(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118014
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20240823BHJP
G01N 27/41 20060101ALI20240823BHJP
G01N 27/419 20060101ALI20240823BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/41 325H
G01N27/419 327H
G01N27/416 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024161
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】牧 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】片桐 康太
(72)【発明者】
【氏名】矢板 航平
(72)【発明者】
【氏名】清家 雄也
(72)【発明者】
【氏名】白石 悟
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BC02
2G004BH01
2G004BH06
2G004BJ03
2G004BM07
2G004BM10
(57)【要約】
【課題】ガスセンサに加えられる振動に起因する、センサ素子とリード線とを電気的に接続する端子金具の破損の可能性を抑制したガスセンサを提供する。
【解決手段】本発明の一側面に係るガスセンサにおいて、筒状体の縮径部の最も先端側の端部である開始端から、筒状体の突出部までの距離である第1距離Daで、前記開始端から、端子金具の位置固定部までの距離である第2距離Dbを除した値は、0.24以上、かつ、0.39以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスの特定ガス濃度を検出可能なガスセンサであって、
軸方向に延び、先端側に検出部を有すると共に、後端側に素子電極を有するセンサ素子と、
前記軸方向に延び、先端側に前記素子電極と電気的に接続する素子接触部を有する端子金具と、
前記素子電極および前記素子接触部を収容したセラミックハウジングと、
前記センサ素子、前記端子金具、および、前記セラミックハウジングが内部に配置され、開口端が形成された筒状体と、
先端側が、前記端子金具の後端側に形成されているリード線保持部に圧着固定され、後端側が、前記開口端から外方に延びているリード線と、
前記開口端を封止するよう配置され、前記リード線が挿入される弾性体と、
を備え、
前記端子金具は、前記セラミックハウジングに係止されることで、前記セラミックハウジングに対する前記端子金具の位置を固定する位置固定部を備え、
前記筒状体は、先端側に、前記ガスセンサの取り付けられる外部部材と接して、前記外部部材により規定される空間から前記被測定ガスが漏れ出すのを防ぐ突出部を有し、
前記弾性体の、内部に前記リード線を収納した、前記軸方向に延びる部分を、周囲から加締める縮径部が、前記筒状体の後端側に形成され、
(1)前記軸方向における、前記縮径部の最も先端側の端部である開始端から、前記突出部までの距離である第1距離Daで、(2)前記軸方向における、前記開始端から、前記位置固定部までの距離である第2距離Dbを、除した値は、0.24以上、かつ、0.39以下である、
ガスセンサ。
【請求項2】
前記第1距離Daは、51.6mm以上である、
請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記第2距離Dbは、20.0mm以下である、
請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記軸方向において、前記セラミックハウジングと前記弾性体との間に配置されるスペーサをさらに備える、
請求項1または2に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気ガス等の被測定ガスにおける酸素やNOxなどの特定ガスの濃度を検出するガスセンサが知られている。例えば、下掲の特許文献1には、センサ素子を収容した筒状体と、前記筒状体の開口部を封止する弾性体と、前記弾性体に挿入されるリード線と、前記センサ素子と前記リード線とを電気的に接続する端子金具とを備えるガスセンサが開示されている。特許文献1に開示のガスセンサにおいて、リード線が挿入された弾性体が筒状体によりかしめ固定されて、筒状体を密閉している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者らは、特許文献1に開示されるような従来のガスセンサについて、ガスセンサに振動が加えられる環境下での使用が繰り返されると、センサ素子とリード線とを電気的に接続する端子金具が破損する可能性が高くなるとの問題を見出した。本件発明者らは、係る問題について検討を進め、ガスセンサに加えられた振動によって端子金具が破損する可能性が高くなる原因として、以下の事象を特定した。
【0005】
図4は、従来のガスセンサの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。すなわち、
図4は、従来のガスセンサの、長手方向の軸(軸線、図の左右方向に沿う線)に平行でかつ軸に接する断面の構成を、模式的に示す。
図4に例示するように、従来のガスセンサは、軸を有し、長手方向(軸方向)に沿って延びるように構成されており、長手方向のそれぞれの端として先端および後端を有している。長手方向の一方の端が先端、他方の端が後端である。
図4の例では、従来のガスセンサは、従来のガスセンサの先端が左方向を向き、従来のガスセンサの後端が右方向を向くように配置されている。すなわち、
図4の左右方向が、長手方向(軸方向)に相当する。
【0006】
図4に例示する従来のガスセンサは、センサ素子10を収容した筒状体20と、筒状体20の後端側の開口部を封止する弾性体50と、弾性体50に挿入されるリード線40と、センサ素子10とリード線40とを電気的に接続する端子金具30とを備えている。
【0007】
端子金具30は、先端側に、センサ素子10の素子電極と電気的に接続する素子接触部31を有し、また、後端側に、リード線40を圧着して保持するリード線保持部32を有している。さらに、端子金具30は、セラミックハウジング60に係止されることで、セラミックハウジング60に対する端子金具30の位置を固定する位置固定部33を備えている。すなわち、位置固定部33がセラミックハウジング60に係止されることで、端子金具30は、セラミックハウジング60に対する位置が固定されている。
【0008】
筒状体20は、それぞれが金属製の部材である、筒状の主体金具21Aと、筒状の内筒21Bと、筒状の外筒22と、固定ボルト23と、を含む。主体金具21Aと内筒21Bとは一体的に形成されていてもよく、両者を合わせて「主体金具21」と称することがある。筒状体20の内部にはセンサ素子10、端子金具30、および、セラミックハウジング60が配置されている。また、筒状体20(主体金具21)は、先端側に、従来のガスセンサの取り付けられる外部部材(例えば、自動車の排気管)と接して、係る外部部材により規定される空間から被測定ガスが漏れ出すのを防ぐ突出部222を有している。さらに、筒状体20(外筒22)の後端側には、「弾性体50の、内部にリード線40を収納した、軸方向に延びる部分」を、周囲から加締める縮径部221が形成されており、
図4に示す例では、縮径部221(1)および縮径部221(2)が形成されている。
【0009】
図4における「Da」は、筒状体20の縮径部221の最も先端側の端部である開始端2211から、筒状体20の突出部222までの、軸方向における距離である第1距離Daを表している。
図4に示す例では、第1距離Daは、開始端2211から、突出部222の、従来のガスセンサの取り付けられる外部部材と接触する面(開始端2211の先端側の端面)までの、軸方向における距離である。
【0010】
上述のとおり、
図4に例示する筒状体20には、複数の縮径部221が形成されており、具体的には、縮径部221(1)および縮径部221(2)が形成されている。筒状体20に複数の縮径部221が形成されている場合、開始端2211は、筒状体20に形成された複数の縮径部221のうち、最も先端側の縮径部221の、「最も先端側の端部」とする。
図4に示す例では、開始端2211は、複数の縮径部221のうち、最も先端側の縮径部221である縮径部221(1)の、「最も先端側の端部」である。したがって、
図4において「Da」は、縮径部221(1)の開始端2211から、筒状体20の突出部222までの、軸方向における距離である第1距離Daを表している。特に、
図4に示す例では、第1距離Daは、縮径部221(1)の開始端2211から、開始端2211の先端側の端面(先端面)までの、軸方向における距離である。
【0011】
図4における「Db」は、縮径部221の開始端2211から、端子金具30の位置固定部33までの、軸方向における距離である第2距離Dbを表している。前述のとおり、筒状体20に複数の縮径部221が形成されている場合、開始端2211は、筒状体20に形成された複数の縮径部221のうち、最も先端側の縮径部221の、「最も先端側の端部」とする。したがって、
図4において「Db」は、縮径部221(1)の開始端2211から、端子金具30の位置固定部33までの、軸方向における距離である第2距離Dbを表している。
【0012】
従来のガスセンサは、例えば、先端側が排気管内に露出する態様にて、該排気管に固定された状態で使用され、その際、筒状体20の突出部222等から該排気管の振動が伝わり、つまり、従来のガスセンサに振動が加えられる。すなわち、突出部222(特に、突出部222の先端面)において外部部材(例えば、排気管)と接するガスセンサには、突出部222を介して、係る外部部材から振動が伝えられる。この時、軸方向に延びるガスセンサの表面部材(外側の部材)の揺れの位相と、ガスセンサの内部部材(ガスセンサの内部に収容されている部材)の揺れの位相とは、必ずしも一致しない。例えば、(1)筒状体20等の表面部材の揺れの位相と、(2)軸方向に延びるセンサ素子10、および、センサ素子10に電気的に接続されてセラミックハウジング60の内部で位置を固定された端子金具30等の内部部材の揺れの位相とは、必ずしも一致しない。なお、ガスセンサの長手方向(軸方向)に平行な揺れは無視するものとする。
【0013】
そして、本件発明者らは、筒状体20等の揺れの位相とセンサ素子10(および、端子金具30)の揺れの位相とが一致しない場合、端子金具30に負荷がかかり、これが原因となって端子金具30が破損する可能性が高くなることを見出した。すなわち、本件発明者らは、端子金具30の破損は、ガスセンサに加えられる振動(ガスセンサに繰返し加えられる振動)による金属疲労が影響していることを見出した。金属疲労を起こしやすい端子金具30の部位としては、例えば、セラミックハウジング60に係止されることで、セラミックハウジング60に対する端子金具30の位置を固定する位置固定部33が考えられる。
【0014】
ここで、第1距離Daが長いほど、筒状体20等のガスセンサの表面部材の揺れは大きくなり、係る揺れの影響により、縮径部221の開始端2211と、端子金具30の位置固定部33との間に位置する金属部品である端子金具30が破損する可能性も高くなる。
【0015】
ガスセンサは、近年、長寿命化がますます求められるようになってきており、ガスセンサの長寿命化のためには、端子金具30のような、ガスセンサを構成する部品自体の長寿命化が必要である。しかしながら、例えば、悪路を走行する自動車の排気管等にガスセンサを取り付ける場合、ガスセンサに加えられる振動は激しくなり、上述の理由から、端子金具30が破損する可能性も高くなる。
【0016】
図5は、ガスセンサに振動が加えられた場合に端子金具30にかかる負荷の大きさと、第2距離Dbとの関係を説明するための図である。具体的には、
図5は、
図4に例示した従来のガスセンサの後端側の断面を拡大して示す拡大断面、および、第2距離Dbの大きさと端子金具30の揺れの角度との関係を示している。
図5の上段に示す従来のガスセンサの後端側の拡大断面図において、紙面左右方向が、従来のガスセンサ(センサ素子10)の軸方向(長手方向)であり、紙面左側が先端側、紙面右側が後端側である。
【0017】
図4を用いて説明してきたように、従来のガスセンサにおいて、端子金具30は、セラミックハウジング60と、筒状体20の縮径部221とによって、ガスセンサ内部(すなわち、筒状体20の内部)における位置を固定されている。具体的には、端子金具30は、位置固定部33がセラミックハウジング60に係止されることで、セラミックハウジング60に対して固定されている。また、端子金具30のリード線保持部32は、リード線40を圧着して保持しており、つまり、端子金具30は、リード線40に対して固定されている。そして、筒状体20の縮径部221が「弾性体50の、内部にリード線40を収納した、軸方向に延びる部分」の周囲を加締めることにより、リード線40は固定されている。そのため、筒状体20の縮径部221は、リード線40と、係るリード線40を圧着して保持する端子金具30とを固定している。
【0018】
ここで、第1距離Daが長いほど、筒状体20等のガスセンサの表面部材の揺れは大きくなる。また、
図5に例示するように、端子金具30の位置固定部33から、縮径部221の開始端2211までの、軸方向における距離である第2距離Dbが短いほど、端子金具30の揺れの角度は大きくなり、端子金具30が破損する可能性も高くなる。すなわち、端子金具30の揺れ幅が「y」で共通の場合、第2距離Dbが「Db(1)」である時の端子金具30の揺れの角度θ(1)は、第2距離Dbが「Db(1)」よりも長い「Db(2)」である時の端子金具30の揺れの角度θ(2)よりも、大きくなる。そして、端子金具30の揺れの角度が大きくなるほど、端子金具30にかかる負荷も大きくなり、端子金具30が金属疲労を起こして破損する可能性が高くなる。つまり、端子金具30の寿命は第1距離Daと第2距離Dbとの比で決まり、第2距離Dbを第1距離Daで除した値が小さいほど、端子金具30の耐久性は低くなる。従来のセンサでは第2距離Dbの長さが短いため、端子金具30の揺れの角度が大きく、端子金具30の耐久性能が低い。
【0019】
これまで
図4および
図5を用いて説明してきたとおり、本件発明者らは、筒状体の縮径部の開始端から、端子金具の位置固定部までの、軸方向における距離である第2距離Dbが、短い従来のガスセンサについて、以下の問題を見出した。すなわち、係る従来のガスセンサは、ガスセンサに振動が加えられるような環境下での使用が繰り返されると、センサ素子とリード線とを電気的に接続する端子金具が、金属疲労を起こして破損する可能性が高くなるとの問題を見出した。
【0020】
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ガスセンサに加えられる振動に起因する、センサ素子とリード線とを電気的に接続する端子金具の破損の可能性を抑制したガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0022】
第1の観点に係るガスセンサは、被測定ガスの特定ガス濃度を検出可能なガスセンサであって、軸方向に延び、先端側に検出部を有すると共に、後端側に素子電極を有するセンサ素子と、前記軸方向に延び、先端側に前記素子電極と電気的に接続する素子接触部を有する端子金具と、前記素子電極および前記素子接触部を収容したセラミックハウジングと、前記センサ素子、前記端子金具、および、前記セラミックハウジングが内部に配置され、開口端が形成された筒状体と、先端側が、前記端子金具の後端側に形成されているリード線保持部に圧着固定され、後端側が、前記開口端から外方に延びているリード線と、前記開口端を封止するよう配置され、前記リード線が挿入される弾性体と、を備え、前記端子金具は、前記セラミックハウジングに係止されることで、前記セラミックハウジングに対する前記端子金具の位置を固定する位置固定部を備え、前記筒状体は、先端側に、前記ガスセンサの取り付けられる外部部材と接して、前記外部部材により規定される空間から前記被測定ガスが漏れ出すのを防ぐ突出部を有し、前記弾性体の、内部に前記リード線を収納した、前記軸方向に延びる部分を、周囲から加締める縮径部が、前記筒状体の後端側に形成され、(1)前記軸方向における、前記縮径部の最も先端側の端部である開始端から、前記突出部までの距離である第1距離Daで、(2)前記軸方向における、前記開始端から、前記位置固定部までの距離である第2距離Dbを、除した値は、0.24以上、かつ、0.39以下である。なお、前記筒状体の後端側には、1つまたは複数の前記縮径部が形成され、つまり、前記筒状体の後端側には1つ以上の前記縮径部が形成される。また、前記開始端は、前記縮径部が複数形成される場合、係る複数の縮径部のうち、前記軸方向において最も先端側の縮径部の、最も先端側の端部である。さらに、前記第1距離Daは、前記開始端から、前記突出部(特に、前記突出部の、前記外部部材(例えば、排気管)と接触する面)までの距離である。
【0023】
当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記端子金具は、前記位置固定部が前記セラミックハウジングに係止されることで、前記セラミックハウジングに対して固定されている。また、前記ガスセンサにおいて、前記端子金具の前記リード線保持部は、前記リード線を圧着して保持しており、つまり、前記端子金具は、前記リード線に対して固定されている。そして、前記筒状体の前記縮径部が「前記弾性体の、内部に前記リード線を収納した、前記軸方向に延びる部分」の周囲を加締めることにより、前記リード線は固定されている。そのため、前記筒状体の前記縮径部は、前記リード線と、前記リード線を圧着して保持する前記端子金具とを固定している。
【0024】
ここで、前記ガスセンサは、例えば、自動車の排気管内に先端側が露出する態様にて、該排気管に固定された状態で使用され、その際、前記筒状体の前記突出部等から該排気管の振動が伝わり、つまり、前記ガスセンサに振動が加えられる。この時、前記軸方向に延びる前記ガスセンサの表面部材(外側の部材)の揺れの位相と、前記ガスセンサの内部部材(前記ガスセンサの内部に収容されている部材)の揺れの位相とは、必ずしも一致しない。例えば、(1)前記筒状体等の表面部材の揺れの位相と、(2)前記軸方向に延びる前記センサ素子、および、前記センサ素子に電気的に接続されて前記セラミックハウジングの内部で位置を固定された前記端子金具等の内部部材の揺れの位相とは、必ずしも一致しない。
【0025】
そして、前記筒状体等の揺れの位相と前記センサ素子(および、前記端子金具)の揺れの位相とが一致しない場合、前記端子金具に負荷がかかり、前記端子金具が金属疲労を起こして破損する可能性がある。金属疲労を起こしやすい前記端子金具の部位としては、例えば、前記セラミックハウジングに係止されることで、前記セラミックハウジングに対する前記端子金具の位置を固定する位置固定部が考えられる。
【0026】
一般に、前記第1距離Daが長いほど、前記筒状体等の前記ガスセンサの表面の部材の揺れは大きくなる。そして、係る揺れの影響により、前記縮径部の前記開始端と、前記端子金具の前記位置固定部との間に位置する金属部品である前記端子金具が破損する可能性も高くなる。なお、前記弾性体を周囲から加締める縮径部が、前記筒状体の後端側に複数形成される場合、前記開始端は、係る複数の縮径部のうち、前記軸方向において最も先端側の縮径部の、最も先端側の端部とする。また、前記端子金具の破損に影響する揺れとして、前記ガスセンサの軸方向(長手方向)に平行な揺れは無視するものとする。
【0027】
また、前記端子金具の揺れ幅(軸方向に直交する方向の揺れの距離)を一定とみなせる場合、一般に、前記第2距離Dbが短いほど、前記端子金具の揺れの角度は大きくなり、前記端子金具にかかる負荷も大きくなり、前記端子金具が破損する可能性が高くなる。すなわち、前記第2距離Dbを短くすると前記端子金具の揺れの角度が大きくなり、前記端子金具が金属疲労を起こして前記端子金具が破損する可能性が高くなる。
【0028】
本件発明者らは、ガスセンサに加えられる振動に起因する、センサ素子とリード線とを電気的に接続する端子金具の破損の可能性を抑制するには、前記第1距離Daに対して前記第2距離Dbを十分に大きな値とすることが有効であることを見出した。
【0029】
本件発明者らは、さらに検討を進め、前記端子金具の耐久性能比較試験を行って、以下の事象を確認した。すなわち、本件発明者らは、前記第1距離Daで前記第2距離Dbを除した値を、0.24以上とすることで、前記ガスセンサに加えられる振動に起因する、前記端子金具の金属疲労を軽減できることを確認した。
【0030】
ここで、前記第1距離Daで前記第2距離Dbを除した値が大きくなると、前記端子金具の前記位置固定部が、前記センサ素子の先端側に近付くことになり、つまり、前記端子金具が、前記ガスセンサの先端側にある熱源に近付くことになる。そのため、前記第1距離Daで前記第2距離Dbを除した値が大きくなると、前記センサ素子と前記リード線とを電気的に接続する前記端子金具が高温に曝されて金属劣化等を起こし、接触不良が発生することが懸念される。そこで、前記熱源から前記端子金具までの間隔を十分に確保するために、前記第1距離Daで前記第2距離Dbを除した値を小さくし、具体的には、「0.39」以下とする。前記第1距離Daで前記第2距離Dbを除した値を0.39以下とすることで、「前記端子金具が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避することができる。
【0031】
したがって、前記ガスセンサは、前記第1距離Daで、前記第2距離Dbを除した値を、0.24以上、かつ、0.39以下とすることで、以下の効果を奏する。すなわち、前記ガスセンサは、「前記端子金具が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避しつつ、振動に起因する端子金具30の破損の可能性を抑制することができるとの効果を奏する。
【0032】
第2の観点に係るガスセンサは、上記第1の観点に係るガスセンサにおいて、前記第1距離Daは、51.6mm以上であってもよい。
【0033】
当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記第1距離Daは、51.6mm以上である。前述のとおり、前記第1距離Daは、前記軸方向における、前記縮径部の最も先端側の端部である開始端から、前記突出部までの距離である。そのため、前記第1距離Daを短くしようとすると、前記ガスセンサ全体の軸方向の長さを短くすることになる。そして、前記ガスセンサ全体の軸方向の長さを短くすると、前記ガスセンサの先端から、特に、前記ガスセンサの先端側にある熱源から、前記弾性体までの間隔を十分に確保することが困難となる。つまり、前記第1距離Daを短くしようとすると、前記熱源から、前記弾性体までの間隔を十分に確保することが困難となり、前記弾性体が高温にさらされて溶損を起こす可能性が生じる。
【0034】
そこで、前記ガスセンサは、前記第1距離Daを、51.6mm以上とする。前記ガスセンサは、前記第1距離Daを51.6mm以上とすることで、前記ガスセンサの先端側にある熱源から前記弾性体までの間隔を十分に確保して、前記弾性体が高温にさらされて溶損を起こす可能性を抑制できるとの効果を奏する。
【0035】
第3の観点に係るガスセンサは、上記第1または第2の観点に係るガスセンサにおいて、前記第2距離Dbは、20.0mm以下であってもよい。
【0036】
当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記第2距離Dbは、20.0mm以下である。前述のとおり、前記第2距離Dbは、前記軸方向における、前記縮径部の最も先端側の端部である開始端から、前記端子金具の前記位置固定部までの距離である。そのため、前記第2距離Dbを長くしようとすると、前記セラミックハウジングおよび前記端子金具を、前記ガスセンサの先端に、特に、前記ガスセンサの先端側にある熱源に、近付けることになってしまう。つまり、前記第2距離Dbを長くしようとすると、前記端子金具を前記熱源に近付けることになってしまい、前記端子金具が高温にさらされて劣化しやすくなってしまう。
【0037】
そこで、前記ガスセンサは、前記第2距離Dbを、20.0mm以下とする。前記ガスセンサは、前記第2距離Dbを20.0mm以下とすることで、前記熱源から前記セラミックハウジングおよび前記端子金具までの間隔を十分に確保して、前記端子金具が高温にさらされて劣化しやすくなってしまうのを抑制できるとの効果を奏する。
【0038】
第4の観点に係るガスセンサは、上記第1から上記第3の何れかの観点に係るガスセンサにおいて、前記軸方向において、前記セラミックハウジングと前記弾性体との間に配置されるスペーサをさらに備えてもよい。当該構成では、前記ガスセンサは、前記軸方向において、前記セラミックハウジングと前記弾性体との間に配置されるスペーサをさらに備える。つまり、前記ガスセンサにおいて、前記弾性体は、前記セラミックハウジングおよび前記スペーサよりも、前記軸方向において後端側に配置される。そのため、前記ガスセンサは、前記セラミックハウジングおよび前記スペーサによって、前記ガスセンサの先端側にある前記熱源から発せられる熱が、前記弾性体へと伝わるのを効果的に抑制することができるとの効果を奏する。なお、前記軸方向において前記弾性体よりも先端側に配置される前記スペーサは、耐熱性の材料によって構成されることが好ましい。耐熱性の材料によって前記スペーサを構成することで、前記軸方向において前記弾性体よりも先端側に配置される前記スペーサが、前記熱源から発せられる熱によって溶損を起こすといった事態が発生するのを防止できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ガスセンサに加えられる振動に起因する、センサ素子とリード線とを電気的に接続する端子金具の破損の可能性を抑制したガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るガスセンサの主要な構成の一例を概略的に示す部分断面模式図である。
【
図2】
図2は、変形例1に係るガスセンサの主要な構成の一例を概略的に示す部分断面模式図である。
【
図3】
図3は、耐久性能比較試験における温度および加速度の変化を示すグラフである。
【
図4】
図4は、従来のガスセンサの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。
【
図5】
図5は、ガスセンサに振動が加えられた場合に端子金具にかかる負荷の大きさと、第2距離Dbとの関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0042】
本件発明者らは、ガスセンサに振動が繰り返し加えられると、ガスセンサ(特に、ガスセンサが備える筒状体)の内部に固定され、センサ素子とリード線とを電気的に接続する端子金具が金属疲労を起こして破損する可能性があるとの問題を見出した。本件発明者らは、係る問題について検討を進め、以下の事象を特定した。
【0043】
すなわち、ガスセンサは一般的に、外部部材(例えば、ガスセンサが取り付けられる排気管)と接する部位(部材)を有している。例えば、本発明の一側面に係るガスセンサ(特に、ガスセンサが備える筒状体)は、外部部材と接して、係る外部部材により規定される空間から被測定ガスが漏れ出すのを防ぐ突出部を有する。このような外部部材と接する部位(例えば、突出部)を介して、係る外部部材からガスセンサへと振動が伝わり、つまり、ガスセンサに振動が加えられる。この時、センサ素子の軸方向(長手方向)に延びるガスセンサの表面部材(外側の部材)の揺れの位相と、ガスセンサの内部部材(ガスセンサの内部に収容されている部材)の揺れの位相とは、必ずしも一致しない。例えば、(1)筒状体等の表面部材の揺れの位相と、(2)軸方向に延びるセンサ素子、および、センサ素子に電気的に接続されてセラミックハウジングの内部で位置を固定された端子金具等の内部部材の揺れの位相とは、必ずしも一致しない。そして、本件発明者らは、筒状体等の揺れの位相とセンサ素子(および、端子金具)の揺れの位相とが一致しない場合、端子金具に負荷がかかり、これが原因となって端子金具が破損する可能性が高くなることを見出した。
【0044】
本件発明者らは、さらに検討を進め、「ガスセンサに加えられる振動に起因する、端子金具の金属疲労」を軽減するためには、第1距離Daに対して第2距離Dbを大きくすることが有効であることを見出した。ここで、第1距離Daは、開始端から、ガスセンサが外部部材と接する部位(例えば、突出部)までの、軸方向における距離である。開始端は、筒状体の後端側に形成された縮径部の、最も先端側の端部であり、縮径部は、弾性体の、内部にリード線を収納した部分を周囲から加締めることで、弾性体を筒状体に固定している。また、第2距離Dbは、開始端から、端子金具をセラミックハウジングに固定する位置固定部までの、軸方向における距離である。
【0045】
本件発明者らは、第1距離Daが長いほど、筒状体等のガスセンサの表面部材の揺れが大きくなり、係る揺れの影響により、開始端と位置固定部との間に位置する端子金具に係る負担も大きくなり、端子金具が破損する可能性が高くなることを見出した。また、本件発明者らは、第2距離Dbが短いほど、端子金具の揺れの角度が大きくなり、端子金具が金属疲労を起こして破損する可能性も高くなることを見出した。そこで、本件発明者らは、第1距離Daで第2距離Dbを除した値(すなわち、Db/Da)を大きくすることで、「ガスセンサに加えられる振動に起因する、端子金具の金属疲労」を軽減できると考え、「Db/Da」の望ましい範囲を試験により求めた。具体的には、本件発明者らは、「Db/Da」が互いに異なる複数のガスセンサについて、端子金具の耐久性能比較試験を行った。その結果、本件発明者らは、「Db/Da」が0.24以上である場合、つまり、「0.24≦Db/Da」を満たす場合、「ガスセンサに加えられる振動に起因する、端子金具の金属疲労」を軽減できることを確認した。
【0046】
また、本件発明者らは、第1距離Daは51.6mm以上とすることが望ましく、また、第2距離Dbは20.0mm以下とすることが望ましいことを確認した。したがって、第1距離Daで第2距離Dbを除した値(Db/Da)は、「0.39」以下とするのが望ましい。第1距離Daで第2距離Dbを除した値が大きくなると、端子金具の位置固定部が、センサ素子の先端側に近付くことになる。つまり、第1距離Daで第2距離Dbを除した値が大きくなると、端子金具がガスセンサの先端側にある熱源に近付くことになり、センサ素子とリード線とを電気的に接続する端子金具が金属劣化等を起こして、接触不良が発生することが懸念される。そこで、前記熱源から端子金具までの間隔を十分に確保するために、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を小さくし、具体的には、「0.39」以下とする。第1距離Daで第2距離Dbを除した値を0.39以下とすることで、「端子金具が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避することができる。つまり、「Db/Da≦0.39」とするのが望ましく、「Db/Da≦0.39」とすることで、「端子金具が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避することができる。
【0047】
なお、以下の説明において、「Db/Da」が満たすべき、「0.24≦Db/Da≦0.39」との条件を、「条件1」とも称する。
【0048】
そこで、本発明の一側面に係るガスセンサにおいて、第1距離Daと第2距離Dbとは上述の条件1を満たし、つまり、第1距離Daで第2距離Dbを除した値は、0.24以上、かつ、0.39以下である。したがって、本発明の一側面に係るガスセンサは、「端子金具が高温にさらされて接触不良が発生する」のを回避しつつ、ガスセンサに加えられる振動に起因する端子金具の金属疲労を軽減し、端子金具の破損の可能性を抑制することができる。以下では先ず、
図1を用いて、本発明の一側面に係るガスセンサとして、ガスセンサ1について説明する。
【0049】
[構成例]
<ガスセンサの全体概要>
図1は、本実施形態に係るガスセンサ1の構成の一例を概略的に示す断面模式図である。すなわち、
図1は、ガスセンサ1の、長手方向の軸(軸線、図の左右方向に沿う線)に平行でかつ軸に接する断面の構成を、模式的に示す。ガスセンサ1は、本発明の「ガスセンサ」の一例であり、自動車の排気ガス等の被測定ガスにおける酸素やNO
xなどの特定ガスの濃度(特定ガス濃度)を検出可能なガスセンサである。
図1に例示するように、ガスセンサ1は、軸を有し、長手方向(軸方向)に沿って延びるように構成されており、長手方向のそれぞれの端として先端および後端を有している。長手方向の一方の端が先端、他方の端が後端である。
図1の例では、ガスセンサ1は、ガスセンサ1の先端が左方向を向き、ガスセンサ1の後端が右方向を向くように配置されている。すなわち、
図1の左右方向が、長手方向(軸方向)に相当する。本実施形態では、ガスセンサ1は、センサ素子10、筒状体20、端子金具30、リード線40、弾性体50、セラミックハウジング60、および、保護カバー70を備える。ガスセンサ1においてセンサ素子10は、筒状体20と、保護カバー70とによって囲繞され、筒状体20と、保護カバー70とは、全体として、センサ素子10を内部に収容する収容部材(ケーシング)を構成している。センサ素子10は、筒状体20および保護カバー70と同軸に配置されており、係るセンサ素子10の中心軸の延在方向は、ガスセンサ1の軸方向と一致している。
【0050】
(センサ素子)
センサ素子10は、本発明の「センサ素子」の一例であり、軸方向(
図1の左右方向)に沿って延びるように構成される。
図1に例示するセンサ素子10は、細長な平板状の(長尺板状の)素子である。センサ素子10は、先端側に不図示の検出部を有すると共に、後端側に不図示の素子電極を有する。
図1に例示するセンサ素子10は、先端側が外側多孔質層によって被膜されており、係る外側多孔質層は、例えば被測定ガス中の水分等が付着してセンサ素子10の素子本体にクラックが生じるのを抑制する保護層としての役割を果たしている。
【0051】
ガスセンサ1においてセンサ素子10は、先端側がガスセンサ1の先端の方を向くように配置されている。例えば、センサ素子10の一態様においては、センサ素子10の内部に導入された被測定ガスがセンサ素子10の内部で還元ないしは分解されて酸素イオンが発生する。このようなセンサ素子10を備えるガスセンサ1においては、センサ素子10の内部を流れる酸素イオンの量が被測定ガス中における検知対象ガスである特定ガスの濃度に比例することに基づいて、当該特定ガスの濃度が求められる。
【0052】
図1に示す例においてセンサ素子10の先端側は、保護カバー70によって囲繞されており、後端側は、外筒22内に突出しており、両者の間の略中央部分は、環装部品80により、両端部間を気密に封止する態様にて主体金具21の内部に固定されている。
【0053】
(環装部品)
環装部品80は、
図1に示す例では、第1セラミックサポータ81と、圧粉体82と、第2セラミックサポータ83とからなる。第1セラミックサポータ81および第2セラミックサポータ83は、セラミックス製の碍子である。より詳細には、第1セラミックサポータ81および第2セラミックサポータ83の軸中心位置には、センサ素子10の断面形状に応じた形状の貫通孔(図示省略)が設けられており、当該貫通孔にセンサ素子10が挿通されることによって、第1セラミックサポータ81および第2セラミックサポータ83はセンサ素子10に環装されている。なお、第1セラミックサポータ81は、図面左側において主体金具21のテーパー面に係止されている。
【0054】
一方、圧粉体82は、タルクなどのセラミックス粉末を成型したものである。圧粉体82は、第1セラミックサポータ81および第2セラミックサポータ83と同様に、貫通孔にセンサ素子10が挿通されることによって、センサ素子10に環装されていた2つの成型体(不図示)が、センサ素子10の周囲に環装された状態で主体金具21の内部に配置された後、さらに圧縮されて一体となったものである。より詳細には、圧粉体82をなすセラミックス粒子は、第1セラミックサポータ81および第2セラミックサポータ83と主体金具21とに囲繞され、かつ、主体金具21の内部の、センサ素子10が貫通する空間に、密に充填されている。圧粉体82の圧縮充填により、センサ素子10の先端側と、後端側との間の気密封止が、実現される。
【0055】
図1には、環装部品80を第1セラミックサポータ81と、圧粉体82と、第2セラミックサポータ83とによって構成する例を示した。しかしながら、ガスセンサ1において、環装部品80を第1セラミックサポータ81と、圧粉体82と、第2セラミックサポータ83とによって構成することは必須ではない。
図1に例示するガスセンサ1は、主体金具21の内部においてセンサ素子10を固定すると共に、センサ素子10の先端側と後端側との間を気密封止する環装部品80を備えている。
【0056】
(筒状体)
筒状体20は、本発明の「筒状体」の一例である。筒状体20は、例えば、金属製の筒状(例えば、円筒状)の部材であり、開口端が形成されている。筒状体20の内部にはセンサ素子10、端子金具30、および、セラミックハウジング60が配置されている。
図1に示す例では、筒状体20は、それぞれが金属製の部材である、筒状の主体金具21と、筒状の外筒22と、固定ボルト23とを含む。
【0057】
主体金具21は、金属製の筒状(例えば、円筒状)の部材である。主体金具21の内部には、センサ素子10と、該センサ素子10に環装された固定用の環装部品80とが、収容される。つまり、主体金具21は、センサ素子10の周りに環装された環装部品80の周囲に、さらに環装される。
図1に例示する主体金具21は、軸方向(長手方向)に沿ってセンサ素子10を囲むように構成され、特に、センサ素子10の先端側および後端側のそれぞれの一部を除く範囲を囲うように構成されている。
【0058】
主体金具21は、その先端側に、ガスセンサ1の取り付けられる外部部材(例えば、自動車の排気管)と接して、係る外部部材により規定される空間から被測定ガスが漏れ出すのを防ぐ突出部222を有する。
図1に示す例では、主体金具21の先端側に、主体金具21の径方向外側に突出した突出部222が形成されている。突出部222は、本発明の「突出部」の一例である。例えば、固定ボルト23のボルト部が、排気管に設けられたセンサ固定用部材のナット(ナット部)に螺合することで、ガスセンサ1は該排気管に固定され、その際、突出部222は該センサ固定用部材に接して、該排気管内から排気ガスが漏れ出すのを防ぐ。
【0059】
外筒22は、金属製の筒状(例えば、円筒状)の部材であり、
図1に例示する外筒22は、センサ素子10の後端、および、セラミックハウジング60(端子金具30)の周囲を覆っている。
【0060】
外筒22の先端側の端部(開口端)は、主体金具21の後端側の外周端部に溶接固定されている。また、外筒22の後端側の開口端には、係る開口端を封止するように弾性体50が配置されている。外筒22の後端側には、後端側の開口端を封止するための弾性体50の一部を周囲から加締める縮径部221が、形成されている。縮径部221は、本発明の「縮径部」の一例である。縮径部221において外筒22がその周方向全体にわたって縮径状に外側から加締められることにより、弾性体50に径方向外側へと向かう反力を生じさせることによって、外筒22は封止されている。
【0061】
また、弾性体50によって封止された外筒22の後端側の開口端からは、リード線40が、弾性体50の内部に形成された貫通孔(不図示)を通って、外部に引き出されている。リード線40の被膜と金属線(導体)との間(言い換えれば、被膜の内側)を通って、外筒22の内部空間には外気(大気)が導入され、外筒22の内部空間は、基準ガス(大気)雰囲気となっている。センサ素子10の後端は、基準ガスで満たされた外筒22の内部空間内に配置されている。
【0062】
固定ボルト23は、ガスセンサ1を測定位置(取り付け位置)に固定する際に用いられる環状の部材であり、主体金具21と同軸に固定されている。固定ボルト23は、ねじ切りがされたボルト部と、係るボルト部を螺合する際に保持される保持部とを備えている。固定ボルト23のボルト部は、ガスセンサ1の取り付け位置に設けられたナットと螺合する。例えば、自動車の排気管に設けられたナット(ナット部)に、固定ボルト23のボルト部が螺合されることで、ガスセンサ1は、保護カバー70の側が排気管内に露出する態様にて該排気管に固定される。
【0063】
これまでに説明してきた通り、
図1に例示する筒状体20は、主体金具21と、外筒22と、固定ボルト23とを含み、全体として筒状(例えば、円筒状)の部材として、特に、軸方向に延びる筒状の部材として構成されている。すなわち、
図1に例示する筒状体20は、筒状の主体金具21と、主体金具21の後端側の外周端部に溶接固定される筒状の外筒22と、主体金具21の先端側の外周に配置される固定ボルト23とを含む、軸方向に延びる円筒状の部材である。例えば、筒状体20とガスセンサ1(センサ素子10)とは同軸であり、筒状体20は、軸方向(長手方向)のそれぞれの端として先端および後端を有しており、筒状体20の先端がガスセンサ1の先端の方を向くように配置されている。そして、筒状体20の内部には、センサ素子10と、該センサ素子10に環装された固定用の環装部品80と、端子金具30と、セラミックハウジング60とが収容され、後端側の開口端を弾性体50によって封止されている。筒状体20(外筒22)の後端側には、筒状体20の開口端を封止するための弾性体50を固定するための縮径部221が形成され、縮径部221は、弾性体50の一部を周囲から加締めている。また、筒状体20は、その先端側に、ガスセンサ1の取り付けられる外部部材と接して、係る外部部材により規定される空間から被測定ガスが漏れ出すのを防ぐ突出部222を有する。
【0064】
図1に示す例では、筒状体20(外筒22)の後端側には、弾性体50を固定するための縮径部221が2つ形成され、具体的には、縮径部221(1)および縮径部221(2)が形成されている。縮径部221(1)および縮径部221(2)は、それぞれ、弾性体50の一部を周囲から加締め、特に、弾性体50の、内部にリード線40を収納した部分を、周囲から加締めている。なお、以下の説明において、縮径部221(1)および縮径部221(2)のそれぞれを区別する必要がない場合には、単に「縮径部221」と記載することがある。また、複数の縮径部221のそれぞれを区別する場合には、部材番号「221」の後に「(1)」、「(2)」、「(3)」、・・・、「(n)」、「(n+1)」を付して、それぞれを区別する。「n」は「1」以上の整数とする。
【0065】
筒状体20に形成される縮径部221は、「弾性体50の、内部にリード線40を収納した部分(内部にリード線40を収納した、軸方向に延びる部分)」を、周囲から加締めている。縮径部221が「弾性体50の、内部にリード線40を収納した、軸方向に延びる部分」の周囲を加締めることにより、ガスセンサ1において、リード線40の位置は固定されている。詳細は後述するが、リード線40は、端子金具30のリード線保持部32に圧着されて保持されており、つまり、リード線保持部32に圧着固定されている。そして、リード線40は、縮径部221によって、その位置を固定されている。したがって、ガスセンサ1において縮径部221は、リード線40、および、リード線40に圧着固定された端子金具30(リード線保持部32)の、それぞれの位置を固定している。
【0066】
図1に示す例では、縮径部221は、「弾性体50の、内部にリード線40および端子金具30のリード線保持部32を収納した、軸方向に延びる部分」を、周囲から加締めている。具体的には、縮径部221(1)は、「弾性体50の、内部に、リード線保持部32と、係るリード線保持部32に圧着固定されたリード線40(特に、リード線40の先端側)とを収納した部分」を周囲から加締めている。また、縮径部221(2)は、「弾性体50の、内部にリード線40を収納した部分」を周囲から加締めている。そのため、
図1に例示するガスセンサ1において、リード線40およびリード線保持部32は、それぞれ、縮径部221によって、その位置を固定されている。
【0067】
なお、ガスセンサ1において、筒状体20が、主体金具21と、外筒22と、固定ボルト23とを含むことは必須ではない。筒状体20は、固定ボルト23を含んでいなくてもよいし、主体金具21と外筒22とは一体的に形成された部材であってもよい。ガスセンサ1において、筒状体20は、センサ素子10、端子金具30、および、セラミックハウジング60が内部に配置され、開口端が形成された、筒状の部材であればよい。
【0068】
また、ガスセンサ1において、弾性体50を固定するために筒状体20に形成される縮径部221が、2つであることは必須ではない。さらに、縮径部221が、「弾性体50の、内部にリード線40および端子金具30のリード線保持部32を収納した、軸方向に延びる部分」を、周囲から加締めることも、ガスセンサ1において必須ではない。ガスセンサ1において縮径部221は、「弾性体50の、内部にリード線40を収納した部分(内部にリード線40を収納した、軸方向に延びる部分)」を、周囲から加締めていればよい。縮径部221は、リード線40の位置を固定することにより、リード線40に圧着固定された端子金具30(リード線保持部32)の位置を固定する。
【0069】
(端子金具)
端子金具30は、本発明の「端子金具」の一例である。端子金具30は、軸方向に延びる金属製の部材(接点部材)である。ガスセンサ1において、センサ素子10(特に、その素子電極)と、リード線40とは、端子金具30を介して、電気的に接続されている。
図1に例示するように、端子金具30は、センサ素子10の素子電極と電気的に接続する素子接触部31を先端側に有し、また、リード線40を圧着して保持するリード線保持部32を後端側に有する。さらに、端子金具30は、セラミックハウジング60に係止されることで、セラミックハウジング60に対する端子金具30の位置を固定する位置固定部33を備える。
図1に例示する位置固定部33は、セラミックハウジング60に係止されるフック形状(L字状)の部材である。位置固定部33は、軸方向と交差する方向(例えば、軸方向に直交する方向、ガスセンサ1の径方向)に延びる板状の部材を含んでいてもよく、さらに、係る板状の部材の先端側は、軸方向に沿って湾曲されていてもよい。ガスセンサ1において、位置固定部33がセラミックハウジング60に係止されることで、端子金具30は、セラミックハウジング60に対して固定されている。
【0070】
ガスセンサ1において、位置固定部33によって端子金具30がセラミックハウジング60に対して固定された状態で、素子接触部31は、センサ素子10の素子電極に接し、また、リード線保持部32は、リード線40を圧着して保持している。予めリード線40をリード線保持部32に圧着して保持させた端子金具30の先端側を、セラミックハウジング60に挿通させて、端子金具30の素子接触部31とセンサ素子10の素子電極とを電気的に接続させてもよい。そして、位置固定部33は、セラミックハウジング60に係止されることによって、端子金具30を、セラミックハウジング60に対して固定している。
【0071】
端子金具30において、素子接触部31とリード線保持部32との間の部分は、板バネ状をなしていてもよい。
図1に示す例では、端子金具30のリード線保持部32は、弾性体50の内部に収容されており、例えば、弾性体50の内部に形成された貫通孔に収容されている。そして、縮径部221は、「弾性体50の、内部にリード線40および端子金具30のリード線保持部32を収納した、軸方向に延びる部分」を、周囲から加締めている。また、端子金具30の素子接触部31は、セラミックハウジング60に収容されており、つまり、素子接触部31とセンサ素子10の素子電極とは、セラミックハウジング60内で、電気的に接続されている。
【0072】
(セラミックハウジング)
セラミックハウジング60は、本発明の「セラミックハウジング」の一例である。セラミックハウジング60は、センサ素子10の後端側(具体的には、センサ素子10の後端側に設けられた素子電極)と、端子金具30の先端側(具体的には、素子接触部31)と、を収容したセラミック製の部材である。つまり、
図1に例示するガスセンサ1において、センサ素子10(特に、素子電極)と端子金具30(特に、素子接触部31)とは、セラミックハウジング60内で、電気的に接続されている。
【0073】
例えば、端子金具30の先端側(素子接触部31)を収容したセラミックハウジング60に、素子電極が設けられたセンサ素子10の後端側が挿入されている。係る挿入状態において、センサ素子10の後端側に設けられた素子電極と、端子金具30の先端側(素子接触部31)とは、互いに接することになる。素子電極が設けられたセンサ素子10の後端側とセラミックハウジング60との間に、端子金具30の先端側(素子接触部31)が挟持固定されることで、センサ素子10の素子電極と端子金具30とが電気的に接続されていてもよい。
【0074】
セラミックハウジング60は、筒状体20内での位置(例えば、軸方向における位置)を固定されており、特に、先端側への移動を抑制されている。セラミックハウジング60は、例えば、不図示のセラハウ固定部材によって、筒状体20内での軸方向における位置を固定され、特に、先端側への移動を抑制されている。係るセラハウ固定部材は、例えば、筒状体20の内部でセラミックハウジング60を径方向内側に押圧するバネ部材と、係るバネ部材を押さえつけることによりバネ力を発揮させるカシメリングとにより構成されていてもよい。
【0075】
(リード線)
リード線40は、本発明の「リード線」の一例である。リード線40は、端子金具30を介してセンサ素子10の素子電極と電気的に接続し、筒状体20の開口端から外方に延びている。具体的には、リード線40は、その先端側において端子金具30の後端側(すなわち、リード線保持部32)と電気的に接続されており、また、リード線40の後端側は、筒状体20の開口端から外方に延びている。リード線40の先端側は、端子金具30のリード線保持部32に圧着固定されている。そして、上述のとおり、リード線40と筒状体20(外筒22)との隙間は弾性体50によって封止されている。
【0076】
リード線40は、弾性体50に挿入されており、例えば、弾性体50の内部に設けられた貫通孔(不図示)に挿通されている。リード線40の先端側の端部は、端子金具30の後端側(具体的には、リード線保持部32)に圧着固定され、また、リード線40の後端側の端部は、外部の装置(コントローラ)、電源等に接続されている。これにより、センサ素子10(特に、センサ素子10の素子電極)と、外部の装置、電源等とが、端子金具30およびリード線40を通じて電気的に接続される。なお、
図1には、端子金具30とリード線40とがそれぞれ2つである例を示しているが、これはあくまで図示の簡単のためである。実際には、ガスセンサ1は、上記の電気的な接続に必要な数の端子金具30およびリード線40を備えている。
【0077】
ガスセンサ1においては、例えば、リード線40の被膜と金属線(導体)との間(言い換えれば、被膜の内側)を、外気および筒状体20内の気体が通ることで、筒状体20内に外気が導入され、また、筒状体20内の気体が外部に排出される。
【0078】
(弾性体)
弾性体50は、本発明の「弾性体」の一例である。弾性体50は、弾性を有する部材であり、例えばゴム製である。弾性体50は、筒状体20の開口端(
図1に示す例では、後端側の開口端)を封止するよう配置され、リード線40が挿入される。具体的には、弾性体50の内部には、軸方向に延びる貫通孔が形成されており、例えば、軸方向に延びる貫通孔が複数形成されている。弾性体50の内部に形成された貫通孔には、リード線40が収容され(挿入され)、例えば、弾性体50の内部に形成された複数の貫通孔のそれぞれに、複数のリード線40のそれぞれが、収容されている(挿入されている)。
図1に示す例では、弾性体50の内部に形成された複数の貫通孔のそれぞれに、複数のリード線40のそれぞれと、それぞれが各リード線40に圧着固定された複数のリード線保持部32とが、収容されている(挿入されている)。
【0079】
弾性体50の材料は、例えば、フッ素ゴムである。フッ素ゴムは、耐性、強度などのさまざまな面で優れた特性を有し、特に耐熱性および耐油性に優れている。そのため、ガスセンサ1は、フッ素ゴムからなる弾性体50を利用することで、例えば、高温環境下でも弾性体50のシール性を確保して、ガス濃度の検出精度を維持、向上させることができるとの効果を奏する。ただし、ガスセンサ1にとって、弾性体50の材料をフッ素ゴムとすることは必須ではなく、ガスセンサ1は、弾性を有する素材を適宜、弾性体50の材料に用いてもよい。
【0080】
(保護カバー)
保護カバー70は、センサ素子10のうち、使用時に被測定ガスに直接に接触する部分である先端側の所定範囲を保護する、略円筒状の外装部材である。
図1に例示する保護カバー70は、軸方向(長手方向)に沿って、筒状体20(主体金具21)の先端側の少なくとも一部の周りを囲み、センサ素子10の先端を越えて延びるように構成されている。例えば、保護カバー70は、センサ素子10および筒状体20の先端側の一部を軸周りに囲うように構成される。保護カバー70は、軸方向のそれぞれの端として先端および後端を有しており、保護カバー70の先端がセンサ素子10の先端よりもガスセンサ1の先端側に配置されている。
【0081】
保護カバー70には、気体が通過可能な複数の貫通孔(不図示)が設けられている。係る貫通孔を通じて保護カバー70内に流入した被測定ガスが、センサ素子10における直接の検知対象となる。なお、保護カバー70に設けられる貫通孔の種類、配置個数、配置位置、形状などは、保護カバー70の内部への被測定ガスの流入態様を考慮して、適宜に定められてよい。
【0082】
図1に示す例では、保護カバー70は、センサ素子10の先端を覆う有底筒状の内側カバー71と、内側カバー71を覆う有底筒状の外側カバー72とを備えている。内側カバー71は、第1部材71Bおよび第2部材71Aを備え、センサ素子10および筒状体20(主体金具21)の先端側の少なくとも一部の周囲を覆うように構成されている。第1部材71Bは、筒状体20の先端部の外壁から軸方向に沿って延び、筒状体20の先端を越えた辺りで軸方向に垂直な方向に径が小さくなった後に、軸方向に沿ってさらに延びるように構成されている。第2部材71Aは、第1部材71Bの先端側の一部の周囲を覆うように構成されている。外側カバー72は、内側カバー71の周囲を覆うように構成されている。
【0083】
内側カバー71によって囲まれた空間としてセンサ素子室が形成されており、センサ素子10の先端は、このセンサ素子室内に配置されている。内側カバー71の第1部材71B、第2部材71Aおよび外側カバー72には、開口が適宜設けられており、これにより、センサ素子室は、保護カバー70の外側の空間と接続している。ただし、保護カバー70の構成および形状は、このような例に限定されなくてよい。保護カバー70の構成および形状は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。
【0084】
保護カバー70の材料には、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS)等の金属材料が用いられてよい。保護カバー70は、金属材料を適宜成形することで、製造されてよい。なお、この保護カバー70は、ガスセンサ1の構成から省略されてもよい。
【0085】
これまでに説明してきたとおり、ガスセンサ1において端子金具30は、センサ素子10とリード線40とを電気的に接続している。すなわち、端子金具30は、センサ素子10の軸方向(長手方向)における先端側で、センサ素子10の素子電極と電気的に接続すると共に、後端側で、リード線40を圧着して保持することにより、センサ素子10とリード線40とを電気的に接続している。また、端子金具30は、位置固定部33を備える。位置固定部33は、例えば、ガスセンサ1(筒状体20)の内部で位置を固定されたセラミックハウジング60に係止されることで、セラミックハウジング60に対する端子金具30の位置(特に、軸方向の位置)を固定する。そして、筒状体20には、弾性体50の「内部にリード線40を収納した部分」を周囲から加締める縮径部221が形成されている。縮径部221によって、弾性体50は筒状体20に対して固定されると共に、リード線40も、筒状体20に対して固定される。
【0086】
上述のとおり、ガスセンサ1において端子金具30は、リード線40を圧着して保持しており、つまり、端子金具30は、リード線40に対して固定されている。また、筒状体20に形成された縮径部221が「弾性体50の、内部にリード線40を収納した部分」の周囲を加締めることにより、リード線40は筒状体20に対して固定されている。したがって、ガスセンサ1において、筒状体20の縮径部221は、弾性体50に加えて、弾性体50に挿入されたリード線40と、リード線40を圧着して保持する端子金具30と、を固定している。また、前述のとおり、ガスセンサ1において、端子金具30は、位置固定部33によってセラミックハウジング60に固定されている。
【0087】
このようなガスセンサ1に振動に加えられた場合、筒状体20等の揺れの位相と、筒状体20の内部に配置されたセンサ素子10および端子金具30等の揺れの位相とが、一致しないことが起こり得る。本件発明者らは、筒状体20等の揺れの位相と、筒状体20の内部に配置されたセンサ素子10および端子金具30等の揺れの位相とが一致しない場合、端子金具30に負荷がかかり、これが原因となって端子金具30が破損する可能性が高くなることを見出した。そこで、ガスセンサ1は、各部材のサイズ等を調整することで、ガスセンサ1に加えられる振動に起因する、端子金具30の金属疲労を軽減する。以下、ガスセンサ1において各部材のサイズ等が満たすべき条件について、詳細を説明する。
【0088】
(各部材のサイズ等について)
図1における「Da」は、「軸方向において、筒状体20の縮径部221の最も先端側の端部」である開始端2211から、筒状体20の突出部222までの、軸方向における距離である第1距離Daを表している。
図1に示す例では、第1距離Daは、開始端2211から、突出部222の、ガスセンサ1の取り付けられる外部部材と接触する面(開始端2211の先端側の端面)までの、軸方向における距離である。
【0089】
上述のとおり、
図1に例示する筒状体20には、複数の縮径部221が形成されており、具体的には、縮径部221(1)および縮径部221(2)が形成されている。筒状体20に複数の縮径部221が形成されている場合、開始端2211は、筒状体20に形成された複数の縮径部221のうち、軸方向において最も先端側の縮径部221の、「最も先端側の端部」とする。
図1に示す例では、開始端2211は、複数の縮径部221のうち、軸方向において最も先端側の縮径部221である縮径部221(1)の、「最も先端側の端部」である。したがって、
図1において「Da」は、縮径部221(1)の開始端2211から、筒状体20の突出部222までの、軸方向における距離である第1距離Daを表している。特に、
図1に示す例では、第1距離Daは、縮径部221(1)の開始端2211から、開始端2211の先端側の端面(先端面)までの、軸方向における距離である。
【0090】
ガスセンサ1において第1距離Daは、例えば、51.6mm以上である。前述のとおり、第1距離Daは、軸方向における、縮径部221の最も先端側の端部である開始端2211から、突出部222までの距離である。そのため、第1距離Daを短くしようとすると、ガスセンサ1全体の軸方向の長さを短くすることになる。そして、ガスセンサ1全体の軸方向の長さを短くすると、ガスセンサ1の先端から、特に、ガスセンサ1の先端側にある熱源から、弾性体50までの間隔を十分に確保することが困難となる。つまり、第1距離Daを短くしようとすると、熱源から、弾性体50までの間隔を十分に確保することが困難となり、弾性体50が高温にさらされて溶損を起こす可能性が生じる。
【0091】
そこで、ガスセンサ1は、第1距離Daを、例えば、51.6mm以上とすることで、ガスセンサ1の先端側にある熱源から、弾性体50までの間隔を十分に確保する。したがって、ガスセンサ1は、弾性体50が高温にさらされて溶損を起こす可能性を抑制することができるとの効果を奏する。
【0092】
図1における「Db」は、縮径部221の開始端2211から、端子金具30の位置固定部33までの、軸方向における距離である第2距離Dbを表している。前述のとおり、筒状体20に複数の縮径部221が形成されている場合、開始端2211は、筒状体20に形成された複数の縮径部221のうち、最も先端側の縮径部221の、「最も先端側の端部」とする。したがって、
図1において「Db」は、縮径部221(1)の開始端2211から、端子金具30の位置固定部33までの、軸方向における距離である第2距離Dbを表している。
【0093】
ガスセンサ1において第2距離Dbは、例えば、20.0mm以下である。前述のとおり、第2距離Dbは、軸方向における、縮径部221の最も先端側の端部である開始端2211から、端子金具30の位置固定部33までの距離である。そのため、第2距離Dbを長くしようとすると、セラミックハウジング60および端子金具30を、ガスセンサ1の先端に、特に、ガスセンサ1の先端側にある熱源に、近付けることになってしまう。つまり、第2距離Dbを長くしようとすると、端子金具30を熱源に近付けることになってしまい、端子金具30が高温にさらされて劣化しやすくなってしまう。
【0094】
そこで、ガスセンサ1は、第2距離Dbを、例えば、20.0mm以下とする。ガスセンサ1は、第2距離Dbを20.0mm以下とすることで、熱源からセラミックハウジング60および端子金具30までの間隔を十分に確保する。そのため、ガスセンサ1は、端子金具30が高温にさらされて劣化しやすくなってしまうのを抑制できるとの効果を奏する。
【0095】
上述のとおり、第1距離Daは51.6mm以上とすることが望ましく、また、第2距離Dbは20.0mm以下とすることが望ましい。したがって、第1距離Daで第2距離Dbを除した値(Db/Da)は、「20.0/51.6」以下とするのが望ましく、つまり、「0.39」以下とするのが望ましい。第1距離Daで第2距離Dbを除した値が大きくなると、端子金具30の位置固定部33が、センサ素子10の先端側に近付くことになり、つまり、端子金具30がガスセンサ1の先端側にある熱源に近付くことになる。そのため、第1距離Daで第2距離Dbを除した値が大きくなると、センサ素子10とリード線40とを電気的に接続する端子金具30が高温に曝されて金属劣化等を起こし、接触不良が発生することが懸念される。そこで、前記熱源から端子金具30までの間隔を十分に確保するために、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を小さくし、具体的には、「0.39」以下とする。第1距離Daで第2距離Dbを除した値を0.39以下とすることで、「端子金具30が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避することができる。つまり、「Db/Da≦0.39」とするのが望ましく、「Db/Da≦0.39」とすることで、「端子金具30が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避することができる。
【0096】
さらに、本件発明者らは、端子金具30の耐久性能を比較する試験(詳細は後述)を行なって、以下の事象を確認した。すなわち、本件発明者らは、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を0.24以上とすることで、「ガスセンサ1に加えられる振動に起因する、端子金具30の金属疲労」を軽減できることを確認した。
【0097】
したがって、ガスセンサ1は、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を、0.24以上、かつ、0.39以下とすることで、以下の効果を奏する。すなわち、ガスセンサ1は、「端子金具30が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避しつつ、振動に起因する端子金具30の破損の可能性を抑制することができるとの効果を奏する。
【0098】
<十分な長さの第2距離Dbを確保する構成についての考察>
これまでに説明してきたとおり、本発明に係るガスセンサにおいて、第1距離Daで第2距離Dbを除した値は、つまり、「Db/Da」は、0.24以上、かつ、0.39以下である。ここで、
図1を用いて説明してきたガスセンサ1において、弾性体50の先端側の端面(先端面)と、セラミックハウジング60の後端側の端面(後端面)とは接していた。しかしながら、本発明に係るガスセンサにおいて、弾性体50の先端面と、セラミックハウジング60の後端面とが接することは必須ではない。本発明に係るガスセンサは、条件1を満たすように、第1距離Daおよび第2距離Dbのサイズ(長さ)が調整されていればよく、つまり、条件1を満たすように、各部材のサイズが調整されていればよい。本発明に係るガスセンサは、軸方向(センサ素子10の長手方向)において、セラミックハウジング60と弾性体50との間に部材(例えば、後述するスペーサ90)を配置して、十分な長さの第2距離Dbを確保してもよい。本発明に係るガスセンサにおいて、第1距離Daおよび第2距離Dbが条件1を満たすのであれば、弾性体50の先端面と、セラミックハウジング60の後端面とは接していなくてもよい。以下、本発明の一側面に係る、「第1距離Daおよび第2距離Dbが条件1を満たし、かつ、弾性体50の先端面と、セラミックハウジングの後端面とが接していないガスセンサ」について、
図2を用いて説明する。
【0099】
図2は、変形例1に係るガスセンサ1Aの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。すなわち、
図2は、ガスセンサ1Aの、長手方向の軸(軸線、図の左右方向に沿う線)に平行でかつ軸に接する断面の構成を、模式的に示す。ガスセンサ1Aは、本発明の「ガスセンサ」の一例であり、自動車の排気ガス等の被測定ガスにおける酸素やNO
xなどの特定ガスの濃度(特定ガス濃度)を検出可能なガスセンサである。ガスセンサ1Aは、ガスセンサ1が備える構成に加えてさらにスペーサ90を備える点を除いて、ガスセンサ1と同様であるため、スペーサ90以外の構成について、詳細な説明は省略する。
【0100】
図2の例では、ガスセンサ1Aは、ガスセンサ1Aの先端が左方向を向き、ガスセンサ1Aの後端が右方向を向くように配置されている。すなわち、
図2の左右方向が、長手方向(軸方向)に相当する。ガスセンサ1Aは、ガスセンサ1と同様に、センサ素子10、筒状体20、端子金具30、リード線40、弾性体50、セラミックハウジング60、および、保護カバー70を備え、ガスセンサ1Aはさらに、スペーサ90を備えている。
【0101】
(スペーサ)
スペーサ90は、本発明の「スペーサ」の一例である。スペーサ90は、ガスセンサ1A(センサ素子10)の軸方向において、セラミックハウジング60と弾性体50との間に配置される。つまり、スペーサ90は、筒状体20(外筒22)の内部において、セラミックハウジング60と弾性体50とに挟み込まれて(介在して)いる。例えば、スペーサ90は、セラミックハウジング60によって、軸方向の移動(特に、先端側への移動)を制限されている。
【0102】
図2に例示するスペーサ90には、リード線40が挿入されている。具体的には、スペーサ90の内部に、リード線40と、端子金具30(特に、リード線40を圧着して保持するリード線保持部32)とが収容されている。例えば、スペーサ90の内部には、軸方向に延びる貫通孔が形成されている。スペーサ90の内部には、弾性体50の内部と同様に、軸方向に延びる貫通孔が複数形成されていてもよい。スペーサ90の内部に形成された貫通孔に、リード線40と、端子金具30のリード線保持部32とは収容されている(挿入されている)。例えば、スペーサ90の内部に形成された複数の貫通孔のそれぞれに、複数のリード線40およびリード線保持部32のそれぞれが、収容されている(挿入されている)。
図2には、スペーサ90の内部に貫通孔が2つ形成され、係る2つの貫通孔のそれぞれに、2つのリード線40のそれぞれと、2つのリード線保持部32のそれぞれとが、収容されている例が示されている。そして、ガスセンサ1Aにおいて、リード線保持部32とリード線40とは、スペーサ90内で、電気的に接続されている。
【0103】
スペーサ90は、例えば、耐熱性の材料によって構成される。耐熱性の材料によってスペーサ90を構成することで、軸方向において弾性体50よりも先端側に配置されるスペーサ90が、ガスセンサ1Aの先端側にある熱源から発せられる熱によって溶損を起こすといった事態が発生するのを防止できる。例えば、弾性体50とセラミックハウジング60との間にスペーサ90を介在させることにより、ガスセンサ1Aの使用時等における弾性体50の過剰な昇温を防ぐことができる。つまり、弾性体50への伝熱を抑えるという観点からは、スペーサ90の熱伝導率は低い方が望ましい。ただし、スペーサ90によって弾性体50の温度上昇が抑えられる一方で、スペーサ90は高温度となるため、スペーサ90自体には十分な耐熱性が必要となる。そこで、スペーサ90を耐熱性の材料によって構成することで、上述の熱源から弾性体50への伝熱を抑えつつ、スペーサ90自体が熱源から発せられる熱によって溶損を起こすといった事態が発生するのを防止できる。
【0104】
なお、
図2には、スペーサ90を1つの部材とする例を示しているが、スペーサ90は、複数の構成要素(構成部材)によって構成されていてもよい。例えば、スペーサ90は、軸方向において先端側に配置されるスペーサ先端側部分と、後端側に配置されるスペーサ後端側部分とを有していてもよい。すなわち、スペーサ90を、スペーサ先端側部分とスペーサ後端側部分とを含む多段構成(例えば、2段構成)としてもよい。
【0105】
スペーサ90を利用して、ガスセンサ1Aの使用時における弾性体50の昇温を抑制する場合、上述のスペーサ先端側部分およびスペーサ後端側部分は、それぞれ、以下のように構成されてもよい。すなわち、軸方向において先端側に配置されるスペーサ先端側部分の材質としては、スペーサ後端側部分よりも優れた耐熱性を具備するという点から、樹脂よりも高融点である、セラミックスが選択される。好ましくは、耐熱性に加えて断熱性の点からも好適な、熱伝導率が32W/m・K以下であるセラミックスが選択され、より好ましくはアルミナ(熱伝導率:32W/m・K)またはステアタイト(熱伝導率:2W/m・K)が選択される。これに対して、弾性体50と接するスペーサ後端側部分の材質としては、低熱伝導性を具備するという点から、セラミックス等よりも樹脂が選択される。好ましくは、スペーサ後端側部分に用いる樹脂は、何れもフッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、融点327°C)またはPFA(パーフルオロアルコキシアルカン、融点310°c)である。これらの樹脂は、低熱伝導性に加え、ゴム製の弾性体50よりも高い耐熱性を有している。例えば、PTFEについていえば、その熱伝導率は0.2W/m・Kであり、連続最高使用温度(最高温度での使用が連続する場合の当該最高温度)は260°Cである。
【0106】
図2に例示するガスセンサ1Aにおいて、筒状体20(外筒22)は、センサ素子10の後端、セラミックハウジング60(端子金具30)、および、スペーサ90の周囲を覆っている。すなわち、
図2に示す例では、筒状体20の内部には、センサ素子10と、該センサ素子10に環装された固定用の環装部品80と、セラミックハウジング60(端子金具30)と、スペーサ90とが収容され、後端側の開口端を弾性体50によって封止されている。
【0107】
また、ガスセンサ1Aにおいて、リード線40は、例えば、弾性体50およびスペーサ90に連続的に設けられた貫通穴(不図示)に挿通されており、先端側の端部(非被膜部分42)は端子金具30のリード線保持部32に圧着固定されている。なお、
図2には、端子金具30とリード線40とがそれぞれ2つである例を示しているが、これはあくまで図示の簡単のためである。実際には、ガスセンサ1Aは、上記の電気的な接続に必要な数の端子金具30およびリード線40を備えている。
【0108】
図2に例示する端子金具30のリード線保持部32は、スペーサ90内に収容されており、つまり、
図2に例示するガスセンサ1Aにおいて、リード線保持部32とリード線40とは、スペーサ90内で、電気的に接続されている。また、端子金具30の素子接触部31は、セラミックハウジング60に収容されている。
【0109】
また、
図2に示す例では、筒状体20の後端側に「弾性体50の、内部にリード線40を収納した部分(内部にリード線40を収納した、軸方向に延びる部分)」を、周囲から加締める縮径部が1つ形成され、具体的には、縮径部221が形成されている。縮径部221は、「弾性体50の、内部にリード線40を収納した、軸方向に延びる部分」の周囲を加締めることにより、リード線40、および、リード線40に圧着固定された端子金具30(リード線保持部32)の、それぞれの位置を固定している。すなわち、ガスセンサ1Aにおいてリード線40およびリード線保持部32は、ガスセンサ1と同様に、縮径部221によって、その位置を固定されている。
【0110】
これまでに説明してきたとおり、
図2に例示するガスセンサ1Aは、
図1を用いて説明したガスセンサ1が備える構成に加えてさらに、スペーサ90を備える。すなわち、ガスセンサ1Aは、軸方向においてセラミックハウジング60と弾性体50との間に配置されるスペーサ90を備える。ガスセンサ1Aにおいて、弾性体50は、セラミックハウジング60およびスペーサ90よりも、軸方向において後端側に配置される。そのため、ガスセンサ1Aは、セラミックハウジング60およびスペーサ90によって、ガスセンサ1Aの先端側にある熱源から発せられる熱が、弾性体50へと伝わるのをより効果的に抑制することができるとの効果を奏する。なお、軸方向において弾性体50よりも先端側に配置されるスペーサ90は、耐熱性の材料によって構成されることが好ましい。耐熱性の材料によってスペーサ90を構成することで、軸方向において弾性体50よりも先端側に配置されるスペーサ90が、上述の熱源から発せられる熱によって溶損を起こすといった事態が発生するのを防止できる。
【0111】
なお、スペーサ90を備える点を除いて、ガスセンサ1Aは、ガスセンサ1と同様の構成を備える。すなわち、ガスセンサ1Aは、ガスセンサ1と同様に、被測定ガスの特定ガス濃度を検出可能なガスセンサであり、センサ素子10と、端子金具30と、セラミックハウジング60と、筒状体20と、リード線40と、弾性体50と、を備える。そして、
図2に例示するガスセンサ1Aにおいて、筒状体20の後端側には、弾性体50の「内部にリード線40を収納した、軸方向に延びる部分」を周囲から加締める縮径部221が1つ形成されている。
【0112】
ガスセンサ1Aにおいて、第1距離Daで、第2距離Dbを、除した値は、0.24以上、かつ、0.39以下である。第1距離Daは、軸方向における、縮径部221の開始端2211から、突出部222までの距離である。例えば、第1距離Daは、軸方向における、開始端2211から、ガスセンサ1Aの取り付けられる外部部材(例えば、排気管)と接触する、突出部222の面(
図2に示す例では、突出部222の先端側の端面)までの距離である。開始端2211は、軸方向において、縮径部221の最も先端側の端部である。
図2に例示するガスセンサ1Aにおいて、筒状体20の後端側に形成される縮径部221は1つであり、係る1つの縮径部221の、軸方向において最も先端側の端部が、開始端2211である。また、第2距離Dbは、軸方向における、開始端2211から、端子金具30の位置固定部33までの、距離である。
【0113】
ガスセンサ1Aは、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を、0.24以上、かつ、0.39以下とすることで、ガスセンサ1と同様に、以下の効果を奏する。すなわち、ガスセンサ1Aは、「端子金具30が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避しつつ、振動に起因する端子金具30の破損の可能性を抑制することができるとの効果を奏する。
【0114】
また、ガスセンサ1Aにおいて、第1距離Daは、例えば51.6mm以上である。ガスセンサ1Aは、第1距離Daを、51.6mm以上とすることで、ガスセンサ1Aの先端側にある熱源から、弾性体50までの間隔を十分に確保する。したがって、ガスセンサ1Aは、弾性体50が高温にさらされて溶損を起こす可能性を抑制することができるとの効果を奏する。
【0115】
ガスセンサ1Aにおいて、第2距離Dbは、例えば20.0mm以下である。ガスセンサ1Aは、第2距離Dbを20.0mm以下とすることで、熱源からセラミックハウジング60および端子金具30までの間隔を十分に確保する。そのため、ガスセンサ1Aは、端子金具30が高温にさらされて劣化しやすくなってしまうのを抑制できるとの効果を奏する。
【0116】
図2に例示するように、ガスセンサ1Aにおいて、端子金具30のリード線保持部32は、スペーサ90の内部に配置されていてもよい。ガスセンサ1Aは、リード線保持部32をスペーサ90の内部に配置することで、リード線保持部32が弾性体50と干渉したり、弾性体50の貫通孔を塞いだりするのを防止することができるとの効果を奏する。
【0117】
[特徴]
以上のとおり、本実施形態に係るガスセンサ1、1Aは、それぞれ、被測定ガスの特定ガス濃度を検出可能なガスセンサである。ガスセンサ1(1A)は、センサ素子10と、端子金具30と、セラミックハウジング60と、筒状体20と、リード線40と、弾性体50と、を備える。
【0118】
センサ素子10は、軸方向(長手方向)に延び、先端側に検出部を有すると共に、後端側に素子電極を有する。端子金具30は、軸方向に延び、先端側にセンサ素子10の素子電極と電気的に接続する素子接触部31を有する。また、端子金具30は、セラミックハウジング60に係止されることで、セラミックハウジング60に対する端子金具30の位置を固定する位置固定部33を備える。セラミックハウジング60は、センサ素子10の素子電極と、端子金具30の素子接触部31とを収容する。筒状体20は、センサ素子10、端子金具30、および、セラミックハウジング60が内部に配置された筒状の部材であり、開口端が形成されている。筒状体20は、先端側に、「ガスセンサの取り付けられる外部部材と接して、係る外部部材により規定される空間(被測定空間)から被測定ガスが漏れ出すのを防ぐ」突出部222を有している。筒状体20の後端側には、弾性体50の「内部にリード線40を収納した、軸方向に延びる部分」を周囲から加締める縮径部221が形成されている。特に、筒状体20の後端側には、縮径部221が、1つまたは複数形成されており、つまり、1つ以上の縮径部221が形成されている。リード線40は、先端側が、端子金具30の後端側に形成されているリード線保持部32に圧着固定され、後端側が、筒状体20の開口端から外方に延びている。弾性体50は、筒状体20の開口端を封止するよう配置され、弾性体50には、リード線40が挿入される。
【0119】
ガスセンサ1(1A)において、第1距離Daで、第2距離Dbを、除した値は、0.24以上、かつ、0.39以下である。第1距離Daは、軸方向における、縮径部221の開始端2211から、突出部222までの距離である。例えば、第1距離Daは、軸方向における、開始端2211から、ガスセンサ1(1A)の取り付けられる外部部材(例えば、排気管)と接触する、突出部222の面(
図1、
図2に示す例では、突出部222の先端側の端面)までの距離である。開始端2211は、軸方向において、縮径部221の最も先端側の端部である。縮径部221が複数形成される場合、開始端2211は、複数の縮径部221のうち、軸方向において最も先端側の縮径部221の、最も先端側の端部である。また、第2距離Dbは、軸方向における、開始端2211から、端子金具30の位置固定部33までの、距離である。
【0120】
当該構成では、ガスセンサ1(1A)において、端子金具30は、位置固定部33がセラミックハウジング60に係止されることで、セラミックハウジング60に対して固定されている。また、ガスセンサ1(1A)において、端子金具30のリード線保持部32は、リード線40を圧着して保持しており、つまり、端子金具30は、リード線40に対して固定されている。そして、筒状体20の縮径部221が「弾性体50の、内部にリード線40を収納した、軸方向に延びる部分」の周囲を加締めることにより、リード線40は固定されている。そのため、筒状体20の縮径部221は、リード線40と、リード線40を圧着して保持する端子金具30とを固定している。
【0121】
ここで、ガスセンサ1(1A)は、例えば、自動車の排気管内に先端側が露出する態様にて、該排気管に固定された状態で使用される。その際、筒状体20の突出部222等から自動車の排気管の振動が伝わり、つまり、ガスセンサ1(1A)に振動が加えられる。この時、軸方向に延びるガスセンサ1(1A)の表面部材(外側の部材)の揺れの位相と、ガスセンサ1(1A)の内部部材(内部に収容されている部材)の揺れの位相とは、必ずしも一致しない。例えば、(1)筒状体20等の表面部材の揺れの位相と、(2)軸方向に延びるセンサ素子10、および、センサ素子10に電気的に接続されてセラミックハウジング60の内部で位置を固定された端子金具30等の内部部材の揺れの位相とは、必ずしも一致しない。
【0122】
そして、筒状体20等の揺れの位相とセンサ素子10(および、端子金具30)の揺れの位相とが一致しない場合、端子金具30に負荷がかかり、端子金具30が金属疲労を起こして破損する可能性がある。金属疲労を起こしやすい端子金具30の部位としては、例えば、セラミックハウジング60に係止されることで、セラミックハウジング60に対する端子金具30の位置を固定する位置固定部33が考えられる。
【0123】
一般に、第1距離Daが長いほど、筒状体20等のガスセンサ1(1A)の表面の部材の揺れは大きくなる。そして、係る揺れの影響により、縮径部221の開始端2211と、端子金具30の位置固定部33との間に位置する金属部品である端子金具30が破損する可能性も高くなる。上述のとおり、弾性体50を周囲から加締める縮径部221が複数形成される場合、開始端2211は、係る複数の縮径部221のうち、軸方向において最も先端側の縮径部221の、最も先端側の端部とする。また、端子金具30の破損に影響する揺れとして、ガスセンサ1(1A)の軸方向(長手方向)に平行な揺れは無視するものとする。
【0124】
また、端子金具30の揺れ幅(軸方向に直交する方向の揺れの距離)を一定とみなせる場合、一般に、第2距離Dbが短いほど、端子金具30の揺れの角度は大きくなる。端子金具30の揺れの角度が大きくなると、端子金具30にかかる負荷も大きくなり、端子金具30が破損する可能性が高くなる。すなわち、第2距離Dbを短くすると端子金具30の揺れの角度が大きくなり、端子金具30が金属疲労を起こして端子金具30が破損する可能性が高くなる。
【0125】
本件発明者らは、ガスセンサ1(1A)に加えられる振動に起因する端子金具30の破損の可能性を抑制するには、第1距離Daに対して第2距離Dbを十分に大きな値とすることが有効であることを見出した。
【0126】
本件発明者らは、さらに検討を進め、端子金具30の耐久性能比較試験を行って、以下の事象を確認した。すなわち、本件発明者らは、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を、0.24以上とすることで、ガスセンサ1(1A)に加えられる振動に起因する、端子金具30の金属疲労を軽減できることを確認した。
【0127】
ここで、第1距離Daで第2距離Dbを除した値が大きくなると、端子金具30の位置固定部33が、センサ素子10の先端側に近付くことになり、つまり、端子金具30が、ガスセンサ1(1A)の先端側にある熱源に近付くことになる。そのため、第1距離Daで第2距離Dbを除した値が大きくなると、センサ素子10とリード線40とを電気的に接続する端子金具30が高温に曝されて金属劣化等を起こし、接触不良が発生することが懸念される。そこで、前記熱源から端子金具30までの間隔を十分に確保するために、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を小さくし、具体的には、「0.39」以下とする。第1距離Daで第2距離Dbを除した値を0.39以下とすることで、「端子金具30が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避することができる。
【0128】
したがって、ガスセンサ1(1A)は、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を、0.24以上、かつ、0.39以下とすることで、以下の効果を奏する。すなわち、ガスセンサ1(1A)は、「端子金具30が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避しつつ、振動に起因する端子金具30の破損の可能性を抑制することができるとの効果を奏する。
【0129】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述までの実施形態の説明は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。上記実施形態には、種々の改良および変形が行われてよい。上記実施形態の各構成要素に関して、適宜、構成要素の省略、置換および追加が行われてもよい。また、上記実施形態の各構成要素の形状および寸法は、実施の形態に応じて適宜変更されてよい。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0130】
(スペーサの先端面について)
図2には、軸方向における先端側の端面(先端面)が平坦であるスペーサ90の例を示した。しかしながら、本発明に係るガスセンサにとって、スペーサ90の先端面が平坦であることは必須ではない。先端面においてセラミックハウジング60(特に、セラミックハウジング60の後端側の端面(後端面))と接するスペーサ90は、その先端面の一部においてのみ、セラミックハウジング60と接してもよい。例えば、スペーサ90の先端面に、1または複数の凹部を形成し、係る1または複数の凹部を除く部分において、スペーサ90の先端面とセラミックハウジング60(特に、セラミックハウジング60の後端面)とが接していてもよい。また、スペーサ90の先端面に、1または複数の凸部を形成し、係る1または複数の凸部の頂点(複数の凸部を形成する場合、複数の凸部のそれぞれの頂点)においてのみ、スペーサ90の先端面とセラミックハウジング60とが接していてもよい。
【0131】
スペーサ90が、その先端面の全体ではなく、先端面の一部においてのみ、セラミックハウジング60(特に、セラミックハウジング60の後端面)に接するようにすることで、本発明に係るガスセンサは、以下の効果を実現することができる。すなわち、本発明に係るガスセンサは、セラミックハウジング60からスペーサ90、さらには、弾性体50への伝熱を抑制することができるとの効果を奏する。例えば、スペーサ90の強度を確保しつつ、弾性体50の熱劣化を抑制できるように、本発明に係るガスセンサは、スペーサ90の先端面に、1または複数の、凹部および凸部の少なくとも一方を、形成してもよい。先端面に、1または複数の、凹部および凸部の少なくとも一方が形成されたスペーサ90は、先端面の全体ではなく、先端面の一部において、セラミックハウジング60(特に、セラミックハウジング60の後端面)に接する。
【0132】
(縮径部の個数について)
筒状体20に形成される縮径部221の個数は、「1つ」であってもよいし、「複数」であってもよい。本発明に係るガスセンサにおいて、筒状体20に形成される縮径部221の個数は、ガスセンサの軸方向(長手方向)における長さ、弾性体50の軸方向における長さ、ガスセンサの使用環境、使用条件等に応じて適宜決められる。
【0133】
[実施例]
本件発明者らは、本発明の効果(特に、端子金具の耐久性能)を検証するため、以下の実施例1~8に係るガスセンサを作製し、HALT試験(Highly Accelerated limit Test)を行なった。ただし、本発明は、以下の実施例(水準)に限定されるものではない。
【表1】
【0134】
表1において、実施例1~8は、それぞれ、
図1に例示する構成(部材)を備えるガスセンサである。ただし、実施例1~8は、それぞれ、「軸方向における、縮径部の最も先端側の端部である開始端から、突出部までの距離」である第1距離Daで、「軸方向における、開始端から、端子金具の位置固定部までの距離」である第2距離Dbを、除した値が異なる。
【0135】
なお、実施例1~8のうち、何れかまたは全てを、
図2に例示する構成(部材)を備えるガスセンサとしてもよく、言い換えれば、実施例1~8のうち、何れかまたは全ては、
図2に例示するスペーサ90を備えていてもよい。例えば、実施例5~8のそれぞれを、
図2に例示するスペーサ90を備えるガスセンサとし、実施例1~4のそれぞれを、
図1に例示する構成を備えるガスセンサとしてもよい。すなわち、実施例1~8は、それぞれ、第1距離Daで第2距離Dbを除した値が表1に示す値であればよく、
図1に例示する構成(部材)と、
図2に例示する構成(部材)とのどちらを備えているかは、試験結果(表1中の「評価」)に影響しなかった。
【0136】
実施例1~実施例3は、それぞれ、第1距離Daで第2距離Dbを除した値(Db/Da)が、「0.24」に比べて極めて小さいガスセンサである。実施例4は、第1距離Daで第2距離Dbを除した値(Db/Da)が、「0.24」に比べて若干小さいガスセンサである。実施例5~実施例8は、それぞれ、第1距離Daで第2距離Dbを除した値(Db/Da)が、「0.24」以上の範囲にあるガスセンサである。
【0137】
本件発明者らは、上述の実施例1~8のそれぞれに係るガスセンサについて、端子金具30の耐久性能を比較するために、以下のHALT試験を行なった。すなわち、
図3に示すシーケンスで温度条件および加速度条件のそれぞれを変化させるHALT試験を、実施例1~8のそれぞれに係るガスセンサ(特に、各実施例に係る、複数のガスセンサ)について行なった。
【0138】
図3は、本件発明者らが実施例1~8のそれぞれに係るガスセンサに対して行なったHALT試験(耐久性能比較試験)における温度条件および加速度条件のそれぞれの変化(シーケンス)を示すグラフである。
図3に例示するグラフにおいて、温度条件の変化は点線で示され、
図3に例示するように、温度条件を「-90℃」~「190℃」の範囲で変化させた。また、
図3に例示するグラフにおいて、加速度条件の変化は実線で示され、
図3に例示するように、加速度条件を「10Grms」~「70Grms」の範囲で変化させた。
【0139】
係るHALT試験を、各実施例に係る複数のガスセンサに対して行ない、HALT試験の実施後(例えば、時刻=200の時点。言い換えれば、加速度=40Grmsの時点)における、端子金具30(特に、位置固定部33)の破損の有無を確認した。すなわち、実施例1に係る複数のガスセンサに対して上述のHALT試験を実施し、HALT試験の実施後、係る複数のガスセンサのそれぞれの端子金具30(特に、位置固定部33)の破損の有無を確認した。同様に、実施例2~8のそれぞれに係る複数のガスセンサに対して上述のHALT試験を実施し、HALT試験の実施後、各実施例に係る複数のガスセンサのそれぞれの位置固定部33の破損の有無を確認した。
【0140】
表1中、「〇(極めて良好)」との評価は、各実施例に係る複数のガスセンサの全てについて、端子金具30(特に、位置固定部33)の破損がなかったことを示している。「△(標準)」との評価は、各実施例に係る複数のガスセンサのうち、一部のガスセンサにおいて、端子金具30(特に、位置固定部33)の破損が確認されたことを示している。「×(不良)」との評価は、各実施例に係る複数のガスセンサの全てについて、端子金具30(特に、位置固定部33)の破損が確認されたことを示している。
【0141】
第1距離Daで第2距離Dbを除した値(Db/Da)が、「0.24」に比べて極めて小さい実施例1~実施例3に係るガスセンサの評価は、何れも「×(不良)」であった。また、第1距離Daで第2距離Dbを除した値(Db/Da)が、「0.24」に比べて若干小さい「0.21」である実施例4に係るガスセンサの評価は、「△(標準)」であった。これらに対して、第1距離Daで第2距離Dbを除した値(Db/Da)が、「0.24」以上の範囲にある実施例5~実施例8に係るガスセンサは、それぞれ、その評価が「〇(極めて良好)」となった。したがって、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を0.24以上とすることで、「ガスセンサに加えられる振動に起因する、端子金具30の破損の可能性」を極めて良好に抑制できることが確認された。
【0142】
また、上述のとおり、第1距離Daは、51.6mm以上とするのが望ましく、第2距離Dbは、20.0mm以下とするのが望ましい。したがって、第1距離Daで第2距離Dbを除した値(Db/Da)は、「0.39」以下とするのが望ましい。第1距離Daで第2距離Dbを除した値が大きくなると、端子金具30の位置固定部33が、センサ素子10の先端側に近付くことになり、つまり、端子金具30がガスセンサの先端側にある熱源に近付くことになる。そのため、第1距離Daで第2距離Dbを除した値が大きくなると、センサ素子10とリード線40とを電気的に接続する端子金具30が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生することが懸念される。そこで、前記熱源から端子金具30までの間隔を十分に確保するために、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を小さくし、具体的には、「0.39」以下とする。第1距離Daで第2距離Dbを除した値を0.39以下とすることで、「端子金具30が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避することができる。
【0143】
したがって、
図1に例示する構成(部材)を備えるガスセンサ(または、
図2に例示する、スペーサ90をさらに備えるガスセンサ)は、第1距離Daで第2距離Dbを除した値を、0.24以上、かつ、0.39以下とすることで、以下の効果を実現する。すなわち、上述の構成を備えるガスセンサは、「ガスセンサに加えられる振動に起因する、端子金具30の破損の可能性」を抑制でき、また、「端子金具30が高温にさらされて金属劣化等を起こし、接触不良が発生する」事態を回避できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0144】
1、1(A)…ガスセンサ、10…センサ素子、20…筒状体、221…縮径部、
222…突出部、2211…開始端、30…端子金具、31…素子接触部、
32…リード線保持部、33…位置固定部、40…リード線、50…弾性体、
60…セラミックハウジング、90…スペーサ