(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118032
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】燃料搬送方法および燃料搬送用装置
(51)【国際特許分類】
G21C 19/32 20060101AFI20240823BHJP
G21C 19/07 20060101ALI20240823BHJP
G21C 19/365 20060101ALI20240823BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
G21C19/32
G21C19/07
G21C19/365
G21F9/30 531F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024196
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】上西 修司
(72)【発明者】
【氏名】松本 英朗
(72)【発明者】
【氏名】土井 秀信
(72)【発明者】
【氏名】府川 慶太
(72)【発明者】
【氏名】矢羽々 寛和
(57)【要約】
【課題】燃料集合体を容易に搬送することができる燃料搬送方法および燃料搬送用装置を提供する。
【解決手段】燃料搬送用装置10は、鉛直方向(Z方向)に沿って延びる複数の四角筒状の収容部101を有して平面視格子状に形成されたラック100において、各々の収容部101に収容された長尺状の燃料集合体200を搬送するための燃料取出用装置であって、対象となる燃料集合体200が収容された対象収容部101Aを構成する壁部102,103の外側に接続された壁部102A~102D,103A~103Dを切断することで対象収容部101Aを有する独立収容部101Bを形成する切断手段11と、対象収容部101Aを構成する壁部102,103に貫通孔101Cを形成する孔形成手段12と、貫通孔101Cに爪部131を係止させ、独立収容部101Bを吊り上げる吊り上げ手段13と、を含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って延びる複数の四角筒状の収容部を有して平面視格子状に形成されたラックにおいて、各々の前記収容部に収容された長尺状の燃料集合体を搬送する燃料取出方法であって、
対象となる前記燃料集合体が収容された対象収容部を構成する壁部の外側に接続された壁部を切断することで前記対象収容部を有する独立収容部を形成する切断工程と、
前記対象収容部を構成する壁部に貫通孔を形成する孔形成工程と、
前記貫通孔に爪部を係止させ、前記独立収容部を吊り上げる吊り上げ工程と、を含むことを特徴とする燃料搬送方法。
【請求項2】
前記切断工程において、切断開始時に第1の切断刃を用いた後、第2の切断刃を鉛直方向に移動させることで前記壁部を切断することを特徴とする請求項1に記載の燃料搬送方法。
【請求項3】
前記吊り下げ工程の後、前記独立収容部を他の収容部に収容することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料搬送方法。
【請求項4】
鉛直方向に沿って延びる複数の四角筒状の収容部を有して平面視格子状に形成されたラックにおいて、各々の前記収容部に収容された長尺状の燃料集合体を搬送するための燃料取出用装置であって、
対象となる前記燃料集合体が収容された対象収容部を構成する壁部の外側に接続された壁部を切断することで前記対象収容部を有する独立収容部を形成する切断手段と、
前記対象収容部を構成する壁部に貫通孔を形成する孔形成手段と、
前記貫通孔に爪部を係止させ、前記独立収容部を吊り上げる吊り上げ手段と、を含むことを特徴とする燃料搬送用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料搬送方法および燃料搬送用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転を終了した原子力発電所を解体するための解体方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された解体方法では、遠隔且つ水中での作業を実施するために、既設の燃料交換設備を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたように原子力発電所を解体する場合以外にも、核燃料の集合体である燃料集合体を取り出したり運搬したりする際には、遠隔且つ水中での作業が求められる。このような作業のために、一般的に、燃料集合体にはハンドル等の被保持部が付属しており、ハンドルを保持することによって燃料集合体を運搬可能となっている。しかしながら、燃料集合体の荷重をハンドルに伝達するための部分に何らかの要因で不具合が生じてしまい、収容された燃料を取り出すことが困難になってしまう場合があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料集合体を容易に搬送することができる燃料搬送方法および燃料搬送用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る燃料搬送方法は、鉛直方向に沿って延びる複数の四角筒状の収容部を有して平面視格子状に形成されたラックにおいて、各々の前記収容部に収容された長尺状の燃料集合体を搬送する燃料取出方法であって、対象となる前記燃料集合体が収容された対象収容部を構成する壁部の外側に接続された壁部を切断することで前記対象収容部を有する独立収容部を形成する切断工程と、前記対象収容部を構成する壁部に貫通孔を形成する孔形成工程と、前記貫通孔に爪部を係止させ、前記独立収容部を吊り上げる吊り上げ工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る燃料搬送方法において、前記切断工程において、切断開始時に第1の切断刃を用いた後、第2の切断刃を鉛直方向に移動させることで前記壁部を切断する。
【0008】
本発明の一態様に係る燃料搬送方法において、前記吊り下げ工程の後、前記独立収容部を他の収容部に収容する。
【0009】
一方、本発明に係る燃料搬送用装置は、鉛直方向に沿って延びる複数の四角筒状の収容部を有して平面視格子状に形成されたラックにおいて、各々の前記収容部に収容された長尺状の燃料集合体を搬送するための燃料取出用装置であって、対象となる前記燃料集合体が収容された対象収容部を構成する壁部の外側に接続された壁部を切断することで前記対象収容部を有する独立収容部を形成する切断手段と、前記対象収容部を構成する壁部に貫通孔を形成する孔形成手段と、前記貫通孔に爪部を係止させ、前記独立収容部を吊り上げる吊り上げ手段と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る燃料搬送方法および燃料搬送用装置によれば、燃料集合体を容易に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料取出用装置が取り付けられた燃料集合体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料取出用装置が取り付けられた燃料集合体の下部構造を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料取出用装置の上部構造が取り付けられた燃料集合体を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料取出用装置の中部構造が取り付けられた燃料集合体を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料取出用装置の下部支持部材を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料取出用装置の保持部およびテンション調節部を示す側面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料取出用装置の保持部を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理において取り出される燃料集合体が収容された様子を示す平面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料搬送用装置の切断手段を示す側面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料搬送用装置の孔形成手段を示す側面図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料搬送用装置の吊り上げ手段を示す側面図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料再収容装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、本発明の実施の形態にかかる燃料集合体搬送処理は、原子力発電所において、ラックに収容された燃料集合体を取り出して他の収容部(他のラックや収納缶等)に収容して搬送するためのものである。
【0013】
燃料集合体は、核燃料(ペレット)の集合体である燃料棒が複数本まとめられたものであり、全体として長尺状に形成される。ラックは、四角形格子状に形成されて複数の収容部を有し、各収容部は鉛直方向に延びる四角筒状(特に正方形筒状)に形成されている。以下では、「ラック」は、壁部を有するものであり、「収容部」は、壁部によって囲まれた空間を指すものとする。各収容部に燃料集合体が収容されており、燃料集合体は鉛直方向に沿って延びる。
【0014】
燃料集合体には、取り出し時に把持可能なように、取り出しのための部材が付属している。より具体的には、燃料集合体を下方から支持する下部支持部材と、燃料集合体の上方に設けられてハンドル等の被保持部を有する上部支持部材と、下部支持部材と上部支持部材とを接続する接続部材と、が設けられ、燃料集合体の荷重が被保持部に伝達される構造となっている。
【0015】
被保持部を保持することにより、このような燃料集合体を吊り上げることができる。しかしながら、燃料集合体の荷重をハンドルに伝達するための部分(即ち上部支持部材や下部支持部材、接続部材等)には、何らかの要因で不具合が生じる場合がある。このような場合、もはや燃料集合体の荷重を支持できなくなる。このような不具合は各部位に生じる可能性があり、どの部位の強度が低下しているかによって対処が異なる。また、吊り上げ開始時に荷重を支持できる場合であっても、搬送時に加わる力や振動、衝撃等によっては各接続部の接続が解除されてしまう場合がある。
【0016】
本発明の実施の形態にかかる燃料集合体搬送処理では、以下に説明する第1~第3方法を適宜に採用することによって、燃料集合体を搬送する。尚、複数の収容部に収容された各々の燃料集合体は、生じ得る不具合が異なる。各々の燃料集合体において生じた不具合に応じて第1~第3が適宜に採用されればよい。
【0017】
[第1方法]
第1方法は、燃料集合体の上方において、上部支持部材と接続部材としてのワイヤとの接続部に不具合が生じている(接続されていない又は接続強度が低い)場合に採用される。尚、この接続部に不具合が生じているか否かについては、例えば撮像手段を用いて目視により判断可能である。
【0018】
第1方法では、
図1~7に示すような燃料取出用装置1を用いる。燃料取出用装置1は、鉛直方向(Z方向)に沿って延びる筒状の収容部101に収容された長尺状の燃料集合体200を収容部101から取り出すための燃料取出用装置であって、燃料集合体200を下方から支持する下部支持部材2と、下部支持部材2に接続されてZ方向に沿って延びるワイヤ3と、燃料集合体200の上方に設けられて被保持部としてのハンドル43を有するとともにワイヤ3が接続される上部支持部材4と、上部支持部材4とは別体に構成されて燃料集合体200の上方においてワイヤ3を保持する保持部5と、保持部5を支持するとともに上部支持部材4に対して少なくともZ方向に移動することでワイヤ3に張力を付与するテンション調節部6と、を備える。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料取出用装置1が取り付けられた燃料集合体200を示す斜視図であり、
図2は、燃料取出用装置1が取り付けられた燃料集合体200の下部構造を示す斜視図であり、
図3は、燃料取出用装置1が取り付けられた燃料集合体200の上部構造を示す斜視図であり、
図4は、燃料取出用装置1が取り付けられた燃料集合体200の中部構造を示す斜視図であり、
図5は、燃料取出用装置1の下部支持部材2を示す断面図であり、
図6は、燃料取出用装置1の保持部5およびテンション調節部6を示す側面図であり、
図7は、燃料取出用装置1の保持部5を示す断面図である。
【0020】
ラック100は、鉛直方向に沿って延びる筒状の収容部101を複数有する。燃料集合体200は、筒状の収容部101に収容されることにより、鉛直方向に沿って長尺状に延びる。第1方法によって、燃料集合体200を収容部101から吊り上げ可能な状態とする。以下の説明では、鉛直方向をZ方向とし、水平面に沿うとともに互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、Z方向における上側及び下側を単に上下と呼ぶことがある。
【0021】
下部支持部材2は、いわゆる吊り皿であって、
図2に示すように、XY平面に沿って延びる四角形状の本体板部21と、本体板部21の各辺から上方に向かって延びる4つの側板部22と、ワイヤ接続部23と、を有する。燃料集合体200は、下端部に先細り部201を有しており、本体板部21は、先細り部201の一部が挿通される貫通孔を有している。
【0022】
ワイヤ接続部23は、本体板部21の四隅(側板部22同士の間)に配置されてZ方向に沿って延びる貫通孔であり、
図5に示すように小径部231と大径部232とを有する。大径部232は、小径部231よりも大径に形成されるとともに小径部231の下方側に連続しており、例えばザグリ穴である。
【0023】
ワイヤ3は、例えば金属製の可撓性ワイヤであり、燃料取出用装置1は、4本の独立したワイヤ3を有する。ワイヤ3の下端部には留め金具31が設けられ、上端部には2つのワイヤクリップ32が設けられている。留め金具31は、例えば筒状に形成されるとともに加締めによりワイヤ3に取り付けられる。留め金具31は、直角に屈曲されてL字状となっており、Z方向に沿って延びる第1延在部31Aと、第1延在部31Aよりも先端側においてXY平面に沿って延びる第2延在部31Bと、を有する。
【0024】
ワイヤ接続部23の小径部231の内径は、ワイヤ3の外径よりも大きく、且つ、留め金具31の外径(第1延在部31Aの外径)よりも小さい。また、ワイヤ接続部23の大径部232の内径は、留め金具31の外径よりも大きく、第2延在部31Bの延在方向における留め金具31の寸法(第2延在部31Bの長さ)よりも小さい。これにより、ワイヤ3が小径部231に挿通され、第1延在部31Aが大径部232内に配置されるとともに小径部231と大径部232との間の段差によって係止され、第2延在部31Bが大径部232内に入り込まず本体板部21の下面に係止される。
【0025】
このようにしてワイヤ3の下端部が下部支持部材2に接続される。即ち、ワイヤ3を上方に引き上げようとした際、この力が下部支持部材2に伝達されるようになっている。
【0026】
ワイヤクリップ32は、
図3に示すように、クリップ本体321と、固定ナット322と、により構成されている。クリップ本体321は、上方に開口したU字状に形成されるとともに両端部が雄ねじ部となっており、固定ナット322が螺合可能となっている。
【0027】
ワイヤ3に対しては、サポート部材400やサポートパイプ600が設けられていてもよい。サポート部材400は、燃料集合体200を囲むように四角筒状に形成され、ワイヤが挿通される挿通孔を角部に有する。サポートパイプ600は、Z方向に延びる筒状部材であって、ワイヤ3が挿通される。
【0028】
上部支持部材4は、
図3に示すように、XY平面に沿って延びる四角形状の本体板部41と、ワイヤ接続部42と、被保持部としてのハンドル43と、を有する。本体板部41の四隅には、ワイヤ3が挿通される貫通孔411が形成されている。
【0029】
ワイヤ接続部42は、本体板部41の各辺の中央部に配置され、本体板部41の上面から立設された第1~第3の立設部421~423と、各立設部421~423の間に設けられるワイヤ保持部424と、を有する。
【0030】
第1の立設部421と第2の立設部422との間、及び、第2の立設部422と第3の立設部423との間のそれぞれに、クリップ本体321が設けられる。ワイヤ保持部424は、U字状のクリップ本体321における一対の脚部同士の間に配置される。即ち、クリップ本体321とワイヤ保持部424とによって、ワイヤ3を挿通可能な開口が形成される。
【0031】
このような開口にワイヤ3を挿通した状態において、固定ナット322をクリップ本体321の雄ねじ部に螺合させて締め付けていくと、固定ナット322はワイヤ保持部424に対して上側から接触していることから、ねじ送り機構によってクリップ本体321が上方に移動していき、ワイヤ3が挿通される開口が小さくなっていく。これにより、ワイヤ3がワイヤ接続部42に固定(接続)されるようになっている。
【0032】
ハンドル43は、本体板部41のうち対向する一対の角部から上方に立ち上がった2つの脚部と、これら2つの脚部を接続するように本体板部41の対角線に沿って延びる部分と、を有する。
【0033】
上記のような下部支持部材2とワイヤ3と上部支持部材4とが正常に接続されている場合、クレーン等を含む搬送手段を用いてハンドル43を把持して吊り上げると、上部支持部材4からワイヤ3に力が伝達され、ワイヤ3から下部支持部材2に力が伝達され、下部支持部材2によって燃料集合体200が下方から支持される。一方、ワイヤ接続部42にワイヤ3が正常に固定されていない場合、例えばワイヤ3が脱落してしまうため力が伝達されない。このように正常に支持されていないワイヤ3に対し、以下の保持部5及びテンション調節部6が用いられる。
【0034】
燃料取出用装置1は、4つの保持部5を有し、保持部5は本体板部41の各辺に対して上側に位置するように配置される。保持部5は、
図6,7に示すように、第1保持部51と、第2保持部52と、位置調節部としての調節ボルト53と、を有する。
【0035】
第1保持部51は、Z方向に沿ってワイヤ3が通過可能な第1通過部511と、上面に形成された傾斜面である傾斜部512と、雌ねじ部513と、を有する。第1通過部511は、貫通孔であってもよいし、切り欠き部であってもよい。
【0036】
第2保持部52は、第1保持部51とは別体に構成されるとともに第1保持部51の上面側に重ねられる。第2保持部52は、Z方向に沿ってワイヤ3が通過可能な第2通過部521と、下面に形成された傾斜面である傾斜部522と、貫通孔523と、を有する。
【0037】
調節ボルト53は、上側から貫通孔523に挿通されるとともに、下端部(先端部)が雌ねじ部513と螺合する。
【0038】
第1保持部51と第2保持部52とは、傾斜部512と傾斜部522とが重なり、これらが重なり部となる。また、第1保持部51と第2保持部52とは、雌ねじ部513と貫通孔523とが重なるように配置される。即ち、第1保持部51および第2保持部52は、互いに重なり合う重なり部においてワイヤ3の通過方向であるZ方向に対して傾斜した傾斜部512,522を有する。また、傾斜部512,522は互いに略平行である。このような第1保持部51および第2保持部52は、以下のような通過状態と保持状態とが切り換え可能となっている。
【0039】
通過状態では、第1通過部511と第2通過部521との中心同士が一致しており、これらの開口が重なった面積が最大となり、ワイヤ3が通過可能となっている。通過可能状態において、雌ねじ部513と螺合した調節ボルト53を回転させると、ねじ送り機構によって調節ボルト53がZ方向に移動する。調節ボルト53を下方に移動させると、調節ボルト53の頭部が第2保持部52と当接することにより、第2保持部52が下方に移動する。
【0040】
このとき、傾斜部512と傾斜部522とが重なっていることから、傾斜部512,522によって構成される案内機構が、第1保持部51と第2保持部52とをXY平面内において相対移動させる。尚、
図7に示す例では、X方向の相対移動が生じるように傾斜部512,522が傾斜しているが、XY平面における任意の方向の相対移動が生じればよい。このような相対移動により、第1通過部511の内周面のうちX方向一方側(
図7の左側)を向いた部分がワイヤ3に接触し、第2通過部521の内周面のうちX方向他方側(
図7の右側)を向いた部分がワイヤ3に接触し、ワイヤ3に対してせん断するような力が作用する。第1保持部51と第2保持部52とは、このような力によりワイヤ3を保持して保持状態となる。尚、このようなXY平面内の相対移動を許容できるように、貫通孔523は長孔状に形成されるか又は調節ボルト53の外径に対して充分な大きさの内径を有していればよい。
【0041】
上記のような通過状態においてワイヤ3を第1通過部511および第2通過部521に挿通した後、保持状態に切り換えることにより、ワイヤ3が第1保持部51と第2保持部52とによって保持される。
【0042】
尚、本実施の形態では第1保持部51がテンション調節部6とは別体に構成されて互いに固定されているが、テンション調節部の一部が第1保持部として機能する(第1保持部がテンション調節部と一体に形成されている)構成としてもよい。
【0043】
テンション調節部6は、上部支持部材4の上方に配置される板部61と、板部61に螺合しつつ鉛直方向に貫通する複数のねじ部材62と、を備える。板部61は、XY平面に沿って延びる板状に形成され、上部支持部材4に対して間隔をあけつつ配置される。また、板部61は、Z方向に沿って延びる複数の雌ねじ部611を有する。
【0044】
ねじ部材62は、複数の雌ねじ部611のそれぞれに対して上側から螺合することで、上端部に頭部(被操作部)621を有し、先端部622が下端部となる。先端部622は、上部支持部材4の上面のうち平坦な部分に接触するように配置されている。
【0045】
板部61と固定された保持部5によってワイヤ3を保持しつつ、ねじ部材62の先端部622が上部支持部材4の上面に接触した状態において、ねじ部材62を回転させると、ねじ送り機構によって板部61がZ方向に移動する。板部61を上側に移動させることで、ワイヤ3に対して張力が加えられていき、テンションを調節することができる。
【0046】
ここで、燃料取出用装置1によって燃料集合体200を収容部101から取り出す燃料取出方法について説明する。まず、各々のワイヤ3について、上部支持部材4による支持状態が所定基準を満たすか否かを判定する。即ち、ワイヤ接続部42によってワイヤ3が正常に保持されているか否かを判定する。この所定基準を満たさないワイヤ3が存在する場合、このワイヤ3を保持部5によって保持する。このとき、全てのワイヤ3を保持してもよいし、所定基準を満たさないワイヤ3のみを保持してもよい。その後、ねじ部材62を操作することでワイヤ3に所定の張力を付与する。さらに、クレーン等を含む搬送手段を用い、ハンドル43を保持して吊り上げることにより、燃料集合体200を吊り上げることができる。その後の水平方向の移動については、例えば第3の方法が採用されればよい。
【0047】
このように、本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理の第1方法において用いられる燃料取出用装置1によれば、ワイヤ3を保持する保持部5とワイヤ3に張力を付与するテンション調節部6とが設けられていることで、上部支持部材4とワイヤ3との接続に不具合が生じている場合であっても、燃料集合体200を吊り上げることができ、燃料集合体200を収容部101から容易に取り出すことができる。
【0048】
また、第1保持部51および第2保持部52がZ方向に対して傾斜した傾斜部512,522を有し、調節ボルト53が第1保持部51と第2保持部52とをZ方向に相対移動させることで、第1保持部51と第2保持部52とをXY平面内において相対移動させてワイヤ3を容易に保持させることができる。
【0049】
また、テンション調節部6がねじ部材62を有し、ねじ部材62の先端部622が上部支持部材4の上面に接触していることで、ねじ部材62を回転させることで板部61をZ方向に移動させることができ、ワイヤ3に付与する張力を容易に調節することができる。
【0050】
尚、第1方法において用いられる燃料取出用装置は上記に限定されず、以下のような変形が加えられたものが用いられてもよい。例えば、上記では第1保持部51と第2保持部52との両方が傾斜部512,522を有しているものとしたが、いずれか一方のみが傾斜部を有する構成であっても、上記同様にXY平面内の相対移動によってワイヤを保持することができる。
【0051】
また、保持部によるワイヤの保持態様としては、上記のように通過部511,521同士を通過方向との直交面内において移動させるものに限定されない。例えば、相対移動する2つの部材によってワイヤを挟み込む構成としてもよい。
【0052】
また、テンション調節部は、ねじ部材62によって板部61をZ方向に移動させるものに限定されない。例えば、個々の保持部をZ方向に移動させるような機構により、ワイヤに所定の張力を付与してもよい。
【0053】
[第2方法]
第2方法は、燃料集合体の下方において、下部支持部材と接続部材との接続部に不具合が生じている(接続されていない又は接続強度が低い)場合や、下部支持部材そのものに不具合が生じている場合等に採用される。尚、これらに不具合が生じているか否かについては、例えば上部支持部材の被保持部を保持して吊り上げた際の吊り上げ荷重と燃料集合体の重量とを比較すれば判断可能である。尚、上部支持部材と接続部材との接続部に不具合が生じている場合に、第1方法を採用せずに第2方法を採用してもよい。また、第1方法を採用した上で、下部支持部材と接続部材との接続部等に不具合が生じている場合には、さらに第2方法を採用すればよい。
【0054】
第2方法では、
図9~11に示すような燃料搬送用装置10を用いる。燃料搬送用装置10は、鉛直方向(Z方向)に沿って延びる複数の四角筒状の収容部101を有して平面視格子状に形成されたラック100において、各々の収容部101に収容された長尺状の燃料集合体200を搬送するための燃料取出用装置であって、対象となる燃料集合体200が収容された対象収容部101Aを構成する壁部102,103の外側に接続された壁部102A~102D,103A~103Dを切断することで対象収容部101Aを有する独立収容部101Bを形成する切断手段11と、対象収容部101Aを構成する壁部102,103に貫通孔101Cを形成する孔形成手段12と、貫通孔101Cに爪部131を係止させ、独立収容部101Bを吊り上げる吊り上げ手段13と、を含む。
【0055】
図8は、本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理において取り出される燃料集合体200が収容された様子を示す平面図であり、
図9は、本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料搬送用装置10の切断手段11を示す側面図であり、
図10は、燃料搬送用装置10の孔形成手段12を示す側面図であり、
図11は、燃料搬送用装置10の吊り上げ手段13を示す側面図である。
【0056】
ラック100は、
図8に示すように、鉛直方向に沿って延びる複数の四角筒状の収容部101を有して平面視格子状に形成されている。即ち、ラック100は、YZ平面に沿って延びる複数の壁部102と、ZX平面に沿って延びる複数の壁部103と、燃料集合体200が載置される載置板部104と、底板部105と、を有する。1つの収容部101を対象収容部101Aとした場合、対象収容部101Aを構成する壁部102,103の外側には、YZ平面に沿って延びる4つの壁部102A~102Dと、ZX平面に沿って延びる4つの壁部103A~103Dと、載置板部104と、底板部105と、が接続されている。
【0057】
切断手段11は、
図9に示すように、位置決め用クランプ111と、位置決め用クランプ111から上方に延びる軸部112と、軸部112の上端部に接続された被保持部113と、壁部102A~102D,103A~103Dと載置板部104と底板部105とを切断するための第1の切断刃(不図示)及び第2の切断刃114と、駆動部(不図示)と、を有する。
【0058】
位置決め用クランプ111は対象収容部101Aと隣り合う収容部101内に挿入され、この収容部101の壁部102,103を内側から押圧することにより、Z方向において位置決めされる。即ち、位置決め用クランプ111は、押圧状態と非押圧状態とが切換可能となっている。
【0059】
被保持部113は、燃料集合体200に取り付けられたハンドル43と共通の形状を有するものであり、ハンドル43を把持して吊り上げるための手段によって被保持部113を把持して操作することができるようになっている。即ち、被保持部113を把持し、クレーン等によって吊り上げることにより、切断手段11の全体を移動させることができるようになっている。
【0060】
第1の切断刃は、壁部102A~102D,103A~103Dの上端部を切断するためのものであり、即ち切断開始時に切り込みを入れるためのものである。第1の切断刃は、Z方向に移動可能に設けられていてもよいし、Z方向に移動せずに回転することで切り込みを形成するものであってもよい。
【0061】
第2の切断刃114は、第1の切断刃によって形成された切り込みに連続するようにZ方向に沿って延びる切断線を形成するものであって、壁部102A~102D,103A~103Dを下方に向かって切断していき、その際に載置板部104および底板部105も切断する。第2の切断刃114は、位置決め用クランプ111に対してZ方向に移動可能に設けられており、下方に向かって移動することで上記のように壁部102A~102D,103A~103Dを切断する。
【0062】
対象収容部101Aと隣り合う収容部101に位置決め用クランプ111を挿入した際、この収容部101の周りには、切断すべき壁部が2つ存在する。第1の切断刃および第2の切断刃114を1つずつ設けておき、2つの壁部を順次切断してもよいし、第1の切断刃および第2の切断刃114を2つずつ設けておき、2つの壁部を同時に切断してもよい。
【0063】
切断手段11によって上記のように切断することにより、対象収容部101Aを有するとともにラック100から切り離された独立収容部101Bが形成される。独立収容部101Bは、一対の壁部102と一対の壁部103と載置板部104と底板部105とを有して四角筒状に形成され、内側に対象収容部101Aを有するものである。
【0064】
孔形成手段12は、
図10に示すように、位置決め用クランプ121と、被保持部122と、ホールソー123と、を有する。
【0065】
位置決め用クランプ121は、独立収容部101Bの一対の壁部102を対向方向(X方向)から挟み込むとともに内側に向かって押圧することにより、Z方向において独立収容部101Bに対して位置決めされる。即ち、位置決め用クランプ121は、保持状態と非保持状態とが切換可能となっている。
【0066】
被保持部122は、燃料集合体200に取り付けられたハンドル43と共通の形状を有するものであり、ハンドル43を把持して吊り上げるための手段によって被保持部122を把持して操作することができるようになっている。即ち、被保持部122を把持し、クレーン等によって吊り上げることにより、孔形成手段12の全体を移動させることができるようになっている。
【0067】
ホールソー123は、独立収容部101Bを構成する壁部103に貫通孔101Cを形成するものであって、壁部103に沿った2方向(X方向およびZ方向)に移動可能となっている。ホールソー123は、一対の壁部103に貫通孔101Cを形成する。このとき、孔形成手段12は、1つのホールソー123によって一対の壁部103に貫通孔101Cを順次形成してもよいし、2つのホールソー123によって一対の壁部103に同時に貫通孔101Cを形成してもよい。
【0068】
上記では、孔形成手段12が、位置決め用クランプ121によって一対の壁部102を保持し、ホールソー123によって壁部103に貫通孔101Cを形成するものとしたが、一対の壁部103を保持して壁部102に貫通孔を形成してもよい。
【0069】
吊り上げ手段13は、
図11に示すように、爪部131と、爪部131が設けられた一対のアーム部132と、ばね部材(不図示)と、被保持部133と、を有する。
【0070】
爪部131は、壁部103に対して外側から内側に向かって突出するものであり、貫通孔101Cに入り込んで係止されるものである。一対のアーム部132が閉じた状態において、爪部131の下面は、独立収容部101Bの内側に向かうにしたがって上方に向かうように傾斜した傾斜面となっている。爪部131の上面は、XY平面に沿っている。
【0071】
アーム部132は、X方向に沿った回転軸を中心として回動可能に上端部が支持されており、回動軸側を基端部とした際、先端部(下端部)に爪部131が設けられている。即ち、一対のアーム部132が回動することで、先端部に設けられた爪部131同士の間隔が変更されるようになっている。
【0072】
ばね部材は、一対のアーム部132の先端部が互いに近づく方向(爪部131が独立収容部101Bの内側に向かう方向)にアーム部132を付勢するものである。
【0073】
吊り上げ手段13を独立収容部101Bに対して上方から接近させていくと、爪部131の下面が独立収容部101Bの外周縁(特に壁部102の上端部)に当接する。このとき、爪部131の下面が上記のような傾斜を有していることから、吊り上げ手段13を下方に移動させるにしたがって、一対の爪部131には互いに離れる方向に力がはたらき、一対のアーム部132がばね部材の付勢力に逆らって開いていく。爪部131が貫通孔101Cに到達すると、爪部131が貫通孔101Cに入り込み、一対のアーム部132がばね部材の付勢力によって閉じていく。これにより、爪部131の上面が貫通孔101Cの内周縁のうち上縁部によって係止される。
【0074】
このように爪部131が貫通孔101Cに係止された状態において吊り上げ手段13を上昇させることにより、燃料集合体200を収容した独立収容部101Bが吊り上げられる。
【0075】
第2方法では、上記のような燃料搬送用装置10によって、次のような燃料搬送方法が実施される。即ち、燃料搬送方法では、切断手段11によって壁部102A~102D,103A~103Dを切断することで独立収容部101Bを形成する切断工程と、孔形成手段12によって独立収容部101Bの壁部103に貫通孔101Cを形成する孔形成工程と、貫通孔101Cに爪部131を係止させて吊り上げ手段13によって独立収容部101Bを吊り上げる吊り上げ工程と、がこの順で実施される。尚、切断工程と孔形成工程との順序が入れ替わってもよい。
【0076】
さらに、吊り上げ工程の後、独立収容部を他の収容部に収容する再収容工程が実施される。即ち、独立収容部101Bが吊り上げ手段13によって吊り上げられて搬送され、燃料集合体200だけでなく独立収容部101Bごと他の収容部に収容される。このとき、他の収容部は、独立収容部101Bを収容可能な寸法を有している必要があり、収容部が充分に大きい既存のキャスクやラック等を他の収容部として流用してもよいし、独立収容部101Bを収容可能な収容部を有する新たなキャスクやラック等を製作してもよい。
【0077】
このように、本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理の第2方法において実施される燃料搬送方法によれば、壁部102A~102D,103A~103Dを切断して独立収容部101Bを形成し、この独立収容部101Bを吊り上げることにより、燃料集合体200を支持するための部材に不具合が生じており修復が困難な場合であっても、燃料集合体200を容易に搬送することができる。
【0078】
また、切断工程において第1の切断刃および第2の切断刃114を使用することで、切断開始時に適した刃と切り進める際に適した刃とを使い分けることができ、切断作業の作業性を向上させることができる。
【0079】
尚、第2方法において用いられる燃料搬送用装置は上記に限定されず、以下のような変形が加えられたものが用いられてもよい。例えば、上記では切断手段11が第1の切断刃および第2の切断刃114を有するものとしたが、切断手段は、1つの切断刃のみを有していてもよいし、3つ以上の切断刃を有していてもよい。
【0080】
また、第2方法における燃料搬送方法において吊り上げられる燃料集合体は、上記の第1方法における燃料集合体200のように下部支持部材2と上部支持部材4とにワイヤ3が接続されたものに限定されない。即ち、燃料集合体は、ラック内に保管されていればよく、その状態は特に限定されず、例えば、上部支持部材と下部支持部材とを連結する連結棒が設けられていてもよいし、上部支持部材と下部支持部材とが連結されていなくてもよい。
【0081】
[第3方法]
第3方法は、上部支持部材および下部支持部材と接続部材とのそれぞれの接続部に不具合が生じていない場合に採用される。あるいは、第1方法の実施後に、下部支持部材と接続部材との接続部に不具合が生じていないことが確認された場合に、実施される。
【0082】
第3方法では、
図12に示すような燃料再収容装置300を用いる。燃料再収容装置300は、鉛直方向(Z方向)に沿って延びる複数の収容部101を有するラック100から、各々の収容部101に収容された長尺状の燃料集合体200を取り出して他の収容部としての収納缶500に収容する燃料再収容装置であって、燃料集合体200を搬送する搬送手段と、ラック100の上方に配置されるとともに水平面(XY平面)に沿って延びる水平案内部材310と、燃料集合体200の少なくとも下端部を覆うとともに水平案内部材310上を移動する補助保持部材320と、を備える。水平案内部材310は、対象の収容部101からラック100の外周部よりも外側まで延びる水平部311と、ラック100の外周部の外側に形成されるとともに収納缶500と連通する開口部312と、を有する。
図12は、本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理で用いられる燃料再収容装置300を示す側面図である。
【0083】
水平案内部材310は、X方向に沿って延びる水平部311と、水平部311の下面に形成された開口部312と、を有する。水平部311は、ラック100の上側に重なるように配置され、X方向における水平部311の一端は、取出対象となる燃料集合体200が収容された収容部101に隣り合うように配置される。X方向における水平部311の他端は、X方向においてラック100の外周部の外側に位置する。即ち、取出対象となる燃料集合体200が収容された収容部101に対してX方向他端側に位置する収容部101は、水平部311によって上方の開口が塞がれる。
【0084】
開口部312は、水平部311の他端側に設けられ、下方に突出する筒状部の内側に形成される。この筒状部が他の収容部としての収納缶500に挿入されることにより、開口部312が収納缶500と連通する。収納缶500は、例えば架台等に載置され、適宜な高さに配置されている。
【0085】
水平案内部材310は、X方向において一端が開口し、他端が閉じた形状を有している。これにより、水平案内部材310において、X方向一端側から導入された燃料集合体200がX方向他端側に向けて案内され、開口部312を通過して下方側に向かうことが可能になっている。
【0086】
補助保持部材320は、ネット状に形成されたキャッチネットであって、その上端には、誘導部材としてのロープ32Aが接続されており、ロープ32Aを動かすことにより、補助保持部材320を操作可能(移動可能)となっている。補助保持部材320は、燃料集合体200を下端部から覆うように形成されており、所定のZ方向寸法を有している。即ち、補助保持部材320は、燃料集合体200の全体を覆ってもよいし、下端部を含む所定の領域のみを覆ってもよい。
【0087】
ここで、燃料再収容装置300によって収容部101から燃料集合体200を取り出して収納缶500に収容する燃料再収容方法について説明する。燃料再収容方法では、収容部101に収容された燃料集合体200を搬送手段によってZ方向に吊り上げる吊り上げ工程と、吊り上げられた燃料集合体200の下端部を補助保持部材320によって覆うカバー工程と、燃料集合体200および補助保持部材320を水平部311上で移動させる水平移動工程と、燃料集合体200および補助保持部材320をZ方向に下降させることで開口部312を通過させて収納缶500に収容する収容工程と、がこの順に実施される。
【0088】
吊り上げ工程においては、クレーン等を含む搬送手段によってハンドル43を把持して吊り上げる。このときの吊り上げ高さは、燃料集合体200が収容部101から完全に脱出するとともに下方から補助保持部材320を配置可能な程度の高さであればよい。また、吊り上げ工程とカバー工程との間に、搬送手段によって燃料集合体200をXY平面内において移動させてもよい。
【0089】
カバー工程においては、ロープ32Aを操作することにより、吊り上げられた燃料集合体200の下方に補助保持部材320を移動させる。その後、燃料集合体200と補助保持部材320とをZ方向に相対接近させ、補助保持部材320内に燃料集合体200を収容していく。この際、補助保持部材320を上昇させてもよし、燃料集合体200を下降させてもよい。
【0090】
水平移動工程においては、燃料集合体200の下端部が水平部311に接しないようにしつつ、燃料集合体200をX方向の一方側から他方側に向けて移動させていく。このとき、燃料集合体200と同程度の移動速度で補助保持部材320もX方向の一方側から他方側に向けて移動させていくことにより、燃料集合体200と補助保持部材320とが干渉しないようにする。
【0091】
水平移動工程において燃料集合体200が開口部312の上方に位置したら、収容工程に移行する。収容工程においては、燃料集合体200および補助保持部材320をZ方向に同程度の速度で下降させる。燃料集合体200の下端部が収納缶500の底面に接触したら下降を停止させ、ハンドル43の把持を解除する。その後、燃料集合体200を収納した収納缶500が適宜な搬送手段によって次工程に搬送される。
【0092】
尚、図示の例では、水平案内部材310がX方向に沿って延びるように配置されるものとしたが、水平案内部材310が配置される向きは、ラック100全体における対象の収容部101の位置に応じて適宜に決定されればよく、水平案内部材310はY方向に沿って延びるように配置されてもよい。また、延在方向の寸法が異なる複数の水平案内部材を用意しておき、ラック100全体における対象の収容部101の位置に応じて、適宜な水平案内部材を用いてもよい。
【0093】
このように、本発明の実施の形態に係る燃料集合体搬送処理の第3方法において用いられる燃料再収容装置300によれば、水平案内部材310によって、燃料集合体200の落下を抑制することができる。また、燃料集合体200における接続部(例えば下部支持部材2または上部支持部材4とワイヤ3との接続部)が接続解除されてしまった場合でも、補助保持部材320によって部品の飛散を抑制することができる。このように、収容部101から収納缶500に燃料集合体200を容易に移送することができる。
【0094】
また、第3方法における燃料再収容装置300によって吊り上げられる燃料集合体は、上記の第1方法における燃料集合体200のように下部支持部材2と上部支持部材4とにワイヤ3が接続されたものに限定されず、燃料集合体の上部と下部とが接続されて一体的に吊り上げ可能となっていればよく、例えば上部支持部材と下部支持部材とを連結する連結棒が設けられたものであってもよい。
【0095】
尚、本発明は上記の実施の形態の形態に限定されず、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0096】
10…燃料搬送用装置、11…切断手段、114…第2の切断刃、12…孔形成手段、13…吊り上げ手段、131…爪部、100…ラック、101…収容部、101A…対象収容部、101B…独立収容部、101C…貫通孔、200…燃料集合体