(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118018
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】洗車装置
(51)【国際特許分類】
B60S 3/06 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B60S3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024175
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正明
(72)【発明者】
【氏名】白澤 健
(72)【発明者】
【氏名】羽原 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】星 賢児
(72)【発明者】
【氏名】水野 佑紀
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026AA03
3D026AA12
3D026AA25
3D026AA34
3D026AA40
3D026AA50
3D026AA58
3D026AA71
3D026AA81
(57)【要約】
【課題】少なくとも開始位置までは利用者が車両を自走させる必要がある洗車装置であっても、多くの利用者が心理的な負担を感じることなく安心して利用できるにする。
【解決手段】洗車装置は、洗車対象となる車両を検出する検出部と、検出部が車両を検出した場合に、車両が進入すべき進路に関し許容される車幅間隔を視認できるように誘導指標を呈示する呈示部と、車幅間隔を含む情報を車両の車両制御装置へ送信する送信部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗車対象となる車両を検出する検出部と、
前記検出部が前記車両を検出した場合に、前記車両が進入すべき進路に関し許容される車幅間隔を視認できるように誘導指標を呈示する呈示部と、
前記車幅間隔を含む情報を前記車両の車両制御装置へ送信する送信部と
を備える洗車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両を自動で洗車する洗車装置が知られている。洗車装置は給油所等に設置される場合が多く、利用者は、例えば給油後に、洗車装置が指定する開始位置まで自走し、洗浄処理を実行する洗車装置の間を抜けて退出する。例えば特許文献1には、乗車する利用者が視認できるように前進や停止を指示する指標を差し出し、利用者の自走を補助する
洗車装置が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
少なくとも開始位置までは利用者が車両を自走させる必要がある洗車装置の場合、利用者は、車両を正しい位置に整列させることができないのではないか、あるいは、車両を洗車機に接触させてしまうのではないかといった不安に駆られることがある。このような心理的負担から、洗車装置による洗車を諦めてしまう潜在的利用者も多く存在することが想像される。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、多くの利用者が安心して利用できる洗車装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の具体的態様における洗車装置は、洗車対象となる車両を検出する検出部と、検出部が車両を検出した場合に、車両が進入すべき進路に関し許容される車幅間隔を視認できるように誘導指標を呈示する呈示部と、車幅間隔を含む情報を車両の車両制御装置へ送信する送信部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、多くの利用者が安心して利用できる洗車装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る洗車装置の利用状況を示す図である。
【
図4】車両の表示パネルに映し出される表示画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。なお、各図において同一の符号を付したものは同一又は同様の構成を有し、同一又は同様の構成が複数存在する場合には、一部に符号を付して他を省く場合がある。
【0010】
図1は、本実施形態に係る洗車装置100の利用状況を示す図である。洗車装置100は、車両200を自動的に洗車する装置である。洗車装置100は、ゲートフレーム141、ノズル142、ブラシ143、走行レール144を備える。ノズル142は、図示するゲートフレーム141の上部の他にも所々に設置されており、通過する車両200やブラシ143へ向けて放水する。ブラシ143は、ゲートフレーム141の内側に沿って配置されており、洗車時には車両200の表面に接触して回転したり揺動したりする。ゲートフレーム141は、所定位置に停止された車両200に対して前後するように、走行レール144上を移動する。
【0011】
洗車装置100は、更にコントロールユニット101、カメラ120、プロジェクタ130、操作パネル161を備える。コントロールユニット101は、例えば防水が施されたボックスに収容されてゲートフレーム141の背面に設置されている。コントロールユニット101は、各要素と電気的に接続された制御基板等を含み、自動洗車の制御機能を担う。カメラ120は、例えばゲートフレーム141の側部に設置されている。カメラ120は、洗車対象となる車両200を検出するための検出部を構成し、撮像した画像信号をコントロールユニット101へ送信する。
【0012】
プロジェクタ130は、例えばゲートフレーム141の上部中心付近に設置されている。プロジェクタ130は、コントロールユニット101からの指示信号に従って走行レール144間の地面に誘導指標310を照射する。操作パネル161は、例えばゲートフレーム141の側部に設置され、利用者や管理者の入力操作を受け付ける操作ボタンや、入力操作に応じた情報を表示する表示ユニットを含む。
【0013】
車両200に乗車する利用者は、車両200を洗車開始位置まで自走させる。このとき、利用者が運転に不慣れであると、洗車装置100に対して圧迫感を覚える場合がある。すなわち、一般的にはゲートフレーム141の幅は狭くその内側にはブラシ143も設けられていることから、車両を正しい位置に整列させることができないのではないか、あるいは、車両を洗車機に接触させてしまうのではないかといった不安に駆られる。そこで、本実施形態においては、カメラ120が車両200を捉えると、プロジェクタ130が走行レール144間の地面に誘導指標310を照射する。
【0014】
誘導指標310は、方向指標311と車幅指標312を含む。方向指標311は、車両200が進むべき進路方向を表し、プロジェクタ130は、例えばアニメーション表示を採用して、方向指標311を進行方向へ流れるように照射してもよい。また、車両200が初期位置まで到達したことを検出したら、方向指標311の照射を終了してもよい。方向指標311の形状は、図示するような三角形に限らず、利用者が進行方向を認識できる態様であればよい。
【0015】
車幅指標312は、車両200が自走するにあたり車両200の両側面を収めるべき範囲を示し、換言すれば、車両200が進入すべき進路に関し許容される車幅間隔を示す。プロジェクタ130は、車幅指標312として例えば一定幅の直線を照射する。視覚的効果を考慮して、例えば内側から許容限界の外側へ向かって濃くなるようにグラデーションを採用してもよい。
【0016】
また、カメラ120によって車両200を監視し、好ましくない移動が検出されたら、プロジェクタ130は、例えば点滅照射や赤色への色変更など、警告を示す照射に切り替えてもよい。例えば、車両200が車幅指標312のうち右のラインを踏み越えた場合には、右のラインを赤色に変更する。このとき、例えば「左へ寄せてください」などのテキストを、利用者が運転席から視認できるように照射してもよい。
【0017】
このように、プロジェクタ130による照射手法を採用すれば、まず、利用者は車幅に関して安心感を得つつ自走させることができる。また、路面に塗料で指標を設けた場合と比較して、経時変化によって摩滅することもなく、さらに、車両200の状態や周辺環境の変化に応じて照射内容を変化させることもできる。
【0018】
次に、洗車装置100のハードウェア構成について説明する。
図2は、洗車装置100のうち本実施形態に関与する主なハードウェアの構成図である。洗車装置100は、主に、制御部110、カメラ120、プロジェクタ130、洗浄装置140、記憶部150、入出力インタフェース160、通信ユニット170を備える。制御部110は、洗車装置100の制御とプログラムの実行処理を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)である。プロセッサは、ASICやGPU等の演算処理チップと連携する構成であってもよい。制御部110は、記憶部150に記憶された洗車制御プログラムを読み出して、車両の洗車に関する様々な処理を実行する。
【0019】
カメラ120は、上述のようにゲートフレーム141に設置され、制御部110からの指示信号に応じて撮像した画像信号を制御部110へ送り返す。制御部110は、画像信号から形成される画像データを利用して、洗車対象となる車両200の存在や移動を検出する。すなわち、カメラ120は、制御部110と協働して、車両200を検出する検出部として機能する。
【0020】
プロジェクタ130は、上述のようにゲートフレーム141に設置され、制御部110からの指示信号に従って誘導指標310を照射する。指標パターンは記憶部150に記憶されており、制御部110は、記憶部150から読み出した指標パターンやそれぞれの照射位置情報等を含む指示信号をプロジェクタ130へ送信する。プロジェクタ130は、制御部110と協働して、検出部が車両200を検出した場合に誘導指標を呈示する呈示部として機能する。
【0021】
洗浄装置140は、ゲートフレーム141、ノズル142、ブラシ143、走行レール144の他、ポンプ、ドレイン、ドライヤ、各種センサ等の洗車を実現する種々のユニットを含む。制御部110は、例えば走行レール144に沿ってゲートフレーム141を移動させるモータへ駆動信号を送信したり、センサの出力信号を受信したりする。
【0022】
記憶部150は、不揮発性の記憶媒体であり、例えばフラッシュメモリによって構成されている。記憶部150は、洗車装置100の制御や処理を実行するプログラムの他にも、照射パターンや種々のパラメータ等も記憶する。入出力インタフェース160は、操作パネル161を含み、利用者や管理者の入力操作を受け付けたり、洗車装置100の状態を表示したりする。通信ユニット170は、所定の車両制御装置と通信可能な通信モジュールを含み、車両200との間で情報の授受を行う。後述するように、制御部110が車幅間隔を含む洗車装置情報を車両200の車両制御装置へ送信する場合には、通信ユニット170は、制御部110と協働して送信部として機能する。なお、上述のコントロールユニット101は、制御部110、記憶部150、入出力インタフェース160、通信ユニット270を収容または支持している。
【0023】
次に、車両200のハードウェア構成について説明する。
図3は、車両200のうち本実施形態に関与する主なハードウェアの構成図である。車両200は、主に、制御部210、カメラ220、表示パネル230、駆動装置240、記憶部250、入出力インタフェース260、通信ユニット270を備える。制御部210は、車両200の制御とプログラムの実行処理を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)である。プロセッサは、ASICやGPU等の演算処理チップと連携する構成であってもよい。
【0024】
カメラ220は、例えば車両200の前方や周囲に複数設置されており、制御部210は、カメラ220からの画像信号を受信して、前方の画像データを生成したり、仮想的に車両200を俯瞰する俯瞰画像を合成したりする。
【0025】
表示パネル230は、例えば液晶パネルであり、運転席から視認できる位置に配置されている。表示パネル230は、制御部210が生成した映像信号を視認可能な映像に変換して表示する。駆動装置240は、車両200を自走させるための装置であり、ガソリン車両であれば、駆動輪を駆動するガソリンエンジン等を含む。記憶部250は、不揮発性の記憶媒体であり、例えばソリッドステートドライブによって構成されている。記憶部250は、車両200の制御や処理を実行するプログラムの他にも、表示パネル230に表示するグラフィックスや種々のパラメータ等も記憶する。
【0026】
入出力インタフェース260は、利用者の入力操作を受け付けたり、車両200の状態を表示したりする入出力装置を含む。通信ユニット270は、洗車装置100の通信ユニット170と通信可能な通信モジュールを含み、洗車装置100との間で情報の授受を行う。通信ユニット270は、制御部210と共に車両制御装置を構成する。なお、洗車装置100の通信ユニット170および車両200の通信ユニット270は、直接的に相互に通信を確立する近距離無線モジュールに限らず、インターネット網を介して接続される例えば無線LANモジュールなどであってもよい。
【0027】
本実施形態においては、洗車装置100は、車幅指標312が示す車幅間隔を含む洗車装置情報を車両200へ送信する。車両200は、洗車装置情報を受信して、車幅間隔を含む情報を視覚化して表示パネル230へ表示する。
図4は、車両200の表示パネル230に映し出される表示画面の例である。
【0028】
表示パネル230は、カメラウィンドウ231とCGウィンドウ232を表示する。カメラウィンドウ231は、車両200の前方に設置されたカメラ220が捉えた映像を表示する。図示するように、カメラウィンドウ231は、前方奥の洗車装置100と、その手前の地面に照射された方向指標311および車幅指標312を含む映像を映し出している。また、CGウィンドウ232は、制御部210が合成した俯瞰画像に、洗車装置情報から演算したCGを重畳した映像を映し出している。具体的には、車両200の周囲に、洗車装置100のCG100’、方向指標311のCG311’、車幅指標312のCG312’を重畳している。これらのCGは、洗車装置情報から演算して、車両200に対する相対位置が正しくなるように重畳されている。
【0029】
このようなカメラウィンドウ231およびCGウィンドウ232の表示により、利用者は、実際に地面に照射された誘導指標310に限らず、表示パネル230の映像によっても車両200の状態を確認することができるので、より落ち着いて車両200を洗車開始位置まで自走させることができる。
【0030】
次に、洗車装置100の処理手順を説明する。
図5は、洗車装置100の処理手順を示すフロー図である。なお、以下のフローにおいては、これまで説明したすべての処理を説明するものではなく、洗車装置100が実行する主要な処理に限って説明するものである。
【0031】
制御部110は、ステップS101で、洗車対象となる車両200を検知したか否かを判断する。具体的には、カメラ120から画像信号を取得し、洗車装置100へ接近する車両200を検出する。制御部110は定期的にステップS101を実行し、車両200を検出したらステップS102へ進む。
【0032】
制御部110は、ステップS102へ進むと、入出力インタフェース160を介して洗車装置情報を車両200へ送信する。さらにステップS103で、プロジェクタ130による誘導指標310の照射を開始させる。洗車装置情報を車両200へ送信するタイミングとプロジェクタ130による誘導指標310の照射を開始するタイミングは、同時、あるいは逆順であっても構わない。
【0033】
制御部110は、カメラ120から継続的に画像信号を取得し、ステップS104で、車両200が洗車開始位置まで到達したか否かを判断する。洗車開始位置まで到達していなければ到達するまで待機し、到達したらステップS105へ進む。
【0034】
制御部110は、ステップS105で、プロジェクタ130による誘導指標310の照射を終了させる。続いてステップS106で、洗浄装置140を制御して車両200の洗車を実行する。洗車処理が終了したら、ステップS107で、例えば終了音を発して洗車の終了を告知する。制御部110は、ステップS108で、利用者が車両200を退避させたか否かを確認する。退避が完了するまではステップS107、S108を繰り返し、退避が完了したら、一連の処理を終了する。
【0035】
以上、本実施形態を説明したが、走行レール144間の地面に塗料等によって車幅指標312に相当するラインが描かれている場合であっても、プロジェクタ130により当該ラインに車幅指標312を重ねて照射してもよい。車幅指標312を重ねて照射することにより、たとえ当該ラインの視認性が悪い場合でも、より目立たせることができ、利用者はより確実に車両200の両側面を収めるべき範囲を認識することができる。また、車両200のカメラ220も、より確実に当該ラインを捉えることができる。このとき、照射する車幅指標312の指標色や指標幅は、当該ラインのライン色やライン幅とは異ならせてもよい。利用者は、表示パネル230を介しても、より確実に車両200の両側面を収めるべき範囲を認識することができる。また、車両200の進入時に誘導指標310を照射する場合に加えて、洗車後に車両200の後退を誘導するように誘導指標310を照射してもよい。後退時においては、洗車装置100との接触に限らず、他の車両等との接触を避けるように誘導指標310を照射してもよい。
【0036】
以上本実施形態を説明したが、プロジェクタ130によって照射する照射パターンは、上述の例の他にも形状、色、点滅、変化等において様々な態様を採用し得る。逆に、照射パターンを変形させないのであれば、プロジェクタ130の代わりに、走行レール144間の所定位置にLED等の発光体を埋め込んでおき、このような発光体を誘導指標としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
100…洗車装置、101…コントロールユニット、110…制御部、120…カメラ、130…プロジェクタ、140…洗浄装置、141…ゲートフレーム、142…ノズル、143…ブラシ、144…走行レール、150…記憶部、160…入出力インタフェース、161…操作パネル、170…通信ユニット、200…車両、210…制御部、220…カメラ、230…表示パネル、231…カメラウィンドウ、232…CGウィンドウ、240…駆動装置、250…記憶部、260…入出力インタフェース、270…通信ユニット、310…誘導指標、311…方向指標、312…車幅指標