(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118029
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】レンチ
(51)【国際特許分類】
B25B 13/02 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B25B13/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024192
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】503200361
【氏名又は名称】株式会社イチネンアクセス
(71)【出願人】
【識別番号】523060345
【氏名又は名称】合同会社共進組
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】長船 勝己
(72)【発明者】
【氏名】泉野 諭
(57)【要約】
【課題】締緩時に滑りにくく、また手に掛かる負荷が小さいレンチの提供。
【解決手段】本発明のレンチ100は、相互に平行な面である第一平面11および第二平面12と、相互に平行な第三平面13および第四平面14と、第一傾斜面15と、第二傾斜面16と、第三傾斜面17と、第四傾斜面18とを有する軸部10、ならびに、締緩部20を備え、第一平面11および第二平面12の間隔Daが、第三平面13および第四平面14の間隔Dbより狭く、かつ間隔Dbの半分以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、
軸部の少なくとも一端に形成された締緩部と、
を備えるレンチであって、
前記軸部が、その延伸方向に垂直な断面において、
相互に平行な面である第一平面および第二平面と、
前記第一平面と垂直な平面であり、相互に平行な第三平面および第四平面と、
前記第一平面および前記第三平面の間に形成された第一傾斜面と、
前記第一平面および前記第四平面の間に形成された第二傾斜面と、
前記第二平面および前記第三平面の間に形成された第三傾斜面と、
前記第二平面および前記第四平面の間に形成された第四傾斜面と、
を備え、
前記第三平面および前記第四平面が、前記軸部が前記締緩部の回転軸を中心として回転する方向における前記軸部の端部にあり、
前記第一平面および前記第二平面の間隔Daが、前記第三平面および前記第四平面の間隔Dbより狭く、かつ間隔Dbの半分以上である、
レンチ。
【請求項2】
前記第一平面および前記第二平面の幅が、前記第三平面および前記第四平面の幅より広い、
請求項1に記載のレンチ。
【請求項3】
前記第一平面および前記第二平面の幅が、前記第三平面および前記第四平面の間隔の半分以上である、
請求項1に記載のレンチ。
【請求項4】
前記第三平面および前記第四平面の幅が、前記第一平面および前記第二平面の間隔の半分以上である、
請求項1に記載のレンチ。
【請求項5】
前記第一平面および前記第二平面の間隔が10~20mmであり、前記第三平面および前記第四平面の間隔15~25mmである、
請求項1に記載のレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルト・ナットなどのネジの締緩にはレンチが使用されている。レンチには、締緩部の一部が開口しているスパナ、締緩部が閉口しているメガネレンチ、様々なサイズのネジの締緩が可能なモンキーレンチ、ギヤによって締付方向を固定できるラチェットレンチ、ソケットを取り付け可能なソケットレンチ、自動車のホイール用ネジの締緩に用いられるホイールレンチなど、様々な種類がある。
【0003】
特許文献1には、ホイールレンチが開示されている。特許文献2には、ラチェットレンチが開示されている。
【0004】
レンチは、軸部と、軸部の少なくとも一端に締緩部とを備える。例えば、特許文献1のレンチは、軸部が延びる方向に垂直な断面において、その形状が円形である軸部を備える。特許文献2のレンチは、軸部が延びる方向に垂直な断面において、その形状が偏平形状であり、上下面には凹部が設けられた軸部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-046149号公報
【特許文献2】実用新案登録第3147162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レンチは、通常、軸部を手で握って締緩部周りに軸部を回転させることによりネジの締緩可能となっている。このため、例えば、軸部の断面が偏平形状であるレンチの場合、締緩時に手に負荷がかかる部分の面積が小さく、締緩時に手に掛かる圧力が大きいという問題がある。また、軸部の断面が円形のレンチの場合、軸部の断面が偏平形状のレンチに比べると、握りやすく、締緩時にネジにトルクを加えやすい反面、手が滑りやすいという問題がある。
【0007】
本発明は、従来技術の問題を解決するためになされたものであり、締緩時に滑りにくく、また手に掛かる負荷が小さいレンチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記のレンチを要旨とする。
【0009】
(1)軸部と、
軸部の少なくとも一端に形成された締緩部と、
を備えるレンチであって、
前記軸部が、その延伸方向に垂直な断面において、
相互に平行な面である第一平面および第二平面と、
前記第一平面と垂直な平面であり、相互に平行な第三平面および第四平面と、
前記第一平面および前記第三平面の間に形成された第一傾斜面と、
前記第一平面および前記第四平面の間に形成された第二傾斜面と、
前記第二平面および前記第三平面の間に形成された第三傾斜面と、
前記第二平面および前記第四平面の間に形成された第四傾斜面と、
を備え、
前記第三平面および前記第四平面が、前記軸部が前記締緩部の回転軸を中心として回転する方向における前記軸部の端部にあり、
前記第一平面および前記第二平面の間隔Daが、前記第三平面および前記第四平面の間隔Dbより狭く、かつ間隔Dbの半分以上である、
レンチ。
(2)前記第一平面および前記第二平面の幅が、前記第三平面および前記第四平面の幅より広い、
上記(1)に記載のレンチ。
(3)前記第一平面および第二平面の幅が、前記第三平面および前記第四平面の間隔の半分以上である、
上記(1)に記載のレンチ。
(4)前記第三平面および前記第四平面の幅が、前記第一平面および前記第二平面の間隔の半分以上である、
上記(1)に記載のレンチ。
(5)前記第一平面および前記第二平面の間隔が10~20mmであり、前記第三平面および前記第四平面の間隔15~25mmである、
上記(1)に記載のレンチ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、締緩時に滑りにくく、また手に掛かる負荷が小さいレンチが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るレンチを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るレンチを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るレンチについて図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレンチ100を示す斜視図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るレンチ100を示す正面図である。
図3は、A-A断面図である。
【0013】
図1および
図2に示すように、本発明の一実施形態に係るレンチ100は、軸部10と、軸部10の少なくとも一端に形成された、締緩部20とを備える。軸部10を締緩部20の回転軸(図中の符号a参照)を中心として回転させることにより、締緩部20で挟持するネジ(図示省略)を締緩することが可能である。
【0014】
図3に示すように、軸部10は、その延伸方向に垂直な断面(例えば、
図2のA-A断面)において、相互に平行な面である第一平面11および第二平面12と、第一平面11と垂直な平面であり、相互に平行な第三平面13および第四平面14と、第一平面11および第三平面13の間に形成された第一傾斜面15と、第一平面11および第四平面14の間に形成された第二傾斜面16と、第二平面12および第三平面13の間に形成された第三傾斜面17と、第二平面12および第四平面14の間に形成された第四傾斜面18と、を備える。
【0015】
第三平面13および第四平面14は、軸部10が締緩部20の回転軸を中心として回転する方向(図中の符号bの方向)における軸部の端部にある。すなわち、第三平面13および第四平面14は、本発明の実施の形態に係るレンチ100によってネジ(図示省略)を締緩する手に最も大きな負荷がかかる部分である。このため、間隔Dbには締緩時に発生する荷重に耐えうる長さであることが求められる。本発明の実施の形態に係るレンチ100では、第一平面11および第二平面12の間隔Daが、第三平面13および第四平面14の間隔Dbより狭く、かつ間隔Dbの半分以上であることを必須としている。
【0016】
第一平面11および第二平面12の間隔Daは、軽量化の観点から狭いことが好ましい。汎用のレンチには軸部の断面が偏平形状であるレンチが多いのはこのためである。しかし、間隔Daが狭すぎると、締緩時に手に掛かる圧力が大きくなるという問題がある。本発明の実施の形態に係るレンチ100は、軸部の断面が偏平形状であるレンチに比べて締緩時に手に負荷がかかる部分の面積が大きいため、締緩時に手に掛かる圧力を小さくすることが可能となる。また、本発明の実施の形態に係るレンチ100は、軸部の断面が八角形であるので、軸部の断面が円形のレンチに比べて、滑りにくいというメリットがある。間隔Daは、間隔Dbの4分の3以上であることが好ましい。
【0017】
第一平面11および第二平面12の間隔Daは、締緩時に手に掛かる圧力を小さくするために10mm以上であることが好ましく、13mm以上であることがより好ましい。一方、軽量化の観点からは、20mm以下であることが好ましく、17mm以下であることがより好ましい。第三平面および前記第四平面の間隔Dbは、レンチに求められる曲げ剛性の観点で設定すればよいが、曲げ剛性を向上させるために15mm以上であることが好ましく、17mm以上であることがより好ましい。一方、軽量化のために25mm以下であることが好ましく、22mm以下であることがより好ましい。
【0018】
軸部10の材質には、制約がなく、例えば、炭素工具鋼、合金工具鋼(ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼やニッケルクロムバナジウム鋼)など、工具用として一般に使用される鋼を用いることができる。軸部10は、中実の部材であってもよいし、十分な曲げ剛性を確保できるのであれば、中空の部材であってもよい。
【0019】
第一平面11および第二平面12の幅Wbは、第三平面13および第四平面14の幅Waより広いことが好ましい。第一平面11および第二平面12は、第三平面13および第四平面14よりも視認されやすい面であり、ブランド名、素材、サイズなどを表示しやすいため、この面は極力広いことが好ましい。また、第一平面11および第二平面12の幅Wbは、視認性を良くする観点から第三平面および第四平面の間隔Dbの半分以上であることが好ましい。ただし、第一傾斜面の幅Wc、第二傾斜面の幅Wd、第三傾斜面の幅Weおよび第四傾斜面の幅Wfが小さくなりすぎると、締緩時に手に掛かる圧力が大きくなるので、第一平面11および第二平面12の幅Wbは、第三平面および前記第四平面の間隔Dbの4分の3以下であることが好ましい。なお、第一平面11の幅と第二平面12の幅とは基本的に同寸法である。同寸法とは、完全な同一を求めるものではなく、多少の相違(10%以下の相違)は許容される。
【0020】
第三平面13および第四平面14の幅Waは、小さすぎると締緩時に手に掛かる圧力が大きくなるので、第一平面11および第二平面12の間隔Daの半分以上であることが好ましい。ただし、第一傾斜面の幅Wc、第二傾斜面の幅Wd、第三傾斜面の幅Weおよび第四傾斜面の幅Wfが小さくなりすぎると、締緩時に手に掛かる圧力が大きくなるので、第三平面13および第四平面14の幅Waは、第一平面11および第二平面12の間隔Daの4分の3以下であることが好ましい。なお、第三平面13の幅と第四平面14の幅とは基本的に同寸法である。同寸法とは、完全な同一を求めるものではなく、多少の相違(10%以下の相違)は許容される。
【0021】
本発明に係るレンチは、
図1および2に示すような、軸部10が締緩部20に対して傾斜している、いわゆるオフセットタイプのレンチでもよいし、ストレートタイプのレンチでもよい。また、締緩部の角度を変更可能な首振りタイプのレンチでもよい。締緩部の形状にも限定はなく、締緩部の一部が開口しているスパナ、締緩部が閉口しているメガネレンチ、様々なサイズのネジの締緩が可能なモンキーレンチ、ギヤによって締付方向を固定できるラチェットレンチ、ソケットを取り付け可能なソケットレンチなどいずれの形状でもよい。
【0022】
図1および2には、軸部10の一方に締緩部20を他方にシノをそれぞれ備えるレンチの例を示しているが、軸部10の両端にスパナまたはメガネを備えるものでもよいし、他の機能を備えるものでもよい。
【0023】
本発明に係るレンチは、締緩時に強い負荷が手に掛かる口径部の二面幅が大きいレンチにおいて特に有効である。例えば、口径部の二面幅が19mm以上、さらには、口径部の二面幅が27mm以上のレンチである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、締緩時に滑りにくく、また手に掛かる負荷が小さいレンチが得られる。
【符号の説明】
【0025】
100 本発明の一実施形態に係るレンチ
10 軸部
11 第一平面
12 第二平面
13 第三平面
14 第四平面
15 第一傾斜面
16 第二傾斜面
17 第三傾斜面
18 第四傾斜面
20 締緩部