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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118026
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】環状化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/00 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
C07D307/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024188
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 達朗
(57)【要約】
【課題】本発明は、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンのディールス・アルダー反応において、環状化合物を収率良く得る方法を提供することを目的とする。
【解決手段】重合抑制剤の存在下で、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンとをディールス・アルダー反応させる、環状化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合抑制剤の存在下で、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンとをディールス・アルダー反応させる、環状化合物の製造方法。
【請求項2】
前記重合抑制剤が、式(1):
【化1】
(式(1)中、R1、及びR2は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、R3は、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基、又は、アルキル基は、置換されていてもよい。)で表される化合物を含む、請求項1に記載の環状化合物の製造方法。
【請求項3】
前記重合抑制剤が、式(2):
【化2】
(式(2)中、R11、及びR15は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、R12、R13、及びR14、は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基、又は、アルキル基は、置換されていてもよい。)で表される化合物を含む、請求項1に記載の環状化合物の製造方法。
【請求項4】
前記重合抑制剤が、式(3):
【化3】
(式(3)中、Rは、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基、又は、アルキル基は、置換されていてもよい。)で表される化合物を含む、請求項1に記載の環状化合物の製造方法。
【請求項5】
前記重合抑制剤が、前記式(1)で表される化合物及び前記式(2)で表される化合物を含む、請求項1に記載の環状化合物の製造方法。
【請求項6】
前記重合抑制剤の総添加量が、前記ビニル基を有する脂環式化合物及び前記共役ジエンの総添加量に対して、100質量ppm~10,000質量ppmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の環状化合物の製造方法。
【請求項7】
前記共役ジエンが、環状共役ジエン化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の環状化合物の製造方法。
【請求項8】
前記環状共役ジエン化合物が、シクロペンタジエンである、請求項7に記載の環状化合物の製造方法。
【請求項9】
前記ビニル基を有する脂環式化合物が、式(4):
【化4】
(式(4)中、Aは置換基を有していてもよい環状部位である。)で表される化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の環状化合物の製造方法。
【請求項10】
反応温度が25℃以上250℃以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の環状化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル化合物と共役ジエンのディールス・アルダー反応は六員環炭素骨格を構築できる有用な反応である。例えば、ビニル化合物とシクロペンタジエンをディールス・アルダー反応させると、六員環炭素骨格をもつノルボルネン化合物が生じる。
【0003】
一部の高活性な基質を用いる場合を除いて、ディールス・アルダー反応は200℃程度の高温下で行われることが一般的である。このような環境では、主反応であるビニル化合物への共役ジエンのディールス・アルダー反応に加えて、共役ジエン同士のディールス・アルダー反応、ビニル化合物や共役ジエンの熱劣化や重合反応といった様々な副反応が併発し、目的物の収率が低下する。特に、重合物は難溶性であることが多く、目的の環状化合物の単離精製を妨げる要因となる。
【0004】
副反応を抑制するために、ビニル化合物と共役ジエンを重合抑制剤の存在下で反応させることもある。例えば、特許文献1には、シクロペンタジエンと1,3-ブタジエンのディールス・アルダー反応において、重合抑制剤としてtert-ブチルカテコールの存在下で反応を行うことが記載されている。
【0005】
スチレンの熱重合を抑制する重合抑制剤としてキノンメチドが知られている(例えば、特許文献2、及び3)。また、キノンメチドは、特許文献4に示されるように、シクロペンタジエンの熱重合抑制にも効果的であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-071564号公報
【特許文献2】特表2022-514026号公報
【特許文献3】特開2020-132678号公報
【特許文献4】特開2014-181239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上で述べたように、キノンメチド系重合抑制剤はシクロペンタジエン類の重合抑制に効果的であることが示されている。しかし、特許文献4ではシクロペンタジエン単独での重合抑制効果を検証した結果が示されており、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンの共存下での添加効果については何ら言及されていない。したがって、キノンメチド系重合抑制剤の存在下で、ディールス・アルダー反応を行った場合、共役ジエンの熱重合だけでなく、目的とするディールス・アルダー反応も抑制されるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンのディールス・アルダー反応において、環状化合物を収率良く得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の実施形態を包含する。
<1>
重合抑制剤の存在下で、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンとをディールス・アルダー反応させる、環状化合物の製造方法。
<2>
前記重合抑制剤が、式(1):
【化1】
(式(1)中、R1、及びR2は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、R3は、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基、又は、アルキル基は、置換されていてもよい。)で表される化合物を含む、<1>に記載の環状化合物の製造方法。
<3>
前記重合抑制剤が、式(2):
【化2】
(式(2)中、R11、及びR15は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、R12、R13、及びR14、は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基、又は、アルキル基は、置換されていてもよい。)で表される化合物を含む、<1>又は<2>に記載の環状化合物の製造方法。
<4>
前記重合抑制剤が、式(3):
【化3】
(式(3)中、Rは、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基、又は、アルキル基は、置換されていてもよい。)で表される化合物を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の環状化合物の製造方法。
<5>
前記重合抑制剤が、前記式(1)で表される化合物及び前記式(2)で表される化合物を含む、<1>~<4>のいずれかに記載の環状化合物の製造方法。
<6>
前記重合抑制剤の総添加量が、前記ビニル基を有する脂環式化合物及び前記共役ジエンの総添加量に対して、100質量ppm~10,000質量ppmである、<1>~<5>のいずれかに記載の環状化合物の製造方法。
<7>
前記共役ジエンが、環状共役ジエン化合物である、<1>~<5>のいずれかに記載の環状化合物の製造方法。
<8>
前記環状共役ジエン化合物が、シクロペンタジエンである、<7>に記載の環状化合物の製造方法。
<9>
前記ビニル基を有する脂環式化合物が、式(4):
【化4】
(式(4)中、Aは置換基を有していてもよい環状部位である。)で表される化合物である、<1>~<5>のいずれかに記載の環状化合物の製造方法。
<10>
反応温度が25℃以上250℃以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の環状化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンのディールス・アルダー反応において、環状化合物を収率良く得る方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
本実施形態に係る環状化合物の製造方法は、重合抑制剤の存在下で、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンとをディールス・アルダー反応させる。本実施形態によれば、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンのディールス・アルダー反応において、環状化合物を収率良く得る方法を提供することができる。
「環状化合物」とは、脂環式化合物のビニル基と共役ジエンのディールス・アルダー反応による環化物、又は、当該環化物と共役ジエンの更なるディールス・アルダー反応により生成する環化物である。
【0013】
(ビニル基を有する脂環式化合物)
本実施形態の環状化合物の製造方法では、ビニル基を有する脂環式化合物が用いられる。
【0014】
ビニル基を有する脂環式化合物は、脂環式骨格を有する。脂環式骨格の環を形成する原子数は、好ましくは3~15であり、より好ましくは5~12であり、更に好ましくは5~7であり、更に好ましくは5~6である。脂環式骨格としては、例えば、シクロプロピル部位、シクロブチル部位、シクロペンチル部位、シクロヘキシル部位、シクロヘプチル部位、シクロオクチル部位、ノルボルニル部位、ノルボルネニル部位、テトラシクロドデシル部位、テトラシクロドデセニル部位が挙げられる。
脂環式骨格を有するとは、脂環式構造を有する部位が化学構造に組み込まれていることを意味する。
【0015】
ビニル基を有する脂環式化合物は、環状カーボネート部位を有することが好ましい。環状カーボネート部位は、5員環又は6員環の環状カーボネート部位であることが好ましい。
環状カーボネート部位は、脂環式骨格と縮環構造を形成していることが好ましい。本実施形態に係る製造方法によれば、重合抑制剤の存在下でディールス・アルダー反応を行うことで、開環反応を起こしやすい環状カーボネート部位を有する脂環式化合物であっても、高い収率で環状化合物を得ることができる。
【0016】
ビニル基を有する脂環式化合物は、好ましくは式(4)で表される化合物である。
【化5】
【0017】
式(4)中、Aは置換基を有していてもよい環状部位である。
【0018】
Aとしては、例えば、シクロプロパン-1,2-ジイル基、シクロブタン-1,2-ジイル基、シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、シクロヘプタン-1,2-ジイル基、シクロオクタン-1,2-ジイル基、ノルボルナン-1,2-ジイル基、ノルボルネン-1,2-ジイル基、テトラシクロドデカン-1,2-ジイル基、テトラシクロドデセン-1,2-ジイル基が挙げられる。これらのAの中でも、シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、シクロヘプタン-1,2-ジイル基、シクロオクタン-1,2-ジイル基、ノルボルナン-1,2-ジイル基、ノルボルネン-1,2-ジイル基、テトラシクロドデカン-1,2-ジイル基、テトラシクロドデセン-1,2-ジイル基が好ましく、シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、ノルボルナン-1,2-ジイル基、ノルボルネン-1,2-ジイル基、テトラシクロドデカン-1,2-ジイル基、テトラシクロドデセン-1,2-ジイル基がより好ましい。
【0019】
本実施形態の環状部位の置換基としては、例えば、塩素原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアラルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~30のシリル基、炭素数1~30のシリルアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基である。なお、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基、又は、アルキル基は、更に置換されていてもよい。
【0020】
置換基は、好ましくは、水酸基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、及び、炭素数1~30のアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基である。置換基は、より好ましくは、水酸基、炭素数1~20のアルコキシ基、及び、炭素数1~30のアルキル基からなる群より選択される1種以上であり、更に好ましくは、炭素数1~20のアルコキシ基、及び、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~30のアルキル基からなる群より選択される1種以上である。
【0021】
炭素数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジイソプロピルフェニル基等の、無置換又はアルキル基を有するアリール基や、例えば、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基等のアルコキシ基を有するアリール基や、例えば、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
【0022】
炭素数1~10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ビニルオキシ基、及びアリルオキシ基が挙げられる。
【0023】
炭素数1~30のシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリル基、及びtert-ブチルジフェニルシリル基が挙げられる。
【0024】
炭素数1~30のシリルアルコキシ基としては、例えば、トリメチルシリルメトキシ基、トリメチルシリルエトキシ基、トリメチルシリルフェノキシ基、トリメチルシリルベンジルオキシ基、トリエチルシリルメトキシ基、トリエチルシリルエトキシ基、トリエチルシリルフェノキシ基、トリエチルシリルベンジルオキシ基、トリイソプロピルシリルメトキシ基、トリイソプロピルシリルエトキシ基、トリイソプロピルシリルフェノキシ基、トリイソプロピルシリルベンジルオキシ基、トリフェニルシリルメトキシ基、トリフェニルシリルエトキシ基、トリフェニルシリルフェノキシ基、トリフェニルシリルベンジルオキシ基、tert-ブチルジメチルシリルメトキシ基、tert-ブチルジメチルシリルエトキシ基、tert-ブチルジメチルシリルフェノキシ基、tert-ブチルジメチルシリルベンジルオキシ基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリルメトキシ基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリルエトキシ基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリルフェノキシ基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリルベンジルオキシ基、tert-ブチルジフェニルシリルメトキシ基、tert-ブチルジフェニルシリルエトキシ基、tert-ブチルジフェニルシリルフェノキシ基、及びtert-ブチルジフェニルシリルベンジルオキシ基が挙げられる。
【0025】
炭素数1~11のエステル基としては、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ブチルエステル基、ペンチルエステル基、シクロペンチルエステル基、ヘキシルエステル基、シクロヘキシルエステル基、ヘプチルエステル基、オクチルエステル基、ノニルエステル基、デシルエステル基、フェニルエステル基、ベンジルエステル基、ビニルエステル基、及びアリルエステル基が挙げられる。
【0026】
炭素数1~11のアシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、及びベンゾイル基が挙げられる。
【0027】
炭素数1~30のアルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよい。
炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロへキセニル基、n-ヘプチル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、n-オクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクテニル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、デカヒドロナフチル基、テトラシクロドデセニル基、及びテトラシクロドデシル基が挙げられる。
【0028】
より具体的に、ビニル基を有する脂環式化合物としては、例えば、3-ビニルシクロヘキセン-1,2-カーボネート、4-ビニルシクロヘキセン-1,2-カーボネートが挙げられる。
【0029】
(共役ジエン)
本実施形態の環状化合物の製造方法における共役ジエンとしては、鎖状の共役ジエン、又は環状の共役ジエンを用いることができる。
【0030】
鎖状の共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-メトキシ-3-トリメチルシロキシ-1,3-ブタジエン、及び1,1-ジメトキシ-3-(トリメチルシロキシ)-1,3-ブタジエンが挙げられる。
【0031】
環状の共役ジエンとしては、例えば、1,3-シクロペンタジエン、トリメチルシリル-1,3-シクロペンタジエン、1,2,3,4,5-ペンタメチル-1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、トリメチルシロキシ-1,3-シクロヘキサジエン、α-テルピネン、及びα-フェランドレンが挙げられる。
【0032】
本実施形態の環状化合物の製造方法に用いる共役ジエンは、共役ジエンそのものを用いてもよいし、2分子の共役ジエンがディールス・アルダー反応した共役ジエン2量体を用いてもよい。例えば、共役ジエンとして、1,3-シクロペンタジエンを用いる場合、あらかじめジシクロペンタジエンを熱分解して単離精製したものを用いてもよいし、ジシクロペンタジエンを反応中に導入し、反応系内でジシクロペンタジエンを熱分解させて1,3-シクロペンタジエンを発生させて用いてもよい。
【0033】
共役ジエンの総添加量は、ビニル基を有する脂環式化合物1モルあたり、好ましくは0.1モル~50モルであり、より好ましくは0.1モル~20モルであり、更に好ましくは0.1モル~15モルである。
【0034】
なお共役ジエンは、複数回に分けて反応系に添加してもよい。この場合、分割添加1回あたりの共役ジエンの添加量は、ビニル基を有する脂環式化合物1モルあたり、好ましくは0.1モル~20モルであり、より好ましくは0.5モル~10モルであり、更に好ましくは0.5モル~5モルである。
【0035】
(重合抑制剤)
本実施形態の環状化合物の製造方法では、重合抑制剤が存在することで、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンのディールス・アルダー反応において、環状化合物を収率良く得ることができる。重合抑制剤としては、例えば、キノンメチド系重合抑制剤、フェノール系重合抑制剤、ニトロキシルラジカル系重合抑制剤が挙げられる。
【0036】
重合抑制剤は、式(1):
【化6】
(式(1)中、R1、及びR2は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、R3は、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基、又は、アルキル基は、置換されていてもよい。)で表される化合物を含むことが好ましい。式(1)で表される化合物の存在下でディールス・アルダー反応を行うことで環状化合物の収率を高めることができる。式(1)における、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、炭素数1~30のアルキル基及び置換基の例示は、前記ビニル基を有する脂環式化合物のものと同様である。
【0037】
1、及びR2は、各々独立して、好ましくは炭素数4~30の分岐状又は環状アルキル基であり、より好ましくは、炭素数4~30の分岐状アルキル基である。より具体的には、R1、及びR2は、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基であることが好ましい。
【0038】
3は、好ましくは、炭素数6~20のアリール基又は炭素数1~30のアルキル基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0039】
式(1)で表される化合物としては、例えば、ジ-tert-ブチルフェニルキノンメチドが挙げられる。
【0040】
本実施形態の環状化合物の製造方法において、式(1)で表される化合物の総添加量は、ビニル基を有する脂環式化合物及び共役ジエンの総添加量に対して、好ましくは100質量ppm~10,000質量ppmであり、より好ましくは100質量ppm~5000質量ppmであり、更に好ましくは100質量ppm~4000質量ppmである。
【0041】
なお共役ジエンを複数回に分けて反応系に添加する場合、式(1)で表される化合物も複数回に分けて添加してもよい。この場合、分割添加1回あたりの式(1)で表される化合物の添加量は、式(2)で表される化合物の添加時点までのビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンの総積算量に対して、式(1)で表される化合物の総積算量が好ましくは100質量ppm~10,000質量ppm、より好ましくは100質量ppm~5,000質量ppm、更に好ましくは100質量ppm~4,000質量ppmとなる量である。
【0042】
重合抑制剤は、式(2):
【化7】
(式(2)中、R11、及びR15は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、R12、R13、及びR14、は、各々独立して、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基、又は、アルキル基は、置換されていてもよい。)で表される化合物を含むことが好ましい。式(2)で表される化合物の存在下でディールス・アルダー反応を行うことで環状化合物の収率を高めることができる。
式(2)における、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、炭素数1~30のアルキル基及び置換基の例示は、式(4)中のものと同様である。
【0043】
11、及びR15は、各々独立して、好ましくは、水素原子、炭素数4~30の分岐状又は環状アルキル基であり、より好ましくは、炭素数4~30の分岐状アルキル基である。より具体的には、R11、及びR15は、各々独立して、水素原子、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、又はアダマンチル基であることが好ましく、R11、及びR15は、より好ましくは水素原子である。
【0044】
12、及びR14は、水素原子であることが好ましい。
【0045】
13は、炭素数1~10のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基であることがより好ましい。
【0046】
式(2)で表される化合物としては、例えば、p-メトキシフェノール、ヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、4-tert-ブチルピロカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールが挙げられる。
【0047】
本実施形態の環状化合物の製造方法において、式(2)で表される化合物の総添加量は、ビニル基を有する脂環式化合物及び共役ジエンの総添加量に対して、好ましくは100質量ppm~10,000質量ppmであり、より好ましくは100質量ppm~5,000質量ppmであり、更に好ましくは100質量ppm~4,000質量ppmである。
【0048】
なお共役ジエンを複数回に分けて反応系に添加する場合、式(2)で表される化合物も複数回に分けて添加してもよい。この場合、分割添加1回あたりの式(2)で表される化合物の添加量は、式(2)で表される化合物の添加時点までのビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンの総積算量に対して、式(2)で表される化合物の総積算量が好ましくは100質量ppm~10,000質量ppm、より好ましくは100質量ppm~5,000質量ppm、更に好ましくは100質量ppm~4,000質量ppmとなる量である。
【0049】
重合抑制剤は、式(3):
【化8】
(式(3)中、Rは、水素原子、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、炭素数1~30のアルキル基であり、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基、又は、アルキル基は、置換されていてもよい。)で表される化合物を含むことが好ましい。式(3)で表される化合物の存在下でディールス・アルダー反応を行うことで環状化合物の収率を高めることができる。
【0050】
Rは、好ましくは炭素数1~10のアルコキシ基であり、より具体的には、ベンジルオキシが好ましい。
【0051】
本実施形態の環状化合物の製造方法において、式(3)で表される化合物の総添加量は、ビニル基を有する脂環式化合物及び共役ジエンの総添加量に対して、好ましくは100質量ppm~10,000質量ppmであり、より好ましくは100質量ppm~5,000質量ppmであり、更に好ましくは100質量ppm~4,000質量ppmである。
【0052】
なお共役ジエンを複数回に分けて反応系に添加する場合、式(3)で表される化合物も複数回に分けて添加してもよい。この場合、分割添加1回あたりの式(3)で表される化合物の添加量は、式(3)で表される化合物の添加時点までのビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンの総積算量に対して、式(3)で表される化合物の総積算量が好ましくは100質量ppm~10,000質量ppm、より好ましくは100質量ppm~5,000質量ppm、更に好ましくは100質量ppm~4,000質量ppmとなる量である。
【0053】
これらの重合抑制剤は、単一又は複数の化合物を組合せて用いてもよい。
重合抑制剤は、好ましくは式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物を含む。これらの化合物を含むことで、ディールス・アルダー反応による環状化合物生成の選択性を高め、高い収率で環状化合物を得ることができる。
式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物を併用する場合、式(2)で表される化合物/式(3)で表される化合物の添加質量比は、好ましくは20/80~80/20であり、より好ましくは30/70~70/30であり、更に好ましくは40/60~60/40である。
【0054】
本実施形態の環状化合物の製造方法において、重合抑制剤の総添加量は、環状化合物の回収率をより向上させる観点から、ビニル基を有する脂環式化合物及び共役ジエンの総添加量に対して、好ましくは100質量ppm~10,000質量ppmであり、より好ましくは100質量ppm~8,000質量ppmであり、更に好ましくは100質量ppm~6,000質量ppmである。
【0055】
なお共役ジエンを複数回に分けて反応系に添加する場合、重合抑制剤も複数回に分けて添加してもよい。この場合、分割添加1回あたりの重合抑制剤の添加量は、重合抑制剤の添加時点までのビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンの総積算量に対して、好ましくは100質量ppm~10,000質量ppmであり、より好ましくは100質量ppm~8,000質量ppmであり、更に好ましくは100質量ppm~6,000質量ppmである。
【0056】
(反応温度)
本実施形態の環状化合物の製造方法において、反応温度は25℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0057】
(溶媒)
本実施形態の環状化合物の製造方法では、溶媒を用いてもよく、用いなくてもよい。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、及びシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサン等の飽和炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、及びメシチレン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。
【0058】
本実施形態に係る環状化合物の製造方法では、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンとをディールス・アルダー反応させることで、ビニル基を有する脂環式化合物に対して共役ジエンが1分子付加した1分子付加体、ビニル基を有する脂環式化合物に対して共役ジエンが2分子付加した2分子付加体、又はビニル基を有する脂環式化合物に対して共役ジエンが3分子以上付加した多分子付加体が得られる。
1分子付加体は、例えば、ビニル基を有する脂環式化合物と共役ジエンとのディールス・アルダー反応による環化化合物である。当該環化化合物は、共役ジエン由来の残留二重結合を有する。2分子付加体は、例えば、1分子付加体中の共役ジエン由来の残留二重結合と、共役ジエンとのディールス・アルダー反応による環化化合物である。
【実施例0059】
以下、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
本明細書において、各種分析は以下のように行った。
【0061】
1H-NMR測定)
日本電子株式会社製NMR装置(製品名:ECZ400S)、及びTFHプローブを用いてNMR測定をすることで1H-NMRスペクトルを得た。なお、重溶媒の基準ピークは、クロロホルム-dを用いた場合は、クロロホルム-dの残留プロトンピークδH=7.26ppmを基準とし、積算回数は32回として測定を行った。
【0062】
(ビニル基の転化率の算出)
反応終了後の混合物のNMR測定により得られた1H-NMRスペクトルについて、3.8~4.5ppmに観測されるピーク(原料及び生成物のカーボネートメチン水素2H分に由来)の積分強度比をx、5.0~5.3ppmに観測されるピーク(原料のビニル基2H分に由来)の積分強度比をyとしたとき、{1-(y/x)}×100に代入し、ビニル基の転化率を算出した。
【0063】
(環状化合物の収率の算出)
ガスクロマトグラフ装置(株式会社島津製作所製、製品名:GC-2025)を用いて分析を行い、デカンを内標とした内部標準法により環状化合物の収率を算出した。
より詳細には、反応終了後のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた混合物のクロロホルム溶液を測定試料として用いた。
ガスクロマトグラフ装置のカラムとして、アジレント・テクノロジー株式会社製「Agilent J&W GCカラム」(製品名、固定相DB-1、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)を用いた。キャリアガスはヘリウムとした。カラム温度は、40℃で5分間保持した後、20℃/分の速度で320℃まで昇温し、320℃で11分保持した。
【0064】
[実施例1]
窒素雰囲気下、50mLの三口フラスコへ、4-ビニルシクロヘキセン-1,2-カーボネート(以下、「VCHC」ともいう)を4.7g(28mmol)、ジシクロペンタジエン(以下、「DCPD」ともいう)を7.7g(58mmol)、重合抑制剤としてジ-tert-ブチルフェニルキノンメチド(以下、「TBQM」ともいう)を5.3mg(VCHCとDCPCの総添加量に対して400ppm)を加えた。オイルバスを用いて内温が160~170℃となるように計38時間加熱した。なお、途中、ジシクロペンタジエン16.8g(127mmol)を4回に分けて添加した。反応混合物を1H-NMRで分析し、ビニル基の転化率を76%と算出した。
回収した内容物をクロロホルム(25mL)中へ投じてスラリー状とし、このスラリー溶液をメタノール(100mL)中へゆっくりと注ぎ入れた後、減圧濾過により析出物を除去し、メタノール(20mL×2回)で洗浄した。ろ液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、原料のVCHCとシクロペンタジエン付加体の環状化合物(以下、VCHCに対してシクロペンタジエンが1分子付加した環状化合物をNORT、2分子付加した環状化合物をTCDTと表記する)の混合物(5.8g)として回収した。回収物を「環状化合物の収率の算出」に示すようガスクロマトグラフィーで分析し、シクロペンタジエン付加体の環状化合物(NORT及びTCDT)の収率を52%と算出した。
【0065】
[実施例2]
VCHC(4.7g)に対して、途中ジシクロペンタジエンの添加の度に、重合抑制剤としてTBQMを濃度が、反応器に投入したVCHCとDCPDの総量に対して2500ppmとなるように添加した以外は実施例1と同様に反応を行い、原料のVCHCとシクロペンタジエン付加体(NORT、TCDT)の混合物(5.6g)を回収した。ビニル基の転化率は74%、シクロペンタジエン付加体の環状化合物(NORT及びTCDT)の収率は46%であった。
【0066】
[実施例3]
VCHC(4.9g)に対して、重合抑制剤としてTBQMに加えて、p-メトキシフェノール(以下、MeHQともいう)を濃度が、反応器に投入したVCHCとDCPDの総量に対して2500ppmとなるように、反応開始時とジシクロペンタジエンの追加時に添加した以外は実施例2と同様に反応を行い、原料のVCHCとシクロペンタジエン付加体の環状化合物(NORT及びTCDT)の混合物(6.1g)を回収した。ビニル基の転化率は73%、シクロペンタジエン付加体の環状化合物(NORT及びTCDT)の収率は51%であった。
【0067】
[実施例4]
VCHC(4.4g)に対して、重合抑制剤としてTBQMの代わりにMeHQを、反応器に投入したVCHCとDCPDの総量に対して400ppm添加した以外は実施例1と同様に反応を行い、原料のVCHCとシクロペンタジエン付加体の環状化合物(NORT及びTCDT)の混合物(3.2g)を回収した。ビニル基の転化率は69%、シクロペンタジエン付加体の環状化合物(NORT及びTCDT)の収率は42%であった。
【0068】
[実施例5]
VCHC(5.3g)に対して、重合抑制剤としてTBQMの代わりに4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル(以下、BzO-TEMPOともいう)を、反応器に投入したVCHCとDCPDの総量に対して700ppm添加した以外は実施例1と同様に反応を行い、原料のVCHCとシクロペンタジエン付加体の環状化合物(NORT及びTCDT)の混合物(6.1g)を回収した。ビニル基の転化率は79%、シクロペンタジエン付加体の環状化合物(NORT及びTCDT)の収率は42%であった。
【0069】
[比較例1]
VCHC(4.9g)に対して、重合抑制剤を添加しなかった以外は実施例1と同様に反応を行い、原料のVCHCとシクロペンタジエン付加体の環状化合物(NORT及びTCDT)の混合物(5.0g)を回収した。ビニル基の転化率は71%、シクロペンタジエン付加体の環状化合物(NORT及びTCDT)の収率は36%であった。
【0070】
【表1】
【0071】
表中の各種略語は以下のとおりである。
TBQM:ジ-tert-ブチルフェニルキノンメチド
MeHQ:p-メトキシフェノール
BzO-TEMPO:4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル
NORT:4-(5-テトラシクロドデセン-2-イル)-1,2-シクロヘキセンカーボネート
TCDT:4-(5-ノルボルネン-2-イル)-1,2-シクロヘキセンカーボネート
初期濃度(質量ppm)=(最初に反応器に投入した重合抑制剤の量)/(最初に反応器に投入したビニル基を有する脂環式化合物及び共役ジエンの総量)×10-6
最終濃度(質量ppm)=(最終的に反応器に投入した重合抑制剤の総量)/(最終的に反応器に投入したビニル基を有する脂環式化合物及び共役ジエンの総量)×10-6
【0072】
表1の結果から、実施例の環状化合物の製造方法は、比較例の環状化合物の製造方法と比べてジエン付加体の環状化合物の収率が高いことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の環状化合物の製造方法により、食品容器や医療器具用材料、通信部品用材料、自動車部品用材料のような各種透明樹脂材料、及び光学レンズ材料、光学デバイス、光学部品用材料、及びディスプレイ材料のような各種の光学用樹脂材料に用いられる環状化合物を収率よく合成することができる。