(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118017
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】監視システム、監視装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024174
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲留 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 文啓
(72)【発明者】
【氏名】井出 聡史
(72)【発明者】
【氏名】山本 帝輝
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB06
(57)【要約】
【課題】対象者の状態を精度よく判定する。
【解決手段】監視システムは、二次元的に配置された複数箇所の圧力を複数段階のいずれかで測定可能な圧力センサと、圧力センサの測定結果に基づく圧力分布を用いて対象者の状態を判定する状態判定部と、状態判定部により判定された対象者の状態を通知する通知部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元的に配置された複数箇所の圧力を複数段階のいずれかで測定する圧力センサと、
前記圧力センサの測定結果に基づく圧力分布を用いて少なくとも対象者の状態を判定する状態判定部と、
前記状態判定部により判定された前記対象者の状態を通知する通知部と、
を備える監視システム。
【請求項2】
前記状態判定部は、
使用状況に応じて設定される正常とされる圧力分布及び異常とされる圧力分布が機械学習されたモデルを用いて、前記対象者の状態を正常又は異常と判定する
請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記状態判定部は、
前記圧力センサにより測定された複数箇所の圧力値の合計が所定閾値以下である場合、前記圧力センサが配置された空間が不使用であると判定する
請求項1又は請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記圧力センサは、
空気よりも比誘電率が大きく、かつゴムよりも変形しやすく、圧力を受けた際に体積が減少するとともに比誘電率が増加する性質を備えた材料によって構成される誘電体層と、
前記誘電体層の第1面に設けられて圧力を受ける接地電極と、
前記誘電体層の第2面に設けられ、第1方向に平行となるように所定間隔をおいて配置された複数の送信電極と、
前記誘電体層の第2面に設けられ、第1方向と交差する第2方向に平行となるように所定間隔をおいて前記送信電極と絶縁状態で交差するように配置された複数の受信電極と、
前記送信電極を駆動することにより前記送信電極と前記受信電極の間に電界を生成させ、前記受信電極からの信号に基づいて前記誘電体層の静電容量に関する測定値を検出する測定部と、を備える
請求項1又は請求項2に記載の監視システム。
【請求項5】
二次元的に配置された複数箇所の圧力を複数段階のいずれかで測定する圧力センサの測定結果に基づいて状態を判定する状態判定部と、
前記状態判定部により判定された前記状態を通知する通知部と、
を備える監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視システム、監視装置に関し、特に圧力センサの測定結果に基づいて監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プライベート空間内の床に配置され荷重の有無を検出する床センサの検出結果に基づいて、プライベート空間内の監視対象者の状態を監視する監視システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した監視システムでは、床センサが荷重の有無しか検出することができないため、荷重分布を精度よく検出することが困難である。従って、上記した監視システムでは、対象者の状態を精度よく判定することができないといった問題があった。
【0005】
本提案はこのような背景に基づいて発明されたもので、対象者の状態を精度よく判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る監視システムは、二次元的に配置された複数箇所の圧力を複数段階で測定する圧力センサと、前記圧力センサの測定結果に基づく圧力分布を用いて対象者の状態を判定する状態判定部と、前記状態判定部により判定された前記対象者の状態を通知する通知部と、を備える。
これにより、監視システムは、複数段階の何れかで示される各箇所の圧力の測定値に基づいた圧力分布を用いて対象者の状態を判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
このような本発明によれば、対象者の状態を精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の監視システムを説明する図である。
【
図3】圧力センサにおいて第2電極の配線構造を示す平面図である。
【
図6】制御部による監視処理の流れを示したフローチャートである。
【
図7】高分解能化後の圧力分布の一例を示した図である。
【
図10】状態情報に基づいて表示される監視画面を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.監視システムの構成>
図1は、本実施形態の監視システム1を説明する図である。
図1に示すように、監視システム1は、圧力測定装置2、監視装置3及びスマートフォン4を備える。
【0010】
圧力測定装置2は、圧力センサ11、測定部12及び通信部13を備える。
【0011】
圧力センサ11は、例えばトイレ、風呂場等のプライベート空間の床に配置され、プライベート空間を使用する対象者に踏まれることにより、対象者の体重に起因した圧力が加えられる。
詳しくは後述するように、圧力センサ11は、行方向及び列方向の2次元マトリクス状に配置された複数のセンサセル11a(
図2参照)を用いて、2次元的な複数箇所の圧力を複数段階のいずれかで測定可能である。なお、圧力センサ11では、各センサセル11aの位置を例えば四隅のいずれかを基準とした座標で表すことができる。
【0012】
測定部12は、圧力センサ11のセンサセル11aごとの測定値を検出する。そして、測定部12は、圧力センサ11におけるセンサセル11aの座標(配置位置)、及び、検出した測定値に基づいて、2次元マトリクス状における各座標での圧力値をそれぞれ算出する。
【0013】
通信部13は、例えば無線によって監視装置3との通信を行う。通信部13は、算出された圧力値に座標が関連付けられた圧力情報を送信する。また、通信部13は、監視装置3から送信される制御指示を受信する。測定部12は、受信した制御指示に基づいて圧力センサ11を用いた圧力測定を行う。
【0014】
監視装置3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)により構成される制御部21、及び、無線通信が可能な通信部22を備える例えばパーソナルコンピュータである。
【0015】
制御部21は、例えばROMに記憶されたプログラムをRAMに展開して実行することで監視システム1全体を制御する。具体的には、制御部21は、圧力測定装置2から送信される圧力情報、すなわち、圧力センサ11の測定結果に基づいて二次元的な圧力分布を算出する。そして、制御部21は、算出した圧力分布に基づいて、圧力センサ11が配置された空間の状態、及び、対象者の状態等を判定する。
【0016】
通信部22は、例えば無線によって圧力測定装置2及びスマートフォン4との通信を行う。通信部22は、圧力測定装置2から送信される圧力情報を受信する。また、通信部22は、制御部21によって判定された対象者の状態等を含む状態情報をスマートフォン4に送信する。
【0017】
スマートフォン4は、状態情報を受信すると、状態情報に基づいた監視画面を表示部52に表示したり音をスピーカから出力したりする。また、スマートフォン4は、操作部53(
図9参照)に対する操作に応じて監視画面を遷移させる。なお、スマートフォン4の構成及び監視画面について、詳しくは後述する。
【0018】
<2.圧力センサ11の構成>
図2は、圧力センサ11の構造を示す分解斜視図である。
図2に示すように、圧力センサ11は、誘電体層31、接地電極32、送信電極33、受信電極34、基板35を備える静電容量式の圧力センサである。
【0019】
誘電体層31は、例えば、空気よりも比誘電率が大きく、かつ、ゴムよりも変形しやすく、圧力を受けた際に体積が減少するとともに比誘電率が増加する性質を備えた材料(例えば織物)によって構成される。なお、誘電体層31の材料について、詳しくは後述する。
【0020】
接地電極32は、誘電体層31の第1面である上面に設けられる。接地電極32は、可撓性又は弾性を有する導電性のシート状部材、例えば導電布やPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))を塗布した樹脂によって構成される。
【0021】
誘電体層31の第2面である下面には、誘電体層31と略同一の外形である絶縁性の基板35が取り付けられている。基板35の下面には送信電極33が設けられ、上面には受信電極34が設けられている。
【0022】
送信電極33及び受信電極34には測定部12が接続されている。測定部12は、送信電極33を駆動するとともに、受信電極34からの信号によって送信電極33及び受信電極34の間の静電容量に関する測定値をセンサセル11aごとに検出する。
【0023】
なお、圧力センサ11の接地電極32側が、圧力が加えられるセンサ表面側(以後、センサ面とも表記する)となり、基板35側がセンサ裏面側となる。
【0024】
図3は、送信電極33と受信電極34の電極パターンの一例を示す平面図である。
図3において薄い灰色に示すように、送信電極33は、正方形(又は菱形)の第1単位電極33aと、第1単位電極33aの半分の形状である三角形の第2単位電極33bとを含んで構成されている。
送信電極33は、行(第1方向)ごとに、両端に第2単位電極33bが配置されるとともに、第2単位電極33bの間に第1単位電極33aが所定間隔をおいて配置されている。例えば、
図3の例では、第1単位電極33a及び第2単位電極33bが3行×5列で規則的に配置されている。
そして、各行の第1単位電極33a及び第2単位電極33bは、配線33cによって導通され、測定部12に接続されている。なお、第1単位電極33a及び第2単位電極33bの個数は例示にすぎず、また、第1単位電極33a及び第2単位電極33bは他の形状でもよい。
【0025】
図3において濃い灰色で示すように、受信電極34は、正方形(又は菱形)の第1単位電極34aと、第1単位電極34aの半分の形状である三角形の第2単位電極34bとを含んで構成されている。
受信電極34は、列(第2方向)ごとに、両端に第2単位電極34bが配置されるとともに、第2単位電極34bの間に第1単位電極34aが所定間隔をおいて配置されている。例えば、
図3の例では、第1単位電極34a及び第2単位電極34bが4行×4列で規則的に配置されている。
そして、各行の第1単位電極34a及び第2単位電極34bは、配線34cによって導通され、測定部12に接続されている。なお、第1単位電極34a及び第2単位電極34bの個数は例示にすぎず、また、第1単位電極34a及び第2単位電極34bは他の形状でもよい。また、送信電極33と受信電極34の電極パターンは同じ形状であったが、異なる電極パターンであってもよい。
【0026】
このように、送信電極33の電極パターンは、
図3において行方向に並んだ電極が配線33cで接続された構造であり、受信電極34の電極パターンは、
図3において列方向に並んだ電極が配線34cで接続された構造であり、送信電極33の複数本の行と受信電極34の複数本の列が、相互に交差してマトリクスを構成している。
【0027】
送信電極33と受信電極34のマトリクス構造によって構成されるセンサ面において、位置の識別が可能な最小単位であるセンサセル11aは、便宜上示した破線で区画される正方形の領域であり、2次元マトリクス状に配置される。
図3の例では、センサセル11aは6行×8列=48個となる。各センサセル11aでは、送信電極33と受信電極34が空隙Sを空けて対向して配置されている。空隙Sは、所定の間隔及び所定の長さとなるように設定されている。各センサセル11aでは、送信電極33と受信電極34の間の静電容量は、空隙Sの間隔及び長さ、誘電体層31の材質、そして送信電極33及び受信電極34と接地電極32との距離によって定められる。
【0028】
測定部12が送信電極33を矩形波によって駆動すると、送信電極33と受信電極34の間には電気力線が発生し、誘電体層31内には電界が生成される。電気力線は接地電極32で遮断されるため、電界が発生するのは誘電体層31の内部のみである。
【0029】
そして、接地電極32に圧力が加えられると、この圧力により誘電体層31は潰れて厚さが減少する。そのため、接地電極32と送信電極33及び受信電極34との距離が減少し、接地電極32に遮られる電気力線が増加し、誘電体層31内の電界が弱まり、送信電極33と受信電極34の間の静電容量が小さくなる。
【0030】
測定部12は、各センサセル11aについて、受信電極34からの信号に基づいて静電容量の変化に対応する測定値を検出し、検出した測定値に基づいて圧力値を算出する。このとき、測定部12は、圧力値を例えば0から255の256段階のいずれかで算出する。なお、圧力値は複数段階のいずれかで算出されればよく、256段階に限らず他の段階数であってもよい。
【0031】
このように圧力センサ11では、接地電極32が押されると、押された位置に対応するセンサセル11aにおいて、送信電極33と受信電極34との間の静電容量が変化する。そのため、圧力センサ11では、送信電極33と受信電極34とのマトリクス構造によって押された位置を特定することが可能となる。
【0032】
また、圧力センサ11は、送信電極33及び受信電極34を用いた相互容量方式の圧力センサであるため自己容量方式の圧力センサに較べ、センサ面の複数箇所に同時に圧力が加えられた場合でも、ゴーストが発生せずに圧力値を精度よく測定することが可能となる。
【0033】
また、圧力センサ11は、誘電体層31の下面に取り付ける基板35の表裏面に受信電極34及び送信電極33をそれぞれ設けるようにしている。これにより、圧力センサ11は、基板35を1枚だけ設ければよく、製造工程数も少なくなるとともに、1枚の基板35に対する2つの電極の位置合わせも比較的容易に行わせることが可能となる。
【0034】
さらに、圧力センサ11は、誘電体層31の表面に接地電極32を直接設けてセンサ面としているため、センサ面を押圧した場合に誘電体層31が圧力で変形しやすく、圧力及び位置の検出精度を向上させることが可能であるとともに、操作感も良好になる。
【0035】
なお、圧力センサ11は、相互容量方式としたが、自己容量方式であってもよい。
【0036】
図4は、誘電体層31の材料を説明する図である。
図4(a)は、誘電体層31に使用可能な材料の種類と、その変形量及び比誘電率を示す図である。
図4(b)は、圧力センサ11に圧力を加えた場合における織物からなる誘電体層31の変形態様を示す図である。
図4(c)は、比較例のゴムからなる誘電体層31aの変形態様を示す図である。
【0037】
圧力センサ11では、誘電体層31を構成する材料として、以下に説明するように織物を採用した。
図4(a)は、圧力センサ11において、誘電体層31に使用可能な材料の種類(3種類)と、その変形量及び比誘電率と、その評価を示す記号○(良)又は△(可)で示した比較表である。
【0038】
一般的な従来の圧力センサでは、中間層である誘電体層としては空気(エアギャップ)や弾性変形するゴムが使われる場合が多い。しかしながら、織物に比べ空気の場合は比誘電率が低く、ゴムの場合は変形しにくく、いずれも感度が低いため、高精度な圧力検出を行うことが困難である。そこで、誘電体層31の材料には織物が採用された。
【0039】
なお、上記のように織物が変形しやすく、ゴムが変形しにくいのは、
図4(b)に示すように織物(誘電体層31)は圧力を加えられると内部の繊維が横倒しになって空隙が潰れて体積が減少するのに対し、
図4(c)に示すようにゴム(誘電体層31a)は圧力を加えられると横方向へ移動するため体積が移動するだけで減少しないからである。圧力センサ11では、織物で誘電体層31を構成したので、比較例の物質に較べ、比誘電率及び圧力に対する変形量が大きくなり、これによって静電容量の変化が大きくなるため、高感度の静電容量式の圧力センサが実現可能となった。
【0040】
<3.監視装置3の処理>
図5は、制御部21の機能的な構成を説明する図である。
図6は、制御部21による監視処理の流れを示したフローチャートである。なお、以下では、圧力センサ11が配置されている空間がトイレである場合、すなわち、圧力センサ11がトイレ(便座の前)に配置されている場合を例に挙げて説明する。
【0041】
図5に示すように、制御部21は、データ取得部41、圧力分布算出部42、状態判定部43及びデータ送信部44として機能する。
【0042】
データ取得部41は、圧力測定装置2から送信される圧力情報を取得する。
圧力分布算出部42は、データ取得部41により取得された圧力情報に基づいて圧力分布を算出する。
状態判定部43は、圧力分布算出部42により算出された圧力分布に基づいて、機械学習により得られた学習モデルを用いて、圧力センサ11が配置されている空間の状態(トイレの状態)、及び、空間を使用する対象者の状態を判定する。
データ送信部44は、状態判定部43により判定された対象者の状態等を示す状態情報をスマートフォン4に送信し、スマートフォン4を介して監視者に通知する。すなわち、データ送信部44は、対象者の状態等を監視者に通知する通知部として機能するとも言える。
【0043】
図6に示す監視処理は、例えば圧力センサ11が圧力を測定する間隔と同じ間隔で繰り返し実行される。監視処理を開始すると、ステップS1でデータ取得部41は、圧力測定装置2から送信される圧力情報を取得する。状態判定部43は、続くステップS2で圧力情報に示される各座標での圧力値の合計(合計圧力値)を算出し、ステップS3で合計圧力値が所定閾値より大きいかを判定する。
【0044】
ここで、圧力センサ11は、例えば40行×31列=1240個のセンサセル11aが配置されているとする。この場合、圧力センサ11では、1240個の圧力値が測定される。そして、各座標での圧力値は0から255のいずれかであるため、合計圧力値は0から316200のいずれかとなる。
所定閾値は、圧力センサ11に対象者が乗っていないとされる値に設定される。所定閾値は、例えば5000に設定される。
従って、ステップS3で状態判定部43は、合計圧力値が5000より大きいかを判定することによって、トイレの状態が「使用中」又は「不使用」のどちらであるかを判定する。
【0045】
そして、合計圧力値が所定閾値以下である場合(ステップS3でNo)、ステップS4で状態判定部43は、トイレの状態は「不使用」であると判定する。なお、「不使用」とは、圧力センサ11に対象者が乗っていない状態、すなわち、トイレをだれも使用していない状態を指す。
【0046】
ステップS5で状態判定部43は、後述するステップS6で更新された使用中時間をリセットしてステップS10に処理を移す。ここで、使用中時間とは、同一の対象者が継続してトイレを使用している時間を示すものである。
なお、状態判定部43は、「不使用」と判定した時間が所定時間(例えば30秒)継続した場合に使用中時間をリセットするようにしてもよい。これにより、測定エラーやノイズ等により、実際には継続して使用しているにも拘らず「不使用」と判定された場合に使用中時間がリセットされてしまうことを低減することができる。また、例えば便座に座っている対象者が一時的に足を上げて圧力センサ11から離した場合に使用中時間がリセットされてしまうことを低減することができる。
【0047】
一方、合計圧力値が所定閾値より大きい場合(ステップS3でYes)、ステップS6で状態判定部43は、トイレの状態は「使用中」であると判定し、使用中時間を更新する。ここでは、最初にトイレの状態が「使用中」であると判定してから、上記ステップS5で使用中時間がリセットされるまでの時間がカウントされることになる。
【0048】
ステップS7で圧力分布算出部42は、圧力測定装置2から受信した圧力情報に基づいて圧力分布を算出する。圧力分布は、圧力情報に含まれる座標と圧力値との関係から圧力センサ11上の2次元的な圧力の分布を示すものである。
【0049】
まず、圧力分布算出部42は、圧力情報に含まれる座標及び圧力値に基づいて2次元的な圧力分布を算出する。この圧力分布は、40行×31列(座標点数が1240)の圧力分布となる。その後、状態判定部43は、算出した圧力分布を高分解能化し、より座標点数が多い圧力分布を算出するようにしてもよい。
【0050】
図7は、高分解能化後の圧力分布の一例を示した図である。具体的には、圧力分布算出部42は、
図7に示すように、加重平均フィルタ等を用いた平均化処理によって、例えば3行×3列=9点を6行×6=36点に高分解能化する。すなわち、圧力分布算出部42は、1個のセンサセル11aに対応する座標を複数点(例えば4点)に細分化する。なお、
図7では、小数点第二位を四捨五入して示している。
【0051】
このように、圧力分布を高分解能化することにより、擬似的に測定点数(座標点数)を増加させることができ、高精度な圧力分布を得ることが可能であるとともに、圧力センサ11の送信電極33及び受信電極34の数を削減することが可能となる。
【0052】
なお、圧力分布を高分解能化する処理は、上記した平均化処理に限定されるものではなく、他の方法により圧力分布を高分解能化するようにしてもよい。
【0053】
高分解能化された圧力分布が算出されると、ステップS8で状態判定部43は、圧力測定装置2から受信した圧力情報、又は、ステップS7で算出された圧力分布に基づいて、対象者の動きの有無を判定する。
【0054】
ここでは、状態判定部43は、例えば、今回取得した圧力情報に示される各座標での圧力値の合計と、前回取得した圧力情報に示される各座標での圧力値の合計との差分を算出する。そして、状態判定部43は、算出した差分値が所定値以下である場合に対象者の動きが「なし」と判定し、算出した差分値が所定値より大きい場合に対象者の動きが「あり」と判定する。なお、状態判定部43は、対象者の動きの有無を判定しないようしてもよい。
【0055】
また、状態判定部43は、今回算出された圧力分布の形状と、前回算出された圧力分布の形状とを比較し、形状が変化していないと判断される場合には対象者の動きが「なし」と判定し、形状が変化していると判断される場合には対象者の動きが「あり」と判定してもよい。
【0056】
なお、対象者の動きの有無を判定する処理は、上記した方法に限定されるものではなく、他の方法により対象者の動きの有無を判定するようにしてもよい。
また、対象者の動きの有無を判定する処理は、今回及び前回の圧力情報又は圧力分布に基づいて判定するのではなく、複数(3以上)の圧力情報又は圧力分布に基づいて対象者の動きの有無を判定するようにしてもよい。
【0057】
ステップS9で状態判定部43は、算出された圧力分布に基づいて、対象者の状態を判定する。ここでは、状態判定部43は、算出された圧力分布を2値化した後、2値化した圧力分布を学習モデルに入力することで、対象者の状態を判定する。対象者の状態としては、正常であること示す「正常」又は異常であることを示す「異常」のどちらかに判定される。また、対象者の状態が「異常」である場合には、異常となっている状態(種類)をさらに詳細に判定するようにしてもよい。
【0058】
図8は、圧力分布の一例を示した図である。なお、
図8では、圧力値が最大(255)の領域から圧力値が最小(0)である領域にかけて色が順に薄くなるように示している。
【0059】
圧力センサ11がトイレで使用される際に対象者の状態が「正常」であれば、対象者は便座に座る、又は、便座の前に立つため、対象者の足裏が圧力センサ11に接触することになる。そのため、
図8上段に示すように、対象者の状態が「正常」のときの圧力分布は足裏の形状(足形)となる。
【0060】
一方で、対象者の状態が「異常」な例として対象者がトイレで倒れて膝をつくと、対象者の膝が圧力センサ11に接触することになる。この場合、
図8中段に示すように、圧力分布は膝の形状である略円形状となる。
また、対象者の状態が「異常」な例として対象者がトイレで倒れ込むと、対象者の胴体又は足が圧力センサ11に全体的に接触することになる。この場合、
図8下段に示すように、圧力分布は広い範囲で圧力が検出された形状となる。
【0061】
このように、対象者の状態が「正常」である状態の圧力分布、及び、対象者の状態が「異常」である状態の圧力分布が大まかにわかっている。そこで、監視システム1では、使用状況(トイレ)に応じた対象者の状態が「正常」なときの圧力分布、及び、使用状況(トイレ)に応じた対象者の状態が「異常」なときの圧力分布を機械学習により学習させた学習モデルを予め生成しておく。
【0062】
機械学習では、
図8上段に示したような対象者の状態が正常とされる圧力分布が「正常」として複数学習されるとともに、
図8中段及び
図8下段で示したような対象者の状態が異常とされる圧力分布が「異常」として複数学習されることで学習モデルが生成される。なお、機械学習のアルゴリズムは、既知となっている種々のアルゴリズムを用いることができる。また、機械学習は、監視装置3によって行われるようにしてもよく、また、他の装置によって行われるようにしてもよい。
さらに、対象者の状態が「異常」であるときの圧力分布は、例えば膝をついた状態などの1種類のみであってもよく、また、膝をついた状態、倒れた状態、手をついた状態など3種類以上であってもよい。そして、対象者の状態が「異常」である状態をまとめて「異常」として学習するようにしてもよく、また、例えば「膝をついた状態」、「倒れた状態」、「手をついた状態」など、異常の種類ごとに学習するようにしてもよい。
また、対象者の状態が異常であるときの圧力分布を学習しないようにしてもよい。この場合、「正常」と判定されなかった場合に「異常」と判定されるようにすればよい。
【0063】
そして、ステップS9で状態判定部43は、ステップS7で算出された圧力分布を2値化し、2値化した圧力分布を学習モデルに入力することで対象者の状態を例えば「正常」又は「異常」のどちらかと判定する。また、状態判定部43は、対象者の状態が「異常」であると判定した場合、異常の種類を学習モデルを用いて判定するとよい。
【0064】
ステップS10でデータ送信部44は、上記の各ステップで判定又は算出されたトイレの状態及び対象者の状態、使用中時間、対象者の動きの有無を状態情報としてスマートフォン4に送信する。
これにより、スマートフォン4では、送信された状態情報に基づいた画面を表示部52に表示し監視者に通知することが可能となる。
【0065】
<4.スマートフォン4の構成>
図9は、スマートフォン4の構成を説明する図である。
図9に示すように、スマートフォン4は、制御部51、表示部52、操作部53及び通信部54を備える。
【0066】
制御部51は、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータであり、CPUがROMに記憶されたプログラムをRAMに展開して実行することにより、スマートフォン4全体を制御する。
表示部52は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等でなり、制御部51の制御に基づいて画面を表示する。
操作部53は、表示部52の前面に設けられたタッチパネル、押圧操作されるボタン等でなり、ユーザ操作に応じた信号を制御部51に出力する。
通信部54は、例えば無線によって監視装置3との通信を行う。通信部54は、監視装置3から送信される状態情報を受信する。
【0067】
図10は、状態情報に基づいて表示される監視画面を説明する図である。なお、
図10では、4個のトイレ(図中、トイレNo.1~トイレNo.4)を監視している場合、すなわち、4個のトイレについての状態情報が取得されている場合を例に挙げて説明する。
【0068】
制御部51は、状態情報を受信すると、まず、
図10(a)に示すように監視メイン画面61を表示部52に表示する。監視メイン画面61には、4個のトイレについての状態がそれぞれ簡易的に確認可能な簡易確認領域71が設けられている。
【0069】
簡易確認領域71は、監視メイン画面61において例えば上下に並ぶように配置されている。簡易確認領域71には、トイレ及び対象者の状態を直感的に確認可能な状態アイコン81、使用中時間を表示する時間表示領域82、対象者の状態を表示する対象者状態表示領域83、対象者の動きの有無を表示する動き表示領域84がそれぞれ設けられている。
【0070】
状態アイコン81は、例えば、「空き」と記されたアイコン、「使用中」と記されたアイコン、「警告」と記されたアイコン等が設けられる。
制御部51は、状態情報に含まれるトイレ及び対象者の状態に基づいて状態アイコン81を表示する。例えば、制御部51は、状態情報に含まれるトイレの状態が「不使用」であるときに「空き」と記された状態アイコン81を表示する。また、制御部51は、状態情報に含まれる対象者の状態が「正常」であるときに「使用中」と記された状態アイコン81を表示する。また、制御部51は、状態情報に含まれる対象者の状態が「異常」であるときに「警告」と記された状態アイコン81を表示する。
状態アイコン81は、トイレの状態及び対象者の状態に応じて異なる色で表されるようにしてもよい。例えば「警告」と記された状態アイコン81は、監視者に注意を促すために赤色で表され、「使用中」と記された状態アイコン81は、監視者に注意を促さないように青色で表示される。
なお、スマートフォン4では、対象者の状態が「異常」である場合、音により異常であることを監視画面と合わせて通知するようにしてもよい。
【0071】
制御部51は、状態情報に使用中時間が含まれている場合、使用中時間を時間表示領域82に表示する。
図10(a)の例では、トイレNo.2の時間表示領域82に「5分」と表示されている。
【0072】
また、制御部51は、状態情報に含まれる対象者の状態に基づいて対象者状態表示領域83に対象者の状態を表示する。具体的には、例えば、監視装置3において対象者の状態が「異常」であると判定されたときに異常の種類まで判定されていた場合には、異常の種類を対象者状態表示領域83に表示する。
図10(a)の例では、トイレNo.3の対象者状態表示領域83に「倒れている」と表示されている。
また、制御部51は、状態情報に含まれる対象者の状態が「正常」である場合、監視装置3から圧力分布を取得し、圧力分布の形状である足の向きに基づいて「座っている」又は「立っている」のどちらかを対象者状態表示領域83に表示する。
図10(a)の例では、トイレNo.2の対象者状態表示領域83に「座っている」と表示されている。なお、「座っている」又は「立っている」のどちらかの判定は監視装置3が行うようにしてもよい。
【0073】
制御部51は、状態情報に動きの有無の情報が含まれている場合、動きの有無を動き表示領域84に表示する。
図10(a)の例では、トイレNo.2の動き表示領域84に「動きあり」と表示され、トイレNo.3の動き表示領域84に「動きなし」と表示される。
【0074】
このように、簡易確認領域71では、状態アイコン81、時間表示領域82、対象者状態表示領域83、動き表示領域84によってトイレの状態及び対象者の状態等を監視者に簡易的に通知する。
【0075】
簡易確認領域71は、操作部53に対する操作によって選択可能となっている。簡易確認領域71が操作部53を介して選択されると、
図10(b)及び
図10(c)に示す個別監視画面62が表示部52に表示される。例えば、トイレNo.2の簡易確認領域71が操作されると、制御部51は、
図10(b)に示すように、トイレNo.2の個別監視画面62を表示する。また、トイレNo.3の簡易確認領域71が操作されると、制御部51は、
図10(c)に示すように、トイレNo.3の個別監視画面62を表示する。
【0076】
個別監視画面62には、監視メイン画面61において選択された簡易確認領域71がそのまま表示されるとともに、対象者の状態を表す対象者状態アイコン72が表示される。
【0077】
対象者状態アイコン72は、対象者の状態を示すアイコンである。
図10(b)の例では、対象者の状態が「正常」である場合に対応するトイレを使用している対象者状態アイコン72が表示される。また、
図10(c)の例では、対象者の状態が「異常」又は「倒れている」である場合に対応するトイレで倒れている対象者状態アイコン72が表示される。
【0078】
また、対象者状態アイコン72は、操作部53に対する操作によって選択可能となっている。対象者状態アイコン72が操作部53を介して選択されると、
図10(d)及び
図10(e)に示す詳細監視画面63が表示部52に表示される。
詳細監視画面63には、簡易確認領域71と同様の情報が上部に表示されるとともに、圧力センサ11で測定された圧力値に基づいて算出された圧力分布73aが圧力分布表示領域73に表示される。
なお、制御部51は、個別監視画面62を表示部52に表示する際に、監視装置3から圧力分布を取得するようにしてもよいし、状態情報とともに圧力分布を予め取得するようにしてもよい。
【0079】
このように、スマートフォン4では、圧力測定装置2で測定された圧力値に基づいた監視画面が表示部52に表示されることで、トイレの状態及び対象者の状態を監視者に通知することが可能となる。
また、スマートフォン4では、個別監視画面62を表示することで対象者の状態をわかりやすく通知することができる。
また、スマートフォン4では、詳細監視画面63を表示することで、圧力分布73aによって対象者の実際の状態を監視者に確認させることができる。
【0080】
<5.変形例>
なお、実施形態としては上記により説明した具体例に限定されるものではなく、多様な変形例としての構成を採り得るものである。
【0081】
例えば上記した実施形態では、圧力センサ11がトイレ等のプライベート空間に配置されるようにした。しかしながら、圧力センサ11は、プライベート空間以外の様々な空間に配置するようしてもよい。
【0082】
また、上記した圧力測定装置2、監視装置3及びスマートフォン4がそれぞれ行っていた処理の全て又は一部を別の装置が行うようにしてもよい。
例えば、監視装置3で行われる監視処理をスマートフォン4が行うようにしてもよい。この場合、スマートフォン4が監視装置としても機能することになる。
また、監視装置3で行われる圧力分布の算出を圧力測定装置2で行うようにしてもよい。
また、スマートフォン4で行われる監視画面の表示、すなわち、トイレ及び対象者の状態の通知を監視装置3が行うようにしてもよい。
【0083】
また、上記した実施形態では、監視処理において空間の状態、対象者の状態、対象者の動きの有無、使用中時間を判定又は算出するようにした。しかしながら、監視処理では、少なくとも対象者の状態を判定するようにすればよく、空間の状態、対象者の動きの有無、使用中時間のいずれかを判定又は算出しなくてもよい。
【0084】
また、上記した実施形態では、状態判定部43は、圧力分布を2値化した後に学習モデルに入力することで対象者の状態を判定するようにした。しかしながら、状態判定部43は、圧力分布を2値化することなく学習モデルに入力することで、対象者の状態を判定するようにしてもよい。
【0085】
<6.まとめ>
以上の実施形態によれば次のような効果が得られる。
【0086】
監視システム1は、二次元的に配置された複数箇所の圧力を複数段階のいずれかで測定する圧力センサ11と、圧力センサ11の測定結果に基づく圧力分布を用いて少なくとも対象者の状態を判定する状態判定部43と、状態判定部43により判定された対象者の状態を通知する通知部(データ送信部44、制御部51)と、を備える。
これにより、監視システム1は、複数段階のいずれかで示される各箇所の圧力値に基づいた圧力分布を用いて対象者の状態を判定することが可能となる。従って、監視システム1は、対象者の状態を精度よく判定することができる。
また、圧力を複数段階で測定しているため、圧力分布を算出する際に高分解能化することが可能となる。そのため、監視システム1は、高分解能化された圧力分布に基づいて対象者の状態を精度よく判定することができる。
【0087】
また、状態判定部43は、使用状況に応じて設定される正常とされる圧力分布及び異常とされる圧力分布が機械学習されたモデルを用いて、対象者の状態を正常又は異常と判定する。
これにより、監視システム1は、対象者の状態が正常又は異常のどちらであるかを容易かつ精度よく判定することが可能となる。
また、監視システム1では、機械学習により不特定多数の対象者の状態を学習することで、不特定多数の対象者を対象とした状態の判定を行うことが可能となる。
【0088】
また、状態判定部43は、圧力センサ11により測定された複数箇所の圧力値の合計が所定閾値以下である場合、圧力センサが配置された空間が不使用であると判定する。
監視システム1では、圧力センサ11により測定された圧力値に基づいて、対象者の状態に加えて、圧力センサ11が配置された空間の状態も判定することが可能となる。
これにより、監視システム1では、圧力センサ11が配置された空間の状況をより詳細に監視させることができる。
【0089】
圧力センサ11は、空気よりも比誘電率が大きく、かつゴムよりも変形しやすく、圧力を受けた際に体積が減少するとともに比誘電率が増加する性質を備えた材料によって構成される誘電体層31と、誘電体層31の第1面に設けられて圧力を受ける接地電極32と、前記誘電体層の第2面に設けられ、第1方向に平行となるように所定間隔をおいて配置された複数の送信電極33と、誘電体層31の第2面に設けられ、第1方向と交差する第2方向に平行となるように所定間隔をおいて送信電極33と絶縁状態で交差するように配置された複数の受信電極34と、送信電極33を駆動することにより送信電極33と受信電極34の間に電界を生成させ、受信電極34からの信号に基づいて誘電体層31の静電容量に関する測定値を検出するする測定部12と、を備える。
誘電体層31は、空気よりも比誘電率が大きく、またゴムよりも変形しやすく、圧力を受けた際に内部の空隙が潰れて体積が減少するとともに比誘電率が増加するため、空気やゴムを用いる場合に較べ、センサ感度を高めることができる。
【0090】
監視装置3は、二次元的に配置された複数箇所の圧力を複数段階のいずれかで測定する圧力センサ11の測定結果に基づいて状態を判定する状態判定部43と、状態判定部43により判定された状態を通知する通知部(データ送信部44)と、を備える。
このような監視装置3であっても、監視システム1と同様の効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 監視システム
2 圧力測定装置
3 監視装置
4 スマートフォン
11 圧力センサ
12 測定部
41 データ取得部
42 圧力分布算出部
43 状態判定部
44 データ送信部