bは、台座11の下面における粉末収容部11aの開口近傍の粉末収容部11aより延出し、粉末収容部11aとフィーダカップ10の外部とを挿通する。そして、貫通孔11bの径は、粉末30の粒径に対して十分に大きく、粉末30が貫通孔11bを通過できるように構成されている。本実施形態では、貫通孔11bを台座11に3個設けるとともに、それぞれの貫通孔11bの径を粉末30の平均粒径をおよそ0.03mmとしたとき、3mmとしている。貫通孔11bの径は、粉末30の粒径に対し50~150倍に設定するのが好ましい。これは、貫通孔11bの径が小さすぎると粉末30の進入が円滑にできなくなり、大きすぎると粉末30がフィーダカップ10の外部に溢れ出るためである。なお、貫通孔11bは、粉末収容部11aから台座11の上方に向かって径が大きくなるテーパー状の貫通孔としてもよく、その場合は粉末収容部11aと連通する開口の径を粉末30の粒径に対して十分に大きく設定すればよい。
【0015】
また、本実施形態の台座11は、台座11の上面にザグリ部11cを備える。ザグリ部11cは、台座11の上面に形成された上面視略長孔形の凹部であり、ザクリ部11cの底面に貫通孔11bの上方側の開口が形成されている。換言すれば、台座11は、貫通孔11bとザグリ部11cとから構成される中間部に段差部(ザグリ部11cの底面)を備えるということもでき、この場合、本実施形態は、複数の貫通孔11bの中間部に形成されたそれぞれの段差部が接続されることで、台座11の上面から貫通孔11bの段差部に窪む一つのザグリ部11cを形成している。
【0016】
台座11の上面には、パイプ取付板12が接合される。パイプ取付板12は貫通孔12aを備え、貫通孔12aは粉末収容部11aと挿通している。より具体的には、貫通孔12aは台座11の上面における粉末収容部11aの開口と接続、挿通されている。なお、パイプ取付板12は、台座11のザグリ部11cに架からない台座11の上面に接合される。
【0017】
パイプ取付板12の貫通孔12aには、粉末30をフィーダカップ10へ供給する円筒状の粉末供給パイプ13が取り付けられる。粉末供給パイプ13は、図示しないホースを介して、粉末30が貯留された図示しないホッパと接続されており、ホッパより供給される粉末30を粉末収容部11aに供給する。
【0018】
次に、本実施形態の粉末成形装置100による成形体の製造について説明する。成形体の製造は、次の工程により行うことができる。まず、粉末供給部11aに粉末30が貯留されたフィーダカップ10を、所定の待機位置から凹部24に向かい移動させる。ここで、フィーダカップ10の所定の待機位置から凹部24に向かう移動方向を前進方向、前進方向と反対方向を後退方向とし、フィーダカップ10における前進方向側を先端側、後退方向側を後端側とする。本実施形態におけるフィーダカップ10では、台座11の下面における粉末収容部11aの開口はフィーダカップ10の先端側に配置され、上面における粉末収容部11aの開口は後端側に配置されている。
【0019】
フィーダカップ10の前進方向への移動は、ダイ21の表面に沿って行われ、フィーダカップ10の粉末供給部11aが凹部24の上部を完全に覆うまで行われる。そして、粉末供給部11aが凹部24を完全に覆ったらフィーダカップ10を一定時間停止させ、その後、フィーダカップ10を後退方向へ移動させ、フィーダカップ10を元の待機位置へと戻す。このフィーダカップ10の前進、停止、後退方向の移動において、フィーダカップ10の粉末供給部11aが凹部24の上部に位置した際に、フーダカップ10の粉末収容部11aから粉末30が凹部24に落下し、凹部24に粉末30が充填される。
【0020】
凹部24に粉末30が充填されたら、上パンチ22を貫通孔21aの上方より挿入し、上パンチ22と下パンチ23との間で粉末30を圧縮し成形体を製造する。そして、上パンチ22および下パンチ23をダイ21に対して上方に移動し、ダイ21から成形体を排出する。以上の動作を繰り返すことで、複数の成形体を製造することができる。
【0021】
ここで、フィーダカップ10の前進方向、後退方向の移動に際しては、フィーダカップ10の進行方向の切り替えの際に粉末30に所定の慣性力が働く。特に前進から停止の切り替えにおいては、粉末収容部11aが先端側に向かい傾斜していることもあり、フィーダカップ10に供給される粉末30の自重と、粉末30に働く慣性力とによって、粉末30が粉末収容部11aの先端側に固まりやすい(圧縮されやすい)。しかし、本実施形態のフィーダカップ10は、台座11の下面における粉末収容部11aの開口近傍、つまりはフィーダカップ10の先端側に、粉末収容部11aとフィーダカップ10の外部とを挿通する貫通孔11bを備える。この貫通孔11bは粉末30が十分に通過可能な大きさで構成されているため、粉末30が自重や慣性力を受けた際に、貫通孔11bが粉末30の逃げ道となり、粉末30に過度の圧力が作用することを抑制できる。したがって、粉末30が固まる現象が抑制され、凹部24へ粉末30を安定的に供給することが可能となる。
【0022】
また、貫通孔11bは、フィーダカップ10の上方に向かって延出している。そのため、粉末収容部11aから貫通孔11bへと進入した粉末30は、粉末収容部11a内の圧力低下により生じる負圧や、粉末30の自重により粉末収容部11aに戻ることとなる。したがって、フィーダカップ10外部への粉末30の漏出を抑制することができる。また、本実施形態のフィーダカップ10は、貫通孔11bの上方側の開口に、貫通孔11bの上方側の開口より大きな開口を有するザグリ部11cを備える。このザグリ部11cは、貫通孔11bを通過して貫通孔11bから外部へ飛散する粉末30の保持部として機能し、より確実にフィーダカップ10外部への粉末30の漏出を抑制することが可能となる。なお、ザグリ部11cに保持された粉末30は、ザグリ部11cの開口の大きさによるが、フィーダカップ10の移動や、その移動により生じる粉末収容部11a内の負圧により、ほぼすべての粉末30が粉末収容部11aに戻すことができる。
【0023】
以上、本発明の粉末供給装置について、実施形態に基づき説明してきたが、本発明の範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく本発明の技術思想の範囲内で任意に変更可能である。例えば、本実施形態におけるフィーダカップ10の粉末収容部11aは断面四角形の貫通孔として説明したが、断面円形やその他の形状であってもよい。また、貫通孔11bを3個設けた構成としたが、貫通孔11bは3個に限定されず、一つ以上であればよい。また、貫通孔11bを断面円形としたが、例えば断面矩形状であってもよい。また、ザグリ部11cを上面視略長孔形としたが、例えば円形や楕円、矩形状であってもよい。また、ダイ21、フィーダカップ10、上パンチ22および下パンチ23の材質を合金工具鋼鋼材SKD-11としたが、合金工具鋼鋼材SKD-11に限定されず超硬合金を用いても構わない。
【符号の説明】
【0024】
10 フィーダカップ
11 台座
11a 粉末収容部
11b 貫通孔
11c ザグリ部
12 パイプ取付板
12a 貫通孔
13 粉末供給パイプ
21 ダイ
21a 貫通孔
22 上パンチ
23 下パンチ
24 凹部
30 粉末
100 粉末供給装置
図1
図2